特許第6378071号(P6378071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6378071複合体の製造方法、複合体、ゴム組成物および空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378071
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】複合体の製造方法、複合体、ゴム組成物および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20180813BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20180813BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20180813BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   C08J3/20 BCEQ
   C08L21/00
   C08K3/04
   B60C1/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-254187(P2014-254187)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-113558(P2016-113558A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島 英樹
【審査官】 芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−219593(JP,A)
【文献】 特開2012−092166(JP,A)
【文献】 特開2005−075900(JP,A)
【文献】 特開2005−220187(JP,A)
【文献】 特開平02−167353(JP,A)
【文献】 特開平11−172052(JP,A)
【文献】 特開平10−007841(JP,A)
【文献】 特開2013−204010(JP,A)
【文献】 特開2010−106144(JP,A)
【文献】 特開2004−231747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−28
C08L
C08K
B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質物質、カーボンブラックおよび溶媒を混合することにより混合液を得る工程と、
前記混合液およびゴムラテックスを混合することにより混合ラテックスを得る工程と、
前記混合ラテックスに酸を添加する工程とを含み、
前記混合液を得る工程で、前記カーボンブラックが、前記多孔質物質の細孔に侵入する、
複合体の製造方法。
【請求項2】
前記多孔質物質の平均粒径が0.3mm以上である、請求項1に記載の複合体の製造方法。
【請求項3】
前記ゴムラテックスは天然ゴムラテックスである請求項1または2に記載の複合体の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒が水を含む請求項1〜3のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項5】
前記多孔質物質の平均粒径は1mm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項6】
前記混合液がスラリー状をなす請求項1〜5のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られた複合体。
【請求項8】
請求項7に記載の複合体を含むゴム組成物。
【請求項9】
タイヤ用途の請求項8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
請求項8または9に記載のゴム組成物を用いて得られた空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体の製造方法、複合体、ゴム組成物および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムに多孔質物質を練り込み、ゴム組成物を得る方法が知られている。
【0003】
また、水および水中に分散した多孔質のフィロケイ酸塩を含むスラリーを、天然ゴムラテックスを含む配合物に添加し、組成物を得る方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−63567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が鋭意検討したところ、ゴムに多孔質物質を練り込むことにより得られたゴム組成物を加硫して得られた加硫ゴムでは、加硫ゴム成分と多孔質物質の接着性が弱いため、多孔質物質が離脱することがあることがわかった。
【0006】
また、特許文献1に記載の技術により得られた組成物を加硫して得られた加硫ゴムにおいても、加硫ゴム成分とフィロケイ酸塩の接着性を改善する余地がある。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加硫ゴム成分と多孔質物質の接着性に優れた加硫ゴムの原料となる複合体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち本発明は、多孔質物質、カーボンブラックおよび溶媒を混合することにより混合液を得る工程と、混合液およびゴムラテックスを混合することにより混合ラテックスを得る工程と、混合ラテックスに酸を添加する工程とを含む複合体の製造方法、に関する。本発明に係る製造方法では、カーボンブラックを細孔に侵入させた後に、ゴムラテックスを細孔に侵入させる。そして、カーボンブラックとゴムラテックスが細孔内に存在する状態で混合ラテックスを凝固させる。これにより、細孔内に存在するカーボンブラックにゴムを絡ませることが可能である。本発明に係る製造方法により得られる複合体はかかる特徴を備えるため、加硫ゴム成分と多孔質物質の接着性に優れた加硫ゴムの原料となる。
【0009】
ゴムラテックスは天然ゴムラテックスであることが好ましい。通常はゴムラテックスが水を含むことから、溶媒が水を含むことが好ましく、溶媒が水であることがより好ましい。
【0010】
多孔質物質の平均粒径は、例えば1mm以下であることが好ましい。1mm以下であると、加硫ゴム成分と多孔質物質の接着性に一層優れた加硫ゴムの原料となる複合体を得ることができる。
【0011】
混合液がスラリー状をなすことが好ましい。混合液がスラリー状をなすと、加硫ゴム成分と多孔質物質の接着性に一層優れた加硫ゴムの原料となる複合体を得ることができる。
【0012】
本発明はまた、かかる製造方法により得られた複合体に関する。
【0013】
本発明はまた、かかる複合体を含むゴム組成物に関する。本発明に係るゴム組成物は、空気入りタイヤに好適に使用できる。本発明はまた、かかるゴム組成物を用いて得られた空気入りタイヤに関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[複合体の製造方法]
本発明に係る複合体の製造方法は、多孔質物質、カーボンブラックおよび溶媒を混合することにより混合液を得る工程と、混合液およびゴムラテックスを混合することにより混合ラテックスを得る工程と、混合ラテックスに酸を添加する工程とを含む。
【0015】
混合液を得る工程では、多孔質物質、カーボンブラックおよび溶媒を混合する。
【0016】
多孔質物質の材料としては、例えば果実の種、軽石、ゼオライト、活性炭などが挙げられる。なかでも、カーボンブラックを細孔に侵入させることが容易であるという理由から、メソ細孔を備えるもの、マクロ細孔を備えるものが好ましい。メソ細孔の平均細孔径は、例えば、2nm以上である。マクロ細孔の平均細孔径は、例えば、50nm以上である。また、環境に優しいという理由から、植物由来の材料が好ましい。
なお、平均細孔径は、水銀圧入法により測定できる。
【0017】
多孔質物質の平均粒径は好ましくは1mm以下である。一方、多孔質物質の平均粒径は好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上である。
なお、多孔質物質の平均粒径は、島津製作所製 SALD−2200レーザー回析式粒度分布測定器を用いて測定する。
【0018】
カーボンブラックは、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。
【0019】
溶媒としては、水を含む溶媒が好ましく、水が特に好ましい。
【0020】
混合ラテックスを得る工程では、混合液およびゴムラテックスを混合する。
【0021】
ゴムラテックスとしては、例えば天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスなどを使用できる。
【0022】
天然ゴムラテックスとしては、例えばフィールドラテックス、濃縮ラテックス、アンモニアラテックスなどを使用できる。天然ゴムラテックス中の天然ゴムの数平均分子量は、例えば、200万以上が好ましい。合成ゴムラテックスとしては、例えばスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムを乳化重合により製造したものなどが挙げられる。
【0023】
混合ラテックスに酸を添加する工程により、混合ラテックスを凝固させることができる。混合ラテックスに酸を添加する工程としては、例えば、混合ラテックスを撹拌しながら、酸を添加する工程などが挙げられる。酸としては、凝固用として通常使用されるギ酸、硫酸などが挙げられる。
【0024】
混合ラテックスに酸を添加する工程により得られた複合体は、ゴム成分、多孔質物質、カーボンブラックを含む。
【0025】
得られた複合体に関して、多孔質物質の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。一方、多孔質物質の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0026】
複合体に関して、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。一方、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対し、好ましくは45質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。
【0027】
複合体は、例えばマスターバッチとして使用できる。
【0028】
[ゴム組成物]
本発明に係るゴム組成物は、例えば、複合体と、粘着付与剤、加硫系配合剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、オイル、シリカ、シランカップリング剤などとを混練することにより、得ることができる。
【0029】
本発明に係るゴム組成物は、複合体を含む。本発明に係るゴム組成物は、複合体以外に、粘着付与剤、加硫系配合剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、オイル、シリカ、シランカップリング剤などを含んでもよい。
【0030】
加硫系配合剤としては、硫黄、有機過酸化物などの加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などが挙げられる。
【0031】
加硫系配合剤としての硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。加硫後のゴム物性や耐久性などを考慮した場合、ゴム成分100質量部に対する硫黄の配合量は、硫黄分換算で0.5〜5.0質量部が好ましい。
【0032】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。ゴム成分100質量部に対する加硫促進剤の配合量は、0.1〜5.0質量部が好ましい。
【0033】
本発明に係るゴム組成物は、空気入りタイヤに好適に使用できる。具体的には、空気入りタイヤのタイヤ部材の原料として好適に使用できる。より具体的には、トレッドなどの原料として好適に使用できる。
【0034】
本発明に係る空気入りタイヤは、例えば、かかるゴム組成物を用いて得られたタイヤ部材を備える。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。
【0036】
[添加剤]
添加剤を以下に示す。
天然ゴムラテックス(タイ産の天然ゴムラテックス)
カーボンブラック 「DiaN220」(ISAF)
RSS#3
硫黄 四国化成社製(5%オイル処理硫黄)
加硫促進剤 「ノクセラーCZ」大内新興化学工業社製(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0037】
表1において、混練り工程で配合した添加剤の量を、天然ゴムラテックスの固形分およびRSS#3の合計100質量部に対する質量部数で示す。
【0038】
[微細物の調製]
乾燥した梅の種をボールミルで粉砕することにより粉砕物を得た。粉砕物をふるいにかけて、平均粒径0.5mm〜1.0mmの微細物を得た。
【0039】
[混練物の調製]
(実施例1)
表1に記載の配合処方に従い微細物、カーボンブラックおよび水を混合して、スラリーを得た。スラリーと天然ゴムラテックスを混合して、ゴムラテックス溶液を得た。ゴムラテックス溶液にギ酸を添加し凝固させることにより、複合体を得た。
表1に記載の配合処方に従い複合体に添加剤を配合し、ロールを用いて混練し、混練物を得た。
【0040】
(比較例1)
表1に記載の配合処方に従い添加剤を配合し、ロールを用いて混練し、混練物を得た。
【0041】
(比較例2〜3)
表1に記載の配合処方に従い微細物および水を混合して、スラリーを得た。スラリーと天然ゴムラテックスを混合して、ゴムラテックス溶液を得た。ゴムラテックス溶液にギ酸を添加し凝固させることにより複合体を得た。
表1に記載の配合処方に従い複合体に添加剤を配合し、ロールを用いて混練し、混練物を得た。
【0042】
(比較例4)
表1に記載の配合処方に従いカーボンブラックおよび水を混合して、スラリーを得た。スラリーと天然ゴムラテックスを混合して、ゴムラテックス溶液を得た。ゴムラテックス溶液にギ酸を添加し凝固させることにより複合体を得た。
表1に記載の配合処方に従い複合体に添加剤を配合し、ロールを用いて混練し、混練物を得た。
【0043】
[評価]
混練物を150℃、30分間の条件で加硫することにより、加硫ゴムを得た。加硫ゴムについて、以下の評価条件に基づいて微細物の接着性を評価した。結果を表1に示す。
【0044】
(微細物の接着性)
加硫ゴムをカミソリで切断し、切断面を顕微鏡(ニコン社製のダイヤルゲ−ジ付きマイクロスコ−プ)で観察した。微細物の数とくぼみの数を数え、以下の式により微細物の残存率を求めた。
残存率=(微細物の数)/(微細物の数+くぼみの数)
残存率が70%以上である場合を○と判定し、70%未満で50%を越える場合を△と判定し、50%以下である場合を×と判定した。
【0045】
【表1】
【0046】
表1から、ゴムと微細物を混合練りして得られた比較例1、4の加硫ゴムは、微細物の残存率が低く、接着が弱いことがわかる。また、微細物を含みカーボンブラックを含まない複合体とカーボンブラックを混合練りして得られた比較例3の加硫ゴムも、接着が弱いことがわかる。
【0047】
一方、実施例1の加硫ゴムは、微細物の残存率が高く、接着性に優れることがわかる。