特許第6377716号(P6377716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー フューエル セル システムズ インクの特許一覧

<>
  • 特許6377716-炭化水素改質のための触媒 図000003
  • 特許6377716-炭化水素改質のための触媒 図000004
  • 特許6377716-炭化水素改質のための触媒 図000005
  • 特許6377716-炭化水素改質のための触媒 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377716
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】炭化水素改質のための触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/04 20060101AFI20180813BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20180813BHJP
   B01J 38/10 20060101ALI20180813BHJP
   C01B 3/40 20060101ALI20180813BHJP
   B01J 23/94 20060101ALI20180813BHJP
   B01J 23/96 20060101ALI20180813BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20180813BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20180813BHJP
【FI】
   B01J38/04 Z
   B01J37/08
   B01J38/04 A
   B01J38/10 C
   C01B3/40
   B01J23/94 M
   B01J23/96 M
   H01M8/12
   H01M8/0606
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-500897(P2016-500897)
(86)(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公表番号】特表2016-512787(P2016-512787A)
(43)【公表日】2016年5月9日
(86)【国際出願番号】US2014022027
(87)【国際公開番号】WO2014150057
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年2月7日
(31)【優先権主張番号】13/837,544
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513136610
【氏名又は名称】エルジー フューエル セル システムズ インク
【氏名又は名称原語表記】LG FUEL CELL SYSTEMS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アール.バッジ
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−161302(JP,A)
【文献】 米国特許第03948762(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C01B 3/00−3/58
DWPI(Derwent Innovation)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理された触媒金属を使用して炭化水素の水蒸気改質から水素を製造する方法であって、
還元性気体混合物環境内で炭化水素を改質するために使用する触媒金属を加熱し、前記触媒金属を処理すること、
前記処理された触媒金属を用いた改質反応器を介して前記炭化水素を改質し、前記炭化水素から水素を製造すること、を含んでなるものであり、
前記還元性気体混合物は、水素、及び少なくとも一つの含硫黄化合物を含んでなり、
前記少なくとも一つの含硫黄化合物は、硫化水素、硫化カルボニル、カルボニルジスルフィド、及び有機含硫黄化合物の一つ又は複数を含んでなり、
前記処理当たりの総硫黄の投与量は、500〜1840ppb-hであり、
前記還元性気体混合物における総硫黄濃度は、30〜80ppb-vである、製造方法。
【請求項2】
前記総硫黄投与量で前記触媒金属を処理し、
前記触媒金属の失活速度を低減し、他方、前記改質反応器内の前記炭化水素から前記水素への転化率を低減させないようにすることを含んでなる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
炭化水素を改質するためのシステムであって、
改質反応器と、
前記炭化水素を改質するための、前記改質反応器内にある触媒金属とを備えてなり、
前記改質反応器は、前記触媒金属を還元性気体混合物環境内で加熱し前記触媒金属を処理し、及び、前記処理された触媒金属を用いて前記炭化水素を改質し前記炭化水素から水素を製造するように構成されたものであり、
前記還元性気体混合物は、水素、及び少なくとも一つの含硫黄化合物を含んでなり、
前記少なくとも一つの含硫黄化合物は、硫化水素、硫化カルボニル、カルボニルジスルフィド、及び有機含硫黄化合物の一つ又は複数を含んでなり、
前記処理当たりの総硫黄の投与量は、500〜1840ppb-hであり、
前記還元性気体混合物における総硫黄濃度は、30〜80ppb-vである、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、例えば固体酸化物燃料電池システムとともに使用するための、炭化水素改質に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、及び燃料電池システム、例えば固体酸化物燃料電池、及び固体酸化物燃料電池システムは、関心領域として残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
いくつかの既存のシステムは、ある用途に関して様々な短所、欠点、及び不利な点を有している。したがって、この技術領域において更なる貢献の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの例において、本開示は、炭化水素の改質に使用するための、例えば、水蒸気改質装置とともに用いて水素を製造するための、触媒金属に関する。触媒を、水素及び硫黄化合物を含む還元性気体で処理してもよい。硫黄化合物は、硫化水素、硫化カルボニル、カルボニルジスルフィド、有機含硫黄化合物、例えばチオフェン、チオファン、スルフィド(RSH)、ジスルフィド(RSR’)、トリスルフィド(RSR’)、及びメルカプタン(RSR’)の一つ又は複数を含む。触媒を適切な硫黄の投与で処理することによって、触媒活性に実質的に悪影響を与えることなく触媒性能を安定させてもよい。いくつかの例において、触媒金属の処理は、改質の間、改質装置を介して、改質装置供給流に含硫黄化合物を定期的に添加することによって、その場で行ってもよい。金属触媒金属を用いた改質装置を介して製造された水素を、固体酸化物燃料スタックの燃料側に供給してもよい。
【0005】
一例では、本開示は、改質触媒を処理する方法に関し、方法は、還元性気体混合物環境内で炭化水素を改質するために用いる触媒金属を加熱することを含み、還元性気体混合物は、水素、及び少なくとも一つの含硫黄化合物を含み、少なくとも一つの含硫黄化合物は、硫化水素、硫化カルボニル、カルボニルジスルフィド、及び有機含硫黄化合物、例えばチオフェン、チオファン、スルフィド(RSH)、ジスルフィド(RSR’)、トリスルフィド(RSR’)、及びメルカプタン(RSR’)の一つ又は複数を含む。
【0006】
他の例では、本開示は、炭化水素を改質するための物品に関し、物品は、炭化水素を改質するための触媒金属を含み、触媒金属は、還元性気体混合物環境内で加熱されることよって処理されており、還元性気体混合物は、水素、及び少なくとも一つの含硫黄化合物を含み、少なくとも一つの含硫黄化合物は、硫化水素、硫化カルボニル、カルボニルジスルフィド、及び有機含硫黄化合物、例えばチオフェン、チオファン、スルフィド(RSH)、ジスルフィド(RSR’)、トリスルフィド(RSR’)、及びメルカプタン(RSR’)の一つ又は複数を含む。
【0007】
本開示の一つ又は複数の実施形態の詳細を、添付の図面及び以下の説明に記載する。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、明細書及び図面から、並びに請求項から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書の記載は添付の図面に言及しており、引用数字などは、いくつかの図の全体にわたる部分などを指す。
【0009】
図1図1は、燃料電池システムの例を説明する模式図である。
【0010】
図2図2は、燃料電池スタックの例を説明する模式図である。
【0011】
図3図3は、燃料電池スタックの例の断面を説明する模式図である。
【0012】
図4図4は、活性関数Y対オンストリーム時間(TOS)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本開示の実施形態による燃料電池システム50の例を説明する模式図である。燃料電池システム50は、燃料電池スタック54、及び水蒸気改質装置52を含む。説明の簡略化のために、本開示の例は、処理済み触媒金属の例を使用した炭化水素の水蒸気改質から水素を製造するよう構成された、水蒸気改質装置に関して主に記載されている。しかしながら、例は、水蒸気改質に限定されない。他の例は、炭化水素の乾式改質、炭化水素の自己熱型改質、及び/又は炭化水素の触媒的部分酸化のプロセスをとおした、処理済み触媒の使用を含む。
【0014】
水蒸気改質装置52は、一つ又は複数の炭化水素を含む気体供給流を受容してもよい。改質装置52に供給される炭化水素の例としては、好ましくは、軽質炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、及びC、並びに重質炭化水素が挙げられる。炭化水素フィードは、触媒金属56が存在する場合、高温で水蒸気と反応する。改質装置52を介した水蒸気改質装置内の反応は、特に、水素を製造する。改質された水素を、水蒸気改質装置から燃料電池スタック54の燃料側へと供給しつつ、空気(または、他の酸化剤)を、燃料電池スタック54の酸化剤側に供給してもよい。燃料電池スタック54は、燃料電池スタックの燃料側に供給される水素を使用して電気を製造してもよい。
【0015】
上述したように、触媒金属56を、水素及び硫黄化合物を含む還元性気体で処理してもよい。硫黄化合物は、硫化水素、硫化カルボニル、カルボニルジスルフィド、有機含硫黄化合物、例えばチオフェン、チオファン、スルフィド(RSH)、ジスルフィド(RSR’)、トリスルフィド(RSR’)、及びメルカプタン(RSR’)の一つ又は複数を含む。触媒を適切な硫黄の投与で処理することによって、触媒活性に実質的に悪影響を与えることなく触媒性能を安定させてもよい。いくつかの例において、触媒金属の処理は、改質の間、改質装置を介して、改質装置供給流に含硫黄化合物を定期的に添加することによって、インサイチュで行ってもよい。金属触媒金属を用いた改質装置を介して製造された水素を、固体酸化物燃料スタックの燃料側に供給してもよい。このようにして、得られる触媒耐久性の改善は、例えば触媒の交換又は改質装置ユニットの置換のためのメンテナンス間隔が長くなることに起因する運転上の節減につながることがある。
【0016】
水蒸気改質触媒金属56は、Ni、Co、Rh、Ru、Pd、Pt、及びCoの群から選択される一つ又は複数の触媒活性金属を含んでもよい。触媒金属56は、適切な担体上に担持されていてもよい。担体上の触媒活性金属56の量は、広範囲にわたって変化させてもよく、いくつかの例では、約0.1〜40質量%、例えば約0.5〜10質量%の量で存在する。触媒56のための適切な担体としては、耐火性酸化物、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化タングステン、及びこれらの混合物が挙げられる。少なくとも2つのカチオンを含む混合耐火性酸化物は、触媒56のための担体材料として使用してもよい。酸化物、例えばバリア、セリア、酸化ランタン、及びマグネシアによって安定化されたアルミナ酸化物は、好ましい担体であることがある。触媒活性金属は、本技術分野において知られている技術を含むあらゆる適切な技術によって、担体上に堆積してもよい。担体上に金属を堆積するためのひとつの適切な技術は、担体材料と一つ又は複数の触媒活性金属の溶液とを接触させ、得られた材料を乾燥及び焼成することを含んでもよい、含浸によるものである。
【0017】
水蒸気改質は吸熱性であり、熱伝導はプロセス設計における重要な考慮事項である。多くの水蒸気改質用途において、外部の熱源からプロセス流への熱伝導を促進するために水蒸気改質触媒を金属基材上へ被覆することは、多くの場合有利である。金属モノリシック構造は、例えば、耐熱及び耐酸化金属、例えばステンレススチール等から製造してもよい。FeCr合金は、触媒を担持するための、及びモノリスを形成するための好ましい金属合金であることがある。モノリス担体は、平坦なシート及び波形シートを重ねて置き、重ねたシートを波形に対する軸周りに筒状構造へと巻いて、筒状ロールの端面面積1平方インチあたり典型的に200〜1200本の複数の細い平行な気体流路を有する筒状構造を提供することによって、そのような材料から作ってもよい。
【0018】
他の適切な金属基材の形態は、プロセス流と直接接触する金属フォーム及び熱金属表面を含んでもよい。後者の例は、熱交換器の金属熱交換表面であってよい。熱交換器とともに、波形金属箔、金属メッシュ、金属ワイヤ、又は多孔質金属フォーム上に担持された触媒を、熱交換器チャネル内に直接置いてもよい。触媒物質は、本技術分野において知られている技術、例えばウォッシュコーティングによって、金属基材の表面上に被覆することができる。更に、金属表面の前処理及び活性化によって、触媒ウォッシュコートと金属基材との間の結合は、多くの場合改善されることがある。
【0019】
本開示の一つ又は複数の例によれば、硫黄は、ほとんどの場合、水蒸気改質触媒(例えば、Ni)にとって厳しい毒であると考えられているが、驚くことに、水素と、硫化水素、硫化カルボニル、カルボニルジスルフィド、及び有機含硫黄化合物、例えばチオフェン、チオファン、スルフィド(RSH)、ジスルフィド(RSR’)、トリスルフィド(RSR’)、及びメルカプタン(RSR’)の群から選択される一つ又は複数の硫黄化合物とを含む還元性気体で触媒を処理することによって、水蒸気改質触媒の耐久性を著しく向上させることができることが分かった。硫黄の投与量(例えば、還元性処理気体中の硫黄濃度と処理継続時間との積によって定義される)は、広範囲にわたって変化させてもよいが、しかしながら、硫黄の投与量は、好ましくは、触媒活性に大きく影響を与えることなく触媒性能を安定させるのに十分であるべきである。触媒性能は、炭化水素の改質生成物への転化率に反映されるように、例えば炭化水素転化率を低減するいくつかの失活機構によって、経時的に損なわれることがある。分解機構は、触媒金属粒子の焼結、触媒表面積の低下、及び汚れを含むことがある。いくつかの例において、本明細書において記載されている技術は、触媒活性を抑制することなく、経時的な炭化水素転化率の低下を著しく低減する。これは、触媒失活を低減すると同時に炭化水素転化率を著しく低減する技術に記載されているプロセスと比較してもよい。更に、いくつかの例において、還元性気体中の硫黄濃度が高いと、処理時間が低減されることがある。還元性気体中の硫黄濃度(パーツパービリオン)と暴露時間(時間)との積として定義される硫黄レベル(ppb−時間)は、硫黄処理の程度及び得られた触媒安定化の尺度として使用することができる。したがって、比較できる程度の触媒安定化は、a)短時間での高い供給硫黄レベルを伴う触媒処理、又はb)長時間での少ない供給硫黄を伴う触媒処理のいずれかによって達成することができる。
【0020】
本開示の例によれば、触媒56を、一つ又は複数の硫黄化合物で処理してもよい。理論に拘束されることを望まないが、硫黄処理は、触媒活性金属中心の近くに触媒失活を抑制する金属スルフィドを形成することにつながると考えられる。本明細書に記載されている触媒56の処理は、改質プロセスを行う前に実施してもよく、又は代替的にインサイチュで(例えば、改質プロセスが進行している間に)実施してもよい。インサイチュ処理の場合、改質装置52によって受容される炭化水素フィード内に、一つ又は複数の含硫黄化合物を混合してもよい。この場合、改質反応によって水素が製造されるので、供給に対する水素の添加は任意である。他の例において、水素、及び一つ又は複数の含硫黄化合物を含む還元性気体混合物は、別々の供給ラインを介して改質装置52に供給してもよい。一つ又は複数の含硫黄化合物は、実質的に連続的又は定期的に、触媒金属56を処理するための改質装置52に供給してもよい。定期的な処理の場合、長時間作動した後に触媒失活速度が増加する場合は、改質装置52に含硫黄化合物を供給することによって、触媒金属56を再処理してもよい。触媒成分を有する燃料電池又は他の下流プロセスとともに改質プロセスを使用する場合、改質触媒の活性、燃料電池、又は他の下流プロセスのいずれかに大きな影響を与えないように、改質装置の供給中の硫黄レベル、及び処理継続時間を調整することが好ましい。
【0021】
前処理の場合、触媒52を還元性気体混合物環境内、例えば反応器内で、炭化水素を改質するために用いる前に、触媒金属52を加熱することによって、触媒金属56を処理してもよい。還元性気体混合物は、水素、及び少なくとも一つの含硫黄化合物を含んでもよく、少なくとも一つの含硫黄化合物は、硫化水素、硫化カルボニル、カルボニルジスルフィド、及び有機含硫黄化合物、例えばチオフェン、チオファン、スルフィド(RSH)、ジスルフィド(RSR’)、トリスルフィド(RSR’)、及びメルカプタン(RSR’)の一つ又は複数を含む。前処理は、改質装置52内で、又は別の容器内で行うことができる。また、長時間作動した後に触媒失活速度が増加する場合、改質装置52に一つ又は複数の含硫黄化合物を供給することによって、触媒金属56を再処理してもよい。
【0022】
上述したように、金属触媒56の処理のために使用する硫黄の投与量は、触媒活性に大きく影響を与えることなく触媒性能を安定させるのに十分であってよい。量は、還元性気体混合物中の硫黄濃度、及び還元性気体混合物を触媒に供給する継続時間の関数であってもよい。還元性気体混合物を定期的に触媒に供給する場合、混合物を供給する頻度もまた量を決定することがある。硫黄投与の効果は、処理条件、金属、及び必要な処理頻度に依存することがある。処理当たりの硫黄の投与量は、約100〜50,000ppb−h、好ましくは約500〜5000ppb−hの範囲であってよい。
【0023】
いくつかの例において、硫黄は水蒸気改質触媒にとって厳しい毒であるので、還元性気体混合物の総硫黄濃度は、好ましくは、約0.005〜約10体積パーツパーミリオン(ppm−v)、例えば、約0.02〜約0.5ppm−vの範囲であってよい。いくつかの例において、触媒の前処理は、好ましくは、温度約300〜約1200℃、圧力約1〜約200bar、及び気体毎時空間速度(GHSVs)約50〜約100,000hour−1で実施してもよい。例えば、触媒処理は、温度約600〜約1,000℃、圧力約1〜約10bar、及びGHSVs約100〜約50,000hr−1で実施してもよい。上記以外の値も考えられる。
【0024】
炭化水素の水蒸気改質は、本明細書に開示されている技術、例えば、圧力約1〜約50bar、温度約500〜約1200℃、GHSVs約100〜約100,000hr−1、及び炭素に対する水蒸気の比率約0.5〜約10に従って処理した触媒金属56を有する改質装置52を介して実施してもよい。上記以外の値も考えられる。上述したように、水蒸気改質に加えて、他の例、例えば自己熱型改質、乾式改質、及び触媒的部分酸化プロセスを、本明細書に記載されている方法に従って処理した触媒を使用して実施してもよい。
【0025】
いくつかの例において、例えば、触媒金属(Ni)は、コークスの形成による影響を受けやすいことがある。いくつかの例において、流れ改質プロセスに硫黄を加えて、触媒金属のコークス化を低減してもよい。しかしながら、コークス化を低減するのに役立つことがある比較的高レベルの硫黄は、触媒活性の著しい低減につながる可能性がある。本開示の一つ又は複数の例によれば、比較的低レベルの硫黄を提供して触媒金属56を処理すると、触媒活性の著しい低減につながらないことがある。硫黄前処理投与量を調整して、低減される炭化水素転化率が1%未満、好ましくは0.5%未満になるようにしてもよい。
【0026】
図2は、基材14上に形成された複数の電気化学的電池12(または、「別々の燃料電池」)を含む、燃料電池スタック54を説明する模式図である。上述したように、改質装置52によって製造された水素を、燃料電池スタック54の燃料側に供給してもよい。燃料電池スタック54は、改質された水素を使用して電気を製造してもよい。しかしながら、本明細書に記載されている処理済み触媒金属を使用して、改質された水素を作り出すための技術は、燃料電池を伴う用途に限定されるものではない。むしろ、本明細書に記載されている技術を介して製造される改質された水素は、あらゆる適切な目的のために使用してもよい。
【0027】
電気化学的電池12は、相互接続16によって直列に一緒に連結している。燃料電池システム10は、平坦な多孔質セラミック管に堆積されたセグメント直列型配置であり、本開示は、円形多孔質セラミック管上のような、他の基材上のセグメント直列型配置に等しく適用できることが理解されよう。様々な実施形態において、燃料電池システム10は、一体化された平型燃料電池システム、又は筒型燃料電池システムでもよい。
【0028】
それぞれの電気化学的電池12は、酸化剤側18及び燃料側20を含む。酸化剤は一般的に空気であるが、しかしながら、純酸素(O)、又は他の酸化剤、例えば、空気リサイクルループを有する燃料電池システムのための希釈空気であってよく、酸化剤側18から電気化学的電池12に供給される。基材14は多孔質であってよく、例えば、燃料電池作動条件において安定であり、他の燃料電池材料と化学的に適合する多孔質セラミック材料であってよい。他の実施形態において、基材14は表面変性材料であってよく、例えば、被覆又は他の表面変性を有する多孔質セラミック材料、例えば、電気化学的電池12の層と基材14との間の相互作用を妨げ、又は低減するよう構成されたものであってよい。燃料、例えば改質された炭化水素燃料、例えば合成ガスは、多孔質基材14内のチャネル(図示せず)を介して、燃料側20から電気化学的電池12に供給される。
【0029】
図3は、燃料電池スタック54の例の断面を説明する模式図である。燃料電池スタック54は、基材14の上にスクリーン印刷された複数の層から形成されていてもよい。燃料電池スタック54の層は、アノード導電性層22、アノード層24、電解質層26、カソード層28、及びカソード導電性層30を含む。一形態において、電解質層26は、単一の層であってもよく、又は任意の数の副層から形成されていてもよい。
【0030】
一つの電気化学的電池から他の電気化学的電池へと電子を輸送するために、固体酸化物燃料電池(SOFC)のための相互接続16は、好ましくは導電性であり;燃料電池の作動の間、酸化環境及び還元環境の両者の下で機械的及び化学的に安定であり;相互接続を通した燃料及び/又は酸化剤の拡散を妨げるために、非多孔質である。相互接続が多孔質である場合、燃料が酸化剤側に拡散して燃焼し、例えば、材料の分解及び機械的破損、並びに燃料電池システムの効率低減に起因する燃料電池の寿命低下につながることのある、局所的熱点が生じることがある。同様に、酸化剤が燃料側に拡散し、燃料の燃焼につながることがある。重篤な相互接続漏れは、燃料電池の燃料利用率及び性能を著しく低減するか、又は燃料電池若しくはスタックの破滅的破損を引き起こすことがある。
【0031】
それぞれの電気化学的電池12において、アノード導電性層22は、アノード24から離れた自由電子を伝導し、相互接続16を経てカソード導電性層30へと電子を伝導する。カソード導電性層30は、カソード28に電子を伝導する。
【0032】
相互接続16は電解質層26に埋められており、アノード導電性層22に電気的に結合しており、アノード導電性層22から電解質層26を通って方向32に、次にひとつの電気化学的電池12から次の隣の電気化学的電池12への方向36に、次に相互接続16が電気的に結合しているカソード導電性層30の方向32に再び延在している。具体的には、相互接続16の少なくとも一部は電解質層26の延在部分の範囲内に埋められており、電解質層26の延在部分とは、アノード24及びカソード28を越えて延在する、例えば、方向32に延在し、アノード24とカソード28との間に挟まれていない、電解質層26の一部である。図3に示されていないが、いくつかの例において、燃料電池システム10は、相互接続16と、隣接する構成要素との間に一つ又は複数の化学的バリア層を含んで、相互接続と、隣接する構成要素、例えば、アノード及び/又はアノード導体フィルム、及び/又はカソード及び/又はカソード導体フィルムとの間の、燃料電池システムの特定の性能に悪影響を与えることがある拡散を低減又は防止してもよい。
【実施例】
【0033】
《実施例》
【0034】
一連の実験を行い、本開示の例に関する一つ又は複数の側面を評価した。
【0035】
比較例−硫黄での触媒前処理なし
【0036】
BASF社供給の、Alumchrome Y上に被覆されたRM75(Pt/Rh)触媒は、本明細書に記載されている例に従う硫黄での処理をしていないものであった。触媒を、以下の水蒸気改質条件下で2000時間エージングした:800℃、4Bara、供給気体組成14.2%のCH、9.3%のCO、18.1%のCO、14.2%のH、39.6%のHO、及び4.6%のN。触媒は、一次失活速度1.47×10−4−1を有した。
【0037】
例1−硫黄で処理した触媒
【0038】
BASF社供給の、Alumchrome Y上に被覆されたRM75(Pt/Rh)触媒を、以下の水蒸気改質条件下でエージングした:800℃、4Bara、及び供給気体組成14.2%のCH、9.3%のCO、18.1%のCO、14.2%のH、39.6%のHO、4.6%のN。定期的に、供給流に硫黄を混ぜた。表1に、硫黄濃度、及び硫黄添加継続時間をまとめる。硫黄の投与量は、供給硫黄濃度(ppb)と暴露時間(h)との積として定義される。供給中への硫黄の定期的な導入を、下表に詳述する。
【表1】
【0039】
Sとしての、又は入手可能なパイプライン天然ガス(PNG)中に存在する自然に生じる硫黄化合物としての硫黄を、供給流中に導入した。供給流中に硫黄を導入すると、触媒失活速度が少なくとも30%低減されることが分かった。図4は、例1と比較例とを対比した、活性関数Y対オンストリーム時間(TOS)のプロットである。硫黄添加の頻度及びレベルを更に調整することで、観測される触媒失活速度が更に低減されることが予測される。
【0040】
処理した触媒及び処理していない触媒の表面を分析すると、触媒は、触媒上への炭素蓄積の証拠を示さなかった。したがって、コークス化は、触媒失活に著しく寄与していないようである。理論に拘束されることを望まないが、触媒硫化のレベルを比較的低く維持することが、水蒸気改質反応を触媒する高分散金属微結晶の焼結を抑制すると考えられる。
【0041】
本発明の様々な実施形態を記載した。これら及び他の実施形態は、以下の請求項の範囲内である。以下、本発明の実施形態の例を列記する。
[1]
改質触媒を処理する方法であって、前記方法は、還元性気体混合物環境内で炭化水素を改質するために使用する触媒金属を加熱することを含み、前記還元性気体混合物は、水素、及び少なくとも一つの含硫黄化合物を含み、前記少なくとも一つの含硫黄化合物は、硫化水素、硫化カルボニル、カルボニルジスルフィド、及び有機含硫黄化合物、例えばチオフェン、チオファン、スルフィド(RSH)、ジスルフィド(RSR’)、トリスルフィド(RSR’)、及びメルカプタン(RSR’)の一つ又は複数を含む、方法。
[2]
前記触媒金属の活性に実質的に悪影響を与えることなく触媒性能が安定するように、処理の間、前記触媒金属を硫黄の投与で処理する、項目1に記載の方法。
[3]
前記触媒金属を加熱することは、前記触媒金属を温度約350〜1,200℃に加熱することを含む、項目1に記載の方法。
[4]
前記触媒金属を有する改質装置を介して前記炭化水素を改質して、水素を製造することを更に含む、項目1に記載の方法。
[5]
前記炭化水素を改質することは、水蒸気改質を含む、項目4に記載の方法。
[6]
固体酸化物燃料電池スタックの燃料側に前記水素を供給することを更に含む、項目4に記載の方法。
[7]
前記炭化水素を改質するとともに、少なくとも一つの前記硫黄化合物を前記改質装置の供給流に定期的に添加する、項目4に記載の方法。
[8]
前記触媒金属の活性に実質的に悪影響を与えることなく触媒性能が安定するように、前記硫黄化合物の定期的な投与の頻度、量、及び継続時間を選択する、項目7に記載の方法。
[9]
前記触媒金属が触媒担体に担持されている、項目1に記載の方法。
[10]
前記触媒金属が、Ni、Co、Rh、Ru、Pd、Pt、及びCoの一つ又は複数を含む、項目1に記載の方法。
[11]
炭化水素を改質するための物品であって、前記物品は、前記炭化水素を改質するための触媒金属を含んでおり、前記触媒金属は、還元性気体混合物環境内で加熱することによって処理されており、前記還元性気体混合物は、水素、及び少なくとも一つの含硫黄化合物を含み、前記少なくとも一つの含硫黄化合物は、硫化水素、硫化カルボニル、カルボニルジスルフィド、及び有機含硫黄化合物、例えばチオフェン、チオファン、スルフィド(RSH)、ジスルフィド(RSR’)、トリスルフィド(RSR’)、及びメルカプタン(RSR’)の一つ又は複数を含む、物品。
[12]
前記触媒金属の活性に実質的に悪影響を与えることなく触媒性能が安定するように、処理の間、前記触媒金属が硫黄の投与で処理されている、項目11に記載の物品。
[13]
処理の間、前記触媒金属を温度約350〜1,200℃に加熱する、項目11に記載の物品。
[14]
炭化水素を改質するための改質装置を更に含み、処理した前記触媒金属を前記改質装置に用いて水素を製造する、項目11に記載の物品。
[15]
前記改質装置は、水蒸気改質装置を含む、項目14に記載の物品。
[16]
固体酸化物燃料電池スタックを更に含み、前記改質装置によって製造される水素を前記固体酸化物燃料電池スタックの燃料側に供給する、項目14に記載の物品。
[17]
前記炭化水素を改質するとともに、少なくとも一つの硫黄化合物を前記改質装置の供給流に定期的に添加する、項目14に記載の物品。
[18]
前記触媒金属の活性に実質的に悪影響を与えることなく触媒性能が安定するように、前記硫黄化合物の定期的な添加の頻度、量、及び継続時間を選択する、項目17に記載の物品。
[19]
前記触媒金属が触媒担体に担持されている、項目11に記載の物品。
[20]
前記触媒金属が、Ni、Co、Rh、Ru、Pd、Pt、及びCoの一つ又は複数を含む、項目11に記載の物品。
図1
図2
図3
図4