(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脚と、当該脚に基端側を支持され起立する第1のガススプリングと、当該第1のガススプリングの先端側に接続されるジョイント部材と、当該ジョイント部材に基端側を支持され起立する第2のガススプリングと、当該第2のガススプリングの先端側に接続される座とを具備し、
前記ジョイント部材は前記第1のガススプリングの先端側に設けられる第1突没子を押圧する押圧手段を備え、
前記第1のガススプリングは、前記押圧手段と接続された第1操作レバーの操作に応じて前記第1突没子が押圧されることで、伸縮可能とされており、
前記第2のガススプリングは、第1操作レバーとは独立して設けられた第2操作レバーの操作に応じて、前記第2のガススプリングの先端側に設けられる第2突没子が押圧されることで、伸縮可能とされており、
前記第1のガススプリングの伸縮に伴って前記ジョイント部材が前記脚に対して昇降し、前記第2のガススプリングの伸縮に伴って前記座が前記ジョイント部材に対して昇降するように構成したことを特徴とする椅子。
前記第1のガススプリングと第2のガススプリングとは少なくとも一部が高さ方向に重複し、前記脚は前記第1のガススプリングとの接続部から外側に向かって伸びる複数の脚羽根を備えており、前記第1のガススプリングが収縮した場合に、前記第2のガススプリングの基端側が隣り合う脚羽根の間に位置するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の椅子。
前記脚は前記第1のガススプリングとの接続部から外側に向かって伸びる複数の脚羽根を備えており、前記第1のガススプリングが収縮した場合に、前記第2のガススプリングの基端側が側面視において前記脚羽根と重複しないよう構成したことを特徴とする請求項1記載の椅子。
前記座は、本体部と、当該本体部の前方に設けられる可動部とを有しており、当該可動部を前記本体部とともにほぼ連続する座面を形成する状態と前記本体部に対して下方に折り曲げた状態との間で回動させる回動手段を備えていることを特徴とする請求項1又は4記載の椅子。
前記回動手段が前記ジョイント部材と前記可動部とを連結するリンクを有し、当該リンクによって前記可動部が前記第2のガススプリングの伸長と連動して下方へ折れ曲がるよう構成するとともに、前記ジョイント部材に対する前記座の第2のガススプリング回りの回転を規制していることを特徴とする請求項5記載の椅子。
前記ジョイント部材にステップが取り付けられており、前記第1のガススプリングの伸縮に伴って前記ステップが前記ジョイント部材とともに昇降するよう構成したことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の椅子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、背の高いデスクを用いて、立位状態でミーティングや作業を行うことが提案されており、ミーティングや作業への集中度を高める効果や、長時間座り続けることによる健康への悪影響を抑制する効果などがあるとされている。ただし、このように背の高いデスクを用いる場合にも、長時間立ったままで作業を行うことで疲労がたまってしまうことや足の不自由な人がミーティングに参加することが考えられるため、背の高いデスクに対応した座の高い椅子を準備するのが好ましい。
【0005】
しかしながら、従来のオフィス等で用いられるガススプリングを備えた椅子では、座の昇降幅に限界があるため、例えば、天板の高さが650〜750mm程度である通常の高さのデスクを使用する場合と、天板の高さが1000〜1200mm程度の背の高いデスクを使用する場合とで同一の椅子を用いることは困難であった。そのため、通常の高さのデスクを使用する場合と背の高いデスクを使用する場合とで別途椅子を用意する必要が生じるが、この場合、椅子を収納するスペースが余分に必要となり、コストも増加するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、広範囲に高さ調節が可能であり、通常の高さのデスクを用いる場合にも背の高いデスクを用いる場合にも使用できる椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明の椅子は、脚と、当該脚に基端側を支持され起立する第1のガススプリングと、当該第1のガススプリングの先端側に接続されるジョイント部材と、当該ジョイント部材に基端側を支持され起立する第2のガススプリングと、当該第2のガススプリングの先端側に接続される座とを具備し、前記ジョイント部材は前記第1のガススプリングの先端側に設けられる
第1突没子を押圧する押圧手段を備え、前記第1のガススプリングは
、前記押圧手段と接続された第1操作レバーの操作に応じて前記
第1突没子
が押圧
されることで
、伸縮可能とされており、
前記第2のガススプリングは、第1操作レバーとは独立して設けられた第2操作レバーの操作に応じて、前記第2のガススプリングの先端側に設けられる第2突没子が押圧されることで、伸縮可能とされており、前記第1のガススプリングの伸縮に伴って前記ジョイント部材が前記脚に対して昇降し、前記第2のガススプリングの伸縮に伴って前記座が前記ジョイント部材に対して昇降するよう
に構成したことを特徴とする。
【0009】
このように構成すると、起立する2本のガススプリングがそれぞれ伸縮し、これらの伸縮に伴って2段階に座が昇降することから、簡単な構成で座の昇降幅を大きく設定することが可能となり、通常の高さのデスクを使用する場合と背の高いデスクを使用する場合とで同一の椅子を用いることが可能となる。また、ジョイント部材が、第1のガススプリングと第2のガススプリングとを接続することに加え、第1のガススプリングの突没子を押圧する機能も受け持っていることから、部品点数を削減しコストダウンを図りつつ、シンプルで良好な外観を持たせることも可能となる。
【0010】
また、座の昇降幅を大きくとりつつ座の最小高さを低く抑えるとともに、座の最小高さを高くすることなくストロークの大きなガススプリングを使用して、座の最大高さをより高くすることを可能とするためには、前記第1のガススプリングと第2のガススプリングとは少なくとも一部が高さ方向に重複し、前記脚は前記第1のガススプリングとの接続部から外側に向かって伸びる複数の脚羽根を備えており、前記第1のガススプリングが収縮した場合に、前記第2のガススプリングの基端側が隣り合う脚羽根の間に位置するよう構成することが好ましい。
【0011】
さらに、回転軸が2つとなって着座者に不快感を与えることを防止するとともに、座面を低くした場合に第1のガススプリング回りの回転によって第2のガススプリングが脚羽根に衝突することを防止するためには、前記脚に対する前記ジョイント部材の第1のガススプリング回りの回転を規制する規制手段を備えていることが望ましい。
【0012】
一方、椅子の安定性を確保しつつ、第1のガススプリング回りの回転によって第2のガススプリングが脚羽根に衝突することを防止するためには、前記脚は前記第1のガススプリングとの接続部から外側に向かって伸びる複数の脚羽根を備えており、前記第1のガススプリングが収縮した場合に、前記第2のガススプリングの基端側が側面視において前記脚羽根と重複しないよう構成することも有効である。
【0013】
また、床面に足を付け、ほぼ立位状態のまま浅く腰掛けるような、いわゆるちょい掛け用の椅子として用いることを可能とするためには、前記座は、本体部と、当該本体部の前方に設けられる可動部とを有しており、当該可動部を前記本体部とともにほぼ連続する座面を形成する状態と前記本体部に対して下方に折り曲げた状態との間で回動させる回動手段を備えていることが好適である。
【0014】
さらに、背の高いデスクを用いて立位状態でミーティングや作業を行う際などに、適切な高さのちょい掛け用椅子に簡単に変形することを可能とし、回転軸が2つとなって着座者に不快感を与えることを防止するとともに、着座者の立ち上がりを補助することも可能とするためには、前記回動手段が前記ジョイント部材と前記可動部とを連結するリンクを有し、当該リンクによって前記可動部が前記第2のガススプリングの伸長と連動して下方へ折れ曲がるよう構成するとともに、前記ジョイント部材に対する前記座の第2のガススプリング回りの回転を規制していることが有効である。
【0015】
そして、地面に足が届かない場合にも安定して着座することができ、ステップを足場として第2のガススプリングを伸長させ、座を上昇させることを可能とするためには、前記ジョイント部材にステップが取り付けられており、前記第1のガススプリングの伸縮に伴って前記ステップが前記ジョイント部材とともに昇降するよう構成することが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、広範囲に高さ調節が可能であり、通常の高さのデスクを用いる場合にも背の高いデスクを用いる場合にも使用できる椅子を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明における第1実施形態に係る椅子の斜視図である。
図1に示すように、この椅子は、床面FLに当接する脚1と、脚1に支持され起立する脚支柱2と、脚支柱2に接続される座3と、座3の後方に取り付けられる背4とを備える。
【0020】
ここで、以下において方向の説明を行う場合には、上下方向、前後方向、左右方向との語を用い、それぞれ
図1のように起立した椅子を基準とした場合の一般の方向の呼びかたと同様、それぞれ鉛直方向(図中のZ方向)、背4に略垂直となる方向(図中のX方向)、上下方向及び前後方向に垂直となる方向(図中のY方向)を指す。
【0021】
椅子の構成について具体的に説明すると、脚1は、
図1及び
図1の椅子の側面図である
図4に示すように、放射状に延び先端にキャスタ12を備えた5本の脚羽根11〜11を備え、この脚羽根11〜11の中心である接続部13に脚支柱2を支持させている。この脚羽根11〜11は、接続部13から先端に向かうにつれて上面の高さが低くなるよう形成されている。
【0022】
脚支柱2は、主に上下方向に伸縮する円筒形状の第1のガススプリング21と、ジョイント部材22と、同じく上下方向に伸縮する円筒形状の第2のガススプリング23とから構成されている。より具体的には、
図5に示すように、第1のガススプリング21は、基端側であるシリンダ21aと、このシリンダ21aの上方に配置される先端側であるロッド21bとから構成され、ロッド21bのシリンダ21a寄りの一部分はこのシリンダ21aの内部に収容されている。また、第1のガススプリング21は、シリンダ21aが脚1の接続部13に設けられた貫通孔13aに上方より挿入され、シリンダ21aの下方に向かうほど径が小さくなるテーパ部21a1と、これに対応する形状をなす貫通孔13aの支持面13a1とが嵌り合うことによって、上下方向に位置が規制されている。そして、第1のガススプリング21のロッド21bは、ジョイント部材22を支持している。
【0023】
ジョイント部材22は、前側に位置する第1接続部22aと、後側において上下方向に延在する第2接続部22bとが一体的に形成された逆L字型の部材である。第1接続部22aは、上下方向に設けられた貫通孔22a1に第1のガススプリング21のロッド21bの上端が挿入され、ロッド21bの先端に設けられたテーパ部21b1と、貫通孔22a1の支持面22a2とが嵌り合うことによって上下方向の位置が規制されている。また、第2接続部22bには上下方向に貫通孔22b1が設けられている。
【0024】
第2のガススプリング23は、基端側であるシリンダ23aと、このシリンダ23aの上方に配置される先端側であるロッド23bとから構成され、ロッド23bのシリンダ23a寄りの一部分はこのシリンダ23aの内部に収容されている。また、第2のガススプリング23は、シリンダ23aが第2接続部22bの貫通孔22b1に上方より挿入され、シリンダ23aの下方に向かうほど径が小さくなるテーパ部23a1と、これに対応する形状をなす貫通孔22b1の支持面22b2とが嵌り合うことによって、上下方向に位置が規制されている。そして、第2のガススプリング23のロッド23bは、座3の支持フレーム33を支持している。
【0025】
なお、第1のガススプリング21とジョイント部材22の取り付け高さ位置と第2のガススプリング23のシリンダ23aの上端の高さ位置はほぼ同一となっており、2本のガススプリング21,23はジョイント部材を介して平行に配置されるとともに、これらのガススプリング21,23が共に収縮した場合において、
図2に示すように、第1のガススプリング21と第2のガススプリング23の一部が、具体的には第1のガススプリング21の殆どの部分であり、且つ、第2のガススプリングの90%程度の部分が高さ方向に重複するようになっている。また、シリンダ23aの下端は、ジョイント部材22の第2接続部22bの下端より下方に突出している。
【0026】
さらに、第1のガススプリング21と第2のガススプリング23の各ロッド21b,23bの先端からは、
図5に示すように、上方に向かって突没子21c,23cが突出しており、これらの突没子21c,23cの突没動作によってガススプリング21,23の伸縮がロック/ロック解除されるようになっている。具体的には、突没子21c,23cが押圧されていない状態においては、ロッド21b,23bのシリンダ21a,23aに対する長手方向の相対的な移動が規制されており、突没子21c,23cが押圧されることによって、ロッド21b,23bのシリンダ21a,23aに対する長手方向の相対的な移動が許容されるようになっている。このように構成されているため、ガススプリング21,23は、突没子21c,23cが押圧されることによってそれぞれ伸縮可能となり、座3(
図1及び
図4参照)を昇降させることが可能となっている。
【0027】
なお、ガススプリング21,23が伸縮するとは、シリンダ21a,23a及びロッド21a,23aに長手方向の引張力又は圧縮力が加えられることによって、ガススプリング21,23が伸長又は収縮することを示す。より具体的には、「伸長する」とは、ロッド21b,23bの先端がシリンダ21a,23aから遠ざかる方向に移動し、シリンダ21a,23aに収容される部分が少なくなることで全長が長くなることを示し、「収縮する」とは、ロッド21b,23bの先端がシリンダ21a,23aに近づく方向に移動し、シリンダ21a,23aに収容される部分が多くなることで全長が短くなることを示す。
【0028】
また、第1のガススプリング21と第2のガススプリング23の各ロッド21b,23bは各シリンダ21a,23aに対して回転自在となっており、これらによって支持される座3は、後述する規制手段25がない場合には、
図4に示す第1のガススプリング21の中心を通る軸m1及び第2のガススプリング23の中心を通る軸m2のそれぞれの回りに回転するようになっている。なお、ジョイント部材22は、
図5に示すように、第1のガススプリング21の突没子21cを押圧する押圧手段5を内部に備え、第1のガススプリング21の突没子21cを押圧する機能も受け持っているが、この押圧手段5については後述する。
【0029】
さらに、ジョイント部材22の第2接続部22bの下端付近には、
図1及び
図4に示すように、第2接続部22bの側方から前方に延びるステップフレーム24aが取り付けられており、このステップフレーム24aによって、床面FLに平行な平板状のステップ24が支持されている。このステップ24は、座3の前側下方において、着座時に足置きとなるものである。さらに、このステップフレーム24aと脚羽根11(11a)のうちの1つは、規制手段25によって連結されている。
【0030】
規制手段25は、それぞれ脚羽根11aの左右両側を挟むように設けられる一対の上リンク25a及び下リンク25bと、脚羽根11aに固定される固定部材25cとから構成される。上リンク25aは、一端がステップフレーム24aに設けられる軸p1回りに枢着され、他端が軸p2を介して下リンク25aの一端と回転自在に連結されており、下リンク25bの中央部分は固定部材25cの軸p3回りに枢着されている。なお、下リンク25bの他端には、ゴム等の摩擦抵抗の大きい材質で形成されるストッパ25dが設けられている。そして、規制手段25は、上リンク25a及び下リンク25bが連動して軸p1〜p3回りに回転することによって、第1のガススプリング21が収縮してステップフレーム24aが低くなった場合には、
図2に示すように、上リンク25aと下リンク25bのなす角θ1が小さくなって折りたたまれた状態となり、第1のガススプリング21が伸長してステップフレーム24aの位置が高くなった場合には、
図3及び
図4に示すように、上リンク25aと下リンク25bのなす角θ2が大きくなって上下方向に伸長した状態となる。このような構成となっていることから、規制手段25は、第1のガススプリング21の伸縮にかかわらず
図4に示す第1のガススプリング21の中心を通る長手方向に沿った軸m1回りの回転を規制するようになっている。そのため、本実施形態の座3は、第2のガススプリング23の中心を通る長手方向に沿った軸m2回りの回転のみが許容されていることとなる。
【0031】
座3は、
図1及び
図4に示すように、主に座フレーム31と、この座フレーム31の上方に設けられクッションを有する座部32と、支持フレーム33と、背フレーム34とから構成されており、支持フレーム33は脚支柱2に支持されるとともに脚支柱2より前方のやや上方に向かって延在し、先端が座フレーム31の前側を回転自在に支持している。また、支持フレーム33は脚支柱2の後方において背フレーム34を回転自在に支持しており、この背フレーム34の後端には背4が取り付けられている。さらに、背フレーム34は、支持フレーム33に支持される位置より先端に向かう中途の位置において、前述の座フレーム31の後側を回転自在に支持している。このような構成になっているため、座フレーム31と背フレーム34とは、一部の回転支点がスライドしながら支持フレーム33に対して連動して動作し、いわゆるシンクロロッキング動作が可能となっている。なお、座3及び背4として、シンクロロッキング動作を行わず、背4の傾動動作のみを行うものを用いることも可能である。
【0032】
次に、
図5を用いて、ジョイント部材22が備える押圧手段5について説明する。
【0033】
押圧手段5は、ジョイント部材22に固定される取付部51と、前端がこの取付部51の支点nに枢着され前後方向に延在するアーム52と、一端をアーム52の後端である操作端52aに取り付けられるワイヤ53とを備えており、アーム52は取付部51のすぐ後方の凹部52bにおいて突没子21cと当接している。この押圧手段5は、ワイヤ53及びワイヤカバー54を除いてジョイント部材22の第1接続部22aに内蔵されている。また、
図1及び
図4にも示すように、ワイヤ53は大部分がワイヤカバー54に覆われており、ワイヤカバー54は、操作端52aの下方においてジョイント部材22に金具56を介して固定されるワイヤカバー止め55によって、ワイヤ53と連動して動作しないようになっている。そして、このワイヤ53の他端は座フレーム31から突出した第1の操作レバー35(
図1及び
図4参照)に接続されており、この第1の操作レバー35を操作することでワイヤ53を引くと、アーム52は支点nを中心に回転し、これによって突没子21cが下方へ押圧されるようになっている。
【0034】
なお、
図5に示すように、押圧手段5の内蔵されるジョイント部材22の第1接続部22aの上方は、カバー22cを取り外すことによって開放されるようになっており、押圧手段5のメンテナンスを容易に行うことが可能となっている。また、第2のガススプリング23がこのジョイント部材22の第1接続部22aよりも後方にずれた位置において支持されていることから、カバー22cを取り外すことによってメンテナンスを行う際には、第2のガススプリング23を伸長させることで第1接続部22aの上方に大きなスペースを作ることができ、メンテナンスをより容易に行うことが可能である。
【0035】
また、第2のガススプリング23も、
図1及び
図4に示す第2の操作レバー36を操作することによって突没子23cが押圧され、伸縮可能となるよう構成されているが、この第2のガススプリング23の伸縮のための構造は通常のものであるため、説明を省略する。なお、操作レバー36及び上述した操作レバー35は、着座者が操作のしやすい場所に設けられていればよく、これらの取り付け位置は
図1及び
図4に示される位置に限定されるものではない。
【0036】
ここで、以上のように構成された椅子の座3(座面32a)の昇降動作を、
図2〜
図4を参照して説明する。なお、以下の説明においては、これらの図に示すように、座面32aの中心Pの高さ位置を座高H1〜H3とする。また、本実施形態において、第1のガススプリング21、第2のガススプリング23のストロークはそれぞれ150mm、200mm程度とする。
【0037】
まず、
図2は第1のガススプリング21と第2のガススプリング23がともに収縮し、座面32aが最も低い状態を示す側面図であり、天板の高さが600〜800mm程度である通常の高さのデスクを使う際に用いる場合に対応して、この時の座高H1は例えば約450mmに設定される。この状態においては、第2のガススプリング23のシリンダ23aは隣り合う2つの脚羽根11,11の間に位置するようになっている。なお、シリンダ23aが隣り合う2つの脚羽根11,11の間に位置するとは、シリンダ23aが側面視において脚羽根11と重複する、言い換えれば、シリンダ23aの一部が脚羽根11〜11の上面を滑らかに接続することで形成される仮想的な円錐面よりも下方に位置することを示す。また、規制手段25に設けられるストッパ25dは床面FLから離間した状態となっており、椅子はキャスタ12によって自由に移動させることができるようになっている。
【0038】
このような状態から座面32aを上昇させる場合には、まず第1の操作レバー35を操作するのが好ましい。ここで、
図3は、第1の操作レバー35を操作し、第1のガススプリング21を伸長させた状態を示す側面図であり、このときの座高H2は約600mmとなる。
図3に示すように、第1のガススプリング21を伸長させると、ジョイント部材22の上昇に伴ってステップ24も上昇し、さらに規制手段25は上下方向に伸長した状態となる。そのため、第1のガススプリング21が伸長した状態においては、下リンク25bのストッパ25dが床面FLに当接するようになっており、キャスタ12による椅子の移動を抑制するようになっている。なお、これら
図2及び
図3では、ワイヤ53(ワイヤカバー54)の図示を省略している。
【0039】
そして、
図3の状態からさらに座面32aの高さを上昇させる場合は、第2の操作レバー36を操作する。この際には、ステップ24を足場として第2のガススプリング23を伸長させ、座面32aを上昇させることができる。ここで、
図4は、第2の操作レバー36を操作し、第1のガススプリング21及び第2のガススプリング23とともに伸長させて、座面32aが最も高くなった状態を示す側面図であり、この時の座高H3は約800mmとなる。
図4に示すように、この状態においても、ストッパ25dは床面FLに当接し、キャスタ12による椅子の移動を抑制するようになっている。
【0040】
なお、上記の説明では、第1のガススプリング21及び第2のガススプリング23を最大まで伸長させた状態で説明を行ったが、第1のガススプリング21も第2のガススプリング23も途中まで伸長させた状態で固定することも可能であることから、座面32aを好みの高さ位置に調整することが可能であり、上述した例では、座面32aの高さ位置は450mm〜800mmに設定可能である。また、第1のガススプリング21と第2のガススプリング23を適切に調節することによって、座面32aの高さ位置を変えずにステップ24の高さ位置を調節することも可能である。
【0041】
さらに、
図2の座面32aの高さ位置が最も低い状態から、初めに第2の操作レバー36を操作して第2のガススプリング23を伸長させ、その後第1の操作レバー35を操作して第1のガススプリング21を伸長させることも可能である。ただし、第2のガススプリング23を伸長させた状態において着座者の足が床面FLに届かない場合は、一度床面FLに降りて座面32aに体重がかからないようにしてから座面32aを上昇させる必要があるため、第1のガススプリング21がある程度伸長した状態でなければ、第2の操作レバー36の操作ができないような機構を設けることも考えられる。
【0042】
一方、
図4のように2本のガススプリング21,23がともに伸長した状態から座面32aの高さ位置を低くする場合は、上記と反対の手順、すなわち、まず第2の操作レバー36を操作して第2のガススプリング23を収縮させ、次に第1の操作レバー35を操作して第1のガススプリング21を収縮させることが好ましい。この順で操作を行うことによって、上述したような容易に座面32aを上昇させることができない状態になることを防止することができる。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る椅子は、脚1と、脚1に基端側であるシリンダ21aを支持され起立する第1のガススプリング21と、第1のガススプリング21の先端側であるロッド21bに接続されるジョイント部材22と、ジョイント部材22に基端側であるシリンダ23aを支持され起立する第2のガススプリング23と、第2のガススプリング23の先端側であるロッド23bに接続される座3とを具備し、ジョイント部材22は第1のガススプリング21のロッド21bの先端に設けられる突没子21cを押圧する押圧手段5を備え、第1のガススプリング21は突没子21cを押圧することで伸縮可能とされており、第1のガススプリング21の伸縮に伴ってジョイント部材22が脚1に対して昇降し、第2のガススプリング23の伸縮に伴って座3がジョイント部材22に対して昇降するよう構成したものである。
【0044】
このように構成すると、起立する2本のガススプリング21,23がそれぞれ伸縮し、これらの伸縮に伴って2段階に座3が昇降することから、簡単な構成で座3の昇降幅を大きく設定することが可能となり、例えば、天板の高さが600〜800mm程度である通常の高さのデスクを使用する場合と、天板の高さが1000〜1200mm程度の背の高いデスクを使用する場合とで同一の椅子を用いることが可能となる。また、ジョイント部材22が、第1のガススプリング21と第2のガススプリング23とを接続することに加え、第1のガススプリング21の突没子21cを押圧する機能も受け持っていることから、部品点数を削減しコストダウンを図りつつ、シンプルで良好な外観を持たせることも可能となる。さらに、近年、上述したような通常の高さから起立状態で使用する高さまで天板の高さを調節可能な昇降デスクが望まれており、このようなデスクを用いる場合にも、複数の椅子を準備することなく、天板の高さに応じた適切な座3の高さを設定することが可能となる。
【0045】
また、第1のガススプリング21と第2のガススプリング23が共に収縮した場合において第1のガススプリング21と第2のガススプリング23の一部が高さ方向に重複し、脚1は第1のガススプリング21との接続部13から外側に向かって伸びる5本の脚羽根11〜11を備えており、第1のガススプリング21が収縮した場合に、第2のガススプリング23のシリンダ23aが隣り合う脚羽根11,11の間に位置するよう構成したため、座3の昇降幅を大きくとりつつ座3の最小高さを低く抑えるとともに、座3の最小高さを高くすることなくストロークの大きなガススプリング23を使用して、座3の最大高さをより高くすることを可能となっている。
【0046】
さらに、脚1に対するジョイント部材22の第1のガススプリング21回りの回転である軸m1回りの回転を規制する規制手段25を備えているため、回転軸が2つとなって着座者に不快感を与えることを防止するとともに、座面32aを低くした場合に軸m1回りの回転によって第2のガススプリング23が脚羽根11に衝突することを防止することが可能である。
【0047】
そして、ジョイント部材22にステップ24が取り付けられており、第1のガススプリング21の伸縮に伴ってステップ24がジョイント部材22とともに昇降するよう構成しているため、地面に足が届かない場合にも安定して着座することができ、ステップ24を足場として第2のガススプリング23を伸長させ、座3を上昇させることが可能である。
【0048】
<第2実施形態>
図6は、本発明における第2実施形態に係る椅子の側面図である。この椅子は、第1実施形態と同様、脚101と、脚101に支持され起立する脚支柱102と、脚支柱102に接続される座103と、座103の後方に取り付けられる背104とを備えるものである。第1実施形態とは、主にジョイント部材122、第2のガススプリング123、座103及び背104の構成が異なっているが、第1実施形態と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0049】
ジョイント部材122は、
図6に示すように、第1接続部122aと第2接続部122bとが一体的に形成された逆L字型の部材であり、第1のガススプリング21と第2のガススプリング123とを接続する点及び、第1のガススプリング21の突没子21c(
図5参照)を押圧する押圧手段5が内蔵されている点は第1の実施形態と同様である。一方、第2接続部122bにステップ24を支持するステップフレーム24aが取り付けられておらず、代わりとして、リンク124の一端124aが第1接続部122aに設けられる軸q1回りに枢着されている点が主に異なっている。
【0050】
第2のガススプリング123は、第1実施形態のものよりも短いものが用いられており、シリンダ123aがジョイント部材122の第2接続部122bの下方に突出せず、第2接続部122bの内部に収まっている。そして、ジョイント部材122の第2接続部122bの下端は、第1のガススプリング21が収縮した際にも、側面視において脚羽根11と重複せず、第2接続部122bの下端が脚羽根11と衝突しないようになっている。これらのことから、第2のガススプリング123のシリンダ123aも側面視において脚羽根11と重複せず、脚羽根11と衝突しないようになっている。なお、シリンダ123aが側面視において脚羽根11と重複しないとは、シリンダ123aの下端が、脚羽根11〜11の上面を滑らかに接続することで形成される仮想的な円錐面よりも上方に位置することを示す。
【0051】
座103は、第1実施形態と大きく形状が異なっており、本体フレーム131と、この本体フレーム131の上方に設けられる本体部132と、本体フレーム131の前方に設けられる可動フレーム133と、この可動フレーム133の上方に設けられる可動部134とを備える。本体フレーム131は脚支柱102に支持されるとともに、ジョイント部材122の第1接続部122aよりも前方から後方に向かって前後方向に延在しており、本体部132よりも後方では上方向に折れ曲がって背104を支持している。本体部132は、クッションを備えるとともに、
図6に示すように、着座者を適切に支持するよう、左右に向かうほど上方に湾曲した湾曲部132aを備えている。なお、背104にも、同様の目的で左右に向かうほど前方に湾曲した湾曲部104aとなっている。可動フレーム133は、後端が本体フレーム131先端の軸q2回りに枢着されており、また、軸q2より前方の位置に設けられる軸q3回りにはリンク124の他端124bが枢着されている。そして、可動部134は、クッションを備えるとともに、この可動部134の上面と本体部132の上面とで座面135を構成しており、可動部134は、可動フレーム133が軸q2回りに回動することによって、本体部132とほぼ連続する座面135を形成する状態、すなわち本体部132に対して前方に向けて略水平に伸ばした状態(
図6及び
図7参照)と、本体部132に対して下方に折り曲げた状態(
図9参照)との間で回動するようになっている。
【0052】
なお、本体フレーム131には、第1実施形態同様、第1のガススプリング21及び第2のガススプリング123を伸縮させる第1の操作レバー35及び第2の操作レバー36が設けられているが、これらの操作レバー36は図示を省略している。また、本実施形態の脚101に設けられるキャスタ112〜112の少なくとも1つには図示しないストッパが設けられており、キャスタ112による椅子の移動を規制するようになっている。
【0053】
また、本実施形態においては、
図6に示すように、本体部132と可動部134とがほぼ連続する座面135を形成する状態における座面135の中心Qを床面FLに対する座面135の高さ位置の基準とし、この高さ位置を座高H11〜H14(
図6〜9参照)とする。ここで、
図6は2つのガススプリング21,123をともに収縮させた状態、
図7は第1のガススプリング21のみを伸長させた状態、
図8は第2のガススプリング123を途中まで伸長させた状態、
図9は第2のガススプリングを最大まで伸長させた状態を示す。また、本実施形態において、第1のガススプリング21のストロークは170mm程度、第2のガススプリング123はストロークを80mm程度とされ、例えば
図6に示す座高H1を約450mmに設定すると、
図9に示す座高H4は約700mmとなる。
【0054】
そして、以上のような構成のジョイント部材122、第2のガススプリング123,本体フレーム131、可動フレーム133及びリンク124によって、回動手段であるリンク機構105が構成されており、このリンク機構105は、操作レバー36の操作により第2のガススプリング123が伸縮することに伴って、可動部134を、本体部132とともにほぼ連続する座面135を形成する状態と本体部132に対して下方に折り曲げた状態との間で回動させるようになっている。より具体的には、リンク機構105は、可動フレーム133及びリンク124が連動して軸p1〜p3回りに回転するようになっており、これによって座103は、第2のガススプリング123が収縮している場合には
図7に示すように本体部132と可動部134がほぼ連続する座面135を形成する状態となり、第2のガススプリング123が伸長すると、可動部134が軸q2回りに回転することにより、
図8に示す中途状態を経て、
図9に示すように可動部134が本体部132に対して下方に折り曲げた状態となる。
【0055】
また、第2のガススプリング123は、上記のようにジョイント部材122、本体フレーム131、可動フレーム133及びリンク124によって連結されていることから、第2のガススプリング123の伸縮にかかわらず軸m2回りの回転を規制されるようになっており、本実施形態の座103は、第1のガススプリング21回りの回転、すなわち
図6〜
図9に示す軸m1周りの回転のみが許容されていることとなる。
【0056】
以上のように構成することにより、本実施形態における椅子は、上述した第1実施形態の場合と同様、簡単な構成で座103の昇降幅を大きく設定することが可能となり、通常の高さのデスクを使用する場合と背の高いデスクを使用する場合とで同一の椅子を用いることが可能となる。また、部品点数を削減しコストダウンを図りつつ、シンプルで良好な外観を持たせることも可能となる。さらに、通常の高さから起立状態で使用する高さまで天板の高さを調節可能な昇降デスクを用いる場合にも、複数の椅子を準備することなく、天板の高さに応じた適切な座103の高さを設定することが可能となる。
【0057】
また、脚1は第1のガススプリング21との接続部13から外側に向かって伸びる5本の脚羽根11〜11を備えており、第1のガススプリング21が収縮した場合に、第2のガススプリング123のシリンダ23aが側面視において脚羽根11〜11と重複しないよう構成したため、椅子の安定性を確保しつつ、座面135を低くした場合に軸m1回りの回転によって第2のガススプリング123が脚羽根11に衝突することを防止することが可能である。
【0058】
さらに、座103は、本体部132と、本体部132の前方に設けられる可動部134とを有しており、可動部134を本体部132とともにほぼ連続する座面135を形成する状態と本体部132に対して下方に折り曲げた状態との間で回動させる回動手段105を備えていることから、床面FLに足を付け、ほぼ立位状態のまま浅く腰掛けるような、いわゆるちょい掛け用の椅子として用いることが可能となる。
【0059】
加えて、回動手段であるリンク機構105がジョイント部材122と可動部134とを連結するリンク124を有し、リンク124によって可動部134が第2のガススプリング123の伸長と連動して下方へ折れ曲がるよう構成するとともに、ジョイント部材122に対する座103の第2のガススプリング123回りの回転である軸m2周りの回転を規制していることから、背の高いデスクを用いて立位状態でミーティングや作業を行う際などに、適切な高さのちょい掛け用椅子に簡単に変形することが可能となり、回転軸が2つとなって着座者に不快感を与えることを防止するとともに、着座者の立ち上がりを補助することも可能となる。
【0060】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0061】
例えば、上記の実施形態では、押圧手段5の構成要素の位置関係は、取付部51、突没子21c、操作端53aがこの順に並ぶようになっていたが、取付部51(支点n)を操作端53aと突没子21cとの中間に配置し、ワイヤ53が操作端53aを上方に持ち上げることによって、支点nを挟んで操作端53aの反対側に設けられた突没子21cが下方に押圧される構成とすることも可能である。
【0062】
また、上述の実施形態においては、規制手段25又はリンク124を用いることによって2本のガススプリングのうち一方のガススプリング回りの回転を規制するように構成していたが、一方のガススプリング回りの回転を規制する手段はこれらに限定されるものではなく、例えば、何れか一方のガススプリングとしてシリンダに対してロッドが回転しない機構を備えたものを採用してもよい。
【0063】
さらに、上述の実施形態では、ジョイント部材22,122は逆L字型の形状となっていたが、必ずしもこのような形状となっている必要はなく、2本のガススプリングの一端同士を接続し、押圧手段5を備えている限りにおいて、他の形状のものを用いることも可能である。
【0064】
加えて、2本のガススプリング21,23(121,123)のストローク及び座高H1〜H3(H11〜H14)は、上述した実施形態の数値のものに限られず、使用するデスクの天板の高さ等に応じて適宜変更が可能である。また、2本のガススプリング21,23(121,123)は、少なくとも一部が高さ方向に重複していれば、座の昇降幅を大きくとりつつ座の最小高さを低く抑えることができ、上述した実施形態よりも2本のガススプリング21,23(121,123)の重複部分を少なくすることで、座の最大高さをより高く設定することが可能である。
【0065】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態のようなシンクロロッキングを行う座を用いることができ、また、ジョイント部材122にステップ24を設けることも可能である。
【0066】
また、操作レバー35,36は、着座者が操作のしやすい場所に設けられていればよく、取り付け位置は上述の位置に限定されるものではない。
【0067】
さらに、上述した第1実施形態においては、第2のガススプリング23は軸m2周りに自由に回転するよう構成されていたが、ワイヤ53が第2のガススプリング23に巻き付かないよう、座3の回転範囲を規制し、例えば360°以上回転しないようにしても良い。また、ワイヤ53の巻き付きを防ぐためには、操作レバー35を、脚11に取り付ける足踏みレバーとして構成することも好適である。
【0068】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。