特許第6377965号(P6377965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377965
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】共振インバーターのデッドタイム最適化
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20180813BHJP
   H02M 7/5387 20070101ALI20180813BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   H02M7/48 A
   H02M7/48 F
   H02M7/5387 Z
   H02M7/48 M
   A61B18/12
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-117555(P2014-117555)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2015-43684(P2015-43684A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2017年6月5日
(31)【優先権主張番号】61/838,753
(32)【優先日】2013年6月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/174,551
(32)【優先日】2014年2月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア エイチ. ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エー. ギルバート
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−140913(JP,A)
【文献】 特表2012−501696(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0281058(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00 − 11/00
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科用発電機であって、該電気外科用発電機は、
H−ブリッジとタンクとを含む共振インバーターと、
タンク入力電圧およびタンク出力電圧を測定するように構成されているセンサーアレイと、
第1のパルス幅変調(PWM)タイミング信号および第2のPWMタイミング信号を該H−ブリッジに出力するように構成されているパルス幅変調(PWM)コントローラーと
を含み、該PWMコントローラーは、該タンク入力電圧および該タンク出力電圧に基づいて、該第1のPWMタイミング信号と該第2のPWMタイミング信号との間のデッドタイムを制御する、電気外科用発電機。
【請求項2】
前記センサーアレイは出力電流を測定し、前記PWMコントローラーは、前記デッドタイムを決定するために、前記タンク入力電圧、前記タンク出力電圧、および該出力電流を使用する、請求項1に記載の電気外科用発電機。
【請求項3】
前記PWMコントローラーは、前記タンク入力電圧および前記タンク出力電圧に基づいて、効率測定値を算出する、請求項2に記載の電気外科用発電機。
【請求項4】
前記PWMコントローラーは、前記タンク出力電圧および前記出力電流に基づいて、負荷測定値を算出する、請求項2に記載の電気外科用発電機。
【請求項5】
前記PWMコントローラーは、前記効率測定値に基づいて、前記デッドタイムを制御する、請求項3に記載の電気外科用発電機。
【請求項6】
前記PWMコントローラーは、ルックアップ表を記憶しているメモリーを含む、請求項1に記載の電気外科用発電機。
【請求項7】
前記PWMコントローラーは、前記H−ブリッジの移相を決定する、請求項6に記載の電気外科用発電機。
【請求項8】
前記センサーアレイは出力電流を測定し、プロセッサーは、前記タンク出力電圧および該出力電流に基づいて、負荷測定値を決定する、請求項7に記載の電気外科用発電機。
【請求項9】
前記PWMコントローラーは、前記移相および前記負荷測定値を、前記ルックアップ表におけるデータと比較することによって前記デッドタイムを決定する、請求項8に記載の電気外科用発電機。
【請求項10】
共振インバーターにおける電界効果トランジスター(FET)遷移のためのデッドタイムを最適化する方法であって、該方法は、
該FET遷移のためのデッドタイムを初期設定することと、
該共振インバーターの第1の効率測定値を決定することと、
該FET遷移のデッドタイムを増大させることと、
該共振インバーターの第2の効率測定値を決定することと、
該第1の効率測定値と該第2の効率測定値との間の比較に基づいて、該デッドタイムを調整することと
を含む、方法。
【請求項11】
前記第2の効率測定値が、前記第1の効率測定値よりも所定のパーセンテージ分大きい場合、前記デッドタイムは増大させられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の効率測定値が、前記第1の効率測定値よりも所定のパーセンテージ分小さい場合、前記デッドタイムは減少させられる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
共振インバーターにおける電界効果トランジスター(FET)遷移のためのデッドタイムを最適化する方法であって、該共振インバーターは、H−ブリッジとタンクとを含み、該方法は、
該H−ブリッジに印加される複数のパルス幅変調信号間の移相を決定することと、
該タンクの負荷測定値を決定することと、
該移相および該負荷測定値をルックアップ表と比較することと、
該移相および該負荷測定値と該ルックアップ表との間の比較の結果に基づいて、最適なデッドタイムを決定することと、
該最適なデッドタイムに基づいて、該FET遷移のためのデッドタイムを調整することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
1.技術分野
本開示は、移相フルブリッジ共振インバーターを使用する無線周波増幅器に関する。特に、本開示は、無線周波増幅器の効率およびダイナミックレンジを改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の背景
エネルギーベースの組織処置は、当該分野において周知である。様々なタイプのエネルギー(例えば、電気的、超音波、マイクロ波、低温、熱、レーザーなど)が、所望の結果を達成するために、組織に適用される。電気外科は、組織を切断、切除、凝固、または密封するために、外科手術部位への高無線周波数電流の印加を含む。ソース電極または活性電極は、無線周波数エネルギーを電気外科用発電機から組織へ送達し、リターン電極は、電流を発電機に戻す。単極電気外科において、ソース電極は、代表的に、外科医によって保持される外科手術器具の一部であり、処置されるべき組織に当てられ、リターン電極は、電流を発電機に運び戻すために活性電極から離れて置かれる。双極電気外科において、手に持てるサイズの器具の電極のうちの一方は、活性電極として機能し、他方は、リターン電極として機能する。
【0003】
電気外科用発電機は、電気外科手順を実施するために必要とされる電気外科エネルギーを発生させるために、移相フルブリッジ共振インバーターを使用し得る。共振インバーターの1つの例は、2対の電界効果トランジスター(FET)を有するH−ブリッジによって駆動されるLCLCタンクトポロジーを使用する。FETの各対は、直列で接続されている2つのFETを含む。2つの直列に接続されているFETは、同時にオンに切り替えられるべきではなく、さもなければ、入力電圧源において短絡が起きる。短絡を避けるために、1対のFETの中で第1のFETに印加されるパルスと第2のFETに印加されるパルスとの間に、固定されたデッドタイムが提供される。共振インバーターの負荷条件に依存して、最適なデッドタイムも変化し得る。FETのデッドタイムが、最適なデッドタイムに対して大き過ぎるか、または短すぎる場合、FET遷移は、部分的にゼロ電圧スイッチングおよび部分的にハードスイッチである。FETが、より大きい程度までハードスイッチする場合、共振インバーターの効率は劇的に下がる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本記載は、句「1つの実施形態において」、「実施形態において」、「いくつかの実施形態において」、または「他の実施形態において」を使用し得、それらはそれぞれ、本開示に従う、同じかまたは異なる実施形態のうちの1つ以上を指し得る。本記載の目的のために、形態「A/B」での句は、AまたはBを意味する。本記載の目的のために、形態「Aおよび/またはB」での句は、「(A)、(B)、または(AおよびB)」を意味する。本記載の目的のために、形態「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」での句は、「(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)、または(A、BおよびC)」を意味する。
【0005】
本明細書中で用いられる場合、用語「発電機」は、エネルギーを提供することができるデバイスを指し得る。そのようなデバイスは、所望の強度、周波数、および/または波形を有するエネルギーを出力するために、電源と、電源によって出力されるエネルギーを改変することができる電気回路とを含み得る。
【0006】
本明細書中に記載されるシステムはまた、1つ以上のコントローラーを利用して、様々な情報を受け取り、受け取られた情報を変換して、出力を生じさせ得る。コントローラーは、メモリーに記憶されている一連の命令を実行することができる任意のタイプのコンピューティングデバイス、計算回路、または任意のタイプのプロセッサーもしくは処理回路を含み得る。コントローラーは、複数のプロセッサーおよび/またはマルチコア中央処理装置(CPU)を含み得、任意のタイプのプロセッサー(例えば、マイクロプロセッサー、デジタル信号プロセッサー、マイクロコントローラーなど)を含み得る。コントローラーは、一連の命令を実施するために、データおよび/またはアルゴリズムを記憶するためのメモリーも含み得る。
【0007】
本明細書中に記載される方法、プログラム、アルゴリズム、またはコードのうちの任意のものは、プログラミング言語もしくはコンピュータープログラムに変換され得るか、またはプログラミング言語もしくはコンピュータープログラムで表現され得る。「プログラミング言語」および「コンピュータープログラム」は、コンピューターへの命令を指定するために使用される任意の言語であり、それには、以下の言語およびそれらのデリバティブが挙げられる(しかし、これらに限定されない):Assembler、Basic、Batchファイル、BCPL、C、C+、C++、Delphi、Fortran、Java(登録商標)、JavaScript(登録商標)、Machineコード、オペレーティングシステム指令言語、Pascal、Perl、PL1、スクリプト言語、Visual Basic、メタ言語自体がプログラムを指定するメタ言語、ならびに全ての第1世代、第2世代、第3世代、第4世代、および第5世代のコンピューター言語。データベースおよび他のデータスキーマ、ならびに任意の他のメタ言語も含まれる。この定義の目的のために、インタプリタ言語、コンパイル言語、またはコンパイルおよびインタプリタの両方のアプローチを使用する言語間で区別はされない。この定義の目的のために、プログラムのコンパイルバージョンとソースバージョンとの間で区別はされない。従って、プログラミング言語が1つよりも多くの状態(例えば、ソース、コンパイル、オブジェクト、または連結)で存在し得るプログラムへの参照は、任意および全てのそのような状態への参照である。定義はまた、実際の命令およびそれらの命令の含意を包含する。
【0008】
本明細書中に記載される方法、プログラム、アルゴリズム、またはコードのうちの任意のものは、1つ以上の機械読み取り可能なメディアまたはメモリーに含まれ得る。用語「メモリー」は、機械(例えば、プロセッサー、コンピューター、またはデジタル処理デバイス)によって読み取り可能な形態で情報を提供する(例えば、記憶する、および/または伝送する)機構を含み得る。例えば、メモリーとしては、読み出し専用メモリー(ROM)、ランダムアクセスメモリー(RAM)、磁気ディスク記憶メディア、光学的記憶メディア、フラッシュメモリーデバイス、または任意の他の揮発性もしくは不揮発性メモリー記憶デバイスが挙げられ得る。そこに含まれるコードまたは命令は、搬送波信号、赤外線信号、デジタル信号によって、および他の類似の信号によって表され得る。
【0009】
本開示の局面において、電気外科用発電機が提供される。電気外科用発電機は、H−ブリッジとタンクとを有する共振インバーターを含む。発電機は、タンクの少なくとも1つの特性を測定するように構成されているセンサーアレイも含む。パルス幅変調(PWM)コントローラーが提供され、パルス幅変調(PWM)コントローラーは、第1のPWMタイミング信号および第2のPWMタイミング信号をH−ブリッジに出力するように構成されている。PWMコントローラーは、センサーアレイによって測定される少なくとも1つの特性に基づいて、第1のPWMタイミング信号と第2のPWMタイミング信号との間のデッドタイムを制御する。
【0010】
いくつかの局面において、センサーアレイは、入力電圧、出力電圧、および出力電流を測定し、PWMコントローラーは、デッドタイムを決定するために、入力電圧、出力電圧、および出力電流を使用する。PWMコントローラーは、入力電圧および出力電圧に基づいて、効率測定値を算出する。PWMコントローラーは、出力電圧および出力電流に基づいて、負荷測定値も算出する。PWMコントローラーは、効率測定値に基づいて、デッドタイムを制御する。
【0011】
いくつかの局面において、PWMコントローラーは、ルックアップ表を記憶しているメモリーを含む。PWMコントローラーは、センサーアレイによって測定される出力電圧および出力電流に基づいて、H−ブリッジの移相および負荷測定値を決定する。PWMコントローラーは、移相および負荷測定値を、ルックアップ表におけるデータと比較することによってデッドタイムを決定する。
【0012】
本開示の別の局面において、共振インバーターにおける電界効果トランジスター(FET)遷移のためのデッドタイムを最適化する方法が提供される。上記方法は、FET遷移のためのデッドタイムを初期設定することと、共振インバーターの第1の効率測定値を決定することとを含む。FET遷移のデッドタイムは増大させられ、共振インバーターの第2の効率測定値が決定される。デッドタイムは、第1の効率測定値と第2の効率測定値との間の比較に基づいて調整される。
【0013】
いくつかの局面において、第2の効率測定値が、第1の効率測定値よりも所定のパーセンテージ分大きい場合、デッドタイムは増大させられる。第2の効率測定値が、第1の効率測定値よりも所定のパーセンテージ分小さい場合、デッドタイムは減少させられる。
【0014】
本開示のさらに別の局面において、共振インバーターにおける電界効果トランジスター(FET)遷移のためのデッドタイムを最適化する方法が提供され、この共振インバーターは、H−ブリッジとタンクとを含む。上記方法は、H−ブリッジに印加される複数のパルス幅変調信号間の移相を決定することと、タンクの負荷測定値を決定することとを含む。移相および負荷測定値は、ルックアップ表と比較され、最適なデッドタイムは、移相および負荷測定値とルックアップ表との間の比較の結果に基づいて決定される。最適なデッドタイムに基づいて、FET遷移のためのデッドタイムは調整される。
【0015】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
電気外科用発電機であって、該電気外科用発電機は、
H−ブリッジとタンクとを含む共振インバーターと、
該タンクの少なくとも1つの特性を測定するように構成されているセンサーアレイと、
第1のパルス幅変調(PWM)タイミング信号および第2のPWMタイミング信号を該H−ブリッジに出力するように構成されているパルス幅変調(PWM)コントローラーと
を含み、該PWMコントローラーは、該センサーアレイによって測定される該少なくとも1つの特性に基づいて、該第1のPWMタイミング信号と該第2のPWMタイミング信号との間のデッドタイムを制御する、電気外科用発電機。
(項目2)
上記センサーアレイは、入力電圧、出力電圧、および出力電流を測定し、上記PWMコントローラーは、上記デッドタイムを決定するために、該入力電圧、該出力電圧、および該出力電流を使用する、上記項目に記載の電気外科用発電機。
(項目3)
上記PWMコントローラーは、上記入力電圧および上記出力電圧に基づいて、効率測定値を算出する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の電気外科用発電機。
(項目4)
上記PWMコントローラーは、上記出力電圧および上記出力電流に基づいて、負荷測定値を算出する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の電気外科用発電機。
(項目5)
上記PWMコントローラーは、上記効率測定値に基づいて、上記デッドタイムを制御する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の電気外科用発電機。
(項目6)
上記PWMコントローラーは、ルックアップ表を記憶しているメモリーを含む、上記項目のうちのいずれか一項に記載の電気外科用発電機。
(項目7)
上記PWMコントローラーは、上記H−ブリッジの移相を決定する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の電気外科用発電機。
(項目8)
上記センサーアレイは、出力電圧および出力電流を測定し、プロセッサーは、該出力電圧および該出力電流に基づいて、負荷測定値を決定する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の電気外科用発電機。
(項目9)
上記PWMコントローラーは、上記移相および上記負荷測定値を、上記ルックアップ表におけるデータと比較することによって上記デッドタイムを決定する、上記項目のうちのいずれか一項に記載の電気外科用発電機。
(項目10)
共振インバーターにおける電界効果トランジスター(FET)遷移のためのデッドタイムを最適化する方法であって、該方法は、
該FET遷移のためのデッドタイムを初期設定することと、
該共振インバーターの第1の効率測定値を決定することと、
該FET遷移のデッドタイムを増大させることと、
該共振インバーターの第2の効率測定値を決定することと、
該第1の効率測定値と該第2の効率測定値との間の比較に基づいて、該デッドタイムを調整することと
を含む、方法。
(項目11)
上記第2の効率測定値が、上記第1の効率測定値よりも所定のパーセンテージ分大きい場合、上記デッドタイムは増大させられる、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
上記第2の効率測定値が、上記第1の効率測定値よりも所定のパーセンテージ分小さい場合、上記デッドタイムは減少させられる、上記項目のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
共振インバーターにおける電界効果トランジスター(FET)遷移のためのデッドタイムを最適化する方法であって、該共振インバーターは、H−ブリッジとタンクとを含み、該方法は、
該H−ブリッジに印加される複数のパルス幅変調信号間の移相を決定することと、
該タンクの負荷測定値を決定することと、
該移相および該負荷測定値をルックアップ表と比較することと、
該移相および該負荷測定値と該ルックアップ表との間の比較の結果に基づいて、最適なデッドタイムを決定することと、
該最適なデッドタイムに基づいて、該FET遷移のためのデッドタイムを調整することと
を含む、方法。
【0016】
(摘要)
本開示は、共振インバーターを含む電気外科用発電機に関し、この共振インバーターは、H−ブリッジとタンクとを有する。センサーアレイは、タンクの少なくとも1つの特性を測定する。パルス幅変調(PWM)コントローラーは、第1のPWMタイミング信号および第2のPWMタイミング信号をH−ブリッジに出力する。PWMコントローラーは、センサーアレイによって測定される少なくとも1つの特性に基づいて、第1のPWMタイミング信号と第2のPWMタイミング信号との間のデッドタイムを制御する。
【0017】
本開示の上記および他の局面、特徴、ならびに利益は、添付の図面とともに用いられる場合、以下の詳細な説明を考慮してより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本開示の実施形態に従う、電気外科用発電機の概略的な例示である。
図2図2は、図1に示されるH−ブリッジに印加される信号のタイミングダイアグラムである。
図3図3Aは、大きいデッドタイムに起因して、増幅器に印加される電圧の図式の例示である。図3Bは、短いデッドタイムに起因して、増幅器に印加される電圧の図式の例示である。図3Cは、最適化されたデッドタイムに起因して、増幅器に印加される電圧の図式の例示である。
図4図4は、本開示の実施形態に従う、最適化アルゴリズムを示しているフローチャートである。
図5図5は、本開示の別の実施形態に従う、最適化アルゴリズムを示しているフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本開示の特定の実施形態が添付の図面を参照して以下に記載されるが、開示される実施形態は、単に本開示の例であり、様々な形態で具体化され得ることが理解されるべきである。周知の機能または構築は、本開示を不必要な詳細で不明瞭にすることを避けるために詳細に記載されない。従って、本明細書中に開示される特定の構造上および機能上の詳細は、限定するものではなく、単に特許請求の範囲のための基礎として、および事実上任意の適切に詳述した構造で本開示を様々に用いるために、当業者に教示するための代表的な基礎として解釈される。類似の参照数字は、図面の記載にわたって、同様の要素または同一の要素を指し得る。
【0020】
本開示は、電気外科用発電機に関し、この電気外科用発電機は、LCLCタンクトポロジーとH−ブリッジとを有する移相フルブリッジ共振インバーターを用いる。発電機は、H−ブリッジにおけるFETに印加されるパルス間のデッドタイムを最適化するために、デッドタイム最適化アルゴリズムを利用する。デッドタイムを最適化することによって、共振インバーターの効率およびダイナミックレンジは改善され得る。
【0021】
図1に目を向けると、本開示の実施形態に従う電気外科用発電機の1つの例が、全体的に100として示されている。発電機100は、発電機100を制御するための適切な入力制御装置(例えば、ボタン、アクチベータ、スイッチ、タッチスクリーンなど)を含む。さらに、発電機100は、使用者に多様な出力情報(例えば、強度設定、処置完了指標など)を提供するための1つ以上のディスプレースクリーン(示されない)を含み得る。制御装置は、使用者がRFエネルギーのパワー、波形、ならびに許容される最大アークエネルギーのレベルを調整することを可能にし、この許容される最大アークエネルギーは、特定のタスク(例えば、凝固、組織密封、強度設定など)に適した所望の波形を達成するために、所望の組織効果および他のパラメーターに依存して変動する。発電機100に接続され得る器具(示されない)は、発電機100の特定の入力制御装置との冗長性をもち得る複数の入力制御装置も含み得る。器具に入力制御装置を設置することは、外科手術手順中、発電機100との相互作用を必要とすることなく、RFエネルギーパラメーターのより容易でより速い改変を可能にする。
【0022】
発電機100は、様々なタイプの電気外科用器具を適応させるために、複数のコネクターを含み得る。さらに、発電機100は、コネクター間のRFエネルギーの供給を切り替えるために、スイッチング機構(例えば、継電器)を含むことによって、単極モードまたは双極モードで動作し得る。
【0023】
発電機100は、共振インバーター回路102と、パルス幅変調(PWM)コントローラー110と、センサーアレイ120とを含む。共振インバーター回路102は、FET Q1、Q2、Q3、およびQ4を有するH−ブリッジ104と、LCLCタンク106とを含む。PWMコントローラー110は、プロセッサー112とメモリー114とを含む。
【0024】
共振インバーター回路102において、H−ブリッジ104は、陽性高圧直流(+HVDC)を供給される。LCLCタンク106の直並列またはLCLCコンバーターは、活性FETスイッチQ1、Q2、Q3、およびQ4によって、フルブリッジ構成で駆動される。PWMコントローラー110は、図2に示されるように、FETスイッチQ1、Q2、Q3、およびQ4に移相PWMタイミング信号を供給する。FET Q1およびQ2は、電圧VS1をLCLCタンク106に提供し、FET Q3およびQ4は、電圧VS2をLCLCタンク106に提供する。
【0025】
構成要素L、C、L、およびCは、共振出力振幅を提供するために選択され、共振出力振幅は、移相PWMデューティサイクル×電力供給レールの+HVDCおよびグラウンドに比例する。LCLCタンク106は、活性端子130を介して電気外科エネルギーを器具(示されない)に出力する。特に、活性端子130は、高RFエネルギーの連続したの正弦波形またはパルス状の正弦波形のいずれかを提供する。活性端子130は、様々なデューティサイクル、ピーク電圧、波高因子、および他の適切なパラメーターを有する複数の波形を提供するように構成されている。特定のタイプの波形は、特定の電気外科モードに適している。例えば、活性端子130は、切断モードにおいて、100%のデューティサイクル正弦波形を提供し得、この波形は、組織を切除、融合、および切開するのに最も適しており、活性端子130は、凝固モードにおいて、1%〜25%のデューティサイクル波形を提供し得、この波形は、出血を止めるために、組織を焼灼するのに最も良好に使用される。
【0026】
リターン端子132は、単極手順のためにリターンパッド(示されない)に連結される。あるいは、リターン端子132は、器具におけるリターン電極(示されない)に電気的に連結される。
【0027】
発電機100は、閉ループおよび/または開ループ制御スキームを実装し得、これらは、複数のセンサーを有するセンサーアレイ120を含み、多様な組織およびエネルギー特性(例えば、組織インピーダンス、組織温度、出力電流、および/または電圧など)を測定し、PWMコントローラー110にフィードバックを提供する。電流センサー122は、活性電流もしくはリターン電流の経路のいずれか、または両方において配置され得、出力電流(I)を提供し得る。電圧センサー124は、端子130および132における電圧を感知し得、出力電圧(V)を提供し得る。出力電流および出力電圧は、センサーアレイ120に提供される。センサーアレイ120は、出力電流および/または出力電圧をPWMコントローラー110に提供し得る。PWMコントローラー110は、次に、適切な信号をFET Q1、Q2、Q3、およびQ4に伝送する。PWMコントローラー110はまた、発電機100または器具の入力制御装置からの入力信号を受け取る。PWMコントローラー110は、発電機100によるパワー出力を調整するために入力信号を利用し、および/またはそこにおける他の制御機能を実施する。
【0028】
センサー回路120は、LCLCタンク106に供給される入力電圧(V)と、活性端子130およびリターン端子132によって供給される出力電圧(V)および出力電流(I)とをリアルタイムで測定して、手順中に電気外科プロセスを特徴付ける。これは、フィードバック制御を達成するために、測定された電気的特性が動的入力制御変数として使用されることを可能にする。電流および電圧の値はまた、他の電気的パラメーター(例えば、パワー(P=V*I)およびインピーダンス(Z=V/I))を導くために使用され得る。センサー回路120はまた、電流および電圧の波形の特性を測定して、その形状を決定し得る。
【0029】
入力電圧(V)、出力電圧(V)、および出力電流(I)は、閉ループフィードバックスキームを実装するために、PWMコントローラー110に提供される。より詳細に下に記載されるように、PWMコントローラー110のプロセッサー112は、FET Q1、Q2、Q3、およびQ4に提供されるPWMタイミング信号のデッドタイムを調整するために、メモリー114に記憶されるアルゴリズムを実装している。
【0030】
図2は、それぞれFET Q1、Q2、Q3、およびQ4に提供されるPWMタイミング信号A、B、C、およびDの例を示す。図2に示されるように、PWM信号AおよびBは、立ち下りエッジデッドタイム140と立ち上がりエッジデッドタイム142とを含む。PWM信号CおよびDは、立ち下りエッジデッドタイム144と立ち上がりエッジデッドタイム146とを含む。デッドタイムとは、本明細書中に記載される実施形態において使用される場合、第1の入力信号における変化と第2の入力信号における変化との間の時間の間隔のことである。例えば、デッドタイム140は、信号Aの立ち下りエッジと信号Bの立ち上がりエッジとの間で起きる。デッドタイム140、142、144、および146は、実質的に同様であり得るか、または以下に記載されるアルゴリズムに依存して変化し得る。
【0031】
図3A図3Cは、様々なデッドタイム状況によりLCLCタンク106に印加される電圧VS1を示す。図3Aに示されるように、デッドタイムが最適なデッドタイムよりも大きい場合、FET遷移は、部分的にゼロ電圧スイッチング(150)および部分的にハードスイッチング(152)である。図3Bに示されるように、デッドタイムが最適なデッドタイムよりも小さい場合、FET遷移は、部分的にゼロ電圧スイッチング(154)およびハードスイッチング(156)である。従って、デッドタイムが最適ではない場合、FET遷移は、ハードスイッチング(152、156)を経て、FETの効率の低下をもたらす。図3Cは、FET遷移がゼロ電圧スイッチング(158)であり、ハードスイッチングが存在しない最適なデッドタイムを示す。
【0032】
本開示の実施形態において、PWMタイミング信号のデッドタイムは、図4のフローチャートに示されるように、アルゴリズムに従って最適化される。図4に示されるアルゴリズムは、FETの各対(すなわち、Q1とQ2とを含む第1の対、およびQ3とQ4とを含む第2の対)についてのFET遷移を試験するために利用される。図1とともに図4に目を向けると、カウンターは、ステップs160において、ゼロに初期設定される。カウンターは、プロセッサー112において実装されるか、またはPWMコントローラー110における別個の構成要素として提供され得る。カウンターは、RFサイクルの数、持続時間などをカウントするために使用され得る。ステップs162において、初期デッドタイムが、FET遷移に対して選択される。デッドタイムは、製造業者によって設定された所定のデッドタイムであり得るか、またはデッドタイムは、使用者が設定したデッドタイムであり得る。センサー回路120は、入力電圧(V)および出力電圧(V)を測定し、プロセッサー112は、ステップs164において効率測定値Eを決定する。効率測定値Eは、ステップs166において、Et−1としてメモリー114内に記憶される。センサー回路120は、出力電流も測定し、プロセッサー112は、ステップs168において、出力電流および出力電圧の測定値を使用して、出力インピーダンスまたは負荷測定値Lを決定する。負荷測定値Lは、ステップs170において、Lt−1としてメモリー114に記憶される。
【0033】
効率測定値および負荷測定値がEt−1およびLt−1として記憶された後、ステップs172において、FET遷移のデッドタイムは増大させられる。別の効率測定値Eおよび負荷測定値Lが、それぞれステップs174およびs176において取得される。ステップs178において、LとLt−1との間で比較がなされる。LがLt−1よりもX%大きい場合、または小さい場合(ここでXは、製造業者によってプログラムされた数字または使用者によって入力された数字である)、次に、アルゴリズムは、ステップs176からの負荷測定値LがLt−1として記憶されるステップs180に進み、アルゴリズムは、ステップs174に戻る。LがLt−1よりもX%大きくも小さくもない場合、次に、アルゴリズムは、EとEt−1との間で比較がなされるステップs182に進む。EがEt−1よりもY%大きい場合(ここでYは、製造業者によってプログラムされた数字または使用者によって入力された数字である)、次に、アルゴリズムは、ステップs174からの効率測定値EがEt−1として記憶されるステップs184に進み、アルゴリズムは、ステップs172に戻って、デッドタイムを増大させる。EがEt−1よりもY%大きくない場合、アルゴリズムは、EがEt−1よりもY%小さいかどうかについて決定がなされるステップs186に進む。EがEt−1よりもY%小さい場合、次に、アルゴリズムは、デッドタイムが減少させられるステップs188に進む。
【0034】
デッドタイムが減少させられた後、アルゴリズムは、ステップs174からの効率測定値EがEt−1として記憶されるステップs190に進む。EがEt−1よりもY%小さい場合、次に、アルゴリズムは、ステップs188を飛ばし、ステップs190に進行する。図4のアルゴリズムは、FET遷移のデッドタイムを最適化するために使用されるが、カウンターは、それが所定の値に到達するまで動き続ける。ステップs160におけるカウンターが所定の値に到達する場合、アルゴリズムは終了させられ、異なるFET遷移のために再度開始させられる。
【0035】
本開示の別の実施形態において、PWMタイミング信号のデッドタイムは、図5のフローチャートに示されるように、ルックアップ表(LUT)に従って最適化される。LUTは、製造業者によって作り出され、メモリー118に記憶される。特に、最適なデッドタイムは、H−ブリッジの様々な移相および負荷測定値に基づいて経験的に導かれる。最適なデッドタイムは、次に、製造業者によって、対応する移相および負荷測定値データとともにLUT内に記憶させられる。図1とともに図5に目を向けると、カウンターは、ステップs190において、ゼロに初期設定される。カウンターは、プロセッサー112において実装されるか、またはPWMコントローラー110における別個の構成要素として提供され得る。カウンターは、RFサイクルの数、持続時間などをカウントするために使用され得る。ステップs192において、H−ブリッジの移相は、プロセッサー112によって決定される。移相は、H−ブリッジ104における2対のFET(Q1、Q2およびQ3、Q4)に提供されるタイミング信号間(すなわち、タイミング信号A−BおよびC−D)におけるものである。FETの各対は、固定されたデューティサイクル(例えば、50%)−最適化されたデッドタイムにおいて動作する。移相は、負荷に送達される出力パワーに比例する。
【0036】
センサー回路120は、ステップs194において、出力電流(I)および出力電圧(V)を測定して、共振インバーター102の出力インピーダンスまたは負荷測定値Lを決定する。プロセッサー112は、H−ブリッジ104の移相および負荷測定値Lを、PWMコントローラー110のメモリー114に記憶されたLUTにおけるデータと比較する。H−ブリッジ104の移相および負荷測定値Lに基づいて、プロセッサー112は、ステップs198において、PWMタイミング信号についての最適なデッドタイムを決定する。特に、H−ブリッジ104の移相および共振インバーター102の負荷測定値は、ステップs196において、LUTにおける移相および負荷測定値データと比較される。プロセッサー112は、次に、ステップs198において、H−ブリッジの移相および共振インバーター102の負荷測定値に対応する最適なデッドタイムを決定する。最適なデッドタイムは、ステップs200において、PWMコントローラーによって出力されるPWMタイミング信号に適用される。
【0037】
前述の記載は、本開示の例証となるに過ぎないことが理解されるべきである。様々な代替物および改変は、本開示から逸脱することなく、当業者によって考案され得る。従って、本開示は、全てのそのような代替物、改変、および変化を包含することが意図される。添付の図面を参照して記載される実施形態は、本開示の特定の例を実証するためのみに表される。上記および/または添付の特許請求の範囲に記載されるものとわずかに異なる他の要素、ステップ、方法、および技術は、本開示の範囲内であることも意図される。
【符号の説明】
【0038】
100 発電機
102 共振インバーター
104 H−ブリッジ
106 (LCLC)タンク
110 パルス幅変調(PWM)コントローラー
120 センサーアレイ
140、142、144、および146 デッドタイム
図1
図2
図3
図4
図5