(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内層と外層との間に補強体を備えたカテーテルの場合、内層と外層は、補強体の隙間を通して接着する。そのため、内層と外層との密着性(内層と補強体の密着性、及び、外層と補強体の密着性を含む。以下、同様。)が低い場合、補強体を備えたカテーテルは、大きな引っ張り荷重や捩じり荷重を受けた際、内層と外層(内層と補強体、及び、外層と補強体を含む)が剥離し、カテーテルの機能を果たせなくなる虞がある。このため、内層と外層との密着性が高いことが望まれる。
【0006】
しかしながら、押出成形による従来の製造方法では、内層と外層を形成する樹脂の接触時間が短く、且つ、内層と外層とを接触させる圧力が弱いため、内層と外層との密着性が十分でない場合があった。特に、内層と外層との間に補強体を備えたカテーテルを押出成形により製造する場合、補強体により内層と外層との接触面積が小さい。そのため、内層を形成する樹脂と外層を形成する樹脂の融着性が低い場合、内層と外層との密着性が十分でない虞があった。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、医療用チューブの第1層(内層)と第2層(外層)との密着性を向上させることができる医療用チューブ製造方法及び医療用チューブ製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、少なくとも1以上の層を有する第1層と、前記第1層の外側を覆う第2層とを有する医療用チューブを製造するための医療用チューブ製造方法であって、長尺状の内腔を有するとともに軸方向の第1端部と第2端部とを有するロングダイの前記第1端部側から前記
第2端部側に向けて、前記第2層を形成するための溶融した樹脂を樹脂押出金型から
前記内腔に押し出しながら、前記ロングダイの前記第2端部側から前記第1端部側に向けて、前記内腔内で
前記樹脂の流れ方向とは逆方向に前記第1層を進行させることにより、溶融した前記樹脂で前記第1層を覆う、ことを特徴とする。
【0009】
上記の医療用チューブ製造方法によれば、ロングダイの内腔内での第1層の進行方向と逆方向に第2層を形成するための溶融した樹脂を押し出す。このため、溶融した樹脂が押し出される箇所(ロングダイの第1端部側)での圧力を高め、第1層と溶融した樹脂との接触圧を高めることができる。また、長い樹脂流路を有するロングダイを用いることにより、第1層と溶融した樹脂との接触時間を長くすることができる。従って、第1層と溶融した樹脂との接触圧及び接触時間の好適化により、医療用チューブの第1層と第2層との密着性を向上させることができる。
【0010】
上記の医療用チューブ製造方法において、前記第1層の外周面には補強体が配置されており、前記補強体には、前記第1層と前記第2層とを連通する隙間を有してもよい。本発明の製造方法では、医療用チューブの第1層と第2層との接触面積が小さくても、第1層と溶融した樹脂との接触圧及び接触時間の好適化により、医療用チューブの第1層と第2層との密着性を向上させることができる。
【0011】
上記の医療用チューブ製造方法において、前記ロングダイの前記内腔に前記樹脂を流す間、前記ロングダイを加熱してもよい。
【0012】
これにより、ロングダイの内腔内での樹脂の溶融状態を維持でき、医療用チューブの第1層と第2層との密着性を一層向上させることができる。
【0013】
上記の医療用チューブ製造方法において、前記ロングダイの前記第2端部側を陰圧にしてもよい。
【0014】
これにより、ロングダイの第2端部側から第1端部側に向けて、ロングダイの内腔内に第1層を進行させる際、第1層と一緒に成形用金型内に空気が入り込むことを抑制することができ、医療用チューブの第1層と第2層との密着性を一層向上させることができる。
【0015】
上記の医療用チューブ製造方法において、前記樹脂押出金型から出た成形品の外径を調整してもよい。
【0016】
これにより、所望外径の医療用チューブを得ることができる。
【0017】
また、本発明は、少なくとも1以上の層を有する第1層と、前記第1層を覆う第2層とを有するカテーテルを製造するための医療用チューブ製造装置であって、軸方向の第1端部と第2端部を含むとともに樹脂流路として長尺状の内腔が形成されたロングダイと、前記ロングダイの前記第1端部側から前記
第2端部側に向けて前記第2層を形成するための溶融した樹脂を
前記内腔に押し出す樹脂押出金型とを有する成形用金型と、前記ロングダイの前記第2端部側から前記第1端部側に向けて、前記内腔内で
前記樹脂の流れ方向とは逆方向に前記第1層を進行させるワーク搬送部と、を備える、ことを特徴とする。
【0018】
上記の医療用チューブ製造装置において、前記ロングダイを加熱するヒータを備えてもよい。
【0019】
上記の医療用チューブ製造装置において、前記ロングダイの前記2端部側を陰圧にする陰圧機構を備えていてもよい。
【0020】
上記の医療用チューブ製造装置において、前記樹脂押出金型から出た成形品の外径を調整する外径調整機構を備えてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の医療用チューブ製造方法及び医療用チューブ製造装置によれば、医療用チューブの第1層と第2層との密着性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る医療用チューブ製造方法及び医療用チューブ製造装置について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態に係る医療用チューブ製造装置10の概略構成図である。本実施形態の場合、医療用チューブ製造装置10は、芯材13の外周部に内層14(第1層)及び補強体18が形成されたワークW(
図3B)を処理対象とし、このワークWを外層形成用の樹脂61で被覆することにより、
図3Aに示すような断面構造を有するカテーテルシャフト12(医療用チューブ)を製造するためのカテーテル製造装置11として構成されている。
【0025】
図3Aにおいて、カテーテルシャフト12は、内腔14aが形成された内層14と、内層14の半径方向外側に形成され、内層14を覆う外層16(第2層)と、内層14の外周に沿って設けられた補強体18とを有する。
【0026】
内層14及び外層16は、適度な柔軟性を有する合成樹脂により構成することができる。内層14の構成材料としては、例えば、PTFE(テトラフルオロエチレン)、ポリアミド、ポリアミドエラストマー等が挙げられる。また、外層16の構成材料としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー等が挙げられる。特に、内層14及び外層16の密着性とその密着性に基づくカテーテルの物性の観点から、内層14がポリアミド又はポリアミドエラストマー、外層16がポリアミド又はポリアミドエラストマーであることが好ましい。もちろん、内層14及び外層16は、同じ材料により構成されていてもよく、他の材料により構成されてもよい。なお、内層14の構成材料は、外層16の構成材料の融点の温度で変質しないものとするのが望ましい。自然状態(外力が付加されていない状態)での内層14及び外層16の断面形状は、略円形である。
【0027】
補強体18は、細線(ワイヤ)が織り合わされたメッシュ状の編組19(ブレイド)により構成される。編組19は、第1の螺旋方向に巻回された1以上の線材と、第1の螺旋方向とは異なる第2の螺旋方向に巻回された1以上の線材とが交差して配置されることで構成される。編組19の構成材料としては、金属、ポリマー、金属とポリマーの複合体、金属合金(例えば、ステンレス、SUS304)又はそれらの組み合わせが挙げられる。また、補強体18を形成する細線の断面は、円形、楕円形、小判型、矩形等が挙げられる。特に、補強体18を形成する細線の断面は、カテーテルシャフト12の内層14の表面に沿って配置しやすいという観点から、楕円形、矩形が好ましい。
【0028】
図3Bは、カテーテル製造装置11に供給されるワークWの横断面図である。芯材13は、直線棒状の長尺な細径部材である。この芯材13の外周全面に内層14が形成され、この内層14の外側に補強体18が形成される。カテーテル製造装置11では、このようなワークWの外周部に樹脂61を被覆することにより、内層14、外層16及び補強体18を有するカテーテルシャフト12を製造するようになっている。
【0029】
図1に示すように、カテーテル製造装置11は、成形用金型20と、ワーク搬送部22と、冷却硬化部24とを備える。本実施形態の場合、成形用金型20は、第1金型26と、第2金型28とを有する。第1金型26は、ロングダイ30と、ロングダイ30の第1端部31(
図1で右端部)側に配置された芯材出口金型34と、芯材出口金型34を囲む樹脂入口金型36と、ロングダイ30の第2端部32(
図1で左端部)側に配置された樹脂出口金型38とを有する。
【0030】
ロングダイ30は、樹脂流路として機能する長尺且つ直線状に延在する細径の内腔30aが形成された管状の金型である。
図1の場合、内腔30aは、ロングダイ30の第1端部31側でテーパ状に拡径し、その他の部分では直径が一定の平行部となっている。内腔30aの直径(平行部の直径)は、ワークWの外径よりも大きい。なお、ロングダイ30の第1端部31から第2端部32までの長さは、50mm〜500mmであり、好ましくは100mm〜300mmである。この構成により、内層14と外層16を形成する樹脂の接触時間を長くし、内層14、補強体18、及び外層16の密着性を向上させることができる。
【0031】
ロングダイ30の外側には、ロングダイ30の略全長を加熱するヒータ40が配置される。具体的に、ヒータ40は、ロングダイ30の全長及び全周を囲む管状に構成される。ヒータ40により、ロングダイ30内の樹脂61(以下、第1の樹脂61ともいう)は融点以上、且つ、内層14の樹脂を変質させない温度に保たれ、溶融状態が維持される。ヒータ40は、軸方向に分割された複数のヒータセグメントにより構成されてもよい。
【0032】
芯材出口金型34は、直線状の貫通孔42aが形成された中空状の軸部42と、軸部42の一端(ロングダイ30とは反対側の端部)から径方向外側に突出するフランジ部44とを有する。軸部42の貫通孔42aは、ロングダイ30の内腔30aと一直線上に並び、内腔30aと連通する。貫通孔42aの直径は、ワークWの外径よりも大きく且つ内腔30aの直径よりも小さい。
【0033】
図2は、軸部42及びその周辺部位の拡大断面図である。軸部42の、ロングダイ30側の端部外周部には、径方向外方に突出する複数のリブ46が周方向に等間隔に設けられる。
【0034】
また、軸部42の外周部には、環状溝48がリブ46のフランジ部44側に隣接して設けられる。環状溝48は、周方向に隣接するリブ46間に形成される複数の軸方向溝50に連通する。このように構成される芯材出口金型34は、芯材13の出口として機能するだけでなく、後述するように、ロングダイ30の第1端部31側からロングダイ30の内腔30aに向けて溶融した第1の樹脂61を押し出す樹脂押出金型としての機能も有する。
【0035】
樹脂入口金型36は、芯材出口金型34の軸部42が挿入及び配置される配置孔52と、配置孔52に連通する樹脂導入路54とを有し、ロングダイ30の第1端部31と連結される金型である。樹脂導入路54は、芯材出口金型34の環状溝48と、複数の軸方向溝50とを介して、ロングダイ30の内腔30aと連通する。
【0036】
図1に示すように、カテーテル製造装置11は、さらに、溶融状態の第1の樹脂61を成形用金型20(具体的には、樹脂入口金型36)に供給する第1樹脂供給部56を備える。
【0037】
第1樹脂供給部56は、押出成形用の公知の押出機と同様に、加熱シリンダと、加熱シリンダに樹脂ペレットを供給するホッパーと、加熱シリンダ内に回転可能に設けられたスクリューとを備え、ホッパーより加熱シリンダ内に樹脂ペレットを供給し、加熱シリンダ内で樹脂を軟化溶融させ、加熱シリンダ内で回転するスクリューで溶融した樹脂を押し出すように構成されてよい。
【0038】
樹脂入口金型36の外側には、樹脂入口金型36を加熱するヒータ41が配置される。ヒータ41は、樹脂入口金型36の全周を囲む。ヒータ41により、樹脂入口金型36内で第1の樹脂61は融点以上の温度に保たれ、溶融状態が維持される。なお、ヒータ41の配置方法は特に限定されず、樹脂入口金型36内で第1の樹脂61が溶融状態を維持できるのであればどのように配置してもよい。
【0039】
樹脂出口金型38は、ロングダイ30の第2端部32側に配置された絞り部58と、ロングダイ30との間に絞り部58を保持する蓋部60とを有する。絞り部58は、軸方向に貫通する孔部59を有する。孔部59は内腔30aと同心状に連通する。孔部59の直径は、ロングダイ30の内腔30aの直径よりも小さく、且つワークWの外径よりも大きい。蓋部60は、軸方向に貫通し且つ孔部59及び内腔30aと同心状に連通する口部63を有する。ロングダイ30からの第1の樹脂61は、孔部59の内周面とワークWの外周面との隙間を介して樹脂出口金型38から流出することができる。
【0040】
第2金型28は、芯材出口金型34からのワークWの出口側で、芯材出口金型34に対向して配置される金型であり、芯材出口金型34から出た成形品の外径を調整する外径調整機構として機能する。
【0041】
第2金型28は、第2の樹脂62を第2金型28内へと導く樹脂導入路66と、第2金型28で成形する成形品の外径を規定する外径規定孔68とを有する。第2金型28では、樹脂導入路66から供給された溶融状態の第2の樹脂62により、第1金型26(具体的には、芯材出口金型34)から出た成形品(ワークWの外面に第1の樹脂61が被覆されたもの)の外面を覆う。第2金型28から導出される成形品の外径は、第2金型28の外径規定孔68によって規定される。外径規定孔68の直径は、芯材出口金型34の貫通孔42aの直径よりも大きい。
【0042】
カテーテル製造装置11は、さらに、溶融状態の第2の樹脂62を第2金型28に供給する第2樹脂供給部70を備える。第2樹脂供給部70は、第1樹脂供給部56と同様に、公知の押出成形用の押出機の構成を採り得る。第2の樹脂62は、第1の樹脂61と同じ材料でもよく、異なる材料でもよい。本実施形態の場合、第1の樹脂61の外側に被覆された第2の樹脂62は、外層16の一部を構成する。
【0043】
ワーク搬送部22は、ロングダイ30の第2端部32側から第1端部31側に向かってロングダイ30の内腔30aでワークWが進行するように、ワークWを搬送する。従って、ワークWは、ロングダイ30の内腔30a内での第1の樹脂61の流れ方向(
図1中、矢印A方向)とは逆方向に進行する。ワーク搬送部22は、例えば、
図1に示すように、冷却硬化部24よりもワークWの進行方向側に配置される。なお、ワーク搬送部22は、第1金型26よりもワークWの進行方向逆側に配置されてもよい。ワーク搬送部22は、例えば、互いに対向配置される送りローラ72a、72bにより構成され得る。送りローラ72a、72bは、それらの間にワークWを挟み込み、互いに逆方向に回転することでワークWを移動させる。なお、ワークWの移動速度は、毎分1m〜毎分10mであり、好ましくは毎分2m〜毎分5mである。このように構成することにより、ワークWが有する内層14の樹脂を変質させず、ワークWが有する内層14及び補強体18と第1の樹脂61とを十分に密着させることができる。例えば、ワークWの移動速度が遅い場合、ワークWが有する内層14の加熱時間が長くなり、内層14が溶融する虞がある。また、ワークWの移動速度が速い場合、ワークWが有する内層14と第1の樹脂61との接触時間が短くなり、内層14及び補強体18と第1の樹脂16とが十分に密着しない虞がある。
【0044】
冷却硬化部24は、成形用金型20から導出された成形品を冷却し、第1の樹脂61及び第2の樹脂62を硬化させる。冷却硬化部24は、例えば、水槽である。
【0045】
本実施形態に係るカテーテル製造装置11は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について、カテーテル製造方法(医療用チューブ製造方法)との関係で説明する。
【0046】
図1に示すカテーテル製造装置11において、第1樹脂供給部56により溶融状態の第1の樹脂61を第1金型26に供給するとともに、第2樹脂供給部70により溶融状態の第2の樹脂62を第2金型28に供給する。具体的には、樹脂入口金型36に溶融状態の第1の樹脂61を供給すると、第1の樹脂61は、芯材出口金型34を介して、ロングダイ30の第1端部31側から内腔30a内に流入し、内腔30a内をロングダイ30の第2端部32側に向かって流れ、樹脂出口金型38(絞り部58及び蓋部60)から外部に流出する。
【0047】
この際、樹脂導入路54から芯材出口金型34に到達した第1の樹脂61は、芯材出口金型34の軸部42に設けられた環状溝48によって周方向に拡散された後、リブ46間に形成された複数の軸方向溝50を通って、ロングダイ30の内腔30a内へと流入する(
図2参照)。これにより、周方向に均一に第1の樹脂61をロングダイ30の内腔30a内へと供給することができる。また、ロングダイ30及び樹脂入口金型36は、それぞれヒータ40、41により加熱されているため、ロングダイ30及び樹脂入口金型36の内部での第1の樹脂61の溶融状態を好適に維持できる。
【0048】
カテーテル製造装置11は、第1金型26において第1の樹脂61をワークWに被覆し、第2金型28において第2の樹脂62を被覆する。具体的には、樹脂出口金型38を介してロングダイ30の第2端部32側(第1の樹脂61の出口側)からロングダイ30の内腔30a内に挿入されたワークWをワーク搬送部22により搬送し、これによりロングダイ30の第2端部32側から第1端部31側に向かってワークWを進行させる。
【0049】
この際、ワークWは、溶融した第1の樹脂61に接しながら、第1の樹脂61の流れ方向とは逆方向に内腔30a内を進む。この過程で、第1の樹脂61は、内層14及び補強体18に融着する。第1金型26からの第1の樹脂61の出口は、樹脂出口金型38の絞り部58によって適度に絞られているため、ロングダイ30内部を流れる第1の樹脂61の圧力を好適に高めることができる。ワークWの進行に伴って、ワークWの外周部に融着した第1の樹脂61は、芯材出口金型34の貫通孔42aによって所定の外径に成形されて、芯材出口金型34から導出される。なお、本発明のロングダイ30は、第1端部31と第2端部32の間の距離が長いため、ワークWがロングダイ30内を通過する通過時間が長くなる。そのため、第1の樹脂61は、内層14の表面、補強体18の表面、内層14と補強体18の隙間、補強体18を形成する細線同士の隙間に入り込み、内層14及び補強体18との接着が強固になる。
【0050】
第2金型28では、第1金型26において被覆された第1の樹脂61の周囲に第2の樹脂62をさらに被覆し、成形品を所定外径に調整する。冷却硬化部24では、被覆された第1の樹脂61及び第2の樹脂62を冷却し、硬化させる。このようにして被覆された第1の樹脂61及び第2の樹脂62が、カテーテルシャフト12の外層16を構成する。なお、第1の樹脂61と第2の樹脂62は、同じ樹脂である。そして、第2の樹脂62は、第1の樹脂61の外径の大きさを調整するために使用されている。そして、得られた成形品(成形チューブ)は、切断されて長さが調整された後、所定の端部処理(先端チップの形成等)が施される。
【0051】
なお、本発明では、ワークWの外周部に融着した第1の樹脂61が、カテーテルシャフト12の外層16を構成してもよい。このような場合には、成形品(成形チューブ)の外径は、第1金型26に供給される第1の樹脂61の量、芯材出口金型34の貫通孔42aの大きさにより調整することができる。また、第1の樹脂61のみで成形品の外径を調整する場合、第2金型28及び第2の樹脂62は必要ない。
【0052】
この場合、カテーテル製造装置11によれば、ロングダイ30の内腔30a内でのワークWの進行方向と逆方向に外層16を形成するための第1の樹脂61を押し出す。このため、溶融した第1の樹脂61が押し出される箇所(ロングダイ30の第1端部31側)での圧力を高め、内層14及び補強体18と、溶融した第1の樹脂61との接触圧を効果的に高めることができる。これにより、第1の樹脂61は、内層14及び補強体18との密着性がさらに向上する。例えば、第1の樹脂61は、接触圧が高いため、補強体18を形成する細線の表面の凹凸にも隙間なく充填され、密着性が向上する。
【0053】
内腔30aでは、溶融した第1の樹脂61が押し出される箇所(芯材出口金型34の樹脂出口)が最も圧力が高く、押し出された箇所から遠くなるに従って、すなわち第2端部32側に向かうに従って、流体抵抗による損失(圧力損失)によって圧力が低下する。カテーテル製造装置11では、第1の樹脂61の最も圧力が高い箇所で、第1の樹脂61をワークWの外周部(内層14及び補強体18)に高圧で接触させ、押し付けて融着させるため、内層14及び補強体18と、外層16との密着性の向上が図られる。
【0054】
また、カテーテル製造装置11では、長い樹脂流路(内腔30a)を有するロングダイ30を用いることにより、内層14及び補強体18と、溶融した第1の樹脂61との接触時間を長くすることができる。従って、ワークWが長尺な内腔30a内を進む間、ワークWの外周部が溶融した第1の樹脂61に接触する状態が比較的長く続くため、内層14及び補強体18と、第1の樹脂61との密着が促進され、内層14及び補強体18と、外層16との密着性の向上が図られる。
【0055】
このように、上述したカテーテル製造装置11及びカテーテル製造方法によれば、内層14及び補強体18と、溶融した第1の樹脂61との接触圧及び接触時間の好適化により、内層14及び補強体18と、外層16との密着性を向上させることができる。よって、耐久性を高めたカテーテルシャフト12を提供することができる。
【0056】
また、本実施形態の場合、ロングダイ30の内腔30aに第1の樹脂61を流す間、ヒータ40によりロングダイ30を略全長に亘って加熱するので、ロングダイ30の全長に亘って第1の樹脂61の溶融状態を維持でき、内層14及び補強体18と、外層16との密着性を一層向上させることができる。
【0057】
さらに、本実施形態の場合、第2金型28により、芯材出口金型34から導出された第1の樹脂61の外側にさらに第2の樹脂62を被覆して外径を調整するので、所望外径のチューブを得ることができる。
【0058】
図4は、本発明の第2実施形態に係る医療用チューブ製造装置10a(カテーテル製造装置11a)の概略構成図である。このカテーテル製造装置11aは、上述した第1実施形態に係るカテーテル製造装置11と比較して、さらに陰圧機構74を備える。
【0059】
陰圧機構74は、ロングダイ30の第2端部32側(第1金型26におけるワークWの入口)を陰圧にする。本実施形態の場合、陰圧機構74は、樹脂出口金型38の口部63の周囲空間を囲むチャンバ76と、吸引ライン78を介してチャンバ76に接続され、チャンバ76内の気体(空気)を吸引する吸引ポンプ80とを有する。チャンバ76にはワークWの挿通を許容する挿通孔82が設けられる。挿通孔82からのチャンバ76内への空気の流入を抑制できるように、挿通孔82の直径はワークWの外径よりも僅かに大きい程度であるのがよい。挿通孔82からのチャンバ76内への空気の流入を抑制するシール機構が設けられてもよい。チャンバ76内には、樹脂出口金型38から流出した第1の樹脂61を受ける容器84が設置されるとよい。
【0060】
このように構成されたカテーテル製造装置11aでは、ロングダイ30の第2端部32側から第1端部31側に向かう方向にワークWを搬送する際、吸引ポンプ80の吸引作用下に、チャンバ76内を陰圧にし、これにより、第1金型26におけるワークWの入口(樹脂出口金型38の口部63)を陰圧にする。このため、ワークWと一緒にロングダイ30の内腔30a内に空気が入り込むことを抑制することができ、内層14及び補強体18と、外層16との密着性を一層向上させることができる。具体的には、内層14及び補強体18と外層16との間に気泡が混入することを防止するとともに、内層14及び補強体18と外層16の密着性を向上させることができる。
【0061】
上述した第1及び第2実施形態において、第2金型28に代えて、
図5に示す第2金型86を外径調整機構として採用してもよい。この第2金型86は、芯材出口金型34から導出された樹脂61の外周部を削り取り、所望の外径に調整するための金型である。第2金型86は、互いに反対側を向く第1面87と第2面88とを有し、第2面88において芯材出口金型34(フランジ部44側)と当接する。
【0062】
また、第2金型86は、芯材出口金型34の貫通孔42aの直径よりも小さい直径の調整孔90と、調整孔90に隣接して設けられ、第2面88側に向かって拡径するテーパ部92と、テーパ部92と第1面87とを連通する排出路94とを有する。貫通孔42aと調整孔90とは同一直線上に配置される。
【0063】
排出路94は、内端がテーパ部92にて開口する径方向路95と、径方向路95の外端に接続され第1面87にて開口する軸方向路96とを有する。径方向路95は、第2面88に溝状に形成される。
図5では、排出路94が2つ設けられているが、排出路94は1つだけ設けられてもよい。排出路94は3つ以上設けられてもよい。
【0064】
上記のように構成された第2金型86を備える場合、芯材出口金型34から導出された樹脂61は、貫通孔42aと調整孔90の直径差によって、外側部分が調整孔90にて削り取られ、外径が調整される。その際、削り取られた樹脂61は、テーパ部92に沿って第2面88側に移動し、さらに排出路94を介して第1面87側から第2金型86の外部へと排出される。
【0065】
従って、
図5の構成によれば、簡便構成で所望外径のチューブを得ることができる。
【0066】
なお、第1及び第2実施形態において、外径調整機構(第2金型28、86)はなくてもよい。この場合、所望外径のチューブが得られるように、芯材出口金型34の貫通孔42aの出口端部孔42bの直径が設定される。すなわち、チューブの外径は、貫通孔42aの出口端部孔42bにより、外径が調整される。例えば、出口端部孔42bの直径は、貫通孔42aの直径よりも小さい。そして、出口端部孔42bは、貫通孔42aに向かって拡径するテーパ部を形成する。
【0067】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。