特許第6378053号(P6378053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378053
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】部品実装機および部品実装ヘッド
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20180813BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   H05K13/04 M
   H05K13/08 Q
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-229505(P2014-229505)
(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-96174(P2016-96174A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2017年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】川合 英俊
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−239613(JP,A)
【文献】 特開2004−87941(JP,A)
【文献】 特開2005−107716(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/181905(WO,A1)
【文献】 特開2015−15357(JP,A)
【文献】 特開2017−191888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品または治具の少なくとも一方を含む実装対象物を採取して基板上もしくは基板模擬治具上の所定の装着位置に装着する部品実装ヘッドと、
前記部品実装ヘッドに採取された実装対象物、および前記部品実装ヘッドに設けられた基準マークを一緒に撮像して画像データを取得する撮像装置と、
前記画像データに基づき前記実装対象物と前記基準マークとの相対位置関係を求めて、前記部品実装ヘッドの前記装着位置への移動制御に反映する制御装置と、を備えた部品実装機であって、
前記撮像装置は、照射方向が互いに異なる複数の照明条件を切り替え可能な照明部を有し、
前記基準マークは、前記複数の照明条件に対応して複数種類設けられている部品実装機。
【請求項2】
前記照明部は、点灯および消灯を独立して切り替え可能な複数の照明用光源を含む請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記基準マークは、前記複数の照明条件、ならびに前記実装対象物の性状の差異により分類される複数の分類区分に対応して複数種類設けられている請求項1または2に記載の部品実装機。
【請求項4】
部品または治具の少なくとも一方を含む実装対象物を採取して基板上もしくは基板模擬治具上の所定の装着位置に装着する部品実装ヘッドと、
前記部品実装ヘッドに採取された実装対象物、および前記部品実装ヘッドに設けられた基準マークを一緒に撮像して画像データを取得する撮像装置と、
前記画像データに基づき前記実装対象物と前記基準マークとの相対位置関係を求めて、前記部品実装ヘッドの前記装着位置への移動制御に反映する制御装置と、を備えた部品実装機であって、
前記基準マークは、前記実装対象物の性状の差異により分類される複数の分類区分に対応して複数種類設けられている部品実装機。
【請求項5】
前記基準マークは、前記実装対象物の前記撮像装置に撮像される特定部位の形状または表面状態の少なくとも一方の差異により分類される複数の分類区分に対応して複数種類設けられている請求項3または4に記載の部品実装機。
【請求項6】
前記基準マークは種類ごとにそれぞれ複数設けられており、同じ種類の複数の基準マークは、前記部品実装ヘッドの前記撮像装置に対向する撮像面に配設されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の部品実装機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記部品実装ヘッドが前記実装対象物の装着を開始する以前に行うキャリブレーション手段を含み、
前記キャリブレーション手段は、
前記部品実装ヘッドを所定のキャリブレーション位置に移動させ、
前記撮像装置により前記各基準マークを撮像してキャリブレーション用画像データを取得し、
前記キャリブレーション用画像データに基づいて、同じ種類の複数の基準マークによってそれぞれ定まる各マーク中心位置の少なくとも1位置を求めて記憶し、以降の前記部品実装ヘッドの前記装着位置への移動制御に反映する請求項6に記載の部品実装機。
【請求項8】
前記制御装置は、前記キャリブレーション手段に続いて行う精度調整手段を含み、
前記精度調整手段は、
前記実装対象物のうちの精度測定用対象物に対応する基準マークをマスターマークに設定するとともに、前記撮像装置が有する照明部の前記精度測定用対象物に対応する照明条件をマスター照明条件に設定し、
前記撮像装置により、前記マスター照明条件にて前記部品実装ヘッドに採取された精度測定用対象物および前記マスターマークを一緒に撮像して精度調整用画像データを取得し、
前記精度調整用画像データに基づき前記精度測定用対象物と前記マスターマークとの相対位置関係を求め、前記部品実装ヘッドの前記装着位置への移動制御に反映して、前記精度測定用対象物を前記基板上もしくは前記基板模擬治具上の所定の装着位置に装着し、
前記装着位置に生じた位置誤差を取得して記憶し、以降の前記部品実装ヘッドの前記装着位置への移動制御に反映する請求項7に記載の部品実装機。
【請求項9】
前記制御装置は、前記部品実装ヘッドが前記実装対象物の装着を開始する以前に行う初期値記憶手段、ならびに、前記部品実装ヘッドが前記実装対象物の装着を実施しているときに行う異常判定手段を含み、
前記初期値記憶手段は、前記撮像装置により前記基準マークを撮像して初期値用画像データを取得し、前記初期値用画像データに基づき、前記各基準マークの形状または同じ種類の複数の基準マークの相互間距離の少なくとも一方を求め、初期値として記憶し、
前記異常判定手段は、前記画像データに基づき前記各基準マークの形状または同じ種類の複数の基準マークの相互間距離の少なくとも一方を求め、さらに前記初期値からの変化分を求め、前記変化分が所定の管理値を超えた場合に異常と判定する請求項1〜8のいずれか一項に記載の部品実装機。
【請求項10】
前記異常判定手段が前記異常と判定したときに、前記部品実装ヘッドの前記基準マークが設けられた撮像面を自動でクリーニングする自動クリーニング装置をさらに備えた請求項9に記載の部品実装機。
【請求項11】
部品実装機に備えられ、部品または治具の少なくとも一方を含む実装対象物を採取して基板上もしくは基板模擬治具上の所定の装着位置に装着する部品装着部材を撮像装置に対向する撮像面に有し、基準マークが前記撮像面に設けられた部品実装ヘッドであって、
前記部品装着部材に採取された実装対象物および前記基準マークを一緒に撮像する前記撮像装置が有する照明部の照射方向が互いに異なる複数の照明条件、または、前記実装対象物の性状の差異により分類される複数の分類区分の少なくとも一方に対応する複数種類の基準マークが設けられている部品実装ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に複数の部品を実装する部品実装機、および実装動作を行う部品実装ヘッドに関する。より詳細には、部品実装ヘッドに設けられた基準マークを撮像する部品実装機に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の部品が実装された基板を生産する設備として、はんだ印刷機、部品実装機、リフロー機、基板検査機などがある。これらの設備を連結して基板生産ラインを構成することが一般的になっている。このうち部品実装機は、基板搬送装置、部品供給装置、部品移載装置、および制御装置を備える。部品実装機による実装動作において、まず、基板搬送装置が基板を搬入し、位置決め保持する。次に、部品移載装置の部品実装ヘッドが部品供給装置から部品を採取し、基板上の所定の装着位置に移動して当該の部品を装着する。
【0003】
部品実装ヘッドに採取された部品の位置および回転姿勢を正確に認識して高精度な実装動作を実現するために、一般的に撮像装置が用いられる。撮像装置は、部品実装ヘッドに採取された部品および部品実装ヘッドに設けられた基準マークを一緒に撮像して画像データを取得する。制御装置は、画像データに画像処理を施して、部品と基準マークとの相対位置関係を求め、部品実装ヘッドの装着位置への移動制御に反映する。撮像装置を用いて部品と基準マークとの相対位置関係を求める一技術例が、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1の電気部品の位置ずれ検出方法は、電気部品の吸着ノズルに対する位置ずれを検出する方法であって、次の4工程を含んでいる。すなわち、この位置ずれ検出方法は、吸着ノズルとその近傍に配設されたドッグとを同時に撮像する第一撮像工程と、吸着ノズルとドッグとの相対位置関係を取得する第一データ処理工程と、吸着ノズルに保持された電気部品とドッグとを同時に撮像する第二撮像工程と、電気部品とドッグとの相対位置関係ならびに吸着ノズルとドッグとの相対位置関係に基づいて電気部品の吸着ノズルに対する位置ずれを取得する第二データ処理工程と、を含んでいる。これによれば、種々の原因に基づく吸着ノズルと撮像装置との相対位置ずれを修正し、電気部品を高い位置精度で回路基板に装着できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−185198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近では部品の小型化が進み、従来よりもさらに実装動作の高精度化が必要となってきている。このため、特許文献1に開示されたドッグに類する位置の指標として、基準マークを部品実装ヘッドに設けることが多い。この方法の場合、1回の撮像で部品実装ヘッドに採取された部品と基準マークとを一緒に撮像する。ここで、撮像対象となる部品の性状に合わせて、撮像装置の照明部の複数の照明条件を切り替えることが行われている。すると、基準マークが全ての照明条件に適合して明瞭に撮像されるとは限らない。この結果、基準マークが不明瞭になって部品との相対位置関係の検知精度が低下し、実装動作の精度が低下するという問題点が発生する。
【0007】
また、最近では実装動作の高精度化とともに高速化が進み、部品実装ヘッドが高速で駆動されるようになってきている。さらに、部品実装ヘッドが撮像装置の上方を停止することなく移動して、移動しながらの撮像を行うオンザフライ撮像( On The Fly 撮像)も広まりつつある。このため、撮像する瞬間の部品実装ヘッドの位置が不定になるとともに、撮像装置のシャッタスピードを始めとする撮像条件が制約されて、部品や基準マークを明瞭に撮像することが難しくなり、前記した問題点が顕著になっている。
【0008】
なお、前記した問題点は、部品実装ヘッドが部品以外の部材、例えば治具を採取して基板上もしくは基板模擬治具上に装着する場合にも、共通に発生し得る。したがって、本明細書では、部品実装ヘッドが採取および装着する部品や治具などを含んで実装対象物と総称する。
【0009】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、複数種類の基準マークを用いることにより、部品実装ヘッドに採取された実装対象物の位置を正確に認識して高精度な実装動作を実現した部品実装機および部品実装ヘッドを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する請求項1に係る部品実装機の発明は、部品または治具の少なくとも一方を含む実装対象物を採取して基板上もしくは基板模擬治具上の所定の装着位置に装着する部品実装ヘッドと、前記部品実装ヘッドに採取された実装対象物、および前記部品実装ヘッドに設けられた基準マークを一緒に撮像して画像データを取得する撮像装置と、前記画像データに基づき前記実装対象物と前記基準マークとの相対位置関係を求めて、前記部品実装ヘッドの前記装着位置への移動制御に反映する制御装置と、を備えた部品実装機であって、前記撮像装置は、照射方向が互いに異なる複数の照明条件を切り替え可能な照明部を有し、前記基準マークは、前記複数の照明条件に対応して複数種類設けられている。
【0011】
請求項4に係る部品実装機の発明は、部品または治具の少なくとも一方を含む実装対象物を採取して基板上もしくは基板模擬治具上の所定の装着位置に装着する部品実装ヘッドと、前記部品実装ヘッドに採取された実装対象物、および前記部品実装ヘッドに設けられた基準マークを一緒に撮像して画像データを取得する撮像装置と、前記画像データに基づき前記実装対象物と前記基準マークとの相対位置関係を求めて、前記部品実装ヘッドの前記装着位置への移動制御に反映する制御装置と、を備えた部品実装機であって、前記基準マークは、前記実装対象物の性状の差異により分類される複数の分類区分に対応して複数種類設けられている。
【0012】
請求項11に係る部品実装ヘッドの発明は、部品実装機に備えられ、部品または治具の少なくとも一方を含む実装対象物を採取して基板上もしくは基板模擬治具上の所定の装着位置に装着する部品装着部材を撮像装置に対向する撮像面に有し、基準マークが前記撮像面に設けられた部品実装ヘッドであって、前記部品装着部材に採取された実装対象物および前記基準マークを一緒に撮像する前記撮像装置が有する照明部の照射方向が互いに異なる複数の照明条件、または、前記実装対象物の性状の差異により分類される複数の分類区分の少なくとも一方に対応する複数種類の基準マークが設けられている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る部品実装機の発明によれば、撮像装置は複数の照明条件を切り替え可能であり、基準マークは複数の照明条件に対応して複数種類設けられている。このため、複数種類の基準マークは、複数の照明条件のそれぞれで少なくとも1種類が明瞭に撮像されるように形成される。すると、部品実装ヘッドに採取された実装対象物に合わせて適正な照明条件が選定されたときに、当該の実装対象物とともに少なくとも1種類の基準マークが明瞭に撮像される。したがって、制御装置は、当該の実装対象物と少なくとも1種類の基準マークとの相対位置関係を正確に検知して、採取された実装対象物の部品実装ヘッド上の位置を正確に認識できる。これにより、高精度な実装動作が実現される。
【0014】
請求項4に係る部品実装機の発明によれば、基準マークは実装対象物の性状の差異により分類される複数の分類区分に対応して複数種類設けられている。このため、複数種類の基準マークは、その形状や表面状態が実装対象物の複数の分類区分にそれぞれ対応するように形成される。すると、部品実装ヘッドに採取された実装対象物に合わせて適正な撮像条件が選定されたときに、当該の実装対象物とともに少なくとも1種類の基準マークが明瞭に撮像される。したがって、制御装置は、当該の実装対象物と少なくとも1種類の基準マークとの相対位置関係を正確に検知して、採取された実装対象物の部品実装ヘッド上の位置を正確に認識できる。これにより、高精度な実装動作が実現される。
【0015】
請求項11に係る部品実装ヘッドの発明は、複数の照明条件または実装対象物の複数の分類区分の少なくとも一方に対応する複数種類の基準マークが設けられている。このため複数種類の基準マークは、複数の照明条件のそれぞれで少なくとも1種類が明瞭に撮像されるように、あるいは、その形状や表面状態が実装対象物の複数の分類区分にそれぞれ対応するように形成される。すると、照明条件や実装対象物の分類区分に関わらず、当該の実装対象物とともに少なくとも1種類の基準マークが明瞭に撮像される。したがって、当該の実装対象物と少なくとも1種類の基準マークとの相対位置関係が正確に検知され、採取された実装対象物の部品実装ヘッド上の位置が正確に認識される。これにより、高精度な実装動作が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の部品実装機の全体構成を示す斜視図である。
図2】部品実装ヘッドの構造を示す側面図である。
図3】部品実装ヘッドの構造を示す底面図である。
図4】部品実装ヘッドのヘッド本体の底面に設けられた第1〜第3基準マークを説明する図である。
図5】第1基準マークの形状を説明する斜視図である。
図6】第2基準マークの形状を説明する斜視図である。
図7】第3基準マークの形状を説明する側面図である。
図8】撮像装置の構成を示す側面部分断面図である。
図9】第1〜第3基準マークと、複数の照明条件ならびに実装対象物の複数の分類区分との対応関係を示す一覧の図である。
図10】実施形態の部品実装機の動作を説明する図であり、制御装置が実行する処理フローを示している。
図11】キャリブレーション用画像データおよび第1〜第3マーク中心位置を例示説明する図である。
図12】吸着採取された部品の部品実装ヘッド上の位置を制御装置が認識する方法を例示説明する図である。
図13】従来技術の基準マークを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態の部品実装機1ならびに実施形態の部品実装ヘッド5について、図1図12を参考にして説明する。図1は、本発明の実施形態の部品実装機1の全体構成を示す斜視図である。図1の左奥から右手前に向かう方向が基板Kを搬入出するX軸方向、右奥から左手前に向かう方向がY軸方向、下から上に向かう方向がZ軸方向である。部品実装機1は、基板搬送装置2、複数個のフィーダ装置3、部品移載装置4、および撮像装置7などが機台91に組み付けられ、カバー92(二点鎖線示)に覆われて構成されている。基板搬送装置2、フィーダ装置3、部品移載装置4、および撮像装置7は、図略の制御装置から制御され、それぞれが所定の作業を行うようになっている。
【0018】
基板搬送装置2は、基板Kを装着実施位置に搬入し位置決めし搬出する。基板搬送装置2は、一対のガイドレール21、一対のコンベアベルト22、および複数の支持ピン23などで構成されている。一対のガイドレール21は、機台91の上部中央を横断して搬送方向(X軸方向)に延在し、かつ互いに平行に立設されている。一対のガイドレール21の向かい合う内側に、無端環状の一対のコンベアベルト22がそれぞれ設けられている。一対のコンベアベルト22は、コンベア搬送面に基板Kの両縁をそれぞれ戴置した状態で輪転して、基板Kを機台91の中央部に設定された装着実施位置に搬入および搬出する。複数の支持ピン23は、装着実施位置の下方に上下動可能に設けられている。支持ピン23は、上昇して基板Kを押し上げ装着実施位置に位置決めする。これにより、部品移載装置4が装着実施位置で装着動作を行えるようになる。
【0019】
複数個のフィーダ装置3は、それぞれ部品を順次供給する。複数個のフィーダ装置3は、機台91の上面の幅方向(X軸方向)に並べて搭載される。各フィーダ装置3は、本体部31と、本体部31の後部に設けられた供給リール32と、本体部31の前寄りの上部に設けられた部品取出部33とを有している。供給リール32には多数の部品が所定ピッチで収納された細長いテープ(図略)が巻回保持されている。このテープが図略のテープ繰り出し機構により所定ピッチずつ繰り出され、部品が収納状態を解除されて部品取出部33に順次供給されるようになっている。
【0020】
部品移載装置4は、複数個のフィーダ装置3の各部品取出部33から部品を採取し、位置決めされた基板Kまで搬送して装着する。部品移載装置4は、X軸方向およびY軸方向に水平移動可能なXYロボットタイプの装置である。部品移載装置4は、左右一対のY軸レール41、Y軸スライダ42、上下一対のX軸レール43、X軸スライダ44、部品実装ヘッド5、および図略のX−Y駆動機構などで構成されている。一対のY軸レール41は、機台91の前後方向(Y軸方向)に延在して、基板搬送装置2およびフィーダ装置3の上方に配設されている。Y軸レール41に、Y軸スライダ42がY軸方向に移動可能に装架されている。Y軸スライダ42の前面に、上下一対のX軸レール43がX軸方向に延在して配設されている。X軸レール43の前側に、X軸スライダ44がX軸方向に移動可能に装架されている。X軸スライダ44の前側に、部品実装ヘッド5が配設されている。部品実装ヘッド5は、X−Y駆動機構によってX軸方向およびY軸方向に駆動される。
【0021】
図2は、部品実装ヘッド5の構造を示す側面図であり、図3は、部品実装ヘッド5の構造を示す底面図である。また、図4は、部品実装ヘッド5のヘッド本体51の底面55に設けられた第1〜第3基準マーク61〜63を説明する図である。図示されるように、部品実装ヘッド5は、ヘッド本体51、リボルバー装置53、および複数本の吸着ノズル54などで構成されている。
【0022】
ヘッド本体51は、概ね縦型の直方体形状に形成されている。ヘッド本体51は、一側面に形成された着脱部52により、X軸スライダ44に取り付けられる。リボルバー装置53は、ヘッド本体51に内蔵して設けられており、垂直方向(Z軸方向)の回転軸AXの回りに回転する。図3に示されるように、リボルバー装置53は、回転軸AXを中心とする同心円周上に最大で16本の吸着ノズル54を着脱可能に有している。吸着ノズル54は、部品装着部材の一実施例であり、負圧を利用して部品を吸着採取し、正圧を利用して部品を基板K上に装着する。ヘッド本体51の内部には、駆動機構および空気圧調整機構が設けられている。駆動機構は、リボルバー装置53の回転を駆動するとともに、選択した特定の吸着ノズル54の昇降および回転を駆動する。空気圧調整機構は、各ノズル54に作用する空気圧を負圧および正圧に調整して、吸着動作および装着動作を実現する。
【0023】
吸着ノズル54は、部品だけでなく、精度測定用治具も吸着および装着する。精度測定用治具は、基板模擬治具と組み合わせて使用され、装着位置における装着精度の測定に提供される。精度測定用治具は、例えば、透明ガラスに精度測定用パターンを形成したものである。基板模擬治具は、例えば、基板と同等の大きさの板材に一定ピッチで基準線や基準符号を形成したものである。吸着ノズル54が精度測定用治具を基板模擬治具上に装着したとき、精度測定用パターンと基準線や基準符号との相対位置関係が求められる。これにより、装着位置の位置誤差、換言すれば装着精度が測定される。なお、装着精度の測定は、実際の部品および基板を用いて行うこともできる。以降では、部品実装ヘッド5が吸着および装着する部品および治具などを含んで実装対象物と総称する。
【0024】
図4に示されるように、ヘッド本体51の底面55に、3種類各2個の第1〜第3基準マーク61〜63が設けられている。合計6個の第1〜第3基準マーク61〜63は、概ね回転軸AXを中心とする同心円周上に60°ピッチで配設されている。かつ、同じ種類の2個の第1〜第3基準マーク61〜63は、概ね回転軸AXを中心にして対称に配設されている。本実施形態において、第1〜第3基準マーク61〜63は、ヘッド本体51の底面55に設けられている。これに限定されず、第1〜第3基準マーク61〜63は、リボルバー装置53とともに回転するように配設されてもよい。
【0025】
図5図7は、第1〜第3基準マーク61〜63の形状をそれぞれ説明する図である。図5図7において、各基準マーク61〜63の底面611、621、631が上を向くように、上下が反転されて示されている。図5の斜視図に示される第1基準マーク61は、厚みの小さな円柱形状に形成されている。第1基準マーク61の底面611は、サンドブラスト装置を用いて梨地処理が施され、多数の微小な凹凸が形成されている。図6の斜視図に示される第2基準マーク62は、第1基準マーク61と同一形状に形成されている。ただし、第2基準マーク62の底面621は、研磨装置などを用いて鏡面仕上げが施されている。図7の側面図に示される第3基準マーク63は、球面状に膨らんだ底面631が第1基準マーク61と同様の円柱形状に追加されて形成されている。
【0026】
なお、第1〜第3基準マーク61〜63は、下から見上げて円形に限定されず、例えば正方形であってもよい。また、同じ種類の基準マークを3個以上設けることもできる。この場合、同種の3個以上の基準マークは、回転軸AXを中心として回転対称に配設されることが好ましい。
【0027】
図8は、撮像装置7の構成を示す側面部分断面図である。撮像装置7は、基板搬送装置2とフィーダ装置3との間の機台91の上面に、上向きに設けられている。撮像装置7は、部品実装ヘッド5に採取された実装対象物、および部品実装ヘッド5に設けられた第1〜第3基準マーク61〜63を一緒に撮像して画像データを取得する。撮像装置7は、部品実装ヘッド5がフィーダ装置2から基板Kへ移動する途中で停止せずに撮像を行うオンザフライ撮像、あるいは、部品実装ヘッド5が一旦停止するタイミングに撮像を行う停止時撮像のどちらを行ってもよい。
【0028】
図示されるように、撮像装置7は、カメラ部71、連結部72、上椀部73、および照明部74などで構成されている。撮像動作を行うカメラ部71は、鉛直方向(Z軸方向)の光入射軸AOを有し、支持台711を介して機台91上に取り付けられている。カメラ部71の上部中央は、上方からの光が入射する光入射部712となっている。カメラ部71の上方には、矩形断面の筒状の連結部72が配設されている。さらに、連結部72の上側には、上向きに開いた底のない椀状の上椀部73が配設されている。
【0029】
照明部74は、連結部72の内面から上椀部73の内面にかけて配設されている。詳述すると、連結部72の内壁の一つの側面には、多数のLEDよりなる落射光源741が設けられている。また、連結部72の内部を斜めに横切ってハーフミラー742が設けられている。ハーフミラー742は、落射光源741から照射された水平方向の落射光を鉛直上向きに反射するとともに、上方からの光をカメラ部71の光入射部712に向けて透過する。上椀部73の椀状の内面に、多数のLEDよりなる傾射光源744が四段配置されている。さらに、上椀部73の椀状の内面の上縁寄りに、多数のLEDよりなる側射光源746が一段配置されている。
【0030】
撮像装置7は、撮像の対象として、ヘッド本体51の底面55およびリボルバー装置53の底面を撮像面としている。吸着ノズル54に吸着された部品および第1〜第3基準マーク61〜63も、撮像面に含まれる。落射光源741は、撮像面を鉛直下方から概ね真っ直ぐに照射する。傾射光源744は、撮像面を周囲の下方から斜めに照射する。側射光源746は、撮像面を周囲から水平に近い角度で照射する。照明用光源となる落射光源741、傾射光源744、および側射光源746の点灯および消灯が独立して切り替えられることにより、後述する第1〜第3照明条件が設定される。
【0031】
図1に戻り、機台91上の撮像装置7に隣接する位置に、クリーニング部材8が配設されている。クリーニング部材8には、例えばブラシやスポンジなどの清掃用部材が用いられる。クリーニング部材8は、第1〜第3基準マーク61〜63を一括クリーニングできる大きさを有している。なお、第1〜第3基準マーク61〜63を個別にクリーニングできる大きさとしてもよい。部品移載装置4は、X−Y駆動機構により部品実装ヘッド5をクリーニング部材8の上方に移動させ、ヘッド本体51の底面55をクリーニング部材8に接触させつつ揺動することができる。これにより、ヘッド本体51の底面55が第1〜第3基準マーク61〜63の底面611、621、631と共に自動でクリーニングされる。つまり、クリーニング部材8およびX−Y駆動機構により、自動クリーニング装置の機能が実現されている。
【0032】
図略の制御装置は、部品実装に関する動作の全般を制御する。制御装置は、例えば,CPUを有してソフトウェアで動作する電子制御装置により構成でき、複数の電子制御装置を連携させて構成してもよい。制御装置は、基板搬送装置2による基板Kの搬入出および位置決めを制御する。制御装置は、複数個のフィーダ装置3の各制御部と連携して、各部品供給位置33に順次部品を供給させる。制御装置は、部品移載装置4の部品実装ヘッド5の移動やリボルバー装置53の回転、および吸着ノズル54の空気圧を制御する。制御装置は、部品実装ヘッド5を撮像装置7の上方へ移動させるとともに、撮像装置7の撮像動作を制御する。制御装置は、前記自動クリーニング装置の機能を制御する。さらに、制御装置は、4つの機能手段を含み、すなわち後述するキャリブレーション手段、精度調整手段、初期値記憶手段、および異常判定手段を含んでいる。
【0033】
本実施形態において、第1〜第3基準マーク61〜63は、複数の照明条件、ならびに実装対象物の性状の差異により分類される複数の分類区分に対応して設けられている。図9は、第1〜第3基準マーク61〜63と、複数の照明条件ならびに実装対象物の複数の分類区分との対応関係を示す一覧の図である。
【0034】
図9に示されるように、第1基準マーク61は、落射光源741、傾射光源744、および側射光源746がすべて点灯された第1照明条件に対応している。かつ、第1基準マーク61は、底面に電極を有する実装対象物に対応している。この種の実装対象物として、矩形の電極を有するチップ部品や、リード電極を有するリード部品を例示できる。これらの電極の位置を正確に求めることが重要であるので、電極の表面状態に類似するように、第1基準マーク61の底面611に梨地処理が施されている。そして、実装対象物の電極および第1基準マーク61の両方を明瞭に撮像するために、好適な第1照明条件が対応付けられて設定される。
【0035】
また、第2基準マーク62は、落射光源741のみが点灯された第2照明条件に対応している。かつ、第2基準マーク62は、底面が鏡面になっている実装対象物に対応している。この種の実装対象物として、ウエハ母材から切り出されたウエハ部品や、前述した精度測定用治具を例示できる。これらの底面の拡がる範囲を正確に求めることが重要であるので、実装対象物の底面の表面状態に類似するように、第2基準マーク62の底面621に鏡面仕上げが施されている。そして、実装対象物の底面および第2基準マーク62の両方を明瞭に撮像するために、好適な第2照明条件が対応付けられて設定される。
【0036】
さらに、第3基準マーク63は、側射光源746のみが点灯された第3照明条件に対応している。かつ、第3基準マーク63は、底面にバンプ(球面状の接続部)を有する実装対象物に対応している。この種の実装対象物として、BGA部品( Ball Grid Array部品)や、CSP部品( Chip Size Package部品)を例示できる。これらのバンプの位置を正確に求めることが重要であるので、バンプの形状に類似するように、第3基準マーク63の底面631は球面状に膨らんで形成されている。そして、実装対象物のバンプおよび第3基準マーク63の両方を明瞭に撮像するために、好適な第3照明条件が対応付けられて設定される。
【0037】
次に、上述のように構成された実施形態の部品実装機1の動作について、制御装置の4つの機能手段とともに説明する。図10は、実施形態の部品実装機の動作を説明する図であり、制御装置が実行する処理フローを示している。制御装置は、実装対象物の装着を開始する以前にステップS1のキャリブレーション手段を行い、続いてステップS2の精度調整手段を行う。さらに、制御装置は、ステップS1およびステップS2の後、またはステップS1およびステップS2と並行して、ステップS3の初期値記憶手段を行う。これらの3機能手段は、例えば、部品実装機1を設置した後や、部品実装ヘッド5を交換した後や、定期点検時に部品交換や手入れを実施した後に行う。
【0038】
ステップS1のキャリブレーション手段において、制御装置は、まず、部品実装ヘッド5を所定のキャリブレーション位置に移動させる。キャリブレーション位置は、例えば、撮像装置7の真上に設定する。これにより、リボルバー装置53の回転軸AXと、撮像装置7の光入射軸AOとが重なる。制御装置は、続いて、撮像装置7により第1〜第3基準マーク61〜63を撮像してキャリブレーション用画像データを取得する。制御装置は、3番目に、キャリブレーション用画像データに基づき、同じ種類の2個の基準マーク61〜63によってそれぞれ定まる第1〜第3マーク中心位置M1〜M3を求める。
【0039】
図11は、キャリブレーション用画像データおよび第1〜第3マーク中心位置M1〜M3を例示説明する図である。図11において、説明を分かりやすくするために、位置の誤差を誇張して示している。制御装置は、キャリブレーション用画像データの2個の第1基準マーク61の円形の中心位置をそれぞれ求め、2個の中心位置を結んだ線分の中点を第1マーク中心位置M1(図11の+印)とする。同様に、制御装置は、2個の第2基準マーク62から第2マーク中心位置M2(図11の+印)を求め、2個の第3基準マーク63から第3マーク中心位置M3(図11の+印)を求める。制御装置は、回転軸AXに対する第1〜第3マーク中心位置M1〜M3のX軸方向およびY軸方向の偏移量を記憶し、以降の部品実装ヘッド5の装着位置への移動制御に反映する。これにより、各2個の第1〜第3基準マーク61〜63の配設位置が回転軸AXを中心とする対称位置からずれた誤差を有していても、誤差の影響をキャンセルできる。
【0040】
ステップS2の精度調整手段において、制御装置は、まず、実装対象物のうちの精度測定用治具に対応する第2基準マーク62をマスターマークに設定するとともに、撮像装置7が有する照明部74の精度測定用治具に対応する第2照明条件をマスター照明条件に設定する。制御装置は、続いて、撮像装置7により、マスター照明条件(第2照明条件)にて部品実装ヘッド5に採取された精度測定用治具およびマスターマーク(第2基準マーク62)を一緒に撮像して精度調整用画像データを取得する。制御装置は、3番目に、精度調整用画像データに基づき精度測定用治具とマスターマークとの相対位置関係を求め、部品実装ヘッド5の装着位置への移動制御に反映して、精度測定用治具を基板模擬治具上の所定の装着位置に装着する。制御装置は、4番目に、装着位置に生じた位置誤差を取得して記憶し、以降の部品実装ヘッド5の装着位置への移動制御に反映する。これによれば、撮像装置7の上方と基板K上とにおける動作条件や雰囲気条件などの違いに起因して仮に位置誤差が生じても、調整により高い装着精度を維持できる。
【0041】
ステップS3の初期値記憶手段において、制御装置は、まず、撮像装置7により第1〜第3基準マーク61〜63を撮像して初期値用画像データを取得する。なお、制御装置は、ステップS1で取得したキャリブレーション用画像データを初期値用画像データに流用してもよい。制御装置は、続いて、初期値用画像データに基づき第1〜第3基準マーク61〜63の形状、または同じ種類の2個の第1〜第3基準マーク61〜63の相互間距離の少なくとも一方を求め初期値として記憶する。当然ながら、第1〜第3基準マーク61〜63の形状の初期値は、真円(完全な円形)に近い。
【0042】
ステップS3を終了した後、制御装置は、処理フローの実行をステップS4に進める。ステップS4で、制御装置は、基板搬送装置2を制御して基板Kを搬入し、部品の実装動作を開始する。次のステップS5で、制御装置は、部品移載装置4を制御して、部品実装ヘッド5の吸着ノズル54に部品を吸着採取させる。ステップS6で、制御装置は、部品実装ヘッド5を撮像装置7の上方に移動させ、撮像装置7を制御して撮像を行い、画像データを取得する。このとき、制御装置は、吸着採取した部品の分類区分に対応する照明条件を用いて撮像を行うように制御する。仮に、16本の吸着ノズル54に吸着採取した部品の分類区分が複数にまたがるとき、制御装置は、分類区分に対応する複数の照明条件を用いて複数回の撮像を行うように制御する。
【0043】
次に、ステップS7の異常判定手段において、制御装置は、まず、画像データに基づき第1〜第3基準マーク61〜63の形状、または同じ種類の2個の第1〜第3基準マーク61〜63の相互間距離の少なくとも一方を求め、さらに記憶済みの初期値からの変化分を求める。続いて、制御装置は、変化分が所定の管理値を超えた場合に異常と判定する。なお、管理値は、位置誤差が適正となる範囲を考慮して、予め設定することができる。
【0044】
異常の原因として、第1〜第3基準マーク61〜63やその周りの汚損が想定される。例えば、第1〜第3基準マーク61〜63の底面611、621、631が汚れて表面状態が変化すると鮮明な画像データが得られなくなる。あるいは、第1〜第3基準マーク61〜63上やその周りに異物が付着すると、あたかもマーク形状が変化したように撮像される。これらの原因により、第1〜第3基準マーク61〜63の形状が真円から変歪し、あるいは、各基準マーク61〜63の円形の中心位置が偏移して相互間距離が変化するので、制御装置は、異常を判定できる。
【0045】
ステップS8で、制御装置は、異常の発生の有無を判別する。制御装置は、異常が発生していないときに処理フローの実行をステップS9に進め、異常が発生しているときに処理フローの実行をステップS11に進める。ステップS9で、制御装置は、画像データに基づき、吸着採取された部品と、対応する基準マークとの相対位置関係を正確に検知して、吸着採取された部品の部品実装ヘッド5上の位置を正確に認識できる。なお、吸着採取された部品に対応しない基準マークは、一緒に撮像されて画像データに含まれていても、相対位置関係の検知処理には使用されない。
【0046】
図12は、吸着採取された部品の部品実装ヘッド5上の位置を制御装置が認識する方法を例示説明する図である。図12は、ヘッド本体51の底面55およびレボルバー装置53の底面を撮像した画像データを示している。図示されるように、レボルバー装置53の16本の吸着ノズル54にそれぞれチップ部品Pが吸着採取されている。したがって、チップ部品Pに対応する第1照明条件で撮像動作が行われて、当該の画像データが取得されている。撮像動作が行われる瞬間の部品実装ヘッド5と撮像装置7との位置関係は不定である。それでも、第1照明条件が設定されているので、チップ部品Pおよび2個の第1基準マーク61は、共に鮮明に撮像される。このため、制御装置は、キャリブレーション手段の結果を利用して、第1マーク中心位置M1から部品実装ヘッド5の基準位置を正確に検知できる。さらに、制御装置は、回転軸AXに対する特定のチップ部品PAのX軸方向およびY軸方向の変化量を正確に認識でき、位置を正確に認識したことになる。さらに、制御装置は、特定のチップ部品PAの回転姿勢を認識する。位置および回転姿勢の認識処理は、16本の吸着ノズル54にそれぞれ吸着採取されたチップ部品Pの全数について行われる。
【0047】
次のステップS10で、制御装置は、部品実装ヘッド5を基板Kの上方に移動して、吸着採取されたチップ部品Pを基板K上に順次装着させる。このとき、制御装置は、認識済みのチップ部品Pの位置および回転姿勢だけでなく、精度調整手段の結果を併用して最終的な装着位置の制御を行う。この後、制御装置は、処理フローの実行をステップS5に戻し、次の部品の実装動作に進む。
【0048】
異常が発生しているときに進んだステップS11で、制御装置は、自動クリーニング装置を機能させ、その後、処理フローの実行をステップS6に戻す。二度目のステップS6〜ステップS8で、制御装置は、異常が再度発生するか否かを判別する。自動クリーニング装置により第1〜第3基準マーク61〜63やその周りがクリーニングされて異常が解消されたとき、制御装置は、処理フローの実行をステップS9に進める。ステップS11を所定回数繰り返しても異常が解消されなかったとき、制御装置は、異常のアラームを報知して作業者による機能の回復を促すとともに、自らは待機する。
【0049】
次に、実施形態の部品実装機1の作用について、従来技術と比較しながら説明する。図13は、従来技術の基準マーク69を説明する図である。従来技術において、ヘッド本体51の底面59に90°ピッチで4個の単一種類の基準マーク69が設けられていた。従来は、照明条件によって基準マーク69が明瞭に撮像されず、4個の基準マーク69を用いてもマーク中心位置M9がふらついて部品実装ヘッド5の基準位置の精度が低下しがちであった。このため、明瞭に撮像される照明条件でのみ基準マーク69を位置基準とする撮像が行われていた。また、基準マーク69が明瞭に撮像されない照明条件で、オンザフライ撮像は行えなかった。
【0050】
これに対して、実施形態の部品実装機1では、第1〜第3照明条件で明瞭に撮像されるように種類の異なる第1〜第3基準マーク61〜63をそれぞれ2個用いる。このため、いずれの照明条件でも明瞭な撮像が行われ、最小限の2個の基準マーク61〜63でも第1〜第3マーク中心位置M1〜M3のいずれかを正確かつ容易に求めることができる。
【0051】
実施形態の部品実装機1は、部品または治具の少なくとも一方を含む実装対象物を採取して基板K上もしくは基板模擬治具上の所定の装着位置に装着する部品実装ヘッド5と、部品実装ヘッド5に採取された実装対象物、および部品実装ヘッド5に設けられた第1〜第3基準マーク61〜63を一緒に撮像して画像データを取得する撮像装置7と、画像データに基づき実装対象物と第1〜第3基準マーク61〜63との相対位置関係を求めて、部品実装ヘッド5の装着位置への移動制御に反映する制御装置と、を備えた部品実装機1であって、撮像装置7は、照射方向が互いに異なる第1〜第3照明条件を切り替え可能な照明部74を有し、第1〜第3基準マーク61〜63は、第1〜第3照明条件に対応して3種類設けられている。
【0052】
これによれば、3種類の第1〜第3基準マーク61〜63は、第1〜第3照明条件のそれぞれで少なくとも1種類が明瞭に撮像されるように形成される。すると、部品実装ヘッド5に採取された実装対象物に合わせて適正な照明条件が選定されたときに、当該の実装対象物とともに少なくとも1種類の基準マークが明瞭に撮像される。したがって、制御装置は、当該の実装対象物と少なくとも1種類の基準マークとの相対位置関係を正確に検知して、採取された実装対象物の部品実装ヘッド5上の位置を正確に認識できる。これにより、高精度な実装動作が実現される。
【0053】
さらに、実施形態の部品実装機1において、照明部74は、点灯および消灯を独立して切り替え可能な落射光源741、傾射光源744、および側射光源746を含む。これによれば、3種類の照明用光源741、744、746を組み合わせて設定される第1〜第3照明条件に対応してそれぞれ第1〜第3基準マーク61〜63が設けられる。したがって、少なくとも1種類の基準マークが明瞭に撮像され、高精度な実装動作が実現される効果は確実なものとなる。
【0054】
別の見方をすると、実施形態の部品実装機1において、第1〜第3基準マーク61〜63は、第1〜第3照明条件、ならびに実装対象物の性状の差異により分類される3種類の分類区分に対応して3種類設けられている。これによれば、第1〜第3照明条件と実装対象物の3種類の分類区分とが一対一に対応している場合に、照明条件と分類区分との組合せに対応してそれぞれ第1〜第3基準マーク61〜63が設けられる。したがって、少なくとも1種類の基準マークが明瞭に撮像される効果は、確実なものとなる。
【0055】
さらにまた、別の見方をすると、実施形態の部品実装機1は、部品または治具の少なくとも一方を含む実装対象物を採取して基板K上もしくは基板模擬治具上の所定の装着位置に装着する部品実装ヘッド5と、部品実装ヘッド5に採取された実装対象物、および部品実装ヘッド5に設けられた第1〜第3基準マーク61〜63を一緒に撮像して画像データを取得する撮像装置7と、画像データに基づき実装対象物と第1〜第3基準マーク61〜63との相対位置関係を求めて、部品実装ヘッド5の装着位置への移動制御に反映する制御装置と、を備えた部品実装機1であって、第1〜第3基準マーク61〜63は、実装対象物の性状の差異により分類される3種類の分類区分に対応して3種類設けられている。
【0056】
これによれば、3種類の第1〜第3基準マーク61〜63は、その形状や表面状態が実装対象物の複数の分類区分にそれぞれ対応するように形成されている。すると、部品実装ヘッド5に採取された実装対象物に合わせて適正な撮像条件が選定されたときに、当該の実装対象物とともに少なくとも1種類の基準マークが明瞭に撮像される。したがって、制御装置は、当該の実装対象物と少なくとも1種類の基準マークとの相対位置関係を正確に検知して、採取された実装対象物の部品実装ヘッド上5の位置を正確に認識できる。これにより、高精度な実装動作が実現される。
【0057】
さらに、実施形態の部品実装機1において、第1〜第3基準マーク61〜63は、実装対象物の撮像装置に撮像される特定部位の形状または表面状態の少なくとも一方の差異により分類される3種類の分類区分に対応して3種類設けられている。具体的に、第1基準マーク61は、底面611に電極を有する実装対象物に対応し、電極の表面状態に類似するように底面611に梨地処理が施されている。第2基準マーク62は、底面が鏡面になっている実装対象物に対応し、実装対象物の底面の表面状態に類似するように底面621に鏡面仕上げが施されている。第3基準マーク63は、底面にバンプを有する実装対象物に対応し、バンプの形状に類似するように底面631が球面状に膨らんで形成されている。これによれば、第1〜第3基準マーク61〜63は、底面611、621、631の形状や表面状態が対応する実装対象物に類似して形成されるので、被写体として顕著な類似性が具備される。したがって、第1〜第3基準マーク61〜63は、対応する実装対象物と一緒に明瞭に撮像される。
【0058】
さらに、実施形態の部品実装機1において、第1〜第3基準マーク61〜63は、それぞれ2個設けられており、同じ種類の2個の第1〜第3基準マーク61〜63は、ヘッド本体51の底面55に回転軸AXを中心にして対称に配設されている。これによれば、最小限の2個の第1〜第3基準マーク61〜63でも、第1〜第3マーク中心位置M1〜M3を正確にかつ容易に求めることができる。
【0059】
さらに、実施形態の部品実装機1において、制御装置は、部品実装ヘッド5が実装対象物の装着を開始する以前に行うキャリブレーション手段を含み、キャリブレーション手段は、部品実装ヘッド5を所定のキャリブレーション位置に移動させ、撮像装置7により第1〜第3基準マーク61〜63を撮像してキャリブレーション用画像データを取得し、キャリブレーション用画像データに基づいて、同じ種類の2個の第1〜第3基準マーク61〜63によってそれぞれ定まる第1〜第3マーク中心位置M1〜M3を求めて記憶し、以降の部品実装ヘッド5の装着位置への移動制御に反映する。これによれば、各2個の第1〜第3基準マーク61〜63の配設位置が回転軸AXを中心とする対称位置からずれた誤差を有していても、誤差の影響をキャンセルできる。
【0060】
さらに、実施形態の部品実装機1において、制御装置は、キャリブレーション手段に続いて行う精度調整手段を含み、精度調整手段は、実装対象物のうちの精度測定用治具に対応する第2基準マーク62をマスターマークに設定するとともに、撮像装置7が有する照明部74の精度測定用治具に対応する第2照明条件をマスター照明条件に設定し、撮像装置7により、マスター照明条件にて部品実装ヘッド5に採取された精度測定用治具およびマスターマークを一緒に撮像して精度調整用画像データを取得し、精度調整用画像データに基づき精度測定用治具とマスターマークとの相対位置関係を求め、部品実装ヘッド5の装着位置への移動制御に反映して、精度測定用治具を基板模擬治具上の所定の装着位置に装着し、装着位置に生じた位置誤差を取得して記憶し、以降の前記部品実装ヘッド5の装着位置への移動制御に反映する。これによれば、撮像装置7の上方と基板K上とにおける動作条件や雰囲気条件などの違いに起因して仮に位置誤差が生じても、調整により高い装着精度を維持できる。
【0061】
さらに、実施形態の部品実装機1において、制御装置は、部品実装ヘッド5が実装対象物の装着を開始する以前に行う初期値記憶手段、ならびに、部品実装ヘッド5が実装対象物の装着を実施しているときに行う異常判定手段を含み、初期値記憶手段は、撮像装置7により第1〜第3基準マーク61〜63を撮像して初期値用画像データを取得し、初期値用画像データに基づき第1〜第3基準マーク61〜63の形状、または同じ種類の2個の第1〜第3基準マーク61〜63の相互間距離の少なくとも一方を求め初期値として記憶し、異常判定手段は、画像データに基づき第1〜第3基準マーク61〜63の形状、または同じ種類の2個の第1〜第3基準マーク61〜63の相互間距離の少なくとも一方を求め、さらに初期値からの変化分を求め、変化分が所定の管理値を超えた場合に異常と判定する。これによれば、異常の原因となる基準マーク61〜63やその周りの汚損の影響を一定範囲内に抑制して、位置の精度を一定範囲内に維持できる。また、汚損の影響が大きくなったときに異常と判定して、作業者に機能の回復を促すことができる。
【0062】
さらに、実施形態の部品実装機1において、異常判定手段が異常と判定したときに、部品実装ヘッド5のヘッド本体51の底面55を第1〜第3基準マーク61〜63の底面611、621、631と共に自動でクリーニングする自動クリーニング装置をさらに備えている。これによれば、汚損の影響が大きくなって異常と判定されたときに、自動クリーニングを行う。したがって異常発生時に自動復帰できる場合が生じ、必ずしも作業者による機能の回復まで待機しなくてよい。この結果、部品実装機1の稼働率の低下を抑制できる。
【0063】
また、実施形態の部品実装ヘッド5は、部品実装機1に備えられ、部品または治具の少なくとも一方を含む実装対象物を採取して基板K上もしくは基板模擬治具上の所定の装着位置に装着する吸着ノズル54(部品装着部材)を撮像装置7に対向するレボルバー装置54の底面(撮像面)に有し、第1〜第3基準マーク61〜63がヘッド本体51の底面55(撮像面)に設けられた部品実装ヘッド5であって、吸着ノズル54に吸着採取された実装対象物および第1〜第3基準マーク61〜63を一緒に撮像する撮像装置7が有する照明部74の照射方向が互いに異なる第1〜第3照明条件、または、実装対象物の性状の差異により分類される3種類の分類区分の少なくとも一方に対応する3種類の第1〜第3基準マーク61〜63が設けられている。
【0064】
これによれば、部品実装ヘッド5に設けられた3種類の第1〜第3基準マーク61〜63は、第1〜第3照明条件のそれぞれで少なくとも1種類が明瞭に撮像されるように、あるいは、その形状や表面状態が実装対象物の複数の分類区分にそれぞれ対応するように形成できる。すると、照明条件や実装対象物の分類区分に関わらず、当該の実装対象物とともに少なくとも1種類の基準マークが明瞭に撮像される。したがって、当該の実装対象物と少なくとも1種類の基準マークとの相対位置関係が正確に検知され、採取された実装対象物の部品実装ヘッド5上の位置が正確に認識される。これにより、高精度な実装動作が実現される。
【0065】
なお、複数の照明条件と実装対象物の複数の分類区分とが一対一に対応していない場合に、照明条件と分類区分とのすべての組合せに対応してそれぞれ基準マークを設けるようにしてもよい。例えば、第2照明条件で撮像されるウエハ部品に第2基準マークを対応させ、第2照明条件で撮像される精度測定用治具に第4基準マークを対応させるように、基準マークの種類数を増加させてもよい。
【0066】
さらになお、実施形態で説明したフィーダ装置3以外の別方式の部品供給装置、例えばトレー式部品供給装置を用いてもよく、あるいは、フィーダ装置3およびトレー式部品供給装置を併用してもよい。また、部品移載装置4の部品装着部材として、部品実装ヘッド5が1本の吸着ノズル54のみを有してもよい。あるいは、部品実装ヘッド5が吸着ノズル54以外、例えば、2つの爪部で部品を挟持するタイプの部品装着部材を有してもよい。さらにまた、制御装置のキャリブレーション手段、精度調整手段、初期値記憶手段、および異常判定手段は、必須でない。例えば、第1〜第3基準マーク61〜63の配設位置が回転軸AXを中心として殆ど誤差なく対称に配設されている場合、キャリブレーション手段は不要である。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1:部品実装機
2:基板搬送装置 3:フィーダ装置 4:部品移載装置
5:部品実装ヘッド 51:ヘッド本体
53:リボルバー装置 54:吸着ノズル(部品装着部材)
61〜63:第1〜第3基準マーク
611、621、631:底面
7:撮像装置 71:カメラ部 74:照明部
741:落射光源 742:ハーフミラー
744:傾射光源 746:側射光源
8:クリーニング部材
AX:回転軸 AO:光入射軸
M1〜M3:第1〜第3マーク中心位置
K:基板 P、PA:チップ部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13