(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377776
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】多層の大径管を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B21C 37/06 20060101AFI20180813BHJP
F16L 9/18 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
B21C37/06 B
F16L9/18
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-572541(P2016-572541)
(86)(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公表番号】特表2017-523047(P2017-523047A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】EP2015062811
(87)【国際公開番号】WO2015189187
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2017年2月8日
(31)【優先権主張番号】102014108145.5
(32)【優先日】2014年6月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510321273
【氏名又は名称】アイゼンバウ クレーマー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Eisenbau Kraemer GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴィタリー パヴリク
(72)【発明者】
【氏名】ティロ ライヒェル
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン アレトフ
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0022800(US,A1)
【文献】
特開昭57−146419(JP,A)
【文献】
独国特許発明第102013103811(DE,B3)
【文献】
国際公開第2001/097996(WO,A1)
【文献】
国際公開第2004/103603(WO,A1)
【文献】
特開2001−286930(JP,A)
【文献】
特開昭58−065524(JP,A)
【文献】
特開平04−059141(JP,A)
【文献】
特開平08−332534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 37/00−37/30
F16L 9/00−11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接された又はシームレスの、延いては周壁面が閉じられた、担体層を形成する外管(1)と、支持金属薄板から曲げられ且つ縦シーム溶接されるか又はシームレスで支持層を形成する少なくとも1つの内管(2)とから成る多層の大径管を製造する方法において、
前記支持金属薄板から曲げられた又はシームレスでやはり周壁面を閉じられた波形の内管(20)であって、該波形の内管(20)は、前記大径管の長手方向軸線に対して横方向に延在する、連続的に丸み付けられた波形輪郭(22)を有しており、該波形輪郭(22)は、前記波形の内管(20)の全長にわたって連続して延びる複数の波谷(21)と複数の波山(23)とを備えており、前記波形の内管(20)の最大外径(ODL)は、前記外管(1)の内径(IDT)よりも小さくなっている、前記波形の内管(20)を用意するステップ、
前記波形の内管(20)を、前記外管(1)に挿入するステップ、
前記波形の内管(20)の長さを、最大でも前記外管(1)の長さと同じ程度に選択し、前記波形の内管(20)を拡開する前に、まず前記波形の内管(20)の端部部分だけを前記外管(1)の内周面まで拡張させ、端面側で前記外管(1)と材料接続的に結合させるステップ、
半径方向外向きに作用する拡張力を用いて、前記波形の内管(20)が少なくともほぼ円形状を取ると共に前記拡張力の解消後には前記外管(1)内に摩擦接続的に締め込まれるまで、前記波形の内管(20)を拡開し、次いで応力緩和させるステップ、
という、連続した方法ステップを有することを特徴とする、多層の大径管を製造する方法。
【請求項2】
担体層を形成する外管(1)と、1つの支持金属薄板又は周方向に相並んで配置された複数の部分支持金属薄板から形成される、支持層を形成する少なくとも1つの内管(2)とから成る多層の大径管を製造する方法において、
担体層用の、所定の初期曲げ半径に予め曲げられた担体金属薄板と、製造すべき大径管の長手方向軸線に対して横方向に延在する、連続して丸み付けられた波形輪郭(22)が、製造すべき前記内管(2)の全長にわたって連続して延びる複数の波谷(21)と波山(23)とを備えて加工成形された又はされる、所定の初期曲げ半径に予め曲げられた少なくとも1つの支持金属薄板とを用意するステップ、
前記担体層と、少なくとも1つの波形の前記支持層とを形成するために、前記担体金属薄板の内側に、予め曲げられて前記波形輪郭(22)を備えた前記少なくとも1つの支持金属薄板を載置して位置決めし、且つ前記大径管の長手方向軸線の方向に延在する各長辺をそれぞれ平行に向けるステップ、
前記波形輪郭(22)を備えた前記少なくとも1つの支持金属薄板の少なくとも両長辺を、前記担体金属薄板と材料接続的に結合するステップ、
材料接続的に結合された前記担体層と前記少なくとも1つの波形の支持層とから成る複合体を加工成形して、前記外管(1)と波形の前記内管(20)とを有する、スリットが設けられた多層の大径管を形成するステップ、
スリットが設けられた前記大径管のギャップを縦シーム溶接により閉じるステップ、
半径方向外向きに作用する拡張力を用いて、前記波形の内管(20)が少なくともほぼ円形状を取ると共に前記拡張力の解消後には前記外管(1)内に摩擦接続的に締め込まれるまで、前記波形の内管(20)を拡開し、次いで応力緩和させるステップ、
という、連続した方法ステップを有することを特徴とする、多層の大径管を製造する方法。
【請求項3】
前記支持金属薄板の長さを、最大でも前記外管(1)の長さと同じ程度に選択し、拡開前に、まず前記波形の内管(20)の端部部分だけを前記外管(1)の内周面まで拡張させ、端面側で前記外管(1)と材料接続的に結合させる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記支持金属薄板に、平らな初期状態において既に前記波形輪郭(22)を加工成形する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記波形輪郭(22)は、前記内管(2)の拡開前の非拡張状態で、周方向に測定した前記波形の内管(20)の外周長(Li)が前記波形の内管(20)の前記波山(23)における直径(ODL)を有する包囲円の周長よりも大きくなるように形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
拡開前に、前記外管(1)及び前記内管(2)を縦シーム溶接により閉じる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記波形の内管(20)の長さが前記外管(1)よりも短い場合には、前記外管(1)の内周面に残された1つ又は複数の露出部分に被着層を設ける、請求項1又は3記載の方法。
【請求項8】
拡開前又は拡開後に、前記大径管の外側に熱処理による防食を施す、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
拡開用の前記拡張力を、機械式又は液圧式のエキスパンダを用いてもたらす、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
拡開前に真空ポンプを用いて、前記波形の内管(20)と前記外管(1)との間の中空室から空気を抜く、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
拡開前に、前記波形の内管(20)及び/又は前記外管(1)の、互いに向かい合う側に、接着剤層を部分的に又は全面的に被着し、該接着剤層を拡開中又は拡開後に硬化させる、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体層を形成する外管と、支持層を形成する少なくとも1つの内管とから成る、多層の大径管を製造する方法に関する。
【0002】
このような方法は、国際公開第2004/103603号(WO 2004/103603 A1)に記載されている。この公知の方法では、ライナ管又は単にライナとも呼ばれる内管が、その機能に基づき担体管とも呼ばれる、基本的により厚肉の外管に挿入される。その後、内管の一部が拡張工具により、外管と結合するまで半径方向に拡張され、このとき内管は塑性的に拡張され、外管は弾性的にしか拡張されない。この過程は、大径管の全長が拡張されるまで、段階的に繰り返される。前記拡張工具は液圧式に、但し乾式で作動する、即ち、液体と内管との接触は排除されている。双方の管の間の摩擦接続式の機械的な結合は、外管の弾性的な跳ね戻り(弾性回復)が、内管の跳ね戻りよりも大きいことによって生じる。2つの層材料を組み合わせる前提条件は、内管の降伏点が、外管の降伏点よりも低いことである。
【0003】
機械的に被覆されたバイメタルの大径管を製造するために確立された別の公知の方法は、例えばButting社により用いられる、いわゆるハイドロフォーミングである。この方法の原理は、
図5及び
図6に示されている。ライナとして用いられる、通常高合金化された内管が外管に挿入され、両端部を密に溶接される。その後、ハイドロフォーミングプレスにおいて、3次元的な液圧拡張プロセスが行われる。水圧により、内管と外管とは一緒に室温において僅かに拡張される。この場合に使用される押圧力は外管を降伏させるので、大径管を制御できない拡張や破断から保護するためには、アウターダイが必要である。外管の、より大きな弾性的な跳ね戻り率に基づいて、内管は、押圧力が軽減されると、
図6に示す応力・伸び線図から判るように、圧縮残留応力状態にもたらされる(出典:http://www.butting.com)。これにより、外管と内管との間に摩擦接続式の機械的な結合が生ぜしめられる。この結合を、内側から管を拡張することにより生ぜしめることができるようにするためには、
図6から明らかなように、外管の材料が、内管の材料よりも高い降伏点を有している必要がある。外管と内管とにおける最大拡張時点での周方向応力間の差(即ちσ
A_expansion-σ
L_expansion)が大きい程、押圧力軽減後の内管若しくはライナにおける残留圧縮応力σ
φL、延いては外管と内管との間に生じる結合力も大きくなる。
【0004】
外管と、大部分が摩擦接続的に結合される支持層の形態の内管とから成る多層の大径管を製造する別の方法が、独国特許発明第102013103811号明細書(DE 10 2013 103 811 B3)に記載されている。製造に際しては、既に初期曲げ加工されて予め曲げられた担体金属薄板が用いられ、この担体金属薄板に、やはり既に予め曲げられた支持金属薄板を載置し、その両長辺に沿って担体金属薄板と結合してから、この複合体を加工成形して多層の大径管を形成し、縦溶接シームを施す。
【0005】
大抵の場合、多層の大径管には防食コーティングが施される。コーティングに際して、管は(約250〜270℃の範囲内で)高められた温度にもたらされる。これは、このような多層管にとっては問題である。それというのも、通常炭素鋼から成る外管の熱膨張係数(10.5×10
−6 K
−1)と、内管の、例えばステンレス鋼316L等の高合金化されたオーステナイト材料の熱膨張係数(16.0×10
−6 K
−1)との差に基づいて、ライナ内の圧力が、加熱及び冷却により低下するからである。これにより結合力が低下することで、更に外管から内管が完全に剥離する恐れがある。
【0006】
西独国特許出願公開第593559号明細書(DE 593 559 A)に記載された二重壁の金属管を製造する方法では、外側に位置するジャケット管に、縦シーム溶接されていないライナ管を挿入し、このときライナ管縦シームは、それぞれやや重ね合わされている。引き続く内圧による各管の拡開に基づき、ライナ管がその初期形状に跳ね返ってシームが突き合わさり、圧力が軽減されると、ジャケット管がライナ管に対して冷間収縮する。この方式では、腐食性媒体の作用箇所を許容する、不密な突き合わせシームが残されている。
【0007】
多層の、しかし腐食性媒体搬送用の大径管には適さない管の別の管構造が、米国特許第2288340号明細書(US 2 288 340 A)に記載されている。この場合は単に、内側又は外側に択一的に被着されるべき、より薄肉の支持層が、周壁側で、多重に曲げられて閉じられた折返し部によって閉じられているに過ぎない。これに対して、より厚肉の外層若しくは択一的には内層は開いていてギャップを形成しており、これにより、ギャップ側の縁部で以て、当該層の周面を越えて内側又は外側に向かって突出した折返し部の側方に支持されることになる。1つの実施例で示されているのは、一方の層、それもより厚肉の層が管の内側に配置されている場合には、この層は、より薄肉の外管に挿入するために波形に形成されていてよく、次いで拡張されてからその縁部で以て、曲げられて隆起した折返し部の支持機能を生ぜしめる点である。確かに、折返し領域においてろう接結合又は溶接結合を生ぜしめる可能性も言及されてはいるが、これは平滑でシームレスの外観を得るために用いられるものである。これに対して、多層の大径管に必要とされる種々様々な複数の層のシール性は、このような構成によっては達成されない。
【0008】
更に、いわゆるクラッド管として冶金学的に支持層により被覆されている、よって板材の製造プロセスにおいて既に特別な製造ステップで形成される、多層の大径管が周知である。但しこの方式の場合、多数の用途に関して材料の選択範囲が狭く設定されている。
【0009】
本発明の根底を成す課題は、複数の異なる要求に対して改良された適合手段を生ぜしめる、冒頭で述べた形式の多層の大径管を製造する方法を提供することにある。
【0010】
この課題は、請求項1記載の特徴及び択一的には請求項2記載の特徴により解決される。
【0011】
請求項1記載の方法は、
支持金属薄板から曲げられた又はシームレスの(閉じられた壁を有する)波形の内管であって、該波形の内管は、大径管の長手方向軸線に対して横方向に延在する、連続的に丸み付けられた波形輪郭を有しており、該波形輪郭は、前記波形の内管の全長にわたって連続して延びる複数の波谷と複数の波山とを備えており、前記波形の内管の最大外径は、(やはり閉じられた壁を有する)外管の内径よりも小さくなっている、波形の内管を用意するステップ、
前記波形の内管を、前記外管に挿入するステップ、
半径方向外向きに作用する拡張力を用いて、前記波形の内管が少なくともほぼ円形状を取ると共に前記拡張力の解消後に前記外管に当接するまで、前記波形の内管を拡開し、次いで応力緩和により、前記内管を前記外管内に摩擦接続的に締め込むステップ、
という、連続した方法ステップを有している。
【0012】
請求項2記載の方法は、
担体層用の、所定の初期曲げ半径に予め曲げられた担体金属薄板と、製造すべき大径管の長手方向軸線に対して横方向に延在する、連続して丸み付けられた波形輪郭が、製造すべき内管の全長にわたって連続して延びる複数の波谷と波山とを備えて加工成形された又はされる、所定の初期曲げ半径に予め曲げられた少なくとも1つの支持金属薄板とを用意するステップ、
担体層と、少なくとも1つの波形の支持層とを形成するために、前記担体金属薄板の内側に、予め曲げられて波形輪郭を備えた前記少なくとも1つの支持金属薄板を載置して位置決めし、且つ前記大径管の長手方向軸線の方向に延在する各長辺をそれぞれ平行に向けるステップ、
前記波形輪郭を備えた前記少なくとも1つの支持金属薄板の少なくとも両長辺を、前記担体金属薄板と材料接続的に結合するステップ、
材料接続的に結合された前記担体層と前記少なくとも1つの波形の支持層とから成る複合体を加工成形して、(スリットが設けられた)外管と(スリットが設けられた)波形の内管とを有する、スリットが設けられた多層の大径管を形成するステップ、
スリットが設けられた前記大径管のギャップを縦シーム溶接により閉じるステップ、
半径方向外向きに作用する拡張力を用いて、前記波形の内管が少なくともほぼ円形状を取ると共に前記拡張力の解消後に前記外管に当接するまで、前記波形の内管を拡開し、次いで応力緩和により、前記内管を前記外管内に摩擦接続的に締め込むステップ、
という、連続した方法ステップを有している。
【0013】
「ほぼ円形状」という記載に基づき、周輪郭にはある程度の波形が残留することも含まれるが、この波形の残留はいずれにしろ、初期波形(内管の肉厚よりも小さな比較的小さい振幅)より大幅に少なく、拡張力解消後に外管に対する当接を生ぜしめるものである。
【0014】
一般に、外管若しくは担体管は、内管よりもはるかに(何倍も)厚肉である。外管は、好適には炭素鋼から成っている。
【0015】
外管若しくは担体管は、内側からの高い機械的荷重(内圧)と、外側からの高い機械的荷重(例えば深海での使用、地滑り、地震における外圧)とに耐える。
【0016】
内管は、搬送される腐食性媒体に耐えねばならない。これらの機能を果たすために、内管も外管も、周面が完全に閉じられた密な周壁を形成する必要があり、このことは、閉じられた内管と、閉じられた外管とにより保証される。
【0017】
連続的に延在する丸み若しくは湾曲部を備えた、周方向に延在する波形輪郭が、選択された内管若しくは支持金属薄板の全長にわたり、例えば製造すべき大径管の長手方向軸線に対して平行に又は前記大径管の長手方向に螺旋状に連続して延在する複数の凹凸を有していることに基づき、外管と内管との間で極めて多様な材料の組合せを選択することができる。それというのも、波構造の賦形若しくは型押しに基づいて、外管と内管とで異なる材料の極めて異なる拡張特性と圧縮特性とを考慮することができるからである。このこともやはり、例えば大径管の異なる使用条件、又は管を通して案内しようとする異なる物質等の、複数の異なる要求に対する多数の様々な適合手段を可能にする。この場合、複数の管を現場で互いに接続して、より長い1本の導管を形成して初めて、拡開と後続の応力緩和とが実施されることも考えられる。例えば導管試験ではいずれにせよ、運転圧よりも高い圧力が供給されるので、前記のような拡張力を現場で提供することができる。
【0018】
応力緩和後に生じる安定的な摩擦接続的な結合は、拡張時に内管が変形され且つ圧縮されること、即ち圧縮応力を加えられることによるものであり、この場合、外管はまだ弾性域にあり、引っ張り応力が加えられた状態のままであってよい。このことは特に、拡張若しくは拡開が、既に外側からコーティングされた管において行われる場合に有利である。なぜならば、この場合は外側コーティングを損傷する恐れのある、外管捕捉用のアウターダイが不要だからである。外管は、塑性域にまで拡張されてよいが、そうでなくとも構わない。
【0019】
波形輪郭を加工成形して、縦溶接又は螺旋状に溶接された、又はシームレスの管体を仕上げる、複数の可能な方式がある。
【0020】
更に、既に平らな初期状態において支持金属薄板に波形輪郭を加工成形する、有利な方式がある。
【0021】
外管と内管との間の固い摩擦接続的な結合は、拡開前の非拡張状態で、内管を外側から包囲している最小の円の円周を上回る、周方向に測定した波形の内管の外周長を選択し、且つこの外周長を最大でも、拡開後に拡張力が解消されても内管のひだ形成が生じない程度の大きさに選択することによって達成される。この場合(請求項4参照)、前記円という概念は、厳密に数学的に理解されるものではなく、実際の製造において生じる真円度、特に波山(最大部)の周りの包囲体を形成する楕円率をも含むものとする。波形の内管の外周長(全周)と外管の内周長(全周)との調整は、個々のケースにおいて所望の相手材料と、厚さ、直径等の幾何学的な寸法とに応じて適宜に選択されてよい。検査では、波形の内管の外周長が、外管の内周長より僅かに短くても、安定した摩擦接続的な結合は達成可能である、ということが判った。
【0022】
大径管の製造に有利な1つの手段は、拡開前に、例えば内外にセットする前に既に、外管及び内管を縦シーム溶接により閉じる、という点にある。
【0023】
製造プロセスにおける1つの有利な方式は、支持金属薄板又は波形の内管の長さを、最大でも外管の長さと同じ程度に選択し、拡開前に、まず波形の内管の端部部分だけを外管の内周面まで拡張させ、端面側で外管と材料接続的に結合させる、という点にある。
【0024】
高価値な管特性を得るための別の有利な手段は、波形の内管の長さが外管よりも短い場合に、外管の内周面に残された1つ又は複数の露出部分に被着層を設ける、という点にある。
【0025】
様々な別の有利な製造バリエーションは、拡開前又は拡開後に、大径管の外側に熱処理による防食を施すことによって得られる。両方のケースにおいて、内管と外管との間の安定した摩擦接続的な結合が達成され、この場合は、防食施与後に内管を拡張することにより、結合力に対する、防食コーティング時の温度上昇のネガティブな影響が排除されることになる、という付加的な重要な利点がもたらされる。
【0026】
大径管を製造するための種々様々な別の有利な手段は、拡開用の拡張力を、機械式又は液圧式のエキスパンダを用いてもたらす、という点にある。
【0027】
確実な摩擦接続式の結合を保証するためには更に、拡開前に真空ポンプを用いて、波形の内管と外管との間の中空室から空気を抜く、という手段が有利である。
【0028】
結合力を更に高めるためには、(例えば拡張力が加えられる前又は加えられている最中の適当な時点において)外管と内管との間に接着剤層を被着し、拡開中又は拡開後に硬化させてよい。
【0029】
以下に、本発明を図面に関する複数の実施例に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】閉じられた波形の内管が挿入された、閉じられた外管の拡開前の正面図である。
【
図2】閉じられた波形の内管の、外管への挿入を具体的に示す斜視図である。
【
図3】波形の内管が挿入された外管の端部部分を部分的に断面して、2つの相手管の端部側の結合と、被着層(被覆層、合金層)による外管の残留端部側部分のライニングとを一緒に示す側面図である。
【
図4A】閉じられた波形の内管が挿入されており、拡開時の拡張力(半径方向外向きの矢印)を具体的に示す、閉じられた外管の正面図である。
【
図4B】挿入された波形の内管を円形に拡開した後の、外管の正面図である。
【
図5】従来技術による2層の大径管の製造を、アウターダイにおける拡開プロセスの様々なステップで示す図である。
【
図6】従来技術による2層の大径管の製造を説明する、冒頭で述べたような応力・伸び線図である。
【0031】
図1〜
図4には、多層の、本発明では2層の大径管の製造における主要な方法ステップが、好適な実施例に基づき具体的に示されている。大径管とは、少なくとも150mmの直径と、少なくとも5mmの総肉厚とを有する管を意味する。大径管の多層の壁を形成する少なくとも2つの層は、第1及び第2の(及び場合によっては更なる)金属薄板から成り、これらの金属薄板は、製造時に主に摩擦接続的に結合されて、閉じられた外管(担体管)と内管(支持管、ライナ)とから成る安定的な複合体を形成する。2つの相手管の材料接続的な結合は、例えば大径管の両端部に生ぜしめられる。外管の肉厚は明らかに、大抵の用途において内管の肉厚よりも複数倍大きくなっている。好適には、外管は炭素鋼から成っている。内管は、例えば有利にはオーステナイト材料、例えばステンレス鋼316L等から成っている。しかしながら、異なる複数の要求に適合するように、特に内管用には種々様々な金属材料が考慮される。多層の大径管を製造する当該方法は、連続する複数の方法ステップを有している。
【0032】
前記各相手管(外管及び内管)は、図示の実施例では閉じられた管の形態で存在しており、この段階では、外管1は円形の外管1として成形されており、内管は、波形の内管20として、管長手方向軸線に対して横方向に延びる波形輪郭22を備えて成形されており、波形輪郭22は、連続的に丸み付けられ且つ互いに連続的に移行する複数の波谷21と波山23とを有しており、波谷21と波山23とは、製造されるべき大径管の長手方向伸長長さに関して、波形の内管20の全長にわたり、例えば内管の長手方向軸線に対して平行に延在しているか、又は螺旋状に連続して延在している。波形輪郭は、例えば同じ又は異なる幅の波谷と波山、異なる空間周波数(単位長さ毎の数)及び/又は異なる波高さ(振幅)を備えて異なって成形されていてもよく、これにより、各相手管の拡張力及び結合力にも影響を及ぼすことができる。波形の内管20を外管1に問題無く挿入することができるようにするためには、
図1に示すように、内管の最大外径OD
Lは、外管1の内径ID
Tよりも小さくなっている。
【0033】
波形の内管20は幾何学的に、その外周長Li(全周)が、直径OD
Lを有する包囲円の周長(全周)よりも大きくなるように成形されている。この場合、直径OD
Lは、波形の内管を包囲している最小の円の直径を意味する。この場合好適には、外周長Liは少なくとも、外管1の内周長Loと同じ長さである。
【0034】
波形の内管20の成形は、例えば波形の内管20を円形に加工成形する前に、既に内管20用に予定された平らな、又は比較的大きな曲げ半径を有するように予め曲げられた金属薄板(支持金属薄板)に、相応の凹凸を付けることにより実施可能であり、その後、波形輪郭を付与された支持金属薄板は、波形の内管を形成するように曲げられて、縦シーム溶接により周方向において完全に閉じられる。
【0035】
外管1は、例えば平らな金属薄板(担体金属薄板)から円形管を形成するように曲げられ、やはり縦溶接シームにより周方向において完全に閉じられる。
【0036】
但し本発明の実施に関して一般に、複合管の製造前の外管1及び/又は内管用の管体は、(縦シームで又はスパイラル状に)溶接された管体、又はシームレスの管体として、任意の組合せで存在していてよい。
【0037】
図2に示すように、波形の内管20は、円形の外管1に挿入される。波形の内管20の長さは、外管1の長さよりも短くてよいので、
図3に示すように、外管1は、一方又は両方の端部部分において、波形の内管20から突出している。内管20の両端部は、(これは外管1と波形の内管20とが同じ長さである場合にも当てはまることだが)エキスパンダによって広げられて外管1に圧着され、このようにして広げられた内管20の両端面は、結合シーム3を介して外管1と材料接続的に結合され、このためには例えば溶融溶接が用いられる。
【0038】
別のステップにおいて、波形の若しくは拡開された内管によりカバーされていない、外管1の一方若しくは両方の端部部分の残りの長さに、被着層3(合金層、被覆層)が設けられ、これにより外管1の内側は隙間無く、関連する要求に適合された支持層(機能層)により保護されている。
【0039】
図4Aに具体的に示すように、次のステップでは波形の内管20が、
図4Bに示す円形状を取り且つ外管1内に締め込まれるまで、(半径方向外向きの矢印に相当する)所定の拡張力で以て半径方向に拡張される。円形状に達するまで波形の内管20を拡開し、延いては内管2を、場合によっては更に外管1と一緒に形成するこのステップは、大径管の外側を防食コーティングする前又は後に実施されてよい。防食コーティングを終了し且つ管とその相手管とを周辺温度に冷却してから内管20の拡開が行われると、双方の相手管の間の結合力に対する、(最高270℃のピーク値に到達することがある)コーティング時の温度上昇のネガティブな影響が排除され、これにより、機械的に被覆された多層管(ライナ管)を製造する従来法に対する、本発明の1つの重要な利点が得られる。
【0040】
波形の内管20を拡開し、場合によっては引き続いて外管1を拡開した後では拡張力が減少し、これにより各相手管の応力が緩和されると共に、内管2及び外管1として機能する各材料層間に、摩擦接続的な結合が生じる。この摩擦接続的な結合は、内管2が拡開時に変形されて少なくとも部分的に(いくつかの部分において)圧縮される、即ち圧縮応力が加えられることによって生ぜしめられ、このとき外管1はまだ、弾性域内で引っ張り応力が加えられた状態のままであってよい。このことは、既に防食手段を形成するコーティングが外側から施された管において拡開が行われる場合に、特別な利点を提供する。なぜならば、この場合は外管1を捕捉するためのアウターダイが必要無いので、外側コーティングが損傷される恐れもないからである。外管1も同様に塑性域にまで拡張されてよいが、拡張されなくとも構わない。
【0041】
拡張力が取り除かれた後の外管1の跳ね戻りは内側に向けられており、この場合、内管2の累積的な跳ね戻りは大幅に小さく内側又はそれどころか外側に向けられてよい。跳ね戻りは、波形の内管20の外周長Liが、外管1の内周長Loよりも大きく選択されている場合に、外側に向けられる。
【0042】
波形の内管20及び場合によっては外管1の拡開は、例えば機械式又は液圧式のエキスパンダ等の、機械装置によって行われてよい。例えば電磁式、空圧式、又は爆発式に作用する装置等による、別の拡開(拡張)形式もやはり考えられる。本発明の1つの好適な構成において、波形の内管20の拡開は、場合によっては外管1と共に、内側から作用する押圧力によって行われ、このためには冷水試験機が有利に利用され得る。
【0043】
付加的な方法ステップにおいて、波形の内管20の拡張時に圧縮されるべき空気の抵抗を最小限に抑え、延いては拡開後又は応力緩和後に、双方の相手管のより良好な結合を達成するために、拡開前の双方の相手管の間の中空室から、真空ポンプを用いて空気を抜くことができる。
【0044】
付加的に、波形の内管20の外側及び/又は外管1の内側に、部分的又は全面的に接着剤層を設けることができ、この接着剤層は、各相手管の拡開後又は応力緩和後に硬化させられる。接着剤層は、摩擦接続的な結合に加えて付加的に、双方の相手管の間の結合力を高める。
【0045】
また、本発明の1つの重要な特徴は、波形の内管20の外周長Liが、外管1の内周長Loより大きくてもよい、という点である。内周長Loと外周長Liとの差が大きい程、各相手管の摩擦接続的な結合に際して生じる圧着力が高くなる。他方において、外管1内での波形の内管20から円形の内管2への加工成形が、実際でもひだ形成を生じることなく行われることに基づいて、外周長Liは制限されている。最小及び最大外周長Liに関するこの条件は、材料特性と、幾何学的な特性とに左右され、これらのパラメータの選択に応じて、各ケースにおける外管1の前記パラメータと組み合わされて、例えば計算によって求め且つ最適化することができ、これにより、複数の異なる使用条件に対する多様な適合手段が得られる。
【0046】
ライナの累積的な圧縮度ε(即ち周及び肉厚にわたって平均した変形)は、以下の式で見積もることができる。
【0047】
【数1】
【0048】
この場合、Li及び
【数2】
は、拡開前及び拡開後のライナの外周長である。拡開後のライナの外周長
【数3】
は、以下の関係式
【数4】
に従って、拡開後の外管の外径
【数5】
に相関しており、この場合、WT
Tは、外管1の肉厚を表す。
【0049】
【数6】
という条件下では、波形の内管20若しくはライナが、拡開時にその降伏点とは関係無く、周方向に累積する圧縮応力を加えられた後に、外管1がその降伏点に到達する。このことは、それぞれの降伏点に左右されない、外管1と内管2の様々な材料の組合せを用いることを可能にする。このことは冒頭で述べたように、従来の製造法に対する1つの重要な利点である。
【0050】
本発明の別の重要な特徴は、波形の内管20を拡開若しくは拡張させるためには、例えば冷水試験機による、外管1に対する降伏荷重よりも小さな押圧力で足りる、という点にあり、この点で本発明の技術は、公知のハイドロフォーミング技術とは基本的に相違している。
図5及び
図6に示す従来の方式では一般に、外管を降伏させる押圧力が用いられるので、制御できない拡張や破断から管を保護するために、アウターダイが必要である。
【0051】
外側に防食コーティングを施した後の、好適には冷水試験機を用いた内管の拡開は、摩擦接続的な結合の損失を一切生じないので、上述したようにこの点において、公知の方式に対する別の重要な利点が見られる。
【0052】
本発明による原理を用いた多層の、特に2層の管の製造に関する別の実施例は、前掲の独国特許発明第102013103811号明細書(DE 10 2013 103 811 B3)において教示された多層の大径管の製造方式の改良であり、この場合、所定の初期曲げ半径に予め曲げられた担体金属薄板と、所定の初期曲げ半径に予め曲げられた支持金属薄板とが、支持金属薄板の長辺に沿って互いに溶接される。先行実施例に関連して説明したように、連続的に丸み付けられた波形輪郭を有する支持金属薄板の使用に基づき、まず最初に、予め曲げられた担体金属薄板と、予め曲げられた支持金属薄板とから成る複合体が製造されてよく、このとき予め曲げられた支持金属薄板には事前に波形輪郭が設けられた。次いで予め曲げられた波形の支持金属薄板を、その長辺に沿って、予め曲げられた担体金属薄板に溶接してから曲げて、円形横断面を有する1つの閉じられた複合管を形成すると共に、縦シーム溶接を用いて完全に閉じる。次いで、材料接続的に結合されていない領域に摩擦接続的な結合を生ぜしめるために、上述した拡開の方法ステップを相応に実施することができる。このようにして同様に、内管2と外管1との間が安定的に結合された多層の、特に二層の大径管が得られる。この方式では、予め曲げられた単一の支持金属薄板の代わりに、波形輪郭を備えた、予め曲げられた複数の支持面が周方向において互いに隣接するようにして、予め曲げられた担体金属薄板と材料接続的に結合されることが想定されていてもよく、その後、丸み付けられた複合管の成形と、引き続く別のステップとが、縦シーム溶接、波形の内管と場合によっては外管1の拡開、並びに摩擦接続的な結合を生ぜしめる応力緩和で以て行われる。
【0053】
波形輪郭を有する内管を用いて摩擦接続的な結合を生ぜしめる前記手段により、各相手管の間の摩擦接続的な結合を、公知の方法に比べてより低い押圧力において既に生ぜしめることができる。内管と外管の各降伏点の関係とは無関係に、外管1内で波形の内管20を拡開することにより、各相手管の間に摩擦接続的な結合を生ぜしめる可能性は、ライナの降伏点を、外管1の降伏点より小さくも大きくも選択することができる、という利点をもたらす。このこともやはり、内管2用に拡大された範囲の材料を使用することを可能にし、延いては異なる複数の要求に対して改善された適合手段をもたらすことになる。冶金学的に被覆されたクラッド管に比べて大幅に廉価な製造手段が得られ、この場合他方では、例えば高度に炭素を含有する耐摩耗性の鋼や、高耐食性であると同時に高強度の混粒鋼等の、より幅広い多彩な材料が提供される。大径管の両材料層は(一緒に圧延せねばならない、冶金学的に被覆される金属薄板とは異なり)互いに独立して製造されるので、各相手材料の製造は、目標とする機械的な特性及び/又は腐食特性に関して最適化され得る。別の利点は、例えば冶金学的に被覆された又は爆発圧接された金属薄板との比較における、各材料層用の各金属薄板のより幅広い供給性と、より短い納期である。