(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態にかかる測定システム1の構成を示すブロック図である。測定システム1は、第1センサ10、第2センサ11、及び測定装置20を備える。
【0018】
第1センサ10は、被験者の血液再充填時間または血液酸素飽和度に関連する指標を測定するために用いられる。第1センサ10は、いずれの測定を行う場合であっても測定装置20からの制御に従って生体組織を圧迫するとともに、生体組織に発光し、生体組織からの反射光または透過光(以下、「反射光/透過光」と記載する。)を測定する。なお第1センサ10は、血液酸素飽和度に関連する指標の測定を行う場合には複数波長の光(第1波長λ1を有する第1光、第2波長λ2を有する第2光)を生体組織に向けて発光する。第1センサ10は、内部にフォトダイオード等の素子を有し、上述の発光処理を行う。第1センサ10は、例えば袋体を有し、袋体に空気を流入することによって被験者の生体組織を圧迫する。
【0019】
第2センサ11は、第1センサ10と同様に、被験者の血液再充填時間または血液酸素飽和度に関連する指標を測定するために用いられる。第2センサ11の構成は、第1センサ10と同等のものであれば良い。第1センサ10と第2センサ11は、被験者の異なる箇所(例えば左指と右指)に取り付けられる。以下、第1センサ10が取り付けられる箇所を第1部位と記載し、第2センサ11が取り付けられる箇所を第2部位と記載する。
【0020】
なお第1センサ10及び第2センサ11は、取り付け箇所に応じて適切な形状であればよい。例えば指先に取り付ける場合、第1センサ10又は第2センサ11は、一般的なSpO2測定と同様にプローブタイプの形状であればよい。また額等に取り付ける場合、第1センサ10又は第2センサ11は、シール状の粘着部材によって被験者に接着するタイプのセンサであればよい。
【0021】
第1センサ10及び第2センサ11は、生体組織からの反射光/透過光を測定し、測定した受光量を測定装置20に通知する。
【0022】
測定装置20は、制御部21、入力部22、及び出力部23を備える。制御部21は、測定装置20及び各種センサ(第1センサ10、第2センサ11)の制御を行うものであり、圧力制御部211、第1測定値算出部212、及び第2測定値算出部213を備える。
【0023】
圧力制御部211は、第1センサ10及び第2センサ11による被験者の生体組織への圧迫強度を制御する。詳細には圧力制御部211は、空気袋への空気流入量を制御することによって第1センサ10及び第2センサ11が被験者に与える圧迫強度を制御する。
【0024】
ここで圧力制御部211は、第1センサ10の圧迫解除開始のタイミングと第2センサ11の圧迫解除開始のタイミングが略同時となるように制御を行う。第1部位と第2部位の圧迫解除の開始が略同時となることにより、両部位における血液再充填が同じタイミングで開始される。
【0025】
また圧力制御部211は、第1センサ10による圧迫解除の開始から圧迫終了までの時間と、第2センサ11による圧迫解除の開始から圧迫終了までの時間と、が略同一となるように制御することが好ましい。これにより第1部位と第2部位に対する圧迫条件が略同一となり、より正確な測定値(後述する第1測定値及び第2測定値)を得ることができる。
【0026】
第1測定値算出部212は、第1センサ10の測定した受光量を基に、血液再充填時間または血液酸素飽和度に関連する指標を算出する。血液再充填時間の算出方法及び血液酸素飽和度に関連する指標の測定方法の一例は、本発明の発明者の出願である特許文献2及び3に詳細が記載されている。そのため、血液再充填時間及び血液酸素飽和度に関連する指標の算出方法の詳細については説明を省略し、その算出方法の概要を簡単に説明する。
【0027】
初めに血液再充填時間の算出方法の概要を
図2を参照して説明する。制御部21は、所定のタイミング(例えば30分毎)において、第1センサ10の発光と受光を開始させる(S11)。この際に圧力制御部211は、生体組織への圧迫を行わないように制御する。第1測定値算出部212は、第1センサ10から生体組織の圧迫前の受光量を測定する(S12)。圧力制御部211は、圧迫前の受光量を取得した後に生体組織への圧迫を開始する(S13)。第1測定値算出部212は、第1センサ10から生体組織の圧迫状態における受光量を測定する(S14)。圧力制御部211は、十分な圧迫を行った後に生体組織への圧迫を解放する(S15)。第1測定値算出部212は、生体組織への圧迫が解放されたタイミングから、受光量が圧迫前のレベルに近い値まで減衰するのに要した時間を血液再充填時間として算出または計算する(S16)。
【0028】
以上が血液再充填時間の算出方法の概要である。続いて血液酸素飽和度に関連する指標の算出方法の概要について説明する。
【0029】
第1測定値算出部212は、第1センサ10から第1光(第1波長λ1)の受光強度に応じた第1信号S1、及び第2光(第2波長λ2)の受光強度に応じた第2信号S2を取得する。第1測定値算出部212は、第1信号S1に基づいて第1光の減光度A1を取得し、第2信号S2に基づいて第2光の減光度A2を取得する。そして第1測定値算出部212は、減光度A1及びA2に基づいて、血液由来の減光度Abを取得する。そして第1測定値算出部212は、減光度Abの変化量に基づいて血液酸素飽和度に関連する情報ΔAb、または3波長以上の光を用いた場合には血液酸素飽和度Sを取得する。本明細書では「血液酸素飽和度に関連する指標」とは、上述のΔAbまたは血液酸素飽和度Sを含む概念であるものとする。更に「血液酸素飽和度に関連する指標」とは、ΔAbや血液酸素飽和度Sに加え、生体を圧迫するとともに複数波長を発光することによって得られる受光量から算出するものであって、血液酸素飽和度に関連するものあればその他のものであってもよい。
【0030】
以上が血液酸素飽和度に関連する指標の算出手法の概要である。第1測定値算出部212は、入力部22からの操作(医療従事者の操作)に応じて血液再充填時間または血液酸素飽和度に関連する指標のいずれかを測定すればよい。
【0031】
第2測定値算出部213は、第2部位に取り付けられた第2センサ11の受光量を基に、第2部位の血液再充填時間または血液酸素飽和度に関連する指標を測定する。測定手法は第1測定値算出部212と同様である。
【0032】
以下、第1測定値算出部212の測定した血液再充填時間または血液酸素飽和度に関連する指標を「第1測定値」とも記載し、第2測定値算出部213の測定した血液再充填時間または血液酸素飽和度に関連する指標を「第2測定値」とも記載する。
【0033】
なお第1測定値算出部212及び第2測定値算出部213は、血液再充填時間または血液酸素飽和度に関連する指標のいずれか一方のみを測定可能な構成であってもよい。
【0034】
第1測定値算出部212及び第2測定値算出部213は、第1測定値及び第2測定値を出力部23に供給する。
【0035】
出力部23は、第1測定値及び第2測定値を出力する。ここで出力とは、例えば測定装置20の筐体上に設けられたディスプレイの表示画面上に第1測定値及び第2測定値を表示する、第1測定値及び第2測定値を印刷紙に印刷して出力する、表示装置(ディスプレイ)を持つ他の装置に第1測定値及び第2測定値を送信する、等の処理が含まれる。
【0036】
図3は、出力部23により生成された出力画面の一例を示す概念図である。
図3の例では、第1センサ10及び第2センサ11を指先に装着し、筐体上に表示ディスプレイを有する形状を示している。表示画面30には、第1測定値(血液再充填時間(1))が3.9秒であり、第2測定値(血液再充填時間(2))が2.2秒であることが表示されている。医療従事者は、当該表示画面30を参照することにより第1センサ10側の末梢循環が悪いことを認識することができる。
【0037】
入力部22は、医療従事者からの入力を受け付ける入力インターフェイスである。入力部22は、例えば測定装置20上に設けられたボタン、ツマミ、タッチパネル等である。医療従事者は、測定開始等の操作を入力部22を介して入力する。
【0038】
続いて本実施の形態にかかる測定システム1の効果について説明する。上述のように圧力制御部211は、第1センサ10及び第2センサ11の圧迫解除を略同時のタイミングで開始する。これにより、第1部位及び第2部位における血液再充填の開始タイミングが略同時となる。このタイミングが同時となることにより、複数部位間の血液循環の状態の違いが第1測定値と第2測定値に正確に反映される。医療従事者は、この第1測定値と第2測定値を参照することにより被験者の循環器系の状態を正しく判断することができる。
【0039】
例えば(第1部位=右手指、第2部位=左手指)であり血液再充填時間の差が大きい場合、医療従事者は当該測定値の大きい側の手に閉塞性動脈硬化症(ASO)の恐れがあることを認識できる。同様に(第1部位=右手指、第2部位=左手指)であり、圧迫解除から一定時間後の血液酸素飽和度に関連する指標の差が大きい場合、医療従事者は当該測定値の小さい方の手に閉塞性動脈硬化症(ASO)の恐れがあることを認識できる。
【0040】
また(第1部位=額、第2部位=左手指(または右手指))である場合、医療従事者は被験者の中心循環と末梢循環の状態を認識することも可能である。
【0041】
なお第1センサ10と第2センサ11の圧迫解除の開始のタイミングが若干ずれたとしても(例えば0.1秒程度)、両タイミングの時間差が所定時間内(例えば0.3秒以内)であれば両部位(第1部位、第2部位)における血液再充填がほぼ同時に開始される。そのため圧力制御部211は、第1センサ10の圧迫解除開始のタイミングと、第2センサ11の圧迫解除開始のタイミングと、の時間差が所定時間内となるように制御すればよい(好適には略同時が良い)。また精度は落ちるものの第1センサ10を用いた測定が終わった後、あまり時間を空けずに第2センサの圧迫解除を行ってもほぼ所望の値を測定することは可能である。そのため上述の所定時間とは、概ね0〜0.3秒程度(好適には0秒)であるものの、0〜10秒程度の値域を持つ概念である。
【0042】
<実施の形態2>
続いて本発明の実施の形態2にかかる測定システム1について説明する。本実施の形態にかかる測定システム1は、第1測定値と第2測定値を用いて被験者の循環器系の評価を測定装置20内で行うことを特徴とする。本実施の形態にかかる測定システム1について実施の形態1と異なる点を以下に説明する。なお、以下の説明において実施の形態1と同様の名称及び符号を付した処理部は、特に言及しない限り実施の形態1と同様の動作を行うものとする。
【0043】
図4は、本実施の形態にかかる測定システム1の構成を示すブロック図である。当該測定システム1内の測定装置20は、実施の形態1の構成(
図1)に加えて制御部21内に評価部214を有する。
【0044】
評価部214には、第1測定値算出部212から第1測定値(血液再充填時間または血液酸素飽和度に関連する指標)、及び第2測定値算出部213から第2測定値(血液再充填時間または血液酸素飽和度に関連する指標)、が供給される。
【0045】
評価部214は、第1測定値と第2測定値を用いて被験者の循環器系の評価を行う。血液再充填時間及び血液酸素飽和度に関連する指標は、共に生体部位への血液循環が良好であるかを示す指標である。そのため、第1測定値及び第2測定値として血液再充填時間を用いることも、血液酸素飽和度に関連する指標を用いることも可能である。以下の説明では、第1測定値及び第2測定値として血液再充填時間が用いられるものとする。評価部214の評価の詳細について以下に説明する。
【0046】
(評価方法1)
評価方法1は、第1測定値と閾値の比較、及び第2測定値と閾値の比較を用いた評価を行うものである。(第1部位=指先、第2部位=額)である場合の評価部214の評価方法を
図5に示す。
【0047】
閾値Tth1は、一般的な血液再充填時間の基準値(例えば3秒)を基に定める。なお医療従事者が被験者の年齢、性別、既往症等を考慮して閾値Tth1を設定できるようにしてもよい。第1測定値(指先の血液再充填時間)が閾値Tth1よりも大きい場合、指先への血液の循環(末梢循環)が良好ではないことを示す。また第2測定値(額の血液再充填時間)が閾値Tth1よりも大きい場合、額への血液の循環が良好ではないことを示す。よって評価部214は、以下(
図5)のように被験者の循環器系の評価を行う。
【0048】
Case1:中心循環も末梢循環も良好
Case2:中心循環は良好だが、末梢循環が悪い
Case3:中心循環は良好だが、頭部への血流が減っている
Case4:中心循環も末梢循環も悪い(または中心循環が著しく悪い)
【0049】
評価部214は、評価結果を出力部23から医療従事者に通知する。そのため医療従事者は、この通知に従って適切な処置を行うことができる。例えば末梢血流のみが悪い場合(Case2)、指先の皮膚温度が低い場合や血管収縮薬投与の影響が考えられる。そのため医療従事者は、末梢循環を改善するような処置を行えばよい。
【0050】
図6は、(第1部位=左手指先、第2部位=右手指先)である場合の評価部214の評価方法を示す表である。
【0051】
第1測定値(左手指先の血液再充填時間)が閾値Tth1よりも大きい場合、左手指先への血液の循環(末梢循環)が良好ではないことを示す。また第2測定値(右手指先の血液再充填時間)が閾値Tth1よりも大きい場合、右手指先への血液の循環(末梢循環)が良好ではないことを示す。よって評価部214は、以下(
図6)のように被験者の循環器系の評価を行う。
【0052】
Case5:左右問わず末梢循環が良好
Case6:左手に関する末梢循環が悪い(ASOの疑い)
Case7:右手に関する末梢循環が悪い(ASOの疑い)
Case8:左右問わず末梢循環(または中心循環)が悪い
【0053】
このように評価部214は、第1測定値及び第2測定値が共に閾値よりも小さい場合には正常と判定し、それ以外の場合には何らかの異常があると判定する。評価部214は、評価結果を出力部23から医療従事者に通知する。そのため医療従事者は、この通知に従って適切な処置を行うことができる。例えば医療従事者は、一方の指先の末梢循環のみが悪い場合には閉塞性動脈硬化症(ASO)等の疑いがあるものとして診療・対処を行えばよい。
【0054】
以上が評価方法1の概略である。上述の説明では第1測定値及び第2測定値が血液再充填時間であるものとしたが、評価部214は血液酸素飽和度に関連する指標でも全く同様の手法で評価を行うことができる。血液酸素飽和度に関連する指標としてΔAbを用いる場合、閾値Tth1は例えば0.1を基準に定めればよい。血液酸素飽和度Sを用いる場合、閾値Tth1は例えば10%程度に定めればよい。
【0055】
(評価方法2)
続いて第2の評価方法について説明する。評価方法2は、第1測定値と第2測定値の差分と、所定の閾値と、の比較に基づいて評価を行うものである。(第1部位=指先、第2部位=額)である場合の評価部214の評価方法を
図7に示す。
【0056】
第1測定値(指先の血液再充填時間)から第2測定値(額の血液再充填時間)を引いた値(差分値)が閾値Tth2よりも大きい場合、指先の血流(末梢循環)が額への血流(中心循環)に比べて悪いことを示す。一方、第2測定値(額の血液再充填時間)から第1測定値(指先の血液再充填時間)を引いた値(差分値)が閾値Tth2よりも大きい場合、末梢循環に問題は検出できないものの額の血流が悪いことを示す。よって、評価部214は以下(
図7)のように被験者の循環器系の評価を行う。
【0057】
Case9:末梢循環が悪い
Case10:額への血液循環が悪い
Case11:血液循環に関する指先と額の差はない
【0058】
医療従事者は、評価部214の評価に従って適切な処置を行えばよい。続いて(第1部位=左手指先、第2部位=左手指先)である場合の評価部214の評価方法を以下(
図8)に示す。
【0059】
Case12:左手に関する末梢循環が悪い(ASOの疑い)
Case13:右手に関する末梢循環が悪い(ASOの疑い)
Case14:血液循環に関する左右差はない
【0060】
図8のように血液再充填時間の差が大きい場合、評価部214は閉塞性動脈硬化症(ASO)等の疑いがあるものとして評価する。医療従事者は、評価部214の評価に従って適切な処置を行えばよい。
【0061】
なお
図7及び
図8では、(第1測定値‐第2測定値)との比較、及び(第2測定値‐第1測定値)との比較において共に閾値Tth2を用いたが必ずしもこれに限られない。すなわち(第1測定値‐第2測定値)と比較する閾値、及び(第2測定値‐第1測定値)と比較する閾値の2つの閾値を用いた比較処理を行ってもよい。
【0062】
(評価方法3)
続いて第3の評価方法について説明する。評価方法3は、評価方法1(第1測定値と閾値との差分、及び第2測定値と閾値との差分を用いる評価方法)及び評価方法2(第1測定値と第2測定値の差分を用いる評価方法)の双方の手法を用いるものである。
【0063】
以下(
図9)は、(第1部位=指先、第2部位=額)である場合の評価部214の評価方法を示す。
【0064】
Case15:概ね正常だが、指先(末梢循環)が若干悪い
Case16:概ね正常だが、額への血流が若干悪い
Case17:中心循環も末梢循環も良好
Case18:発生しないケース
Case19:額への血流が悪い
Case20:指先(末梢循環)も中心循環(額)もやや悪い(双方とも閾値Tth1に近い値)
Case21:指先への血流(末梢循環)が悪い(ASOの恐れ)
Case22:発生しないケース
Case23:指先(末梢循環)も中心循環(額)もやや悪い(双方とも閾値Tth1に近い値)
Case24:中心循環と末梢循環の双方ともに悪く、特に指先への血流(末梢循環)が悪い
Case25:中心循環と末梢循環の双方ともに悪く、特に額への血流が悪い
Case26:中心循環が非常に悪い
【0065】
評価部214は、上記のように各部位の血液再充填時間と正常値との乖離、及び各部位間の血液再充填時間の比較、を基に被験者の循環器系の評価を行う。このような複数の減算処理に基づいた評価を行うことにより、評価部214はより正確な評価を行うことができる。なお上述の表1、表3、表5を用いた評価においては、第2測定値を額付近から取得するものとしたが、第2測定値を鼻や耳朶から取得してもよい。すなわち第2測定値は、被験者の頭部付近から取得されるものであれば良い。
【0066】
続いて(第1部位=左手指先、第2部位=右手指先)である場合の評価部214の評価方法を以下(
図10)に示す。
【0067】
Case27:概ね正常だが、左指指先(左手の末梢循環)が若干悪い
Case28:概ね正常だが、右指指先(右手の末梢循環)が若干悪い
Case29:左右差無く、中心循環も末梢循環も良好
Case30:発生しないケース
Case31:右手の末梢循環が悪い(ASOの恐れ)
Case32:末梢循環及び中心循環の一方または双方がやや悪い(双方とも閾値Tth1に近い値)
Case33:左手の末梢循環が悪い(ASOの恐れ)
Case34:発生しないケース
Case35:末梢循環及び中心循環の一方または双方がやや悪い(双方とも閾値Tth1に近い値)
Case36:末梢循環及び中心循環の一方または双方が悪く、特に左手の末梢循環が悪い
Case37:末梢循環及び中心循環の一方または双方が悪く、特に右手の末梢循環が悪い
Case38:末梢循環及び中心循環の一方または双方が悪い
【0068】
評価部214は、上記のように被験者の循環器系を評価する。なお第1測定値と第2測定値の双方が大きい値である場合(Case38)、評価部214は両手の末梢循環が悪いか、中心循環が悪いか、を判断することはできない。このような場合、被験者に図示しない第3センサを額等につけて計測した血液再充填時間を考慮した評価を行ってもよい。
【0069】
上記の説明では第1測定値及び第2測定値を閾値Tth1と比較したが、測定値毎に閾値を設けてもよい。また(第1測定値‐第2測定値)と比較する閾値、及び(第2測定値‐第1測定値)と比較する閾値、を異なるものとしてもよい(閾値Tth2に代わり、2つの閾値を設けてもよい。)。
【0070】
以上が評価部214による評価手法の例であるが、評価部214は第1測定値と第2測定値を用いた評価を行うものであれば他の方式で被験者の循環器系の評価を行ってもよい。また評価部214が行う評価は、上述のような正常/異常の判定ではなく、第1測定値と閾値の差分、及び第2測定値と閾値との差分、を算出するという単なる減算処理も含むものとする。そして評価部214が算出した差分値(第1測定値と閾値との差分、及び第2測定値と閾値との差分)は、出力部23を介して出力(表示、印刷、ファイル書き込み等)される構成であってもよい。同様に評価部214が行う評価は、第1測定値と第2測定値との差分を算出するという単なる減算処理も含むものである。そして評価部214が算出した差分値(第1測定値と第2測定値との差分値)は、出力部23を介して出力(表示、印刷、ファイル書き込み等)されればよい。
【0071】
次に出力部23による表示例を説明する。
図11は、評価部214の評価結果が表示された表示画面を示す概念図である。表示画面30には、第1測定値(血液再充填時間(1))が3.9秒であり、第2測定値(血液再充填時間(2))が2.2秒であることが表示されている。更に表示画面30には、評価部214の評価結果が表示されている。
図5の例では、閉塞性動脈硬化症(ASO)の疑いがあることが表示されている。医療従事者は、この表示画面30を参照することにより被験者の循環器系の評価結果を認識することができる。
【0072】
なお出力部23は、評価部214の評価結果に応じて、表示画面30の生成のみならずアラーム音の出力を行う構成であってもよい。すなわち出力部23は、評価部214が被験者の循環器系に異常があると判定した場合、アラーム音を出力する構成であってもよい。
【0073】
続いて本実施の形態にかかる測定システム1の効果について説明する。本実施の形態にかかる測定システム1は、複数個所の血液循環に関する測定値(第1測定値、第2測定値)を用いて被験者の循環器系の評価を行う構成である。測定システム1が循環器系の評価を行うことにより、循環器系の診断が乏しい医療従事者であっても正確に被験者の循環器系の状態を把握することができる。
【0074】
上述の評価方法1は、血液再充填時間(または血液酸素飽和度に関連する指標)の正常値を基に定めた閾値を基に評価を行う。これにより医療従事者は、各部位の血液循環が正常であるか否かを基にした評価を知ることができる。
【0075】
上述の評価方法2は、第1測定値と第2測定値との差分が所定の閾値以上であるか否かを基にした評価を行う。これにより医療従事者は、部分的な血液循環の悪化(例えばASO)等を正確に検出した評価結果を知ることができる。
【0076】
また上述の評価方法3は、評価方法1(第1測定値と閾値との差分、及び第2測定値と閾値との差分を用いる評価方法)及び評価方法2(第1測定値と第2測定値の差分を用いる評価方法)の双方の手法を用いるものである。すなわち評価部214は、第1測定値及び第2測定値が正常値であるか、及び第1測定値と第2測定値の差分が大きすぎないか、を基に評価を行う。これにより医療従事者は、各部位の血液循環の状態や左右差の状態をより正確に認識することができる。
【0077】
出力部23は、第1測定値や第2測定値に加えて評価部214の評価結果を出力(好適には表示)する。これにより経験の浅い医療従事者であっても、被験者の循環器系の状態を適切に認識することができる。
【0078】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0079】
前述したが測定システム1は、3つ以上のセンサを被験者に取り付けて、計測した3つ以上の血液再充填時間(または血液酸素飽和度に関連する指標)を用いた評価を行うことも可能である。
【0080】
また測定システム1が1つのセンサのみを有し、当該センサを用いて第1部位と第2部位を順に計測することも可能である(
図12の構成)。すなわち第1部位から第1測定値(血液再充填時間または血液酸素飽和度に関連する指標)を算出し(第1算出ステップ)、その後に第2部位から第2測定値(血液再充填時間または血液酸素飽和度に関連する指標)を算出する(第2算出ステップ)。その後に上述の手法を用いて第1測定値と第2測定値を用いた被験者の循環器系の評価を行えばよい(評価ステップ)。この場合であっても、複数部位の血液循環に関する測定値を用いた評価を行うため、適切に被験者の循環器系の評価を行うことができる。