【実施例1】
【0013】
図1、2に示されるように、自動車用シート100は、フロア上で前後に移動自在なシートクッションSC:120と、シートクッションSC:120に対してリクライニング可能なシートバックSB:110とを備えている。シートクッションSC:120及びシートバックSB:110は、
図3に示すように、発泡体からなるクッション材2がクッションカバー10で覆われるとともに、クッション材2から取り外し可能な表皮材3で被覆されている。
【0014】
このシート100において、シートクッションSC:120及びシートバックSB:110には、ライン状の吊り込み部B1〜B6が設けられている。この吊り込み部B1〜B6は、シート100の外観を形成する。
【0015】
ここで、シートバックSB:110を例に挙げて説明する。
図2〜
図4に示されるように、シートバックSB:110のクッション材2は、着座者の背凭れ面となるメインバック部SB1:111と、着座者の上半身を左右の横方向から保持するためのサイドバック部SB2:112とを有している。
【0016】
図3には、
図1におけるA−A断面を示す。クッション材2はクッションカバー10で覆われている。このクッションカバー10は、クッション材2のメインバック部SB1:111を被覆する第一カバー11と、サイドバック部SB2:112を被覆する第二カバー12と、によって形成されている。クッションカバー10の第一カバー11と第二カバー12とは、吊り込み部材を構成する第一開閉式ファスナ5の基端51を間に挟んで継ぎ合わせ部4において縫着されている。
【0017】
この継ぎ合わせ部4において第一カバー11と第二カバー12とに縫着された第一開閉式ファスナ5は、クッション材2に形成した吊り込み部を形成する吊り込み溝21の溝面22に沿って第一カバー11と第二カバー12が吊り込み溝21内に固定され、吊り込み溝21内に位置している。第一カバー11と第二カバー12は、吊り込み溝21の溝面22にクッション材2と一体発泡により固定されている。第一カバー11と第二カバー12は、吊り込み溝21の溝面22に接着により固定しても良い。
ここで、クッションカバー10は、その一部として第一カバー11と第二カバー12として説明するが、吊り込み部B1〜B6での互いに隣接するクッションカバー10においても同様に構成されている。また、このシートバックSB:110では、吊り込み溝21は、クッション材2の上下方向、左右方向に形成され、シートクッションSC:120では、前後方向、左右方向に形成されている。
【0018】
そして、クッション材2は取り外し可能な表皮材3で被覆されている。この表皮材3はクッション材2を覆うクッションカバー10とクッション材2とから取り外し可能に設けられている。この表皮材3はクッション材2の後面を被覆する周囲表皮材31と背凭れ面側を被覆する主面表皮材32とからなる。。主面表皮材32はその外周に沿って第一締結部32aが設けられ、周囲表皮材31の外周に沿って第二締結部31aが設けられている。
図2において矢印C1で示す主面表皮材32の第一締結部32aと周囲表皮材31の第二締結部31aとは締結可能に形成されている。主面表皮材32の第一締結部32aと周囲表皮材31の第二締結部31aとの締結を解除することにより、主面表皮材32の外周を周囲表皮材31から取り外すことができる。
【0019】
更に、主面表皮材32には、
図2、3に示すように、クッションカバー10の第一開閉式ファスナ5と開閉可能に締結する第二開閉式ファスナ6が取り付けられている。
主面表皮材32は、クッション材2のメインバック部SB1:111を被覆する第一主面表皮材32bと、サイドバック部SB2:112を被覆する第二主面表皮材32cと、によって形成されている。第一主面表皮材32bと第二主面表皮材32cとは、継ぎ合わせ部7において縫着されている。この継ぎ合わせ部7の箇所においては、吊り込み部材を構成する第二開閉式ファスナ6の基端61が第一主面表皮材32bと第二主面表皮材32cとの間に縫い合わされている。第一開閉式ファスナ5と第二開閉式ファスナ6とで、吊り込み部材を構成している。
【0020】
主面表皮材32の第二開閉式ファスナ6は、クッションカバー10の第一開閉式ファスナ5と、
図2で矢印C2、C3,C4で示した組合せで、開閉可能に締結することができる。主面表皮材32の第二開閉式ファスナ6をクッションカバー10の第一開閉式ファスナ5に締結することにより、
図3に示すように、表皮材3の一部が吊り込まれ、クッション材2の上下、左右に凹部形状が形成されている。
ここで、表皮材3は、その一部として第一主面表皮材32bと第二主面表皮材32cとして説明するが、吊り込み部B1〜B6での互いに隣接する表皮材3においても同様に構成されており、
図2の矢印C5〜C8の組合せで開閉可能に締結されている。この主面表皮材32は表皮とその内部のワディングとから形成されている。
【0021】
図3の円Dで囲んだ部分の拡大図として
図4に示したように、かかる吊り込み構造では、第一カバー11と第二カバー12は、吊り込み溝21の溝面22にクッション材2と一体発泡成形することにより固定される。これにより、クッションカバー10に縫着した第一開閉式ファスナ5をクッション材2の吊り込み溝21の内部に固定する作業が不要になる。従って、第一開閉式ファスナ5を吊り込み溝21の深い位置に設定することができる。その結果、薄い表皮材3であっても、吊り込み部B1に凹部形状が形成され、見栄えが良くなる。また、シートクッションSC:120では、表皮材3を取り外してクッションカバー10に着座しても、着座者のピップポイントの変化が少なく、表皮材3の有無によりピップポイントの差を少なくできる。薄い表皮材3であっても、吊り込み部B1に凹部形状が形成され、見栄えが良くなるので、厚い表皮材とする必要がなく、その分、コストの低減化が図られる。
【0022】
表皮材3を取り外して、クッションカバー10に着座した際、クッションカバー10側の第一開閉式ファスナ5は吊り込み溝21の深い位置にあるため、第一開閉式ファスナ5による異物感が無く、着座感の良好化が図られる。
クッションカバー10の第一開閉式ファスナ5の基部51を挟んで縫着した継ぎ合わせ部4は、吊り込み溝21の溝面22にクッション材2と一体発泡成形により固定されているので、吊り込み溝21の形状が広くなり、表皮材3側の第二開閉式ファスナ6をクッションカバー10側の第一開閉式ファスナ5に締結する作業が容易で、簡単に表皮材3を吊り込み溝21に吊り込むことができる。
【実施例2】
【0023】
図5は本発明に係る吊り込み構造の第2の実施例を示す。実施例1とは異なる構成につき説明し、同様な構成については実施例1と同符号を付し、その説明は省略する。
実施例1では、第一開閉式ファスナ5の基部51を挟んで縫着したクッションカバー10の継ぎ合わせ部4をクッション材2と一体発泡成形して溝面22に固定する構成であった。これに対して本実施例では、これに替えて面状のファスナを用いてクッションカバー10の継ぎ合わせ部4を吊り込み溝21に固定する構成とした。
即ち、本実施例においては、面状のファスナ8クッション材2と一体発泡成形して吊り込み溝21の溝面21aに固定した。一方、開閉式ファスナ5の基部51を挟んで縫着したクッションカバー10の継ぎ合わせ部4の側にも面状のファスナ9を縫合して取り付けた。表皮材3の側の構成、及び、吊り込み溝21の内部における表皮材3側の第二開閉式ファスナ6とクッションカバー10側の第一開閉式ファスナ5との締結構造は、実施例1の場合と同様であるので、説明を省略する。
図5に示すように、本実施例においては、クッション材2に形成した吊り込み溝21の底面21aには、第一面状ファスナ8が吊り込み溝21に沿って固定されている。そして、この第一面状ファスナ8に取り外し可能な第二面状ファスナ9がクッションカバー10の第一カバー11と第二カバー12に設けられている。第一面状ファスナ8と第二面状ファスナ9とで吊り込み部材を構成している。
【0024】
かかる吊り込み構造では、クッションカバー10側の第二面状ファスナ9を第一面状ファスナ8に接着することにより、クッションカバー10を吊り込み溝21の溝面22に沿って固定することができるので、クッションカバー10の吊り込み溝21への固定作業が容易に行える。
なお、上記に説明した実施例2においては、クッション材2に形成した吊り込み溝21の底面21aに第一面状ファスナ8を固定する構造で説明したが、実施例1の
図3及び4で示した構造の第一開閉式ファスナ5と第二開閉式ファスナ6とを実施例2で説明した第一面状ファスナ8と第二面状ファスナ9とに置き換えて、クッションカバー10と表皮材3とを第一面状ファスナ8と第二面状ファスナ9とで着脱するようにしてもよい。
【0025】
上記では、吊り込み部B1につき説明しているが、他の吊り込み部B2〜B6もB1と同様な構成であることはいうまでもない。
本発明は上記実施例に限られず、本発明の範囲内であれば、種々、変形することができることはいうまでもない。