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特許6377910電気外科手術における狭帯域実数インピーダンス制御のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377910
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】電気外科手術における狭帯域実数インピーダンス制御のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20180813BHJP
   A61B 5/05 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   A61B18/12
   A61B5/05 B
【請求項の数】13
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-19032(P2014-19032)
(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公開番号】特開2014-180536(P2014-180536A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2017年1月30日
(31)【優先権主張番号】61/794,191
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/100,113
(32)【優先日】2013年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エー. ギルバート
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−509100(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0071521(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0071516(US,A1)
【文献】 特開2008−086776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
A61B 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科手術ジェネレータであって、該電気外科手術ジェネレータは、
組織を処理するための電気外科手術エネルギーを生成するように構成された出力ステージと、
該電気外科手術エネルギーの電圧波形および電流波形を感知するように構成された複数のセンサと、
該出力ステージおよび該複数のセンサに結合されたコントローラであって、該コントローラは、該生成された電気外科手術エネルギーを制御するように構成されている、コントローラと
を含み、
該コントローラは、
信号プロセッサと、
出力コントローラと
を含み、
該信号プロセッサは、(1)複数の狭帯域フィルタを用いて、該複数のセンサによって感知された該電圧波形および該電流波形に基づいて、複素数値の電圧および複素数値の電流を決定することと、(2)該複素数値の電圧および該複素数値の電流を用いて該組織のインピーダンスの実数部を計算することとを行うように構成されており、
該出力コントローラは、該組織のインピーダンスの該計算された実数部に基づいて、該出力ステージを制御するように構成されており、
該信号プロセッサは、以下の方程式に従って、該組織インピーダンスの実数部を計算し、
【数1】
ここで、aは、該複素数値の電圧の実数部であり、bは、該複素数値の電圧の虚数部であり、cは、該複素数値の電流の実数部であり、dは、該複素数値の電流の虚数部である、電気外科手術ジェネレータ。
【請求項2】
前記複数の狭帯域フィルタは、多相デシメーターフィルタまたはGoertzel DFTフィルタである、請求項1に記載の電気外科手術ジェネレータ。
【請求項3】
前記多相デシメーターフィルタは、前記電気外科手術エネルギーの周波数の調和倍数である中心周波数を有するヘテロダイン化されたキャリア中心多相フィルタである、請求項2に記載の電気外科手術ジェネレータ。
【請求項4】
前記電気外科手術エネルギーは、無線周波数(RF)エネルギーである、請求項1に記載の電気外科手術ジェネレータ。
【請求項5】
前記信号プロセッサは、以下の方程式に従って、前記組織インピーダンスの虚数部を計算し、
【数2】
ここで、aは、前記複素数値の電圧の実数部であり、bは、該複素数値の電圧の虚数部であり、cは、前記複素数値の電流の実数部でありdは、該複素数値の電流の虚数部である、請求項に記載の電気外科手術ジェネレータ。
【請求項6】
前記信号プロセッサは、前記組織インピーダンスの前記計算された実数部および虚数部に基づいて該組織インピーダンスの大きさを計算する、請求項1に記載の電気外科手術ジェネレータ。
【請求項7】
前記感知された電圧波形および前記感知された電流波形の各々についての所定の数のサンプルを取得するために、該感知された電圧波形および該感知された電流波形をサンプリングするように構成された複数のアナログ−デジタルコンバータ(ADC)をさらに含み、
該所定の数のサンプルは、該電圧波形および該電流波形の整数個の周期に対応する、請求項1に記載の電気外科手術ジェネレータ。
【請求項8】
前記複数のADCが前記感知された電圧波形および前記感知された電流波形をサンプリングする前に、該感知された電圧波形および該感知された電流波形をフィルタリングするように構成された複数のローパスフィルタをさらに含む、請求項に記載の電気外科手術ジェネレータ。
【請求項9】
前記複数の狭帯域フィルタが、削減された電圧波形および削減された電流波形をフィルタリングする前に、前記サンプリングされた電圧波形および前記サンプリングされた電流波形を削減するように構成された複数のデシメーターをさらに含む、請求項に記載の電気外科手術ジェネレータ。
【請求項10】
前記出力コントローラは、前記インピーダンスの前記実数部と該インピーダンスの所望の実数部との差に基づいてフィードバック波形を生成し、
該フィードバック波形は、前記出力ステージを制御するために使用される、請求項1に記載の電気外科手術ジェネレータ。
【請求項11】
前記コントローラは、フィールドプログラマブルゲートアレイ、特定用途の集積回路、デジタル信号プロセッサ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ、特定用途の規格品集積回路それらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の電気外科手術ジェネレータ。
【請求項12】
命令を格納する非一時的な格納媒体であって、プロセッサによって実行されるとき、該命令は、電気外科手術ジェネレータを制御する方法を実行し、該方法は、
組織を処置するための電気外科手術エネルギーを生成することと、
該生成された電気外科手術エネルギーの電圧波形および電流波形を感知することと、
複数の狭帯域フィルタを用いて、該感知された電圧波形および該感知された電流波形に基づいて、複素数値の電圧および複素数値の電流を決定することと、
該組織のインピーダンスの実数部を計算することと、
該組織のインピーダンスの該計算された実数部に基づいて、該電気外科手術エネルギーを制御することと
を含み、
該組織インピーダンスの実数部は、以下の方程式に従い、
【数3】
ここで、aは、該複素数値の電圧の実数部であり、bは、該複素数値の電圧の虚数部であり、cは、該複素数値の電流の実数部であり、dは、該複素数値の電流の虚数部である、非一時的な格納媒体。
【請求項13】
前記プロセッサは、フィールドプログラマブルゲートアレイ、特定用途の集積回路、デジタル信号プロセッサ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ、特定用途の規格品集積回路それらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の非一時的な格納媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
1.技術分野
本開示は、電気外科手術に関する。特に、本開示は、電気外科手術における組織の精密処置に対する狭帯域実数インピーダンス制御のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の背景
電気外科手術は、電気外科手術手順に間に生体組織を切断または修正するために、高周波数電流の応用を伴う。電気外科手術が、電気外科手術ジェネレータ、アクティブ電極、およびリターン電極を用いて行われる。電気外科手術ジェネレータ(電源または波形ジェネレータとも呼ばれる)は、交流電流(AC)を生成し、ACが、アクティブ電極を通して患者の組織に印加され、リターン電極を通して電気外科手術ジェネレータに戻される。ACは、筋肉および/または神経刺激を避けるために、一般的に100キロヘルツ(kHz)以上の周波数を有する。
【0003】
電気外科手術の間に、電気外科手術ジェネレータによって生成されたACは、アクティブ電極とリターン電極との間に配置された組織を通して伝導される。組織のインピーダンスは、ACに関連付けられる電気エネルギー(電気外科手術エネルギーとも呼ばれる)を、組織温度を上昇させる熱に変換する。電極外科手術ジェネレータは、組織に提供された電気パワー(すなわち、時間ごとの電気エネルギー)を制御することによって組織の加熱を制御する。多くの他の変数が組織の全過熱に影響を与えるが、増大された電流密度は、大抵増大された過熱を引き起こす。電気外科手術エネルギーは、一般的に、組織を切断、解剖、切除、凝固、および/または密閉するために使用される。
【0004】
利用される電気外科手術の2つの基本種類は、単極性電気外科手術および双極性電気外科手術である。これらの種類の電気外科手術の両方は、アクティブ電極およびリターン電極を使用する。双極性電気外科手術において、外科手術器具は、同じ器具または互いに対して非常に近接にアクティブ電極およびリターン電極を含み、概して電流が小さい量の組織を通して流れるようにする。単極性電気外科手術において、リターン電極は、患者の体の上に他の部分に設置され、一般的に電気外科手術器具自身の一部分ではない。単極性電気外科手術において、リターン電極は、概してリターンパッドと呼ばれるデバイスの一部分である。
【0005】
いくつかの電気外科手術ジェネレータは、コントローラを含み、コントローラは、電気外科手術ジェネレータの出力付近の電圧および電流の測定に基づいていくらかの期間にわたって組織に送達される電力を制御する。これらのジェネレータは、離散型フーリエ変換(DFT)または多相復調を使用して、実効電力を計算することおよび校正および補償を行うことのために、電圧測定と電流測定との間の位相差を計算する。
【0006】
いくつかの電気外科手術はまた、組織が最も抵抗があるという仮定の下で広帯域二乗平均平方根(RMS)電圧を広帯域RMS電流で割ることによって組織インピーダンスを計算する。校正および補償の技術が、任意のゲインまたは位相に誘起された誤差を補償するために利用される。しかしながら、RMS電圧および電流の広帯域測定におけるノイズは減衰させられない。実際には、RMS計算の「二乗」部分は、ノイズに相関し、ノイズの大きさをRMS電圧および電流の大きさに加算する。低い電圧および電流において、ノイズの大きさは、RMS電圧および電流の大きさに対してさらに重大であり、RMS電圧および電流の不正確な測定を引き起こす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要約)
本開示のシステムおよび方法は、RMS電圧および電流、組織インピーダンス、並びに出力電力の正確な測定を提供する。一局面において、本開示は、出力ステージ、センサ、およびコントローラを含む電気外科手術ジェネレータを特徴とする。出力ステージは、組織を処理するための電気外科手術エネルギーを生成し、センサは、電気外科手術エネルギーの電圧波形および電流波形を感知する。コントローラは、出力ステージおよび複数のセンサに結合されて、生成された電気外科手術エネルギーを制御する。コントローラは、信号プロセッサを含み、信号プロセッサは、(1)狭帯域フィルタを用いて、センサによって感知された電圧波形および電流波形に基づいて、複素数値の電圧および複素数値の電流を決定し、(2)複素数値の電圧および複素数値の電流を用いて組織のインピーダンスの実数部を計算する。コントローラは、出力コントローラも含み、出力コントローラは、組織のインピーダンスの計算された実数部に基づいて、出力ステージを制御する。
【0008】
狭帯域フィルタは、多相デシメーターフィルタまたはGoertzel DFTフィルタであり得る。多相デシメーターフィルタは、電気外科手術エネルギーの周波数の調和倍数である中心周波数を有するヘテロダイン化されたキャリア中心多相フィルタであり得る。また、電気外科手術エネルギーは、無線周波数(RF)エネルギーであり得る。
【0009】
局面において、信号プロセッサは、以下の方程式に従って、組織インピーダンスの実数部を計算し、
【0010】
【化1】
ここで、aは、複素数値の電圧の実数部であり、bは、複素数値の電圧の虚数部であり、cは、複素数値の電流の実数部であり、およびdは、複素数値の電流の虚数部である。信号プロセッサは、以下の方程式に従って、組織インピーダンスの虚数部も計算し得、
【0011】
【化2】
ここで、aは、複素数値の電圧の実数部であり、bは、複素数値の電圧の虚数部であり、cは、複素数値の電流の実数部であり、およびdは、複素数値の電流の虚数部である。
【0012】
局面において、信号プロセッサは、組織インピーダンスの計算された実数部および虚数部に基づいて組織インピーダンスの大きさを計算し得る。
【0013】
局面において、電気外科手術ジェネレータは、感知された電圧波形および感知された電流波形の各々についての所定の数のサンプルを取得するために、感知された電圧波形および感知された電流波形をサンプリングするアナログ−デジタルコンバータ(ADC)をさらに含み得る。所定の数のサンプルは、電圧波形および電流波形の整数個の周期に対応し得る。電気外科手術ジェネレータは、ADCが感知された電圧波形および感知された電流波形をサンプリングする前に、感知された電圧波形および感知された電流波形をフィルタリングするローパスフィルタも含み得る。電気外科手術ジェネレータは、狭帯域フィルタが、削減された電圧波形および削減された電流波形をフィルタリングする前に、サンプリングされた電圧波形およびサンプリングされた電流波形を削減するデシメーターも含み得る。
【0014】
局面において、出力コントローラは、インピーダンスの実数部とインピーダンスの所望の実数部との差に基づいてフィードバック波形を生成する。フィードバック波形は、出力ステージを制御するために使用され得る。
【0015】
局面において、コントローラは、フィールドプログラマブルゲートアレイ、特定用途の集積回路、特定用途の規格品集積回路、またはデジタル信号プロセッサで実装され得る。
【0016】
別の局面において、本開示は、電気外科手術ジェネレータのための方法を特徴とする。方法は、組織を処置するための電気外科手術エネルギーを生成することと、生成された電気外科手術エネルギーの電圧波形および電流波形を感知することと、狭帯域フィルタを用いて、感知された電圧波形および感知された電流波形に基づいて、複素数値の電圧および複素数値の電流を決定することと、組織のインピーダンスの実数部を計算することと、組織のインピーダンスの計算された実数部に基づいて、電気外科手術エネルギーを制御することとを含む。
【0017】
局面において、狭帯域フィルタは、多相デシメーターフィルタまたはGoertzel DFTフィルタであり得る。多相デシメーターフィルタは、電気外科手術エネルギーの周波数の調和倍数である中心周波数を有するヘテロダイン化されたキャリア中心多相フィルタであり得る。
【0018】
局面において、方法は、以下の方程式に従って、組織インピーダンスの実数部を計算することをさらに含み得、
【0019】
【化3】
ここで、aは、複素数値の電圧の実数部であり、bは、複素数値の電圧の虚数部であり、cは、複素数値の電流の実数部であり、およびdは、複素数値の電流の虚数部である。方法は、以下の方程式に従って、組織インピーダンスの虚数部を計算することも含み得、
【0020】
【化4】
ここで、aは、複素数値の電圧の実数部であり、bは、複素数値の電圧の虚数部であり、cは、複素数値の電流の実数部であり、およびdは、複素数値の電流の虚数部である。方法は、組織インピーダンスの計算された実数部および虚数部に基づいて組織インピーダンスの大きさを計算することも含み得る。方法は、感知された電圧波形および感知された電流波形の各々についての所定の数のサンプルを取得するために、感知された電圧波形および感知された電流波形をサンプリングすることも含み得、所定の数のサンプルは、電圧波形および電流波形の整数個の周期に対応する。
【0021】
なお別の居面において、本開示は、命令を格納する非一時的な格納媒体を特徴とし、プロセッサによって実行されるとき、命令は、電気外科手術ジェネレータのための方法を行う。方法は、組織を処置するための電気外科手術エネルギーを生成することと、生成された電気外科手術エネルギーの電圧波形および電流波形を感知することと、狭帯域フィルタを用いて、感知された電圧波形および感知された電流波形に基づいて、複素数値の電圧および複素数値の電流を決定することと、組織のインピーダンスの実数部を計算することと、組織のインピーダンスの計算された実数部に基づいて、電気外科手術エネルギーを制御することとを含む。
【0022】
局面において、プロセッサは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途の集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、プログラマブルデジタル信号プロセッサ、またはこれらのプロセッサの任意の組み合わせであり得る。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
電気外科手術ジェネレータであって、該電気外科手術ジェネレータは、
組織を処理するための電気外科手術エネルギーを生成するように構成された出力ステージと、
該電気外科手術エネルギーの電圧波形および電流波形を感知するように構成された複数のセンサと、
該出力ステージおよび該複数のセンサに結合されたコントローラであって、該コントローラは、該生成された電気外科手術エネルギーを制御するように構成されている、コントローラと
を含み、
該コントローラは、
信号プロセッサと、
出力コントローラと
を含み、
該信号プロセッサは、(1)複数の狭帯域フィルタを用いて、該複数のセンサによって感知された該電圧波形および該電流波形に基づいて、複素数値の電圧および複素数値の電流を決定することと、(2)該複素数値の電圧および該複素数値の電流を用いて該組織のインピーダンスの実数部を計算することとを行うように構成され、
該出力コントローラは、該組織のインピーダンスの該計算された実数部に基づいて、該出力ステージを制御するように構成されている、電気外科手術ジェネレータ。
(項目2)
上記複数の狭帯域フィルタは、多相デシメーターフィルタまたはGoertzel DFTフィルタである、上記項目に記載の電気外科手術ジェネレータ。
(項目3)
上記多相デシメーターフィルタは、上記電気外科手術エネルギーの周波数の調和倍数である中心周波数を有するヘテロダイン化されたキャリア中心多相フィルタである、上記項目のいずれかに記載の電気外科手術ジェネレータ。
(項目4)
上記電気外科手術エネルギーは、無線周波数(RF)エネルギーである、上記項目のいずれかに記載の電気外科手術ジェネレータ。
(項目5)
上記信号プロセッサは、以下の方程式に従って、上記組織インピーダンスの実数部を計算し、
【0023】
【数1】
ここで、aは、上記複素数値の電圧の実数部であり、bは、該複素数値の電圧の虚数部であり、cは、上記複素数値の電流の実数部であり、およびdは、該複素数値の電流の虚数部である、上記項目のいずれかに記載の電気外科手術ジェネレータ。
(項目6)
上記信号プロセッサは、以下の方程式に従って、上記組織インピーダンスの虚数部を計算し、
【0024】
【数2】
ここで、aは、上記複素数値の電圧の実数部であり、bは、該複素数値の電圧の虚数部であり、cは、上記複素数値の電流の実数部であり、およびdは、該複素数値の電流の虚数部である、上記項目のいずれかに記載の電気外科手術ジェネレータ。
(項目7)
上記信号プロセッサは、上記組織インピーダンスの上記計算された実数部および虚数部に基づいて該組織インピーダンスの大きさを計算する、上記項目のいずれかに記載の電気外科手術ジェネレータ。
(項目8)
上記感知された電圧波形および上記感知された電流波形の各々についての所定の数のサンプルを取得するために、該感知された電圧波形および該感知された電流波形をサンプリングするように構成された複数のアナログ−デジタルコンバータ(ADC)をさらに含み、
該所定の数のサンプルは、該電圧波形および該電流波形の整数個の周期に対応する、上記項目のいずれかに記載の電気外科手術ジェネレータ。
(項目9)
上記複数のADCが上記感知された電圧波形および上記感知された電流波形をサンプリングする前に、該感知された電圧波形および該感知された電流波形をフィルタリングするように構成された複数のローパスフィルタをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の電気外科手術ジェネレータ。
(項目10)
上記複数の狭帯域フィルタが、削減された電圧波形および削減された電流波形をフィルタリングする前に、上記サンプリングされた電圧波形および上記サンプリングされた電流波形を削減するように構成された複数のデシメーターをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の電気外科手術ジェネレータ。
(項目11)
上記出力コントローラは、上記インピーダンスの上記実数部と該インピーダンスの所望の実数部との差に基づいてフィードバック波形を生成し、
該フィードバック波形は、上記出力ステージを制御するために使用される、上記項目のいずれかに記載の電気外科手術ジェネレータ。
(項目12)
上記コントローラは、フィールドプログラマブルゲートアレイ、特定用途の集積回路、デジタル信号プロセッサ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ、特定用途の規格品集積回路、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のいずれかに記載の電気外科手術ジェネレータ。
(項目13)
電気外科手術ジェネレータのための方法であって、該方法は、
組織を処置するための電気外科手術エネルギーを生成することと、
該生成された電気外科手術エネルギーの電圧波形および電流波形を感知することと、
複数の狭帯域フィルタを用いて、該感知された電圧波形および該感知された電流波形に基づいて、複素数値の電圧および複素数値の電流を決定することと、
該組織のインピーダンスの実数部を計算することと、
該組織のインピーダンスの該計算された実数部に基づいて、該電気外科手術エネルギーを制御することと
を含む、方法。
(項目14)
上記複数の狭帯域フィルタは、多相デシメーターフィルタまたはGoertzel DFTフィルタである、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目15)
上記多相デシメーターフィルタは、上記電気外科手術エネルギーの周波数の調和倍数である中心周波数を有するヘテロダイン化されたキャリア中心多相フィルタである、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目16)
以下の方程式に従って、上記組織インピーダンスの実数部を計算することをさらに含み、
【0025】
【数3】
ここで、aは、上記複素数値の電圧の実数部であり、bは、該複素数値の電圧の虚数部であり、cは、上記複素数値の電流の実数部であり、およびdは、該複素数値の電流の虚数部である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目17)
以下の方程式に従って、上記組織インピーダンスの虚数部を計算することをさらに含み、
【0026】
【数4】
ここで、aは、上記複素数値の電圧の実数部であり、bは、該複素数値の電圧の虚数部であり、cは、上記複素数値の電流の実数部であり、およびdは、該複素数値の電流の虚数部である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目18)
上記組織インピーダンスの上記計算された実数部および虚数部に基づいて該組織インピーダンスの大きさを計算することをさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目19)
上記感知された電圧波形および上記感知された電流波形の各々についての所定の数のサンプルを取得するために、該感知された電圧波形および該感知された電流波形をサンプリングすることをさらに含み、
該所定の数のサンプルは、該電圧波形および該電流波形の整数個の周期に対応する、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目20)
命令を格納する非一時的な格納媒体であって、プロセッサによって実行されるとき、該命令は、電気外科手術ジェネレータを制御する方法を行い、該方法は、
組織を処置するための電気外科手術エネルギーを生成することと、
該生成された電気外科手術エネルギーの電圧波形および電流波形を感知することと、
複数の狭帯域フィルタを用いて、該感知された電圧波形および該感知された電流波形に基づいて、複素数値の電圧および複素数値の電流を決定することと、
該組織のインピーダンスの実数部を計算することと、
該組織のインピーダンスの該計算された実数部に基づいて、該電気外科手術エネルギーを制御することと
を含む、非一時的な格納媒体。
(項目21)
上記プロセッサは、フィールドプログラマブルゲートアレイ、特定用途の集積回路、デジタル信号プロセッサ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ、特定用途の規格品集積回路、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記項目のいずれかに記載の非一時的な格納媒体。
(摘要)
本開示の電気外科手術システムおよび関連付けられた方法は、電気外科手術における組織の精密処置に対する狭帯域実数インピーダンス制御を行う。電気外科手術システムは、、電気外科手術ジェネレータを含み、電気外科手術ジェネレータは、組織を処理するための電気外科手術エネルギーを生成するように構成された出力ステージと、電気外科手術エネルギーの電圧波形および電流波形を感知するように構成された複数のセンサと、生成された電気外科手術エネルギーを制御するように、出力ステージに結合されたコントローラとを含む。コントローラは、信号プロセッサを含み、信号プロセッサは、(1)複数の狭帯域フィルタを用いて、複数のセンサによって感知された電圧波形および電流波形に基づいて、複素数値の電圧および複素数値の電流を決定し、(2)複素数値の電圧および複素数値の電流を用いて組織のインピーダンスの実数部を計算する。コントローラは、出力コントローラも含み、出力コントローラは、組織のインピーダンスの計算された実数部に基づいて、出力ステージを制御する。
【0027】
本開示の様々な実施形態は、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本開示の実施形態に従う、ジェネレータを含む電気外科手術システムの例示である。
図2A図2Aは、本開示の一実施形態に従う、修正されたカーン(Kahn)技術およびクラス(Class)Sジェネレータトポロジーの組み合わせに従うジェネレータ回路網を含む電気外科手術システムのブロックダイヤグラムである。
図2B図2Bは、本開示の別の実施形態に従う、修正されたカーン技術に従うジェネレータ回路網を含む電気外科手術システムのブロックダイヤグラムである。
図2C図2Cは、本開示のなお別の実施形態に従う、クラスSデバイストポロジーに従うジェネレータ回路網を含む電気外科手術システムのブロックダイヤグラムである。
図3図3は、図2Aのジェネレータ回路網のコントローラの概略的ブロックダイヤグラムである。
図4図4は、本開示のいくつかの実施形態に従う、図2A〜2Cのジェネレータ回路網によって実装される、狭帯域フィルタを含む測定信号処理システムのブロックダイヤグラムである。
図5図5Aおよび5Bは、本開示のさらなる実施形態に従う、図2A〜2Cのジェネレータ回路網によって実装される、狭帯域フィルタを含む測定信号処理システムのブロックダイヤグラムである。
図6図6Aおよび6Bは、本開示のなおさらなる実施形態に従う、図2A〜2Cのジェネレータ回路網によって実装される、狭帯域フィルタを含む測定信号処理システムのブロックダイヤグラムである。
図7図7は、本開示のいくつかの実施形態に従う多相フィルタのブロックダイヤグラムである。
図8図8Aおよび8Bは、図7の多相フィルタのr番目のサブフィルタのブロックダイヤグラムである。
図9図9は、本開示の他の実施形態に従う、キャリア中心の多相フィルタのブロックダイヤグラムである。
図10図10は、本開示の実施形態に従う、組織インピーダンスの実数部を決定するための電気外科手術ジェネレータに対する方法のフローダイヤグラムである。
図11図11は、集中ケーブルモードを含む電気外科手術ジェネレータの簡単化にされた回路ダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の実施形態に従う電気外科手術システムおよび方法は、ジェネレータの出力と処置される組織との間に配置された構成要素(例えば、ケーブル構成要素および器具)の任意の詳細の情報に頼らず、かつ、狭帯域内の既知の組織特徴に頼らず、広帯域電力制御と結合された狭帯域信号処理を用いて組織インピーダンスの実数部の計算に基づいて組織へのエネルギーの送達を制御する。狭帯域信号処理は、単一周波数離散型フーリエ変換(DFT)(例えば、Goertzelフィルタ)、または多相復調を利用し得る。ケーブル構成要素の詳細な知識が先験的に知られているべきであり、必要に応じて、簡単化にされた補償技術が、組織抵抗極値に適用され得る。
【0030】
図1は、本開示の実施形態に従う電気外科手術システム100を例示する。電気外科手術システム100は、患者の組織を処置するための電気外科手術エネルギーを生成する電気外科手術ジェネレータ110を含む。電気外科手術ジェネレータ110は、選択されたモードの動作(例えば、切断、凝固、切除、または密閉)、および/または電気外科手術エネルギーの感知された電圧および電流の波形に基づいて、適切なレベルの電気外科手術エネルギーを生成する。電気外科手術システム100は、様々な電気外科手術器具に対応する複数の出力コネクタも含み得る。
【0031】
電気外科手術システム100は、リターンパッド125を有する、患者の組織を処置するための電極(例えば、電気外科手術切断プローブまたは切除電極)を有する単極性電気外科手術器具120をさらに含む。単極性電気外科手術器具120は、複数の出力コネクタのうちの1つを介して電気外科手術ジェネレータ110に接続され得る。電気外科手術ジェネレータ110は、無線周波数(RF)エネルギーの態様の電気外科手術エネルギーを生成し得る。電気外科手術エネルギーは、組織を処置するために電気外科手術エネルギーを印加する単極性電気外科手術器具120に供給される。電気外科手術エネルギーは、リターンパッド125を通して電気外科手術ジェネレータ110に戻される。リターンパッド125は、組織に印加される電気外科手術エネルギーに引き起こされる組織損傷のリスクを最小限にするように、十分な接触エリアを患者の組織に提供する。加えて、電気外科手術ジェネレータ110およびリターンパッド125は、リターンパッド125と患者との間に十分な接触が存在して組織の損傷のリスクを最小限にすることを確実にするために、組織−患者の接触を監視するように構成され得る。
【0032】
電気外科手術システム100は、複数の出力コネクタのうちの1つを介して電気外科手術ジェネレータ110に接続され得る双極性電気外科手術器具130も含む。双極性電気外科手術器具の動作の際に、器具の鉗子の2つの顎部材のうちの一方(例えば、顎部材132)に供給された電気外科手術エネルギーは、組織を処置するために印加され、もう一方の顎部材(例えば、顎部材134)を通して電気外科手術ジェネレータ110に戻される。
【0033】
電気外科手術ジェネレータ110は、任意の種類のジェネレータであり得、様々な種類の電気外科手術器具(例えば、単極性電気外科手術器具120および双極性電気外科手術器具130)を収容するための複数のコネクタを含み得る。電気外科手術ジェネレータ110はまた、様々なモード(例えば、切除、切断、凝固、および密閉)において動作するように構成され得る。電気外科手術ジェネレータ110は、様々な電気外科手術器具が接続され得るコネクタの中でRFエネルギーの供給を切り替えるためのスイッチング機構(例えば、中継器)を含み得る。例えば、単極性電気外科手術器具120が電気外科手術ジェネレータ110に接続されている場合、スイッチング機構は、RFエネルギーの供給を単極性プラグに切り替える。実施形態において、電気外科手術ジェネレータ110は、複数の器具にRFエネルギーを同時に提供するように構成され得る。
【0034】
電気外科手術ジェネレータ110は、制御パラメータを電気外科手術ジェネレータ110に提供する適切なユーザ制御(例えば、ボタン、アクティベータ、スイッチ、またはタッチスクリーン)を有するユーザインターフェースを含む。これらの制御は、電気外科手術エネルギーが特定の外科手術手順(例えば、凝固、切除、組織密閉、または切断)に適するように、ユーザが(出力波形の電力レベルまたは形状)のパラメータを調整することを可能にする。電気外科手術器具120および130は、複数のユーザ制御も含み得る。加えて、電気外科手術ジェネレータ110は、電気外科手術ジェネレータ110の動作に関連する様々な情報(例えば、強度設定および処置完了指示)を表示するための1つ以上のディスプレイスクリーンを含み得る。電気外科手術器具120および130は、電気外科手術ジェネレータ110のある入力制御と重複し得る複数の入力制御も含み得る。電気外科手術器具120および130に入力制御を設置することは、外科手術手順の間に、電気外科手術ジェネレータ110との相互作用を必要とせずに、外科手術エネルギーのパラメータのより簡単で、より速い変更を可能にする。
【0035】
図2Aは、図1の電気外科手術ジェネレータ内のジェネレータ回路網200のブロックダイヤグラムである。ジェネレータ回路網200は、低周波数(LF)整流器220、直流−直流(DC/DC)コンバータ225、RF増幅器230、複数のセンサ240、アナログ−デジタルコンバータ(ADC)250、コントローラ260、ハードウェア加速器270、プロセッササブシステム280、およびユーザインターフェース(UI)290を含む。ジェネレータ回路網200は、低周波数(例えば、25Hz、50Hz、または60Hz)を有する交流(AC)を生成する電源210(例えば、壁電力コンセントまたは他の電力コンセント)に接続するように構成される。電源210は、ACを直流(DC)に変換するLF整流器220にAC電力を提供する。代替的には、電源210およびLF整流器220は、DC電力を提供するバッテリーまたは他の適切なデバイスに代替され得る。
【0036】
LF整流器220からのDC出力は、DCを所望のレベルに変換するDC/DCコンバータ225に提供される。変換されたDCは、DC−ACインバータ232と共鳴マッチングネットワーク234とを含むRF増幅器230に提供される。DC/ACインバータ232は、変換されたDCを、電気外科手術手順に適する周波数(例えば、472kHz、29.5kHz、および19.7kHz)を有するAC波形に変換する。
【0037】
電気外科手術エネルギーのための適切な周波数は、電気外科手術手順および電気外科手術のモードに基づいて異なり得る。例えば、神経および筋肉の刺激が約毎秒100,000サイクル(100kHz)で中断し、このポイントより上で、いくつかの電気外科手術手順が安全に行われ得る(すなわち、電気外科手術エネルギーが最小の神経筋刺激で患者を通して標的にされた組織に到達し得る)。例えば、一般的に、切除手順は、472kHzの周波数を使用する。他の電気外科手術手順は、神経および筋肉を損傷させる(放電またはスプレーする)最小リスクに伴い、100kHzよりも低いパルス状のレート(例えば、29.5kHzまたは19.7kHz)で行われ得る。DC/ACインバータ232は、電気外科手術動作に適する様々な周波数を有するAC信号を出力し得る。
【0038】
前述のように、RF増幅器230は、共鳴マッチングネットワーク234を含む。共鳴マッチングネットワーク234は、ジェネレータ回路網200と組織との間に最大または最適な電力転送があるように、DC/ACインバータ232の出力に結合されて、DC/ACインバータ232でのインピーダンスを組織のインピーダンスに一致させる。
【0039】
RF増幅器230のDC/ACインバータ232に提供された電気外科手術エネルギーは、コントローラ260によって制御される。DC/ACインバータ232からの電気外科手術エネルギー出力の電圧および電流の波形は、複数のセンサ240によって感知され、コントローラ260に提供され、コントローラ260は、DC/DCコンバータ225の出力を制御するDC/DCコンバータコントローラ278(例えば、パルス幅変調器(PWM)またはデジタルパルス幅変調器(DPWM))からの制御信号、およびDC/ACインバータ232の出力を制御するDC/ACインバータコントローラ276からの制御信号を生成する。コントローラ260は、ユーザインターフェース(UI)290を介して入力信号も受信する。UI290は、ユーザが、電気外科手術手順の種類(単極性または双極性)およびモード(凝固、切除、密閉、または切断)を選択し、または、電気外科手術手順またはモードのための所望の制御パラメータを入力することを可能にする。図2AのDC/DCコンバータ225は、電力設定または所望の外科手術効果に依存して固定または可変であり得る。DC/DCコンバータ225が固定である場合、RF増幅器は、図2Cに示されるクラスSデバイスのように挙動する。DC/DCコンバータ225が可変である場合、RF増幅器は、図2Bに示される修正されたカーン技術に従うデバイスのように挙動する。
【0040】
複数のセンサ240は、RF増幅器230の出力において電圧および電流を感知する。複数のセンサ240は、電圧および電流の冗長測定を提供する2つ以上の対または組の電圧および電流センサを含み得る。この冗長性は、RF増幅器230の出力において電圧および電流測定の信頼性、正確性、および安定性を確実にする。実施形態において、複数のセンサ240は、アプリケーションまたは設計要求に依存してより少なく、またはより多い組の電圧および電流センサを含み得る。複数のセンサ240は、ジェネレータ回路網200の他の構成要素(例えば、DC/ACインバータ232または共鳴マッチングネットワーク234)からの電圧および電流も測定し得る。複数のセンサ240は、(例えば、Rogowskiコイルを含む)電圧および電流を測定するための任意の既知のテクノロジーを含み得る。
【0041】
感知された電圧および電流の波形は、アナログ−デジタルコンバータ(ADC)250に供給される。ADC250は、感知された電圧および電流の波形をサンプリングして、電圧および電流の波形のデジタルサンプルを取得する。これも、しばしば、アナログフロントエンド(AFE)と呼ばれる。電圧および電流の波形のデジタルサンプルは、コントローラ260によって処理され、RF増幅器230のDC/ACインバータ232とDC/DCコンバータ225とを制御する制御信号を生成するために使用される。ADC250は、RF周波数の整数倍であるサンプル周波数において、感知された電圧および電流の波形をサンプリングするように構成され得る。
【0042】
図2Aの実施形態において、コントローラ260は、ハードウェア加速器270とプロセッササブシステム280とを含む。前述のように、コントローラ260も、UI290に結合され、UI290は、ユーザから入力コマンドを受信し、電気外科手術エネルギーの特徴(例えば、選択された電力レベル)に関連する出力および入力情報を表示する。ハードウェア加速器270は、ADC250からの出力を処理し、かつ、プロセッササブシステム280と協働して、制御信号を生成する。
【0043】
ハードウェア加速器270は、用量監視および制御(DMAC)272、内部電力制御ループ274、DC/ACインバータコントローラ276、およびDC/DCコンバータコントローラ278を含む。コントローラ260の全てまたは一部分は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、用途特定の集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、および/またはマイクロプロセッサによって実装され得る。
【0044】
DMAC272は、以下により詳細に説明されるように、ADC250から、感知された電圧および電流の波形のサンプルを受信し、平均実効電力および組織インピーダンスの実数部を計算する。次に、DMAC272は、平均実効電力および組織のインピーダンスの実数部を内部電力制御ループ274に提供し、内部電力制御ループ274は、平均実効電力および組織のインピーダンスの実数部のうちの1つ以上に基づいて、DC/ACインバータコントローラ276に対する制御信号を生成する。DC/ACインバータコントローラ276は、次に、DC/ACインバータ232の出力を制御する第1のパルス幅変調(PWM)制御信号を生成する。
【0045】
プロセッササブシステム280は、出力電力制御ループ282、状態機械284、および電力設定値回路286を含む。プロセッササブシステム280は、DMAC272の出力と、UI290を介してユーザによって選択されたパラメータ(例えば、電気外科手術モード)とに基づいて第2のPWM制御信号を生成し得る。特に、ユーザによって選択されたパラメータは、ジェネレータ回路網200の状態またはモードを決定する状態機械284に提供される。出力電力制御ループ282は、この状態情報およびDMAC272からの出力を使用して、制御データを決定する。制御データは、電力設定値回路286に提供され、電力設定値回路286は、制御データに基づいて電力設定値を生成する。DC/DCコンバータコントローラ278は、電力設定値を使用して、LF整流器220からの出力を所望のレベルに変換するようにDC/DCコンバータ225を制御するための適切なPWM制御信号を生成する。ユーザが、UI290を介して動作パラメータを状態機械284に提供しない場合、状態機械284は、デフォルト状態を維持または進入し得る。
【0046】
図3は、図2Aのハードウェア加速器270のより詳細なダイヤグラムを示す。ハードウェア加速器270は、特定の処理要求(例えば、高い処理速度)を有し得るジェネレータ回路網200のそれらの機能を実装する。ハードウェア加速器270は、図2Aに示される、DMAC272、内部電力ループ制御274、DC/ACインバータコントローラ276、およびDC/DCコンバータコントローラ278を含む。
【0047】
DMAC272は、4つのアナログ−デジタルコンバータ(ADC)コントローラ312a−312d、デジタル信号プロセッサ314、RFデータレジスタ316、およびDMACレジスタ318を含む。ADCコントローラ312a−312dは、ADC250(図2)の動作を制御し、ADC250は、感知された電圧および電流の波形をデジタルデータに変換する。次に、デジタルデータは、デジタル信号プロセッサ314に提供され、デジタル信号プロセッサ314は、様々なフィルタリングおよび他のデジタル信号処理機能を実装し、それらのうちの一部が以下により詳細に説明される。
【0048】
感知された電圧および電流は、感知された電圧および電流をサンプリングするADC250へのデジタル入力である。ADCコントローラ312a−312dは、所定のサンプリングレートを含む動作パラメータをADC250に提供することにより、ADCが、所定のサンプリングレート(すなわち、所定の毎秒のサンプルの数、またはRFインバータ周波数とコヒーレントである(すなわち、RFインバータ周波数に対して整数倍のサンプリング周波数である)所定のサンプリング周期)において感知された電圧および電流を同期してサンプリングする。ADCコントローラ312a−312dは、感知された電圧および電流の波形をデジタルデータに変換するADC250の動作を制御する。次に、デジタルデータは、デジタル信号プロセッサ314に提供され、デジタル信号プロセッサ314は、様々なフィルタリングおよび他のデジタル信号処理機能を実装し、それらのうちの一部が以下により詳細に説明される。
【0049】
感知された電圧および電流は、感知された電圧および電流をサンプリングするADC250への入力である。ADCコントローラ312a−312dは、所定のサンプリングレートを含む動作パラメータをADC250に提供することにより、ADCが、所定のサンプリングレート(すなわち、所定の毎秒のサンプルの数、所定のサンプリング周期)において感知された電圧および電流を同期してサンプリングする。ADCコントローラ312a−312dは、サンプリング周期が電圧および電流の波形のRF周波数の整数倍に対応するようにADC250を制御するように構成され得る。これは、しばしば、コヒーレントサンプリングと呼ばれる。
【0050】
電圧および電流の波形をサンプリングすることによって取得されたデジタルデータは、ADCコントローラ312a−312dを介してデジタル信号プロセッサ314に提供される。デジタル信号プロセッサ314は、デジタルデータを使用して、複素電圧Vcomp、複素電流Icomp、実効電力Preal、および組織インピーダンスの実数部Zrealを計算する。概して、組織インピーダンスは、実数または抵抗であるが、組織が「処理」された後に、小さい容量性成分を有し得る。さらに、電気外科手術ジェネレータと組織との間のケーブルも抵抗および抵抗成分を有する。これらの理由から、電気外科手術ジェネレータは、一般的に、組織インピーダンスをより正確に測定するためにこれらの寄生性を補償する制御システムを含む。しかしながら、これらの制御システムは、計算上効率の悪い複雑な計算を要求し、それは、タイミングよく、またはRF制御レープ計算の容量性と同等の更新されたレートで組織インピーダンス計算を行うさらなるコストを生じる。
【0051】
図2Aおよび2Bに描かれた代替的な実施形態において、ハードウェア加速器が利用できず、説明されたプライマリRF測定および制御機能のうちの多くのが、少なくともDSPコアプロセッサと、機能においてハードウェア加速器およびそのDSPおよび/またはマイクロコントローラコアと実質的に類似している多重デジタルパルス幅変調器(DPWM)とを含む用途特定の規格品(ASSP)集積回路と呼ばれたプログラマブルデバイス内において全体的に代わって存在する。
【0052】
他の実施形態において、RF制御機能とは別に冗長用量監視機能を行うセンサに接続され得るさらなるADCを含むASSP内に利用可能な第2のマイクロプロセッサコアもあり得る。第2のプロセッサは、ユーザインターフェース機能(例えば、電力設定、アクティベーションリクエスト、およびRFコントローラからユーザに対するもの)も行い得る。ASSPはまた、2つの「内側」および「外側」補償器ループの代わりに、電力、電圧、電流、温度、またはインピーダンスのうちのいずれかを直接に制御する1つのRF制御ループ(または補償器ループ)のみを利用し得る。このループは、バンプレス切換方法および飽和制限を用いて、これらの処理変数を変更する単一比例−積分−微分補償器を使用し得る。
【0053】
図2Bは、修正されたカーン技術に従うジェネレータ回路網201を含む電気外科手術システムを示す。ジェネレータ回路網201は、RF増幅器241と、RF増幅器241を制御して、所望の特徴を有する電気外科手術エネルギーを、処置される組織247に送達するコントローラ251とを含む。RF増幅器241は、電源210からACまたはDCを受信する。RF増幅器は、AC/DCまたはDC/DCコンバータ242を含み、AC/DCまたはDC/DCコンバータ242は、電源210によって提供されたACまたはDCを適切なレベルのDCに変換する。図2Aにおけるように、RF増幅器241は、DCをACに変換するDC/ACインバータ232も含む。RF増幅器241は、単一または二重共鳴マッチングネットワーク244と、共鳴マッチングネットワーク244のモードを切り替えるモード中継器248とも含む。
【0054】
RF増幅器241からの出力は、センサ246に提供され、センサ246は、電圧センサ、電流センサ、および温度センサを含み得る。センサ246からのセンサ信号出力は、コントローラ251のアナログフロントエンド(AFE)252を介してコントローラ251に提供される。AFEは、センサ信号を調整およびサンプリングして、センサ信号を表すデジタル信号を得る。コントローラ251は、信号プロセッサ253、モード状態およびバンプレス切換ユニット254、補償器またはPIDコントローラ255、パルス幅変調器(PWM)またはデジタルパルス幅変調器(DPWM)256、および電圧制御振動子または数値制御振動子257も含む。
【0055】
信号プロセッサ253は、デジタルセンサデータを受信し、本開示に従うシステムおよび方法の計算および他の機能を行う。とりわけ、信号プロセッサ253は、感知された電圧および電流、インピーダンス、および/または電力の実数部および虚数部を計算し、電圧、電流、電力、インピーダンス、および温度のうちの1つ以上を制御する機能を行う。信号プロセッサ253はまた、処理変数を生成し、処理変数を、モード状態制御およびバンプレス切換ユニット254および補償器またはPIDコントローラ255に提供する。モード状態制御およびバンプレス切換ユニット254は、組織効果アルゴリズムに従って単一または二重共鳴マッチングネットワーク244のためのモード中継器248を制御し、係数および設定値を生成し、係数および設定値を補償器またはPIDコントローラ255に提供する。
【0056】
補償器またはPIDコントローラ255は、コントローラ出力変数を生成し、パルス幅変調器(PWM)またはデジタルパルス幅変調器(DPWM)256にそれらの変数を提供する。パルス幅変調器(PWM)またはデジタルパルス幅変調器(DPWM)256は、電圧制御振動子または数値制御振動子257から振動子信号を受信し、AC/DCまたはDC/DCコンバータ242を制御する制御信号を生成する。電圧制御振動子または数値制御振動子257は、DC/ACインバータ232を制御する制御信号も生成する。
【0057】
図2Aのジェネレータ回路網200のように、ジェネレータ回路網201は、ユーザインターフェース201を含み、ユーザは、ユーザインターフェース201を通して、コントローラ251のコントローラアプリケーションインターフェース258を介してジェネレータ回路網201の機能を制御および/または監視し得る。
【0058】
図2Cは、クラスSデバイストポロジーに従うジェネレータ回路網202を含む電気外科手術システムを示す。図2Bのジェネレータ回路網201とは異なり、ジェネレータ回路網202は、AC/DCまたはDC/DCコンバータ242を含まない。外部低周波数(LF)整流器220またはバッテリーは、RF整流器241のDC/ACインバータ232に適切なレベルを提供する。図2Cに示されるように、PWMまたはDPWM256は、VCOまたはNCO257から振動子信号を受信し、DC/ACインバータ232を制御する制御信号を生成する。
【0059】
抵抗成分(すなわち、インピーダンスの実数部)が、電力の大半が組織内で消散し、電気外科手術ジェネレータと組織との間の成分の実数部が組織インピーダンスの実数部のわずか数パーセントに過ぎない(または設計によってそうされるべきである)場合のものであるので、本開示は、組織のインピーダンスの抵抗成分に関連する。また、組織抵抗が電気外科手術の関心のある周波数を通して(すなわち、100kHzから10MHzの間に)概に一定であると仮定する。したがって、大半の電力が組織内で消散されると仮定すると、組織インピーダンスの実数部のみを計算することは、計算上の効率性を増大し得る。
【0060】
デジタル信号プロセッサ314の出力は、RFデータレジスタ316を介して図2Aのプロセッササブシステム280に提供される。DMAC272は、DMACレジスタ318も含み、DMACレジスタ318は、デジタル信号プロセッサ314に対する関連パラメータを受信および格納する。デジタル信号プロセッサ314は、DC/ACインバータコントローラ276のPWMモジュール346から信号をさらに受信する。
【0061】
DMAC272は、制御信号を、信号ライン321を介して内部電力制御ループ274に提供し、信号ライン379を介してプロセッササブシステム280に提供する。内部電力制御ループ274は、制御信号を処理し、DC/ACインバータコントローラ276に制御信号を出力する。内部電力制御ループ274は、補償器326、補償器レジスタ330、およびVIリミッタ334を含む。信号ライン321は、補償器326にインピーダンスの実数部を搬送および提供する。
【0062】
ユーザ入力があるとき、プロセッササブシステム280は、ユーザ入力を受信し、信号ライン379を介してデジタル信号プロセッサ314からの出力と共に、ユーザ入力を処理する。プロセッササブシステム280は、補償器レジスタ330を介して制御信号をVIリミッタ334に提供し、VIリミッタ334は、図2Aの電力設定値回路286に対応する。次に、VIリミッタ334は、ユーザ入力およびデジタル信号プロセッサ314の出力に基づいて、所望の電力プロフィール(例えば、1組の電気外科手術モードまたは動作に対する電力についての最小または最大の限界)を提供し、補償器レジスタ330も、他の制御パラメータを補償器326に提供し、次に、補償器326は、補償器レジスタ330、VIリミッタ334、マルチプレクサ324、およびインピーダンスゲイン322からの全ての制御パラメータを組み合わせて、信号ライン327を介してDC/ACインバータコントローラ276への出力を生成する。
【0063】
DC/ACインバータコントローラ276は、制御パラメータを受信し、DC/ACインバータ232を駆動する制御信号を出力する。DC/ACインバータコントローラ276は、スケールユニット342、PWMレジスタ344、およびPWMモジュール346を含む。スケールユニット342は、出力にある数を乗算し、および/または加算ことによって、補償器レジスタ330の出力をスケーリングする。スケールユニット342は、信号ライン341aおよび341bを介してPWMレジスタ344からの、乗算のための数および/または加算のための数を受信する。PWMレジスタ344は、DC/ACインバータ232を制御するいくつかの関連パラメータ(例えば、DC/ACインバータ232によって生成されるAC信号の周期、パルス幅、および位相、並びに他の関連パラメータ)を格納する。PWMモジュール346は、PWMレジスタ344からの出力を受信し、図2AのRF増幅器230のDC/ACインバータ232の4つのトランジスタを制御する4つの制御信号347a〜347dを生成する。PWMモジュール346も、その情報を、レジスタ同期信号347を介してPWMレジスタ344の情報と同期させる。
【0064】
PWMモジュール346は、内部電力制御ループ274の補償器326に制御信号を提供する。プロセッササブシステム280は、PWMモジュール346に制御信号を提供する。この方法において、DC/ACインバータコントローラ276は、積分された内部入力(すなわち、DMAC272による複数のセンサからの処理された結果)および外部入力(すなわち、プロセッササブシステム280によるユーザ入力からの処理された結果)を用いて、RF増幅器230のDC/ACインバータ232を制御し得る。
【0065】
プロセッササブシステム280も、信号ライン373を介してDC/DCコンバータコントローラ278に制御信号を送信する。DC/DCコンバータコントローラ278は、制御信号を処理し、DC/DCコンバータ225が直流を、RF増幅器230によって変換されることに適する所望のレベルに変換するように、別の制御信号を生成する。DC/DCコンバータコントローラ278は、PWMレジスタ352とPWMモジュール354とを含む。PWMレジスタ352は、信号ライン373を介してプロセッササブシステム280からの出力を受信し、PWMレジスタ344が行うように関連パラメータを格納する。PWMモジュール354も、レジスタ同期信号をPWMレジスタ352に送信し、図2AのDC/DCコンバータ225の4つのトランジスタを制御する4つの制御信号355a〜355dを生成する。
【0066】
図4は、複素電圧および複素電流を取得するために、ジェネレータ110からの電圧および電流を処理する信号処理回路網400のブロックダイヤグラムである。信号処理回路網は、ADC410と狭帯域フィルタ420とを含む。ADC410は、電気外科手術ジェネレータ110に適するサンプリング周波数において、感知された電圧および電流の波形を、それぞれ、デジタル化にされた電圧および電流の波形に変換する。狭帯域フィルタ420は、それぞれ、複素数値の電圧Vcompおよび複素数値の電流Icompを取得するために、デジタル化された電圧および電流に波形をフィルタリングする。より具体的に、第1の狭帯域フィルタ420は、2つの値、複素数値の電圧Vcompの実数部Vrealおよび虚数部Vimagを出力する。同様に、第2の狭帯域フィルタ420は、2つの値、複素数値の電流Icompの実数部Irealおよび虚数部Iimagを出力する。次に、コントローラ300のデジタル信号プロセッサ314は、複素数値の電圧Vcompおよび複素数値の電流Icompを用いて組織のインピーダンスの実数部を計算する。インピーダンスの実数部に対する計算は、以下の式から導出される。
【0067】
【化5】
ここで、Zcompは、組織の複素インピーダンスであり、Zrealは、複素インピーダンスZcompの実数部である。式(1)および(2)を式(3)に代入すると、以下の式をもたらす。
【0068】
【化6】
式(5)に示されるように、複素インピーダンスZcompの実数部Zrealは、
【0069】
【化7】
に対応し、複素インピーダンスZcompの虚数部Zimagは、
【0070】
【化8】
に対応する。従って、複素インピーダンスZcompの実数部Zrealおよび虚数部Zimagは、狭帯域フィルタ420からの値に簡単な代数を行うことによって、すなわち、広帯域RMS電圧および電流値に計算を行うことにより、
【0071】
【化9】
を評価することによって計算され得る。
【0072】
広帯域実効電力の推定が、電圧および電流のサンプル−サンプルの乗算の簡単な移動平均フィルタによって行われ得るが、いくつかの正弦関数の波形に対して、狭帯域の推定が十分であり得る。同様に、複素数値の電力Pcompの実数部Prealは、簡単な代数を行うことによって計算され得る。複素数値の電力Pcompが、以下の式によって表され得る。
【0073】
【化10】
ここで、
【0074】
【化11】
は、複素電流Icompの複素共役であり、c−j・dである。式(6)に示されるように、複素数値の電力Pcompの実数部Prealは、(ac+bd)に対応する。従って、複素数値の電力Pcompの実数部Prealは、簡単に式(ac+bd)を評価することによって計算され得る。複素数値の電力Pcompの実数部Prealは、DMAC272による内部電力制御ループ274への制御信号を生成するために使用され得る。
【0075】
狭帯域フィルタ420は、Goertzel離散型フーリエ変換(DFT)アルゴリズムによって実装され得る。Goertzel DFTアルゴリズムは、電圧からの出力について以下の計算を行い、n=0...N−1に対して、以下の式に従って行われ得る。
【0076】
【化12】
ここで、Nは、サンプルウィンドウサイズであり、v(t)は、時間tでの電圧サンプルであり、i(t)は、時間tでの電流サンプルであり、および
【0077】
【化13】
である。次に、複素数値の電圧および電流の実数部および虚数部は、以下の式に従って計算され得る。
【0078】
【化14】
ここで、
【0079】
【化15】
、aは、複素数値の電圧の実数部であり、bは、複素数値の電圧の虚数部であり、cは、複素数値の電流の実数部であり、およびdは、複素数値の電流の虚数部である。
【0080】
図5Aは、本開示のさらなる実施形態に従う代替的な狭帯域測定信号処理回路500のブロックダイヤグラムである。測定信号処理システム500は、ローパスフィルタ(LPF)510、ADC410、デシメーター(decimator)530、プロトタイプフィルタ540(例えば、インパルス応答H(z)を有するローパスフィルタ)、およびヘテロダイン混合器545を含む。デシメーター530、多相フィルタ540、およびヘテロダイン混合器545は、ヘテロダインを有する多相フィルタとして知られるフィルタ構造を形成する。図4の測定信号処理システムと同様に、測定信号処理システム500は、測定信号処理システム500に入力された信号(例えば、ジェネレータ110の出力においてセンサ240によって感知された電圧および電流)の実数部および虚数部を決定する。
【0081】
動作中、入力信号は、入力信号から望ましくないノイズを除去するLPF510を通過する。ADC410は、入力信号410の周波数の整数倍であり得る適切なサンプリング周波数において、フィルタリングされた電圧または電流をサンプリングする。次に、多相フィルタ535は、以下の図7、8および9を参照して以下により詳細に説明されるプロトタイプフィルタ540の整流された位相を用いて、サンプリングされた入力信号をダウンサンプリングおよびフィルタリングする。
【0082】
ヘテロダイン混合器545は、フィルタリングされた入力信号を、fnMTの周波数を有するキャリア信号と乗算し、ここで、fは、多相フィルタ540の中心周波数であり、Mは、多相フィルタ540の位相数であり、nは、サンプリングされた入力信号のインデックスであり、Tは、0から(L−1)までの位相インデックス範囲である。従って、入力信号の周波数がキャリア信号fの周波数と同じである場合、ヘテロダイン多相フィルタ500は、図7、8および9を参照して以下により詳細に説明されるフィルタリングされた入力信号の狭帯域の実数部および虚数部を出力する。
【0083】
図5Bは、本開示のなお別の実施形態に従う測定信号処理システム550を例示するブロックダイヤグラムである。測定信号処理システム550は、直交構造を利用して、入力信号の実数または同相(I)成分と、入力信号の虚数または直交(Q)成分とを取得する。図5Aを参照して前述のように、入力信号は、望ましくないノイズを除去するLPF555を通過する。
【0084】
ADC410は、クロック信号をADC410に提供するクロックによって設定された適切なサンプリング周波数において、フィルタリングされた入力信号をサンプリングするADC410に提供されたクロック信号は、フィルタリングされた入力信号の虚数または直交成分を取得するために、遅延ブロック560によって遅延されて、周波数ドメインにおいて、フィルタリングされた入力信号の位相をシフトさせる。次に、ADC410によって取得されたサンプルは、デシメーター580および585と、プロトタイプフィルタ590および595と含む多相フィルタ構造によってダウンサンプリングされる。多相フィルタは、ダウンサンプリングされた信号を効率的に狭帯域フィルタリングして、入力信号の実数または同相(I)成分と、虚数または直交(Q)成分とを取得する。
【0085】
図5Aおよび5Bの測定信号処理システム500および550は、電圧および電流の実数部および虚数部の測定精度を向上させる補償器をさらに含み得る。図6Aは、図4の狭帯域フィルタ420に提供された入力信号の大きさおよび位相を修正する補償器605を含む測定信号処理システム600のブロックダイヤグラムである。
【0086】
補償器605は、ゲイン610と分数遅延ライン620と含み、ゲイン610と分数遅延ライン620とは、互いに結合されている。ゲイン610は、ゲイン修正因子Kの値に基づいて単一周波数において入力信号の大きさを増大させ、Kは、校正手順を通して決定され得る。校正手順は、補償器からの出力が所望のレベルに到達するまでにゲイン修正因子Kを調節することを伴い得る。
【0087】
分数遅延ライン620は、時間遅延修正因子の値に基づいて単一周波数において入力信号の位相を調節する。分数遅延ライン620は、
【0088】
【化16】
として表され得、ここで、ΔtCFは、時間遅延修正因子である。時間遅延修正因子ΔtCFも、校正手順を通して決定され得る。
【0089】
図6Bは、本開示のなおさらなる実施形態に従う測定信号処理システム650のブロックダイヤグラムである。測定信号処理システム650は、図4のADC410および多相フィルタ420と、ADC410と多相フィルタ420との間に結合された補償器655とを含む。補償器655は、最小平均二乗(LMS)フィルタ660とLMS適合ユニット670とを含む。LMSフィルタ660は、加重ベクトルwに基づいて入力波形(すなわち、デジタル化された電圧または電流の波形)をフィルタリングして、フィルタリングされた出力波形を生成する。加重ベクトルwは、LMS適合ユニット670によって生成され、事前に計算された「擬似フィルタ」または時間シーケンスであり得る。所望の応答dは、電気外科手術システム内の収束性適合フィルタの、理想的な周波数対大きさおよび位相の応答を有し得る。例として、システムからの収束性出力電流は、1つ以上の周波数において測定ごとの大きさおよび位相の値に一致する場合、この情報は、所望の応答シーケンスdおよび/または擬似フィルタを構成するために使用される。
【0090】
所望の応答シーケンスdは、励起の既知の振幅、またはテスト波形x(t)と同一の振幅(すなわち、A)を有する正弦関数の校正波形d(t)をサンプリングすることによって形成されるが、ADC410の入力と狭帯域フィルタ420の出力との間の測定された位相θ、または既知の位相θに従って遅延される。言い換えると、位相θは、ADC410によって導入された遅延と、図2に示されたRF増幅器230と狭帯域フィルタ420の出力との間に配置された他の電子的またはデジタル成分とを表す。正弦関数の校正波形は、以下のように表され得る。
【0091】
【化17】
複数の周波数fに対して、校正手順は、RF増幅器230を用いて、以下の一連のテスト波形を生成する。
【0092】
【化18】
ここで、n=1,...,Nであり、振幅Aは、測定された値、または既知の値である。一連のテスト波形は、一緒に合計され、テスト抵抗負荷に印加される。
【0093】
複数の周波数に対する所望の応答シーケンスdは、以下の式によって与えられる複数の正弦関数の校正波形の合計をサンプリングすることによって形成される。
【0094】
【化19】
校正波形d(t)は、励起の既知の振幅、またはそれぞれのテスト波形x(t)と同一の振幅(すなわち、A)を有するが、ADC410の入力と多相フィルタ420の出力との間の測定された位相θ、または既知の位相θに従って遅延される。
【0095】
適合処理の最後に、電圧および電流の波形の推定された位相は、関心の所望の周波数において互いに対して、同等またはほぼ同等である。また、測定された電圧および電流の大きさは、推定された電圧および電流のそれぞれの大きさに同一またはほぼ同一である。
【0096】
図7は、図4〜6の狭帯域フィルタ420、540、590、および595を実装するために使用され得るベースバンド多相フィルタ700のブロックダイヤグラムである。ベースバンド多相フィルタ700は、M個のサブフィルタ720、730、740、750、760、および770と、(M−1)個の加算器725、735、745、755、および765とを含む。ベースバンド多相フィルタ700は、入力データの異なる位相をサブフィルタ720、730、740、750、760、および770の各々に送達する通信スイッチ710をさらに含む。より具体的に、スイッチ710は、入力データx[0],x[M],...,x[(L−1)M]を第1のサブフィルタ820に送達し、入力データx[1],x[1+M],...,x[1+(L−1)M]を第2のサブフィルタ730に送達し、...、入力データx[M−1],x[M−1+M],...,x[M−1+(L−1)M]を最後のサブフィルタ770に送達する。このように、各サブフィルタは、並列に入力データのL個のサンプル(すなわち、N/M)を受信およびフィルタリングする。加算器765は、サブフィルタ770および760からのフィルタリングされた出力を加算し、加算器755は、位相750からのフィルタリングされた出力とより低い位相からの出力の合計とを加算し、...、加算器725は、M個のサブフィルタ720、730、740、750、760、および770からの全ての出力を加算する。加算の結果は、出力y(nM)である。
【0097】
図8に示されるように、出力y(nM)は、入力データのM個のサンプルごとに生成される。従って、多相フィルタ800は、M個の入力データサンプルについての固有の遅延を有する。Mの値は、電気外科手術のRF周波数、およびリアルタイムの電気外科手術動作を提供する、ADCのサンプリング周波数と同期されるように選択され得る。
【0098】
図8Aは、図7の多相フィルタ700のr番目のサブフィルタ800のブロックダイヤグラムである。前述のように、多相フィルタ700は、入力データの異なる位相をフィルタリングする複数のサブフィルタを含む。多相フィルタ700は、r個のサブフィルタの各々からの出力を組み合わせて、複素数値の出力を生成する。多相フィルタ700の各サブフィルタ800は、有限インパルス応答(FIR)フィルタであり得る。多相フィルタ700が、入力データの各位相に対する一連の小さいフィルタ計算を並列に行うので、計算の効率は、大いに増大される。概して、データサンプルの数(L)は、多相フィルタ800の位相の数(M)の整数倍である。図7Aは、特に、r番目の位相710が、入力x(n)(すなわち、感知された電圧または電流)を受信し、出力y(nM)(すなわち、感知された電圧および電流の実数部および虚数部)を出力することを示す。
【0099】
図8Bは、図7の多相フィルタ700のr番目のサブフィルタ800の構造を例示する。r番目のサブフィルタ800は、複数の加算器839、849、および859と、フィルタ827とを含む。r番目のサブフィルタ800は、感知された電圧または電流のデジタル化された値である一連の入力データ820、825、830、835、845、850、および855を受信する。r番目のサブフィルタ800において、r番目のデータ825は、フィルタ827によってフィルタリングされて、h(r)を取得し、(r+M)番目の入力データは、フィルタ827によってフィルタリングされてh(r+M)を取得し、1番目の加算器839は、h(r)とh(r+M)とを加算し、(r+2M)番目のデータは、フィルタ827によってフィルタリングされてh(r+2M)を取得し、2番目の加算器849は、h(r+2M)と、h(r)およびh(r+M)の合計とを加算し、...、および、最後に、(r+(L−1)M)番目のデータは、フィルタ827によってフィルタリングされてh(r+(L−1)M)を取得し、(L−1)番目の加算器859は、h(r+(L−1)M)と、h(r),h(r+M),h(r+2M),...,h(r+(L−2)M)の合計とを加算してy(nM)を生成する。r番目のサブフィルタは、入力データのL個のサンプルを処理する。このように、入力データのN個のサンプルに対する計算の効率は、多相フィルタ700内のサブフィルタの数である因子Mによって低減される。
【0100】
図9は、図4〜6の狭帯域フィルタ420、540、590、および595を実装するために使用され得るヘテロダイン多相フィルタ900のブロックダイヤグラムである。一般的に、ヘテロダイン技術は、fおよびfの周波数である2つの波形を混合または乗算して、合計の周波数(f+f)と、周波数fおよびfの差(f−f)とを有する波形を生成する。この2つの新しい周波数は、ヘテロダインと呼ばれる。以下の方程式は、2つの正弦関数にヘテロダイン技術が適用される結果を例示する。
【0101】
【化20】
キャリア中心多相フィルタ900は、ヘテロダイン技術を利用する。キャリア中心多相フィルタ900は、図7のスイッチ710、M個のサブフィルタ720、730、740、750、760、770、および加算器725、735、745、755、765、並びにキャリア信号乗算器922、932、942、952、962、972を含む。キャリア中心多相フィルタ900の中心波長は、複数のADCのサンプリング周波数の調和倍数、および電気外科手術エネルギーの周波数の調和倍数である。各サブフィルタ720、730、740、750、760、および770からの出力は、それぞれの乗算器922、932、942、952、962、および972を用いてそれぞれのキャリア信号で乗算され、それぞれの乗算された結果は、加算器924、934、944、954、および964によって一緒に加算されて、最終の出力y(nM)を取得する。
【0102】
キャリア信号922、932、942、952、962、および972は、指数関数ejrθkの態様であり、θは、
【0103】
【化21】
であり、rは、0,1,2,...,M−1である。ejrθkの信号周期は、Mに調和的に関連し、Mは、キャリア中心多相フィルタ900のサブフィルタの数である。最終の出力y(nM,k)の第1のインデックスnMは、時間インデックスであり、第2のインデックスkは、周波数インデックスである。
【0104】
さらなる実施形態において、サブフィルタ720、730、740、750、760、および770と、それぞれの乗算器922、932、942、952、962、および972とは、ヒルベルトフィルタに融合されて、精度の損失なしに、計算効率をさらに増大させる。
【0105】
なおさらなる実施形態において、図4〜6の狭帯域フィルタ420、540、590、および595は、前述のような単一周波数離散型フーリエ変換、例えば、Goertzelフィルタによって実装され得る。
【0106】
図10は、本開示の実施形態に従って組織インピーダンスの実数部を決定する、電気外科手術ジェネレータのための方法のフローダイヤグラムである。ステップ1005において、組織を処置する電気外科手術エネルギーが生成される。ステップ1010において、生成された電気外科手術エネルギーの電圧および電流の波形が感知される。ステップ1015において、複素数値の電圧および電流は、複数の狭帯域フィルタを用いて、感知された電圧および電流の波形に基づいて決定される。ステップ1020において、組織インピーダンスの実数部は、以下の方程式に従って計算される。
【0107】
【化22】
ここで、aは、複素数値の電圧の実数部であり、bは、複素数値の電圧の虚数部であり、cは、複素数値の電流の実数部であり、およびdは、複素数値の電流の虚数部である。次に、ステップ1025において、電気外科手術エネルギーは、組織インピーダンスの計算された実数部に基づいて制御される。
【0108】
いくつかの実施形態において、虚数のインピーダンス成分が、全大きさに対して無視されることができない場合、負荷組織抵抗1115のより正確な計算に対する補償が必要であり得る。一般的に、ジェネレータと組織との間に配置されたケーブルおよび電気外科手術器具は、寄生性値を有し、低RF周波数(例えば、周波数<<10MHz)において、寄生性値は、組織負荷抵抗にわたる終端分路容量性を有する直列インダクタンスおよび抵抗の集中した値として(より複雑な2つのポートまたは伝送ラインモデルに対立するモデルとして)モデリングされ得る。このようなモデルは、集中したケーブルモデル1101として図11に示され、これは、電気外科手術システム回路1100の一部分を形成する。集中したケーブルモデル1101は、ジェネレータ1110と直列の抵抗1102およびインダクタンス1104と、ジェネレータ1110と並列のキャパシタンス1106とを含む。
【0109】
しばしば、組織抵抗負荷1115は、直列構成要素の大きさよりも大きく、分路構成要素の大きさよりも小さい。これらの場合に対して、実数のインピーダンス成分は、前述のように、組織抵抗1115を推定することに対して十分であり得る。しかしながら、組織抵抗1115が非常に小さくなる(それが、ときどき、湿った組織が加熱され、イオンの移動が早くなることによって引き起こされる)場合、または組織抵抗1115が非常に大きくなる(それが、ときどき、組織の水分の多くのが飛ばされ、電流経路が曲がりくねったことによって引き起こされる)場合、既知の従来技術である限り、直列構成要素(すなわち、抵抗1102およびインダクタンス1104)かまたは分路構成要素(すなわち、キャパシタンス1106)かに対して補償がなされ得る。ケーブル抵抗1102、インダクタンス1104、およびキャパシタンス1106が既知である場合、組織抵抗1115に対する推定、および組織内の実効電力消失が、以下のように導出される。
【0110】
【化23】
本開示の例示的な実施形態が、添付の図面を参照して本明細書において説明されたが、本開示は、それらの正確な実施形態に限定されず、様々な他の変化および変更は、本開示の範囲または精神から逸脱することなしに当業者によって本明細書においてもたらされ得ることが理解されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11