(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような音検出装置では、マイクロフォンはカバーの内部に収容されており、車両の外部に露出していない。そのため、車両の外部の音を検出する精度を向上させ難いという問題がある。一方、マイクロフォンを車両の外部に露出させた場合には、風によるマイクロフォンへの雑音が大きくなる問題がある。
【0005】
そこで本発明は、車両の外部の音を検出するマイクロフォンを備えた音検出装置において、風によるマイクロフォンへの雑音を低減させつつ、マイクロフォンによる車両の外部の音を検出する精度を向上させることができる音検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、車両の外表面に露出するように取り付けられ、車両の外部の音を検出するマイクロフォンを備えた音検出装置であって、マイクロフォンの車両の進行方向の側を覆うように設けられ、外表面から車両の外側へと突出する第1シールド部と、マイクロフォンの車両の進行方向とは反対方向の側を覆うように設けられ、外表面から車両の外側へと突出する第2シールド部とを備え、マイクロフォンは1シールド部と第2シールド部との間の開口部から露出しており、第1シールド部の外表面から車両の外側への突出長は、第2シールド部の外表面から車両の外側への突出長よりも長い音検出装置である。
【0007】
この構成によれば、第1シールド部により車両の進行方向からの走行風が遮られ、マイクロフォンに走行風が当たることが防がれる。また、第2シールド部により車両の進行方向とは反対方向からの環境風が遮られ、マイクロフォンに環境風が当たることが防がれる。これにより、風によるマイクロフォンへの雑音を低減させることができる。また、開口部によりマイクロフォンは車両の外部に露出させられるため、マイクロフォンによる車両の外部の音を検出する精度を向上させることができる。さらに、第1シールド部の車両の外表面から車両の外側への突出長は、第2シールド部の車両の外表面から車両の外側への突出長よりも長い。これにより、第2シールド部に当たった走行風による空力音が第1シールド部と第2シールド部との間で反響することが防止され、風によるマイクロフォンへの雑音を低減させることができる。以上の構成により、風によるマイクロフォンへの雑音を低減させつつ、マイクロフォンによる車両の外部の音を検出する精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
上記本発明の一側面によれば、車両の外部の音を検出するマイクロフォンを備えた音検出装置において、風によるマイクロフォンへの雑音を低減させつつ、マイクロフォンによる車両の外部の音を検出する精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る音検出装置について詳細に説明する。以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1に示す車両10において、本実施形態の音検出装置は、車両10のドアミラー100として構成されている。本実施形態のドアミラー100は、例えば、見通しの悪い場所で、ドアミラー100に取付けられたマイクロフォンにより、歩行者の足音や他車両のエンジン音を音声信号として検出するための装置である。マイクロフォンにより検出された車両10の外部の音声信号は公知のアンプにより増幅され、スピーカにより車両10のドライバーに出力される。
【0011】
斜視図である
図2及び背面図である
図3に示すように、本実施形態のドアミラー100は、一般的なドアミラーと同様の鏡面板102を備える。鏡面板102は、公知の技術により、車両10のドライバーの操作に応じて、鏡面板102の角度を変更することができるように取り付けられている。ドアミラー100は、車両10に対して折畳部120を介して取り付けられている。ドアミラー100は、一般的なドアミラーと同様に、折畳部120により車両10の後方に向けて折り畳まれることが可能なように取り付けられている。
【0012】
ドアミラー100は、ドアミラー100の下部に下方に向けて開口する開口部108を備える。ドアミラー100は、開口部108の車両10の進行方向(前方)Dの側に第1シールド部104を備える。ドアミラー100は、開口部108の車両10の進行方向Dとは反対方向(後方)の側に第2シールド部106を備える。なお、本実施形態のドアミラー100では、車両10が前進している場合に車両10の外部の音を検出するために構成されているため、車両10の進行方向Dとは車両10の前方を意味する。
【0013】
底面図である
図4に示すように、ドアミラー100は、開口部108の奥に取付面112を有する。取付面112にはマイクロフォン110が取り付けられている。マイクロフォン110は、車両10の外表面に露出するように取り付けられており、車両10の外部の音を検出する。
【0014】
なお、車両10の外表面とは、必ずしも車両10の車体の外表面に限定されず、例えば、車両10の車体に取付け及び取り外しが可能である部材であるドアミラー100の取付面112を含む。また、マイクロフォン110が露出しているとは、必ずしもマイクロフォン110の全体が露出している必要はなく、車両10の外部の音により振動させられるマイクロフォン110の振動体が露出していればよい。また、マイクロフォン110は、例えば、車両10の外部の音により振動させられるマイクロフォン110の振動体に取り付けられるカバーを有していてもよい。マイクロフォン110には、例えば、コンデンサ型、ムービングコイル型のマイクロフォンを適用することができる。左側面図である
図5に示すように、ドアミラー100は、側面視では一般的なドアミラーと同様の形状を有する。
【0015】
以下、本実施形態のドアミラー100の内部の構造について説明する。なお、ドアミラー100の鏡面板102の角度を変更させる構成については、公知の技術であるため、説明を省略する。また、マイクロフォン110が検出した音声信号を増幅し、車両10のドライバーに対して車両10の外部の音をスピーカにより出力する構成についても、公知の技術であるため、説明を省略する。
【0016】
図3のA−A線に沿った断面図である
図6及び
図5のB−B線に沿った断面図である
図7に示すように、第1シールド部104は、マイクロフォン110の車両10の進行方向Dの側を覆うように設けられ、取付面112から車両10の外側(下方)へと突出している。また、第2シールド部106は、マイクロフォン110の車両10の進行方向Dとは反対方向の側を覆うように設けられ、取付面112から車両10の外側(下方)へと突出している。マイクロフォン110は、第1シールド部104と第2シールド部106との間の開口部108から露出している。なお、開口部108は、必ずしも一つの開口から構成されている必要はなく、例えば、開口部108は、空気が流通可能な複数の小さな孔、スリット等から構成されていてもよい。また、開口部108は、空気が流通可能な網状の部材により覆われていても良い。
【0017】
第1シールド部104の取付面112から車両10の下方への突出長L1は、第2シールド部106の取付面112から車両10の下方への突出長L2よりも長い。なお、上述した第1シールド部104、第2シールド部106及び開口部108の車両10の進行方向Dに対する位置関係や、突出長L1と突出長L2との関係は、ドアミラー100が使用状態であるときに該当すればよく、例えば、ドアミラー100が折畳部120により折り畳まれているときは該当しなくともよい。
【0018】
以下、本実施形態のドアミラーの作用及び効果について説明する。本実施形態では、風によるマイクロフォン110の雑音の原因であるポップノイズ及び空力音の影響を低減する。ポップノイズとは、風のマイクロフォン110への直撃による雑音である。空力音とは、風が車両10の外表面の構造物に当たることにより生じる風切音等の雑音である。
【0019】
図8に示すように、本実施形態では、取付面112から突出長L1で突出した第1シールド部104により、進行方向Dの側から吹き付ける車両10の走行風Wが遮られ、マイクロフォン110への走行風Wの直撃が低減させられる。走行風Wとは、車両10が進行方向Dに向かって走行することにより、車両10の外表面に当たる風を意味する。また、取付面112から突出長L2で突出した第2シールド部106により、車両の進行方向とは反対方向の側からの環境風が遮られ、マイクロフォン110への環境風の直撃が低減させられる。環境風とは、車両10の周囲の気象状態により生じる風を意味する。
【0020】
走行風Wが第1シールド部104の下端部に当たると、渦Vが生じる。渦Vにより空力音S,sが生じる。しかし、空力音S,sの下側の空力音sは、第1シールド部104により遮られ、マイクロフォン110への到達が防止される。一方、空力音Sはマイクロフォン110に到達する。しかし、第2シールド部106の取付面112からの突出長L2は、第1シールド部104の取付面112からの突出長L1よりも短い。そのため、第2シールド部106に当たった空力音Sが、第1シールド部104と第2シールド部106との間で反響することが防止される。以上の作用により、マイクロフォン110の雑音の原因であるポップノイズ及び空力音の影響が低減される。
【0021】
なお、本実施形態のドアミラー100では、走行風Wによるポップノイズの低減させることと、空力音Sの反響を低減させることに加えて、進行方向Dの反対方向の側には車両10の車体が存在し、流体抵抗が大きくなり、環境風が弱くなるために、第2シールド部106の突出長L2は、第1シールド部104の突出長L1よりも短く設定されている。
【0022】
本実施形態では、第1シールド部104により車両10の進行方向Dからの走行風Wが遮られ、マイクロフォン110に走行風Wが当たることが防がれる。また、第2シールド部106により車両10の進行方向Dとは反対方向からの環境風が遮られ、マイクロフォン110に環境風が当たることが防がれる。これにより、風によるマイクロフォン110への雑音を低減させることができる。また、開口部108によりマイクロフォン110は車両10の外部に露出させられるため、マイクロフォン110による車両10の外部の音を検出する精度を向上させることができる。さらに、第1シールド部104の取付面112から車両10の外側への突出長L1は、第2シールド部106の取付面112から車両10の外側への突出長L2よりも長い。これにより、第2シールド部106に当たった走行風Wによる空力音Sが第1シールド部104と第2シールド部106との間で反響することが防止され、風によるマイクロフォン110への雑音を低減させることができる。以上の構成により、風によるマイクロフォン110への雑音を低減させつつ、マイクロフォン110による車両10の外部の音を検出する精度を向上させることができる。
【0023】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
図1に示す車両10において、本実施形態の音検出装置は、車両10のフロントバンパー200として構成されている。斜視図である
図9に示すように、本実施形態のフロントバンパー200は、上記第1実施形態と同様の第1シールド部204、第2シールド部206、開口部208、マイクロフォン210及び取付面212を備える。フロントバンパー200にマイクロフォン210等が配置されたことにより、フロントバンパー200の長さは既存のフロントバンパーの長さに対して適宜変更することができる。
【0024】
図9及び底面図である
図10に示すように、フロントバンパー200は、フロントバンパー200の下部に下方に向けて開口する開口部208を備え、開口部208の奥に取付面212を有する。取付面212には、マイクロフォン210が取り付けられている。これにより、本実施形態では、マイクロフォン210は、車両10の外表面に露出するように取り付けられており、車両10の外部の音を検出する。
【0025】
図10のC−C線に沿った断面図である
図11に示すように、第1シールド部204は、マイクロフォン210の車両10の進行方向(前方)Dの側を覆うように設けられ、取付面212から車両10の外側(下方)へと突出している。また、第2シールド部206は、マイクロフォン210の車両10の進行方向Dとは反対方向(後方)の側を覆うように設けられ、取付面212から車両10の外側(下方)へと突出している。マイクロフォン210は、第1シールド部204と第2シールド部206との間の開口部208から露出している。なお、上記第1実施形態と同様に、開口部208は、必ずしも一つの開口から構成されている必要はなく、例えば、開口部208は複数の小さな孔、スリット、網状の部材等から構成されていてもよい。第1シールド部204の取付面212から車両10の下方への突出長L3は、第2シールド部206の取付面212から車両10の下方への突出長L4よりも長い。本実施形態のフロントバンパー200は、上記第1実施形態のドアミラー100と同様の作用効果を奏する。
【0026】
なお、
図1に示す車両10において、本実施形態の音検出装置は、車両10のリアバンパー300として構成されてもよい。この場合は、リアバンパー300は、車両10が後退している場合に車両10の外部の音を検出するために構成されているため、車両10の進行方向Dとは車両10の後方を意味する。第1シールド部204は、マイクロフォン210の車両10の進行方向(後方)Dの側を覆うように設けられ、第2シールド部206は、マイクロフォン210の車両10の進行方向Dとは反対方向(前方)の側を覆うように設けられる。上記フロントバンパー200と同様に、マイクロフォン210は、第1シールド部204と第2シールド部206との間の開口部208から露出し、第1シールド部204の取付面212から車両10の下方への突出長L3は、第2シールド部206の取付面212から車両10の下方への突出長L4よりも長くされていることにより、上記フロントバンパー200と同様の作用効果を奏する。
【0027】
なお、本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。例えば、上記実施形態のドアミラー100は、フェンダーミラーとして構成されていてもよい。あるいは、上記実施形態のドアミラー100は、ドアミラー100の死角を映すサブミラーとして構成されていてもよい。また、例えば、上記実施形態のドアミラー100は、既存のドアミラーとしての機能を制限するものではなく、例えば、ミラーの死角を映すサブミラーがドアミラー100に取付けられていてもよい。また、ドアミラー100には、方向指示器等に連動して点滅又は点灯するランプ等が取り付けられていてもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、マイクロフォン110,210がドアミラー100、フロントバンパー200及びリアバンパー300の下方に露出するように取り付けられている態様を中心に説明した。しかし、マイクロフォン110は、ドアミラー100の側方又は上方に露出するように取り付けられていてもよい。また、マイクロフォン210は、フロントバンパー200及びリアバンパー300の側方に露出するように取り付けられていてもよい。あるいは、マイクロフォン110,210は、例えば、車両10の車体の側方、下方又は上方に露出するように取り付けられていてもよい。上記のいずれの場合においても、車両10の進行方向Dに対する第1シールド部104,204、第2シールド部106,206及び開口部108,208の位置関係や、突出長L1,L3と突出長L2,L4との関係が上記実施形態と同様になるように配置することにより、上記実施形態の効果が発揮される。
【0029】
(実験例)
本発明者らは、実験例として、上述したドアミラー100により、可聴域である1kH〜5kHzにおける風によるノイズ量を測定した。本発明者らは、進行方向Dの側から風速3m/sの風を吹きつけた場合のノイズ量を測定した。また、本発明者らは、比較例として、上述したドアミラー100の第2シールド部106の突出長L2を第1シールド部104の突出長L1と同じにしたドアミラーに対しても、同様にノイズ量を測定した。
【0030】
図12に示すように、実験例における可聴域の1kH〜5kHzの風によるノイズ量は比較例に比べて低減されていることが判る。また、
図12に示すように、可聴域における高音域ほど比較例に比べて実験例のノイズ量が低減されていることが判る。また、
図12の結果では、5kHz付近では、ノイズ量が測定範囲未満であった。