(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377897
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】警報器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20180813BHJP
G08B 21/14 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
G08B17/00 D
G08B21/14
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-217466(P2013-217466)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-79438(P2015-79438A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】境 裕司
(72)【発明者】
【氏名】早川 恭信
(72)【発明者】
【氏名】藤原 秀規
【審査官】
山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−221458(JP,A)
【文献】
特開2009−258067(JP,A)
【文献】
特開2011−145986(JP,A)
【文献】
特開平07−037621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
G08B 17/00−31/00
H01M 10/42−10/48
H02J 7/00− 7/12
7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起動報知を行う報知手段を備え、電源投入時、前記起動報知の前に所定回路に通電する電池式の警報器であって、
前記所定回路は、通常動作時に定期的に通電されるものであり、
電源投入時の前記所定回路への通電時間は、通常動作時の前記所定回路への通電時間よりも長い警報器。
【請求項2】
前記所定回路は、警報器を構成する回路の中で電力消費量が最大の回路である請求項1に記載の警報器。
【請求項3】
前記所定回路は、電池電圧検出回路である請求項1または2に記載の警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面や天井面等に設置する電池式の警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
警報器は、その動力源により、電池式と電源式(AC100V式)の2つに分類される。電池式は、配線工事が不要であること、停電時でも作動できることが利点として挙げられ、既存住宅への導入時は電池式を採用することが多い。
【0003】
通常、電池式の警報器には、電池電圧検出回路が設けられており、該回路によって定期的に電池電圧が監視される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4051626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池式の警報器に使用されるリチウム電池は、電池切れになっても、一定時間放置すると、電池内部のイオン種の偏りが緩和し、電池電圧が回復するという特性がある。そのため、電池電圧の低下によって停止した警報器が、一定時間経過後に再起動することも起こり得る。しかしながら、電池電圧が回復したといっても、充電されたわけではないため、起動時の初期設定や起動音に要する電力消費で電池電圧が低下し、警報器はすぐに停止してしまう。その後、前述のリチウム電池の特性により、一定時間経過すると警報器は再び再起動する。
【0006】
このように、電池式の警報器は、電池切れで停止した後であっても、再起動と停止とが短期間で繰り返される傾向がある。そのため、電池交換を行わない場合、警報器が再起動する度に起動音が発せられることになる。もちろん、最初に電池切れになった時点で電池交換を実施すれば問題ないが、警報器が設置されたまま家主が転居した場合には、放置された警報器から繰り返し発せられる起動音が騒音問題となるおそれがある。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、適切な電池交換が実施されなかった電池式の警報器による騒音問題発生の防止を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前述の騒音問題発生を防止する方法について検討したところ、電池式の警報器の電源投入時(電池挿入時や電池電圧回復による再起動時)において、起動音などの起動報知の前に実行される初期設定処理に着目した。そして、初期設定処理において、電池電圧検出回路など、通常は通電しない所定回路に通電し、起動時の電力消費量を敢えて大きくすることで、電池切れによって停止した後、電池電圧の回復によって再起動した警報器による起動報知の実行を阻止し、前記課題を見事に解決できることを見出し、本発明に想到した。
【0009】
すなわち、本発明は、起動報知を行う報知手段を備えた電池式の警報器であって、電源投入時、前記起動報知の前に所定回路に通電する警報器に関する。
【0010】
前記所定回路は、通常動作時に定期的に通電されるものであり、電源投入時の前記所定回路への通電時間は、通常動作時の前記所定回路への通電時間よりも長いことが好ましい。
【0011】
前記所定回路は、警報器を構成する回路の中で電力消費量が最大の回路であることが好ましい。
【0012】
前記所定回路は、電池電圧検出回路であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電源投入時、起動報知の前に、所定回路に電流を流し、起動時の電力消費量を敢えて大きくすることで、電池切れによって停止した後、電池電圧の回復によって再起動した警報器で起動報知が実行されることを防止することができ、これにより、適切な電池交換が実施されなかった電池式の警報器による騒音問題発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】警報器の主要な構成を示すブロック図である。
【
図3】警報器の初期設定処理を示すフローチャートである。
【
図4】警報器の通常動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1を用いて本発明の警報器について説明する。
図1に示すように、警報器1は、電池電圧を監視する電池電圧検出回路10と、起動音や警告音を発する報知手段11と、一酸化炭素濃度や煙濃度などを測定する測定部12と、ガス漏れや火災などの異常を検知する検知部13と、警報器1全体の動作を制御する制御部14とを備える。各回路には、リチウム電池(不図示)から電力が供給される。
【0016】
電池電圧検出回路10による電池電圧の監視は、電源投入時及び通常動作時に実行される。通常動作とは、警報器の主目的である異常監視を行う動作であり、例えば、ガス漏れや火災の発生を監視する動作をいう。通常動作時の電池電圧の監視は、電池切れによる警報器1の停止を事前に察知するため、定期的(例えば、1時間ごと)に実行される。
【0017】
電池電圧の監視は、リチウム電池から電池電圧検出回路10に通電することによって実行される。電源投入時の電池電圧検出回路10への通電時間は、通常動作時の電池電圧検出回路10への通電時間よりも長いことが好ましく、通常動作時の電池電圧検出回路10への通電時間の40〜80倍であることがより好ましい。上記範囲内であれば、再起動した電池式の警報器による起動報知の実行をより確実に防止しながら、不要な電力消費を抑制できる。なお、新品のリチウム電池を使用していれば、このように電源投入時の電池電圧検出回路10への通電時間を設定しても、起動報知や通常動作を問題なく実行可能である。
【0018】
報知手段11は、警報器1の起動を報知する起動音の他、検知部13が検知した異常を報知する警告音、電池電圧の低下を報知する警告音などを発する機能を有するものであり、スピーカーなどの音声装置を使用できる。また、LEDなどの発光装置を音声装置と併用してもよい。
【0019】
測定部12は、一酸化炭素濃度や煙濃度などを測定し、検知部13に伝達する機能を有するものであり、電気化学式センサ、光学式センサなど、種々のセンサを使用できる。
【0020】
検知部13は、測定部12が測定した物理量が異常判定の閾値に達しているかを判定する機能を有する。物理量が閾値に達している場合には、制御部14に異常発生の信号を出力する。検知部13が行う判定、制御部14が行う制御は、マイコンなどによって実行できる。
【0021】
警報器1は、一酸化炭素警報器(CO警報器)、火災警報器など、種々の警報器として使用できる。
【0022】
次に、警報器1が行う処理について
図2〜4を用いて説明する。
図2に示すように、警報器1の電源が投入されると、初期設定処理(ステップ#10)、起動報知(ステップ#20)、通常動作(ステップ#30)がこの順に行われる。
【0023】
初期設定処理(ステップ#10)では、
図3に示すように、電池電圧検出回路10をONにしてから(ステップ#11)、各種初期設定(ステップ#12)を行う。その後、電池電圧検出回路10をOFFにする(ステップ#13)。新品のリチウム電池を挿入して起動した場合であれば、ステップ#13終了後にステップ#20に移行するが、電池切れ後にリチウム電池の電圧が回復することで起動した場合、ステップ#11によって電力が消費されることにより、リチウム電池の電圧が閾値(リセット電圧)以下に低下し、警報器1が停止するため、ステップ#20に移行しない。
【0024】
起動報知(ステップ#20)は、報知手段11が起動音を発することによって実行される。
【0025】
通常動作(ステップ#30)では、
図4に示すように、まず、タイマー(不図示)でカウントを開始した後(ステップ#31)、検知部13が、測定部12から出力された物理量が異常判定の閾値に達しているかを判定する(ステップ#32)。
【0026】
物理量が異常判定の閾値に達している場合(ステップ#32のYes分岐)、検知部13が制御部14に異常発生の信号を出力し、該信号を受けた制御部14が報知手段11に異常報知の信号を出力することで、異常報知が実行される(ステップ#33)。物理量が異常判定の閾値に達していない場合(ステップ#32のNo分岐)、タイマーのカウントが所定時間を経過しているかを制御部14が判定する(ステップ#34)。
【0027】
タイマーのカウントが所定時間を経過していなければ(ステップ#34のNo分岐)、ステップ#32に戻る。タイマーのカウントが所定時間を経過していれば(ステップ#34のYes分岐)、タイマーのカウントをクリアし(ステップ#35)、電池電圧の状態を電池電圧検出回路10が確認する(ステップ#36)。電池電圧が閾値(リセット電圧)以下に低下していれば(ステップ#35のYes分岐)、電池電圧検出回路10が制御部14に電圧低下発生の信号を出力し、該信号を受けた制御部14が報知手段11に電圧低下報知の信号を出力することで、電圧低下報知が実行される(ステップ#37)。電池電圧が閾値を超えていれば(ステップ#35のNo分岐)、ステップ#31に戻る。
【0028】
警報器の電源がOFFになるまで、この通常動作(ステップ#30)が繰り返し実行される。
【0029】
このように、警報器1は、初期設定処理(ステップ#10)において、電池電圧検出回路10をONにするステップ(ステップ#11)を実行するため、電池切れによって停止した後、電池電圧の回復によって警報器1が再起動した場合に起動報知(ステップ#20)が実行されることを防止することができる。これにより、警報器1で適切な電池交換が実施されなかった場合であっても、再起動と停止が繰り返されることによる騒音問題発生を防止することができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、所定回路として電池電圧検出回路10を使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、一度電池切れになった後、回復した電池電圧を、起動報知ができない程度に低下させることができれば、所定回路として他の回路を使用してもよい。電池電圧を効率よく低下させることができるという点から、所定回路としては、警報器を構成する回路の中で電力消費量が最大の回路が好適である。
【0031】
また、電源投入時の所定回路への通電時間が通常動作時の所定回路への通電時間よりも長い場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、一度電池切れになった後、回復した電池電圧を、起動報知ができない程度に低下させることができれば、電源投入時の所定回路への通電時間が通常動作時の所定回路への通電時間よりも短くてもよい。
【0032】
また、電源としてリチウム電池を使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。電池切れ後、電池電圧が回復するというリチウム電池と同様の特性を有する他の電池を使用した場合にも本発明は有効である。
【符号の説明】
【0033】
1:警報器
10:電池電圧検出回路
11:報知手段
12:測定部
13:検知部
14:制御部