特許第6377986号(P6377986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6377986
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】車両用シートのヘッドレスト取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/832 20180101AFI20180813BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B60N2/832
   A47C7/38
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-151650(P2014-151650)
(22)【出願日】2014年7月25日
(65)【公開番号】特開2016-28918(P2016-28918A)
(43)【公開日】2016年3月3日
【審査請求日】2017年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛佑
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】石山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】細見 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】富永 敦宏
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−026609(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/80−897
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前倒可能なシートバックの上端部にヘッドレストを備えた車両用シートのヘッドレスト取付構造であって、
前記ヘッドレストの骨格を構成するヘッドレストステーと、
前記ヘッドレストステーの側部に形成されて前記ヘッドレストの高さ調整方向に延在するスライド凹部と、
前記シートバックの骨格部材に固定されて前記ヘッドレストステーを支持するサポートブラケットと、
前記サポートブラケットに設けられて前記スライド凹部に係脱自在且つ摺動自在に挿入される係脱ピンと、
前記ヘッドレストステーを覆うヘッドレストクッションの前面に形成されて前記ヘッドレストを前方に倒して移動させる際に前記サポートブラケットを通過させるスリットと、を有することを特徴とする車両用シートのヘッドレスト取付構造。
【請求項2】
前記係脱ピンを支点として前記ヘッドレストステーを回動させて前記ヘッドレストを前倒した後、前記係脱ピンをガイドとして前記ヘッドレストステーを前記シートバックの背面方向に移動させた状態において、前記ヘッドレストステーは、前記シートックの背面側に突出して積荷ガード部を形成することを特徴とする請求項1に記載の車両用シートのヘッドレスト取付構造。
【請求項3】
前記サポートブラケットの前記係脱ピンの近傍には、前記積荷ガード部の形成時に前記スライド凹部に摺動自在に挿入されるガイドピンが設けられることを特徴とする請求項2に記載の車両用シートのヘッドレスト取付構造。
【請求項4】
前記ヘッドレストステーには、積荷を固縛するための係止部が形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の車両用シートのヘッドレスト取付構造。
【請求項5】
前記ヘッドレストステーは、板状体から構成され、前記板状体は、その一主面が前記ヘッドレストの前方を向くよう配設されて左右の側面に前記スライド凹部が形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の車両用シートのヘッドレスト取付構造。
【請求項6】
前記ヘッドレストステーは、前記スライド凹部が形成される左右一対の棒状部と、前記サポートブラケットに挿入される側の前記棒状部の端部から連続して形成されて前記棒状部を互いに連結する連結部と、を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の車両用シートのヘッドレスト取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのヘッドレスト取付構造に関し、特に、シートバックを前方に倒して折り畳む形式の車両用シートにおけるヘッドレスト取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シートバックを前方に倒して折り畳み、その前倒されたシートバックの背面に荷物を積載可能な車両用シートにおいて、シートバックの上端部にヘッドレストを備えたものがある。
【0003】
この種の車両用シートにおけるヘッドレスト取付構造として、ヘッドレストを回動自在に支持し、シートバックを折り畳む際に、ヘッドレストを前倒して格納するものが知られている。例えば、特許文献1には、シートバックに昇降自在に支持されるポールに、回動機構によって上端部が前方へ回動するようにヘッドレストを取り付けた車両用シートが記載されている。シートバック前倒時には、ヘッドレストを回動させてシートバックの前方に倒してシートクッションの前側に格納している。
【0004】
また、例えば、特許文献2に開示されたシートのように、ヘッドレストをシートバックに対して昇降自在に支持し、シートバックを折り畳む際には、ヘッドレストを最下位まで下げて格納状態とするものがある。このような形式の車両用シートでは、シートバック前倒時に、ヘッドレストの一部分が折り畳まれたシートバックとシートクッションとの間に挟み込まれる。
【0005】
また、他の従来技術の例として、例えば、特許文献3に開示されたシートように、ヘッドレストをシートバックから取り外し自在に設け、シートバックを前倒する際には、ヘッドレストを取り外して格納する形式の車両用シートが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−155558号公報(第6頁、第1図)
【特許文献2】特開2004−155269号公報(第4−5頁、第2図)
【特許文献3】特開2013−112010号公報(第4−5頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来技術では、車両用シートの快適性及び意匠性を確保しつつシートバック前倒時の荷室の積載性能を向上させる観点から改善の余地があった。
【0008】
具体的には、特許文献1に開示されたようにヘッドレストを前方に回動させてシートバックを前倒する形式では、ヘッドレストとシートクッションとの干渉を避けるためにヘッドレスト及びシートクッションの意匠形状が制約されるという問題点があった。
【0009】
つまり、ヘッドレストを倒すとヘッドレストの上部がシートバックの前方に突出するので、シートバックを前倒する際、ヘッドレストの上部とシートクッションの前上部とが干渉し易い。ヘッドレストとシートクッションとが干渉すると、シートバックの背面を水平に近づけることが難しく、荷物を載置する床面が傾くことになり、荷物の積載性が悪くなる。
【0010】
ヘッドレストとシートクッションとの干渉を避けるためには、シートバック前倒時にヘッドレストがシートクッションの前方に格納されるように設計する必要があり、シートクッションの長さやヘッドレストの厚み等が制約される。
【0011】
また、特許文献2に開示された従来技術のようにヘッドレストの高さを最下位にしてヘッドレストの一部分をシートバックとシートクッションとの間に収める形式では、シートバックの背面が傾き易く、荷室床面をフラットにすることが難しかった。前倒時のシートバック背面を水平にするために、ヘッドレストやその収納部近傍のシートバック若しくはシートクッションを薄くすると、着座時の快適性や意匠性を損ねることになる。
【0012】
また、特許文献3に開示された従来技術のようにヘッドレストを取り外してからシートバックを前倒する形式では、ヘッドレストを取り外す作業、及びシートバックを着座位置に戻した際にヘッドレストを取り付ける作業が必要であるという問題点がある。また、取り外したヘッドレストを格納する空間や保持するための構造が必要であった。
【0013】
また更に、特許文献1ないし特許文献3に開示されたヘッドレスト取付構造では、積載した荷物を安全に保持する構造について考慮されておらず、積荷の移動を抑えるためには、積荷を固定するためのガードや固定具を別途用意する必要があった。
【0014】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両用シートの快適性及び意匠性を確保しつつ、シートバック前倒時には、積荷の積載性能に優れ、且つ積荷の移動を安全に抑えることができるヘッドレスト取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の車両用シートのヘッドレスト取付構造は、前倒可能なシートバックの上端部にヘッドレストを備えた車両用シートのヘッドレスト取付構造であって、前記ヘッドレストの骨格を構成するヘッドレストステーと、前記ヘッドレストステーの側部に形成されて前記ヘッドレストの高さ調整方向に延在するスライド凹部と、前記シートバックの骨格部材に固定されて前記ヘッドレストステーを支持するサポートブラケットと、前記サポートブラケットに設けられて前記スライド凹部に係脱自在且つ摺動自在に挿入される係脱ピンと、前記ヘッドレストステーを覆うヘッドレストクッションの前面に形成されて前記ヘッドレストを前方に倒して移動させる際に前記サポートブラケットを通過させるスリットと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両用シートのヘッドレスト取付構造によれば、ヘッドレストステーの側部に形成されるスライド凹部と、サポートブラケットの上部に設けられる係脱ピンと、を有し、前記係脱ピンは、前記スライド凹部に係脱自在且つ摺動自在に挿入される。即ち、係脱ピンは、スライド凹部に沿ってその延在方向に相対的に移動可能であり、且つ、スライド凹部の内部で相対的に回動が可能である。
【0017】
これにより、ヘッドレストは、スライド凹部と係脱ピンとにガイドされて、高さ調整方向への移動が可能となる。また、ヘッドレストを上方に引き上げた後、係脱ピンを支点として回動させることにより、ヘッドレストを前方に倒すことが可能となる。そして、ヘッドレストを前方に倒した状態で、スライド凹部及び係脱ピンをガイドとして、ヘッドレストをシートバックの背面方向に移動させることができる。
【0018】
このようにヘッドレストを回動させて前方に倒し、シートバックの背面方向に移動させることにより、シートバックを前倒しにしてシートを折り畳む際に、ヘッドレストとシートクッションとの干渉を減らすことができる。その結果、荷物を積載する荷室の床面を略水平にすることができ、荷物の積載性能を向上させることができる。また、シートクッション形状の設計自由度が高くなり、意匠性の向上や、座り心地等の快適性の向上も期待できる。
【0019】
また、本発明の車両用シートのヘッドレスト取付構造によれば、ヘッドレストステーを覆うヘッドレストクッションには、サポートブラケットの上部を通過させるスリットが形成されている。これにより、ヘッドレストをシートバックの背面側に向かって移動させる際に、その移動量を大きく確保することができ、シートを折り畳む際のヘッドレストとシートクッションとの干渉を更に小さくすることができる。
【0020】
また、ヘッドレストを前倒した後、シートバックの背面方向に移動させた状態において、ヘッドレストステーの一部をシートックの背面側に突出させて積荷ガード部を形成しても良い。これにより、積荷の移動を抑えて荷物積載時の安全性を高めることができる。
【0021】
また、ヘッドレストステーに、積荷を固縛するための係止部を形成しても良い。これにより、積荷の固定が容易になり、荷物積載時の安全性を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの概略構造を示す側面図である。
図2】同上、ヘッドレストを取り外した状態を示す分解斜視図である。
図3】同上、サポートブラケットを示す斜視図である。
図4】同上、ヘッドレストを取り付けた状態を示す斜視図である。
図5】同上、ヘッドレストを最上位に持ち上げる動作を示す(A)斜視図、(B)側面図である。
図6】同上、ヘッドレストを前方に倒す動作を示す(A)斜視図、(B)側面図である。
図7】同上、ヘッドレストを背面側に移動する動作を示す(A)斜視図、(B)側面図である。
図8】同上、シートバックを前倒してその背面に積荷を搭載した状態を示す斜視図である。
図9】本発明の他の実施形態に係るヘッドレストを示す斜視図である。
図10】同上、シートバックを前倒してその背面に積荷を搭載した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る車両用シートのヘッドレスト取付構造を図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るヘッドレスト取付構造を備えた車両用シート1の概略構造を示す側面図である。車両用シート1は、自動車の後部座席であり、乗員が着座するシートクッション30と、前倒自在なシートバック20と、シートバック20の上端部に設けられるヘッドレスト10と、を有する。
【0025】
シートバック20は、その下部が車体のフロアパネル等に固定されるヒンジ機構35によって回動自在に支持されている。シートバック20は、起立した状態においては、その前面20aが乗員の体を支える背もたれとして機能し、図1に鎖線で示すように前方に倒した状態においては、その背面20bが荷室5の床面として機能する。
【0026】
図2は、車両用シート1のヘッドレスト取付構造を車両の前方側の左斜め上から見た分解斜視図であり、ヘッドレスト10をシートバック20から取り外した状態を表わしている。図2に示すように、ヘッドレスト10は、その骨格を構成するヘッドレストステー13と、ヘッドレストステー13の上部に固定されるヘッドレストクッション11と、を有する。
【0027】
ヘッドレストクッション11は、例えば、発泡ウレタン等の合成樹脂材料から成る緩衝部材であり、シートバック20を起立した着座状態において、乗員の頭部を後方から支える部分である。ヘッドレストクッション11の表面は、合成樹脂や皮等から成形される表皮部材で覆われている。
【0028】
ヘッドレストステー13は、ヘッドレスト10の骨格となりヘッドレストクッション11を支える強度部材である。ヘッドレストステー13の上部には、ヘッドレストクッション11が取り付けられ、ヘッドレストステー13の下部は、ヘッドレストクッション11の下部から突出している。
【0029】
ヘッドレストステー13は、少なくともヘッドレストクッション11の下部から突出する部分が略矩形の板状に形成されている。そして、略矩形板状のヘッドレストステー13は、その主面13aが車両の前方を向き、矩形状体の対辺を構成する2つの側面が略鉛直に車両の左右方向を向くように、ヘッドレスト10に取り付けられる。
【0030】
ヘッドレストステー13の左右両側の側面には、各側面から内側に向かって凹み、矩形状体の左右の対辺に沿って延びるスライド凹部14が形成されている。換言すれば、スライド凹部14は、シートバック20を起立した状態において略上下方向、即ち、ヘッドレスト10の高さ調整方向に延在する。尚、スライド凹部14の横断面形状は、例えば、略コ字状若しくは略U字状等である。
【0031】
ヘッドレストステー13のスライド凹部14は、ヘッドレストクッション11の内部まで連続して延在するよう形成されている(図1参照)。そして、ヘッドレストクッション11の中まで延びるスライド凹部14に対応して、ヘッドレストクッション11の前面には、スリット12が形成されている。
【0032】
スリット12は、ヘッドレストクッション11の表面からヘッドレストステー13のスライド凹部14まで達するよう形成された切り込みである。スリット12は、ヘッドレスト10を前方に倒してシートバック20の背面方向に移動させる際に、後述するサポートブラケット22の上部のピン設置部23を通過させるためのものである。
【0033】
ヘッドレストステー13の下部には、シートバック20を前倒してその背面20bに積荷を載せた状態において、その積荷を固縛するロープ等を固定するための係止部15が形成されている。係止部15の形状としては、種々の形状を採用することができる。例えば、係止部15として、ヘッドレストステー13の主面13aから反対側の主面まで貫通する孔を形成しても良い。また、係止部15を、貫通孔の一部分が下方に開口する略鉤状に形成しても良い。
【0034】
尚、上述したヘッドレストステー13の材質としては、各種合成樹脂材料や金属材料等を用いることができる。また、ヘッドレストステー13を中空構造にしても良い。例えば、板金プレス成形等によって鋼板製の中空構造体を成形することにより、軽量且つ高強度なヘッドレストステー13とすることができる。
【0035】
シートバック20は、その内部に、例えば、鋼製パイプ材等から成る骨格部材としてのシートフレーム21と、シートフレーム21に固定されてヘッドレストステー13を支持するサポートブラケット22と、を有する。
【0036】
シートフレーム21には、例えば、発泡ウレタン等の樹脂材料から成る緩衝部材が取り付けられ、その緩衝部材の表面は、例えば、合成樹脂材料や皮等から成る表皮部材で覆われている。
【0037】
サポートブラケット22は、シートバック20の上部に設けられ、シートバック20の骨格を構成する強度部材であるシートフレーム21に溶接等によって固定される。サポートブラケット22の上部に形成されるピン設置部23は、シートバック20の上端から上方に突出するよう配置される。
【0038】
ピン設置部23には、ヘッドレストステー13のスライド凹部14に係脱自在且つ摺動自在に挿入される係脱ピン24が設けられる。即ち、ヘッドレスト10をシートバック20に取り付けた状態において、係脱ピン24は、スライド凹部14に沿ってその延在方向に相対的に移動可能であり、且つ、スライド凹部14の内部で相対的に回動可能である。
【0039】
また、ピン設置部23には、スライド凹部14に摺動自在に挿入されるガイドピン25が設けられる。ガイドピン25をスライド凹部14に挿入した状態において、ガイドピン25は、スライド凹部14に沿ってその延在方向に相対的に移動可能である。
【0040】
図3は、サポートブラケット22を拡大して示す斜視図である。図3に示すように、係脱ピン24及びガイドピン25は、各々左右一対、対向して設けられ、サポートブラケット22の左右両側のピン設置部23から内側に向かって突設される。
【0041】
これにより、係脱ピン24及びガイドピン25は、ヘッドレストステー13(図2参照)の左右両側面に形成されたスライド凹部14(図2参照)に夫々挿入され、ヘッドレストステー13の動きを左右両側からガイドする。
【0042】
係脱ピン24の先端は、ヘッドレスト10(図2参照)をシートバック20(図2参照)に取り付けた状態において、常にスライド凹部14に挿入されている。他方、ガイドピン25の先端は、ヘッドレスト10を前方に倒してシートバック20の背面方向に移動させる際にのみ、スライド凹部14に挿入される。
【0043】
また、係脱ピン24には、係脱ピン24を軸方向に移動させる操作ノブ28を備えている。操作ノブ28を操作することにより、係脱ピン24とスライド凹部14との係合及びその解除を行うことができる。これにより、ヘッドレスト10の取り外しや高さ調整等を容易に行うことができる。
【0044】
尚、所定の高さでヘッドレスト10を固定するために、スライド凹部14の内部に、延在方向に所定の間隔で、係脱ピン24と係脱自在な複数の凹凸形状を形成しても良い。これにより、高さ調整時の操作性と固定時の安定した支持性能とを両立することができる。
【0045】
また、サポートブラケット22には、ヘッドレストステー13が挿入される挿通部26及び挿通部27が形成されている。
【0046】
挿通部26は、シートバック20を起立した着座状態において、ヘッドレスト10を摺動自在に支持するものである。具体的には、挿通部26は、少なくとも上方に開口する略四角筒状の形態を成し、この挿通部26に略板状のヘッドレストステー13が挿通される(図4参照)。
【0047】
挿通部27は、ヘッドレスト10を前方に倒してシートバック20の背面方向に移動させる際に、ヘッドレストステー13を挿通させて、ヘッドレスト10を摺動自在に支持するものである。
【0048】
図4は、シートバック20にヘッドレスト10を取り付けた状態を示す斜視図である。図4に示すように、ヘッドレスト10は、ヘッドレストステー13がサポートブラケット22の前述した挿通部26(図3参照)に挿入され、高さ方向に摺動自在に支持される。
【0049】
ここで、前述の通り、スライド凹部14には、係脱ピン24の先端が挿入される。即ち、ヘッドレスト10は、ヘッドレストステー13の外周面がサポートブラケット22の挿通部26の内面によって支持されると共に、スライド凹部14が係脱ピン24によって支持される。これにより、十分な支持強度を発揮し、ヘッドレスト10を安定して支持することができ、且つその高さを容易に調整することができる。
【0050】
次に、図5ないし図8を参照して、ヘッドレスト10を格納状態にする動作について詳細に説明する。
【0051】
図5(A)は、ヘッドレスト10を最上位に持ち上げる動作を示す斜視図であり、図5(B)は、同動作を示す側面図である。シートバック20を前倒しする前には、先ず、図5(A)及び(B)に示すように、ヘッドレスト10を最上位に持ち上げる。
【0052】
具体的には、操作ノブ28を操作することによって係脱ピン24による固定を解除し、ヘッドレスト10を上方へと持ち上げる。ヘッドレスト10は、ヘッドレストステー13のスライド凹部14に挿入されている係脱ピン24によってその動きがガイドされ、高さ調節方向の最上位へとスライド移動される。
【0053】
ここで、ヘッドレストステー13の下端部は、サポートブラケット22の挿通部26の上端部よりも上方へと移動する。即ち、ヘッドレストステー13は、挿通部26から外れ、ヘッドレストステー13の外周面と挿通部26の内面との支持関係が解除される。つまり、ヘッドレストステー13は、左右のスライド凹部14に挿入されている係脱ピン24による支持のみとなる。
【0054】
次に、ヘッドレスト10を前方へと倒す。図6(A)は、ヘッドレスト10を前方に倒す動作を示す斜視図であり、図6(B)は、同動作を示す側面図である。ヘッドレスト10を最上位に移動した後、図6(A)及び(B)に示すように、係脱ピン24を支点としてヘッドレストステー13を回動させてヘッドレスト10を前方へと倒す。
【0055】
即ち、前述の通り、ヘッドレスト10を最上位にスライドさせると、ヘッドレスト10は、左右の係脱ピン24による支持のみとなるので、ヘッドレストステー13は、係脱ピン24を支点として回動自在となり、ヘッドレスト10を前方へと倒すことができる。
【0056】
次に、前方に倒したヘッドレスト10を後方に移動させて格納状態にする。図7(A)は、ヘッドレスト10を背面20b側に移動する動作を示す斜視図であり、図7(B)は、同動作を示す側面図である。ヘッドレスト10を前方に倒したら、図7(A)及び(B)に示すように、ヘッドレスト10をシートバック20の背面20b側へとスライドさせる。これにより、ヘッドレスト10は、格納状態となる。
【0057】
具体的には、図7(B)に示すように、ヘッドレスト10を前倒した状態で背面20b側に押すことにより、ヘッドレスト10は、スライド凹部14に挿入されている係脱ピン24にガイドされて、背面20b側へとスライド移動する。
【0058】
そして、ガイドピン25がスライド凹部14に入り込み、そのガイドピン25によってもヘッドレストステー13の動きがガイドされる。つまり、ヘッドレスト10は、スライド凹部14に挿入される係脱ピン24とガイドピン25とによって支持されるので、回動が規制され、スライド凹部14の延在方向に沿ってスライド移動する。
【0059】
また更に、ヘッドレストステー13は、サポートブラケット22の挿通部27(図3参照)に挿入される。これにより、ヘッドレストステー13の外周面と挿通部27の内面とが摺動可能に当接し、ヘッドレスト10は、挿通部27によって摺動自在に支持される。これにより、ヘッドレスト10の回動をより確実に抑えることができる。
【0060】
ここで、前述の通り、スライド凹部14は、ヘッドレストクッション11の内部まで連続して延在するよう形成されている。そして、そのスライド凹部14に対応して、ヘッドレストクッション11の前面には、サポートブラケット22のピン設置部23を通過させるスリット12が形成されている。
【0061】
これにより、ヘッドレスト10をシートバック20の背面20b側に向かって移動させる際に、ヘッドレストクッション11とサポートブラケット22との干渉を減らし、ヘッドレスト10の移動量を大きく確保することができる。具体的には、ヘッドレストクッション11の下部がシートバック20の背面20bと略同一面となる位置まで、ヘッドレスト10を移動させることができる。これにより、車両用シート1を折り畳む際に、ヘッドレスト10とシートクッション30との干渉を小さくすることができる。
【0062】
また、ヘッドレスト10の移動量を大きく確保することができるので、ヘッドレスト10をシートバック20の背面20b側にスライドさせた状態で、ヘッドレストステー13を背面20bよりも突出させることができる。ヘッドレストステー13の背面20bよりも突出した部分は、後述する積荷ガード部を構成する。
【0063】
図8は、シートバック20を前倒してその背面20bに積荷50を搭載した状態を示す斜視図である。図8に示すように、ヘッドレスト10を格納した状態でシートバック20を前方に倒すことにより、シートバック20の背面20bを、積荷50を載置する床面として使用することができる。
【0064】
本実施形態では、ヘッドレスト10を回動させて前方に倒し、シートバック20の背面20b方向に移動させて格納状態しているので、シートバック20を前倒しにして折り畳む際に、ヘッドレスト10とシートクッション30との干渉を減らすことができる。
【0065】
その結果、積荷50を積載する荷室5の床面を略水平にすることができ、積載性能を向上させることができる。また、シートクッション30の形状設計自由度が高くなり、意匠性の向上や、座り心地等の快適性の向上も期待できる。
【0066】
また、ヘッドレスト10を格納して状態において、前述の通り、ヘッドレストステー13の一部は、シートバック20の背面20b側に突出しているので、その突出した部分を積荷50の移動を抑える積荷ガード部として利用することがきる。これにより、例えば、減速時等において、積荷50が前方に移動して前方座席を押圧することを抑えることができ、荷物積載時の安全性を高めることができる。
【0067】
また、ヘッドレストステー13に、形成された係止部15を利用して、積荷を安全に固定することができる。即ち、係止部15に、ロープやベルト等(51)を直接通したり、フック等の係止具を引っ掛けたりして、積荷50を容易且つ安全に固縛することができる。これにより、荷物積載時の安全性を更に高めることができる。
【0068】
尚、図3及び図7を参照して既に説明したように、ヘッドレスト10は、格納状態において、スライド凹部14に挿入される係脱ピン24とガイドピン25とによって支持されて回動が規制されている。また更に、ヘッドレストステー13は、格納状態において、挿通部27に挿入されて支持される。これにより、積荷ガードとして機能するヘッドレストステー13は、積荷50の衝突荷重に耐え、且つ積荷50を強固に固縛するための十分な強度を発揮することができる。
【0069】
次に、図9及び図10を参照して、実施形態を変形した例として、車両用シート101のヘッドレスト110について詳細に説明する。図9は、ヘッドレスト110を示す斜視図である。図10は、車両用シート101のシートバック20を前倒してその背面20bに積荷50を搭載した状態を示す斜視図である。尚、既に説明した実施形態と同一若しくは同様の作用、効果を奏する構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
図9に示すように、ヘッドレスト110は、ヘッドレストステー113の形態を変更している。即ち、ヘッドレスト110のヘッドレストステー113は、左右一対の棒状部116と、棒状部116の下端部から連続して形成されて左右の棒状部116を互いに連結する連結部117と、を有する。
【0071】
ヘッドレストステー113は、ヘッドレスト110の骨格を形成する強度部材であり、棒状部116は、ヘッドレストクッション11の下部から下方に向かって延び、左右一対設けられる。また、棒状部116は、ヘッドレストクッション11の内部まで連続して延びている。
【0072】
連結部117は、棒状部116の下端部、即ち、サポートブラケット22に挿入される側の端部から連続して形成される。連結部117によって左右の棒状部116が連結されるので、ヘッドレストクッション11から下方に突出するヘッドレストステー113は、略U字状若しくは略コ字状となる。
【0073】
ヘッドレストステー113の側部、詳しくは、左右一対の棒状部116の車幅方向の外側となる側部には、棒状部116の延在方向にそってスライド凹部14が形成されている。これにより、既に説明した実施形態と同様に、ヘッドレスト110を前方に倒して後方に移動し、図10に示すように、格納状態にすることができる。
【0074】
尚、ヘッドレストステー113としては、例えば、合成樹脂材料や、金属製の中空パイプ材等を用いることもできる。例えば、金属製の中空パイプ材を略U字状に曲げ加工することによりにヘッドレストステー113を成形し、その側部にスライド凹部14をプレス加工等によって形成することができる。また、スライド凹部14を構成する別の部品を準備し、ヘッドレストステー113の側部に溶接やボルト締結等によって固定しても良い。
【0075】
図10に示すように、車両用シート101のシートバック20を前倒してその背面20bに積荷50を搭載する際には、背面20bから突出したヘッドレストステー113は、積荷50の移動を抑えてる積荷ガード部として機能する。
【0076】
ここで、連結部117で一対の棒状部116の端部を連結しているので、棒状部116の端部は、棒形状の尖端がそのまま露出して荷室5に突出することがない。これにより、棒状部116の尖端が積荷50や身体等に突き刺さるという問題を回避できる。
【0077】
また、左右の棒状部116を連結する連結部117を、積荷50を固縛する際の係止部115として利用することができる。即ち、連結部117にロープ51やフック等を掛けて積荷50を容易且つ安全に固定することができる。
【0078】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 車両用シート
10 ヘッドレスト
11 ヘッドレストクッション
12 スリット
13 ヘッドレストステー
14 スライド凹部
15 係止部
20 シートバック
20b 背面
21 シートフレーム
22 サポートブラケット
23 ピン設置部
24 係脱ピン
25 ガイドピン
30 シートクッション
113 ヘッドレストステー
115 係止部
116 棒状部
117 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10