(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記人造黒鉛と前記チタン酸リチウムと前記導電助剤の合計を100質量部としたとき前記バインダーの量が3.0〜6.0質量部である請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
前記導電助剤が、カーボンブラック、気相法炭素繊維及びカーボンナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
(1)負極活物質
本発明の好ましい実施態様におけるリチウムイオン二次電池用負極に用いる負極活物質は、人造黒鉛とチタン酸リチウムを含む。
【0014】
本明細書において人造黒鉛とは、広く人工的な手法で作られた黒鉛及び黒鉛の完全結晶に近い黒鉛質材料をいう。代表的な例としては、石炭の乾留、原油の蒸留による残渣などから得られるタールやコークスを原料にして、500〜1000℃の焼成工程、及び2000℃以上の黒鉛化工程を経て得たものが挙げられる。また、溶融鉄から炭素を再析出させることで得られるキッシュグラファイトも人造黒鉛の一種である。
【0015】
人造黒鉛は、体積基準の累積粒度分布における50%粒子径D
50が1〜9μmであり、好ましくは3〜9μmであり、より好ましくは5〜8μmである。D
50が1μm未満だとスラリー寿命が短くなり、凝集が生じるなどの問題が起こる。また、D
50が9μmを超えると、スラリーの安定性は問題ないが、十分なレート特性が得られない。
【0016】
人造黒鉛の、粉末X線回折測定で得られる黒鉛結晶の(002)面の面間隔d
002は0.3360〜0.3370nmが好ましい。d
002がこの範囲であると電極とした際に人造黒鉛が配向しにくく、良好なLiイオンの受け入れ性が得られる。
【0017】
人造黒鉛の、レーザーラマン分光法により得られたスペクトルにおける1300〜1400cm
-1の範囲にあるピーク強度I
Dと、1580〜1620cm
-1の範囲にあるピーク強度I
Gとの強度比I
D/I
G(R値)は、0.10〜0.25が好ましい。
【0018】
人造黒鉛のBET比表面積は、好ましくは1.0〜7.0m
2/gであり、より好ましくは2.0〜7.0m
2/gである。BET比表面積がこの範囲であると、スラリーのハンドリングが良好で、剥離強度の低下などの問題も発生しにくくなる。
【0019】
また、人造黒鉛は、その粒子を芯材として他の炭素材料でコーティングして使用することができる。特に人造黒鉛芯材粒子の表面を低結晶性炭素でコーティングすることにより、微粉化した際の必要以上のBET比表面積の増大を抑え、電解液との反応を抑えるとともに、低温時のLiの受け入れ性が向上する(IRドロップが低下する)。
【0020】
チタン酸リチウムは体積基準の累積粒度分布における50%粒子径D
50が1〜9μmであり、好ましくは2〜7μmである。D
50が小さすぎるとスラリー寿命が短くなり、凝集が生じるなどの問題が起こる。また、D
50が9μmを超えると、スラリーの安定性は問題ないが、十分なレート特性が得られない。
チタン酸リチウムの構造としてはLi
4Ti
5O
12及びLi
2Ti
3O
7が好ましい。
チタン酸リチウムは充放電に伴う体積変化が小さく、負極構造を維持できるという特徴を有する。
【0021】
本発明の好ましい実施態様においては、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合は10.0〜20.0質量%であり、好ましくは15.0〜20.0質量%である。チタン酸リチウムの割合が10.0質量%未満であると十分な低温レート特性が得られず、20.0質量%を超えるとセル電圧が低下し容量低下が大きくなる。
本発明の好ましい実施態様における負極活物質は、上記の人造黒鉛とチタン酸リチウム以外の公知の負極活物質を含むことができる。このような他の負極活物質の種類および量は本発明の効果を大きく損なわない範囲で許容できる。他の負極活物質の含有量としては、例えば、負極活物質全体の20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0022】
(2)導電助剤
本発明の好ましい実施態様におけるリチウムイオン二次電池用負極に用いる導電助剤には特に制限はなく、例えばカーボンブラック、炭素繊維、気相法炭素繊維、カーボンナノチューブ等を単独でまたは二種以上を併用して使用できる。導電助剤を用いることにより負極の導電性が向上し電池寿命が長くなる。導電助剤の中でも、結晶性及び熱伝導性の高さから気相法炭素繊維が好ましい。
【0023】
カーボンブラックは、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラックなどを用いることができる。
【0024】
気相法炭素繊維は、例えば、有機化合物を原料とし、触媒としての有機遷移金属化合物をキャリアーガスとともに高温の反応炉に導入し生成し、続いて熱処理して製造される(日本国特開昭60−54998号公報、日本国特許第2778434号公報等参照)。その繊維径は2〜1000nm、好ましくは10〜500nmであり、アスペクト比は好ましくは10〜15000である。
【0025】
気相法炭素繊維の原料となる有機化合物としては、トルエン、ベンゼン、ナフタレン、エチレン、アセチレン、エタン、天然ガス、一酸化炭素等のガス及びそれらの混合物が挙げられる。中でもトルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素が好ましい。
【0026】
有機遷移金属化合物は、触媒となる遷移金属を含むものである。遷移金属としては、周期律表第IVa、Va、VIa、VIIa、VIII族の金属が挙げられる。有機遷移金属化合物としてはフェロセン、ニッケロセン等の化合物が好ましい。
【0027】
炭素繊維は、気相法等で得られた長繊維を粉砕または解砕したものであってもよい。また、炭素繊維はフロック状に凝集したものであってもよい。
【0028】
炭素繊維は、その表面に有機化合物等に由来する熱分解物が付着していないもの、または炭素構造の結晶性が高いものが好ましい。
【0029】
熱分解物が付着していない炭素繊維または炭素構造の結晶性が高い炭素繊維は、例えば、不活性ガス雰囲気下で、炭素繊維、好ましくは気相法炭素繊維を焼成(熱処理)することによって得られる。具体的には、熱分解物が付着していない炭素繊維は、約800〜1500℃でアルゴン等の不活性ガス中で熱処理することによって得られる。また、炭素構造の結晶性が高い炭素繊維は、好ましくは2000℃以上、より好ましくは2000〜3000℃でアルゴン等の不活性ガス中で熱処理することによって得られる。
【0030】
炭素繊維は分岐状繊維が含まれているものが好ましい。また繊維全体が互いに連通した中空構造を有している箇所があってもよい。そのため繊維の円筒部分を構成している炭素層が連続している。中空構造とは炭素層が円筒状に巻いている構造であって、完全な円筒でないもの、部分的な切断箇所を有するもの、積層した2層の炭素層が1層に結合したものなどを含む。また、円筒の断面は完全な円に限らず楕円や多角化したものを含む。
【0031】
また炭素繊維は、X線回折法による(002)面の平均面間隔d
002が、好ましくは0.344nm以下、より好ましくは0.339nm以下、特に好ましくは0.338nm以下である。また、結晶子のc軸方向の厚さLcが40nm以下のものが好ましい。
【0032】
カーボンナノチューブは、例えば、炭素六員環からなるグラフェンシートが繊維軸に対して平行に巻いたチューブラー構造のカーボンナノチューブ、炭素六員環からなるグラフェンシートが繊維軸に対して垂直に配列したプーレトレット構造のカーボンナノチューブ、炭素六員環からなるグラフェンシートが繊維軸に対して斜めの角度を持って巻いているヘリンボーン構造のカーボンナノチューブを用いることができる。
【0033】
導電助剤の量は、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計を100質量部としたとき1.0〜2.0質量部が好ましく、1.0〜1.6質量部がより好ましい。
【0034】
(3)バインダー
本発明の好ましい実施態様において、バインダーとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンターポリマー、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、イオン伝導率の大きな高分子化合物等が使用できる。イオン伝導率の大きな高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロルヒドリン、ポリファスファゼン、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
バインダーの量は、人造黒鉛とチタン酸リチウムと導電助剤の合計を100質量部としたとき3.0〜6.0質量部が好ましく、3.0〜4.0質量部がより好ましい。
【0035】
(4)リチウムイオン二次電池用負極
前記の負極活物質、導電助剤、バインダー等に溶媒を加えて混練することによって負極用ペーストを得る。この負極用ペーストを集電体上に塗布し、乾燥し、加圧成形することにより負極活物質層を形成し、リチウムイオン二次電池に用いる負極とすることができる。
【0036】
本発明の好ましい実施態様においては、集電体上に設ける負極活物質層は1層のみでよい。すなわち、集電体上に負極活物質が含まれる層を複数設ける必要はない。これにより、低温環境下においても優れた特性を有するリチウムイオン二次電池が、従来の製造工程から新たな工程を加えることなく製造することができる。
【0037】
ペーストとするための溶媒に特に制限はなく、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、イソプロピルアルコール、水等が挙げられる。溶媒として水を使用するバインダーの場合は、増粘剤を併用することが好ましい。溶媒の量は集電体に塗布しやすいような粘度となるように調整される。
【0038】
集電体としては、例えばニッケル、銅等の箔、メッシュなどが挙げられる。ペーストの塗布方法は特に制限されない。ペーストの塗布厚は、通常50〜200μmである。塗布厚が大きくなりすぎると、規格化された電池容器に負極を収容できなくなることや、リチウムイオン拡散距離の増大による電池の内部抵抗の増加に繋がる。
電極の乾燥工程としては、ペースト塗布後の電極をホットプレートを用いて70〜90℃で乾燥し、その後真空乾燥機を用いて70〜90℃で12時間程度乾燥することが好ましい。乾燥が不十分であると電極内に溶媒が残り、電池を作製した際に容量低下などの特性低下に繋がる。
加圧成形法としては、ロール加圧、プレス加圧等の成形法を挙げることができる。加圧成形するときの圧力は約100MPa〜約300MPa(1〜3t/cm
2程度)が好ましい。このようにして得られた負極は、リチウムイオン二次電池に好適である。
加圧成形後の電極密度は、1.1〜1.6g/cm
3が望ましい。電極密度が1.1g/cm
3より小さいと体積エネルギー密度が小さい電池となり、逆に1.6g/cm
3よりも大きいと電極内の空隙が少なくなり、電解液の浸透が悪くなるうえ、リチウムイオンの拡散が悪くなり充放電特性が小さくなるという問題がある。
【0039】
(5)リチウムイオン二次電池
前記の負極を構成要素として、リチウムイオン二次電池を製造することができる。
リチウムイオン二次電池の正極には、正極活物質として、通常、リチウム含有遷移金属酸化物が用いられ、好ましくはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Mo及びWから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素とリチウムとを主として含有する酸化物であって、リチウムの遷移金属元素に対するモル比が0.3〜2.2の化合物が用いられ、より好ましくはV、Cr、Mn、Fe、Co及びNiから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素とリチウムとを主として含有する酸化物であって、リチウムの遷移金属元素に対するモル比が0.3〜2.2の化合物が用いられる。なお、主として存在する遷移金属に対し30モルパーセント未満の範囲でAl、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどを含有していても良い。上記の正極活物質の中で、一般式Li
xMO
2(MはCo、Ni、Fe、Mnの少なくとも1種、x=0〜1.2。)、またはLi
yN
2O
4(Nは少なくともMnを含む。y=0〜2。)で表されるスピネル構造を有する材料の少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0040】
さらに、正極活物質はLi
yM
aD
1-aO
2(MはCo、Ni、Fe、Mnの少なくとも1種、DはCo、Ni、Fe、Mn、Al、Zn、Cu、Mo、Ag、W、Ga、In、Sn、Pb、Sb、Sr、B、Pの中のM以外の少なくとも1種、y=0〜1.2、a=0.5〜1)を含む材料、またはLi
z(N
bE
1-b)
2O
4(NはMn、EはCo、Ni、Fe、Mn、Al、Zn、Cu、Mo、Ag、W、Ga、In、Sn、Pb、Sb、Sr、B、Pの少なくとも1種、b=1〜0.2、z=0〜2)で表されるスピネル構造を有する材料の少なくとも1種を用いることが特に好ましい。
【0041】
具体的には、Li
xCoO
2、Li
xNiO
2、Li
xMnO
2、Li
xCo
aNi
1-aO
2、Li
xCo
bV
1-bO
z、Li
xCo
bFe
1-bO
2、Li
xMn
2O
4、Li
xMn
cCo
2-cO
4、Li
xMn
cNi
2-cO
4、Li
xMn
cV
2-cO
4、Li
xMn
cFe
2-cO
4(ここでx=0.02〜1.2、a=0.1〜0.9、b=0.8〜0.98、c=1.6〜1.96、z=2.01〜2.3。)が挙げられる。最も好ましいリチウム含有遷移金属酸化物としては、Li
xCoO
2、Li
xNiO
2、Li
xMnO
2、Li
xCo
aNi
1-aO
2、Li
xMn
2O
4、Li
xCo
bV
1-bO
z(x=0.02〜1.2、a=0.1〜0.9、b=0.9〜0.98、z=2.01〜2.3。)が挙げられる。なお、xの値は充放電開始前の値であり、充放電により増減する。
【0042】
正極活物質の体積基準の累積粒度分布における50%粒子径D
50は特に限定されないが、0.1〜50μmが好ましい。また、0.5〜30μmの粒子の体積が全体積の95%以上であることが好ましい。粒径3μm以下の粒子群の占める体積が全体積の18%以下であり、かつ15μm以上25μm以下の粒子群の占める体積が全体積の18%以下であることが更に好ましい。
正極活物質の比表面積は特に限定されないが、BET法での測定値が0.1〜50.0m
2/gであることが好ましく、特に0.2m
2/g〜10.0m
2/gが好ましい。また正極活物質5gを蒸留水100mlに溶かしたときの上澄み液のpHとしては7以上12以下が好ましい。
【0043】
リチウムイオン二次電池に用いられる電解液は、特に制限されない。例えば、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSO
3CF
3、CH
3SO
3Li、CF
3SO
3Li等のリチウム塩を、例えばエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、アセトニトリル、プロピロニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン等の非水系溶媒に溶かしたいわゆる有機電解液や、固体若しくはゲル状のいわゆるポリマー電解質を挙げることができる。
【0044】
また、電解液には、リチウムイオン二次電池の初回充電時に分解反応を示す添加剤を少量添加することが好ましい。添加剤としては例えば、ビニレンカーボネート、ビフェニール、プロパンスルトン等が挙げられる。添加量としては0.1〜5.0%が好ましい。
【0045】
本発明のリチウムイオン二次電池には正極と負極との間にセパレーターを設けることができる。セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微多孔フィルムまたはそれらを組み合わせたものなどを挙げることができる。
【0046】
本明細書において、体積基準の累積粒度分布における50%粒子径D
50はいわゆるメジアン径を表し、粒子の外見上の径を示す。D
50はレーザー回折式粒度分布計を用いて測定する。レーザー回折式粒度分布計としては、例えばマルバーン製マスターサイザー(Mastersizer;登録商標)等が利用できる。
本明細書において、BET比表面積は、単位質量あたりの窒素ガスの吸着脱離量の計測という一般的な手法によって測定する。測定装置としては、例えばNOVA−1200を用いることができる。
本明細書において、(002)面の平均面間隔d
002は、既知の方法により粉末X線回折(XRD)法を用いて測定することができる(野田稲吉、稲垣道夫、日本学術振興会、第117委員会試料、117−71−A−1(1963)、稲垣道夫他、日本学術振興会、第117委員会試料、117−121−C−5(1972)、稲垣道夫、「炭素」、1963、No.36、25−34頁参照)。
本明細書において、R値は、前述のようにレーザーラマン分光法により得られたスペクトルにおける1300〜1400cm
-1の範囲にあるピーク強度I
Dと、1580〜1620cm
-1の範囲にあるピーク強度I
Gとの強度比I
D/I
Gである。R値が大きいほど結晶性が低いことを示す。R値は、例えば、日本分光株式会社製レーザーラマン分光測定装置(NRS−3100)を用いて、励起波長532nm、入射スリット幅200μm、露光時間15秒、積算回数2回、回折格子600本/mmの条件で測定を行い、その結果得られた1360cm
-1付近のピーク強度と1580cm
-1付近のピーク強度に基づいて算出することができる。
【実施例】
【0047】
以下に本発明の実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、これらは説明のための例示であって、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
なお、実施例及び比較例で使用した材料のD
50、X線回折法による平均面間隔(d
002)、BET法による比表面積は、本明細書の「発明を実施するための形態」に詳述した方法により測定する。
【0048】
電池の作製
a)負極作製:
黒鉛材料、チタン酸リチウム、導電助剤、バインダー及び溶媒を加え攪拌・混合し、充分な流動性を有するスラリー状の分散液を作製した。
得られた分散液を厚み20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて厚さ150μmで均一となるように塗布し、ホットプレートにて乾燥後、真空乾燥機で90℃、12時間乾燥した。乾燥した電極はロールプレスにより密度を調整し、電池評価用負極を得た。
【0049】
b)正極作製:
LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2(Umicore社製MX7h)90.0gと導電助剤としてカーボンブラック(IMERYS社製SUPER C65)5.0g、及びバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)5.0gをN−メチル−ピロリドンに適宜加えながら攪拌・混合し、スラリー状の分散液を作製した。
得られた分散液を厚さ20μmのアルミ箔上にロールコーターにより塗布し、乾燥させ、その後、ロールプレスにて加圧成形し、電池評価用正極を得た。得られた正極の塗布量は10mg/cm
2であり、電極密度は3.4g/cm
3であった。
【0050】
c)電解液調製:
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を体積比3:7で混合してなる非水溶媒に、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1.0mol/Lとなるように溶解させ、添加剤としてビニレンカーボネート(VC)を1質量%添加し、電解液を得た。
【0051】
d)電池作製:
上記負極及び正極を長方形に打ち抜いて面積20cm
2の負極片及び正極片を得た。正極片のAl箔にAlタブを、負極片のCu箔にNiタブをそれぞれ取り付けた。ポリプロピレン製フィルム微多孔膜を負極片と正極片との間に挟み入れ、その状態でアルミラミネート外装材にパックし、電解液を注液した。その後、開口部を真空度98%の減圧下で熱融着シールして評価用の電池(設計容量25mAh)を作製した。
【0052】
実施例1
コート人造黒鉛(D
50:8μm、BET比表面積:2.3m
2/g)85.0g、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)10.5g(D
50:5μm)、導電助剤としてカーボンブラック(IMERYS社製SUPER C65)1.5g、及び結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF、クレハ株式会社製、KFポリマー#9300)3.0gにN−メチル−ピロリドンを適宜加えながら攪拌・混合し、スラリー状の分散液を作製した。
ここで、前記コート人造黒鉛は以下のようにして作製した。
石油系コークスを粉砕してD
50を6μmに調整し、3000℃にて黒鉛化を行なって芯材を得た。これに粉末状の等方性石油系ピッチを芯材100質量部に対して1質量部となる量で乾式混合し、アルゴン雰囲気下、1100℃にて1時間加熱してコート人造黒鉛を得た。
作製した分散液を用いて電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
なお、セル電圧は、初期放電容量測定後の放電状態の電池について、回路素子測定器(日置電機株式会社製、ACミリオームハイテスタ 3560)を用いて測定した。
【0053】
実施例2
コート人造黒鉛を未コート人造黒鉛(D
50:8μm、BET比表面積:6.0m
2/g)に変更した以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
ここで、上記未コート人造黒鉛は、石油系コークスを粉砕してD
50を6μmに調整し、3000℃にて黒鉛化を行なって得た。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0054】
実施例3
導電助剤のカーボンブラックを気相法炭素繊維であるVGCF(登録商標、昭和電工社製、平均繊維径:150nm、平均繊維長:6μm)に変更した以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0055】
実施例4
コート人造黒鉛をコート人造黒鉛(D
50:4μm、BET比表面積:6.7m
2/g)に変更した以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0056】
実施例5
コート人造黒鉛をコート人造黒鉛(D
50:6μm、BET比表面積:6.4m
2/g)に変更した以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0057】
実施例6
コート人造黒鉛の混合量を85.0gから79.8gに変更し、チタン酸リチウムの混合量を10.5gから15.7gに変更した以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0058】
実施例7
コート人造黒鉛の混合量を85.0gから76.7gに変更し、チタン酸リチウムの混合量を10.5gから18.8gに変更した以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0059】
実施例8
チタン酸リチウムの粒子径D
50を5μmから8μm(石原産業株式会社製、エナマイトLT−105)に変更した以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0060】
比較例1
チタン酸リチウムを含まないことと、コート人造黒鉛の混合量を85.0gから95.5gに変更したこと以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は6.5mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、及びセル電圧について表1に示す。
【0061】
比較例2
黒鉛材料のコート人造黒鉛を未コート人造黒鉛(D
50:10μm、BET比表面積:2.7m
2/g)に変更した以外は実施例1と同様にして、電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.5g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0062】
比較例3
チタン酸リチウムを含まないことと、未コート人造黒鉛の混合量を85.0gから95.5gに変更した以外は比較例2と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は6.5mg/cm
2であり、電極密度は1.5g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、及びセル電圧について表1に示す。
【0063】
比較例4
コート人造黒鉛を未コート天然黒鉛(D
50:17μm、BET比表面積:6.5m
2/g)に変更した以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は6.5mg/cm
2であり、電極密度は1.5g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0064】
比較例5
チタン酸リチウムを含まないことと、未コート人造黒鉛の混合量を85.0gから95.5gに変更したこと以外は比較例4と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は6.5mg/cm
2であり、電極密度は1.5g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0065】
比較例6
コート人造黒鉛材料の混合量を85.0gから94.5gに変更したことと、チタン酸リチウムの混合量を10.5gから1gに変更したこと以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0066】
比較例7
コート人造黒鉛材料の混合量を85.0gから90.3gに変更したことと、チタン酸リチウムの混合量を10.5gから5.2gに変更したこと以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0067】
比較例8
コート人造黒鉛材料の混合量を85.0gから73.5gに変更したことと、チタン酸リチウムの混合量を10.5gから22.0gに変更したこと以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0068】
比較例9
コート人造黒鉛材料の混合量を85.0gから69.3gに変更したことと、チタン酸リチウムの混合量を10.5gから26.2gに変更したこと以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0069】
比較例10
チタン酸リチウムの粒子径を5μmから13μmに変更した以外は実施例1と同様にして電池評価用負極を得た。得られた電極の塗布量は7mg/cm
2であり、電極密度は1.3g/cm
3であった。
人造黒鉛のD
50、BET比表面積、R値、d
002、チタン酸リチウムのD
50、人造黒鉛とチタン酸リチウムの合計質量中チタン酸リチウムの割合、及びセル電圧について表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
二次電池の物性試験
(1)Cレートの決定
上限電圧4.2VとしてCC(定電流)、CV(定電圧)モードで、5mAで、カットオフ電流値1.25mAで充電を行い、充電状態でガス抜き、その後、下限電圧2.8Vとして、CCモードで5mAの放電を行った。2サイクル目の放電容量をセル容量としてCレートを決定した。1Cは25mAであった。
【0072】
(2)充放電レート試験(25℃測定)
セルを上限電圧4.2V、カットオフ電流値1.25mAとしてCC、CVモードにより5mAで充電後、下限電圧2.8VでCCモードにより5C(約125mA)放電し、0.2C(約5mA)放電容量を基準として、5Cにおける放電容量の比(%)を算出した。
(5C放電容量(%))
=(5C放電容量(mAh))/(0.2C放電容量(mAh))×100
また、セルを下限電圧2.8VとしてCCモードにより5mAで放電後、上限電圧4.2VとしてCCモードにより5Cで充電し、0.2C(約5mA)充電容量を基準として、5Cにおける充電容量の比(%)を算出した。
(5C充電容量(%))
=(5C充電容量(mAh))/(0.2C充電容量(mAh))×100
結果を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
(3)充放電レート試験(−20℃測定)
25℃にてセルを上限電圧4.2V、カットオフ電流値1.25mAとしてCC、CVモードにより5mAでフル充電後、−20℃雰囲気で8時間放置し下限電圧2.8VでCCモードにより0.2C、0.5C、1Cの各レートについて放電を行った。このときの各レートの放電容量の25℃、0.2C放電時の放電容量に対する比(%)を求め、各レート0.2C、0.5C、1Cの低温放電特性とした。
また、25℃にてセルを下限電圧2.8V、CCモードにより5mAでフル放電後、−20℃雰囲気で8時間放置し上限電圧4.2VでCCモードにより0.2C、0.5C、1Cの各レートについて充電を行った。このときの各レートの充電容量の25℃、0.2C充電時の充電容量に対する比(%)を求め、各レート0.2C、0.5C、1Cの低温充電特性とした。
【0075】
結果を表3に示す。
【表3】
【0076】
(4)サイクル特性の測定(45℃サイクル評価)
上限電圧4.2VとしてCC、CVモードで、2C(約50mA)で、カットオフ電流値1.25mAで充電を行った。
下限電圧2.8Vとして、CCモードで2C放電を行った。
上記条件で、100サイクル充放電を繰り返した。
100サイクル時の放電容量を測定した。初回放電容量に対する100サイクル時放電容量の割合(%)を算出し、これを放電容量維持率とした。
(100サイクル後放電容量維持率(%))
=(100サイクル時放電容量)/(初回放電容量)×100
結果を表4に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
(5)サイクル特性の測定(−20℃サイクル評価)
−20℃雰囲気で8時間放置し、上限電圧4.2VとしてCC、CVモードで、0.5C(約25mA)で、カットオフ電流値1.25mAで充電を行った。
下限電圧2.8Vとして、CCモードで0.5C放電を行った。
上記条件で、50サイクル充放電を繰り返した。
50サイクル時の放電容量を測定した。初回放電容量に対する50サイクル時放電容量の割合(%)を算出し、それを放電容量維持率とした。
(50サイクル後放電容量維持率(%))
=(50サイクル時放電容量)/(初回放電容量)×100
結果を表5に示す。
【0079】
【表5】