特許第6377795号(P6377795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6377795
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】エレベータの乗車検知システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/26 20060101AFI20180813BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20180813BHJP
   B66B 13/14 20060101ALI20180813BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B66B13/26 F
   B66B3/00 M
   B66B13/14 M
   B66B11/02 P
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-58763(P2017-58763)
(22)【出願日】2017年3月24日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 厚太
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6046286(JP,B1)
【文献】 特許第6092433(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
B66B 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごが乗場に到着したときに、前記乗りかごのドア付近から前記乗場の方向に向けて所定の範囲を撮影可能な撮像手段と、
前記撮像手段により撮影された画像を用いて前記乗場の三方枠を検出し、前記三方枠に基づいて検知エリアを設定する検知エリア設定手段と、
前記撮像手段によって撮影された時系列的に連続した複数枚の画像を用いて、前記検知エリア内で人・物の動きに着目して乗車意思のある利用者の有無を検知する利用者検知手段と、
前記利用者検知手段の検知結果に基づいて前記ドアの開閉動作を制御する制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの乗車検知システム。
【請求項2】
前記検知エリア設定手段は、前記三方枠を構成する3つの枠のうちの左右の枠の地面に接する建物壁面側の角を検出し、前記角を含む前記検知エリアを設定する
ことを特徴とする請求項1記載のエレベータの乗車検知システム。
【請求項3】
前記検知エリア設定手段は、前記三方枠を構成する3つの枠のうちの左右の枠の内側面の傾斜を検出し、前記傾斜に基づいて前記検知エリアの境界を設定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエレベータの乗車検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗りかごに乗車する利用者を検知するエレベータの乗車検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、エレベータの乗りかごが乗場に到着して戸開すると、所定時間経過後に戸閉して出発する。その際、エレベータの利用者は乗りかごがいつ戸閉するか分からないため、乗場から乗りかごに乗車するときに戸閉途中のドアにぶつかることがある。
【0003】
このような乗車時における利用者とドアとの衝突を回避するため、乗りかごの上方に取り付けられたカメラなどにより利用者を検知し、ドアの開閉制御に反映させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5201826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乗りかごに取り付けられたカメラによる利用者の検知範囲は物件ごとにあらかじめ固定され、全ての階床で共通している。しかしながら、物件によっては、各階床で乗場の仕様が異なることがあり、検知精度にばらつきが生じることがあった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、階床ごとに乗場の仕様が異なる場合でも、最適な検知範囲を設定して、利用者を正しく検知することのできるエレベータの乗車検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータの乗車検知システムは、乗りかごが乗場に到着したときに、前記乗りかごのドア付近から前記乗場の方向に向けて所定の範囲を撮影可能な撮像手段と、前記撮像手段により撮影された画像を用いて前記乗場の三方枠の形状を検出し、前記三方枠の形状に基づいて検知エリアを設定する検知エリア設定手段と、前記撮像手段によって撮影された時系列的に連続した複数枚の画像を用いて、前記検知エリア内で人・物の動きに着目して乗車意思のある利用者の有無を検知する利用者検知手段と、前記利用者検知手段の検知結果に基づいて前記ドアの開閉動作を制御する制御手段とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は一実施形態に係るエレベータの乗車検知システムの構成を示す図である。
図2図2は同実施形態に係るエレベータの三方枠を説明するための図である。
図3図3は同実施形態におけるカメラによって撮影された画像の一例を示す図である。
図4図4は同実施形態における実空間での検知エリアを説明するための図である。
図5図5は同実施形態における検知エリアのずれを説明するための図である。
図6図6は同実施形態における検知エリア設定処理の流れを例示するフローチャートである。
図7図7は同実施形態における検知エリア設定部による三方枠の検出例を示す図である。
図8図8は同実施形態における検知エリア設定部による検知エリアの設定例を示す図である。
図9図9は同実施形態における全体の処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1は、一実施形態に係るエレベータの乗車検知システム1の構成を示す図である。なお、ここでは、1台の乗りかごを例にして説明するが、複数台の乗りかごでも同様の構成である。
【0010】
乗りかご11の出入口上部にカメラ12が設置されている。具体的には、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中にカメラ12のレンズ部分を乗場15側に向けて設置されている。カメラ12は、例えば車載カメラなどの小型の監視用カメラであり、広角レンズを有し、1秒間に数コマ(例えば30コマ/秒)の画像を連続撮影可能である。乗りかご11が各階に到着して戸開したときに、乗場15の状態を乗りかご11内のかごドア13付近の状態を含めて撮影する。
【0011】
このときの撮影範囲は縦幅L1+縦幅L2に調整されている(縦幅L1≫縦幅L2)。縦幅L1は乗場15側の撮影範囲であり、かごドア13から乗場15に向けて例えば3mである。縦幅L2はかご側の撮影範囲であり、かごドア13からかご背面に向けて例えば50cmである。なお、縦幅L1、縦幅L2は奥行き方向の範囲である。幅方向(奥行き方向と直交する方向)の撮影範囲は、少なくとも乗りかご11の横幅より大きいものとする。
【0012】
なお、各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明において、かごドア13を戸開しているときには乗場ドア14も戸開しており、かごドア13を戸閉しているときには乗場ドア14も戸閉しているものとする。
【0013】
カメラ12によって撮影された各画像(映像)は、画像処理装置20によってリアルタイムに解析処理される。なお、図1では、便宜的に画像処理装置20を乗りかご11から取り出して示しているが、実際には画像処理装置20はカメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。
【0014】
ここで、画像処理装置20には、記憶部21と利用者検知部22が備えられている。記憶部21は、カメラ12によって撮影された画像を逐次保存すると共に、利用者検知部22の処理に必要なデータを一時的に保持しておくためのバッファエリアを有する。利用者検知部22は、カメラ12によって撮影された時系列的に連続した複数枚の画像の中でかごドア13に最も近い人・物の動きに着目して乗車意思のある利用者の有無を検知する。
【0015】
この利用者検知部22を機能的に分けると、検知エリア設定部22a、動き検知部22b、位置推定部22c、乗車意思推定部22dで構成される。
【0016】
検知エリア設定部22aは、カメラ12によって撮影された画像に検知エリアを設定する。本実施形態において、検知エリアは、階床ごとに乗場ドア14の三方枠の形状に基づいて決定される。三方枠の詳細については、図2で説明する。
【0017】
動き検知部22bは、例えば検知エリア内を一定の大きさのブロック単位に分割し、このブロック単位で各画像の輝度を比較して人・物の動きを検知する。ここで言う「人・物の動き」とは、乗場15の人物や車椅子等の移動体の動きのことである。
【0018】
位置推定部22cは、動き検知部22bによって画像毎に検知された動きありのブロックの中からかごドア13に最も近いブロックを抽出し、当該ブロックを利用者の足元位置として推定する。乗車意思推定部22dは、位置推定部22cによって推定された利用者の足元位置の時系列変化に基づいて当該利用者の乗車意思の有無を判定する。
【0019】
なお、これらの機能(検知エリア設定部22a、動き検知部22b、位置推定部22c、乗車意思推定部22d)はカメラ12に設けられていてもよいし、かご制御装置30に設けられていてもよい。
【0020】
かご制御装置30は、図示せぬエレベータ制御装置に接続され、このエレベータ制御装置との間で乗場呼びやかご呼びなどの各種信号を送受信する。なお、「乗場呼び」とは、各階の乗場15に設置された図示せぬ乗場呼び釦の操作により登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。「かご呼び」とは、乗りかご11のかご室内に設けられた図示せぬ行先呼び釦の操作により登録される呼びの信号のことであり、行き先階の情報を含む。
【0021】
また、かご制御装置30は、戸開閉制御部31を備える。戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときのかごドア13の戸開閉を制御する。詳しくは、戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときにかごドア13を戸開し、所定時間経過後に戸閉する。ただし、かごドア13の戸開中に画像処理装置20の利用者検知部22によって乗車意思のある人物が検知された場合には、戸開閉制御部31は、かごドア13の戸閉動作を禁止して戸開状態を維持する。
【0022】
図2は、エレベータの三方枠を説明するための図である。より具体的には、図2は、エレベータを乗り場15側から見た図である。
【0023】
三方枠は、乗場ドア14の周囲に配置される枠であり、乗りかご11側から見て左手(乗場15側から見て右手)に存在する左枠16A、乗場15の上方に存在する上枠16B、及び、乗りかご11から見て右手(乗場15側から見て左手)に存在する右枠16Cの3つの枠より構成される。左枠16A及び右枠16Cは、建物の壁面Wに接触する。
【0024】
左枠16Aの地面に接する壁面W側の角を、左角Clとする。同様に、右枠16Cの地面に接する壁面W側の角を、右角Crとする。
【0025】
また、左枠16Aの内側面が乗場15に接する辺を左斜辺Hlとする。同様に、右枠16Cの内側面が乗場15に接する辺を右斜辺Hrとする。
【0026】
図3は、カメラ12によって撮影された画像の一例を示す図である。カメラ12によって撮影された画像には、三方枠の左枠16A、右枠16C、左角Cl、右角Cr、左斜辺Hl、右斜辺Hrが映る。また、当該画像は、検知エリアE0を含む。ynは利用者の足元位置のY座標である。以下では、かごドア13は両開きとし、カメラ12はかごドア13の中央に取り付けられるとする。また、Y座標軸は、かごドア13の中心を原点とし、かごドア13に垂直に、乗場15の方向へ延びる座標軸である。
【0027】
カメラ12は乗りかご11の出入口上部に設置されている。したがって、乗りかご11が乗場15で戸開したときに、乗場15側の所定範囲(縦幅L1)と乗りかご11内の所定範囲(縦幅L2)が撮影される。ここで、カメラ12を利用することにより広い検知範囲が得られ、乗りかご11から少し離れた場所にいる利用者を検知可能である。しかし、その一方で、乗場15を通過しただけの人物(乗りかご11に乗車しない人物)を誤検知して、かごドア13を開いてしまう可能性がある。
【0028】
なお、かごドア13は片開きであってもよい。この場合、カメラ12の設置位置は、戸当たり部側に寄せて取り付けられることが好ましい。また、Y座標軸の原点は、カメラ12の設置位置に応じて柔軟に変更可能である。
【0029】
図4は、実空間での検知エリアを説明するための図である。図4では、階床F1における検知エリアE0を例示する。
【0030】
本システムでは、上述のように、検知エリア設定部22aがカメラ12で撮影した画像の中に検知エリアE0を設定する。次に、動き検知部22bは、この検知エリアを一定サイズのブロックに区切り、人・物の動きがあるブロックを検知する。そして、位置推定部22c及び乗車意思推定部22dは、その動きありのブロックを追うことで乗車意思のある利用者であるか否かを判断する構成としている。
【0031】
動き検知部22bは、撮影画像から乗車意思のある利用者の動きを検知するため、まず、ブロック毎に動き検知エリアを設定する。具体的には、図4に示すように、少なくとも位置推定エリアE1と乗車意思推定エリアE2が設定される。
【0032】
位置推定エリアE1は、乗場15からかごドア13に向かってくる利用者の身体の一部、具体的には利用者の足元位置を推定するエリアである。位置推定エリアE1は、上述の検知エリアE0と同じであることが好ましい。
【0033】
乗車意思推定エリアE2は、位置推定エリアE1で検知された利用者に乗車意思があるか否かを推定するエリアである。なお、乗車意思推定エリアE2は、上記位置推定エリアE1に含まれ、利用者の足元位置を推定するエリアでもある。すなわち、乗車意思推定エリアE2では、利用者の足元位置を推定すると共に当該利用者の乗車意思を推定する。
【0034】
実空間において、検知エリアE0は、かごドア13の中心から乗場15に向かって縦幅L3の距離を有する。縦幅L3は、例えば2mに設定されている(縦幅L3≦縦幅L1)。検知エリアE0の横幅W1は、かごドア13の横幅W0以上の距離に設定されている。また、検知エリアE0において、図4に示すように、三方枠の左角Clを基準とする左視野角θa及び三方枠の右角Crを基準とする右視野角θbが設定される。より具体的には、検知エリアE0は、三方枠の左角Clを含みY軸と左視野角θaをなす直線B1a、及び三方枠の右角Crを含みY軸と右視野角θbをなす直線B1bを境界とする。左視野角θa及び右視野角θbは、例えば45度である。なお、通常左視野角θa及び右視野角θbの値は同じである、すなわち、検知エリアE0は左右対称に設定されることが好ましい。しかしながら、例えば乗場15に設置された障害物の有無、乗場15の形状などに応じて、検知エリアE0は左右非対称に設定されてもよい。
【0035】
乗車意思推定エリアE2はかごドア13の中心から乗場15に向かって縦幅L4の距離を有する。縦幅L4は、例えば1mに設定されている(縦幅L4≦縦幅L3)。乗車意思推定エリアE2の横幅W2は、かごドア13の横幅W0と略同じ距離に設定されている。なお、乗車意思推定エリアE2の横幅W2は横幅W0より大きくてもよい。また、乗車意思推定エリアE2は実空間で長方形ではなく、検知エリアE0及び位置推定エリアE1と同様に、左視野角θa及び右視野角θbに応じてY軸方向に広がる形状でもよい。
【0036】
なお、本実施形態においては、乗車意思推定エリアE2は、エレベータの近接検知エリアを含む。しかしながら、乗車意思推定エリアE2は、近接検知エリアを除くエリアとして設定されてもよい。近接検知エリアは、カメラ12により撮影された画像に対する画像処理又は近接スイッチなどのセンサにより、かごドア13又は乗場ドア14に近接する障害物を検知可能なエリアである。
【0037】
図5は、検知エリアのずれを説明するための図である。例えば、図4に示す階床F1の検知エリアE0をエレベータの乗車検知システム1に設定し、他の階床においてもこの検知エリアE0を共通で用いるとする。
【0038】
ここで、図5に示す階床F2においては、三方枠の形状が図4の階床F1の三方枠と異なり、三方枠の右角Cr及び左角Clがより乗場ドア14に近い位置にある。すなわち、階床F2の正しい検知エリアE0_Bは、直線B2a及び直線B2bを境界とする領域である。
【0039】
ここで、階床F2に検知エリアE0を用いると、直線B1aと直線B2a及び直線B1bと直線B2bで囲まれる領域Aは検知エリアE0に含まれないため、この領域Aを通ってエレベータに近づく人・物が正しく検出されない。したがって、階床ごとに最適な検知エリアが設定されることが好ましい。
【0040】
以下、図6乃至図8を用いて、検知エリア設定部22aによる検知エリアE0の設定処理について説明する。
図6は、検知エリア設定処理の流れを例示するフローチャートである。図6のステップS101,S102について、図7と共に説明する。図7は、検知エリア設定部22aによる三方枠の検出例を示す図である。
【0041】
まず、検知エリア設定部22aは、三方枠の左角Cl及び右角Crを検出する(ステップS101)。三方枠の左角Cl及び右角Crの検出方法は、カメラ12により撮影された画像に対して例えばエッジ検出、コーナー検出などの画像処理を行う方法などが挙げられる。又は、左角Cl及び右角Crは、三方枠の左角Cl及び右角Crにあらかじめマーカーを置いておき、これらのマーカーをカメラ12により撮影した画像を用いて、画像処理により検出されてもよい。
【0042】
なお、三方枠の形状が複雑であり、複数の左角Cl又は右角Crが検出された場合は、乗場ドア14より最も離れた左角Cl及び右角Crを保持することが好ましい。
【0043】
次に、検知エリア設定部22aは、乗場ドア14から左角Clに伸びる左斜辺Hlの傾斜を表す傾きθl、及び、乗場ドア14から右角Crに伸びる右斜辺Hrの傾斜を表す傾きθrを算出する(ステップS102)。
【0044】
図6のステップS103〜S105について、図8と共に説明する。図8は、検知エリア設定部22aによる検知エリアE0の設定例を示す図である。
【0045】
検知エリア設定部22aは、傾きθl、傾きθrにより、左視野角θa及び右視野角θbを決定する(ステップS103)。ここでは、左視野角θaは左斜辺Hlの傾きθlと等しく、右視野角θbは、右斜辺Hrの傾きθrと等しいものとする。すなわち、検知エリアE0の境界の一つである左視野角θaの傾きを持つ直線B3aは、左斜辺Hlを乗場15に向かって延長した直線であり、検知エリアE0の他の境界である右視野角θbの傾きを持つ直線B3bは、右斜辺Hrを乗場15に向かって延長した直線である。しかしながら、左視野角θaと傾きθl、及び右視野角θbと傾きθrは、それぞれ異なる値が設定されてもよい。例えば、左視野角θa(又は右視野角θb)の値を傾きθl(又は傾きθr)よりも大きくすることで、三方枠の左斜辺Hl(又は右斜辺Hr)よりも外側に開いた広範囲の検知エリアE0が得られる。
【0046】
そして、検知エリア設定部22aは、例えば、乗場ドア14の横幅W0、直線B3a、直線B3b、横幅W1及び縦幅L3で囲まれる領域を検知エリアE0とする(ステップS104)。また、位置推定エリアE1は、検知エリアE0と同じ領域であるとする。
【0047】
さらに、検知エリア設定部22aは、例えば、位置推定エリアE1のうち、乗場ドア14から縦幅L4までの領域を乗車意思推定エリアE2とする(ステップS105)。なお、乗車意思推定エリアE2の横幅W2は、あらかじめ定められていてもよい。この場合、乗車意思推定エリアE2は、上述の処理手順に従うことなく、例えば横幅W0及び横幅W2を下底及び上底とする台形として定められてもよい。
【0048】
上述のように、検知エリア設定部22aは、三方枠の形状に基づいて検知エリアE0、位置推定エリアE1、乗車意思推定エリアE2を設定可能である。
【0049】
なお、直線B3aは、左角Clを通らなくてもよく、例えば左角Clよりも外側にあってもよい。このことは、直線B3bについても同様である。また、検知エリアE0の境界である直線B3a及び直線B3bは、直線に限定されず、例えば曲線などでもよい。
【0050】
図9は、エレベータの乗車検知システム1の全体の処理の流れを示すフローチャートである。
【0051】
乗りかご11が任意の階の乗場15に到着すると(ステップS11のYes)、かご制御装置30は、かごドア13を戸開して乗りかご11に乗車する利用者を待つ(ステップS12)。
【0052】
このとき、乗りかご11の出入口上部に設置されたカメラ12によって乗場側の所定範囲(縦幅L1)とかご内の所定範囲(縦幅L2)が所定のフレームレート(例えば30コマ/秒)で撮影される。画像処理装置20は、カメラ12で撮影された画像を時系列で取得し、これらの画像を記憶部21に逐次保存する(ステップS13)。
【0053】
そして、利用者検知部22の検知エリア設定部22aは、乗りかご11が到着した階床の検知エリアE0が設定済でない場合に(ステップS14のNo)、検知エリア設定処理を実行する(ステップS15)。検知エリア設定処理は、図6乃至図8で説明済であるため、省略する。
【0054】
なお、ステップS15により設定した階床ごとの検知エリアE0を記憶部21に格納してもよい。これにより、検知エリア設定部22aは、以降同じ階床に到着した場合の検知エリアの算出を省略することができる。より具体的には、検知エリア設定部22aは、異なる階床に到着する毎にまず記憶部21を探索し、この階床の検知エリアE0が格納済であるか否かを探索する。この階床の検知エリアE0が格納済である場合は、検知エリア設定部22aは、ステップS15において、検知エリアE0を記憶部21より読み出して設定することにより、検知エリアE0の算出が不要となる。
【0055】
次に、画像処理装置20の利用者検知部22は、以下のような利用者検知処理をリアルタイムで実行する(ステップS16)。この利用者検知処理は、動き検知部22bが実行する動き検知処理(ステップS16−1)、位置推定部22cが実行する位置推定処理(ステップS16−2)、乗車意思推定部22dが行う乗車意思推定処理(ステップS16−3)に分けられる。
【0056】
まず、動き検知部22bは、記憶部21に格納された現在の画像と、一つ前の画像について、ブロック毎に分割して平均輝度値を算出し、比較する。その結果、現在の画像の中で予め設定された値以上の輝度差を有するブロックが存在した場合には、動き検知部22bは、当該ブロックを動きありのブロックとして判定する。
【0057】
以後同様にして、動き検知部22bは、カメラ12によって撮影された各画像の輝度値を時系列順にブロック単位で比較しながら動きの有無を判定することを繰り返す。
【0058】
次に、位置推定部22cは、動き検知部22bの検知結果に基づいて、現在の画像の中で動きありのブロックのうち、かごドア13に最も近いブロックを抽出する。そして、動き検知部22bは、このブロックのY座標を利用者の足元位置のデータとして求め、記憶部21に格納する。
【0059】
以後同様にして、位置推定部22cは、利用者の足元位置のデータを求め、記憶部21に格納する。なお、この足元位置の推定処理は、位置推定エリアE1内だけでなく、乗車意思推定エリアE2内でも同様に行われる。
【0060】
さらに、乗車意思推定部22dは、上記の位置推定処理により得られた利用者の足元位置のデータを平滑化する。なお、平滑化の方法としては、例えば平均値フィルタやカルマンフィルタなどの一般的に知られている方法を用いるものとし、ここではその詳しい説明を省略する。
【0061】
平滑化された足元位置のデータ系列において、変化量が所定値以上のデータが存在した場合、乗車意思推定部22dは、そのデータを外れ値として除外する。なお、上記所定値は、利用者の標準的な歩行速度と撮影画像のフレームレートによって決められる。また、乗車意思推定部22dは、足元位置のデータを平滑化する前に外れ値を見つけて除外してもよい。
【0062】
乗車意思推定処理の結果、乗車意思ありの利用者が検知されると(ステップS17のYes)、画像処理装置20からかご制御装置30に対して利用者検知信号が出力される。かご制御装置30は、この利用者検知信号を受信することによりかごドア13の戸閉動作を禁止して戸開状態を維持する(ステップS18)。
【0063】
詳しくは、かごドア13が全戸開状態になると、かご制御装置30は戸開時間のカウント動作を開始し、所定の時間T(例えば1分)分をカウントした時点で戸閉を行う。この間に乗車意思ありの利用者が検知され、利用者検知信号が送られてくると、かご制御装置30はカウント動作を停止してカウント値をクリアする。これにより、上記時間Tの間、かごドア13の戸開状態が維持されることになる。なお、この間に新たな乗車意思ありの利用者が検知されると、再度カウント値がクリアされ、上記時間Tの間、かごドア13の戸開状態が維持されることになる。このカウント値のクリアは、利用者を検知する毎に行われてもよく、又は、T分経過毎に行われてもよい。
【0064】
ただし、上記時間Tの間に何度も利用者が来てしまうと、かごドア13をいつまでも戸閉できない状況が続いてしまうので、許容時間Tx(例えば3分)を設けておき、この許容時間Txを経過した場合にかごドア13を強制的に戸閉することが好ましい。
【0065】
上記時間T分のカウント動作が終了すると(ステップS19)、かご制御装置30はかごドア13を戸閉し、乗りかご11を目的階に向けて出発させる(ステップS20)。
【0066】
このように本実施形態によれば、乗りかご11の出入口上部に設置したカメラ12によって乗場15を撮影した画像を解析することにより、例えば乗りかご11から少し離れた場所からかごドア13に向かって来る利用者を検知して戸開閉動作に反映させることができる。
【0067】
以上述べた本実施形態によれば、エレベータの乗車検知システム1は、エレベータ使用状態において、三方枠の左角Cl及び右角Crを自動で検出し、左角Cl及び右角Crより左視野角θa及び右視野角θbの検知エリアE0を設定する。また、エレベータの乗車検知システム1は、エレベータ使用状態において、三方枠の斜辺の傾き(傾きθl、傾きθr)に基づいた検知エリアE0を設定する。すなわち、階床ごとに三方枠の仕様が異なる場合でも、階床ごとに最適な検知エリアE0が設定される。これにより、階床ごとの検知性能のばらつきを抑えた安定性の高いエレベータの乗車検知システムが提供可能である。
【0068】
また、自動的に検知エリアE0が設定されるため、工場出荷時の仕様の確認及びエレベータ設置時の設定作業が不要となる。
【0069】
本実施形態においては、三方枠の斜辺の傾き(傾きθl、傾きθr)と検知エリアE0の視野角(左視野角θa、右視野角θb)とをそれぞれ異なる値(角度)に設定可能である。これにより、三方枠の形状に基づいて階床ごとに柔軟な検知エリアE0の設定が可能となる。
【0070】
なお、本実施形態において、位置推定エリアE1及び乗車意思推定エリアE2の設定に用いられる縦幅L3,L4及び横幅W1,W2は、各階床の乗場15付近の環境に応じて自動的に設定されてもよい。例えば、検知エリア設定部22aは、カメラ12よって撮影された画像より、階床ごとに乗場15の奥行き及び幅を自動的に検知し、これらに応じて縦幅L3,L4及び横幅W1,W2を伸縮するとしてもよい。これにより、階床ごとにさらに適切に検知エリアE0を設定可能となる。
【0071】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1…エレベータの乗車検知システム、11…乗りかご、11a…幕板、12…カメラ、13…かごドア、14…乗場ドア、15…乗場、20…画像処理装置、21…記憶部、22…利用者検知部、22a…検知エリア設定部、22b…動き検知部、22c…位置推定部、22d…乗車意思推定部、30…かご制御装置、31…戸開閉制御部。
【要約】
【課題】階床ごとに乗場の仕様が異なる場合でも、最適な検知範囲を設定して、利用者を正しく検知することのできるエレベータの乗車検知システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、乗りかごが乗場に到着したときに、乗りかごのドア付近から乗場の方向に向けて所定の範囲を撮影可能な撮像手段と、撮像手段により撮影された画像を用いて乗場の三方枠の形状を検出し、三方枠の形状に基づいて検知エリアを設定する検知エリア設定手段と、撮像手段によって撮影された時系列的に連続した複数枚の画像を用いて、検知エリア内で人・物の動きに着目して乗車意思のある利用者の有無を検知する利用者検知手段と、利用者検知手段の検知結果に基づいてドアの開閉動作を制御する制御手段とを具備する。
【選択図】 図1
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