(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記充放電量制限部は、前記ハイブリッド車に搭載された前方監視カメラの撮像情報、前方距離センサ情報、アクセル操作量の変化速度及びブレーキ操作量の変化速度、ナビゲーションシステムからの情報の少なくとも一つに基づいて、前記加減速を予測する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバッテリの昇温制御装置。
前記充放電制御部は、エンジンの駆動力を利用した発電機による充電と、前記ハイブリッド車の駆動力を発生する駆動モータへの電力供給と、により前記バッテリの充放電を行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載のバッテリの昇温制御装置。
ハイブリッド車に搭載されモータジェネレータへの電力の供給源であるバッテリの低温時に、前記バッテリの残存容量の上下限の範囲内で前記バッテリの充放電を繰り返し行い、前記バッテリを昇温させるバッテリの昇温制御方法において、
前記ハイブリッド車の加減速に基づいて前記バッテリの充放電時の入出力電力を時系列で推定し、推定された前記入出力電力が入出力可能電力を超えると予測されたときに、前記入出力電力を制限する、バッテリの昇温制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<<1.ハイブリッドシステムの概略構成>>
まず、本発明の一実施形態にかかるハイブリッド車のシステム構成の一例について説明する。
図1は、本実施形態にかかるシステム500の構成を示す模式図である。かかるシステム500は、エンジンENG及び駆動モータMG2により車両の駆動軸70に付与する駆動力を発生させるシステムとして構築され、駆動系及び電子制御系により構成されている。駆動系は、主として、バッテリ10、インバータ20、モータジェネレータ30、エンジンENG、プラネタリギヤ60、及びデファレンシャルギヤ50を備えている。また、電子制御系は、主として、撮像処理部110及び制御装置200を備えている。
【0019】
<1−1.駆動系の構成>
はじめに、システム500を構成する駆動系について説明する。
モータジェネレータ30は、エンジンENGの駆動力を用いて発電を行うジェネレータMG1と、デファレンシャルギヤ50を介して駆動軸70に対して駆動力を付与する駆動モータMG2とが一体となったユニットとして構成されている。ジェネレータMG1及び駆動モータMG2は、直流電力を交流電力に変換するインバータ20を介してバッテリ10に接続されている。
【0020】
ジェネレータMG1は、エンジンENGの駆動力を利用して発電する。発電された電力は、インバータ20を介して駆動モータMG2に対して供給されるとともに、バッテリ10に充電される。また、ジェネレータMG1は、エンジンENGの始動時においては、バッテリ10からの電力を利用して、スタータとしても機能するように構成されている。
【0021】
駆動モータMG2は、インバータ20から供給される電流により発生する電磁力と、駆動モータMG2内に設けられたマグネットの磁力とによって、駆動軸70に付与する駆動力を発生させる。また、駆動モータMG2は、減速時に熱エネルギとして捨てられる減速エネルギを電力に変換してバッテリ10に充電する回生機能も有している。
【0022】
ジェネレータMG1及び駆動モータMG2は、いずれも三相交流式のモータとして構成されている。かかるモータは、ステータコイルの三相巻線に三相交流電流を供給することによってモータ内に回転磁界が発生し、ロータに設けられた永久磁石が回転磁界に引かれてトルクが発生する。このとき発生するトルクは、モータに供給される電流の大きさに比例する。また、モータに供給される交流電流の周波数は、モータの出力トルク及び回転数に応じて設定される。
【0023】
バッテリ10は、例えば、充放電可能な蓄電池等の二次電池により構成される。本実施形態にかかるシステム500では、バッテリ電圧が200Vの高電圧バッテリ10が用いられている。インバータ20は、バッテリ10の電圧をジェネレータMG1及び駆動モータMG2にそれぞれ印加することで、ジェネレータMG1及び駆動モータMG2のモータ巻き線に電流を供給する。本実施形態にかかるインバータ20は、昇圧コンバータ付のインバータとして構成され、昇圧コンバータによって昇圧された高圧の直流電流を交流電流に変換してモータジェネレータ30に供給する。モータジェネレータ30に供給する交流電流の大きさや、交流電流の周波数は、制御装置200によって制御される。モータジェネレータ30は、モータ巻き線に電流を流すことでモータトルクを発生させているため、印加する電圧を大きくすることでより大きな電流を流すことが可能となる。
【0024】
エンジンENGは、駆動軸70に付与する駆動力を発生するとともに、ジェネレータMG1による発電のための駆動力を発生する。エンジンENGは、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジンとすることができるが、これに限られない。プラネタリギヤ60は、エンジンENGで発生した駆動力を、駆動輪40とジェネレータMG1とに伝達する。プラネタリギヤ60のリングギヤには、デファレンシャルギヤ50を介して駆動輪40に連結された駆動軸70が接続され、サンギヤにはジェネレータMG1のロータが接続されている。
【0025】
<1−2.電子制御系の構成>
次に、システム500を構成する電子制御系について説明する。本実施形態にかかるシステム500の電子制御系は、撮像処理部110及び制御装置200により構成されている。なお、本実施形態では、電子制御系が、撮像処理部110を除いて一つの制御装置200からなる構成となっているが、かかる制御装置200が複数の制御装置に分けられて構成されていてもよい。
【0026】
[1−2−1.撮像処理部]
撮像処理部110は、公知のマイクロコンピュータを中心に構成された制御ユニットである。撮像処理部110は、前方監視カメラとしてのステレオカメラ100a,100bから出力される撮像情報を処理することにより、先行車両との車間距離や進行方向に存在する物体との距離等を算出する。本実施形態にかかるシステム500では、ステレオカメラ100a,100bによる撮像情報も、制御装置200によるバッテリの昇温制御(以下、「ウォームアップ制御」ともいう。)に利用される。
【0027】
ステレオカメラ100a,100bは、例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を備えた左右一組のCCDカメラにより構成することができる。かかるCCDカメラは、車室内の天井前方に所定の間隔を空けて取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像する。撮像処理部110は、ステレオカメラ100a,100bで自車両の進行方向を撮影した一組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって距離情報を生成する。撮像処理部110は、例えば、かかる距離情報に対して周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報をあらかじめ設定しておいた三次元的な立体データ等と比較することにより、先行車両や信号機等の物体を認識する。撮像処理部110は、先行車両や物体を認識した場合には、自車両と先行車両等との相対距離Dや、先行車両の移動速度(相対距離の変化割合+自車両の車速)等を算出するよう構成されている。
【0028】
ステレオカメラ100a,100bは、色認識可能な固体撮像素子を備えたカメラとしてもよい。かかるカメラを使用した場合には、撮像処理部110において、例えば、信号の色や先行車両のブレーキランプの点灯状態を認識することができる。撮像処理部110は、演算結果の情報を制御装置200に送信する。ステレオカメラ100a,100b及び撮像処理部110は、一体化されたユニットとして構成されて、車室内に備えられていてもよい。
【0029】
[1−2−2.制御装置]
制御装置200は、公知のマイクロコンピュータを中心に構成された制御ユニットである。制御装置200は、バッテリ10、インバータ20及びエンジンENGの制御を実行する。制御装置200は、例えば、エンジン制御装置、インバータ制御装置、バッテリ制御装置に分けて構成されていてもよい。本実施形態にかかるシステム500では、制御装置200がバッテリ10の昇温制御装置としての機能を有している。
【0030】
制御装置200は、追従制御の非実行時においては、運転者によるアクセルペダルの操作量に基づいてエンジンENG及びモータジェネレータ30それぞれの要求トルクを算出する。また、制御装置200は、追従制御の実行時においては、自車両の車速Vactを目標車速Vtgtとするため、あるいは、先行車両との車間距離Dを目標車間距離Dtgtとするために必要な、エンジンENG及びモータジェネレータ30それぞれの要求トルクを算出する。制御装置200は、算出した要求トルクに基づいてエンジンENG及びインバータ20の駆動制御を実行する。その際に、バッテリ10の残存容量(充電状態)SOCが考慮されてもよい。
【0031】
また、バッテリ10は、バッテリ温度Tbatが低いと使用可能な電力量(バッテリ容量)が低下することから、制御装置200は、バッテリ10の低温時にバッテリ10を昇温させて、低下しているバッテリ容量を早期に回復させるウォームアップ制御を実行する。
【0032】
ここで、
図2は、制御装置200の構成のうち、バッテリ10のウォームアップ制御に関連する部分を機能的なブロックで示している。かかる制御装置200は、バッテリ状態検出部210と、充放電制御部230と、充放電量制限部250とを備えている。また、制御装置200には、撮像処理部110による演算結果の情報、車速センサ等により検出される自車両の車速Vact、ドライバによって設定される追従制御時の目標車速Vtgt、バッテリ10に備えられた種々のセンサの検出値、アクセルペダルセンサ等により検出されるアクセル操作量Acc及びブレーキペダルセンサにより検出されるブレーキ操作量Brk、ナビゲーションシステムからの情報等が入力される。かかる制御装置200は、図示しない記憶素子を備え、実行するプログラムや演算結果等が記憶素子に記憶される。
【0033】
バッテリ状態検出部210は、バッテリユニットに備えられた種々のセンサの出力値に基づき、バッテリ10の残存容量SOCや入出力可能な最大電力量である入出力可能電力Pmax等を含むバッテリ10の状態を算出する。例えば、バッテリ状態検出部210は、電圧センサで測定したバッテリ10の端子電圧Vbat、電流センサで測定したバッテリ10の充放電電流I、温度センサで測定したバッテリ温度Tbat等に基づいて、残存容量SOCや入出力可能電力Pmaxを算出する。これらの演算処理は、既存の技術を利用することができる。
【0034】
充放電制御部230は、バッテリ温度Tbatがあらかじめ定められた閾値Tbat0未満のときに、バッテリ温度Tbatを上昇させるウォームアップ制御を実行する。ウォームアップ制御は、バッテリの充放電をパルス状に交互に繰り返し実行させることにより、内部抵抗による発熱を生じさせてセル温度を上昇させる制御である。本実施形態では、インバータ20を介した充電及び放電を繰り返し実行させる方式を採用している。具体的に、本実施形態では、インバータ20を介して行われるジェネレータMG1の発電電力の充電と、インバータ20を介して行われる駆動モータMG2への電力供給による放電とが繰り返し実行される。かかる充放電に対応して、エンジンENGの駆動トルクが適宜制御される。
【0035】
本実施形態において、パルス充放電による入力電力Pc及び出力電力Pdは、電力の過大な入出力によるバッテリ10の劣化等を防ぐために、入出力可能電力Pmax以下となるように設定される。充放電制御部230は、最新のバッテリ温度Tbatに基づいて残存容量SOC及び入出力可能電力Pmaxを更新しながら、パルス充放電パターンを設定する。かかるパルス充放電パターンは、例えば、バッテリ温度Tbatと、バッテリ10の残存容量SOCと、入出力可能電力Pmax等を含むバッテリ状態に基づいて、パルス幅やパルス長が可変設定されてもよい。
【0036】
充放電制御部230は、パルス充放電パターンにしたがって入力電力Pc及び出力電力Pdを決定し、インバータ20又は放電装置80に駆動指令を出力する。パルス充放電パターンを利用して、入出力可能電力Pmaxの範囲内でバッテリ10の電力を入出力させることにより、バッテリ10の充放電を効率良く制御することができる。これにより、バッテリ温度Tbatを早期に上昇させてバッテリ10本来の容量を急速に回復させることができる。
【0037】
充放電量制限部250は、車両の加減速を事前に予測し、ウォームアップ制御のパルス充放電パターンの入出力電力Pc,Pdを制限する制御を実行する。本実施形態にかかる制御装置200の充放電量制限部250は、アクセル操作量Acc、ブレーキ操作量Brk及び撮像処理部110による演算結果の情報に基づいて、車両の加減速を事前に予測し、入出力電力Pc,Pdを制限する。入出力電力Pc,Pdを制限することには、パターン設定した入力電力Pc及び出力電力Pdよりも小さくすることだけでなく、入力電力Pc及び出力電力Pdをゼロにすることも含まれる。
【0038】
例えば、車両が急加速する場合には、バッテリ10からインバータ20への供給電力が大きくなり、バッテリ10からの出力電力が増大する。そのため、バッテリ10からの出力電力が過大になる急加速が予測されたときには、バッテリ10の出力電力Pdが制限される。車両の急加速は、例えば、アクセルペダルが急激に踏まれた場合や、追従制御中に先行車両との車間距離が急激に広がった場合、急な上り坂にさしかかった場合等に発生し得る。したがって、充放電量制限部250は、アクセル操作量Accの変化率や、追従制御中における撮像処理部110からの撮像情報により得られる車間距離の変化率、ナビゲーションシステムからの坂道情報等に基づいて、車両の加速状態を予測する。先行車両との距離の情報は、撮像処理部110の演算結果以外に、電磁波を用いた距離センサ等により検出するようにしてもよい。
【0039】
また、車両が急減速する場合には、駆動モータMG2の回生ブレーキ機能によってバッテリ10に充電される回生電力が大きくなり、バッテリ10への入力電力が増大する。そのため、バッテリ10への入力電力が過大になる急減速が予測されたときには、バッテリ10の入力電力Pcが制限される。車両の急減速は、例えば、アクセルペダルが急激に緩められた場合や、追従制御中に先行車両との車間距離が急激に縮まった場合、急なカーブや下り坂にさしかかった場合等に発生し得る。また、ハイブリッド車においては、駆動モータMG2による回生ブレーキがフットブレーキとして利用される場合があり、ブレーキペダルが踏まれた場合にも回生ブレーキ力が発生し得る。したがって、充放電量制限部250は、アクセル操作量Accの変化率や、ブレーキ操作量Brkの変化率、追従制御中における撮像処理部110からの撮像情報により得られる車間距離の変化率、ナビゲーションシステムからのカーブや坂道の情報等に基づいて、車両の減速状態を予測する。先行車両との距離の情報は、撮像処理部110の演算結果以外に、電磁波を用いた距離センサ等により検出するようにしてもよい。
【0040】
本実施形態にかかる充放電量制限部250は、予測を行う時点以降の車速V及び加速度ΔVについての予測時系列データ、入出力電力Pc、Pdについての予測時系列データを生成し、これらの予測時系列データに基づいて、入出力電力Pc,Pdを制限する。具体的に、充放電量制限部250は、まず、予測を行う時点以降の車速V及び加速度ΔVについての予測時系列データを生成する。充放電量制限部250は、演算周期ごとに、かかる予測時系列データを生成する。
【0041】
図3は、車速V及び加速度ΔVについての予測時系列データの例を示している。横軸が時間を示し、縦軸が車速V及び加速度ΔVを示している。例えば、現在時刻Aにおいて、アクセル操作量Accが増大したとする。これに伴い、充放電量制限部250が生成する予測時系列データAでは、現在時刻Aに少し遅れて加速度ΔV及び車速Vの急上昇が予測される。また、現在時刻Bにおいて、例えば、ブレーキ操作量Brkが増大するか、あるいは、先行車両との車間距離Dが急激に減少したとする。これに伴い、充放電量制限部250が生成する予測時系列データBでは、現在時刻Bに少し遅れて加速度ΔV及び車速Vの急減少が予測される。車速V及び加速度ΔVの予測時系列データは、アクセル操作量Accの変化速度ΔAcc、ブレーキ操作量Brkの変化速度ΔBrk、先行車両との車間距離Dの変化速度ΔD、前方の障害物等との距離の変化速度等に基づいて生成することができる。
【0042】
また、充放電量制限部250は、車速V及び加速度ΔVの予測時系列データに基づいて、入出力電力Pc,Pdについての予測時系列データを生成する。入出力電力Pc,Pdについての予測時系列データは、エンジンENG及びインバータ20の駆動トルクを制御するための情報に基づいて生成することができる。そして、かかる入出力電力Pc,Pdが入出力可能電力Pmaxを超えると予測されると、充放電量制限部250は、入出力電力Pc,Pdを制限する。
【0043】
図4は、入出力電力Pc,Pdについての予測時系列データの例を示している。この予測時系列データは、
図3に示した車速V及び加速度ΔVについての予測時系列データに対応しており、横軸が時間を示し、縦軸が入出力電力の変化を示している。なお、
図4に示す予測時系列データにおいて、パルスの中央値SOC0よりも上側の入出力電力パターンが出力電力(放電量)Pdを表し、上に位置するほど出力電力Pdの値は大きくなる。また、パルスの中央値SOC0よりも下側の入出力電力パターンが入力電力(充電量)Pcを表し、下に位置するほど入力電力Pdの値は大きくなる。入出力可能電力Pmaxは、入力可能電力及び出力可能電力いずれも同一の値Pmaxである。また、入出力可能電力Pmaxは、
図4では一定値となっているが、実際にはバッテリ温度Tbatに応じて可変の値となる。
【0044】
図4の例では、現在時刻Aから少し遅れて車速V及び加速度ΔVの急上昇が予測されることに伴って、入出力電力Pc,Pdについての予測時系列データAでは、出力電力(放電量)Pdの急上昇が予測される。このとき、期間Σtpの間、出力電力Pdが出力可能電力Pmaxを超えることが予測されている(領域A参照)。出力電力Pdの急上昇は、駆動モータMG2への供給電力の増大に伴って発生が予測されるものである。また、現在時刻Bから少し遅れて車速V及び加速度ΔVの急減少が予測されることに伴って、入出力電力Pc,Pdについての予測時系列データBでは、入力電力(充電量)Pcの急上昇が予測される。このとき、入力電力Pcが入力可能電力Pmaxを超えることが予測されている(領域B参照)。入力電力Pcの急上昇は、駆動モータMG2による回生ブレーキ力の増大に伴って発生が予測されるものである。
【0045】
例えば、領域Aを例に採って説明すれば、充放電量制限部250は、入出力電力Pc,Pdの予測時系列データAに基づき、出力電力Pdが出力可能電力Pmaxを超える期間Σtpよりも長い期間Tlimitの間、出力電力Pdを制限する。具体的に、出力可能電力Pmaxを超える出力電力Pdの最大値Pd_peakと出力可能電力Pmaxとの差分(Pd_peak−Pmax)を超える制限量ΔPlimitで、出力電力Pdに制限を加える。
【0046】
図5及び
図6は、それぞれ入出力電力Pc,Pdを制限する前及び後のパルス充放電パターンを示している。
図5及び
図6において、ウォームアップ制御中、バッテリ10への充電時にはエンジンENGの駆動力によりジェネレータMG1で発電された電力が入力電力Pcとなってバッテリ10に充電される。一方、ウォームアップ制御中、バッテリ10からの放電時には、車両のトルク制御で要求される駆動モータMG2への供給電力が出力電力Pdとなってバッテリ10から放電される。
【0047】
そして、出力電力Pdが入出力可能電力Pmaxを超えると予測されたときに、出力電力Pdが入出力可能電力Pmaxを超える周期を含む前後の周期まで期間Tlimitを拡大して、制限量ΔPlimit(=(1+α)×(Pd_peak−Pmax))で出力電力Pdを制限している(領域A参照)。また、入力電力Pcが入出力可能電力Pmaxを超えると予測されたときに、入力電力Pcが入出力可能電力Pmaxを超える周期を含む前後の周期まで期間Tlimitを拡大して、制限量ΔPlimit(=(1+α)×(Pc_peak−Pmax))で入力電力Pcを制限している(領域B参照)。
【0048】
このとき、入出力電力Pc,Pdを制限する期間Tlimitの中心が、入出力可能電力Pmaxを超える入力電力の最大値Pc_peak又は出力電力の最大値Pd_peakとしてもよい。これにより、入出力電力Pc,Pdが入出力可能電力Pmaxを超えると予測された期間の前後にわたって入出力電力Pc,Pdが制限され、入出力電力Pc,Pdが入出力可能電力Pmaxを超えないようにされる。
【0049】
入力電力Pcを制限する場合には、駆動モータMG2により発生する回生電力を制限するのではなく、ジェネレータMG1の発電による充電量を制限することが好ましい。ジェネレータMG1の発電による充電量を制限することにより、回生電力の回収効率を低下させることがなくなり、回生ブレーキ力による減速を遅らせることがなく、また、電力効率を向上させることができる。また、エンジンENGの出力を抑えることにもなるために、燃費を向上させることもできる。
【0050】
<<2.バッテリの昇温制御方法>>
次に、本実施形態にかかる制御装置200によるバッテリ10の昇温制御方法について説明する。
図7〜
図10は、本実施形態にかかるバッテリ10の昇温制御処理を示すフローチャートである。なお、以下のフローチャートは、アクセル操作量Accの変化量ΔAcc及び撮像処理部110の演算結果に基づいてウォームアップ制御時の入出力電力Pc,Pdを制限する制御を行う例である。
【0051】
まず、
図7のステップS10において、制御装置200は、バッテリ温度Tbatを検出する。次いで、制御装置200は、ステップS20において、バッテリ温度Tbatがあらかじめ設定された閾値Tbat0未満か否かを判別する。バッテリ温度Tbatが閾値Tbat0以上の場合には(S20:No)、バッテリ10を昇温させる必要がないことから、制御装置200はステップS70に進んで、ウォームアップ制御を終了させる。一方、ステップS20において、バッテリ温度Tbatが閾値Tbat0未満の場合には(S20:Yes)、制御装置200はステップS30に進んで、通常ウォームアップ制御を実行する。
【0052】
図8は、通常ウォームアップ制御処理のフローチャートを示している。通常ウォームアップ制御を実行するにあたり、制御装置200は、ステップS110において、最新のバッテリ温度Tbatを検出するとともに、バッテリ10の残存容量SOCを算出する。次いで、制御装置200は、ステップS120において、バッテリ温度Tbatに応じた残存容量SOCの上限値SOCmax及び下限値SOCminの範囲内で、パルス充放電パターンを設定する。このとき、バッテリ10の劣化度や入出力可能電力Pmaxを考慮してもよい。
【0053】
次いで、制御装置200は、ステップS130において、充放電パターンの充電モードと放電モードとを切り替えるために、バッテリ10の残存容量SOCがあらかじめ定めた閾値SOC0以上となっているか否かを判別する。残存容量SOCが閾値SOC0以上の場合には(S130:Yes)、制御装置200はステップS140に進み、インバータ20を介した放電モードに移行する。一方、残存容量SOCが閾値SOC0未満の場合には(S130:No)、制御装置200はステップS150に進み、ジェネレータMG1によって発電した電力をバッテリ10に充電する充電モードに移行する。以上のようにして、通常ウォームアップ制御が繰り返し実行される。
【0054】
なお、閾値SOC0は、例えば、ハイブリッド走行を維持するために車両としてバッテリ10に要求する入出力電力の最大値を維持することができる残存容量SOCの値とすることができる。この閾値SOC0は、バッテリ10の温度に依存する可変値としてもよい。具体的に、ハイブリッド走行中において、バッテリ10の残存容量SOCは、例えば30%を中心に、20〜40%の間で制御される。バッテリ10のウォームアップ制御中においては、バッテリ10が低温で出力を取れないおそれがあることから、閾値SOC0は、通常のハイブリッド走行中の残存容量SOCよりも高い値とすることが好ましい。ただし、バッテリ10の低温状態において入力が制限されることも考慮して、例えば、閾値SOC0を40〜50%の範囲内の値とすることができる。
【0055】
図7に戻り、通常ウォームアップ制御を実行している間、制御装置200は、ステップS40において、入出力電力Pc,Pdの推移予測を行う。
図9は、入出力電力Pc,Pdの推移予測処理のフローチャートを示している。入出力電力Pc,Pdの推移を予測するにあたり、制御装置200は、ステップS210において、
図3に例示したような車速V及び加速度ΔVについての予測時系列データを生成する。次いで、制御装置200は、ステップS220において、
図4に例示したような入出力電力Pc,Pdについての予測時系列データを生成する。次いで、制御装置200は、ステップS230において、予測時系列データにおける、入力電力Pcの最大値Pc_peak又は出力電力Pdの最大値Pd_peakを算出する。
【0056】
図7に戻り、制御装置200は、上記の入力電力Pcの最大値Pc_peak又は出力電力Pdの最大値Pd_peakを求めた後、ステップS50において、最大値Pc_peak(Pd_peak)が入出力可能電力Pmaxを超えているか否かを判別する。入力電力Pcの最大値Pc_peak又は出力電力Pdの最大値Pd_peakが入出力可能電力Pmaxを超えていなければ(S50:No)、入出力電力Pc,Pdの制限は不要であるために、ステップS10に戻って、これまでのステップを繰り返す。
【0057】
一方、入力電力Pcの最大値Pc_peak又は出力電力Pdの最大値Pd_peakが入出力可能電力Pmaxを超えている場合には(S50:Yes)、ステップS60に進み、制御装置200は、入出力制限ウォームアップ制御を実行する。
図10は、入出力制限ウォームアップ制御処理のフローチャートを示している。入出力制限ウォームアップ制御処理を実行するにあたり、まず、ステップS310において、制御装置200は、入出力電力Pc,Pdを制限するための制限量ΔPlimitを決定する。
【0058】
具体的には、入力電力Pcの最大値Pc_peak又は出力電力Pdの最大値Pd_peakから入出力可能電力Pmaxを引いて求められる差分よりも大きい値となるΔPlimit(=(1+α)×(Pc_peak又はPd_peak−Pmax))を決定する。αは、実際に生じる回生電力による充電量又は駆動モータMG2への電力供給による放電量の予測誤差を考慮した、1未満の値である。
【0059】
次いで、制御装置200は、ステップS320において、入力電力Pcの最大値Pc_peak又は出力電力Pdの最大値Pd_peakが入出力可能電力Pmaxを超える時間の積算時間Σtpを算出する。次いで、制御装置200は、ステップS330において、入出力電力Pc,Pdを制限する期間Tlimit及び入出力制限の開始時間を決定する。
【0060】
具体的に、制御装置200は、ステップS320で算出した積算時間Σtpに係数βをかけて期間Tlimit(=Σtp×β)を算出する。βは、実際に入出力電力Pc,Pdが入出力可能電力Pmaxを超える期間の予測誤差を考慮した、1を超える値である。また、制御装置200は、入出力制限の開始時間は、入出力電力Pc,Pdについての予測時系列データにおいて、入力電力Pc又は出力電力Pdの最大値Pc_peak,Pd_peakが期間Tlimitの中央時点となるように、開始時間を決定する。
【0061】
次いで、制御装置200は、ステップS340において、ステップS310で決定した制限量ΔPlimitと、ステップS330で決定した期間Tlimit及び開始時間にしたがって、入出力電力Pc,Pdを制限しながら、パルス充放電を実行する。かかるパルス充放電を実行した後は、
図7のステップS10に戻り、これまでのステップを繰り返す。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、ウォームアップ制御中に、車両の加減速に伴ってバッテリ10の入出力電力Pc,Pdが入出力可能電力Pmaxを超えると予測されると、入出力電力Pc,Pdに制限を与える処理が実行される。その結果、実際に回生ブレーキ力によるバッテリ10への充電や、駆動モータMG2への電力供給によるバッテリ10からの放電が発生しても、バッテリ10の入出力電力が入出力可能電力Pmaxを超えないようにすることができる。したがって、バッテリ10の劣化を低減することができる。
【0063】
また、入力電力Pcを制限する際に、ジェネレータMG1の発電による充電量を小さくするようにした場合には、回生電力の回収効率は維持され、燃費あるいは電力効率が改善される。さらに、回生ブレーキ力を確実に生じさせることができるようになることから、車両の安全性の向上にも資することとなる。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。