(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378047
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】衣料用防虫剤
(51)【国際特許分類】
A01N 25/04 20060101AFI20180813BHJP
A01N 25/18 20060101ALI20180813BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20180813BHJP
A01N 31/04 20060101ALI20180813BHJP
A01N 31/06 20060101ALI20180813BHJP
A01N 37/02 20060101ALI20180813BHJP
A01N 37/10 20060101ALI20180813BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20180813BHJP
C11B 9/00 20060101ALN20180813BHJP
【FI】
A01N25/04 103
A01N25/18 102A
A01N31/02
A01N31/04
A01N31/06
A01N37/02
A01N37/10
A01P17/00
!C11B9/00 D
!C11B9/00 E
!C11B9/00 F
!C11B9/00 S
!C11B9/00 T
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-224335(P2014-224335)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2015-117231(P2015-117231A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2017年8月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-234639(P2013-234639)
(32)【優先日】2013年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】田丸 友裕
(72)【発明者】
【氏名】浅井 洋
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】
阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−61121(JP,A)
【文献】
特開2007−119356(JP,A)
【文献】
特開2010−138117(JP,A)
【文献】
特開2006−122319(JP,A)
【文献】
特開2013−136524(JP,A)
【文献】
特開2013−184889(JP,A)
【文献】
特開2011−236136(JP,A)
【文献】
特開2010−126486(JP,A)
【文献】
特開2012−254184(JP,A)
【文献】
特開2011−246364(JP,A)
【文献】
特開2014−237622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/04
A01N 25/18
A01N 31/02
A01N 31/04
A01N 31/06
A01N 37/02
A01N 37/10
A01P 17/00
C11B 9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸系吸水性ポリマー、衣料用防虫香料組成物、及び水を含有する水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤であって、
衣料害虫であるイガ類を防除対象とするものであり、
前記衣料用防虫香料組成物が、衣料用防虫成分として、
(a)一般式(I):
CH3−COO−R1 ・・・ (I)
(R1:炭素数が6〜12のアルコール残基)
で表される酢酸エステル化合物、及び/又は一般式(II):
R2−CH2−COO−CH2−CH=CH2 ・・・ (II)
(R2:炭素数が4〜7のアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、又はフェノキシ基)
で表されるアリルエステル化合物から選ばれる少なくとも一種の香料成分と、
(b)テルピネオール、ゲラニオール、ジヒドロミルセノール、ボルネオール、メントール、及びリナロールからなる群から選択される少なくとも一種の香料成分と、
を含有し、
(a)の(b)に対する配合比率(a)/(b)が、0.33〜0.71倍量である衣料用防虫剤。
【請求項2】
前記衣料用防虫香料組成物の含有量が、0.2〜5.0質量%である請求項1に記載の衣料用防虫剤。
【請求項3】
前記アクリル酸系吸水性ポリマーが、アクリル酸/アクリル酸塩共重合体である請求項1又は2に記載の衣料用防虫剤。
【請求項4】
さらに、界面活性剤を含有する請求項1〜3の何れか一項に記載の衣料用防虫剤。
【請求項5】
前記(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物が、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ペンチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、シンナミルアセテート、テルピニルアセテート、ジヒドロテルピニルアセテート、リナリルアセテート、エチルリナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、及び3−ヘキシニルアセテートからなる群から選択される少なくとも一種であり、
一般式(II)で表されるアリルエステル化合物が、アリルヘキサノエート、アリルヘプタノエート、アリルオクタノエート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、アリルイソアミルオキシアセテート、アリルシクロヘキシルオキシアセテート、及びアリルフェノキシアセテートからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜4の何れか一項に記載の衣料用防虫剤。
【請求項6】
前記衣料用防虫香料組成物が、衣料用防虫成分として、
(c)メチルベンゾエート、及びフルーテートからなる群から選択される少なくとも一種の香料成分を含有する請求項1〜5の何れか一項に記載の衣料用防虫剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤に関する。
【背景技術】
【0002】
イガ類、カツオブシムシ類、シミ類等の衣料害虫から繊維製品を保護するため、様々な防虫剤が開発され、実用化されている。例えば、エムペントリン、プロフルトリン等の常温で揮散性を有するピレスロイド系殺虫成分を有効成分とした衣料用防虫剤が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の防虫剤は、ピレスロイド系殺虫剤、吸水性高分子、水、及び安定剤を含有するものであり、ピレスロイド系殺虫剤として20℃での蒸気圧が10
−4〜10
−1mmHgのものを使用している。
【0003】
また、最近では消費者のニーズが多様化し、芳香性を有する防虫剤が好まれる傾向が見られる。そこで、殺虫成分の代わりに、衣料害虫に対して忌避性を有する香料成分を有効成分として使用した防虫剤が開発されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2の害虫忌避剤揮散組成物は、害虫忌避成分として、シトロネラールと、テルピネオール、メントール、リモネン、ゲラニオール、シトロネロール、カンフェン等から選ばれる1種以上とを含有するものであり、害虫忌避成分中におけるシトロネラールの含有量が2〜10質量%に調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−182304号公報
【特許文献2】特開2003−201203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の防虫剤の有効成分であるピレスロイド系殺虫成分は、衣料害虫に対して微量で高い殺虫効果を奏するとともに、人体への安全性が高いという利点を有する。ところが、ピレスロイド系殺虫成分は、処理空間に充満するまである程度の時間を要する。このため、使用状況によっては、初期段階から十分な殺虫効果が得られない場合がある。
【0006】
特許文献2の害虫忌避剤揮散組成物の有効成分である香料成分(害虫忌避成分)は、ピレスロイド系殺虫成分と比べて使用初期段階からの揮散性に優れている。ところが、香料成分をそのままの状態で使用した場合、使用期間中の揮散量を一定にコントロールすることが難しく、忌避効果が持続し難いという問題がある。従来の香料成分を主成分とした防虫剤は、居間や屋外等の比較的大きな空間を対象とするものであり、タンス、引き出し、クローゼット、衣料収納箱等の比較的狭い閉空間での使用を想定したものではなかった。特に、タンス、引き出し、クローゼット、衣料収納箱等の閉空間で使用される衣料用防虫剤は、所定の使用期間を達成するため、有効成分の揮散量の変動が小さいことが求められる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、有効成分の優れた揮散性を維持しながら、その揮散量をコントロールし易い衣料用防虫剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者らは、以下の構成を備えた衣料用防虫剤が優れた効果を奏することを見出した。
〔1〕アクリル酸系吸水性ポリマー、衣料用防虫香料組成物、及び水を含有する水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤。
〔2〕前記衣料用防虫香料組成物の含有量が、0.2〜5.0質量%である〔1〕に記載の衣料用防虫剤。
〔3〕前記アクリル酸系吸水性ポリマーが、アクリル酸/アクリル酸塩共重合体である〔1〕又は〔2〕に記載の衣料用防虫剤。
〔4〕さらに、界面活性剤を含有する〔1〕〜〔3〕の何れか一に記載の衣料用防虫剤。
〔5〕前記衣料用防虫香料組成物が、衣料用防虫成分として、
(a)一般式(I):
CH
3−COO−R
1 ・・・ (I)
(R
1:炭素数が6〜12のアルコール残基)
で表される酢酸エステル化合物、及び/又は一般式(II):
R
2−CH
2−COO−CH
2−CH=CH
2 ・・・ (II)
(R
2:炭素数が4〜7のアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、又はフェノキシ基)
で表されるアリルエステル化合物から選ばれる少なくとも一種の香料成分と、
(b)モノテルペン系アルコール又は炭素数が10の芳香族アルコールから選ばれる少なくとも一種の香料成分と、
を含有する〔1〕〜〔4〕の何れか一に記載の衣料用防虫剤。
〔6〕(a)の(b)に対する配合比率(a)/(b)が、0.1〜1.25倍量である〔5〕に記載の衣料用防虫剤。
〔7〕前記(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物が、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ペンチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、シンナミルアセテート、テルピニルアセテート、ジヒドロテルピニルアセテート、リナリルアセテート、エチルリナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、及び3−ヘキシニルアセテートからなる群から選択される少なくとも一種であり、
一般式(II)で表されるアリルエステル化合物が、アリルヘキサノエート、アリルヘプタノエート、アリルオクタノエート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、アリルイソアミルオキシアセテート、アリルシクロヘキシルオキシアセテート、及びアリルフェノキシアセテートからなる群から選択される少なくとも一種である〔5〕又は〔6〕に記載の衣料用防虫剤。
〔8〕前記(b)モノテルペン系アルコール又は炭素数が10の芳香族アルコールが、テルピネオール、ゲラニオール、ジヒドロミルセノール、ボルネオール、メントール、シトロネロール、ネロール、リナロール、エチルリナロール、チモール、オイゲノール、及びp−メンタン−3,8−ジオールからなる群から選択される少なくとも一種である〔5〕〜〔7〕の何れか一に記載の衣料用防虫剤。
〔9〕前記衣料用防虫香料組成物が、衣料用防虫成分として、
(c)メチルベンゾエート、及びフルーテートからなる群から選択される少なくとも一種の香料成分を含有する〔1〕〜〔8〕の何れか一に記載の衣料用防虫剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の衣料用防虫剤は、特定の吸水性ポリマーに、衣料用防虫成分を含有する衣料用防虫香料組成物と水とを組み合わせたものである。このような衣料用防虫剤は、長期に亘って衣料用防虫成分の優れた忌避効果及び摂食阻害効果を発揮することができる。
また、衣料用防虫香料組成物の含有量が閉空間での使用に適合するように調整されているので、衣料用防虫成分の優れた揮散性を維持しつつ、揮散量の変動が小さいものとなっている。その結果、本発明の衣料用防虫剤は、コントロールされた揮散量で衣料用防虫成分を使用期間に亘って閉空間に揮散し続けることができる。
さらに、本発明の衣料用防虫剤は、実質的に殺虫成分を含有させずに製造できるため、殺虫剤の使用を好まない人であっても抵抗なく使用でき、繊維製品(衣料)への移り香が過剰になることも防止される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の衣料用防虫剤は、衣料用防虫成分として、主に香料成分を使用する。このような香料成分について、本明細書では「衣料害虫忌避香料」と称する。本発明の衣料用防虫剤の形態は、適量の衣料害虫忌避香料を含む衣料用防虫香料組成物を水に溶解させて水溶液を調製し、これをゲルビーズに保持させて水性ゲルビーズタイプとしたものである。衣料害虫忌避香料は、20℃における蒸気圧が0.01〜50Paであるものが選択される。以下、衣料害虫忌避香料について説明する。
【0011】
衣料害虫忌避香料は、(a)一般式(I):
CH
3−COO−R
1 ・・・ (I)
(R
1:炭素数が6〜12のアルコール残基)
で表される酢酸エステル化合物、及び/又は一般式(II):
R
2−CH
2−COO−CH
2−CH=CH
2 ・・・ (II)
(R
2:炭素数が4〜7のアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、又はフェノキシ基)
で表されるアリルエステル化合物から選ばれる少なくとも一種の香料成分と、
(b)モノテルペン系アルコール又は炭素数が10の芳香族アルコールから選ばれる少なくとも一種の香料成分と、を含有する。
【0012】
一般式(I)で表される酢酸エステル化合物としては、例えば、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ペンチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、アニシルアセテート、シンナミルアセテート、テルピニルアセテート、ジヒドロテルピニルアセテート、リナリルアセテート、エチルリナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、及び3−ヘキシニルアセテートが挙げられる。これらの酢酸エステル化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
一般式(II)で表されるアリルエステル化合物としては、例えば、アリルヘキサノエート、アリルヘプタノエート、アリルオクタノエート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、アリルイソアミルオキシアセテート、アリルシクロヘキシルオキシアセテート、及びアリルフェノキシアセテートが挙げられる。これらのアリルエステル化合物は、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
モノテルペン系アルコール又は炭素数が10の芳香族アルコールとしては、例えば、テルピネオール、ゲラニオール、ジヒドロミルセノール、ボルネオール、メントール、シトロネロール、ネロール、リナロール、エチルリナロール、チモール、オイゲノール、及びp−メンタン−3,8−ジオールが挙げられる。これらのモノテルペン系アルコール又は炭素数が10の芳香族アルコールは、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
さらに、衣料害虫忌避香料は、上記(a)及び(b)に加えて、衣料用防虫成分として、(c)メチルベンゾエート、及びフルーテートからなる群から選択される少なくとも一種の香料成分を含むものでも構わない。これらの香料成分は、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
以上のように、本発明の衣料用防虫剤は、衣料用防虫成分として、(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物、及び/又は一般式(II)で表されるアリルエステル化合物から選ばれる少なくとも一種の香料成分と、(b)モノテルペン系アルコール又は炭素数が10の芳香族アルコールから選ばれる少なくとも一種の香料成分とを併用し、さらに、必要に応じて、(c)メチルベンゾエート、及びフルーテートからなる群から選択される少なくとも一種の香料成分を併用したものである。
【0017】
衣料用防虫剤は、通常、タンス、引き出し、クローゼット、衣料収納箱等の閉空間で使用される。このため、衣料用防虫剤は、衣料用防虫香料組成物の含有量を適切に調整する必要がある。本発明者らは、衣料用防虫剤における衣料用防虫香料組成物の含有量、すなわち、衣料用防虫剤の重量に対する上記(a)及び(b)(必要に応じて、さらに(c))の各衣料用防虫成分の合計重量について最適な範囲を検討した。そして、本発明者らによる鋭意研究の結果、衣料用防虫剤における衣料用防虫香料組成物の含有量は、0.2〜5.0質量%の範囲が好ましいことを見出した。この含有量は、タンスやクローゼット等の狭い閉空間内での使用を想定していない室内用又は屋外用の飛翔害虫忌避剤における防虫成分の含有量よりも少ないものである。本発明の衣料用防虫剤は、有効成分である衣料用防虫香料組成物の含有量が少ないものであっても、衣料用防虫香料組成物に含まれる衣料用防虫成分の優れた揮散性を維持しながら、その揮散量をコントロールし易いものとなる。しかも、衣料用防虫香料組成物の含有量を低減したことで、繊維製品(衣料)への移り香が過剰にならず、繊維製品に対して負担が少ない防虫剤することができる。ここで、(a)の(b)に対する配合比率(a)/(b)は、0.1〜1.25倍量が好ましいことが認められた。配合比率(a)/(b)を上記範囲に調整することにより、長期間に亘って衣料害虫忌避香料による優れた忌避効果及び摂食阻害効果を発揮することが可能となった。
【0018】
本発明の衣料用防虫剤は、衣料害虫忌避香料として、上記以外の香料成分、例えば、リモネン等のモノテルペン系炭化水素、メントン、カルボン、プレゴン、カンファー、ダマスコン等のモノテルペン系ケトン、シトラール、シトロネラール、ネラール、ペリラアルデヒド等のモノテルペン系アルデヒド、シンナミルフォーメート、ゲラニルフォーメート等のエステル化合物、フェニルエチルアルコール、ジフェニルオキサイド、インドールアロマ等を適宜添加することも可能であり、さらには、上記香料成分を含む種々の精油類、例えば、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、オレンジ油、ゼラニウム油、プチグレン油、レモン油、シトロネラ油、レモングラス油、シナモン油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、タイム油等を適宜添加することも可能である。
【0019】
また、衣料用防虫剤に含まれる衣料用防虫香料組成物には、例えば、消臭成分、除菌・抗菌成分等の他の機能性成分を配合することも可能である。消臭成分としては、イネ科、ツバキ科、イチョウ科、モクセイ科、クワ科、ミカン科、キントラノオ科、カキノキ科の中から選ばれる植物抽出物が代表的である。また、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド等を添加してリラックス効果を付与することもできる。これらの機能性成分は、単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。
【0020】
なお、本発明の衣料用防虫剤は、衣料用防虫香料組成物に殺虫成分を配合することを排除するものではないが、本発明の趣旨に照らし、殺虫成分を配合する場合は極力微量に留めることが好ましい。配合可能な殺虫成分としては、例えば、エムペントリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン等の常温揮散性ピレスロイド系殺虫成分が挙げられる。
【0021】
衣料用防虫剤に含まれる衣料用防虫香料組成物には、衣料害虫忌避香料の揮散後の忌避効果持続成分として、20℃における蒸気圧が0.2〜20Paのグリコール及び/又はグリコールエーテルを配合することも可能である。その具体例として、プロピレングリコール(10.7Pa)、ジプロピレングリコール(1.3Pa)、トリプロピレングリコール(0.67Pa)、ジエチレングリコール(3Pa)、トリエチレングリコール(1Pa)、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール(6.7Pa)、ベンジルグリコール(2.7Pa)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(3Pa)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。物質名の後のカッコ内の数値は、20℃における蒸気圧を表している。これらの忌避効果持続成分うち、ジプロピレングリコールが好ましく使用される。なお、上記のグリコール及び/又はグリコールエーテルは、単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。グリコール及び/又はグリコールエーテルの飛翔害虫忌避香料に対する配合比率は、0.05〜5倍程度とすることが好ましい。
【0022】
衣料用防虫香料組成物(含浸液)には、界面活性剤を配合しておくことも有効である。界面活性剤は、衣料用防虫香料組成物を水性ゲルビーズの内部に確実に保持させ、その徐放化に寄与する。その結果、長期間安定した衣料害虫の忌避効果及び摂食阻害効果を発揮することが可能となる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンテトラドデシルエーテル等)や、ラウリルアミンオキサイド、ステアリルアミンオキサイド、ラウリン酸アミドプロピルアミンオキシド、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド等の高級アルキルアミンオキサイド系界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の配合量は、衣料用防虫香料組成物に対して0.3〜4倍量程度が好ましく、0.5〜4倍量程度がより好ましい。
【0023】
水性ゲルビーズを形成する吸水性ポリマーには、アクリル酸系吸水性ポリマーが好ましく使用される。アクリル酸系吸水性ポリマーは、吸水性に優れており、自重の100倍以上の水を吸収することができる。粒径約2mm程度のアクリル酸系吸水性ポリマーであれば、含浸液を吸収した後も略透明な状態を維持しつつ、粒径約10mm程度にまで膨張し得る。アクリル酸系吸水性ポリマーとしては、アクリル酸/アクリル酸塩共重合体(アクリル酸/アクリル酸ナトリウム塩共重合体やアクリル酸/アクリル酸カリウム塩共重合体等)やアクリルアミド/アクリル酸又はその塩の共重合体が挙げられる。
【0024】
水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤を調製するにあたっては、例えば、開口部を有する適当な容量の透明容器に所定量の吸水性ポリマーを入れ、続いて衣料用防虫香料組成物を含む含浸液を注ぎ込む作業を行う。このとき、水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤を調製する容器として、製品に使用する容器をそのまま使用することも可能である。この場合、調製した水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤を別の容器に入れ替える手間が省ける。水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤の調製に際して、容器への吸水性ポリマー及び含浸液の投入順序は、どちらが先でも構わない。また、含浸液には必要に応じて、溶剤、BHT等の安定化剤、イソチアゾリン系等の防腐剤、ビトレックス等の苦味剤、pH調整剤、着色剤等を適宜配合しておくことも可能である。
【0025】
水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤の調製に用いる溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用してもよいし、任意に組み合わせて使用してもよい。
【0026】
衣料用防虫剤の組成は、防虫剤の使用用途、使用期間、及び吸水性ポリマーの種類やその仕様等によって適宜決定することができる。例えば、使用期間が1年の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤を調製する場合、その組成は、衣料用防虫香料組成物0.2〜5.0質量%、水90質量%、吸水性ポリマー1〜5質量%程度とすることが好ましい。水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤は、専用の容器に300〜500g(後述の実施例では約400g)封入され、製品となる。
【0027】
以上のように調製した本発明の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤は、特定の吸水性ポリマーに、衣料用防虫成分を含有する衣料用防虫香料組成物と水とを組み合わせたものであるため、長期に亘って衣料用防虫成分の優れた忌避効果及び摂食阻害効果を発揮することができる。
【0028】
また、本発明の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤は、タンス、引き出し、クローゼット、衣料収納箱等の閉空間で使用することが想定されている。このような閉空間で所定の使用期間を達成するためには、有効成分の揮散量の変動を小さくすることが求められるが、本発明の衣料用防虫剤は、衣料用防虫香料組成物の含有量が閉空間での使用に適合するように調整されているので、衣料用防虫成分の優れた揮散性を維持しつつ、揮散量の変動が小さいものとなっている。その結果、衣料用防虫成分は、コントロールされた揮散量で使用期間に亘って閉空間に揮散し続けることができる。
【0029】
さらに、本発明の衣料用防虫剤は、実質的に殺虫成分を含有させずに製造できるため、殺虫剤の使用を好まない人であっても抵抗なく使用でき、繊維製品(衣料)への移り香が過剰になることも防止される。
【0030】
さらに、本発明の衣料用防虫剤は、水性ゲルビーズタイプとして調製してあるため、衣料用防虫剤の性状が長期間に亘って安定しており、変質や離液等が生じ難いものとなっている。本発明の衣料用防虫剤を、タンス、引き出し、クローゼット、衣料収納箱等の閉空間で使用することにより、イガ類、カツオブシムシ類、シミ類等の衣料害虫に対し、所定の期間にわたり優れた忌避効果及び摂食阻害効果を発揮することができる。ここで、衣料害虫忌避香料として芳香性を有する香料を用いた場合には、初期の香調が変質することなく芳香性が持続し、防虫効果を長期間発揮することができる。この芳香性は、衣料用防虫剤の使用期間のインジケータとして利用することも可能である。例えば、衣料用防虫剤の芳香性が途絶えると、防虫効果が終了するため、防虫効果の終点を明確に認識することができる。
【0031】
なお、本発明の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤は、例えば、透明容器に充填した形態で提供されるが、その際、数種の着色ビーズを混合したり、サイズが異なる大小のビーズを組み合わせることにより、装飾性を付与することも可能である。
【実施例】
【0032】
次に、具体的な実施例に基づき、本発明の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤について、表1〜3を参照しながら詳細に説明する。表1に、実施例1〜11に係る水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤、及び比較例1〜3に係る水性ゲルビーズ含浸物の組成を示す。
【0033】
〔実施例1〕
衣料用防虫成分の(a)一般式(I)で表される酢酸エステル化合物として、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート5質量%、及び一般式(II)で表されるアリルエステル化合物として、アリルヘプタノエート20質量%、(b)モノテルペン系アルコールとして、テルピネオール30質量%、さらに、その他の衣料害虫忌避香料8.7質量%(フェニルエチルアルコール7.5質量%含む)を配合した衣料用防虫香料組成物を調製した。この衣料用防虫香料組成物における(a)の(b)に対する配合比率〔(a)/(b)〕は0.83倍であった。
【0034】
次に、この衣料用防虫香料組成物10gに、界面活性剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル5.0g、ポリエキシエチレン硬化ヒマシ油2.0g、及びラウリン酸アミドプロピルアミンオキシド1.8gを加え、さらに溶剤としてエタノール20g、消臭成分として緑茶抽出物1.5g、安定剤としてBHT1.9g、微量のイソチアゾリン系防腐剤、微量の苦味剤(ビトレックス)、及び適量の水を配合し、全体を386gとして含浸液を調製した。
【0035】
上面に総面積24cm
2の開口部を有し、容量が500mLの円筒状のプラスチック容器(φ:8cm、高さ:10cm)に、吸水性ポリマーとして、粒径が約2mmのアクリル酸/アクリル酸ナトリウム塩共重合体14gを入れた。これに上記含浸液を注ぎ込んだところ、吸水性ポリマーが膨潤し、粒径が約10mmの本発明の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤(実施例1)が得られた。
【0036】
実施例1の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤をクローゼット内に置いて使用したところ、約1年間に亘って衣類に虫による害が発生せず、実用的な防虫効果が確認された。この水性ゲルビーズは、時間の経過とともに徐々に縮小したが、変質や離液を伴うことがなくゲル安定性に優れ、使用の終点も明確に視認できた。また、クローゼット内には初期香調のままの芳香が漂い、快適な爽やかさを周囲に提供することができ、極めて実用性の高いものであった。
【0037】
〔実施例2〜11〕
実施例1に準じ、表1に示す組成に従って、衣料用防虫香料組成物(10g)、及びこれを含む含浸液(383〜388g)を調製した。さらに、実施例1で用いたものと同様のプラスチック容器に予め所定量のアクリル酸系吸水性ポリマー(12〜17g)を入れておき、これに前記含浸液を注ぎ込んで全量を400gとし、有効期間1年間の本発明の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤(実施例2〜11)が得られた。
【0038】
〔比較例1〜3〕
本発明の衣料用防虫香料組成物の範疇に含まれないイソブチルヘキサノエート(比較例1)、ベンジルベンゾエート(比較例2)、及びグレープフルーツ油(比較例3)を使用し、表1に示す組成に従って、水性ゲルビーズ含浸物を調製した。比較例3のグレープフルーツ油は、d−リモネンを90質量%以上含有し、その他の成分として、ミルセン、ヌートカトン、ピネン等を含有する。
【0039】
【表1】
【0040】
〔食害防止効力試験〕
表2及び表3は、表1に示した実施例1〜11に係る水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤、及び比較例1〜3に係る水性ゲルビーズ含浸物による食害防止効力試験の結果をまとめたものである。食害防止効力試験は、忌避効果及び摂食阻害効果を確認するための試験であり、以下の手順により実施した。
【0041】
容量2700Lのクローゼットを準備し、その内部に供試用の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤(又は水性ゲルビーズ含浸物)を載置し、クローゼットを閉じた。このクローゼットを温度27℃、湿度65%の条件で食害防止効力試験に供した。試験では、開始直後、1ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後の各時点においてクローゼットを開封し、水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤(又は水性ゲルビーズ含浸物)の10cm上方に、30日令で体重30〜35mg/頭のイガ幼虫20頭と羊毛試験布(2cm×2cm,40〜45mg)とを入れたカゴを設置し、7日間放置した後、幼虫を取り出して致死率を求めた。幼虫の致死率が高いほど、忌避効果も大きくなる。幼虫の致死率の推移を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
実施例1〜11に係る水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤は、12ヵ月間使用したものであっても、すべて50%以上の高い致死率となった。特に、実施例1〜3に係る水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤は、1ヶ月間使用後に95%以上の非常に高い致死率が得られ、さらに、12ヵ月間使用後でも致死率は80%以上を維持していた。一方、比較例1〜3に係る水性ゲルビーズ含浸物は、1ヵ月間しか使用していない新しいものであっても致死率は50%に届かず、さらに12ヵ月間使用したものについては略全ての幼虫が生存しており、防虫剤としての機能を果たすことができなかった。このように、本発明の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤には、優れた忌避効果が認められた。
【0044】
また、上記食害防止効力試験において、本発明の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤による摂食阻害効果を確認するため、カゴから幼虫を取り出したときに羊毛試験布を回収し、幼虫による食害の程度についても併せて評価した。食害の評価は、以下の基準により目視で行った。
− :食害は認められない。
+ :羊毛試験布の毛足が削がれたような食害が認められるが、貫通孔はない。
++ :食害が認められ、貫通孔がある。
+++:甚大な食害が認められ、複数または大きな貫通孔がある。
羊毛試験布の幼虫による食害の評価結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
実施例1〜11に係る水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤は、実施例7及び11について12ヵ月間使用したものに僅かに食害が認められたものの、その他の実施例については12ヵ月間使用したものであっても、幼虫による食害は見られず、全体的に優れた食害防止効力が確認された。一方、比較例1〜3に係る水性ゲルビーズ含浸物は、1ヵ月間使用の新しいものであっても、幼虫による食害がはっきりと確認され、衣料用防虫剤として有効な食害防止効力は認められなかった。このように、本発明の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤には、優れた摂食阻害効果が認められた。
【0047】
以上の結果から、実施例1〜11の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤は、衣料用防虫香料組成物及び水をアクリル酸系吸水性ポリマーに含浸させて調製したものであるため、衣料用防虫香料組成物に含まれる衣料用防虫成分がアクリル酸系吸水性ポリマーから一定量ずつ徐々に揮散し、長期に亘って忌避効果及び摂食阻害効果を発揮しているものと考えられる。従って、本発明の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤は、衣料用防虫香料組成物の揮散量をコントロールし易く、食害防止効力に優れた実用的な製品となり得ることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の水性ゲルビーズタイプの衣料用防虫剤は、主に、タンスやクローゼット等の一般住居内の閉空間で使用することを想定したものであるが、一定の閉空間内での使用であれば、例えば、工場、店舗、オフィス等においても使用可能であり、さらには、自動車等の乗り物の室内における防虫剤として利用することも可能である。