(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者が鋭意検討したところ、特許文献1〜3に記載の技術では、二軸押出機を使用して、充填材含有ゴム凝固物を脱水・乾燥してゴムウエットマスターバッチを製造するため、ゴムウエットマスターバッチに付与される機械的エネルギーが大きくなり、ゴム成分の劣化を引き起こす傾向があり、最終的な加硫ゴムの耐引裂性能や高歪領域での応力特性が悪化する傾向があることが判明した。
【0008】
なお、特許文献1および3に記載の技術では、使用する二軸押出機のスクリュー形状については特に言及がなく、工夫されたものではない。同様に、特許文献2に記載の技術でも、使用する単軸押出機のスクリュー形状については特に言及がない。特許文献4については、単軸押出機のスクリュー空間容積比には言及があるが、スクリュー谷部分の深さについては言及がない。ところで、充填剤含有ゴム凝固物の脱水・乾燥時に使用する単軸押出機のスクリュー形状について本発明者らが鋭意検討した結果、使用するラテックス種類やカーボンブラック種類、さらには混合比などにより、スクリュー形状を変更することで、最適な充填剤含有ゴム凝固物の脱水・乾燥物を製造できることが判明した。しかしながら、配合毎に単軸押出機のスクリュー形状を変更することは、多くのスクリューを製作する必要もあり、生産コストの増大に繋がるのが実情であった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゴムの劣化が抑制され、ゴム物性、特に低発熱性と耐疲労性に優れたゴムウエットマスターバッチを効率良く製造する方法、および該製造方法で製造されたゴムウエットマスターバッチ、ならびに該ゴムウエットマスターバッチを含有するゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明は、少なくとも充填材、分散溶媒、およびゴムラテックス溶液を原料として得られたゴムウエットマスターバッチの製造方法であって、前記充填材および前記分散溶媒を含有するスラリー溶液と前記ゴムラテックス溶液とを混合・凝固させて、充填材含有ゴム凝固物を製造する凝固工程と、単軸押出機を使用して、前記充填材含有ゴム凝固物の脱水・乾燥・可塑化を一工程で行う加熱工程と、を有し、前記単軸押出機は、山部および谷部を少なくとも有するスクリューと、前記スクリューに面する内壁面を有し、前記スクリューを収容する外筒とを備えるものであり、前記単軸押出機に投入する際の前記充填材含有ゴム凝固物の粒径をDc、前記スクリューの谷部底面から前記外筒の前記内壁面までのクリアランスをH2としたとき、0.2≦H2/Dc≦12を満たすこと特徴とするゴムウエットマスターバッチの製造方法、に関する。
【0011】
上記製造方法によれば、充填材および分散溶媒を含有するスラリー溶液とゴムラテックス溶液とを混合・凝固させて、充填材含有ゴム凝固物を製造し(凝固工程)、かかるゴム凝固物の脱水・乾燥・可塑化を一工程で行う(加熱工程)。したがって、脱水・乾燥・可塑化をそれぞれ行う従来技術に比べて加熱工程数が減るため、ゴムの劣化が抑制され、ゴム物性、特に低発熱性と耐疲労性に優れたゴムウエットマスターバッチを製造することができる。かかる加熱工程では、山部および谷部を少なくとも有するスクリューと、スクリューに面する内壁面を有し、スクリューを収容する外筒とを備える単軸押出機を使用する。
【0012】
上記製造方法では、単軸押出機に投入する際の充填材含有ゴム凝固物の粒径をDc、スクリューの谷部底面から外筒の内壁面までのクリアランスをH2としたとき、0.2≦H2/Dc≦12を満たす。単軸押出機では、使用するスクリューは少なくとも山部と谷部とを有し、スクリュー長さ方向では谷部の割合が山部の割合よりも大きいことが一般的である。本発明においては、単軸押出機に投入する際の充填材含有ゴム凝固物の粒径Dcと、スクリューの谷部底面から外筒の内壁面までのクリアランスH2とを所定の関係に設定することにより、特殊な形状を有するスクリューを配合毎に製作、変更することなく、ゴムの劣化が抑制され、ゴム物性、特に低発熱性と耐疲労性に優れたゴムウエットマスターバッチを効率良く製造することができる。
【0013】
上記製造方法において、前記単軸押出機に前記充填材含有ゴム凝固物を投入する速度を一定にしたものであることが好ましい。かかる構成によれば、谷部内に充填される充填剤含有凝固物の量が略一定となり、付与されるせん断力も略一定となる。これにより、充填剤含有凝固物の水分量を安定的に低下させることができる。
【0014】
上記製造方法において、前記単軸押出機に投入する前記充填材含有ゴム凝固物の水分率を10%以上とすることが好ましい。単軸押出機に投入する前の充填材含有ゴム凝固物の水分率が低いと固くなり、単軸押出機内でせん断力が十分に作用しなくなり、結果として水分率の低下幅が小さくなる可能性がある。
【0015】
本発明は、前記いずれかに記載の製造方法で製造されたゴムウエットマスターバッチに関し、特には、前記ゴムウエットマスターバッチを含有するゴム組成物に関する。かかるゴムウエットマスターバッチおよびゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムは、ゴムの劣化が抑制され、ゴム物性、特に低発熱性と耐疲労性に優れる。そのため、上記物性が重要な特性である部材、例えば、トレッド、プライ、ビードフィラー、サイドウォール、ベルト等に好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るゴムウエットマスターバッチの製造方法では、凝固工程および加熱工程を少なくとも有する。以下に各工程について説明する。
【0018】
(凝固工程)
凝固工程においては、充填材および分散溶媒を含有するスラリー溶液とゴムラテックス溶液とを混合・凝固させて、充填材含有ゴム凝固物を製造する。特に、凝固工程が、充填材を分散溶媒中に分散させる際に、ゴムラテックス溶液の少なくとも一部を添加することにより、ゴムラテックス粒子が付着した充填材を含有するスラリー溶液を製造する工程(I)と、スラリー溶液と、残りのゴムラテックス溶液とを混合して、ゴムラテックス粒子が付着した充填材含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(II)と、ゴムラテックス粒子が付着した充填材含有ゴムラテックス溶液を凝固して、充填材含有ゴム凝固物を製造する工程(III)と、を有することが好ましい。
【0019】
本発明において、充填材とは、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウムなど、ゴム工業において通常使用される無機充填材を意味する。上記無機充填材の中でも、本発明においてはカーボンブラックを特に好適に使用することができる。
【0020】
カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、通常のゴム工業において、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。
【0021】
分散溶媒としては、特に水を使用することが好ましいが、例えば有機溶媒を含有する水であってもよい。
【0022】
ゴムラテックス溶液としては、天然ゴムラテックス溶液および合成ゴムラテックス溶液を使用することができる。
【0023】
天然ゴムラテックス溶液は、植物の代謝作用による天然の生産物であり、特に分散溶媒が水である、天然ゴム/水系のものが好ましい。本発明において使用する天然ゴムラテックス中の天然ゴムの数平均分子量は、200万以上であることが好ましく、250万以上であることがより好ましい。合成ゴムラテックス溶液としては、例えばスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムを乳化重合により製造したものがある。
【0024】
以下に、充填材としてカーボンブラック、ゴムラテックス溶液として、天然ゴムラテックス溶液を使用した例に基づき、好ましい凝固工程の一例を説明する。この場合、カーボンブラックの分散度合いが非常に高く、かつ加硫ゴムとしたときの低発熱性能、耐久性能およびゴム強度をさらに向上したゴムウエットマスターバッチを製造することができる。また天然ゴムラテックスについては濃縮ラテックスやフィールドラテックスといわれる新鮮ラテックスなど区別なく使用できる。
【0025】
(1)工程(I)
工程(I)では、カーボンブラックを分散溶媒中に分散させる際に、天然ゴムラテックス溶液の少なくとも一部を添加することにより、天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラックを含有するスラリー溶液を製造する。天然ゴムラテックス溶液は、あらかじめ分散溶媒と混合した後、カーボンブラックを添加し、分散させても良い。また、分散溶媒中にカーボンブラックを添加し、次いで所定の添加速度で、天然ゴムラテックス溶液を添加しつつ、分散溶媒中でカーボンブラックを分散させても良く、あるいは分散溶媒中にカーボンブラックを添加し、次いで何回かに分けて一定量の天然ゴムラテックス溶液を添加しつつ、分散溶媒中でカーボンブラックを分散させても良い。天然ゴムラテックス溶液が存在する状態で、分散溶媒中にカーボンブラックを分散させることにより、天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラックを含有するスラリー溶液を製造することができる。工程(I)における天然ゴムラテックス溶液の添加量としては、使用する天然ゴムラテックス溶液の全量(工程(I)および工程(II)で添加する全量)に対して、0.075〜12質量%が例示される。
【0026】
工程(I)では、添加する天然ゴムラテックス溶液の固形分(ゴム)量が、カーボンブラックとの質量比で0.25〜15%であることが好ましく、0.5〜6%であることが好ましい。また、添加する天然ゴムラテックス溶液中の固形分(ゴム)濃度が、0.2〜5質量%であることが好ましく、0.25〜1.5質量%であることがより好ましい。これらの場合、天然ゴムラテックス粒子をカーボンブラックに確実に付着させつつ、カーボンブラックの分散度合いを高めたゴムウエットマスターバッチを製造することができる。
【0027】
工程(I)において、天然ゴムラテックス溶液存在下でカーボンブラックおよび分散溶媒を混合する方法としては、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機を使用してカーボンブラックを分散させる方法が挙げられる。
【0028】
上記「高せん断ミキサー」とは、ローターとステーターとを備えるミキサーであって、高速回転が可能なローターと、固定されたステーターと、の間に精密なクリアランスを設けた状態でローターが回転することにより、高せん断作用が働くミキサーを意味する。このような高せん断作用を生み出すためには、ローターとステーターとのクリアランスを0.8mm以下とし、ローターの周速を5m/s以上とすることが好ましい。このような高せん断ミキサーは、市販品を使用することができ、例えばSILVERSON社製「ハイシアーミキサー」が挙げられる。
【0029】
本発明においては、天然ゴムラテックス溶液存在下でカーボンブラックおよび分散溶媒を混合し、天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラックを含有するスラリー溶液を製造する際、カーボンブラックの分散性向上のために界面活性剤を添加しても良い。界面活性剤としては、ゴム業界において公知の界面活性剤を使用することができ、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤などが挙げられる。また、界面活性剤に代えて、あるいは界面活性剤に加えて、エタノールなどのアルコールを使用しても良い。ただし、界面活性剤を使用した場合、最終的な加硫ゴムのゴム物性が低下することが懸念されるため、界面活性剤の配合量は、天然ゴムラテックス溶液の固形分(ゴム)量100質量部に対して、2質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、実質的に界面活性剤を使用しないことが好ましい。また、工程(I)および工程(II)で天然ゴムラテックス溶液の固形分(ゴム)の劣化を抑制するために老化防止剤を添加しても良い。老化防止剤としては、ゴム業界において公知の老化防止剤を使用することができ、例えばアミン系、フェノール系、有機ホスファイト系あるいはチオエーテル系などが挙げられる。
【0030】
工程(I)において製造されるスラリー溶液中、天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラックは、90%体積粒径(μm)(「D90」)が、31μm以上であることが好ましく、35μm以上であることがより好ましい。この場合、スラリー溶液中のカーボンブラックの分散性に優れ、かつカーボンブラックの再凝集を防止することができるため、スラリー溶液の保存安定性能に優れると共に、最終的な加硫ゴムの低発熱性能、耐久性能およびゴム強度にも優れる。なお、本発明において天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラックのD90は、カーボンブラックに加えて、付着した天然ゴムラテックス粒子も含めて測定した値を意味するものとする。
【0031】
(2)工程(II)
工程(II)では、スラリー溶液と、残りの天然ゴムラテックス溶液とを混合して、天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を製造する。スラリー溶液と、残りの天然ゴムラテックス溶液とを液相で混合する方法は特に限定されるものではなく、スラリー溶液および残りの天然ゴムラテックス溶液とを高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機を使用して混合する方法が挙げられる。必要に応じて、混合の際に分散機などの混合系全体を加温してもよい。
【0032】
残りの天然ゴムラテックス溶液は、次工程(III)での乾燥時間・労力を考慮した場合、工程(I)で添加した天然ゴムラテックス溶液よりも固形分(ゴム)濃度が高いことが好ましく、具体的には固形分(ゴム)濃度が10〜60質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。
【0033】
(3)工程(III)
工程(III)では、天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を凝固させて、充填材含有ゴム凝固物を製造する。凝固方法としては、例えば天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液中に凝固剤を含有させて、凝固させる方法が挙げられる。
【0034】
凝固工程で使用する凝固剤としては、ゴムラテックス溶液の凝固用として通常使用されるギ酸、硫酸などの酸や、塩化ナトリウムなどの塩を使用することができる。
【0035】
工程(III)後に得られる充填材含有ゴム凝固物中、ゴム成分と充填材との割合は、ゴム100質量部(固形分)に対して充填材を10〜110質量部含有することが好ましい。この場合、最終的に、充填材の分散度合いと、加硫ゴムとしたときの低発熱性能および耐久性能とを、バランス良く向上したゴムウエットマスターバッチを製造することができる。
【0036】
本発明においては、単軸押出機に投入する際の充填材含有ゴム凝固物の粒径をDc、スクリューの谷部底面から外筒の内壁面までのクリアランスをH2としたとき、0.2≦H2/Dc≦12を満たすことが特徴であり、H2/Dcを所定の関係に調整するため、Dcを制御する必要がある。H2/Dc>12であると、谷部内に存在する充填材含有ゴム凝固物にせん断力が殆ど作用せず、充填材含有ゴム凝固物の水分率が十分に低下しない場合がある。一方、H2/Dc<0.2であると、外筒の内壁面と充填材含有ゴム凝固物との摩擦が過剰に大きくなり、該内壁面由来の異物が混入する、あるいは単軸押出機への負荷が大きくなり過ぎて加熱工程の停止を余儀なくされる場合がある。DcはJIS Z−8801の規定に準拠して決定され、低発熱性と耐疲労性に優れたゴムウエットマスターバッチを効率良く製造するために、Dcは0.5〜100mmであることが好ましく、1〜50mmであることがより好ましい。
【0037】
充填材含有ゴム凝固物の粒径Dcを一定に制御する方法は特に限定されないが、例えば工程(II)において、天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液に強力なせん断力を加えることで生成させることができる。具体的には、ブレード型の羽根からなるチョッパーのように、混合液に対して主にせん断力を与えるせん断羽根を使用し、これを混合液中で高速で回転(周速10m/s以上)させて強力なせん断力を発生させる。
【0038】
なお、せん断羽根であっても、適当な大きさとした上で高速で回転させることにより、混合液の攪拌は十分に可能となるが、混合液に対して主として推力を与えるプロペラ型等の撹拌羽根とは異なるものである。混合液に強力なせん断力をかけることにより粒度の細かい凝固物が生成する理由については、混合液に強力なせん断力を加えると、混合液中で凝固物の核が多数生成する。そして、生成した核を中心に凝固物の成長が均等に進行するため、微細で粒状の凝固物を得ることができるためと推測される。
【0039】
このとき、せん断羽根の大きさが重要となる。すなわち、混合液に衝撃を与え得る速さでせん断羽根を回転させても、羽根が小さい場合には、混合液の一部にしかせん断羽根の衝撃力が及ばないため、初期に生成する凝固物の核の数が少なくなる。そうすると、初期に生成した凝固物は、後から生成した凝固物よりも成長が早くなり、凝固物の大きさが粒状から塊状までばらつく。したがって、せん断羽根の大きさに留意して混合液を撹拌することにより、粒径0.5〜100mmである凝固物を得ることができる。
【0040】
(加熱工程)
加熱工程では、単軸押出機を使用して、例えば180〜200℃に加熱することによって、充填材含有ゴム凝固物の脱水・乾燥・可塑化を一工程で行う。
図1に本発明で使用可能な単軸押出機の一例を示す。
【0041】
単軸押出機20は、スクリュー23と、供給口29側(上流側)に位置する第一外筒25および排出口30側(下流側)に位置する第二外筒26からなる外筒27と、を有し、凝固工程後に得られた充填材含有ゴム凝固物は供給口29から投入され、外筒長さ方向(スクリュー軸方向)1に沿って、混練されつつ進み、最終的に排出口30から排出される。上流側部分は脱水部21とも呼ばれ、下流側部分は乾燥部(エクスパンダー部)22とも呼ばれる。乾燥部22には、必要に応じてジャケット28を設けて温調しても良い。かかる単軸押出機の外筒(バレル)の長さ(L)・外筒径(D)は、通常のゴム業界で使用される任意の単軸押出機が使用可能であり、さらには外筒長さと外筒径との比率(L/D)も任意に設定可能である。
【0042】
外筒27の内壁面には、外筒長さ方向1に沿って延びるスリット24を有しても良い。スリット24のスリット幅としては、例えば0.1〜2.0mmのものが例示される。スリット24は、外筒長さ方向1に沿って連続的に延びるものであっても良く、断続的に延びるものであっても良い。また、外筒内壁面に形成するスリット24として、外筒内壁面からスリット深さ方向に向かって、スリット幅が一定でのままで形成されたものでも良く、スリット幅が狭くなるように形成されたものでも良い。
【0043】
図2において、本発明において使用可能な単軸押出機の内部説明図の一例を示す。単軸押出機20が備えるスクリュー23の形状は、スクリュー23の谷部32底面から外筒27の内壁面までのクリアランスをH2としたとき、0.2≦H2/Dc≦12を満たすものであれば、任意の形状を採用し得る。
図2に示す例では、スクリュー23はスクリュー軸から外筒27の内壁面に向かって突出した山部31と、山部31間に位置する谷部32とを有する。一般に、外筒長さ方向において、山部31の長さL1の合計nL1と谷部32の長さL2の合計nL2とではnL2の方が長いため、充填材含有ゴム凝固物40は単軸押出機内部を通過する際、谷部32においてより多くのせん断力が付与される。したがって、本発明においては、単軸押出機に投入する際の充填材含有ゴム凝固物40の粒径Dcと、スクリュー23の谷部32底面から外筒27の内壁面までのクリアランスH2とを所定の関係に設定することにより、充填材含有ゴム凝固物40に付与されるせん断力を好適に調整することができる。
【0044】
スクリュー23の谷部32底面から外筒の内壁面までのクリアランスH2は、例えば0.5〜90mmのものが例示される。一方、スクリュー23の山部31頂面から外筒27の内壁面までのクリアランスH1は、例えば1〜10mmのものが例示される。
【0045】
本発明に係るゴムウエットマスターバッチの製造方法では、加熱工程に引き続いて、混練工程および加硫系配合剤混練工程を実施して、ゴムウエットマスターバッチに各種配合剤を混合し、ゴム組成物を製造することができる。
【0046】
(混練工程)
加熱工程後に得られたゴムウエットマスターバッチに、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤、シリカ、シランカップリング剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤など、加硫系配合剤以外の配合剤を投入し、混合分散機を使用して練る工程。混練工程において、これらの配合剤がゴム成分に混ざることにより、加硫後のゴム製品の強度を高める、ゴムの混練加工性能を良好なものとする、ゴム分子鎖の切断により生じたラジカルに起因するゴムの劣化を防止する、などの効果が得られる。混練工程においても、噛合式バンバリーミキサー、接線式バンバリーミキサー、ニーダーなどが使用可能であり、特に噛合式バンバリーミキサーを使用することが好ましい。
【0047】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。老化防止剤の含有量は、ゴムウエットマスターバッチのゴム成分(固形分)100質量部に対して、0.3〜3質量部であることがより好ましく、0.5〜1.5質量部であることがさらに好ましい。
【0048】
(加硫系配合剤混練工程)
混練工程後に得られたゴム組成物に、硫黄などの加硫剤や加硫促進剤といった加硫系配合剤を投入し、全体を練り混ぜる。加硫系配合剤混練工程後に得られたゴム組成物を所定温度以上に加熱すると、ゴム組成物中の加硫剤はゴム分子と反応し、ゴム分子間に橋架け構造を形成して分子が三次元ネットワーク化し、ゴム弾性が付与される。
【0049】
硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。本発明に係るゴム組成物中の硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して1.5〜5.5質量部であることが好ましい。硫黄の含有量が1.5質量部未満であると、加硫ゴムの架橋密度が不足してゴム強度などが低下し、5.5質量部を超えると、特に耐熱性能および耐久性能の両方が悪化する。加硫ゴムのゴム強度を良好に確保し、耐熱性能と耐久性能をより向上するためには、硫黄の含有量がゴム成分100質量部に対して2.0〜4.5質量部であることがより好ましい。
【0050】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して1〜5質量部であることがより好ましく、1.5〜4質量部であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0051】
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。使用原料および使用装置は以下のとおりである。
【0052】
(使用原料)
a)カーボンブラック
カーボンブラック「N330」;「シースト3」(東海カーボン社製)
カーボンブラック「N110」;「シースト9」(東海カーボン社製)
カーボンブラック「N774」;「シーストSO」(東海カーボン社製)
b)分散溶媒 水
c)ゴムラテックス溶液
天然ゴム濃縮ラテックス溶液;Golden Hope社製((DRC(Dry Rubber Content))=31.2%に常温で水を加えてゴム成分25質量%に調整したもの
d)凝固剤 ギ酸(一級85%、10%溶液を希釈して、pH1.2に調整したもの)、(ナカライテスク社製)
e)亜鉛華 3号亜鉛華 (三井金属社製)
f)ステアリン酸 「ルナックS−20」、(花王社製)
g)ワックス 「OZOACE0355」、(日本精蝋社製)
h)老化防止剤
老化防止剤(A) 芳香族アミン系:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン「6PPD」、(モンサント社製)、融点44℃
老化防止剤(B) 2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体「RD」、(大内新興化学社製)、融点80〜100℃
i)硫黄 「5%油入微粉末硫黄」、(鶴見化学工業社製)
j)加硫促進剤
加硫促進剤(A) N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド「サンセラーCM」(三新化学工業社製)
加硫促進剤(B)1,3−ジフェニルグアニジン「ノクセラーD」(大内新興化学社製)
【0053】
(評価)
評価は、各ゴム組成物を所定の金型を使用して、150℃で30分間加熱、加硫して得られたゴムについて行った。
【0054】
(充填材含有ゴム凝固物の水分率)
JIS K6238−2に準拠し、A&D社製加熱乾燥式水分計MX−50を使用して測定した。
【0055】
(充填材含有ゴム凝固物の粒径)
JIS Z−8815−1994に準拠してふるい分け試験を行い、粒子群の粒径分布を測定した。次いで、ふるいの目開きごとのふるい上百分率を、最大目開きから順に加算することにより得られた積算ふるい上百分率が90%となる目開きを算出した。積算ふるい上百分率が90%となる目開きを粒径ということとし、かかる粒径を表1〜2に示す。
【0056】
(異物混入の評価)
単軸押出機にかかる負荷の評価として使用(単軸押出機への負荷が大きいと、乾燥した充填材含有ゴム凝固物との摩擦により、外筒の内壁面の一部が削り取られ、金属粉が異物として混入する)。評価は、脱水・乾燥・可塑化工程後に製造されたマスターバッチを目視にて観察し、金属粉の有無を評価した。
【0057】
(加硫ゴムの発熱性)
JIS K6265に準じて、製造した加硫ゴムの発熱性を、損失正接tanδにより評価した。評価は、UBM社製レオスペクトロメーターE4000使用し、50Hz、80℃、動的歪2%の条件で測定し、比較例1の結果を100として指標化した。数値が小さいほど発熱性が低く良好であることを意味する。
【0058】
(加硫ゴムの耐疲労性)
JIS K6260に準じて測定し、比較例1の結果を100として指標化した。数値が大きいほど耐疲労性が高く良好であることを意味する。
【0059】
実施例1
0.5質量%に調整した希薄天然ゴムラテックス溶液にカーボンブラック50質量部を添加し(ラテックス溶液の固形分量(ゴム量)が、カーボンブラックとの質量比で1質量部)、これにPRIMIX社製ロボミックスを使用してカーボンブラックを分散させることにより(該ロボミックスの条件:9000rpm、30分 )、天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有スラリー溶液を製造した(工程(I))。
【0060】
次に、工程(I)で製造された天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有スラリー溶液に、残りの天然ゴム濃縮ラテックス溶液(固形分(ゴム)濃度25質量%となるように水を添加して調整されたもの)を、工程(I)で使用した天然ゴムラテックス溶液と合わせて、固形分(ゴム)量で100質量部となるように添加した後、SANYO社製家庭用ミキサーSM−L56型を使用して混合し(該ミキサーの条件:11300rpm、30分) 、天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有天然ゴムラテックス溶液を製造した(工程(II))。
【0061】
(凝固工程)
工程(II)で製造された天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有天然ゴムラテックス溶液に対し、凝固剤としてギ酸10質量%水溶液をpH4に成るまで添加して、カーボンブラック含有天然ゴム凝固物を製造した(工程(III))。
【0062】
(加熱工程)
図1〜
図2に記載のスクイザー式単軸押出機[(スエヒロEPM社製、品番V−02型)、バレル径90mm、(バレル長さ)/(バレル径)(L/D)=8.6、外筒27内壁面でのスリット幅(スクリュー軸方向上流側におけるスリット幅=0.9mm、スクリュー軸方向下流側におけるスリット幅=0.7mm)、スクリュー23形状;スクリュー23の山部31と外筒27の内壁面とのクリアランスH1=5mm、スクリュー23の谷部32と外筒27の内壁面とのクリアランスH2=15mm]を使用し、加熱温度200℃(加熱式スクリューの加熱温度200℃)に設定した状態で、工程(III)で得られたカーボンブラック含有天然ゴム凝固物(粒径Dc=3.0mm)を単軸押出機に投入し、混練しつつ脱水・乾燥・可塑化を一工程で行った。
【0063】
(混練工程および加硫系配合剤混練工程)
得られた天然ゴムウエットマスターバッチに対し、B型バンバリーミキサー(神戸製鋼社製)を使用し、表1および表2に記載の各種添加剤を配合してゴム組成物とし、その加硫ゴムの物性を測定した。結果を表1および表2に示す。
【0064】
比較例1
ゴムウエットマスターバッチに代えてドライマスターバッチを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法によりゴム組成物および加硫ゴムを製造した。
【0065】
実施例2〜11、比較例2〜9
H2/Dc、カーボンブラック含有天然ゴム凝固物の投入速度および水分率、またはカーボンブラック種および配合量を変更したこと以外は実施例1と同様の方法によりゴム組成物および加硫ゴムを製造した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
表1および表2の結果から、実施例1〜11に係るゴムウエットマスターバッチ含有ゴム組成物の加硫ゴムは、低発熱性と耐疲労性に優れることがわかる。