(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中心部に順方向伝送線路と逆方向伝送線路とが交互に配置された第1領域と、前記第1の領域を囲み、前記第1領域の順方向線路に電気的に接続される順方向線路が設けられた第2の領域とを有する平面状のコイルパターンを備える送電コイルと、
前記送電コイルを含む共振素子に交流電力を供給する交流電源と、を有する受電装置に対して磁界結合により非接触で電力を伝送する送電装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付す。
【0014】
図1は、第1の実施形態に係る電力伝送装置の全体構成を示す回路ブロック図である。
図2は、電力伝送装置を構成する送電装置と受電装置を概略的に示す斜視図である。
図1に示すように、電力伝送装置は、電力を送電する送電装置10と、送電装置10から送電された電力を受電する受電装置20とを備えている。送電装置10と受電装置20は、磁界共鳴方式または電磁誘導方式等の電磁結合を利用した方式により電力を伝送する。以下、磁界共鳴方式または電磁誘導方式により電力を伝送する場合について説明する。
【0015】
送電装置10は、電力を発生する交流電源11と、共振用コンデンサ12と送電コイル13で構成される共振素子14とを有している。交流電源11は、送電用の共振素子14の自己共振周波数と同一、或いはほぼ同一の周波数の交流電力を発生し、共振素子14に供給する。具体的には、交流電源11は、6.78MHzの交流電力を発生させる発振回路と、発振回路の出力を増幅する電力増幅回路で構成されている。送電装置10の外部に設けたACアダプタから送電装置10内の交流電源11に直流の電力が供給され、交流電源11内の発振回路や電力増幅回路が動作するようになっている。
【0016】
発振回路と電力増幅回路で構成される交流電源11に替えて、交流電源11をスイッチング電源にすることもできる。スイッチング電源からなる交流電源11は発振回路の出力でスイッチング素子をオン/オフする構成になっている。スイッチング素子のオン/オフにより、共振素子14を動作させる。
【0017】
ACアダプタを外部に設け交流電源11に直流の電力を供給する代わりに、送電装置10内にACアダプタまたはAC/DC変換部を設けることも可能である。外部からAC100Vを送電装置10に供給し、送電装置10内のACアダプタまたはAC/DC変換部によって生成する直流電力を交流電源11に供給する。この場合、交流電源11により共振素子14を動作させる。
【0018】
動作周波数は6.78MHzを例示したが、必要に応じて動作周波数を変更可能である。他の動作周波数として13.56MHz、27.12MHzなどが利用される。
【0019】
受電装置20は、共振用コンデンサ21と受電コイル22で構成される共振素子23と、交流を直流に変換する整流回路24と、負荷回路25とを有している。受電用の共振素子23の自己共振周波数は、送電用の共振素子14の自己共振周波数と同一またはほぼ同一とし、互いに磁界結合することで、送電側から受電側に効率よく電力を伝送する。
【0020】
負荷回路25は、携帯端末やタブレット端末等の電子機器の回路である。受電装置20で受電した電力は、電子機器の動作や、電子機器が内蔵するバッテリーの充電等に利用される。一般に負荷回路25は直流電力で動作する。負荷回路25に直流電力を供給するために、受電装置20には受電用の共振素子23に誘起した交流電力を整流して直流電力に変換する整流回路24が設けられている。
図1では、受電装置20は負荷回路25を含む構成となっている。しかし、受電装置20は必ずしも負荷回路25を含む構成に限定されるものではなく、負荷回路25を受電装置20の外部に設けて、整流回路24で発生する直流電力を負荷回路25に供給する構成にすることも可能である。
【0021】
送電装置10、受電装置20において、共振用コンデンサ12、21は必ずしも電子部品で構成する必要はない。共振用コンデンサ12、21に相当する静電容量は、コイルの形状やコイルのインダクタンス値によって、コイル線間の静電容量で代用することもできる。また、共振用コンデンサ12と送電コイル13は直列に接続され、共振用コンデンサ21と受電コイル22も直列にされた直列共振回路を構成している。直列共振回路に替えて、それぞれの共振用コンデンサとコイルを並列に接続し並列共振回路にすることも可能である。
【0022】
図1の電力伝送装置では、
図2に示すように、送電装置10の送電コイル13に受電コイル22を重ねることで受電装置20に電力を伝送する。即ち、送電コイル13に交流電流を流すことにより、送電コイル13に磁界が発生する。一方、受電コイル22には磁界結合の作用により、受電コイル22に交流電流が流れ、その電流を整流することで電力を得ることができる。
【0023】
図2に示すように、送電装置10の筐体15は、受電装置20を載置可能な平面を有している。送電装置10は、送電コイル13が筐体15の平面下部に配置された、構成になっている。受電装置20の筐体26は、送電装置10の平面上に載置可能な平面を有している。受電装置20を送電装置10上に載置した時に、送電コイル13に受電コイル22が対向するように、受電コイル22が筐体26内に配置されている。
【0024】
図3は、送電コイル13と受電コイル22を含む電力伝送のためのコイル装置を概略的に示す斜視図である。送電コイル13と受電コイル22の位置関係と構成をわかり易くするために、筐体15および筐体26を除いて送電コイル13と受電コイル22のみを図示している。
【0025】
送電コイル13は、プリント基板17上に形成された四角形状のコイルパターン131(第1のコイルパターン)で構成されている。プリント基板17として、35μm厚の銅箔を有するガラス・エポキシ(FR−4)基板を用いている。銅箔を図示する所望な形状にエッチングし、送電コイル13用のコイルパターンを形成した。
【0026】
送電コイル13用コイルパターンのA11(コイルパターン開始端)とA12(コイルパターン終端)の2点間に電流を流すことで、磁束を発生させる。コイルパターンの中心部の領域18(
図4に示すW13とL13で囲む領域)では、順方向配線パターンと逆方向配線パターンが形成されている。コイルパターン開始端A11からプリント基板17の外周部に沿って配線された巻線パターンにそって中心部へ向かうコイルパターンを順方向配線パターンと呼んでいる。逆方向配線パターンとは、順方向配線パターンとは逆に、コイル中心部から外周部へ向かって巻かれたパターンを表している。すなわち、
図3に示すように、順方向配線パターンに沿ってCW方向(時計の針の回転方向)に電流が流れる場合、逆方向配線パターンにはCCW方向(反時計方向)に電流が流れることになる。逆方向配線パターンは、中心から外周部へ向かうばかりでなく、順方向配線パターンを流れる電流と逆向きに電流が流れかつ順方向配線パターンに近接して設けられた配線パターンで、順方向配線パターンの発生する磁束を逆方向配線パターンの発生する磁束で打ち消すように機能する。
【0027】
送電コイル13の中心部の領域18は、順方向配線パターンの2つの配線間に逆方向配線パターンの配線が配置された構成になっている。
図3では3ターン分の順方向配線パターンが、3ターン分の逆方向配線パターンの間に配置された構成になっている。中心部の領域18では、順方向配線パターンと逆方向配線パターンが相互に入り込んで、2つのパターンが発生する合成磁束が発生する。すなわち、領域18では、順方向に流れる電流から発生する磁束と、逆方向に流れる電流から発生する磁束とが合成され、磁束は打ち消しあう状態になる。
【0028】
磁束が打ち消されている中心部の領域18においては、送電コイル13から発生する磁束が少なくなるため、受電コイル22との磁束による結合は小さくなる。送電コイル13のコイルパターン131は、領域18を囲み6ターンの平面状のパターンで構成されている。領域18の外側に形成されたコイルパターン131は順方向配線パターンになっている。この外側に形成されたコイルパターン131が発生する磁束は、逆方向配線パターンの影響を受けることなく、受電コイルと磁束による結合を起こす。そのため、外側に形成されたコイルパターン131が発生する磁束は、磁束が打ち消されている中心部の領域18で発生する磁束に比べ、受電コイル22と強く結合する。
【0029】
受電コイル22はプリント基板27上に形成された四角形状のコイルパターン221で構成されている。プリント基板27として、35μm厚の銅箔を有するガラス・エポキシ(FR−4)基板を用いている。銅箔を図示する所望な形状にエッチングし、受電コイル22用のコイルパターンを形成した。受電コイル22は順方向配線パターンで6ターンになっている。受電コイル22の外形は送電コイル13の中心部領域18の大きさよりも少し小さくなっている。
【0030】
送電コイル13と受電コイル22は、ガラス・エポキシのプリント基板上の銅箔をパターニングして形成したコイルパターンに替えて、PET(ポリエチレンテレフタラート)のフレキシブル基板にコイルパターンを形成することもできる。また、銅箔に替えて、銅線やリッツ線を巻いて平面状のコイルを形成するようにしてもよい。
【0031】
図4は、第1の実施形態におけるコイル装置の具体的な形状を示す平面図である。
図4(a)に示すように、送電コイル13はプリント基板17に形成された始点A11から終点A12までのコイルパターン131で形成されている。送電コイル13の外形は、L11=W11=153mmの正方形となっている。始点A11から中心部の領域18の開始点A13まで、領域18を囲んで約6ターンの順方向配線コイルパターンが形成されている。この領域18を囲む順方向配線コイルパターンの幅D11は3mm、隣接するコイルパターンとの間隙E11は3mmになっている。
【0032】
中心部の領域18には、順方向配線コイルパターンが点A13から中心点A14まで約3ターン、パターン幅D13は3mm、隣接するコイルパターンとの間隙E13は3mmで、形成されている。中心部の領域18には、さらに中心点A14で折り返し逆方向配線コイルパターンが中心点A14から終点A12まで約4ターン、パターン幅D12は3mm、隣接するコイルパターンとの間隙E12は3mmで、形成されている。形成した送電コイル13のインダクタンス値は、約8.37μHである。
【0033】
中心部の領域18において、点A13から中心点A14までの順方向配線コイルパターンが、中心点A14で逆方向配線コイルパターンに連続的に繋がっている。A13からA14までの順方向配線コイルパターンが、A14からA12までの逆方向配線コイルパターンの配線間に、配置された構成になっている。
図4では、順方向配線コイルパターンと逆方向配線コイルパターンは、角部を除き、ほぼ平行な直線パターンで交互に配置された構成になっている。順方向配線コイルパターンと逆方向配線コイルパターンを平行に配置することで、順方向と逆方向配線コイルパターンを非平行に配する構成に比べ、略方形の中心部領域18内で磁束発生を抑制できる。
【0034】
送電コイル13の中心部の領域18では、順方向配線のコイルがW12=L12=69mmになっている。順方向配線のコイル面積は、L12×W12=4761mm
2になる。逆方向配線のコイルがW13=L13=81.5mmになっている。逆方向配線のコイル面積は、L13×W13=6642.25mm
2になる。送電コイル13の外形面積は、L11×W11=153×153=23409mm
2であり、領域18の面積が送電コイル13の外形面積に占める割合は、6642.25/23409×100=28.37%(≒30%)となっている。
【0035】
図4(b)は受電コイル22の、具体的な形状を示す図である。受電コイル22は、プリント基板27に形成されたコイルパターン221を有し、受電コイル22の外形は、L21=W21=63mmの正方形となっている。コイルパターン幅D21は3mm、隣接するコイルパターンとの間隙E21は2mmで、約6ターン巻いた形状になっている。インダクタンス値は約1.28μHである。受電コイル22の面積は、L21×W21=63×63=3969mm
2であり、送電コイル13の領域18の面積よりも小さくなっている。
【0036】
第1の実施形態に係る電力伝送装置の動作について説明する。
【0037】
図5は、送電装置10と受電装置20の断面図である。
図5(a)は、受電装置20の筐体26が送電装置10の筐体15の上部に離間して配された様子を示している。
図5(b)は、受電装置20の筐体26が送電装置10の筐体15に接して配置された状態を示し、送電コイル13と受電コイル22との距離は最も小さく、近接している状態である。送電コイル13は、筐体15内の上面に沿って設けられ、受電コイル22は筐体26内の下面に沿って設けられている。送電コイル13から受電コイル22に非接触で効率よく電力を伝送するには、できるだけ送電コイル13と受電コイル22が近接するように配置されることが望ましい。
【0038】
図6は、送電装置10と受電装置20の他の断面図である。
図6(a)は、受電装置20の筐体26を、保護などの目的でカバー262に入れた場合を示す。送電コイル13と受電コイル22との距離は、
図5(b)に対して、カバー262の厚さ分だけ増えている。カバー262の厚さは、受電装置20が携帯端末やタブレット端末等である場合を想定すると、5mm程度の厚さである。
図6(b)は、携帯端末やタブレット端末等を鞄264に入れて持ち歩き、鞄264に入れたまま、送電装置10の筐体15に置いて充電する場合を想定している。カバー262と鞄264の厚み分だけ、送電コイル13と受電コイル22との距離が増えることになる。
図5(b)に比べると、10mm〜20mm程度距離が増えることが想定される。
【0039】
図7は、順方向配線コイルパターンのみで構成された従来のコイルパターン411を有する送電コイル41を示している。言い換えれば、
図3で示す領域18の逆方向配線コイルパターンと順方向配線コイルパターンの組み合せ部を有しないコイルパターン411になっている。外形サイズは、L41=W41=153mmで、第1の実施形態の送電コイル13と同一である。
【0040】
順方向配線コイルパターンのみで構成されたコイルパターン411では、送電コイルと受電コイルとの距離が数mm変化しても、結合係数kが大きく変化する。結合係数kの変化を減少させるために、送電コイルと受電コイルのインピーダンスを制御する必要がある。インピーダンスを制御しない状況においては、ある距離において受電できる電力量が最大となり、その距離よりも離間しても、接近しても受電できる電力量は低下するような特性になる。
【0041】
図4で示す送電コイル13と受電コイル22とを組合せた場合と、
図7で示す送電コイル41と受電コイル22とを組合せた場合において、コイル間の距離が変化したときに結合係数kがどのように変化するかを比較する。コイル間の距離とは、平面状の送電コイル13と平面状の受電コイル22を平行に配置した時、送電コイル13の法線方向における、受電コイル22までの距離を示す。
【0042】
結合係数kは、自己インダクタンスLopen と漏れインダクタンスLsc を実測し、式(1)により求めることができる。
【数1】
【0043】
図8は、電力伝送装置での結合係数kの測定系を示す図である。
図8に示すように、一方のコイル51を測定器53(LCRメータ)に接続し、他方のコイル52の両端54,55が開放の場合の、自己インダクタンスLopenと、両端54,55を短絡したときの漏れインダクタンスLscとをそれぞれ測定器53で測定する。漏れインダクタンスLscと自己インダクタンスLopenを用いて、式(1)により結合係数kを求める。
【0044】
図9は、送電コイルと受電コイルとの間の距離(送受コイル間距離)を変えたときの結合係数kの特性を表した図である。横軸は送受電コイル間距離(mm)を表し、縦軸は結合係数kを表している。
図9の実線Cは、第1の実施形態の送電コイル13と受電コイル22を用いた場合の特性を示し、破線Dは、
図7の送電コイル41と受電コイル22を用いた場合の特性を示している。第1の実施形態の送電コイル13を用いた場合は、送電コイル13と受電コイル22間の距離(送受コイル間距離)を2mmから60mmまで変化させると、結合係数kは緩やかに減少する。これに対して、送電コイル41を用いた場合は、送電コイル41と受電コイル22間の距離が30mmより近くなるほど、結合係数kの変化の割合が大きくなり、30mmより離れるほど結合係数kの変化が緩やかになっている。また送受コイル間距離が30mmから60mm程度では、送電コイル41と受電コイル22の結合係数kは第1の実施形態の場合の結合係数kに近づくことが分かる。
【0045】
前述した
図5、
図6に示すように、実際の機器の充電で使用する場合は、送受コイル間距離が約20mm以下の場合が多い。送受コイル間距離が2mmから20mmに変化したときの結合係数kの変化率を算出すると、第1の実施形態(実線C)では、0.161/0.205=0.785となる。つまり、送受コイル間距離が20mmのときの結合係数kの値は、送受コイル間距離が2mmのときの値の約80%になっている。これに対し、破線Dにおいて、送受コイル間距離が2mmから20mmに変化したときの結合係数kの変化率を算出すると、0.251/0.486=0.516となり、送受コイル間距離が20mmのときの結合係数kの値は、送受コイル間距離が2mmのときの値の約50%まで減少している。
【0046】
このように、第1の実施形態の送電コイル13を使うことで、送受コイル間距離の変化に対して、結合係数kの変化を緩やかにすることができる。この結果、受電できる電力量や電力伝送効率の変化を抑制でき、インピーダンス制御などの複雑な制御を不要にすることができる。
【0047】
図10、
図11を参照して、結合係数kの変化の様子を模式的に説明する。
図10は、順方向配線コイルパターン411のみで形成された送電コイル41(
図7)と受電コイル221を使用した場合を示し、
図11は、第1の実施形態に係る送電コイル13と受電コイル221を使用した場合を示している。
【0048】
図10の送電コイル41を使用した場合を考える。送電コイル41と受電コイル22とが、
図10(a)に示すように近接して対向する場合は、送電コイルパターン411と受電コイル221同士が強く結合するために、結合係数kは高い値となる。
図10中、点線で囲んだ楕円の部分は、コイル同士が電磁的に結合している様子を模式的に示している。送電コイル41と受電コイル22が、
図10(b)に示すように離間すると、(a)の場合に比較して結合係数kは弱くなり、距離に応じて減少していく(
図9参照)。特に(a)のように、強くコイル同士が結合している状況においては、送受コイル間距離が少し変化するだけで、結合係数kが大きく変化する傾向にある。
【0049】
次に、
図11を参照して、送電コイル13と受電コイル22を使用した場合を説明する。
図11(a)は送電コイル13と受電コイル22を近接配置された状況を示し、
図11(b)は、
図11(a)に比べ、送電コイル13と受電コイル22は離間している状況を示している。
図11(a)(b)では、受電コイル22は送電コイル13の順方向配線パターンと逆方向配線パターンからなる領域18に対向している。
図11(a)に示すように近接して置かれると、コイルパターン131とコイルパターン221は、破線楕円で示すように、主にコイルの縁の部分で結合するため、その結合は強くなく、結果として、コイル同士が近接していても、結合係数kは大きな値にならない。
図11(b)に示すように、送電コイル13と受電コイル22とが離れると、破線楕円で示すように、コイルの縁の部分で結合するが、結合に寄与するコイルパターンの面積は、定性的に
図11(a)の結合に寄与するコイルパターンの面積よりも広くなる。つまり、コイル間の距離が離れることによる結合の低下分は、結合に寄与するコイルパターンの面積が広くなることにより、ある程度補償される。その結果、送受コイル間距離が離れると結合係数kは小さくなる傾向にあるが、その変化は
図9の実線Cに示すように緩やかになる。
【0050】
以上、平面状の送電コイル13の法線方向における、受電コイル22との距離が変化する場合について述べた。中心領域に順方向配線コイルパターンと逆方向配線コイルパターンの組合せを有する送電コイルでは、受電コイル22が送電コイル13の平面に沿って位置が変化しても、結合係数kの変化を小さくすることができる。
【0051】
前述したように、受電コイルパターン221が送電コイルパターン131に近接して置かれると、破線楕円で示すように、主にコイルの縁の部分で結合する。コイルパターン221が中心部領域18に比べ大きくなり過ぎると、コイル縁部での結合が強くなりすぎる。コイル縁部での結合が強すぎると、送電コイルと受電コイルが離間した場合、結合係数kの変化が大きくなる傾向になる。そのため、受電コイル22の外形は送電コイル13の中心部領域18の大きさよりも少し小さくなっている。
【0052】
図12は、
図4に示した受電コイル22と送電コイル13の組合せで、受電コイル22を送電コイル13の平面に沿って矢印Xの方向に距離δだけ移動させた様子を示している。
図13の実線Cは、受電コイル22を矢印X方向に動かした場合の結合係数kの変化特性を示す。
図13の破線Dは、比較のために、順方向配線コイルパターン411のみで形成された送電コイル41(
図7参照)と受電コイル22を用い、受電コイル22を矢印X方向に移動させた時の結合係数kの変化特性を示す。コイル41は、13回巻き程度でインダクタンス値は約15.335μHである。
【0053】
図13では、受電コイル22を送電コイル13に沿って動かした量を、水平方向ズレ量(δ)と記している。横軸は水平方向ズレ量(δmm)を表し、縦軸は結合係数kを表している。破線Dでは、送電コイル41の中心から受電コイル22の水平方向ズレ量が大きくなるにしたがって、送電コイル41と受電コイル22が対向する面積が減少し、結合係数kが大きく減少する。これに対して、実線Cでは、40mmのズレまで結合係数kはほとんど変化せず、50mm程度のズレ量でも結合係数kは多少低下する程度である。
【0054】
受電コイル22が送電コイル13のコイル面に沿って移動しても結合係数kの変化が少ない理由は、中心部領域18の端部で受電コイル22と磁気的に結合しやすく、磁束の結合に寄与する送電コイル13と受電コイル22の面積の変化が小さいためと考えられる。第1の実施形態の場合であれば、受電コイル22が送電コイル13からはみ出さないような範囲であれば、結合係数kの変化を小さくすることができる。
【0055】
第1の実施形態では、送電コイル13及び受電コイル22は略正方形状の例を示している。正方形に限定する必要はなく、長方形等の四角形や多角形状(六角形、八角形など)にすることも可能である。また、円形とすることもできるが、受電コイル22を送電コイル13に沿って動かす場合の許容量を考慮すると、多角形状の方が望ましい。送電コイル基板17を多層のプリント基板にし、1層目に順方向のパターンを配線し、1層目の中心領域に相当する2層目に逆方向のパターンを配線しても、
図14で示すコイルパターンと同様な効果が得られる。当然、1層目に逆方向のパターンを配線して、2層目に順方向のパターンを配線することも可能である。また、送電コイル基板17を両面プリント基板にし、一方の面に順方向のパターンを配線し、その面の中心領域に相当する他方の面に逆方向のパターンを配線しても、
図14で示すコイルパターンと同様な効果が得られる。
【0056】
図14乃至
図19を参照して、他の送電コイルのパターンを例示する。
【0057】
図14は第2の送電コイルパターンを示している。第2の送電コイルパターンでは、順方向配線のコイルパターンA31−A32、さらにA32-A35間のパターン、A35-A33間、A33-A34間のパターンが連続している。A32-A35間のパターンは順方向配線、A35-A33間は逆方向配線、A33-A34間は順方向配線のパターンが、混在した構成になっている。A31とA34間に通電し、誘導磁界を発生させている。このように、中心領域で複数の順方向配線と逆方向配線パターンを混在させても、同様な効果を得ることができる。
【0058】
図15は第3の送電コイルパターンを示している。第3の送電コイルパターンは、A41を始点とし、A48が終点になっている。A42、A43、A44、A45、A46、A47は、順方向配線のコイルパターンと逆方向配線のコイルパターンの折り返し点になっている。第3の送電コイルパターンでは、第1のコイルパターンと同様、中心領域において隣接する配線でコイルを流れる電流の方向が逆になっている。そのため、このコイルパターン配線を用いても、第1のコイルパターンと同様の効果が得られる。ここで、折り返し点A42、A43、A44、A45、A46、A47の箇所は限定するものではない。
【0059】
図16は第4の送電コイルパターンを示している。第4の送電コイルパターンは、A51を始点とし、A66が終点になっている。送電コイルパターンの中心領域はジグザグに配線したパターンを有している。A53−A54、A55−A56、A57−A58、A59−A60、A61−A62、A63−A64、A65−A66は、順方向配線のコイルパターンになっている。A52−A53、A54−A55、A56−A57、A58−A59、A60−A61、A62−A63、A64−A65は、逆方向配線のコイルパターンになっている。第4の送電コイルパターンでは、中心領域でコイルパターンがジグザグに配置されているので、第1のコイルパターンと同様、中心領域において隣接する配線でコイルを流れる電流の方向が逆になっている。そのため、このコイルパターン配線を用いても、第1のコイルパターンと同様の効果が得られる。
【0060】
図17は第5の送電コイルパターンを示している。第5の送電コイルパターンは、A71を始点とし、A86が終点になっている。A71とA86間に通電して磁界を発生させている。
図16に似て、送電コイルパターンの中心領域はジグザグに配線したパターンを有している。A73−A74、A75−A76、A77−A78、A79−A80、A81−A82、A83−A84、A85−A86は、順方向配線のコイルパターンになっている。A72−A73、A74−A75、A76−A77、A78−A79、A80−A81、A82−A83、A84−A85は、逆方向配線のコイルパターンになっている。第5の送電コイルパターンでも、中心領域でコイルパターンがジグザグに配置されているので、第1のコイルパターンと同様、中心領域において隣接する配線でコイルを流れる電流の方向が逆になっている。そのため、このコイルパターン配線を用いても、第1のコイルパターンと同様の効果が得られる。
【0061】
図18は第6の送電コイルパターンを示している。第6の送電コイルパターンは、A90を始点とし、A91が終点になっている。中心領域では略星形にコイルパターンが配置されている。A93−A94、A95−A96、A97−A98、A99−A100、A101−A102、A103−A104、A105−A106は、順方向配線のコイルパターンになっている。A92−A93、A94−A95、A96−A97、A98−A99、A100−A101、A102−A103、A104−A105、A106−A91は、逆方向配線のコイルパターンになっている。このコイルパターン配線を用いても、中心領域で順方向配線と逆方向配線の合成磁束とすることができ、第1のコイルパターンと同じように中心領域において、磁束が抑制された効果が得られる。
【0062】
図19は第7の送電コイルパターンを示している。第7の送電コイルパターンは、A110を始点とし、A112が終点になっている。A110、A112間に通電して送電用の磁束を発生させている。中心領域では円形にコイルパターンが配置され、A111を境に、順方向配線コイルパターンと逆方向配線コイルパターンが形成されている。このコイルパターン配線を用いても、中心領域で順方向配線と逆方向配線の合成磁束とすることができ、第1のコイルパターンと同じように磁束抑制効果が得られる。中心領域のコイルパターンは円形に限らず、多角形(六角形、八角形など)にすることも可能である。
【0063】
尚、第1の実施形態で示したコイルの寸法は、一例として示したに過ぎず、それらの数値に限定するものではない。また領域18の送電コイル全体に占める割合は約30%と述べたが、30%に限定するものではなく、30%〜70%程度の範囲でも同様の効果を得ることができる。また領域18の順方向配線と逆方向配線のコイルパターン幅を3mmと述べたが、3mmに限定するものではなく、たとえば0.1mm〜5mm程度の範囲でも同様の効果が得ることができる。また領域18の隣接する順方向配線のコイルパターンと逆方向配線のコイルパターンとの間隙を3mmと述べたが、3mmに限定するものではなく、たとえば0.1mm〜5mm程度の範囲でも同様の効果が得ることができる。
【0065】
図20を参照して第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、送電装置10の送電コイル13は順方向配線パターンのみで形成され、受電装置20の受電コイル22は順方向配線パターンに、順方向配線と逆方向配線パターンの組合せを加えた構成である。言い換えれば、受電コイル22は、プリント基板上に形成されたコイルパターン221で成り、その中心部の領域28は、順方向配線パターンと逆方向配線パターンによる領域となっている。コイルパターン221は、領域28の周辺部に、順方向配線パターンが外縁部から数ターン形成されている。なお、
図20の受電コイル22として、
図4、
図14乃至
図19の送電コイルパターンと同様なコイルパターンを適用することができる。
【0066】
コイルパターン131で成る送電コイル13は、外形が領域28の大きさにほぼ等しいか、あるいは領域28よりも小さい大きさで、プリント基板上に形成されている。送電コイル13は、筐体15内の上面に沿って設けられ、受電コイル22は筐体26内の下面に沿って設けられる。送電コイル13から受電コイル22に非接触で電力を伝送するために、できるだけ送電コイル13と受電コイル22が近接するように配置されている。
【0067】
第2の実施形態にあっても、第1の実施形態で示すように、送電コイル13と受電コイル22間の距離が変動しても、結合係数kが変動しにくい構成となっている。
【0068】
第1第2実施形態における受電装置20は、例えばバッテリー装置、アダプタ、端末本体に適用できる。バッテリー装置の場合は、装置にコイル22と整流回路24を設け、さらに負荷回路25として充電回路とバッテリーを設けて一体化した構成になる。そのバッテリー装置を充電台(送電装置10)に置くことでバッテリーを充電することができる。アダプタの場合は、コイルと整流回路とを一体化してアダプタとし、端末本体とアダプタとを接続するような使い方となる。また、受電装置20が端末本体である場合は、端末の内部にコイルと整流回路を設けて端末と一体化するような場合である。端末は、携帯電話やスマートフォン、ハンディターミナル、モバイルプリンタ、タブレット、ノートパソコン等である。
【0069】
以上述べた実施形態によれば、送電装置10と受電装置20の共振素子間の距離が変動しても結合係数kの変動を抑えることができ、インピーダンス制御が不要で、電力伝送効率を高く維持できる電力伝送装置を提供することができる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。