(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
部品を吸着して回路基板に装着する吸着ノズルをそれぞれ有する複数種のノズルツールを、移動可能な装着ヘッドに自動交換可能に保持する部品実装機のツール保持装置であって、
前記ノズルツールは、2つのテーパ溝側面により下方に広く開口するツール側テーパ溝を複数有する取付部材と、各前記ツール側テーパ溝に移動可能にかつ脱落不能に収容された複数の球体部材と、を備え、
前記装着ヘッドは、前記ノズルツールの各前記ツール側テーパ溝の下側にそれぞれ昇降可能に配置されるとともに2つのテーパ溝側面により上方に広く開口するヘッド側テーパ溝を有する複数の保持部材と、各前記保持部材を昇降駆動する保持駆動部と、を備え、
前記保持駆動部により前記保持部材が上昇駆動されたときに、前記球体部材が前記ツール側テーパ溝の前記2つのテーパ溝側面および前記ヘッド側テーパ溝の前記2つのテーパ溝側面に圧接され、前記ノズルツールが前記装着ヘッドに位置決めされて保持される部品実装機のツール保持装置。
前記保持部材は、前記取付面および前記圧接面を突き抜けて上下方向に延在するとともに、その下端から水平方向に屈曲された水平部に前記ヘッド側テーパ溝が形成されており、
前記取付面を前記圧接面に当接または接近させた後に、前記ノズルツールに対して前記装着ヘッドが水平方向に相対回転すると、前記ヘッド側テーパ溝が前記ツール側テーパ溝の下側に位置する請求項2に記載の部品実装機のツール保持装置。
前記ノズルツールおよび前記ノズルツールを保持する前記装着ヘッドの下部は、垂直方向に延びる軸線の周りに概ね軸対称に形成されており、負圧エアおよび正圧エアの少なくとも一方を前記吸着ノズルに供給可能なエア供給路の接続部を前記球体部材および前記保持部材よりも軸心側に有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の部品実装機のツール保持装置。
前記ノズルツールを保持する前記装着ヘッドの下部は、垂直方向に延びる軸線の周りに概ね軸対称に形成されており、前記軸線の位置を検出可能とする基準マークを前記保持部材よりも軸心側に有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の部品実装機のツール保持装置。
部品を吸着して回路基板に装着する吸着ノズルを有し、移動可能な装着ヘッドに自動交換可能に保持される部品実装機のノズルツールであって、2つのテーパ溝側面により下方に広く開口するツール側テーパ溝を複数有する取付部材と、各前記ツール側テーパ溝に移動可能にかつ脱落不能に収容された複数の球体部材と、を備える一方で、
前記装着ヘッドは、前記ノズルツールの各前記ツール側テーパ溝の下側にそれぞれ昇降可能に配置されるとともに2つのテーパ溝側面により上方に広く開口するヘッド側テーパ溝を有する複数の保持部材と、各前記保持部材を昇降駆動する保持駆動部と、を備え、
前記保持駆動部により前記保持部材が上昇駆動されたときに、前記球体部材が前記ツール側テーパ溝の前記2つのテーパ溝側面および前記ヘッド側テーパ溝の前記2つのテーパ溝側面に圧接されることにより、前記装着ヘッドに位置決めされて保持される部品実装機のノズルツール。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.部品実装機9の全体構成)
まず、本発明の実施形態に用いられる部品実装機9の全体構成について、
図1参考にして説明する。
図1は、実施形態に用いられる部品実装機9の全体構成を示す斜視図である。
図1の左奥から右手前に向かう方向が回路基板Kを搬入出するX軸方向、右奥から左手前に向かう方向がY軸方向、上下に向かう方向がZ軸方向である。部品実装機9は、基板搬送装置92、複数のフィーダ装置93、部品移載装置94、部品カメラ95、ツール載置台96、および図略の制御装置などが機台91に組み付けられて構成されている。基板搬送装置92、フィーダ装置93、部品移載装置94、および部品カメラ95は、制御装置から制御され、それぞれが所定の作業を行うようになっている。
【0012】
基板搬送装置92は、回路基板Kを装着実施位置に搬入し位置決めし搬出する。基板搬送装置92は、第1および第2ガイドレール921、922、一対のコンベアベルト、およびクランプ装置などで構成されている。第1および第2ガイドレール921、922は、機台91の上部中央を横断して搬送方向(X軸方向)に延在し、かつ互いに平行するように機台91に組み付けられている。第1および第2ガイドレール921、922の向かい合う内側に、図略の無端環状の一対のコンベアベルトが並設されている。一対のコンベアベルトは、コンベア搬送面に回路基板Kの両縁をそれぞれ戴置した状態で輪転して、回路基板Kを機台91の中央部に設定された装着実施位置に搬入および搬出する。装着実施位置のコンベアベルトの下方には、図略のクランプ装置が設けられている。クランプ装置は、回路基板Kを押し上げて水平姿勢でクランプし、装着実施位置に位置決めする。これにより、部品移載装置94が装着実施位置で装着動作を行えるようになる。
【0013】
複数のフィーダ装置93は、それぞれ部品を順次供給する。フィーダ装置93は、上下方向(Z軸方向)および前後方向(Y軸方向)に広がり、幅方向(X軸方向)が薄い扁平形状である。複数のフィーダ装置93は、パレット部材931の上面の幅方向(X軸方向)に並べて搭載される。各フィーダ装置93は、本体部932と、本体部932の後部に設けられた供給リール933と、本体部932の前端に設けられた部品取出部934とを有している。供給リール933には多数の部品が所定ピッチで収納された図略の細長いテープが巻回保持されている。このテープが所定ピッチずつ繰り出され、部品が収納状態を解除されて部品取出部934に順次供給されるようになっている。なお、複数のフィーダ装置93の一部または全部を別方式の部品供給装置、例えば、トレー式部品供給装置に置き換えてもよい。
【0014】
部品移載装置94は、複数のフィーダ装置93の各部品取出部934から部品を吸着採取し、位置決めされた回路基板Kまで搬送して装着する。部品移載装置94は、X軸方向およびY軸方向に水平移動可能なXYロボットタイプの装置である。部品移載装置94は、一対のY軸レール941、942、Y軸スライダ943、装着ヘッド2、およびノズルツール3などで構成されている。一対のY軸レール941、942は、機台91の前後方向(Y軸方向)に延在して、基板搬送装置92およびフィーダ装置93の上方に配設されている。Y軸レール941、942上に、Y軸スライダ943がY軸方向に移動可能に装架されている。
【0015】
装着ヘッド2は、Y軸スライダ943上にX軸方向に移動可能に装架されている。装着ヘッド2は、2つのサーボモータによってX軸方向およびY軸方向に駆動される。装着ヘッド2は、本体21および下部22からなる。下部22を回転駆動する図略のR軸駆動機構、および、下部22をZ軸方向に昇降駆動する図略のZ軸駆動機構が本体21の内部に設けられている。したがって、下部22は、垂直方向に延びる軸線AXの回りに旋回駆動され、かつ本体21に対して昇降駆動される。なお、下部22が本体21に対して昇降するのでなく、装着ヘッド2の全体がY軸スライダ943に対して昇降する構成であってもよい。さらに、装着ヘッド2は、負圧エアおよび正圧エアを吸着ノズル31および後述するピストン機構25の加圧室253に供給するためのエア圧機構を本体21の内部に有する。
【0016】
ノズルツール3は、装着ヘッド2の下部22の下側に自動交換可能に保持される。ノズルツール3は、部品を吸着して回路基板Kに装着する吸着ノズル31を1本または複数本有する。ノズルツール3は複数種あり、例えば、大型シングルノズルツール、汎用4マルチノズルツール、および高速12マルチノズルツールの3種類を例示できる。装着ヘッド2に保持されていないノズルツール3は、第2ガイドレール922の近傍に配設されたツール載置台96上に並べて配置される。
図1において、ツール載置台96の上面に穴形状の載置位置961が4箇所設けられており、そのうちの2箇所にノズルツール3が載置されている。
【0017】
部品カメラ95は、基板搬送装置92とフィーダ装置93との間の機台91の上面に、上向きに設けられている。部品カメラ95は、装着ヘッド2がフィーダ装置93から回路基板K上に移動する途中で、吸着ノズル31に吸着されている部品の状態を撮像してするものである。部品カメラ95の撮像データによって部品の吸着姿勢の誤差や回転角のずれなどが判明すると、制御装置は、必要に応じて部品装着動作を微調整し、装着が困難な場合には当該の部品を廃棄する制御を行う。
【0018】
制御装置は、回路基板Kに装着する部品の種類および順序、当該の部品を供給するフィーダ装置93、ならびに当該の部品の装着動作に用いるノズルツール3を指定した装着シーケンスを保持している。制御装置は、部品カメラ95の撮像データおよび図略のセンサの検出データなどに基づき、装着シーケンスにしたがって部品装着動作を制御し、加えて、ノズルツール3の自動交換を制御する。また、制御装置は、生産完了した回路基板Kの生産数や、部品の装着に要した装着時間、部品の吸着エラーの発生回数などの稼動状況データを逐次収集して更新する。
【0019】
(2.ツール保持装置1およびノズルツール3の詳細構成)
次に、本発明の実施形態の部品実装機9のツール保持装置1、および実施形態の部品実装機9のノズルツール3の詳細構成について、
図2〜
図7を参考にして説明する。ツール保持装置1は、装着ヘッド2の下部22にノズルツール3を保持させるための装置である。
図2は、装着ヘッド2の下部22がノズルツール3を保持する途中の状態を側面方向のやや下側から見た外観図である。
図3は、
図2の状態を側面方向から見た部分断面図である。
図4は、装着ヘッド2の下部22を下から見上げた底面図である。ノズルツール3および装着ヘッド2の下部22は、垂直方向に延びる軸線AXの周りに概ね軸対称に形成されている。
【0020】
装着ヘッド2の下部22は、4組のフック部材24およびピストン機構25、ならびに図略のエア供給路などが略円筒状のハウジング23に配設されて構成されている。ハウジング23の底面は、圧接面231となっている。圧接面231の外周の数ヶ所に、下向きに突出した嵌合凸部232が設けられている。ハウジング23の圧接面231の外周よりも少し内側に、フック穴233が90°ピッチで4個形成されている。
【0021】
フック部材24は、ハウジング23の内部空間の外周よりも少し内側に、軸線AXを中心として90°ピッチで4個設けられている。フック部材24は、本発明の保持部材に相当し、
図3に示されるように側面視で略L字状に形成されている。詳述すると、フック部材24は、圧接面231のフック穴233を突き抜けて上下方向に延在する垂直部241と、垂直部241の下端から水平方向に屈曲された水平部245とからなる。4個のフック部材24の水平部245の屈曲方向は、
図4に示されるように、下から見て周方向の反時計回りに統一されている。垂直部241の上部寄りに、被駆動部242が設けられている。水平部245の上面に、ヘッド側テーパ溝4が形成されている。
【0022】
ピストン機構25は、各フック部材24に対応して4個設けられている。ピストン機構25は、本発明の保持駆動部に相当し、シリンダ251、ピストン252、付勢ばね255、および結合部材256などで構成されている。
図3に示されるように、シリンダ251は、上下方向に延びる筒状の閉空間をハウジング23の内部に区画する。ピストン252は、シリンダ251内の閉空間に昇降可能に収容されている。ピストン252は、側面断面視でH形に形成されている。ピストン252のH形の上側の空間は、加圧室253になっている。加圧室253には、図略のエア供給路から加圧エアおよび負圧エアが給排される。ピストン252のH形の下側の空間に、ピストン252を上方へ付勢する付勢ばね255が挿入されている。ピストン252の上部寄りに、水平方向に延びる結合部材256が固設されている。結合部材256は、フック部材24の被駆動部242にも固定されており、ピストン252とフック部材24を一体的に結合している。
【0023】
エア供給路を経由して加圧室253に正圧エアが供給されると、エア圧によってピストン252は下降駆動され、フック部材24も下降駆動される。加圧室253の正圧エアが排出されると、付勢ばね256の付勢力によってピストン252は上昇駆動され、フック部材24も上昇駆動される。このとき、加圧室253に負圧エアを供給することで(エアを抜いて負圧に低下させることで)、上昇駆動が迅速に行われる。4組のピストン機構25は、同じタイミングに動作してもよく、あるいは別々のタイミングに動作してもよい。
図2および
図3において、中央手前側に位置するフック部材24が上昇位置に上昇駆動され、左右に位置するフック部材24が下降位置に下降駆動された状態が例示されている。
【0024】
また、
図4に示されるように、ハウジング23の圧接面231の軸線AX上に、正負圧接続部26が形成されている。正負圧接続部26は、装着ヘッド2から吸着ノズル31へと負圧エアおよび正圧エアを切り替えて供給する正負エア供給路の接続部である。正負圧接続部26の周りに、軸線AXを中心として90°ピッチで4個の負圧接続部27が形成されている。負圧接続部27は、装着ヘッド2から吸着ノズル31へと負圧エアを供給する負圧エア供給路の接続部である。正負圧接続部26および負圧接続部27は、フック部材24よりも軸線AXに近い軸心側に配置されている。正負圧接続部26および負圧接続部27には、オーリングなどのシール部材が適宜用いられて気密が保たれる。ノズルツール3側のエア供給路は、正負圧接続部26および負圧接続部27の両方に接続されてもよいし、正負圧接続部26のみに接続されてもよい。
【0025】
さらに、ハウジング23の圧接面231の4個の負圧接続部27にそれぞれ近接して、4個の基準マーク28が付設されている。4個の基準マーク28は、軸線AXを中心とする円周上に配置され、かつフック部材24よりも軸心側に配置されている。4個の基準マーク28は、例えば部品カメラ95やその他の撮像装置に撮像されて画像処理が行われることで、軸線AXの正確な位置の検出を可能とする。
【0026】
実施形態のノズルツール3は、吸着ノズル31、取付部材34、および図略のエア供給路などが略円筒状のツール本体部32に配設されて構成されている。
図2および
図3において、ツール本体部32の下方に配設される吸着ノズル31は省略されている。取付部材34は、ツール本体部32よりも大径であって装着ノズル2のハウジング23と概ね同径の円板状であり、ツール本体部32の上側に固設されている。取付部材34の上面は、取付面341となっている。取付面341の外周の数ヶ所に、窪んだ嵌合凹部342が設けられている。装着ヘッド2側の嵌合凸部232が嵌合凹部342に嵌入することにより、装着ヘッド2とノズルツール3との粗い位置決めが行われる。取付部材34の外周よりも少し内側に、軸線AXを中心として90°ピッチで4個のフック穴343が形成されている。
【0027】
取付部材34の底面の外周よりも少し内側に、軸線AXを中心として90°ピッチで4個のツール側テーパ溝5が形成されている。4個のツール側テーパ溝5は、4個のフック部材24のヘッド側テーパ溝4にそれぞれ対向配置可能となっている。
図5は、ツール側テーパ溝5およびヘッド側テーパ溝4の構造例を説明する側面図である。
図5において、ノズルツール3側の取付面341が装着ヘッド2側の圧接面231に圧接されており、ノズルツール3が装着ヘッド2に位置決めされた保持状態が示されている。
【0028】
図5に示されるように、フック部材24の水平部245のヘッド側テーパ溝4は、2つの傾斜したテーパ溝側面41、42によって形成されている。2つのテーパ溝側面41、42の間の溝幅は、溝底でほぼゼロであり、溝開口に上昇するにつれて徐々に増加している。したがって、ヘッド側テーパ溝4は、断面V字状で、上方に広く開口する。また、ヘッド側テーパ溝4は、
図5の紙面表裏方向に延びている。
【0029】
一方、取付部材34の底面のツール側テーパ溝5は、2つの傾斜したテーパ溝側面51、52、および溝底面53によって形成されている。2つのテーパ溝側面51、52の傾斜度合いは、フック部材24側のテーパ溝側面41、42の傾斜度合いよりも垂直方向に急峻となっている。2つのテーパ溝側面51、52の間の溝幅は、溝底面53から溝開口に下降するにつれて徐々に増加している。したがって、ツール側テーパ溝5は、下方に広く開口する。また、ツール側テーパ溝5は、
図5の紙面表裏方向に延びている。
【0030】
ツール側テーパ溝5の中に、球体部材6が収容されている。球体部材6として、機械的強度が大きく耐摩耗性に優れた鋼球を例示でき、これに限定されない。球体部材6の直径はツール側テーパ溝5の溝開口の幅よりも小さいので、球体部材6の脱落を防止するために薄板状の脱落防止板35が用いられる。脱落防止板35は、球体部材6の直径よりもわずかに小さな幅の長孔351を有しており、この長孔351がツール側テーパ溝5の溝開口に重なるように配置される。脱落防止板35は、押えリング36を用いて取付部材34の下側の外周寄りに固定されている。なお、押えリング36は、
図2では透視されて示されている。
【0031】
球体部材6の下部は、重力の作用で常時は脱落防止板35の長孔351に嵌まり込んでおり、ツール側テーパ溝5の溝開口や長孔351よりも下方に突出している。
図5の保持状態に示されるように、球体部材6は、フック部材24のヘッド側テーパ溝4の2つのテーパ溝側面41、42によって押し上げられる。このとき、球体部材6は、ツール側テーパ溝5の内部を上方に移動してテーパ溝側面51、52に接触できるが、それ以上は上昇できず溝底面53には接触しない。また、球体部材6は、ツール側テーパ溝5の溝長さ方向(
図5の紙面表裏方向)に転動可能となっている。
【0032】
図6は、ツール側テーパ溝5およびヘッド側テーパ溝4の溝相互間の配置例を説明する平面図である。図中の軸線AXの位置からわかるように、ツール側テーパ溝5は、半径方向に真っ直ぐに延在している。一方、ヘッド側テーパ溝4は、ツール側テーパ溝5の下方位置にあり、屈曲して延在している。また、
図7は、
図6と同じ形状のツール側テーパ溝5および異なる形状のヘッド側テーパ溝4の溝相互間の配置例を説明する平面図である。
図7の配置例で、ヘッド側テーパ溝4は、ツール側テーパ溝5の下方位置にあり、斜行して延在している。
【0033】
上記したようにヘッド側テーパ溝4とツール側テーパ溝5とを互いに異形としたのは、旋回方向の自由度を確保するためである。つまり、装着ヘッド2の下部22とノズルツール3とが接近したときに旋回方向の角度誤差があっても、球体部材6は、ツール側テーパ溝5内を溝長さ方向に転動して、4つのテーパ溝側面41、42、51、52に接触する位置に移動できる。これにより、角度誤差の影響が補償される。また、各4個のヘッド側テーパ溝4およびツール側テーパ溝5が90°ピッチから多少ずれた製造上の角度誤差を有していても、同様に角度誤差の影響が補償される。
【0034】
(3.ツール保持動作)
次に、上述のように構成された実施形態の部品実装機9のツール保持装置1によるツール保持動作について説明する。ツール保持動作は、前述したように制御装置によって制御される。装着ヘッド2がツール載置台96上のノズルツール3を保持する場合、まず、装着ヘッド2は、当該のノズルツール3の上方まで駆動される。次に、各フック部材24がノズルツール3の取付部材34の各フック穴343の真上に位置するように、下部22の旋回方向の回転位相が調整される。
【0035】
3番目に、ピストン機構25によりフック部材24を下降位置に駆動した状態で、下部22が下降駆動される。これにより、フック部材24の水平部245は、ノズルツール3側のフック穴343を下方に突き抜ける。装着ヘッド2側の嵌合凸部232はノズルツール3側の取付面341に当接し、圧接面231と取付面341とが嵌合凸部232の高さ分の距離を残して接近する。4番目に、下部22が下からみて反時計回りに旋回駆動されると、嵌合凸部232と嵌合凹部342の回転位相が一致し、嵌合凸部232が嵌合凹部342に嵌入する。これにより、下部22はさらに下降駆動されて、圧接面231と取付面341とが当接する。このとき、各ヘッド側テーパ溝4は、各ツール側テーパ溝5の概ね真下に位置する。
【0036】
5番目に、ピストン機構25によりフック部材24が上昇駆動されると、ヘッド側テーパ溝4により球体部材6が押し上げられて、
図5に示される保持状態が達成される。このとき、球体部材6が位置している箇所でヘッド側テーパ溝4とツール側テーパ溝5との回転位相がずれていると、球体部材6は、ツール側テーパ溝5の溝長さ方向に転動し、4つのテーパ溝側面41、42、51、52に接触する位置に落ち着く。なお、4個のフック部材24の上昇駆動は、同じタイミングに行われてもよいし、別々のタイミングに順番に行われてもよい。
【0037】
保持状態において、球体部材6は、ヘッド側テーパ溝4から受ける上昇駆動力により、ツール側テーパ溝5の2つのテーパ溝側面51、52およびヘッド側テーパ溝4の2つのテーパ溝側面41、42に圧接される。これにより、旋回方向の位置決めが行われる。また、上昇駆動力は取付部材34に伝達され、取付面341が圧接面231に圧接される。これにより、高さ方向の位置決めが行われる。当該のノズルツール3を使用している間、4個のフック部材24の上昇位置が維持される。
【0038】
使用していたノズルツール3をツール載置台96に戻す場合には、概ね保持動作の逆の動作が行われる。略述すると、まず、装着ヘッド2がツール載置台96上に駆動され続いて下降駆動される。これにより、装着ヘッド2の下部22に保持されているノズルツール3は、ツール載置台96の空いた載置位置961に差し込まれる。次に、ピストン機構25によりフック部材24が下降駆動され、球体部材6のテーパ溝側面41、42、51、52への圧接が解除される。これにより、ノズルツール3は重力の作用で下降して、嵌合凸部232が嵌合凹部342から抜け出る。この後、下部22が下からみて時計回りに旋回駆動され、続いて上昇駆動される。これにより、フック部材24がノズルツール3側のフック穴343から上方に抜け出して、ノズルツール3が解放される。
【0039】
(4.実施形態の態様および効果)
実施形態の部品実装機9のツール保持装置1は、部品を吸着して回路基板Kに装着する吸着ノズル31をそれぞれ有する複数種のノズルツール3を、移動可能な装着ヘッド2に自動交換可能に保持するものであって、ノズルツール3は、2つのテーパ溝側面51、52により下方に広く開口するツール側テーパ溝5を4個有する取付部材34と、各ツール側テーパ溝5に移動可能にかつ脱落不能に収容された4個の球体部材6と、を備え、装着ヘッド2は、ノズルツール3の各ツール側テーパ溝5の下側にそれぞれ昇降可能に配置されるとともに2つのテーパ溝側面41、42により上方に広く開口するヘッド側テーパ溝4を有する4個のフック部材24(保持部材)と、各フック部材24を昇降駆動するピストン駆動部25(保持駆動部)と、を備え、ピストン駆動部25によりフック部材24が上昇駆動されたときに、球体部材6がツール側テーパ溝5の2つのテーパ溝側面51、52およびヘッド側テーパ溝4の2つのテーパ溝側面41、42に圧接され、ノズルツール3が装着ヘッド2に位置決めされて保持される。
【0040】
これによれば、4個の球体部材6がそれぞれ、ツール側テーパ溝5の2つのテーパ溝側面51、52およびヘッド側テーパ溝4の2つのテーパ溝側面41、42に圧接されることにより、ノズルツール3が装着ヘッド2に位置決めされて保持される。このため、4箇所で球体部材6と合計4つのテーパ溝側面41、42、51、52との圧接により安定した位置決めが行われる。かつ、小さな爪部でなくテーパ溝側面41、42、51、52を位置決めに用いるので繰り返し精度が維持され、さらには外力の作用する方向の差異に対しても安定性が高い。したがって、ノズルツール3の位置誤差の増加を抑制でき、回路基板K上の実装精度の維持および向上に貢献できる。
【0041】
さらに、実施形態の部品実装機9のツール保持装置1において、ノズルツール3の取付部材34は、上側に取付面341を有し、装着ヘッド2は、取付面341に対向する圧接面231を有し、球体部材6が押し上げられると、取付面341が圧接面231に圧接されることによってノズルツール3が装着ヘッド2に位置決めされる。これによれば、大径の取付面341と圧接面231との圧接による高さ方向の位置決めが行われるので、ノズルツール3の高さ位置および水平姿勢が安定する。
【0042】
さらに、実施形態の部品実装機9のツール保持装置1において、フック部材24は、取付面341および圧接面231を突き抜けて上下方向に延在するとともに、その下端から水平方向に屈曲された水平部245にヘッド側テーパ溝4が形成されており、取付面341を圧接面231に当接または接近させた後に、ノズルツール3に対して装着ヘッド2の下部22が水平方向に相対回転すると、ヘッド側テーパ溝4がツール側テーパ溝5の下側に位置する。これによれば、従来から装着ヘッド2の下部22に付与されていた旋回機能と、フック部材24の昇降機能との組み合わせにより、ノズルツール3の自動交換機能が容易に実現される。
【0043】
さらに、実施形態の部品実装機9のツール保持装置1において、ノズルツール3およびノズルツール3を保持する装着ヘッド2の下部22は、垂直方向に延びる軸線AXの周りに概ね軸対称に形成されており、ツール側テーパ溝5は、半径方向に延在し、ヘッド側テーパ溝4は、ツール側テーパ溝5に対し屈曲して延在し、あるいは、ツール側テーパ溝5に対し斜行して延在する。これによれば、装着ヘッド2の下部22とノズルツール3との間に動作時の旋回方向の角度誤差や製造上の角度誤差があっても、球体部材6は、ツール側テーパ溝5内を溝長さ方向に転動して、4つのテーパ溝側面41、42、51、52に接触する位置に移動できる。したがって、角度誤差の影響が補償され、ノズルツール3の旋回方向の回転位相が安定する。
【0044】
さらに、実施形態の部品実装機9のツール保持装置1において、ノズルツール3およびノズルツール3を保持する装着ヘッド2の下部22は、垂直方向に延びる軸線AXの周りに概ね軸対称に形成されており、負圧エアおよび正圧エアの少なくとも一方を吸着ノズルに供給可能なエア供給路の正負圧接続部27および負圧接続部28を球体部材6およびフック部材24よりも軸心側に有する。これによれば、軸線AXから離れた外周寄りに球体部材6およびフック部材24が配置されて旋回方向の位置決めが安定して行われるとともに、空いた軸心側を利用して負圧エアおよび正圧エアが供給されるので、合理的な構造が実現される。
【0045】
さらに、実施形態の部品実装機9のツール保持装置1において、ノズルツール3を保持する装着ヘッド2の下部22は、垂直方向に延びる軸線AXの周りに概ね軸対称に形成されており、軸線AXの位置を検出可能とする基準マーク28をフック部材24よりも軸心側に有する。これによれば、軸線AXから離れた外周寄りに球体部材6およびフック部材24が配置されて旋回方向の位置決めが安定して行われるとともに、空いた軸心側に基準マーク28が配置されて撮像により軸線AXの正確な位置が検出されるので、合理的な構造が実現される。
【0046】
また、実施形態の部品実装機9のノズルツール3は、部品を吸着して回路基板Kに装着する吸着ノズル31を有し、移動可能な装着ヘッド2に自動交換可能に保持されるものであって、2つのテーパ溝側面51、52により下方に広く開口するツール側テーパ溝5を4個有する取付部材34と、各ツール側テーパ溝5に移動可能にかつ脱落不能に収容された4個の球体部材6と、を備える一方で、装着ヘッド2は、ノズルツール3の各ツール側テーパ溝5の下側にそれぞれ昇降可能に配置されるとともに2つのテーパ溝側面41、42により上方に広く開口するヘッド側テーパ溝4を有する4個のフック部材24(保持部材)と、各フック部材24を昇降駆動するピストン駆動部25(保持駆動部)と、を備え、ピストン駆動部25によりフック部材24が上昇駆動されたときに、球体部材6がツール側テーパ溝5の2つのテーパ溝側面51、52およびヘッド側テーパ溝4の2つのテーパ溝側面41、42に圧接されることにより、装着ヘッド2に位置決めされて保持される。
【0047】
実施形態の部品実装機9のノズルツール3によれば、実施形態の部品実装機9のツール保持装置1と同様に位置誤差の増加を抑制して、回路基板K上の実装精度の維持および向上に貢献できる。
【0048】
(5.実施形態の応用および変形)
なお、実施形態において、フック部材24、ピストン機構25、ヘッド側テーパ溝4、ツール側テーパ溝5、および球体部材6などは4組設けられているが、これに限定されない。例えば、これらの部位24、25、4、5、6は、軸線AXの周りに120°ピッチで3組配設されてもよい。また例えば、複数のフック部材24に対してピストン機構25を共通化してもよい。さらになお、ヘッド側テーパ溝4およびツール側テーパ溝5の溝形状や溝相互間の配置も、実施形態に限定されない。例えば、装着ヘッド2側のテーパ溝側面41、42と、ノズルツール3側のテーパ溝側面51、52とで、傾斜度合いを一致させてもよい。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1:ツール保持装置
2:装着ヘッド 21:本体 22:下部 23:ハウジング
231:圧接面 24:フック部材(保持部材) 241:垂直部
245:水平部 25:ピストン機構(保持駆動部) 26:正負圧接続部
27:負圧接続部 28:基準マーク
3:ノズルツール 31:吸着ノズル 32:ツール本体部 34:取付部材
341:取付面 35:脱落防止板 36:押えリング
4:ヘッド側テーパ溝 41、42:テーパ溝側面
5:ツール側テーパ溝 51、52:テーパ溝側面 53:溝底面
6:球体部材
9:部品実装機 91:機台 92:基板搬送装置 93:フィーダ装置
94:部品移載装置 95:部品カメラ 96:ツール載置台
K:回路基板 AX:軸線