(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377907
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】クロストリジウム・ディフィシル(Clostridiumdifficile)抗原
(51)【国際特許分類】
C07K 14/33 20060101AFI20180813BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20180813BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20180813BHJP
A61K 39/08 20060101ALI20180813BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20180813BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20180813BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20180813BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20180813BHJP
C07K 16/12 20060101ALI20180813BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20180813BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20180813BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20180813BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20180813BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
C07K14/33ZNA
C07K14/33
A61K38/00
A61K39/02
A61K39/08
A61K39/395 D
A61K45/00
A61P31/04
C07K1/22
C07K16/12
C07K19/00
C12N15/31
G01N33/53 D
G01N33/53 N
G01N33/531 A
G01N33/569 F
【請求項の数】25
【全頁数】72
(21)【出願番号】特願2013-532271(P2013-532271)
(86)(22)【出願日】2011年10月5日
(65)【公表番号】特表2014-502253(P2014-502253A)
(43)【公表日】2014年1月30日
(86)【国際出願番号】GB2011051910
(87)【国際公開番号】WO2012046061
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年9月25日
【審判番号】不服2016-16921(P2016-16921/J1)
【審判請求日】2016年11月11日
(31)【優先権主張番号】1016742.7
(32)【優先日】2010年10月5日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513159343
【氏名又は名称】セクレタリー オブ ステート フォー ヘルス
【氏名又は名称原語表記】SECRETARY OF STATE FOR HEALTH
(73)【特許権者】
【識別番号】511203226
【氏名又は名称】マイクロファーム・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROPHARM LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ショーン,クリフォード
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,エイプリル
(72)【発明者】
【氏名】アハーン,ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】メイナード−スミス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ランドン,ジョン
【合議体】
【審判長】
大宅 郁治
【審判官】
中島 庸子
【審判官】
松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−514886号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C12N 15/00-15/90
C07K
CAplus/BIOSIS/EMBASE/WPIDS(STN)
PubMed
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)C.ディフィシル(C. difficile)毒素Bの配列の残基767〜2366からなるアミノ酸配列;
b)C.ディフィシル(C. difficile)毒素Aの配列の残基770〜2710からなるアミノ酸配列;
c)C.ディフィシル(C. difficile)毒素Bの配列の残基1145〜2366からなるアミノ酸配列;
d)C.ディフィシル(C. difficile)毒素Aの配列の残基770〜2389からなるアミノ酸配列;
から選択されるいずれか1つの抗原性アミノ酸配列からなるタンパク質、
但し、タンパク質は、C. difficile毒素Aのアミノ酸残基543〜2710を含むポリペプチドではないことを条件とし;
但し、タンパク質は、C. difficile毒素Bのアミノ酸残基543〜2366を含むポリペプチドではないことを条件とし、そして
タンパク質は、システインプロテアーゼ活性を欠き、ここで、該活性を提供するアミノ酸配列の一部又は全ては、不在であり、そして
抗原性ポリペプチド配列は、防御免疫応答を誘発することができる、
タンパク質。
【請求項2】
(a)請求項1に記載のタンパク質、及び
(b)精製タグ、及び/又は
プロテアーゼ配列
を含む、タンパク質。
【請求項3】
プロテアーゼ配列で切断され、請求項1に記載のタンパク質を含む、請求項2に記載のタンパク質。
【請求項4】
請求項1定義された毒素Aおよび/または毒素Bのアミノ酸配列以外に、任意の追加的な毒素Aおよび/または毒素Bのアミノ酸配列を含まない、請求項1〜3のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項5】
C. difficile毒素Aおよび/またはC. difficile毒素Bに結合する抗体を作製する方法における抗原として使用するための、請求項1〜4のいずれか1項記載のタンパク質。
【請求項6】
C. difficile毒素Aおよび/またはC. difficile毒素Bに結合する抗体を単離するためのin vitro法であって、
a)請求項1〜4のいずれか1項記載の一つまたは複数のC. difficileタンパク質を表面(例えばカラム内のマトリックス)上に固定化すること;
b)固定化されたタンパク質を、C. difficile毒素Aおよび/または毒素Bに結合する抗体を含有する溶液と接触させること;
c)該抗体を該タンパク質と結合させることによって、抗体とタンパク質の結合型複合体を形成させること;
d)いかなる未結合の抗体またはタンパク質も洗浄除去すること;ならびに
e)結合している抗体を表面から溶離することによってアフィニティー精製された抗体を提供すること
を含む、in vitro法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項記載のタンパク質に対して産生されたポリクローナル抗体であって、C. difficile毒素Aおよび/またはC. difficile毒素Bに結合し中和し、C. difficile毒素Aまたは毒素Bのエフェクタードメインおよび/またはシステインプロテアーゼドメインに実質的に結合しない、ポリクローナル抗体(ただし、C. difficile毒素Aの1100−1450フラグメントに対して特異的に産生されたポリクローナル抗体、1450−1870フラグメントに対して特異的に産生されたポリクローナル抗体及び/又は1870−2680フラグメントに対して特異的に産生されたポリクローナル抗体を除く)。
【請求項8】
抗体が、IgG全体、Fab抗体またはF(ab’)2抗体を含む、請求項7記載のポリクローナル抗体。
【請求項9】
C. difficile感染の予防、治療または抑制に使用するための、請求項1〜4のいずれか1項記載のタンパク質および/または請求項7もしくは請求項8記載のポリクローナル抗体。
【請求項10】
ヒトにおけるC. difficile感染の予防、治療または抑制に使用するための、請求項1〜4のいずれか1項記載のタンパク質および/または請求項7もしくは請求項8記載のポリクローナル抗体。
【請求項11】
ヒトに治療有効量のタンパク質および/またはポリクローナル抗体を投与することを含む、該ヒトにおけるC. difficile感染を予防、治療または抑制するための方法において使用するための、請求項1〜4のいずれか1項記載のタンパク質および/または請求項7もしくは請求項8記載のポリクローナル抗体。
【請求項12】
タンパク質が、C. difficile非毒素抗原、不活性化または弱毒性全細胞C. difficile細菌、およびC. difficile細胞抽出物より選択される一つまたは複数の追加的な抗原を用いた組合せ療法の一部として投与される、請求項11記載の治療有効量のタンパク質。
【請求項13】
治療有効量の請求項11記載のタンパク質を含む医薬組成物であって、該タンパク質が、1)院内感染を引き起こす細菌由来の抗原、および2)院内感染を引き起こす不活性化または弱毒性全細胞細菌より選択される一つまたは複数の抗原を用いた組合せ治療の一部として投与される、医薬組成物。
【請求項14】
治療有効量の請求項11記載のタンパク質を含む医薬組成物であって、該タンパク質が、一つまたは複数の追加的な抗生物質を用いた組合せ治療の一部として投与される、医薬組成物。
【請求項15】
治療有効量の請求項14記載のタンパク質を含む医薬組成物であって、該抗生物質が、院内感染を引き起こす細菌に有効である、医薬組成物。
【請求項16】
ポリクローナル抗体が、C. difficile非毒素抗原に結合する抗体、および全細胞C. difficile細菌に結合する抗体から選択される一つまたは複数の追加的な抗体を用いた組合せ療法の一部として投与される、請求項11記載の治療有効量のポリクローナル抗体を含む医薬組成物。
【請求項17】
ポリクローナル抗体が、1)院内感染を引き起こす細菌由来の抗原に結合する抗体、および2)院内感染を引き起こす全細胞細菌に結合する抗体より選択される一つまたは複数の抗体を用いた組合せ療法の一部として投与される、請求項11記載の治療有効量のポリクローナル抗体を含む医薬組成物。
【請求項18】
ポリクローナル抗体が、一つまたは複数の抗生物質を用いた組合せ療法の一部として投与される、請求項11記載の治療有効量のポリクローナル抗体を含む医薬組成物。
【請求項19】
抗生物質が、院内感染を引き起こす細菌に有効である、請求項18記載の治療有効量のポリクローナル抗体を含む医薬組成物。
【請求項20】
患者試料中のC. difficile感染の存在または非存在を確認するためのin vitroイムノアッセイ法における、請求項7または請求項8記載のポリクローナル抗体の使用であって、C. difficile感染の存在が、該試料中に存在するC. difficile毒素Aおよび/または毒素Bへの抗体の結合を検出することによって確認され、そして該試料中に存在するC. difficile毒素Aおよび/または毒素Bへの該抗体の結合を検出できないことが、C. difficile感染の非存在を確認する、使用。
【請求項21】
患者試料中のC. difficile感染の存在または非存在を確認するためのin vitroイムノアッセイ法における、請求項1〜4のいずれか1項記載のタンパク質の使用であって、C. difficile感染の存在が、該試料中に存在する抗体へのタンパク質の結合を検出することによって確認され、該試料中に存在する抗体への該タンパク質の結合を検出できないことが、C. difficile感染の非存在を確認する、使用。
【請求項22】
請求項1〜4のいずれか1項記載のタンパク質をヒトを除く哺乳動物に投与すること
を含む、C. difficile毒素Aおよび/またはC. difficile毒素Bに結合し中和するポリクローナル抗体の製造方法であって、
該ポリクローナル抗体は、C. difficile毒素Aまたは毒素Bのエフェクタードメインおよび/またはシステインプロテアーゼドメインに実質的に結合しない、該製造方法。
【請求項23】
請求項1〜4のいずれか1項記載のタンパク質をヒトを除く哺乳動物に投与すること、及び
製造されたポリクローナル抗体を精製すること、
を含む、C. difficile毒素Aおよび/またはC. difficile毒素Bに結合し中和する、精製されたポリクローナル抗体の製造方法であって、
該ポリクローナル抗体は、C. difficile毒素Aまたは毒素Bのエフェクタードメインおよび/またはシステインプロテアーゼドメインに実質的に結合しない、該製造方法。
【請求項24】
請求項1〜4のいずれか1項記載のタンパク質をヒトを除く哺乳動物に投与すること、
製造されたポリクローナル抗体を精製すること、及び
精製されたポリクローナル抗体を薬学的に許容される担体と混合すること
を含む、C. difficile毒素Aおよび/またはC. difficile毒素Bに結合し中和する、薬学的組成物の製造方法であって、
該ポリクローナル抗体は、C. difficile毒素Aまたは毒素Bのエフェクタードメインおよび/またはシステインプロテアーゼドメインに実質的に結合しない、該製造方法。
【請求項25】
請求項1〜4のいずれか1項記載のタンパク質を含む、ワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染(CDI)を予防/治療/抑制するための抗原に関する。該抗原を作製するための方法、該抗原に結合する抗体を作製するための方法、およびCDIを予防/治療/抑制するための該抗体の使用も提供される。
【0002】
Clostridium difficile感染(CDI)は、今や世界中の病院で大きな問題である。この細菌は、それ自体、軽症の自己限定性の下痢から潜在的に致命的な重症大腸炎までの様々な形態で発症する院内抗生物質関連疾患を引き起こす。高齢患者は、これらの潜在的に致命的な疾患のリスクに最も曝されており、CDIの事例は、過去10年間で劇的に増加した。英国では2010年に21,000例のCDIがあり、関連死は2,700例を超えた。CDIのせいで英国国民保健サービスは1年に5億ポンドを上回る費用を費やしている。
【0003】
C.ディフィシル(C. difficile)の様々な株は、いくつかの方法によって分類することができる。最も一般的に使用される方法の一つは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)リボタイピングであって、その方法では、C. difficileの16S−23S rRNA遺伝子の遺伝子間スペーサー領域を増幅するためにPCRが使用される。この方法からの反応産物は、単離株の細菌リボタイプを同定する特徴的なバンドパターンを提供する。毒素タイピング(toxinotyping)は、C. difficile毒素をコードするDNAから得られた制限パターンを使用して株の毒素タイプを同定する、別のタイピング法である。異なる株の毒素遺伝子の間で観察された制限パターンの差は、C. difficile毒素ファミリー内の配列変異も示している。例えば、毒素タイプ0の毒素BのC末端60kDa領域には、毒素タイプIIIの毒素Bでの同領域に比べて約13%の配列の差がある。
【0004】
C. difficile株は、多様な病原性因子を産生し、その中で注目すべきは、いくつかのタンパク質毒素、すなわち毒素A、毒素B、およびいくつかの株におけるChlostridium perfringens ι毒素類似の二元毒素である。毒素Aは、感染病理に役割を果たす大型タンパク質性細胞毒素/エンテロトキシンであり、腸内定着過程に影響を及ぼす場合がある。CDIの大流行は、毒素A陰性/毒素B陽性株で報告されており、このことは、毒素Bも疾患病理に主要な役割を果たしうることを示している。
【0005】
毒素Aおよび毒素B(それぞれMw308kおよびMw269k)をコードする遺伝子配列は公知である(例えばMoncrief et al. (1997) Infect. Immun 63: 1105-1108を参照されたい)。これらの二つの毒素は、高い配列相同性を有し、遺伝子重複から生じたと考えられている。これらの毒素は、共通の構造(
図1参照)、すなわちN末端グルコシルトランスフェラーゼドメイン、中央の疎水性領域、4個の保存されたシステイン、および長く連なるC末端繰り返しユニット(RU)も共有する。
【0006】
毒素Aは、毒素Aのポリペプチド配列のアミノ酸残基1851〜2710に及ぶ39個の連続繰り返しユニット(RU)を含む。毒素Bは、毒素Bのポリペプチド配列のアミノ酸残基1852〜2366に及ぶ、より少ないRU(19から24個の間)を含む。毒素AおよびBの両方について、繰り返しユニットは、異なる2種類、すなわち約15〜25残基の短い繰り返し(SR)および約30残基の長い繰り返し(LR)である。LRは、3または4個のSRによって相互に引き離されており、LRは、隣接するSRと一緒になって、毒素の糖質レセプターに対する結合部位を提供する。毒素Aは、そのC末端ドメイン内に7個のLRを有し、それらは、7個のレセプター結合部位を提供すると考えられている(Greco et al. (2005) Nature Structural Biol. 13: 460-461)。毒素Bは、4個のLRを有し、それらは、4個の糖質結合ユニットを提供すると考えられている。毒素Aおよび毒素BのSR/LRクラスター(レセプター結合「モジュール」としても知られている)の例は、大きさが92から141個のアミノ酸残基まで様々であり、表1および2の参照によって例示される。
【0007】
毒素AおよびBの両方は、細胞表面上のレセプターへの結合、インターナリゼーションに続く移行、および細胞のサイトゾル中へのエフェクタードメインの放出を含む多段階メカニズムを介してそれらの作用機作ならびに最終的に細胞内作用を発揮する。該作用機作は、Rhoファミリーの低分子GTPアーゼの不活性化を必要とする。これに関して、毒素は、(UDPグルコースから)Rhoタンパク質のアミノ残基上へのグルコース部分の転移を触媒する。毒素AおよびBは、システインプロテアーゼの形態で第2の酵素活性も含有し、それは、移行後のサイトゾル中へのエフェクタードメインの放出に役割を果たすと思われる。C. difficile二元毒素は、NADからそのターゲットタンパク質上へのADP−リボース部分の転移を伴うメカニズムによって細胞性アクチンを改変する。
【0008】
C. difficile感染を処置するための現行療法は、抗生物質、特にメトロニダゾールおよびバンコマイシンの使用に依存している。しかしながら、これらの抗生物質は、全ての症例で有効なわけではなく、患者の20〜30%は疾患の再発を被る。大きな関心が持たれるのは、2002年にカナダで最初に同定された、より強毒性の株が英国に出現することである。これらの株には、PCRリボタイプ027および毒素タイプIIIに属する株が含まれ、これらの株は、以前に観察された死亡率の3倍を超える直接寄与死亡率でCDIを引き起こす。
【0009】
したがって、現行の抗生物質の有効性が漸減していると思われることから、新しい治療法が特に緊急に必要とされる。
【0010】
魅力的な代替法は、毒素Aおよび毒素Bに結合し、その活性を中和する抗体の使用である。これは、これらの毒素を放出しないC. difficile株、いわゆる非毒素生産株がCDIを引き起こさないという知識に基づく。一つのアプローチでは、CDIの患者またはそのような感染を発生するリスクのある対象に、毒素Aおよび毒素Bに対する循環抗体および粘膜抗体の増加を生じる抗原を免疫処置することができる。これは、能動免疫として定義される。または、ウマまたはヒツジなどの動物に免疫処置し、それらの血清を採集し、抗体を精製し、患者への投与に供する(受動免疫)。
【0011】
能動免疫および受動免疫の両方に決定的に必要であることは、それぞれ患者または動物に免疫処置するために適した抗原の入手性である。これらの抗原は、適切なC. difficile毒素産生株が培養された培地から精製することができる天然毒素を含みうる。このアプローチにはいくつかの欠点がある。毒素Aおよび毒素Bは、共に培地中に少量しか存在せず、顕著な損失なしに精製することは困難である。したがって、全世界の需要を満たすために必要な量を得るのは、高くつき、かつ困難であろう。加えて、天然毒素は不安定であり、そしてそれらの毒性が原因で、それらを免疫原として使用する前にそれらをトキソイド(不活性化毒素)に変換しなければならない。
【0012】
上記問題から、入手可能なC. difficileのワクチン候補は少ししかないという結果になった。今日まで、後期開発段階の唯一のCDIワクチンは、ネイティブな(すなわち天然の)毒素AとBの混合物を化学的改変によって不活性化したものに基づく(Salnikova et al 2008, J Pharm Sci 97: 3735-3752)。
【0013】
天然毒素およびそれらのトキソイドの使用の一代替法は、毒素AおよびB由来のリコンビナントフラグメントの設計、開発および使用を伴う。そのようなフラグメントを大量に、そしてネイティブな毒素よりも低いコストで発現および精製することができることが、それらの利点の中に含まれる。C. difficile感染の治療/予防に使用することを目的とする既存の抗原の例には、毒素Aまたは毒素BのC末端繰り返しユニット(RU)に基づくペプチドが含まれる(例えば国際公開公報第00/61762号を参照されたい)。しかしながら、そのような抗原に伴う問題は、それらが、免疫原性に乏しい(すなわち抗原が不十分な抗体力価を産生する)こと、またはより高い抗体力価が産生される場合、その抗体がC. difficile細胞傷害活性に対して不十分な中和有効性を示す(すなわち不十分な中和抗体が産生される)ことのいずれかである。
【0014】
したがって、当技術分野において、特異的にC. difficile感染(CDI)に対処することができる新しいワクチン/治療法/治療薬の必要性がある。この必要性は、上記問題の一つまたは複数を解決する本発明によって対処される。
【0015】
一態様では、本発明は、C. difficile毒素Aおよび/またはBに対して強力な毒素中和応答を誘導できる抗原を提供する。本発明は、また、リコンビナント抗原を調製するための方法を提供する。別の態様では、該抗原は、治療用抗体の大規模調製を可能にする免疫原として使用される。さらなる一態様では、該抗体は、C. difficile毒素Aおよび/またはBに対して強力な毒素中和応答を誘導できることから、予防および/または治療用途を有する。
【0016】
上記のように(国際公開公報第00/61762号参照)、以前の研究は、毒素Aおよび/または毒素BのC末端繰り返しユニット(RU)に基づくワクチン調製物について記載している。該RUフラグメントは、不十分な毒素中和作用を有し、かつ/または大量生産が困難である。
【0017】
対照的に、本発明は、毒素Aおよび/または毒素Bの繰り返しユニットに基づくC. difficile抗原であって、さらに、本発明者らが考えるところには、重要な「足場」機能を抗原に提供する追加的なC. difficile毒素ドメインを含むC. difficile抗原を提供する。本発明の該抗原は、良好な毒素中和免疫応答を示し、かつ/または容易に大量生産される。
【0018】
本発明者らは、驚くことに、「足場」第一アミノ酸配列(上記)の存在が、毒素Aまたは毒素Bの繰り返し領域だけを含む対応するフラグメントに比べて10〜100倍高い防御(毒素中和)免疫応答を提供することを確認した。表3〜10は、本発明の融合タンパク質が、C. difficile毒素の繰り返しドメインだけを含むフラグメントに比べて、毒素中和免疫応答を誘発する能力に優れていることをはっきりと示している。表5および6におけるデータの比較から、本発明の毒素Bに基づく構築物が、毒素BのC末端繰り返しユニットだけに基づく対応する構築物(TxB2と称する)よりもかなり強力な毒素中和免疫応答を誘発することが確認される。より詳細には、18週間の免疫処置期間の後に、本発明の構築物によって提供された毒素中和免疫応答は、TxB2構築物によって提供された免疫応答の約128倍であった。表9および10に、本発明の毒素Aに基づく構築物についての同様のデータを示す。該表におけるデータの比較から、本発明の毒素Aに基づく構築物が、毒素AのC末端繰り返しユニットだけに基づく、対応する構築物(TxA2と称する)よりもかなり強力な毒素中和免疫応答を誘発することが確認される。より詳細には、18週間の免疫処置期間の後に、本発明の構築物によって提供された毒素中和免疫応答は、TxA2構築物によって提供された免疫応答の12倍であった。
【0019】
これらの研究成果は、いくつかの理由から驚くべきである。以前の研究から、C. difficile毒素RUから成る毒素フラグメントが正しく折り畳まれ、容易に結晶化して秩序化構造が得られ(Ho et al. (2005) PNAS, 102: 18373-18378)、天然C. difficile毒素レセプターを模倣した糖質部分に結合する(Greco et al. (2006) Nature Structure. & Molecular Biology, 13: 460-461)ことが示された。したがって、今日までの科学的な証拠が、抗原製剤におけるC. difficile毒素RUから成るフラグメントの従来技術による使用(例えば国際公開公報第00/61762号)を支援し、それと矛盾しない。しかしながら、より重要には、さらなる研究から、C. difficile全体に対する抗体が、RU領域全体のみから成るフラグメントを認識する一方で、C. difficileの同毒素の残基901〜1750に基づく「足場」領域から成るフラグメントを認識できないことが確認された(Genth et al., (2000) Infect. Immun., 68: 1094-1101)。したがって、これらのデータから、「足場」残基901〜1750内のドメインは、重大な抗体結合性構造決定基を与えないことが示唆される。これに関連して、ペプチド結合以外に「足場」毒素ドメインとC末端繰り返し領域の残基の間に三次構造における接触はない。Pruitt et al., (2010) PNAS 1002199107オンライン出版を参照されたい。したがって、まとめると、毒素Aおよび/または毒素Bのリコンビナント免疫原内へのC. difficile「足場」領域の包含が毒素中和免疫応答を顕著に高める効果を有するのは、極めて驚くべきである。
【0020】
本発明の第一の局面は、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列から成るまたはその配列を含む融合タンパク質であって、ここで:
1)第1のアミノ酸配列が、C. difficile毒素Aの配列の残基1500〜1850から成るアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列によって提供され;そして
2)第2のアミノ酸配列が、C. difficile毒素Aの配列のアミノ酸残基1851〜2710内に位置する長い繰り返しユニットから成るアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列によって提供される、
但し、その融合タンパク質は、C. difficile毒素Aのアミノ酸残基543〜2710を含むポリペプチドではないことを条件とする、
融合タンパク質を提供する。
【0021】
C. difficile毒素Aの配列への言及は、天然C. difficile毒素Aのアミノ酸配列(C. difficile毒素Aの参照配列とも称される)を意味する。そのような配列の例は、当業者によって容易に理解され、より一般的な天然毒素Aの配列のいくつかが、本明細書(例えば、配列番号1および3参照)において、ならびに文献全体を通して確認される。
【0022】
本明細書の全体を通して「少なくとも80%の配列同一性」への言及は、語句「基づく」と同義と見なされ、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、および100%の配列同一性の一つまたは複数を包含しうる。配列同一性を評価する場合、確定した数の連続アミノ酸残基を有する参照配列が、本発明の融合タンパク質の対応する部分からのアミノ酸配列(同じ数の連続アミノ酸残基を有する)とアライメントされる。
【0023】
一態様では、第1のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Aのアミノ酸残基544〜1850に基づく(すなわち、それと少なくとも80%の配列同一性を有する)。別の態様では、第1のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Aのアミノ酸残基544〜1850のN末端切断に、例えばC. difficile毒素Aのアミノ酸残基564〜1850、アミノ酸残基584〜1850、アミノ酸残基594〜1850、アミノ酸残基614〜1850、アミノ酸残基634〜1850、アミノ酸残基654〜1850、アミノ酸残基674〜1850、アミノ酸残基694〜1850、アミノ酸残基714〜1850、アミノ酸残基734〜1850、アミノ酸残基754〜1850、アミノ酸残基767〜1850、アミノ酸残基770〜1850、アミノ酸残基774〜1850、アミノ酸残基794〜1850、アミノ酸残基814〜1850、アミノ酸残基834〜1850、アミノ酸残基854〜1850、アミノ酸残基874〜1850、アミノ酸残基894〜1850、アミノ酸残基914〜1850、アミノ酸残基934〜1850、アミノ酸残基954〜1850、アミノ酸残基974〜1850、アミノ酸残基994〜1850、アミノ酸残基1014〜1850、アミノ酸残基1034〜1850、アミノ酸残基1054〜1850、アミノ酸残基1074〜1850、アミノ酸残基1094〜1850、アミノ酸残基1104〜1850、アミノ酸残基1124〜1850、アミノ酸残基、アミノ酸残基1131〜1850、アミノ酸残基1144〜1850、アミノ酸残基1164〜1850、アミノ酸残基1184〜1850、アミノ酸残基1204〜1850、アミノ酸残基1224〜1850、アミノ酸残基1244〜1850、アミノ酸残基1264〜1850、アミノ酸残基1284〜1850、アミノ酸残基1304〜1850、アミノ酸残基1324〜1850、アミノ酸残基1344〜1850、アミノ酸残基1364〜1850、アミノ酸残基1384〜1850、アミノ酸残基1404〜1850、アミノ酸残基1424〜1850、アミノ酸残基1444〜1850、アミノ酸残基1464〜1850、またはアミノ酸残基1684〜1850などに基づくが;但し、その融合タンパク質は、C. difficile毒素Aのアミノ酸残基543〜2710を含むポリペプチドではないことを常に条件とする。ほんの一例として、上記アミノ酸位置の番号付けは、配列番号1および/または3として確認されるC. difficile毒素Aの配列を表しうる。
【0024】
一態様では、第2のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Aの配列由来の長い繰り返し(LR)アミノ酸配列の任意の一つまたは複数に基づく(すなわち、それと少なくとも80%の配列同一性を有する)。ほんの一例として、該一つまたは複数のLR配列は、配列番号60、62、64、66、68、70および/または72のいずれかに基づきうる。別の態様では、第2のアミノ酸配列は、LRアミノ酸配列に加えて、その(隣接する)短い繰り返し(SR)配列の一つまたは複数を含む、C. difficile毒素Aの配列のモジュール配列全体に基づく。ほんの一例として、第2のアミノ酸は、配列番号61、63、65、67、69、71および/または73の一つまたは複数に基づきうる。別の態様では、第2のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Aの配列由来のモジュール1のアミノ酸配列全体(残基1851〜2007)から成るまたはそれを含む配列に基づく。例えば、表1に説明されるようなモジュール1を参照されたい。別の態様では、第2のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Aの配列由来のモジュール1およびモジュール2のアミノ酸配列全体(例えば表1に説明されるような残基1851〜2141)から成るまたはそれを含む配列に基づく。別の態様では、第2のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Aの配列由来のモジュール1およびモジュール2およびモジュール3のアミノ酸配列全体(例えば表1に説明されるような残基1851〜2253)から成るまたはそれを含む配列に基づく。別の態様では、第2のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Aの配列由来のモジュール1およびモジュール2およびモジュール3およびモジュール4のアミノ酸配列全体(例えば表1に説明されるような残基1851〜2389)から成るまたはそれを含む配列に基づく。別の態様では、第2のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Aの配列由来のモジュール1およびモジュール2およびモジュール3およびモジュール4およびモジュール5のアミノ酸配列全体(例えば表1に説明されるような残基1851〜2502)から成るまたはそれを含む配列に基づく。別の態様では、第2のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Aの配列由来のモジュール1およびモジュール2およびモジュール3およびモジュール4およびモジュール5およびモジュール6のアミノ酸配列全体(例えば表1に説明されるような残基1851〜2594)から成るまたはそれを含む配列に基づく。別の態様では、第2のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Aの配列由来のモジュール1およびモジュール2およびモジュール3およびモジュール4およびモジュール5およびモジュール6およびモジュール7のアミノ酸配列全体(例えば表1に説明されるような残基1851〜2710)から成るまたはそれを含む配列に基づく。ほんの一例として、上記のアミノ酸位置の番号付けは、配列番号1および/または3として確認されるC. difficile毒素Aの配列を表しうる。
【0025】
第2のアミノ酸配列についての任意の態様を、第1のアミノ酸配列について記載された任意の態様と組合せてもよい。
【0026】
一態様では、毒素Aの配列のアミノ酸残基1851〜2710(またはその部分)に基づく配列および毒素Aポリペプチドのアミノ酸残基770〜1850(またはその部分)に基づくN末端ポリペプチドを含むまたはそれから成る融合タンパク質が提供される。
【0027】
別の態様では、毒素Aの配列のアミノ酸残基1851〜2710(またはその部分)に基づく配列および毒素Aポリペプチドのアミノ酸残基1131〜1850に基づくN末端ポリペプチドを含むまたはそれから成る融合タンパク質が提供される。
【0028】
別の態様では、毒素Aポリペプチドのアミノ酸残基770〜2710または1131〜2710に基づく配列(例えば、配列番号5、6、7、8、18、19、20、21、22、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、または58)を含むまたはそれから成る融合タンパク質が提供される。
【0029】
別の態様では、毒素Aポリペプチドのアミノ酸残基770〜2007、770〜2141、770〜2253、770〜2389または1131〜2007、1131〜2141、1131〜2253または1131〜2389に基づく配列(例えば配列番号59)を含むまたはそれから成る融合タンパク質が提供される。
【0030】
本発明の関連する第一の局面は、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列から成るまたはそれを含む融合タンパク質であって、ここで:
1)第1のアミノ酸配列が、C. difficile毒素Bの配列の残基1500〜1851から成るアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列によって提供され;そして
2)第2のアミノ酸配列が、C. difficile毒素Bの配列のアミノ酸残基1852〜2366内に位置する長い繰り返しユニットから成るアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列によって提供される;
但し、その融合タンパク質は、C. difficile毒素Bのアミノ酸残基543〜2366を含むポリペプチドではないことを条件とする、
融合タンパク質を提供する。
【0031】
C. difficile毒素Bの配列への言及は、天然C. difficile毒素Bのアミノ酸配列(C. difficile毒素Bの参照配列とも称される)を意味する。そのような配列の例は、当業者によって容易に理解され、より一般的な天然毒素Bの配列のいくつかは、本明細書(例えば、配列番号2および4参照)および文献全体を通して確認される。
【0032】
一態様では、第1のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Bのアミノ酸残基544〜1851に基づく(すなわち、それと少なくとも80%の配列同一性を有する)。別の態様では、第1のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Bのアミノ酸残基544〜1851のN末端切断、例えばC. difficile毒素Bのアミノ酸残基564〜1851、アミノ酸残基584〜1851、アミノ酸残基594〜1851、アミノ酸残基614〜1851、アミノ酸残基634〜1851、アミノ酸残基654〜1851、アミノ酸残基674〜1851、アミノ酸残基694〜1851、アミノ酸残基714〜1851、アミノ酸残基734〜1851、アミノ酸残基754〜1851、アミノ酸残基767〜1851、アミノ酸残基770〜1851、アミノ酸残基774〜1851、アミノ酸残基794〜1851、アミノ酸残基814〜1851、アミノ酸残基834〜1851、アミノ酸残基854〜1851、アミノ酸残基874〜1851、アミノ酸残基894〜1851、アミノ酸残基914〜1851、アミノ酸残基934〜1851、アミノ酸残基954〜1851、アミノ酸残基974〜1851、アミノ酸残基994〜1851、アミノ酸残基1014〜1851、アミノ酸残基1034〜1851、アミノ酸残基1054〜1851、アミノ酸残基1074〜1851、アミノ酸残基1094〜1851、アミノ酸残基1104〜1851、アミノ酸残基1124〜1851、アミノ酸残基1131〜1851、アミノ酸残基1144〜1851、アミノ酸残基1164〜1851、アミノ酸残基1184〜1851、アミノ酸残基1204〜1851、アミノ酸残基1224〜1851、アミノ酸残基1244〜1851、アミノ酸残基1264〜1851、アミノ酸残基1284〜1851、アミノ酸残基1304〜1851、アミノ酸残基1324〜1851、アミノ酸残基1344〜1851、アミノ酸残基1364〜1851、アミノ酸残基1384〜1851、アミノ酸残基1404〜1851、アミノ酸残基1424〜1851、アミノ酸残基1444〜1851、アミノ酸残基1464〜1851、またはアミノ酸残基1684〜1851などに基づくが;但し、その融合タンパク質は、C. difficile毒素Bのアミノ酸残基543〜2366を含むポリペプチドではないことを条件とする。ほんの一例として、上記のアミノ酸位置の番号付けは、配列番号2および/または4として確認されるC. difficile毒素Bの配列を表しうる。
【0033】
一態様では、第2のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Bの配列由来の長い繰り返し(LR)アミノ酸配列の任意の一つまたは複数に基づく(すなわち、それと少なくとも80%の配列同一性を有する)。ほんの一例として、該一つまたは複数のLR配列は、配列番号74、76、78および/または80のいずれかに基づきうる。別の態様では、第2のアミノ酸配列は、LRアミノ酸配列および一つまたは複数のその(隣接する)短い繰り返し(SR)配列を含む、C. difficile毒素Bの配列のモジュール配列全体に基づく。ほんの一例として、第2のアミノ酸配列は、配列番号75、77、79および/または81の一つまたは複数に基づきうる。別の態様では、第2アミノ酸は、C. difficile毒素Bの配列由来のモジュール1のアミノ酸配列全体(残基1852〜2007)から成るまたはそれを含む配列に基づく。例えば、表2に説明されるようなモジュール1を参照されたい。別の態様では、第2のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Bの配列由来のモジュール1およびモジュール2のアミノ酸配列全体(例えば、表2に説明されるような残基1852〜2139)から成るまたはそれを含む配列に基づく。別の態様では、第2のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Bの配列由来のモジュール1およびモジュール2およびモジュール3のアミノ酸配列全体(例えば、表2に説明されるような残基1851〜2273)から成るまたはそれを含む配列に基づく。別の態様では、第2のアミノ酸配列は、C. difficile毒素Bの配列由来のモジュール1およびモジュール2およびモジュール3およびモジュール4のアミノ酸配列全体(例えば、表2に説明されるような残基1851〜2366)から成るまたはそれを含む配列に基づく。ほんの一例として、上記アミノ酸位置の番号付けは、配列番号:2および/または4として確認されるC. difficile毒素Bの配列を表しうる。
【0034】
第2のアミノ酸配列についての任意の態様を、第1のアミノ酸配列について記載された任意の態様と組合せてもよい。
【0035】
一態様では、第1および第2のアミノ酸配列が共に毒素Bの配列に基づく場合、融合タンパク質は、C. difficile毒素Bの配列の少なくとも871個または少なくとも876個または少なくとも881個または少なくとも886個または少なくとも891個または少なくとも896個または少なくとも901個の連続アミノ酸残基(例えばC末端アミノ酸残基から開始するもの)、例えば配列番号:2および/または4などに基づくアミノ酸配列から成るまたはそれを含みうる。
【0036】
一態様では、毒素Bポリペプチドのアミノ酸残基1852〜2366(またはその部分)に基づく配列および毒素Bポリペプチドのアミノ酸残基767〜1851(またはその部分)に基づくN末端ポリペプチドを含むまたはそれから成る融合タンパク質が提供される。
【0037】
別の態様では、毒素Bポリペプチドのアミノ酸残基1852〜2366(またはその部分)に基づく配列および毒素Bポリペプチドのアミノ酸残基1145〜1851(またはその部分)に基づくN末端ポリペプチドを含むまたはそれから成る融合タンパク質が提供される。
【0038】
別の態様では、毒素Bポリペプチドのアミノ酸残基767〜2366または957〜2366または1138〜2366に基づく配列(例えば、配列番号9、10、11、12、13、14、23、24、25、26、27、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56または57)を含むまたはそれから成る融合タンパク質が提供される。
【0039】
本発明は、また、毒素AおよびBのドメインのキメラである融合タンパク質を提供する。例えば、毒素Bポリペプチドに基づく一つまたは複数の長い繰り返しユニット(場合により、一つもしくは複数の短い繰り返しユニット;または一つ、複数もしくは全てのモジュールを含む)を、毒素Aポリペプチドの「足場」領域と組合せてもよい。同様に、毒素Aポリペプチドに基づく一つまたは複数の長い繰り返しユニット(場合により、一つもしくは複数の短い繰り返しユニット;または一つ、複数もしくは全てのモジュールを含む)を、毒素Bポリペプチドの「足場」領域と組合せてもよい。
【0040】
したがって、本発明のさらなる関連局面は、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列から成るまたはそれを含むハイブリッド/キメラ融合タンパク質であって、ここで:
1)第1のアミノ酸配列が、C. difficile毒素Aの配列の残基1500〜1850から成るアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列によって提供され;そして
2)第2のアミノ酸配列が、C. difficile毒素Bの配列のアミノ酸残基1852〜2366内に位置する長い繰り返しユニットから成るアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列によって提供される;
但し、その融合タンパク質は、C. difficile毒素Aのアミノ酸残基543〜2710を含むポリペプチドではないことを条件とし;そして
但し、その融合タンパク質は、C. difficile毒素Bのアミノ酸残基543〜2366を含むポリペプチドではないことを条件とする、
融合タンパク質を提供する。
【0041】
第1および第2のアミノ酸配列の態様は、上記に詳述する通りである。
【0042】
例えば一態様では、毒素Bポリペプチドのアミノ酸残基1852〜2366(またはその部分)に基づく配列および毒素Aポリペプチドのアミノ酸残基770〜1849(またはその部分)に基づくN末端ポリペプチドを含むまたはそれから成る融合タンパク質が提供される。
【0043】
別の態様では、毒素Bポリペプチドのアミノ酸残基1852〜2366(またはその部分)に基づく配列および毒素Aポリペプチドのアミノ酸残基1131〜1849(またはその部分)に基づくN末端ポリペプチドを含むまたはそれから成る融合タンパク質が提供される。
【0044】
別の態様では、毒素Bポリペプチドのアミノ酸残基1852〜2366(またはその部分)に基づく配列および毒素Aポリペプチドのアミノ酸残基1500〜1849(またはその部分)に基づくN末端ポリペプチドを含むまたはそれから成る融合タンパク質が提供される。一態様では、該毒素Aポリペプチドの構成要素は、好ましくは、毒素Aポリペプチドの残基543〜1849よりも短い配列に基づく。
【0045】
具体例には、配列番号:16または17の任意の一つまたは複数に基づくアミノ酸配列から成るまたはそれを含む融合タンパク質が挙げられる。
【0046】
同様に、本発明のさらなる関連する第一の局面は、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列から成るまたはそれを含むハイブリッド/キメラ融合タンパク質であって、ここで:
1)第1のアミノ酸配列が、C. difficile毒素Bの配列の残基1500〜1851から成るアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列によって提供され;そして
2)第2のアミノ酸配列が、C. difficile毒素Aの配列のアミノ酸残基1851〜2710内に位置する長い繰り返しユニットから成るアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列によって提供される;
但し、その融合タンパク質は、C. difficile毒素Aのアミノ酸残基543〜2710を含むポリペプチドではないことを条件とし、
そして但し、その融合タンパク質は、C. difficile毒素Bのアミノ酸残基543〜2366を含むポリペプチドではないことを条件とする、
を提供する。
【0047】
第1および第2のアミノ酸配列の態様は、上記に詳述する通りである。
【0048】
一態様では、毒素Aポリペプチドのアミノ酸残基1850〜2710(またはその部分)に基づく配列および毒素Bポリペプチドのアミノ酸残基767〜1851(またはその部分)に基づくN末端ポリペプチドを含むまたはそれから成る融合タンパク質が提供される。
【0049】
別の態様では、毒素Aポリペプチドのアミノ酸残基1850〜2710(またはその部分)に基づく配列および毒素Bポリペプチドのアミノ酸残基1145〜1851(またはその部分)に基づくN末端ポリペプチドを含むまたはそれから成る融合タンパク質が提供される。
【0050】
別の態様では、毒素Aポリペプチドのアミノ酸残基1850〜2710(またはその部分)に基づく配列および毒素Bポリペプチドの1500〜1851に基づくN末端ポリペプチドを含むまたはそれから成る融合タンパク質が提供される。一態様では、毒素Bポリペプチドの構成要素は、好ましくは、毒素Bポリペプチドの残基543〜1851よりも短い配列に基づく。
【0051】
具体例には、配列番号15に基づくアミノ酸配列から成るまたはそれを含む融合タンパク質が挙げられる。
【0052】
本明細書前記のように、本発明は、C. difficile毒素Aおよび/またはC. difficile毒素Bの「足場」区域および(C末端繰り返しユニットの)LR部分に基づく融合タンパク質に関する。これに関して、該C. difficile毒素Aおよび/または毒素Bの配列に基づく該融合タンパク質の総部分(一つまたは複数)は、典型的には最大で1940個の連続アミノ酸残基(例えば、最大で1890個、または1840個、または1790個、または1740個、または1690個、または1640個、または1590個、または1540個、または1490個、1440個、または1390個、または1340個、または1290個、または1240個の連続アミノ酸残基)になる。
【0053】
一態様では、融合タンパク質は、システインプロテアーゼ活性を実質的に欠如する。別の(または同じ)態様では、融合タンパク質は、グルコシルトランスフェラーゼ活性を実質的に欠如する。例えば、該活性(一つまたは複数)を提供するアミノ酸配列(一つまたは複数)の一部または全ては、典型的には本発明の融合タンパク質に不在である(例えば欠失している)。これらの酵素活性は、ネイティブな毒素Aおよび/または毒素Bに存在し、該毒素のN末端ドメインと関連する(
図1参照)。
【0054】
別の態様では、融合タンパク質は、ネイティブなC. difficile毒素のグルコシルトランスフェラーゼドメイン(毒素Aのアミノ酸残基1〜542;毒素Bのアミノ酸残基1〜543)を実質的に欠如する。別の(または同じ)態様では、融合タンパク質は、ネイティブなC. difficile毒素のシステインプロテアーゼドメイン(毒素Aのアミノ酸残基543〜770;毒素Bの544〜767)を実質的に欠如する。該アミノ酸残基の番号付けは、任意の毒素Aまたは毒素Bの毒素タイプの、例えば本明細書において列挙された任意の一つまたは複数の毒素Aおよび/または毒素Bの参照毒素タイプの配列番号を表す。したがって、該アミノ酸残基の番号付けは、それに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%を有するアミノ酸配列変異体を含む、本明細書に列挙された任意の特定の毒素Aおよび/または毒素Bの参照配列番号を表しうる。
【0055】
本発明の融合タンパク質構築物は、本明細書に説明されたもののように、任意の毒素Aおよび/またはB配列(任意の毒素タイプの配列を含む)から得られうる。例えば、一態様では、第1および/または第2のアミノ酸配列は、毒素タイプ0の毒素Aおよび/またはBから得られる(それぞれ配列番号1および2)。別の態様では、第1および/または第2のアミノ酸配列は、毒素タイプ3の毒素Aおよび/またはBから得られる(それぞれ配列番号3および4)。
【0056】
本発明の融合タンパク質は、さらに、可溶性発現を容易にするために融合タンパク質パートナーを含みうる。融合タンパク質パートナーは、抗原構築物のNまたはC末端に結合していてもよいが、通常はN末端に位置する。融合パートナーの例は:NusA、チオレドキシン、マルトース結合タンパク質、小型ユビキチン様分子(Sumoタグ)である。精製時に融合タンパク質パートナーの除去を容易にするために、ユニークなプロテアーゼ部位を、融合タンパク質パートナーと融合タンパク質自体の間に挿入することができる。そのようなプロテアーゼ部位には、トロンビン、第Xa因子、エンテロキナーゼ、PreScission(商標)、Sumo(商標)に対する部位を挙げることができる。または、融合タンパク質パートナーの除去は、融合タンパク質パートナーと融合タンパク質自体の間にインテイン配列を含ませることによって達成することができる。インテインは、自己切断タンパク質であって、刺激(例えば低下したpH)に応答してインテインと抗原構築物の間の結合部で自己スプライシングできることにより、特異的プロテアーゼを添加する必要性を排除するタンパク質である。インテインの例には、Mycobacterium tuberculosis(RecA)、およびPyrococcus horikoshii(RadA)(Fong et al. (2010) Trends Biotechnol. 28:272-279)から得られたドメインが挙げられる。
【0057】
精製を容易にするために、本発明の融合タンパク質は、精製工程に特定のクロマトグラフィー段階(例えば金属イオンキレート形成クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー)を組入れ可能にする一つまたは複数の精製タグを含んでもよい。そのような精製タグには、例えば:繰り返しヒスチジン残基(例えば6〜10個のヒスチジン残基)、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ;およびストレプトアビジンを挙げることができる。これらのタグは、本発明の抗原融合タンパク質のNおよび/またはC末端に結合していてもよい。精製時のそのようなタグの除去を容易にするために、プロテアーゼ部位および/またはインテイン(上記例)は、融合タンパク質と精製タグ(一つまたは複数)の間に挿入することができる。
【0058】
したがって、本発明の典型的な融合タンパク質構築物は(N末端から):
− 第1精製タグ
− 融合タンパク質パートナー(発現を容易にするため)
− 第1(好ましくは特異的)プロテアーゼ配列またはインテイン配列
− 毒素Aおよび/またはBの抗原配列
− 場合による第2(好ましくは特異的)プロテアーゼ配列またはインテイン配列
− 場合による第2精製タグ
を含みうる。
【0059】
第1および第2精製タグは、同じ場合も、異なる場合もありうる。同様に、第1および第2プロテアーゼ/インテイン配列も、同じ場合も、異なる場合もありうる。選択的でコントロール可能な切断/精製を可能にするために、第1および第2の選択肢は、好ましくは異なる。
【0060】
そのような融合タンパク質構築物の具体例を配列番号18〜27に示す。
【0061】
一態様では、精製タグと融合タンパク質の間隔を空けるためにスペーサーを導入することができ、これは、アフィニティー精製カラム媒体への結合効率を上げるために役立ちうる。スペーサーは、精製タグの(直)後に、または融合タンパク質パートナーと融合タンパク質自体の間に配置することができる。直鎖またはαヘリックス構造のいずれかを与えるために、典型的なスペーサー配列は、10から40個の間のアミノ酸残基から成りうる。
【0062】
したがって、一態様では、本発明の融合タンパク質構築物は(N末端から):
− 第1精製タグ
− 場合による第1スペーサー配列
− 融合タンパク質パートナー(発現を容易にするため)
− 場合による第2スペーサー配列
− (好ましくは特異的)プロテアーゼ配列またはインテイン配列
− 毒素Aおよび/またはB由来の抗原配列
− 場合による第2(好ましくは特異的)プロテアーゼ配列またはインテイン配列
− 場合による第3スペーサー配列
− 場合による第2精製タグ
を含む。
【0063】
そのようなタンパク質融合構築物の具体例を、配列番号28〜57に示す。
【0064】
本発明の構築物をコードする遺伝子を、PCRによってC. difficileゲノムDNAから作製し、完全性を保証するために標準法によって配列決定することができる。または、そして好ましくは、発現ホストに最適なコドンバイアスを提供する遺伝子を合成することができる(例えばE. coli、Bacillus megaterium)。したがって、本発明は、本発明の前記融合タンパク質をコードする対応する核酸配列を提供する。
【0065】
したがって、本発明の第2の局面は、前記融合タンパク質の一つまたは複数を発現させるための方法であって:
1)該融合タンパク質の一つまたは複数をコードする核酸配列をホスト細胞中に提供すること、ここで該核酸配列はプロモーターに作動可能に連結している、;および
2)該核酸配列をホスト細胞中で発現させること
を含む方法を提供する。
【0066】
本発明の融合タンパク質は、様々な方法でヒトまたは動物用のワクチンとして製剤化することができる。例えば、製剤化には、分子内架橋を導入するための薬剤を用いた処理が含まれうる。そのような薬剤の一例は、ホルムアルデヒドであり、ホルムアルデヒドは、例えば本発明の抗原融合タンパク質と共に1〜24時間インキュベーションすることができる。または、例えば最大2、4、6、8または10日という、より長いインキュベーション時間を採用してもよい。そのような薬剤を用いた処理の後に、本発明の抗原融合物を適切なアジュバントと組合せることができ、アジュバントは、抗原融合タンパク質がヒト用であるかまたは動物用であるかに応じて異なりうる。
【0067】
ヒトまたは動物用ワクチン製剤は、本発明の毒素Aおよび/または毒素Bおよび/または対応するハイブリッド/キメラ抗原融合体を含有しうる。したがって一態様では、本発明のワクチン製剤化手順は、以下の工程:
− 適切な緩衝系中にリコンビナント毒素Aおよび/または毒素Bおよび/またはハイブリッド/キメラ毒素融合タンパク質を提供すること
− 場合により(好ましくは)該混合物をホルムアルデヒドなどのトキソイド化成分で処理すること
− 場合により融合タンパク質を新しい緩衝系に移行させること
− 融合タンパク質を一つまたは複数の適切なアジュバントおよび場合により他の賦形剤と組合せること
を含む。
【0068】
したがって、本発明の第3の局面は、C. difficileの毒素Aおよび/または毒素Bに結合する抗体の作製に使用するための、本発明の前記融合タンパク質の一つまたは複数を提供する。一態様では、該抗体は、C. difficileの毒素Aおよび/または毒素Bに結合し、それを中和する。
【0069】
動物の免疫処置のために、本発明のC. difficileリコンビナント融合タンパク質抗原を、免疫原として別々にまたは組合せて、同時にまたは連続的に、個別のC. difficile毒素または組合せに特異的な抗体を産生させるために使用することができる。例えば、二つ以上のリコンビナント抗原を一緒に混合して、単一の免疫原として使用することができる。または、C. difficile毒素融合タンパク質抗原(例えば毒素A由来)を、第1動物群に対する第1免疫原として別々に使用することができ、別のC. difficile毒素抗原(例えば毒素B由来)を、第2動物群に対して別々に使用することができる。別々の免疫処置によって産生された抗体を組合せて、C. difficile毒素に対する抗体組成物を得てもよい。動物用/獣医学的使用に適したアジュバントの非限定的な例には、フロイント(完全および不完全形)、ミョウバン(リン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム)、サポニンおよびその精製された成分Quil Aが挙げられる。
【0070】
本発明の第4(ワクチン)の局面は、(例えばヒトなどの哺乳類における)CDIの予防、治療または抑制に使用するための、本発明の前記融合タンパク質の一つまたは複数を提供する。言い換えれば、本発明は、(例えばヒトなどの哺乳類における)CDIの予防、治療または抑制のための方法であって、本発明の前記融合タンパク質の一つまたは複数の治療有効量を対象(ヒトなどの哺乳類)に投与することを含む方法を提供する。
【0071】
一例として、毒素Aに基づく融合タンパク質(任意のA毒素タイプ)を、単独で、または毒素Bに基づく融合タンパク質(任意のB毒素タイプ)と組合せて採用することができる。同様に、毒素Bに基づく融合タンパク質(任意のB毒素タイプ)を、単独で、または毒素Aに基づく融合タンパク質(任意のA毒素タイプ)と組合せて採用することができる。該融合タンパク質は、連続的にまたは同時に投与することができる。本発明のワクチン適用には、さらに、C. difficile抗原(例えば非毒素抗原;または不活性化もしくは弱毒化された細菌のようなC. difficile細菌)などの一つまたは複数の抗原、および場合により一つまたは複数の院内感染抗原(例えば院内感染を引き起こす細菌由来の抗原、特に表面抗原;および/または不活性化もしくは弱毒化された細菌などの、院内感染を引き起こす細菌)の組合せ使用(例えば事前投与、連続投与または事後投与)を挙げることができる。院内感染を引き起こす細菌の例には:E. coli、Klebsiella pneumonae、MRSAなどのStaphylococcus aureus、Legionella、Pseudomonas aeruginosa、Serratia marcescens、Enterobacter spp、Citrobacter spp、Stenotrophomonas maltophilia、Acinetobacter baumanniiなどのAcinetobacter spp、Burkholderia cepacia、およびバンコマイシン耐性Enterococcus(VRE)などのEnterococcusの一つまたは複数が挙げられる。
【0072】
一態様では、該ワクチン適用は、予防的に、例えば該患者が病院(または類似の治療施設)に入院する前に患者を処置して院内感染の予防に役立つように採用してもよい。または、該ワクチン適用は、日常的な問題として、脆弱な患者に投与してもよい。
【0073】
本発明の関連ワクチン局面は、(例えばヒトなどの哺乳類における)CDIの予防、治療または抑制に使用するための、本発明の一つまたは複数の前記融合タンパク質に結合する一つまたは複数の抗体(IgG全体および/またはFabおよび/またはF(ab’)2フラグメントを含むまたはそれから成る)を提供する。言い換えれば、本発明は、(例えばヒトなどの哺乳類における)CDIを予防、治療または抑制するための方法であって、該抗体(一つまたは複数)の治療有効量を対象(例えばヒトなどの哺乳類)に投与することを含む方法を提供する。
【0074】
一例として、毒素Aに基づく融合タンパク質(任意のA毒素タイプ)に対する抗体を、単独で、または毒素Bに基づく融合タンパク質(任意のB毒素タイプ)に対する抗体と組合せて採用することができる。同様に、毒素Bに基づく融合タンパク質(任意のB毒素タイプ)に対する抗体を、単独で、または毒素Aに基づく融合タンパク質(任意のA毒素タイプ)に対する抗体と組合せて採用することができる。該抗体は、連続的にまたは同時に投与することができる。本発明のワクチン適用には、さらに、C. difficile抗原(例えば非毒素抗原;またはC. difficile細菌)などの抗原に結合する一つまたは複数の抗体、および場合により、一つまたは複数の院内感染抗原(例えば院内感染を引き起こす細菌由来の抗原、特に表面抗原;および/または院内感染を引き起こす細菌)に結合する一つまたは複数の抗体の組合せ使用(例えば事前投与、連続投与または事後投与)を挙げることができる。院内感染を引き起こす細菌の例には:E. coli、Klebsiella pneumonae、MRSAなどのStaphylococcus aureus、Legionella、Pseudomonas aeruginosa、Serratia marcescens、Enterobacter spp、Citrobacter spp、Stenotrophomonas maltophilia、Acinetobacter baumanniiなどのAcinetobacter spp、Burkholderia cepacia、およびバンコマイシン耐性Enterococcus(VRE)などのEnterococcusの一つまたは複数が挙げられる。
【0075】
一態様では、該ワクチン適用は、予防的に、例えば患者がいったん病院(または類似の治療施設)に入院してから採用してもよい。または、該ワクチン適用は、一つまたは複数の抗生物質と組合せて患者に投与してもよい。
【0076】
一態様では、該抗体は、動物(例えばヒトなどの哺乳類、またはヤギもしくはヒツジなどの非ヒト動物)に前記の本発明の融合タンパク質の一つまたは複数を免疫処置することによって作製されたものである。
【0077】
一態様では、本発明の抗体は、C. difficile毒素Aおよび/または毒素Bのエフェクタードメインおよび/またはシステインプロテアーゼドメインに(実質的に)結合しない。
【0078】
ヒト(または非ヒト動物)用のワクチンを調製するために、活性免疫原性成分(これらは、本発明の抗原性融合タンパク質(一つまたは複数)および/またはそれに結合する本発明の対応する抗体のいずれかである)は、薬学的に許容される担体または賦形剤であって、活性成分と適合性の担体または賦形剤と混合することができる。適切な担体および賦形剤には、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、およびその組合せが挙げられる。加えて、ワクチンは、所望により湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤および/またはワクチンの有効性を高めるアジュバントなどの補助物質を少量含有する場合がある。
【0079】
ワクチンは、さらに、一つまたは複数のアジュバントを含みうる。本発明の範囲のアジュバントの非限定的な一例は、水酸化アルミニウムである。アジュバントの他の非限定的な例には:N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637、ノル−MDPと称される)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、MTP−PEと称される)、および細菌から抽出された3成分であるモノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/Tween80エマルション中に含有するRIBIが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0080】
典型的には、ワクチンは、注射剤として、液剤または懸濁剤のいずれかで調製される。もちろん、注射前に液体中に溶解または懸濁するために適した固体剤形も調製することができる。また、調製物を乳化させても、またはペプチドをリポソームもしくはマイクロカプセル中に封入してもよい。
【0081】
ワクチンの投与は、一般に、従来経路、例えば静脈内、皮下、腹腔内、または粘膜経路による。投与は、注射、例えば皮下または筋肉内注射による場合がある。
【0082】
ワクチンは、投薬製剤と適合する様式で、予防的および/または治療的に有効であろう量で投与される。投与される量は、一般に1回あたり抗原5マイクログラム〜250マイクログラムの範囲内であるであるが、処置される対象、対象の免疫系が抗体を合成する能力、および所望の防御度に依存する。投与する必要のある活性成分の正確な量は、開業医の判断に依存しうるし、各対象に特定でありうる。
【0083】
ワクチンは、1回投与スケジュールで、または場合により多回投与スケジュールで投与することができる。多回投与スケジュールは、ワクチン処置の初回クールが1〜6回の別々の投与であり、続いて、免疫応答を維持および/または強化するために必要なその後の時間間隔で他の投与が行われ、例えば2回目の投与が1〜4ヶ月目であり、必要に応じてその後の投与(1回または複数回)が数ヶ月後に行われうるスケジュールである。投与方式は、また、少なくとも部分的には個体の必要性によって決定され、開業医の判断に依存するであろう。
【0084】
加えて、免疫原性抗原(一つまたは複数)を含有するワクチンは、他の免疫調節剤、例えば免疫グロブリン、抗生物質、インターロイキン(例えばIL−2、IL−12)、および/またはサイトカイン(例えばIFNγ)と共に投与してもよい。
【0085】
本発明で使用するために適した追加的な製剤には、マイクロカプセル剤、坐剤、および場合により、経口製剤またはエアロゾルとして分布させるために適した製剤が挙げられる。坐剤について、従来の結合剤および担体には、例えばポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを挙げることができるが;そのような坐剤は、約0.5%〜10%、例えば約1%〜2%など、の範囲内で活性成分を含有する混合物から形成させることができる。
【0086】
本発明の融合タンパク質は、また、アフィニティークロマトグラフィー手順に使用するためのリガンドとしての用途を有しうる。そのような手順では、本発明の融合タンパク質は、例えば臭化シアン活性化セファロースを使用して、セファロースなどのマトリックス上に共有結合的に固定化することができる。次に、そのようなアフィニティーカラムは、抗血清または免疫グロブリンの部分精製溶液から抗体を精製するために使用することができ、それはそれらの液をカラムに通過させ、次に、結合しているIgG画分を(例えば低pHにより)溶離させることによる。溶離した画分中の抗体のほとんど全てが本発明の融合タンパク質に対するものであり、非特異的抗体および他のタンパク質は除去されるであろう。これらのアフィニティー精製されたIgG画分は、免疫療法剤および診断試薬の両方としての適用を有する。免疫療法剤について、アフィニティー精製された抗体は、より低用量を投与可能にし、有害副作用の可能性をより小さくする。診断薬について、アフィニティー精製された薬剤は、向上した特異性およびより少ない偽陽性結果を与えることが多い。
【0087】
定義の部
Clostridium difficileは、Clostridium属のグラム陽性細菌の一種である。
【0088】
Clostridium difficile感染(CDI)は、ヒトおよび動物を冒す細菌感染であって、軽症の自己限定性の下痢から偽膜性大腸炎および細胞中毒性巨大結腸などの致命的な状態までの一連の症状を招く細菌感染を意味する。この疾患では、C. difficileが正常な腸管内フローラの一部に置き換わり、腸上皮を攻撃して損傷する細胞毒素を生産し始める。ヒトCDIに関する主リスク因子には:広域スペクトル抗生物質処置を受けている、年齢が65歳よりも大きい、および入院中が挙げられる。
【0089】
Clostridium difficile毒素Aは、大きさが約300kDaのタンパク質性細胞毒素/エンテロトキシンのファミリーである。毒素Aは、哺乳類細胞の細胞骨格を破壊して細胞死を引き起こすように作用する酵素活性をN末端領域内に有する。Clostridium difficileの株内には「毒素タイプ」と呼ばれる毒素Aのいくつかの天然変異体がある。毒素Aの様々な毒素タイプは、通常、それらの一次配列内に全体で<10%の変異を有する。適切な毒素A配列の例には、配列番号:1および3が挙げられる。
【0090】
Clostridium difficile毒素Bは、毒素Aに類似しているが顕著に細胞毒性が高い、大きさが約270kDaのタンパク質性細胞毒素ファミリーである。毒素Aのように、毒素Bは、哺乳類細胞の細胞骨格を破壊して細胞死を引き起こすように作用する酵素活性をN末端領域内に有する。C. difficileの株内には、「毒素タイプ」と呼ばれる、毒素Bのいくつかの天然変異体がある。毒素Bの様々な毒素タイプは、それらの一次配列内に全体で最大15%の変異を有する。適切な毒素B配列の例には、配列番号:2および4が挙げられる。
【0091】
C. difficile繰り返しユニットは、von Eichel-StreiberおよびSauerborn(1990; Gene 30: 107-113)によって最初に同定された繰り返しモチーフを含有する、毒素AおよびBのC末端内の領域である。毒素Aの場合、31個の短いリピートおよび7個の長いリピートがあり、各リピートは、βヘアピンに続くループから成る。毒素Bは、類似の構造から成るが、繰り返しがより少ない。毒素Aの繰り返しユニットは、残基1850〜2710内に含有され、毒素Bの繰り返しユニットは残基1852〜2366内に含有される。繰り返し領域は、レセプターの結合に役割を果たす。レセプター結合領域(すなわち毒素の構造結合ポケットを規定する)は、長い繰り返し領域周囲にクラスター化して「結合モジュール」を形成すると思われる(表1および2)参照。
【0092】
毒素AおよびBの中央ドメインは、哺乳類細胞内への毒素の移行に役割を果たすと考えられている。毒素Aの中央ドメインは、残基543〜1849に基づき、毒素Bについての中央ドメインは、残基543〜1851に基づく。毒素AおよびBの中央ドメイン領域のうち、第1のドメインはシステインプロテアーゼであり、毒素のエフェクタードメイン(グルコシルトランスフェラーゼ活性を含有する)のインターナリゼーションに役割を果たす。
【0093】
毒素タイプは、C. difficileの株を分類するために使用されることが多い。毒素タイピングは、毒素遺伝子で得られた制限パターンを特徴づける方法に基づく。毒素AおよびBの毒素タイプは、これらのタンパク質性毒素の一次アミノ酸配列による変異体を表す。一態様では、C. difficile毒素は、毒素タイプ0〜XVの一つより選択される。好ましい毒素タイプ(ならびにリボタイプおよび株の例)をすぐ下の表に挙げる。列挙した毒素タイプは、純粋に例示的であり、本発明を限定しようとするものではない。
【0094】
【表101】
【0095】
「抗体」は、最も広い意味で使用され、それらが所望の生物学的活性を示す限り、具体的にポリクローナル抗体および抗体フラグメントを包含する。例えば、抗体は、少なくとも1または2個の重(H)鎖可変領域(本明細書においてVHCと略す)、および少なくとも1または2個の軽(L)鎖可変領域(本明細書においてVLCと略す)を含むタンパク質である。VHCおよびVLC領域は、さらに、「相補性決定領域」(「CDR」)と名付けられた超可変領域と、それに点在し、より高く保存された「フレームワーク領域」(FR)と名付けられた領域とに細分することができる。フレームワーク領域およびCDRの程度は正確に定義されている(参照により本明細書に組入れられるKabat, E.A., et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242, 1991、およびChothia, C. et al, J. MoI. Biol. 196:901-917, 1987参照)。好ましくは、VHCおよびVLCのそれぞれは、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて以下の順序に配列した3個のCDRおよび4個のFRから構成される:FRl、CDRl、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0096】
抗体のVHCまたはVLC鎖は、さらに、重鎖または軽鎖定常領域の全てまたは一部を含みうる。一態様では、抗体は、2本の免疫グロブリン重鎖および2本の免疫グロブリン軽鎖の四量体であり、ここで、免疫グロブリン重鎖および軽鎖は、例えばジスルフィド結合によって相互に結合している。重鎖定常領域は、3個のドメイン、CHl、CH2およびCH3を含む。軽鎖定常領域は、1個のドメイン、CLから成る。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、典型的には免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(CIq)を含めた、ホスト組織または因子への抗体の結合を仲介する。「抗体」という用語には、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM型のインタクトな免疫グロブリン(およびそのサブタイプ)が含まれ、その際、免疫グロブリン軽鎖は、κまたはλ型でありうる。
【0097】
本明細書に使用されるような抗体という用語は、C. difficileの毒素(例えば毒素AまたはB)に結合する抗体の部分、例えば、1本または複数本の免疫グロブリン鎖が完全長ではないが毒素に結合する分子も表す。抗体という用語内に包含される結合部分の例には、(i)Fabフラグメント、すなわちVLC、VHC、CLおよびCHlドメインから成る一価フラグメント;(ii)F(ab’)
2フラグメント、すなわちヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合した2個のFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHCおよびCHlドメインから成るFcフラグメント;(iv)抗体の一本の腕のVLCおよびVHCドメインから成るFvフラグメント、(v)VHCドメインから成るdAbフラグメント(Ward et al, Nature 341:544-546, 1989);ならびに(vi)結合するために十分なフレームワークを有する単離された相補性決定領域(CDR)、例えば可変領域の抗原結合部分が挙げられる。リコンビナント法を用いて、軽鎖可変領域の抗原結合部分と重鎖可変領域の抗原結合部分を、例えば、Fvフラグメントの二つのドメイン、VLCとVHCを、合成リンカーによって繋ぐことができ、そのリンカーのおかげで、それらの部分を、VLCおよびVHC領域が対になって一価分子を形成したタンパク質1本鎖として製造できるようになる(単鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al. (1988) Science lAl-ATi-Alβ;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. ScL USA 85:5879-5883参照)。そのような単鎖抗体(およびラクダ抗体(camelid))もまた、抗体という用語内に包含される。これらは、当業者に公知の従来技法を用いて得られ、それらの一部がインタクトな抗体と同様に有用性についてスクリーニングされる。
【0098】
「フラグメント」という用語は、典型的には参照配列の連続アミノ酸配列の少なくとも70、好ましくは少なくとも80、より好ましくは少なくとも90%を有するペプチドを意味する。
【0099】
「変異体」という用語は、C. difficile毒素ポリペプチドと少なくとも80、好ましくは少なくとも85、より好ましくは少なくとも90%のアミノ酸配列相同性を有するペプチドまたはペプチドフラグメントを意味する。配列比較のために、典型的には一つの配列が参照配列としての機能を果たし、その参照配列と被験配列を比較することができる。配列比較アルゴリズムを使用する場合、被験配列および参照配列がコンピューターにインプットされ、必要に応じて後続の座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターが指定される。次に、配列比較アルゴリズムが、参照配列に比べた被験配列(一つまたは複数)についての配列同一パーセンテージを、指定されたプログラムパラメーターに基づき計算する。
【0100】
非限定的にグローバル法、ローカル法および例えばセグメントアプローチ法などのハイブリッド法を含めた、任意の多様な配列アライメント法を用いて同一パーセントを決定することができる。同一パーセントを決定するためのプロトコールは、当業者の範囲内の日常的な手順である。グローバル法は、分子の最初から終わりまで配列をアライメントし、個別の残基対のスコアを加算することによって、そしてギャップペナルティーを課すことによって最良のアライメントを決定する。非限定的な方法には、例えば、CLUSTAL W、例えば、Julie D. Thompson et al., CLUSTAL W: Improving the Sensitivity of Progressive Multiple Sequence Alignment Through Sequence Weighting, Position- Specific Gap Penalties and Weight Matrix Choice, 22(22) Nucleic Acids Research 4673-4680 (1994)参照;および反復改良法、例えば、Osamu Gotoh, Significant Improvement in Accuracy of Multiple Protein. Sequence Alignments by Iterative Refinement as Assessed by Reference to Structural Alignments, 264(4) J. MoI. Biol. 823-838 (1996)参照が挙げられる。ローカル法は、インプット配列の全てによって共有される一つまたは複数の保存されたモチーフを同定することによって配列をアライメントする。非限定的な方法には、例えばマッチボックス、例えば、Eric Depiereux and Ernest Feytmans, Match-Box: A Fundamentally New Algorithm for the Simultaneous Alignment of Several Protein Sequences, 8(5) CABIOS 501 -509 (1992)参照;Gibbsサンプリング、例えば、C. E. Lawrence et al., Detecting Subtle Sequence Signals: A Gibbs Sampling Strategy for Multiple Alignment, 262(5131 ) Science 208-214 (1993)参照;アライン−M、例えば、Ivo Van WaIIe et al., Align-M - A New Algorithm for Multiple Alignment of Highly Divergent Sequences, 20(9) Bioinformatics:1428-1435 (2004)参照が挙げられる。
【0101】
したがって、配列同一性パーセントは、従来法によって決定される。例えば、Altschul et al.,
Bull. Math. Bio. 48: 603-16, 1986およびHenikoff and Henikoff,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-19, 1992を参照されたい。簡潔には、ギャップオープニングペナルティー10、ギャップ伸長ペナルティー1、および下記のようなHenikoffおよびHenikoffの「blosum 62」スコアリングマトリックス(同文献)を使用して、アライメントスコアを最適化するように二つのアミノ酸配列がアライメントされる(アミノ酸を標準的な一文字コードによって表示する)。
【0102】
配列同一性を決定するためのアライメントスコア
【0103】
【表102】
【0104】
次に、同一パーセントは、
【0105】
【数1】
として計算される。
【0106】
実質的に相同なポリペプチドは、一つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または付加を有することとして特徴づけられる。これらの変化は、好ましくは小さな種類であり、それは保存的アミノ酸置換(下記参照)およびポリペプチドの折り畳みまたは活性に顕著には影響しない他の置換;小さな欠失、典型的には1〜約30個のアミノ酸の欠失;およびアミノ末端メチオニン残基、最大約20〜25残基の小型リンカーペプチド、またはアフィニティータグなどの小さなアミノ末端伸長またはカルボキシル末端伸長である。
【0107】
保存的アミノ酸置換
塩基性: アルギニン
リシン
ヒスチジン
酸性: グルタミン酸
アスパラギン酸
極性: グルタミン
アスパラギン
疎水性: ロイシン
イソロイシン
バリン
芳香族: フェニルアラニン
トリプトファン
チロシン
小型: グリシン
アラニン
セリン
トレオニン
メチオニン
【0108】
20個の標準アミノ酸に加えて、非標準アミノ酸(4−ヒドロキシプロリン、6−N−メチルリシン、2−アミノイソ酪酸、イソバリンおよびα−メチルセリンなど)を、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基と置き換えてもよい。限られた数の非保存的アミノ酸、すなわち遺伝コードによってコードされていないアミノ酸、および非天然アミノ酸を、Clostridiumポリペプチドのアミノ酸残基と置き換えてもよい。本発明のポリペプチドは、非天然アミノ酸残基も含みうる。
【0109】
非天然アミノ酸には、非限定的に、trans−3−メチルプロリン、2,4−メタノプロリン、cis−4−ヒドロキシプロリン、trans−4−ヒドロキシ−プロリン、N−メチルグリシン、アロトレオニン、メチルトレオニン、ヒドロキシエチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、tert−ロイシン、ノルバリン、2−アザフェニルアラニン、3−アザフェニルアラニン、4−アザフェニル−アラニン、および4−フルオロフェニルアラニンが挙げられる。タンパク質に非天然アミノ酸残基を組入れるために、当技術分野においていくつかの方法が公知である。例えば、化学的にアミノアセチル化されたサプレッサーtRNAを使用してナンセンス突然変異が抑制されるin vitro系を採用することができる。アミノ酸を合成する方法およびtRNAをアミノアセチル化する方法は、当技術分野において公知である。ナンセンス突然変異を含有するプラスミドの転写および翻訳は、E. coli S30抽出物ならびに市販の酵素および他の試薬を含む無細胞系で実施される。タンパク質は、クロマトグラフィーによって精製される。例えば、Robertson et al.,
J. Am. Chem. Soc. 113:2722, 1991; Ellman et al.,
Methods Enzymol.
202:301, 1991; Chung et al.,
Science259:806-9, 1993;およびChung et al.,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:10145-9, 1993参照。第2の方法では、翻訳は、突然変異mRNAおよび化学的にアミノアセチル化されたサプレッサーtRNAのマイクロインジェクションによってXenopus卵母細胞において実施される。(Turcatti et al.,
J. Biol. Chem.
271:19991-8, 1996)。第3の方法の中で、E. coli細胞が、置換されるべき天然アミノ酸(例えばフェニルアラニン)の非存在下で、そして所望の非天然アミノ酸(一つまたは複数)(例えば、2−アザフェニルアラニン、3−アザフェニルアラニン、4−アザフェニルアラニン、または4−フルオロフェニルアラニン)の存在下で培養される。非天然アミノ酸は、ポリペプチド中に、その天然対応物の位置に組入れられる。Koide et al.,
Biochem.
33:7470-6, 1994参照。天然アミノ酸残基は、in vitro化学的改変によって非天然種に変換することができる。化学的改変を部位特異的突然変異誘発と組合せて、さらに置換の範囲を拡大することができる(Wynn and Richards,
Protein Sci.
2:395-403, 1993)。
【0110】
限られた数の非保存アミノ酸、すなわち、遺伝コードによってコードされないアミノ酸、非天然アミノ酸、および異常(unnatural)アミノ酸を本発明のポリペプチドのアミノ酸残基と置換することができる。
【0111】
本発明のポリペプチド中の不可欠アミノ酸は、部位特異的突然変異誘発またはアラニンスキャン突然変異誘発などの当業界で公知の手順により同定することができる(Cunningham and Wells,
Science 244: 1081-5, 1989)。生物学的相互作用の部位もまた、推定される接触部位のアミノ酸の突然変異と関連して、核磁気共鳴、結晶学、電子線回折または光アフィニティーラベリングのような技法によって決定されるような物理学的構造解析によって決定することができる。例えば、de Vos et al.,
Science 255:306-12, 1992; Smith et al.,
J. Mol. Biol. 224:899-904, 1992; Wlodaver et al.,
FEBS Lett.309:59-64, 1992を参照されたい。不可欠アミノ酸の同一性は、本発明のポリペプチドの関連構成要素(例えば移行成分またはプロテアーゼ成分)との相同性の分析からも推論することができる。
【0112】
Reidhaar-OlsonおよびSauer(
Science241:53-7, 1988)またはBowieおよびSauer(
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2152-6, 1989)によって開示された方法のような公知の突然変異誘発およびスクリーニング法を用いて、多重アミノ酸置換を行い試験することができる。簡潔には、これらの著者は、ポリペプチド中の二つ以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドを選択し、次に、突然変異誘発されたポリペプチドを配列決定して各位置での許容される置換のスペクトルを決定するための方法を開示している。使用できる他の方法には、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al.,
Biochem. 30:10832-7, 1991; Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Huse、WIPO公報である国際公開公報第92/06204号)および領域特異的突然変異誘発(Derbyshire et al.,
Gene 46:145, 1986; Ner et al.,
DNA7:127, 1988)が挙げられる。
【0113】
毒素の中和は、哺乳類細胞上の毒素AまたはBのいずれかの細胞毒性作用を物質が阻止する能力を意味する。毒素中和活性についてのアッセイでは、一定量の毒素が様々な濃度の中和物質(例えば抗体)と混合され、その混合物が哺乳類細胞系(例えばVero細胞)に適用され、その細胞と共に一定時間インキュベーションされる。毒素AまたはBのいずれかの細胞毒性作用(細胞の円形化によって明らかになる)から細胞を完全に保護する物質(抗体)の希釈を、中和力価として定義することができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【
図1】様々なドメイン境界でのアミノ酸残基を示す、C. difficile毒素AおよびBの構造を示す図である。
【
図2】TxB3の精製を示す図である。左図は、TxB3の4〜12%SDS−PAGE分析を示す。M1=SeeBlue(登録商標)Plus2染色前標準。M2=MagicMark(商標)XP標準。右図は、ヒツジ抗TcdBポリクローナル抗体を用いたTxB3のウエスタンブロット分析を示す。M1およびM2は、左図に説明したものと同様である。
【
図3】TxB4の精製を示す図である。左図は、TxB4の4〜12%SDS−PAGE分析を示す。M=SeeBlue(登録商標)Plus2染色前標準。右図は、ヒツジ抗TcdBポリクローナル抗体を用いたTxB4のウエスタンブロット分析を示す。M=MagicMark(商標)XP標準。
【
図4】TxB5の精製を示す図である。左図は、TxB5の4〜12%SDS−PAGE分析を示す。M=SeeBlue(登録商標)Plus2染色全標準。右図は、ヒツジ抗TcdBポリクローナル抗体を用いたTxB5のウエスタンブロット分析を示す。M=MagicMark(商標)XP標準。
【
図5】TxA4の精製およびHRV3Cプロテアーゼ処理されたTxA4のニッケルアフィニティー精製のSDS−PAGE分析を示す図である。M=分子量マーカー、L=カラムのロード、A8=カラムの溶離液。画分A14〜B14は精製されたTxA4を示した。
【0115】
実施例
実施例1 毒素AおよびBから得られた抗原のクローニングおよび発現
これらのペプチドをコードする遺伝子は、任意の所望の発現ホスト(例えばE. coli、Pichia pastoris)に関するコドンバイアスを有するように商業的に製造することができる。ペプチドは、これらの遺伝子から標準的な分子生物学的方法を用いて発現される(例えばSambrook et al. 1989, Molecular Cloning a Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)。クローニングの好都合な一方法は、遺伝子構築物をモジュラー的に集合させるGateway(登録商標)システム(Invitrogen)である。
【0116】
プロトコール1:Gateway LR組換え反応 一般プロトコール
材料:抗原遺伝子(毒素AまたはB))エントリークローンをEntelechonによって合成した。Gateway(登録商標)LR Clonase(商標)II酵素混合物をInvitrogenから購入した。Gateway(登録商標)Nova pETデスティネーションベクターを、Merck Chemicals Ltd.の一部門であるCalbiochem Novaから購入した。
【0117】
毒素AまたはBのエントリークローン(1μl)、デスティネーションベクター(1μl)およびTE緩衝液(6μl)を1.5mlマイクロ遠心チューブに入れて室温で混合した。LR Clonase(商標)IIを2分間氷上に置き、ボルテックス(2秒×2回)で手早く混合した。Clonase酵素(2μl)をマイクロ遠心チューブに加え、静かにピペッティングして成分を混合した。組換え物を25℃で1時間インキュベーションした。プロテイナーゼK溶液(1μl、2μg/μl)を加え、反応物を37℃で10分間インキュベーションした。結果として生じた溶液(1μl)を使用して化学的コンピテントE. coliをトランスフォーメーションした。
【0118】
プロトコール2:化学的コンピテント細胞のトランスフォーメーション 一般プロトコール
材料:OneShot(登録商標)BL21 Star(商標)(DE3)およびOne Shot(登録商標)TOP10化学的コンピテントE. coliおよびSOC培地はInvitrogenから購入した。アンピシリンはSigma Aldrichから購入した。
【0119】
LR組換え反応物またはプラスミドDNA(1μl)を、一定分量(50μl)のBL21 Star(商標)またはTOP10化学的コンピテントE. coliにピペットで入れた。この混合物を氷上で30分間インキュベーションし、続いて42℃の水浴中で30秒間熱ショックを与えた。一定分量の細胞を氷へ戻し、SOC培地(250μl)を加えた。軌道振盪(180rpm)しながらトランスフォーメーション物を37℃のSOC培地中で1時間維持した。トランスフォーメーション培養物(100〜200μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を補充したLB寒天上に蒔いた。プレートを37℃で15分間インキュベーションし、倒置し、同温度で一晩維持した。
【0120】
実施例2 本発明の抗原の精製 C. difficile毒素BフラグメントTxB3の発現および精製
毒素B由来抗原TxB3(−h)(例えば配列番号9)をチオレドキシン融合タンパク質(配列番号27)として発現させた。
【0121】
TxB3のN−his
6−チオレドキシン融合物を、プラスミドpDest59TxB3を有するBL21 Star(商標)(DE3)E. coli内で発現させた。100μg/mlアンピシリンおよび0.5%グルコースを補充したLB培地(3×20ml)に、グリセロール保存細胞(OD600が<1の細胞培養物[500μl]+グリセロール[125μl])から接種した。培養物を軌道振盪(180rpm)しながら37℃で6〜7時間維持した。100μg/mlアンピシリンおよび0.5%グルコースを補充したLB培地(100ml)に接種するために各培養物を使用した。培養物を軌道振盪(180rpm)しながら37℃で1時間維持した。100μg/mlアンピシリンおよび0.1%グルコースを補充したTB(Terrific Broth)培地(3×1L)にLB培養液を接種し(100ml/L)、600nmでの吸光度が0.5になるまで前回と同様に37℃で維持した。終濃度1mMになるまでIPTGを添加して発現を誘導し、培養物を軌道振盪(180rpm)しながら16℃で一晩維持した。30分間遠心分離することによって(3000rpm、Sorvall RC3BP遠心分離機、ロータH6000A)細胞を回収し、低イミダゾール緩衝液(100ml、pH7.4、50mM HEPES、500mM塩化ナトリウム、20mMイミダゾール)中に再懸濁し、−80℃で凍結した。
【0122】
(i)チオレドキシンTxB3融合タンパク質のニッケルアフィニティー精製
細胞ペーストを、室温の次に氷上で液化するまで解凍した。超音波処理して細胞を破壊し(オン30秒およびオフ30秒を10サイクル)、結果として生じた溶解物を30分間の遠心分離によって透明化した(14,000rpm、Sorvall RC5C遠心分離機、ロータSS−34)。ニッケルイオンをチャージされたファストフローキレーティングセファロース(fast flow chelating sepharose)(ベッド体積40ml)に透明化された溶解物を流速1ml/minで適用した。280nMでの溶離液の吸光度がベースラインレベル近くに戻るまで、カラムを低イミダゾール緩衝液(pH7.4、50mM HEPES、500mM塩化ナトリウム、20mMイミダゾール)で洗浄した。15、25および70%高イミダゾール緩衝液(pH7.4、50mM HEPES、500mM塩化ナトリウム、500mMイミダゾール)への連続ステップで、結合した物質を溶離させた。70%高イミダゾール緩衝液で溶離した物質をプールし、トロンビン切断緩衝液(20mMトリス−HCl pH8.4、150mM塩化ナトリウム、2.5mM塩化カルシウム)で一晩透析した。
【0123】
(ii)チオレドキシンTxB3融合タンパク質のトロンビン消化
トロンビン切断緩衝液で透析したニッケルカラム画分プールにヒトトロンビン(Novagen、1U/mg総タンパク質)を添加した。消化物を25℃で4時間インキュベーションし、−80℃で凍結して継続切断を防止した。
【0124】
(iii)TxB3のニッケルアフィニティー精製
トロンビン消化物を氷上で解凍し、p−アミノベンズアミジン樹脂を添加した(トロンビン6Uあたり水切りをした樹脂0.1ml)。この混合物を氷上で30分間静かに揺らし、樹脂を濾過した。透明化された濾液を、ニッケルイオンをチャージされたファストフローキレーティングセファロース(ベッド体積6ml)に流速1ml/minで通過させ、溶離液をプールし、保存用緩衝液(pH7.4、50mM HEPES、150mM塩化ナトリウム)で透析した。この溶液を無菌濾過し、1ml分量にした。得られた総タンパク質は10.5mgであり、これは、55% TxB3と推定された。ヒツジ抗TcdBポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットによっても、タンパク質を分析した(
図2)。
【0125】
実施例3 本発明の抗原の精製 C. difficile毒素BフラグメントTxB4の発現および精製
Nus TxB4融合タンパク質の大規模発現
プラスミドpDest57TxB4Hisを有するBL21 Star(DE3)E. coliの−80℃原液からの一滴を、100μg/mlアンピシリンを補充したL寒天上に画線し、37℃で一晩インキュベーションした。単一のコロニーを使用して、100μg/mlアンピシリンおよび0.5%グルコースを補充した2YT培地(100ml)に接種した。600nmでの吸光度が0.6になるまで軌道振盪(180rpm)しながら培養物を37℃で維持し、100μg/mlアンピシリンおよび0.5%グルコースを補充したTB培地(2×1L)用の5%の接種材料として使用した。600nmの吸光度が0.6になるまで培養物を前回と同様に維持し、温度を16℃に下げた。熱平衡化後にIPTGを終濃度1mMまで添加することによってタンパク質の発現を誘導し、培養物を一晩維持した。30分間遠心分離することによって(3000rpm、Sorvall RC3BP遠心分離機、ロータH6000A)細胞を回収し、低イミダゾール緩衝液(細胞ペースト:緩衝液(w/v)=1:4、50mM HEPES pH7.4、500mM 塩化ナトリウム、20mMイミダゾール)中に再懸濁し、−80℃で凍結した。
【0126】
Nus TxB4融合タンパク質のニッケルアフィニティー精製
細胞ペーストを室温の次に氷上で液化するまで解凍した。超音波処理して細胞を破壊し(オン30秒およびオフ30秒を15サイクル)、結果として生じた溶解物を4℃で30分間の遠心分離によって透明化した(16,000rpm、Sorvall RC5C遠心分離機、ロータSS−34)。ニッケルイオンをチャージされたファストフローキレーティングセファロース(ベッド体積40ml)に透明化された溶解物を流速2ml/minで適用した。280nmでの溶離液の吸光度がベースラインレベル近くに戻るまで、カラムを低イミダゾール緩衝液(pH7.4、50mM HEPES、500mM塩化ナトリウム、20mMイミダゾール)で洗浄した。50%高イミダゾール緩衝液(pH7.4、50mM HEPES、500mM塩化ナトリウム、500mMイミダゾール)へのステップで、結合した物質を溶離させた。カラムから溶離した物質をSDS−PAGEによって分析し、選択された画分をプールした。280nmの吸光度からタンパク質濃度を決定した。
【0127】
Nus TxB4融合タンパク質のトロンビン消化
タンパク質それぞれ10μgに、トロンビン消化緩衝液(200mMトリス−HCl pH8.4、1.5M NaCl、25mM CaCl
2)5μl、トロンビン希釈緩衝液(50mMクエン酸ナトリウム、pH6.5、200mM NaCl、0.1%PEG−8000、50%グリセロール)で200倍に希釈したヒトトロンビン(Novagen)1μlおよび水を添加し、体積50μlとした。タンパク質を室温で一晩消化し、4℃にて低イミダゾール緩衝液で透析した。
【0128】
TxB4のニッケルアフィニティー精製
ニッケルイオンをチャージされたファストフローキレーティングセファロース(ベッド体積40ml)に低イミダゾール緩衝液中のTxB4を流速3ml/minで適用した。280nmでの溶離液の吸光度がベースラインレベル近くに戻るまでカラムを低イミダゾール緩衝液で洗浄した。カラムを80mMイミダゾールで洗浄し、結果として生じた最初のUV吸光度(280nm)ピークの後に溶離するタンパク質を採集し、保存用緩衝液(50mM HEPES pH7.4、150mM塩化ナトリウム)で透析した。タンパク質をSDS−PAGEおよびヒツジ抗TcdBポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットによって分析した(
図3)。
【0129】
実施例4 C. difficile毒素BフラグメントTxB5(毒素Bの残基544〜2366)の発現および精製
Nus TxB5融合タンパク質の大規模発現
TxB5のN−his
6−Nus融合体を、プラスミドpDest57TxB5を有するBL21 Star(商標)(DE3)E. coliに発現させた。100μg/mlアンピシリンを補充したLB培地中での一晩培養物を、100μg/mlアンピシリンを補充したTB培地(3L)のための3%接種材料として使用した。培養物を軌道振盪(180rpm)しながら600nmでの吸光度が0.6になるまで37℃で維持した。IPTGを終濃度1mMまで添加して発現を誘導し、培養物を軌道振盪(180rpm)しながら16℃で一晩維持した。細胞(25g)を30分間遠心分離することによって回収し(3000rpm、Sorvall RC3BP遠心分離機、ロータH6000A)、低イミダゾール緩衝液(250ml、pH7.4、50mM HEPES、500mM塩化ナトリウム、20mMイミダゾール)中に再懸濁した。
【0130】
Nus TxB5融合タンパク質のニッケルアフィニティー精製
再懸濁した細胞にリゾチーム(10mg)を添加し、この混合物を15分間撹拌した。超音波処理して細胞を破壊し(オン30秒およびオフ30秒を10サイクル)、結果として生じた溶解物を30分間の遠心分離によって透明化した(14,000rpm、Sorvall RC5C遠心分離機、ロータSS−34)。ニッケルイオンをチャージされたファストフローキレーティングセファロース(ベッド体積40ml)に透明化された溶解物の半分を流速2ml/minで適用した。280nmでの溶離液のUV吸光度がベースラインレベル近くに戻るまでカラムを低イミダゾール緩衝液で洗浄した。38%(200mMイミダゾール)高イミダゾール緩衝液(pH7.4、50mM HEPES、500mM塩化ナトリウム、500mMイミダゾール)へのステップでNus TxB5を含むタンパク質を溶出させた。溶解物の残りの半分を同様に処理し、溶離タンパク質プールを高塩HIC緩衝液(pH7.4、50mM HEPES、750mM硫酸アンモニウム)で一晩透析した。
【0131】
Nus TxB5のブチル−s疎水性相互作用クロマトグラフィー精製
高塩HIC緩衝液中にプールされたタンパク質溶液の半分を、ブチル−s−セファロース6ファストフロー樹脂(ベッド体積9ml)が入っているカラムに適用した。溶離液の280nmでのUV吸光度がベースライン近くに戻るまでカラムを高塩HIC緩衝液(pH7.4、50mM HEPES、750mM硫酸アンモニウム)で洗浄した。100%低塩HIC緩衝液((pH7.4、50mM HEPES)へのステップでタンパク質をカラムから溶離させた。第1のニッケルカラムからのタンパク質の残りの半分を同様に精製した。トロンビンを用いた消化の準備として、溶離したタンパク質をプールした。
【0132】
Nus TxB5融合タンパク質のトロンビン消化
HICカラムからプールされたタンパク質(69mg、30ml)を、10×トロンビン切断緩衝液(15ml、200mMトリス−HCl pH8.4、1.5M塩化ナトリウム、25mM塩化カルシウム)、脱イオン水(105ml)およびヒトトロンビン(Novagen、40U)を含有する溶液に添加した。溶液を室温で4時間インキュベーションし、PMSFを終濃度1mMまで添加した。結果として生じた、TxB5を含むタンパク質を高塩HIC緩衝液で透析した。
【0133】
TxB5のブチル−s疎水性相互作用クロマトグラフィー精製
トロンビン消化物からのTxB5を2バッチで精製した。各バッチを高塩HIC緩衝液(pH7.4、50mM HEPES、750mM硫酸アンモニウム)に入れて、ブチル−s−セファロース6ファストスロー樹脂(ベッド体積9ml)が入っているカラムに流速1ml/minで適用した。溶離液の280nmでのUV吸光度がベースラインレベル近くに戻るまでカラムを高塩HIC緩衝液で洗浄した。100%低塩HIC緩衝液(pH7.4、50mM HEPES)へのステップでタンパク質をカラムから溶離させた。溶離した物質を緩衝液(pH7.4、50mM HEPES)で一晩透析した。
【0134】
TxB5のQセファロースイオン交換クロマトグラフィー精製
緩衝液(pH7.4、50mM HEPES)中のTxB5に、Qセファロースファストフロー樹脂(ベッド体積5ml)が入っているカラムを流速1ml/minで通過させた。溶離液をプールし、保存用緩衝液(pH7.4、50mM HEPES、150mM塩化ナトリウム)で透析した。タンパク質約20mgが生成し、SDS−PAGE分析に基づくと、このうち60%がTxB5であった。タンパク質を1ml分量にして−80℃で凍結させた。SDS−PAGEおよびヒツジ抗TcdBポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングによってタンパク質を分析した(
図4)。
【0135】
実施例5 C. difficile毒素AフラグメントTxA4(毒素Aの残基770〜2710)の発現および精製
発現
50μg/mlカナマイシンおよび0.2%グルコースを補充したL培地(100ml)に、グリセロール凍結物(プラスミドpET28aHis
6TrxHRV3CαNaturalTxA4を有するBL21(DE3)E. coli)から掻き取ったものを接種し、30℃および180rpmで一晩維持した。一晩培養物を、50μg/mlカナマイシンおよび0.2%グルコースを補充したTB培地(2Lバッフルなしフラスコ中に0.5L×4本)用の2%接種材料として使用した。培養物を軌道振盪(180rpm)しながら600nmでの吸光度が0.6になるまで37℃で維持した。培養物の温度を16℃に下げ、タンパク質の発現を1mM IPTGの添加によって誘導した。培養物を前回のように軌道振盪しながら16℃で一晩維持した。細胞ペースト(23g)を遠心分離(Sorvall RC3BP遠心分離機、H6000Aロータ、4000g、20分)によって回収した。低イミダゾール緩衝液(pH7.5、50mM Hepes、0.5M塩化ナトリウム、20mMイミダゾール)中に再懸濁することによってペーストを遠心ポットから回収し、−80℃で保存した。
【0136】
TxA4前駆体の固定化ニッケルアフィニティー精製
細胞(23g)を低イミダゾール緩衝液(pH7.5、50mM Hepes、0.5M NaCl 20mMイミダゾール)85mlで再懸濁し、超音波処理を利用して溶解に供した。溶解物を遠心分離(Sorvall RC5C遠心分離機、SS−34ロータ、20,000g、20分)によって透明化し、流速1.5ml/minで20mlニッケルカラム(φ26mM)に適用した。カラムを10カラム体積の低イミダゾール緩衝液で洗浄し、結合しているタンパク質を、100%高イミダゾール緩衝液(pH7.5、50mM Hepes、0.5M NaCl、0.5Mイミダゾール)への5カラム体積の勾配を用いて溶離した。4〜12%NuPAGEビス−トリスポリアクリルアミドゲルで、クマシー染色を行って画分を分析した。
【0137】
融合パートナーとHis6−タグの切断
最も純度の高い画分をプールし、HRV3C切断緩衝液(2L、pH7.5、20mMトリス−HCl、0.5M NaCl)で4℃にて一晩透析した。HRV3Cプロテアーゼ(10U/mg完全長ターゲットタンパク質)を溶液に添加し、20℃で5時間、続いて4℃で一晩インキュベーションした。
【0138】
切断後TxA4の固定化ニッケルアフィニティー精製
タンパク質溶液(pH7.5 20mMトリス−HCl、0.5M NaCl)に20mlニッケルカラム(φ26mM)を流速1.5ml/minで通過させた。UV吸光度によって判断したところ、一部のタンパク質は溶離液中に溶離することが見出された。HRV3C切断緩衝液でカラムを短時間洗浄し、5%高イミダゾール緩衝液(pH7.5、50mM Hepes、0.5M NaCl、0.5Mイミダゾール)を用いてイミダゾール濃度25mMでTxA4を溶離させた。100%高イミダゾール緩衝液への4カラム体積の勾配をかけて、残ったタンパク質をカラムから溶離させた。最も純度の高い画分をプールし、保存用緩衝液(pH7.5 50mM Hepes、0.5M NaCl)で透析した。最終精製カラムからの画分を
図5に示す。
【0139】
実施例6 C. difficile毒素AフラグメントTxA4切断型(毒素Aの残基770〜2389)の発現および精製
発現
100μg/mlアンピシリンおよび0.5%グルコースを補充したL培地(100ml)に、100μg/mlアンピシリンを補充したL寒天プレート上の一晩成長物からコロニー(pET59His6TRXtcsαnaturalTxA4truncateを有する)を接種し、37℃および180rpmで一晩維持した。これを、100μg/mlアンピシリンおよび0.5%グルコースを補充したTB培地(2000mlバッフルなしフラスコ中に1000ml×6本)用の接種材料として使用した。培養物を軌道振盪(180rpm)しながら600nmでの吸光度が0.6になるまで37℃で維持した。培養物の温度を16℃に下げ、終濃度1mMのIPTGを添加してタンパク質の発現を誘導した。培養物を前回と同様に軌道振盪しながら16℃で一晩維持した。細胞ペーストを遠心分離(Sorvall RC3BP遠心分離機、H6000Aロータ、4000g、30分)によって回収した。ペーストをHepes緩衝液(50mM Hepes pH7.4、0.5M塩化ナトリウム)中に再懸濁することによって遠心ポットから回収し、−20℃で保存した。
【0140】
TxA4切断型前駆体の固定化ニッケルアフィニティー精製
Hepes緩衝液(50mM Hepes pH7.4、500mM NaCl)180mlで再懸濁された細胞(44g)を、超音波処理を利用して溶解に供した。4000rpmで20分間遠心分離(Heraeus Multifuge)することによって溶解物を透明化した。上清を回収し、64ml亜鉛セファロースカラム(XK26×12)に流速5ml/分で適用した。280nmでの吸光度がベースラインまで減少するまでカラムを洗浄した。結合しているタンパク質を、50mM Hepes pH7.4、500mM塩化ナトリウム中に0〜250mMイミダゾールの勾配を利用して、結合しているタンパク質を溶離させた。4〜12%NuPAGEビス−トリスポリアクリルアミドゲルでクマシー染色し、これら画分を分析した。
【0141】
融合パートナーとHis6−タグの切断
最も純度の高い画分をプールし、トロンビン切断緩衝液(20mMトリス/HCl pH8.4+150mM NaCl+2.5mM CaCl
2)で+4℃で一晩透析した。レストリクショングレード・トロンビン(Restriction grade thrombin)(Novagen)をターゲットタンパク質に対して1:2000(wt/wt)となるように添加した。この混合物を室温で一晩インキュベーションした。
【0142】
切断後TxA4短縮型の固定化亜鉛アフィニティー精製
タンパク質溶液(50mM Hepes pH7.4、500mM塩化ナトリウム中)に、24ml亜鉛カラム(XK16×12)を流速2ml/minで通過させた。280nmでの吸光度がベースラインに下がるまでカラムを平衡緩衝液(50mM Hepes pH7.4、500mM塩化ナトリウム)で洗浄した。結合しているタンパク質を、50mM Hepes pH7.4、500mM塩化ナトリウム中に0〜250mMイミダゾールの勾配を用いて溶離させた。
【0143】
実施例7 動物を免疫処置するための本発明の抗原の製剤化
濃度0.5〜2mg/ml(公称1mg/ml)の精製C. difficile抗原を、適切な緩衝液(例えば150mM NaClを含有する10mM Hepes緩衝液pH7.4)で透析し、次にホルムアルデヒドを終濃度0.2%になるまで添加し、35℃で最大7日間インキュベーションした。インキュベーション後に、場合により、適切な緩衝液、例えばリン酸緩衝食塩水で透析することによってホルムアルデヒドを除去してもよい。
【0144】
ヒツジ用に、上記C. difficile抗原10〜500μgを含有する緩衝溶液2mlをフロイントアジュバント2.6mlと混合し、エマルションを形成させる。アジュバントとの混合は、安定なエマルションを確実にするために数分間実施する。初回免疫処置のために完全型アジュバントを、その後の全ての追加免疫処置のためにフロイント不完全アジュバントを使用する。
【0145】
実施例8 本発明の抗原に対する抗体の作製
最適な液性抗体応答を達成するために、抗血清の調製時にいくつかの従来要因を考慮する。これらには:動物の品種;アジュバントの選択;免疫処置部位の数および位置;免疫原の量;ならびに投与回数および投与間隔が挙げられる。6g/リットル血清を上回る特異的抗体レベルを得るために、これらのパラメーターを従来のように最適化することが常用されている。
【0146】
ヒツジ用に、抗原とフロイントアジュバントとのエマルションを、実施例7に記載するように調製する。初回免疫処置のために完全型アジュバントを、その後の全ての追加免疫処置のためにフロイント不完全アジュバントを使用する。各ヒツジに抗原/アジュバント混合物約4.2mlを、頚部および全ての上肢を含めた6個の部位にわたりi.m.注射によって免疫処置する。これを28日毎に繰り返した。各免疫処置の14日後に血液試料を採取した。
【0147】
異なる抗原に対する毒素中和免疫応答を比較するために、抗原1種類あたり3匹のヒツジを使用した。免疫処置1回毎に同一のプロトコールおよび同じタンパク質用量を用いて、それらを上記のように免疫処置した。
【0148】
実施例9 in vitro細胞アッセイを用いた毒素抗血清の中和有効性の評価
C. difficile毒素に対する抗血清の毒素中和活性を、Vero細胞を用いた細胞傷害性アッセイによって測定した。精製されたC. difficile毒素Aまたは毒素Bのいずれかの一定量を、様々な希釈を行った抗体と混合し、37℃で30分間インキュベーションし、次に、96ウェル組織培養プレート上に成長しているVero細胞に適用した。毒素AおよびBの両方が、Vero細胞の特徴的な円形化を招く細胞傷害活性を24〜72時間にわたり有した。中和抗体の存在下でこの活性は阻害され、抗体調製物の中和強度は、毒素AまたはBのいずれかの指定量の効果を中和するために必要な希釈によって評価することができる。
【0149】
様々なリコンビナントC. difficile毒素B抗原に対するヒツジ抗体の中和活性を実証しているデータを表3〜6に示す。これらの実験において、様々な希釈を行ったヒツジ抗体を終濃度0.5ng/mlの毒素Bと混合し、37℃で30分間インキュベーションし、次に上記のようにVero細胞に適用し、37°でインキュベーションし、24〜72時間にわたりモニタリングした。毒素Bの細胞障害作用から細胞を完全に保護する抗体の希釈度を計算した。毒素A由来抗原についての類似のデータを表7〜10に示す。
【0150】
まとめると、表3〜10におけるデータは、毒素AまたはBのいずれかの繰り返しドメインだけを含有するフラグメントに比べて、本発明の融合タンパク質が毒素中和免疫応答を卓越して誘発できることを示している。
【0151】
実施例10 CDIを処置するための、本発明のリコンビナント抗原を用いて作製された抗血清のin vivo有効性の評価
リコンビナント抗原を用いて作製した抗血清がCDIをin vivo処置する有効性を実証するために、シリアンハムスターにC. difficile毒素の一つまたは複数に対して中和活性を有する抗体を受動免疫処置する。治療用製剤の有効性を評価するために、C. difficile誘発の6時間後から誘発の240時間後までの様々な時間に、静脈内または腹腔内経路のいずれかでハムスターに抗体を与える。
【0152】
受動免疫処置する前に、ハムスターに広域スペクトル抗生物質(例えばクリンダマイシン)を投与し、12〜72時間後にC. difficile胞子で口内誘発する。次に、C. difficile関連疾患の症状について動物を最大15日間モニタリングする。対照の非免疫処置動物は、疾患の徴候(例えば下痢、腹部膨満、嗜眠、被毛の乱れ)を発生したが、ヒツジ抗体で処置された動物は正常に見える。
【0153】
実施例11 本発明のペプチド/ペプチドフラグメントによるワクチン処置
本発明のペプチド/ペプチドフラグメントによって代表されるワクチンを、現行の製造品質管理基準(Good Manufacturing Practice)によって調製する。そのような基準を用いて、本発明のペプチド/ペプチドフラグメントを市販の水酸化アルミニウムアジュバント(例えばアルハイドロゲル)と結びつけてもよい。そのワクチンは通常、毒素Aおよび毒素Bから得られた本発明の抗原の組合せを含有するが、毒素AまたはB抗原のいずれかを含有する場合がある。そのワクチンは、また、毒素AおよびB抗原を、細菌またはウイルス起原の他の抗原と組合せて含有することもありうる。
【0154】
本発明の精製C. difficile毒素Aおよび/または毒素B抗原を終濃度0.2%のホルムアルデヒドで処理して、35℃で最大24時間インキュベーションしてもよい(実施例7に記載)。
【0155】
本発明の抗原に加えて、典型的なワクチン組成は:
A)緩衝液(例えば、5〜20mMおよびpH7.0〜7.5のHepes緩衝液;
B)ワクチンを生理学的に等張にする塩成分(例えば100〜150mM NaCl);
C)アジュバント(例えば、ワクチン1回あたりアルミニウム終濃度100〜700μgの水酸化アルミニウム);ならびに
D)保存料(例えば、0.01%チオメルサールまたは0.01%ホルムアルデヒド)
を含む。
【0156】
そのようなワクチン組成は:
1. 0.5ml(例えば、吸着された本発明のフラグメント20μg)を1回皮下投与する、
2. 0.5ml(例えば、吸着された本発明のフラグメント10μg)を0および4週間目に2回投与する、
3. 0.5ml(例えば、吸着された本発明のフラグメント10μg)を0、2および12週間目に3回投与する
などの、多様な異なる免疫処置方式によってヒトに投与される。
【0157】
これらのワクチン処置方式は、C. difficile毒素の相同血清型への曝露からの防御レベルを付与する。
【0158】
実施例12 本発明の固定化構築物を用いたIgGのアフィニティー精製
アフィニティークロマトグラフィー媒体の調製
固定化しようとする本発明の構築物を、適切なカップリング緩衝液、例えば0.5M NaClを含有する0.1M NaHCO
3 pH 8.3で透析する。1〜3mg/mlタンパク質溶液約5mlにCNBr−活性化セファロース4B粉末1mlあたり添加する。この混合物を室温で1時間または4℃で一晩転倒回転する。他の静かな撹拌法を採用してもよい。次に、過剰のリガンドは、少なくとも5媒体(ゲル)体積の過剰のカップリング緩衝液を用いて洗浄除去する。次に、残った活性基があればブロッキングする。媒体を0.1Mトリス−HCl緩衝液、pH8.0または1Mエタノールアミン、pH8.0に移し、室温で2時間インキュベーションする。次に、ゲルを少なくとも3サイクルの交互pH(少なくとも5媒体体積の各緩衝液)で洗浄する。各サイクルは、0.5M NaClを含有する0.1M酢酸/酢酸ナトリウム、pH4.0を用いた洗浄に続く、0.5M NaClを含有する0.1Mトリス−HCl、pH8を用いた洗浄から成るものとする。洗浄後、ゲルを適切な保存緩衝液(例えば、0.15M NaClを含有する50mM HEPES pH7.4に移し、使用まで4℃で保存する。
【0159】
IgGの精製
毒素AまたはBのいずれかから得られた本発明の抗原を使用して、上記のようにアフィニティーカラムを調製する。毒素Bに対する抗体を精製するために、TxB4(残基767〜2366)などの構築物を使用することができよう。毒素Aに対する抗体を精製するために、TxA4(残基770〜2710)などの構築物を使用することができよう。毒素Bに結合する抗体のアフィニティー精製のために、毒素Bに対する抗体を含有する血清を、適切な緩衝液(例えば0.5M NaClを含有する20mM HEPES pH7.4緩衝液)で1:1に希釈し、その混合物を、適切なカラムに充填された固定化TxB4が入っているカラムに適用する(ゲル1mlあたり2〜6mlの混合物)。未結合の画分(血清アルブミンおよび非特異的IgGを含有する)を、少なくとも10カラム体積の0.5M NaCl緩衝液を含有する20mM HEPES pH7.4緩衝液で洗浄除去後に、結合している画分を5カラム体積の溶離緩衝液(例えば100mMグリシン緩衝液、pH2.5)でカラムから溶離させる。次に、IgGを含有する溶離画分を直ちに1Mトリス−HCl pH8.0でpH約7.0に中和する。次に、毒素Bと結合するIgGを含有するこれらの画分を、0.15m NaClを含有する50mM HEPES pH7.4で透析し、必要になるまで凍結保存する。
【0160】
毒素AまたはBのいずれかと結合してそれを中和する、アフィニティー精製されたIgG画分を、CDIの治療または予防のいずれかの治療剤として使用することができる。これらは、また、毒素AまたはBを検出するための酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などのアッセイ系に使用することができる。そのような診断系では、アフィニティー精製された抗体は、より感度が高く、バックグラウンド妨害が低下したアッセイを提供することができる。
【0161】
図面および表
【0162】
【表1】
【0163】
【表2】
【0164】
【表3】
【0165】
【表4】
【0166】
【表5】
【0167】
【表6】
【0168】
【表7】
【0169】
【表8】
【0170】
【表9】
【0171】
【表10】
【0172】
【化1】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]