(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダヘッド側燃焼室と繋がり且つバルブ軸に沿って形成されるポート部分と前記バルブ軸に対して傾斜する傾斜軸に沿って形成される傾斜部分とを有し且つ前記シリンダヘッド側燃焼室とシリンダヘッド外とを連通する連通路が形成されているシリンダヘッドを製造するためのシリンダヘッド用ワークの加工方法であって、
軸線回りに回転可能な切削工具を前記シリンダヘッド用ワークに対して相対移動させ且つ相対移動量を数値制御することができる切削装置に前記シリンダヘッド用ワークと前記切削工具とを取付ける取付け工程と、
前記切削装置から前記切削工具及び前記シリンダヘッド用ワークのうち少なくとも一方を取外す取外し工程と、
前記取付け工程の後であって前記取外し工程の前に行われ、前記切削工具をその軸線回りに回転させながら前記傾斜軸に沿って移動させて前記シリンダヘッド用ワークを切削して前記傾斜部分を形成する傾斜部分形成工程と、
前記取付け工程の後であって前記取外し工程の前に行われ、前記傾斜部分が形成される部位と異なる位置に前記切削工具を相対移動させ、更に前記切削工具をその軸線回りに回転させながら前記軸線に沿って移動させて前記切削工具の軸線方向端面によって前記シリンダヘッド用ワークを切削して基準面を形成する基準面形成工程とを有し、
前記傾斜部分形成工程及び前記基準面形成工程は、同一処理内において同一の切削工具によって行われる、シリンダヘッド用ワークの加工方法。
前記基準面形成工程では、前記シリンダヘッドの前記シリンダヘッド側燃焼室に臨む面に前記切削工具を押し付けて前記基準面を形成するようになっている、請求項1又は2に記載のシリンダヘッド用ワークの加工方法。
前記基準面形成工程では、前記傾斜軸に直交する平面となるように前記基準面が形成される、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のシリンダヘッド用ワークの加工方法。
シリンダヘッド側燃焼室と繋がるポート部分に隣接させ且つ予め定められる加工軸周りに形成される周面で規定される切削部位を有するシリンダヘッドを製造するためのシリンダヘッド用ワークの加工方法であって、
軸線回りに回転可能な切削工具を前記シリンダヘッド用ワークに対して相対移動させ且つ相対移動量を数値制御することができる切削装置に、前記ポート部分を切削するための前記切削工具であるポート用切削工具と異なる前記切削工具である切削部位用切削工具と前記シリンダヘッド用ワークとを取付ける取付け工程と、
前記切削装置から前記切削部位用切削工具及び前記シリンダヘッド用ワークのうち一方を取外す取外し工程と、
前記取付け工程の後であって前記取外し工程の前に行われ、前記切削部位用切削工具をその軸線回りに回転させながら前記加工軸に平行に移動させて前記シリンダヘッド用ワークを切削して前記切削部位を形成する切削部位形成工程と、
前記取付け工程の後であって前記取外し工程の前に行われ、前記切削部位が形成される部位と異なる位置に前記切削部位用切削工具を相対移動させ、更に前記切削部位用切削工具をその軸線回りに回転させながら前記軸線に沿って移動させて前記切削部位用切削工具の軸線方向端面によって前記シリンダヘッド用ワークを切削して基準面を形成する基準面形成工程とを有し、
前記切削部位形成工程及び前記基準面形成工程は、同一処理内において同一の切削工具によって行われる、シリンダヘッド用ワークの加工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリンダヘッド用ワークでは、切削部位が設計通りに形成されているか否かを検査するために切削部位の位置を計測することがある。他方、内周面を切削して形成される切削部位では、端面(即ち、底面)が形成されない場合があり、その位置等を正確に計測することが難しい。それ故。内周面の切削部位が設計通り形成されているか検査をすることが難しい。
【0005】
そこで本発明は、内周面の切削部位が設計通りに形成されているか否かを検査することを可能にするシリンダヘッド用ワークの加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシリンダヘッド用ワークの加工方法は、シリンダヘッド側燃焼室と繋がり且つバルブ軸に沿って形成されるポート部分と前記バルブ軸に対して傾斜する傾斜軸に沿って形成される傾斜部分とを有し且つ前記シリンダヘッド側燃焼室とシリンダヘッド外とを連通する連通路が形成されているシリンダヘッドを製造するためのシリンダヘッド用ワークの加工方法であって、軸線回りに回転可能な切削工具を前記シリンダヘッド用ワークに対して相対移動させ且つ相対移動量を数値制御することができる切削装置に前記シリンダヘッド用ワークと前記切削工具とを取付ける取付け工程と、前記切削装置から前記切削工具及び前記シリンダヘッド用ワークのうち少なくとも一方を取外す取外し工程と、前記取付け工程の後であって前記取外し工程の前に行われ、前記切削工具をその軸線回りに回転させながら前記傾斜軸に沿って移動させて前記シリンダヘッド用ワークを切削して前記傾斜部分を形成する傾斜部分形成工程と、前記取付け工程の後であって前記取外し工程の前に行われ、前記傾斜部分が形成される部位と異なる位置に前記切削工具を相対移動させ、更に前記切削工具をその軸線回りに回転させながら前記軸線に沿って移動させて前記切削工具の軸線方向端面によって前記シリンダヘッド用ワークを切削して基準面を形成する基準面形成工程とを有する方法である。
【0007】
本発明に従えば、切削工具の相対移動量を数値制御する切削装置によって傾斜部分及び基準面が形成されている。また、傾斜部分形成工程と、基準面形成工程とは、取付け工程の後であって取外し工程の前において行われる。即ち、傾斜部分と基準面とは、同一処理内において同一の切削工具によって形成されている。それ故、基準面の位置と傾斜部分の位置との相対位置関係は、数値制御により把握することができるので、基準面の位置を計測することによって傾斜部分との位置及び形状を把握することができる。従って、基準面の位置を計測することによって、計測が難しいシリンダヘッドの傾斜部分の位置等を直接計測しなくても、内周面に形成される傾斜部分が設計通りに形成されているか否か簡易に検査することができる。
【0008】
上記発明において、前記傾斜軸は、第1傾斜軸であって前記連通路は、前記ポート部分及び前記傾斜部分とは別の部分であって前記第1傾斜軸と異なる第2傾斜軸に沿って形成されている中間部分を有し、前記中間部分は、前記傾斜部分を介して前記ポート部分と繋がっており、前記傾斜部分形成工程では、前記第1傾斜軸の前記バルブ軸に対する角度が前記第2傾斜軸の前記バルブ軸に対する角度より小さくなるように前記傾斜部分を前記シリンダヘッド用ワークに形成してもよい。
【0009】
上記構成に従えば、連通路の形状を滑らかすることができ、連通路を流れる気体の流れを滑らかにすることができる。
【0010】
上記発明において、前記基準面形成工程では、前記シリンダヘッドの前記シリンダヘッド側燃焼室に臨む面に前記切削工具を押し付けて前記基準面を形成するようになっていてもよい。
【0011】
上記構成に従えば、シリンダヘッド側燃焼室に臨む面に基準面が形成されているので、シリンダヘッド側燃焼室外に形成される場合に比べて基準面を傾斜部分の近くに配置することができる。これにより、シリンダヘッド側燃焼室外に形成される場合に比べて傾斜部分と基準面との間の移動量を短くすることができ、加工時間を短くすることができる。また、基準面を傾斜部分の近くに配置することによって、基準面の位置と傾斜部分の位置等との相対関係において想定値と実測値とのズレを小さくすることができる。これにより、基準面の位置を計測することで傾斜部分の位置等を精度よく把握することができる。
【0012】
上記発明において、前記シリンダヘッドは、複数の前記シリンダヘッド側燃焼室を有し、前記連通路は、前記シリンダヘッド側燃焼室毎に個別に設けられており、前記傾斜部分形成工程及び前記基準面形成工程は、前記シリンダヘッド側燃焼室毎に前記基準面を形成すべく前記シリンダヘッド側燃焼室毎に実行されてもよい。
【0013】
上記構成に従えば、全てのシリンダヘッド側燃焼室に基準面が形成されるので、全てのシリンダヘッド側燃焼室の形状を略同一にすることができる。これにより、各シリンダヘッド側燃焼室の燃焼状態の差異を抑えることができる。
【0014】
上記発明において、前記シリンダヘッドは、2つの前記連通路を有し、前記基準面形成工程では、前記2つの連通路の前記ポート部分の間に1つの前記基準面が形成される、前記傾斜部分形成工程は、第1傾斜部分形成工程及び第2傾斜部分形成工程とを有し、第1傾斜部分形成工程では、前記2つの連通路のうちの一方が有する前記傾斜部分を形成し、第2傾斜部分形成工程では、前記2つの連通路のうちの他方が有する前記傾斜部分を形成し、前記基準面形成工程は、前記第1傾斜部分形成工程の後であって前記第2傾斜部分形成工程の前に行われてもよい。
【0015】
上記構成に従えば、2つの傾斜部分の間に基準面が形成され、且つ基準面形成工程が第1傾斜部分形成工程と第2傾斜部分形成工程との間に行われる。それ故、削工具を一方の傾斜部分の形成位置、基準面の形成位置及び他方の傾斜部分の形成位置の順で移動させることができるので、それらの間に基準面が形成されていない場合に比べて切削工具の移動量を少なくすることができ、加工時間を短くすることができる。
【0016】
上記発明において、前記基準面形成工程では、前記傾斜軸に直交する平面となるように前記基準面が形成されてもよい。
【0017】
上記構成に従えば、基準面が湾曲している場合に比べて基準面の位置を計測しやすくすることができる。
【0018】
本件発明のシリンダヘッド用ワークの加工方法は、シリンダヘッド側燃焼室と繋がるポート部分に隣接させ且つ予め定められる加工軸周りに形成される周面で規定される切削部位を有するシリンダヘッドを製造するためのシリンダヘッド用ワークの加工方法であって、軸線回りに回転可能な切削工具を前記シリンダヘッド用ワークに対して相対移動させ且つ相対移動量を数値制御することができる切削装置に、前記ポート部分を切削するための前記切削工具であるポート用切削工具と異なる前記切削工具である切削部位用切削工具と前記シリンダヘッド用ワークとを取付ける取付け工程と、前記切削装置から前記切削部位用切削工具及び前記シリンダヘッド用ワークのうち一方を取外す取外し工程と、前記取付け工程の後であって前記取外し工程の前に行われ、前記切削部位用切削工具をその軸線回りに回転させながら前記加工軸に平行に移動させて前記シリンダヘッド用ワークを切削して前記切削部位を形成する切削部位形成工程と、前記取付け工程の後であって前記取外し工程の前に行われ、前記切削部位が形成される部位と異なる位置に前記切削部位用切削工具を相対移動させ、更に前記切削部位用切削工具をその軸線回りに回転させながら前記軸線に沿って移動させて前記切削部位用切削工具の軸線方向端面によって前記シリンダヘッド用ワークを切削して基準面を形成する基準面形成工程とを有する方法である。
【0019】
上記構成に従えば、切削部位用切削工具の相対移動量を数値制御する切削装置によって切削部位及び基準面が形成されている。また、切削部位を形成する切削部位形成工程と、基準面を形成する基準面形成工程とは、取付け工程の後であって取外し工程の前において行われる。即ち、切削部位と基準面とは、同一処理内において同一の切削部位用切削工具によって形成されている。それ故、基準面の位置と切削部位の位置との相対位置関係は、数値制御により正確に把握することができるので、基準面の位置を計測することによって切削部位の位置等を把握することができる。従って、基準面の位置を計測することによって、計測が難しいシリンダヘッドの切削部位の位置等を直接計測しなくても切削部位が設計通りの位置等に形成されているか否か簡易に検査することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、内周面の切削部位が設計通りに形成されているか否かを検査することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態のシリンダヘッド用ワークの加工方法について、前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明するシリンダヘッド用ワークの加工方法は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0023】
図1に示すシリンダヘッド1は、鋳造等によって製造されたシリンダヘッド用ワーク1A(後述する
図3参照)を本実施形態のシリンダヘッド用ワークの加工方法によって加工したものであり、図示しないシリンダブロックと共にエンジンを構成する。シリンダブロックは、複数のシリンダ(本実施形態では、4つのシリンダ室)を有しており、シリンダヘッド1は、前記シリンダと同数、即ち4つのヘッド側燃焼室2を有している。ヘッド側燃焼室2は、シリンダヘッド1においてシリンダブロックと突き合わせる合せ面1aに形成されており、シリンダヘッド1の幅方向(以下、「左右方向」ともいう)に等間隔をあけて並べて配置されている。各ヘッド側燃焼室2には、吸気通路3及び排気通路4が2つずつ繋がっている。2つの吸気通路3及び2つの排気通路4の各々は、各ヘッド側燃焼室2の中心線L1に対して左右対称に配置されており、各ヘッド側燃焼室2が中心線L1に対して左右対称に配置されている。このように構成されているヘッド側燃焼室2、吸気通路3及び排気通路4の各々は、形成される位置に関係なく略同じ形状に形成されている。それ故、以下では、1つのヘッド側燃焼室2、吸気通路3及び排気通路4について説明し、その他のヘッド側燃焼室2、吸気通路3及び排気通路4については説明を省略する。
【0024】
図2に示すようにヘッド側燃焼室2は、大略ドーム状に凹ますようにしてシリンダヘッド1の合せ面1aに形成されており、このヘッド側燃焼室2に臨む天井部分2aに吸気通路3及び排気通路4が形成されている。吸気通路3は、空気及び燃料の混合ガスを燃焼室に導くための通路であり、排気通路4は、前記混合気をヘッド側燃焼室2で燃焼させた際に発生する排気ガスを排出するための通路である。吸気通路3及び排気通路4は、前後方向に互いに離れるように斜め上方に延在している。これら2つの吸気通路3及び排気通路4の各々は、図示しない吸気バルブ及び排気バルブによって開閉されるようになっており、シリンダヘッド1には、吸気バルブ及び排気バルブを案内するための吸気側バルブガイド5、及び排気側バルブガイド6が設けられている。
【0025】
吸気側バルブガイド5は、大略円筒状の部材であり、上下方向に延在し且つ前後方向において排気通路4から離れる方向に傾く吸気側バルブ軸L2に沿って配置されている。また、排気側バルブガイド6は、大略円筒状の部材であり、上下方向に延在し且つ前後方向において吸気通路3から離れる方向に傾く排気側バルブ軸L3に沿って配置されている。吸気側バルブガイド5及び排気側バルブガイド6の各々には、吸気バルブ及び排気バルブが挿入されており、吸気バルブ及び排気バルブは、各バルブ軸L2,L3に沿って上下方向に動くようになっている。また、吸気通路3及び排気通路4は、ヘッド側燃焼室2に開口しており、吸気通路3及び排気通路4の開口部3a,4a周りは段状に形成されている。この段状部分2b,2cには、各軸線がバルブ軸L2,L3の各々と略一致する円筒状の吸気側バルブシート7及び排気側バルブシート8が夫々嵌合されている。吸気側バルブシート7に吸気バルブが着座し、また排気側バルブシート8に排気バルブが着座することで、吸気通路3及び排気通路4の各々が閉じられるようになっている。
【0026】
また、吸気通路3は、ポート部分11と、傾斜部分12と、中間部分13と、接続部分14とを有しており、これらがヘッド側燃焼室2側からその順で配置されている。即ち、ポート部分11は、ヘッド側燃焼室2に繋がる部分であり、吸気側バルブシート7の内周面の開口部分によって形成されている。ポート部分11は、吸気バルブの弁傘の形状に合せて形成されている。ポート部分11の軸線は、吸気側バルブ軸L2と略一致するように形成されており、吸気バルブが吸気側バルブシート7に着座した際にポート部分11が吸気バルブの弁傘によって塞がるようになっている。また、ポート部分11は、傾斜部分12に連なっており、傾斜部分12は、中間部分13に連なっている。更に、中間部分13は、接続部分14に繋がり、接続部分14の開口端、即ち吸気通路3の開口端3bがシリンダヘッド1外に繋がっている。また、傾斜部分12、中間部分13、及び接続部分14は、各第1乃至第3傾斜軸L4,L5,L6に沿って形成されており、各第1乃至第3傾斜軸L4,L5,L6の吸気側バルブ軸L2に対するなす角α,β,γは、ポート部分11側から接続部分14に進むにつれて大きくなっている。これにより、吸気通路3は、傾斜部分12を有さない吸気通路3に比べて各部分11〜14が滑らかに繋がり、その結果混合ガスを滑らかに流すことができるようになっている。
【0027】
排気通路4は、ポート部分21と、中間部分22と、接続部分23とを有しており、これらがヘッド側燃焼室2側からその順で配置されている。即ち、ポート部分21は、ヘッド側燃焼室2に繋がる部分であり、排気側バルブシート8の内周面の開口部分によって形成されている。ポート部分21は、排気バルブの弁傘の形状に合せて形成されて、且つその軸線が排気側バルブ軸L3と略一致するように形成されている。それ故、排気バルブが排気側バルブシート8に着座した際にポート部分21が排気バルブの弁傘によって塞がるようになっている。また、ポート部分21は、中間部分22に連なっており、中間部分22は、接続部分23に連なっている。接続部分23の開口端、即ち排気通路4の開口端4bがシリンダヘッド1外に繋がっている。
【0028】
また、
図3に示すように、吸気通路3及び排気通路4のポート部分11,21は、ヘッド側燃焼室2に臨む天井部分2aに形成されており、ポート部分11,21がヘッド側燃焼室2の天井部分2aに繋がっている。この天井部分2aを含む内周面2d、即ちヘッド側燃焼室2に臨む内周面2dであってポート部分11,21周りには、部分球面状の第1及び第2周面15,24が形成されている。第1周面15により、吸気通路3からヘッド側燃焼室2に供給される混合ガスの流れがスムーズになり、また第2周面24によりヘッド側燃焼室2から排気通路4に排出される排気ガスの流れもスムーズになる。ガスの流れがスムーズになることで、ヘッド側燃焼室2での燃焼効率を向上せることができるようになっている。
【0029】
このように構成されているシリンダヘッド1は、シリンダヘッド用ワーク1Aにおける吸気通路3の傾斜部分12、天井部分2aの周面15,24に対応する部分を切削加工することによって製造される。図示しないが、切削加工で用いられる切削装置は、載置台を有し、その載置台の所定位置にシリンダヘッド用ワーク1Aを載せることができるようになっている。また、切削装置は、固定用治具を有しており、載置台に載置されたシリンダヘッド用ワーク1A(
図3参照)は、固定用治具に位置決めされた状態で取り付けられている。更に、切削装置は、チャックを有しており、このチャックには、種々の切削工具(例えば、後述する
図3、
図5、及び
図6に示す切削工具41〜43)を固定して取付けることができるようになっている。
【0030】
このような構成を有する切削装置は、チャックを回転させることによってそこに取り付けた切削工具をその軸線回りに回転させ、更に回転する切削工具を軸線方向に移動させてシリンダヘッド用ワーク1Aの切削部位に当てて切削部位を切削するようになっている。また、切削装置は、位置決めされたシリンダヘッド用ワーク1Aに対して切削工具をその軸線方向及びその軸線に直交する様々な方向に相対移動させることができるようになっており、制御部によってその相対移動量を数値制御できるようになっている。
【0031】
このような切削装置で加工されて製造されるシリンダヘッド1では、吸気通路3の傾斜部分12の内周面、及び天井部分2aの周面15,24を含む各部位が設計通りに形成されているか否かの検査が行われる。しかし吸気通路3の傾斜部分12の内周面、及び天井部分2aの周面15,24の各々は、各部位が平面でなく周面に形成されている。このような周面に形成されている部位は、規定箇所を正確に計測することが難しく、それらを直接検査することが難しい。
【0032】
他方、切削装置は、予め定められる座標系(即ち、切削装置座標系)に従って切削工具を移動させるようになっており、そうすることで切削工具がシリンダヘッド用ワーク1Aに対して相対移動するようになっている。また、切削装置は、予め定められるプログラムに基づいて切削工具を移動させるようになっており、プログラムには、切削装置座標系の基点からの切削工具の移動量及び切削量が含まれている。切削装置がこのプログラムに応じて切削工具を動かすことによって、各切削部位(例えば、傾斜部分12及び第基準面31)が切削されるようになっている。
【0033】
ところで、切削装置におけるワーク及び切削工具の相対位置関係は、プログラムによる切削工具の相対移動の他に、ワーク及び切削工具を切削装置に取付けた時(即ち、ワーク及び切削工具の交換)の取付け状態によっても変化する。即ち、プログラムに応じて切削工具を移動させた場合であっても、ワーク及び切削工具の交換を行うことによってワーク及び切削工具の相対位置関係が変わる。換言すると、このような交換を行う前に傾斜部分12及び第1基準面31が切削されると、第1基準面31と傾斜部分12との相対位置関係は、主にプログラムに依存することになる。それ故、第1基準面31に対する傾斜部分12の位置等は、切削装置のプログラムに基づいて求めることができる。例えば、第1基準面31に対する傾斜部分12の切削量は、プログラムおいて設定される切削量に基づいて演算値Xとして演算することができる。
【0034】
また、シリンダヘッド用ワーク1Aには、そこに形成される様々な部位の位置の基準となる絶対基準面が予め形成されている。それ故、シリンダヘッド用ワーク1Aでは、絶対基準面に対する第1基準面31の位置等、本実施形態では絶対基準面に対する第1基準面31の切削量を計測して、その絶対寸法Yを求めることができる。このように絶対寸法Yが計測されると、演算値Xによって傾斜部分12の切削量の絶対寸法Z(Z=Y+X)を求めることができ。この絶対寸法Zが予め設定される許容範囲内にある場合は、傾斜部分12の切削量が設計通りに形成されていると判断される。他方、絶対寸法Zが予め設定される許容範囲外にある場合は、傾斜部分12の切削量が設計通りに形成されていないと判断される。
【0035】
つまり、切削装置では、プログラムにより切削工具の相対移動量が数値制御されているので、同一処理内において同一の切削工具で切削された切削部位における基準点(絶対位置)に対する相対位置は、プログラム通りの関係で(即ち、数値通りに)形成されている。即ち、同一処理内において同一の切削工具で切削された部位全体の前記基準点に対する相対位置関係は、数値制御によって把握することができる。そのため、同一処理内において前記切削された切削部位のいずれかの箇所の位置を計測することによって、前記切削部位の全体の形状(孔の深さ、及び孔の位置等)を把握することができる。なお、同一処理内とは、切削装置にシリンダヘッド用ワーク1A及び切削工具を取付けてから、取り付けられたシリンダヘッド用ワーク1A及び切削工具のうち一方を切削装置から取外すまでの間(即ち、シリンダヘッド用ワーク1A及び切削工具の交換が行われる前)に行われる作業である。
【0036】
このように切削装置では、同一処理内において同一の切削工具で切削された複数の個所に対する相対位置関係を正確に把握することができ、ヘッド側燃焼室2には、吸気通路3の傾斜部分12の内周面、及び天井部分2aの周面15,24に対応する基準面31〜33が内周面2dに形成されている。更に詳細に説明すると、3つの基準面31〜33の1つである第1基準面31は、吸気通路3の傾斜部分12の内周面に対応させて形成されている。
【0037】
第1基準面は、隣接する2つの吸気通路3,3の間であってヘッド側燃焼室2の中心Pから前後方向に最も離れて配置され、第1傾斜軸L4に直交する平坦な面として形成されている。また、第2基準面32は、吸気通路3のポート部分11の周りに形成されている第1周面15に対応させて形成されている。第2基準面32は、隣接する2つの吸気通路3,3の間であって第1基準面31よりヘッド側燃焼室2の中心P側の位置に形成されており、第1周面15を形成する際の加工中心軸L7(後述する
図5参照)に直交する平坦な面として形成されている。更に、第3基準面33は、排気通路4のポート部分21の周りに形成されている第2周面24に対応させて形成されている。第3基準面33は、隣接する2つの排気通路4,4の間であって第2基準面32の前後方向向かい側の位置に配置されており、第2周面24を形成する際の加工中心軸L8(後述する
図6参照)に直交する平坦な面として形成されている。
【0038】
3つの基準面31〜33は、前述の通り更に各軸L4,L7,L8に直交するように形成されているので、3つの基準面31〜33の位置が計測しやすい。更に、3つの基準面31〜33は、対応する各部位12,15,24と同一処理内において同一の切削工具で加工されているので、それらを計測することで各部位12,15,24の位置及び形状等(本実施形態では各部位の切削量であり、切り込み量)を把握することができる。
【0039】
このような3つの基準面が形成されるシリンダヘッド用ワーク1Aでは、ポート用切削工具(図示しない)によってポート部分11,21が形成される。即ち、切削装置は、そのチャックに取付けられたポート用切削工具(図示しない)をその軸線回りに回転させつつ、吸気側バルブ軸L2及び排気側バルブ軸L3に沿って各バルブシート7,8に挿入する。これにより、各バルブシート7,8にポート部分11,21が形成される。なお、ポート用切削工具は、吸気通路3のポート部分11を形成する場合と、排気通路4のポート部分21を形成する場合とでは、異なるポート用切削工具が用いられている。
【0040】
更に、シリンダヘッド用ワーク1Aには、切削装置を用いて各部位12,15,24を形成される。以下では、これら各部位12,15,24をシリンダヘッド用ワーク1Aに形成するためのシリンダヘッド用ワークの加工方法の手順について
図4を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、2つの吸気通路3のうちの一方及びそれに関する構成等については、各符号と共に「A」を付し、他方の吸気通路3及びそれに関する構成等については、各符号と共に「B」を付す。同様に、2つの排気通路4のうちの一方及びそれに関する構成等については、各符号と共に「A」を付し、他方の及び排気通路4及びそれに関する構成等については、各符号と共に「B」を付す。
【0041】
まず、
図3のようにシリンダヘッド用ワーク1Aに2つの傾斜部分12A,12Bを形成する場合について説明する。
図4に示すようにシリンダヘッド用ワークの加工処理が始まると、ステップS1が実行される。ステップS1である取付け工程では、まず切削装置にシリンダヘッド用ワーク1Aが取り付けられる。具体的には、切削装置の載置台の所定位置にシリンダヘッド用ワーク1Aを載置し、固定用治具によって固定される。また、切削装置には、そのチャックに第1切削工具41(切削部位用切削工具、
図3参照)が固定されて取り付けられる。なお、傾斜部分用切削工具である第1切削工具41は、ポート部分11を形成する際に用いられる前述のポート用切削工具と別の工具である。シリンダヘッド用ワーク1A及び第1切削工具41が切削装置に取付けられると、ステップS2に移行する。
【0042】
ステップS2である第1切削工程(第1傾斜部分形成工程及び切削部位形成工程)では、一方の吸気通路3Aのポート部分11Aの隣接する部分が切削加工されることによって傾斜部分12Aが形成される。即ち、
図3に示すようにシリンダヘッド用ワーク1Aの段状部分2b(
図2参照)に吸気側バルブシート7Aが嵌合されている状態において、第1切削工具41を回転させながら吸気側バルブシート7Aに挿入していく。更に具体的に説明すると、切削装置は、まず第1切削工具41の軸線を傾斜部分12Aの第1傾斜軸L4Aと略一致するように配置し、第1傾斜軸L4Aを中心にして第1切削工具41を回転させる。次に、切削装置は、回転させたまま第1切削工具41を前記第1傾斜軸L4Aに沿って移動させて吸気側バルブシート7Aに挿入する。なお、第1切削工具41は、傾斜部分12Aの内径と略同じ外径を有しており、回転しながら吸気側バルブシート7Aに挿入されることで吸気側バルブシート7Aの内径を傾斜部分12Aの設計寸法まで拡張することができるようになっている。挿入後、第1切削工具41がプログラムで予め設定された位置まで挿入されると、切削装置は、逆方向に第1切削工具41を移動させて吸気側バルブシート7Aから引抜く。これにより、吸気側バルブシート7A及びシリンダヘッド用ワーク1Aに第1傾斜軸L4Aに沿った傾斜部分12Aが形成される。傾斜部分12Aが形成されると、ステップS3に移行する。
【0043】
ステップS3である基準面形成工程では、ヘッド側燃焼室2の内周面2dに第1基準面31が形成される。即ち、第1切削工具41を回転させた状態でヘッド側燃焼室2の内周面2dであって2つの吸気通路3A,3Bの間の部分に第1切削工具41の先端面を押し付けて第1基準面31を形成する。更に具体的に説明すると、切削装置は、まず第1基準面31を形成する位置付近(傾斜部分12Aが形成されている部分と異なる第1基準面加工開始位置)まで第1切削工具41を移動させる。この際、切削装置は、第1切削工具41の軸線を第1傾斜軸L4と平行に保ったまま第1切削工具41を移動させる。第1切削工具41を移動させた後、切削装置は、第1基準面加工開始位置からヘッド側燃焼室2の内周面2dに向かって、回転する第1切削工具41を第1傾斜軸L4に平行に動かし、第1切削工具41の先端面をヘッド側燃焼室2の内周面2dに押し付ける。これにより、第1切削工具41の先端面、より詳細には先端面の外縁部分(又は先端の稜線部分)によってヘッド側燃焼室2の内周面2dが切削されて、第1切削工具41の軸線に直交する平坦な面(即ち、第1傾斜軸L4に直交する面)である第1基準面31が2つの吸気通路3A,3Bの間の部分に形成される。なお、ヘッド側燃焼室2の内周面2dに形成される第1基準面31は、所定の面積を有することが好ましい。第1基準面31は、例えば直径2mmの円よりも大きい面積を有することが好ましく、更に具体的には1辺2mm以上の正方形より大きいことが好ましい。第2基準面32及び第3基準面33についても同様である。第1基準面31が形成されると、ステップS4に移行する。
【0044】
ステップS4である第2切削工程(第2傾斜部位形成工程又は切削部位形成工程)では、他方の吸気通路3Bのポート部分11Bの隣接する部分が切削加工されることによって傾斜部分12Bが形成される。即ち、シリンダヘッド用ワーク1Aの段状部分2bに吸気側バルブシート7Bが嵌合されている状態で、その吸気側バルブシート7Bに第1切削工具41を回転させながら挿入していく。更に具体的に説明すると、切削装置は、まず第1切削工具41の軸線を第1傾斜軸L4Bと平行に保ったまま移動させ、第1切削工具41の軸線を傾斜部分12Bの第1傾斜軸L4Bと略一致するように配置する。次に、切削装置は、回転する第1切削工具41を前記第1傾斜軸L4Bに沿って移動させて吸気側バルブシート7Bに挿入する。挿入後、第1切削工具41がプログラムで予め設定された位置まで挿入されると、切削装置は、逆方向に第1切削工具41を移動させて吸気側バルブシート7Bから引抜く。これにより、吸気側バルブシート7B及びシリンダヘッド用ワーク1Aに第1傾斜軸L4Bに沿った傾斜部分12Bが形成される。このように他方の傾斜部分12Bが形成されると、ステップS5に移行する。
【0045】
ステップS5では、全てのヘッド側燃焼室2に対して2つの傾斜部分12A,12B及び第1基準面31が形成されたか否かを判断する。具体的には、プログラムに応じて全てのヘッド側燃焼室2に対して2つの傾斜部分12A,12B及び第1基準面31が形成されるまでプログラムを実行し続ける。即ち、全てのヘッド側燃焼室2に対して2つの傾斜部分12A,12B及び第1基準面31が形成されていない場合、ステップS2に戻って次のヘッド側燃焼室2(より詳細には、隣接するヘッド側燃焼室2)に対して2つの傾斜部分12A,12B及び第1基準面31を形成する。他方、全てのヘッド側燃焼室2に対して2つの傾斜部分12A,12B及び第1基準面31が形成されるとステップS6に移行する。
【0046】
ステップS6である取外し工程では、切削装置のチャックから第1切削工具41を取外す。これによって、取外し工程が終了し、傾斜部分12A,12Bに関するシリンダヘッド用ワークの加工処理が終了する。なお、2つの傾斜部分12A,12Bに続けて別の部位の切削加工が行われない場合、第1切削工具41と共に切削装置の固定用治具からシリンダヘッド用ワーク1Aが取り外され、第1切削工具41及びシリンダヘッド用ワーク1Aの両方が切削装置から取外されると取外し工程が終了する。後述する、第1周面15A,15B及び第2周面24A,24Bに関するシリンダヘッド用ワークの加工処理についても同様である。
【0047】
このようにシリンダヘッド用ワークの加工方法では、傾斜部分12A及び第1基準面31がそれらを切削加工する第1切削工具41の相対移動量を数値制御する切削装置によって形成されている。また、取付け工程の後であって取外し工程の前において第1切削工程及び基準面形成工程が行われる。即ち、第1基準面31は、第1切削工程で形成される傾斜部分12Aと同一処理内において同一の第1切削工具41によって形成されている。それ故、傾斜部分12Aの位置等は、第1基準面31の位置等との相対位置関係を数値制御のプラグラムにより正確に把握することができ、第1基準面31の位置(本実施形態では、切削量)を計測することによって傾斜部分12Aとの位置及び形状(本実施形態では、切削量)を把握することができる。それ故、第1基準面31の切削量を計測することによって、計測が難しいシリンダヘッド1の傾斜部分12Aの切削量を直接計測しなくてもシリンダヘッド1の傾斜部分12Aが設計通りの切削量で形成されているか否か簡易に検査することができる。
【0048】
また、シリンダヘッド用ワークの加工方法では、傾斜部分12Bがシリンダヘッド用ワーク1A及び第1切削工具41が取り外される前に第1切削工程及び基準面形成工程に続けて行われる第2切削工程にて形成される。即ち、傾斜部分12Bは、第1切削工程で形成される傾斜部分12A及び基準面形成工程で形成される第1基準面31と同一処理内で同一の第1切削工具41によって形成されている。それ故、傾斜部分12Bの位置は、第1基準面31の位置等及び傾斜部分12Aとの位置等との相対位置関係をプラグラムにより正確に把握することができる。それ故、第1基準面31の位置(本実施形態では、切削量)を計測することによって2つの傾斜部分12A、12Bとの位置及び形状(本実施形態では、切削量)を把握することができる。それ故、1つの第1基準面31の切削量を計測することで2つの傾斜部分12A,12Bが設計通り切削量で形成されているか否か簡易に検査することができる。
【0049】
また、内周面2dであって2つの傾斜部分12A,12Bの間(即ち、2つの吸気通路3A,3Bの間)に第1基準面31を形成し、基準面形成工程が第1切削工程及び第2切削工程の間で行われている。それ故、第1切削工具41を一方の傾斜部分12Aの形成位置、第1基準面31の形成位置及び他方の傾斜部分12Bの形成位置の順で移動させることができるので、第1基準面31が間に形成されていない場合に比べて第1切削工具41の移動量を少なくすることができ、加工時間を短くすることができる。
【0050】
また、第1基準面31を2つの傾斜部分12A、12Bの近くに形成することができるので、第1基準面31の位置等と2つの傾斜部分12A、12Bの位置及び形状等との相対関係において、シリンダヘッド用ワーク1Aのねじれや歪み等の影響を抑えることができる。即ち、第1基準面31の位置等と2つの傾斜部分12A、12Bの位置及び形状等との相対関係において想定値と実測値とのズレを小さくし、第1基準面31の切削量を計測することで2つの傾斜部分12A、12Bの切削量を精度よく把握することができる。
【0051】
また、切削装置では、切削工具41の回転軸を傾斜軸と平行にした状態で、切削工具41を回転させ且つ傾斜軸L4に沿って動かすことによって傾斜部分12が形成されている。切削工具41は、傾斜部分12の形状に合せて形成されており、切削工具41を傾斜軸L4に沿って動かすだけで傾斜部分12を所望の形状に形成することができる。それ故、シリンダヘッド用ワーク1つ当たりの切削時間を短くすることができる。
【0052】
次に、2つの傾斜部分12A,12Bの形成に続けて、
図5に示すようにシリンダヘッド用ワーク1Aの天井部分2aに第1周面15が形成される場合について説明する。シリンダヘッド用ワークの加工処理が始まると、ステップS1が実行される。ステップS1では、シリンダヘッド用ワーク1Aが事前に載置台に固定されて取り付けられているので、第2切削工具42が切削装置のチャックに固定される。なお、ステップS1の取付け工程には、事前にシリンダヘッド用ワーク1Aが取り付けられた時の作業も含む。また、切削部位用切削工具である第2切削工具42は、ポート用切削工具及び第1切削工具41と別の工具である。第2切削工具42が切削装置に取付けられると、ステップS2に移行する。
【0053】
ステップS2である第1切削工程(切削部位形成工程)では、一方の吸気通路3Aのポート部分11A周り、即ちポート部分11Aの隣接する部分に第1周面15Aが形成される。具体的に説明すると、切削装置は、第2切削工具42の軸線が予め定められる加工中心軸L7Aと一致するように第2切削工具42をポート部分11A上に配置する。その後、切削装置は、軸線回りに第2切削工具42を回転させる。更に、切削装置は、加工中心軸L7Aに沿わせ且つヘッド側燃焼室2に臨む内周面2d(以下、単に「内周面2d」という)に向かって移動させる。これにより、内周面2dであってポート部分11Aの周りに第1周面15Aが形成される。第1周面15Aが形成されると、ステップS3に移行する。
【0054】
ステップS3である基準面形成工程では、ヘッド側燃焼室2の内周面2dの2つの吸気通路3A,3Bの間の部分であって第1基準面31と異なる位置に、第2切削工具42の先端面を押し付けて第2基準面が形成される。更に詳細に説明すると、切削装置は、まず軸線を加工中心軸L7Aと平行に保ったまま第2切削工具42を移動させ、第2基準面32を形成する位置付近(即ち、第1周面15Aが形成される位置こと異なる第2基準面加工開始位置)に配置する。その後、切削装置は、第2基準面加工開始位置から内周面2dに向かって、回転する第2切削工具42を加工中心軸L7Aに平行に動かし、第2切削工具42の先端面をヘッド側燃焼室2の内周面2dに押し付ける。これにより、第2切削工具42の先端面、より詳細には先端面の外縁部分(又は先端の稜線部分)によってヘッド側燃焼室2の内周面2dが切削されて、第2切削工具42の軸線に直交する平坦な面(即ち、加工中心軸L7に直交する面)である第2基準面32が2つの吸気通路3A,3Bの間の部分に形成される。第2基準面32が形成されると、ステップS4に移行する。
【0055】
ステップS4である第2切削工程(切削部位形成工程)では、他方の吸気通路3Bのポート部分11B周りに第1周面15Bが形成される。具体的に説明すると、切削装置は、第1切削工程同様に、まず第2切削工具42をその軸線が加工中心軸L7Bと一致するように移動させてポート部分11B上に配置し、第2切削工具42をその軸線回りに回転させる。その後、切削装置は、回転する第2切削工具42を加工中心軸L7Bに沿わせ且つ内周面2dに向かって移動させる。これにより、内周面2dであってポート部分11Aの周りに第1周面15Bが形成される。第1周面15Bが形成されると、ステップS5に移行する。
【0056】
ステップS5では、全てのヘッド側燃焼室2に対して2つの第1周面15A,15B及び第2基準面32が形成されたか否かを判断する。具体的には、プログラムに応じて全てのヘッド側燃焼室2に対して2つの第1周面15A,15B及び第2基準面32が形成されるまでプログラムを実行し続ける。即ち、全てのヘッド側燃焼室2に対して2つの第1周面15A,15B及び第2基準面32が形成されていない場合、ステップS2に戻って次のヘッド側燃焼室2(より詳細には、隣接するヘッド側燃焼室2)に対して2つの2つの第1周面15A,15B及び第2基準面32を形成する。他方、全てのヘッド側燃焼室2に対して2つの2つの第1周面15A,15B及び第2基準面32が形成されるとステップS6に移行する。ステップS6である取外し工程では、切削装置のチャックから第1切削工具41を取外す。これによって、取外し工程が終了し、第1周面15A,15Bに関するシリンダヘッド用ワークの加工処理が終了する。
【0057】
このように、第2基準面32は、取付け工程の後であって取外し工程の前において、第1切削工程及び第2切削工程の間の基準面形成工程にて形成される。即ち、第2基準面32は、2つの第1周面15A,15Bと同一処理内で同一の第2切削工具42によって形成されている。それ故、2つの傾斜部分12A、12Bと同様に、第2基準面32の位置を計測することによって2つの第1周面15A,15Bとの位置及び形状を把握することができる。それ故、1つの第2基準面32の位置を計測することで2つの第1周面15A,15Bが設計通りの位置及び形状に形成されているか否か簡易に検査することができる。
【0058】
また、2つの第1周面15A,15Bの間(即ち、2つの吸気通路3A,3Bの間)に第2基準面32を形成し、基準面形成工程が第1切削工程及び第2切削工程の間で行われている。それ故、2つの傾斜部分12A,12Bを形成する場合と同様に、第1切削工具41の移動量を少なくすることができ、加工時間を短くすることができる。その他、第2基準面32を2つの第1周面15A,15Bの近くに形成することができるので、第2基準面32の位置と2つの第1周面15A,15Bの位置及び形状等との相対関係において想定値と実測値とのズレを小さくすることができる。これにより、第2基準面32の位置を計測することで2つの第1周面15A,15Bの位置及び形状等(本実施形態では、切削量)を精度よく把握することができる。
【0059】
最後に、2つの第1周面15A,15Bの形成に続けてシリンダヘッド用ワーク1Aに天井部分2aの第2周面24が形成される場合について説明する。シリンダヘッド用ワークの加工処理が始める際、ステップS1が実行され、
図6に示すような第3切削工具43が切削装置のチャックに固定される。なお、切削部位用切削工具である第3切削工具43は、ポート用切削工具、第1切削工具41及び第2切削工具42と別の工具である。第3切削工具43が切削装置に取付けられると、ステップS2に移行する。
【0060】
ステップS2からステップS5については、第1周面15A,15Bに関するシリンダヘッド用ワークの加工処理と類似しており、以下の点が主に異なる。即ち、第3切削工具43が配置される位置が排気通路4A,4Bのポート部分21A,21B上である点、第2周面24A,24Bを夫々形成する際に第3切削工具43の回転軸線が加工中心軸L8A,L8Bである点、第3基準面33を形成する際に加工中心軸L8A,L8Bに平行にして第3切削工具43を第2周面24Aが形成される位置と異なる第3基準面加工開始位置に移動させて内周面2dに押し付ける点が異なる。それ以外の加工処理の手順については、殆ど同一であるので、第2周面24A,24Bに関するシリンダヘッド用ワークの加工処理の説明は省略する。このような加工処理によって実現される第2周面24A,24Bに関するシリンダヘッド用ワークの加工方法は、排気通路4A,4Bのポート部分21A,21B周りに第2周面24A,24Bを形成する点を除き、前述する第1周面15A,15Bに関するシリンダヘッド用ワークの加工方法と同じ作用効果を奏する。
【0061】
本実施形態のシリンダヘッド用ワークの加工方法では、シリンダヘッド用ワーク1Aに形成される全てのヘッド側燃焼室2に対して第1乃至第3基準面31〜33の全てが形成される。これにより、全てのヘッド側燃焼室2の形状を略同一にすることができる。ヘッド側燃焼室2毎に基準面31〜33の有無が異なるとヘッド側燃焼室2毎に形状が異なって燃焼状態の差異が生じるが、全てのヘッド側燃焼室2の形状を等しくすることによって各ヘッド側燃焼室2の燃焼状態の差異を抑えることができる。
【0062】
<その他の実施形態>
本実施形態におけるシリンダヘッド用ワークの加工方法では、第1切削工程と第2切削工程との間に基準面形成工程が行われているが、基準面形成工程は第1切削工程の前に行われてもよく、また第2切削工程の後に行われてもよい。また、取外し工程にて第1切削工具41が取り外されているが、必ずしも取外す必要はない。例えば、切削装置において、固定用治具からシリンダヘッド用ワーク1Aだけを取外してもよく、取り外すことによって取外し工程が終了する。この後、他のシリンダヘッド用ワークを固定用治具に取付けられて、他のシリンダヘッド用ワークに対して第1切削工具41によって傾斜部分12を形成されてもよい。
【0063】
また、シリンダヘッド用ワークの加工方法において各基準面31〜33は、各軸L2,L7、L8に直交する平面として形成されており、そのような平面が好ましい。しかし、各基準面は、必ずしも平面である必要はなく、その位置を計測することができる面であればよい。例えば、各基準面31〜33は、第1切削工具41〜43によって形成される凹状の曲面(例えば、部分球面)であってもよく、各軸L2,L7,L8に対して直角ではない角度をもって交差する平面であってもよい。また、第1基準面31は、第1切削工具41の軸線が傾斜軸L4と平行になるように第1切削工具41を動かして形成されているが、傾斜軸L4に対して第1切削工具41の軸線を傾けてその軸線に沿って動かして形成されてもよい。
【0064】
また、各基準面31〜33に対して2つの切削部位が対応付けられているが、同一処理において同一の切削工具で形成される切削部位であれば対応付けられる切削部位は1つ又は3つ以上であってもよい。また、各基準面31〜33は、ヘッド側燃焼室2に形成されているが、必ずしもヘッド側燃焼室2である必要はなく、シリンダヘッド用ワーク1Aの外周面や合せ面1aに形成されてもよい。この場合、各ヘッド側燃焼室2の燃焼状態の差異を考慮する必要がなくなるので、各ヘッド側燃焼室2毎に形成する必要がなく基準面31〜33の各々をシリンダヘッド用ワーク1Aに対して1つ形成すればよい。このようにヘッド側燃焼室2の数より少ない数の基準面31〜33を形成することで加工時間を短縮することができる。
【0065】
また、複数のシリンダヘッド用ワーク1Aに切削加工を行う場合、必ずしも全てのシリンダヘッド用ワーク1Aについて基準面31〜33を形成する必要はなく、検査される1つのシリンダヘッド用ワーク1Aにだけ基準面31〜33を形成するようにしてもよい。例えば、切削工具41〜43が取り替えられた直後のシリンダヘッド用ワーク1Aに対してだけ基準面31〜33を形成してもよい。これによってシリンダヘッド用ワーク1Aの加工時間を短縮することができる。
【0066】
排気通路4は、傾斜部分12に相当する傾斜部分を有していないが、そのような傾斜部分を有していてもよい。その場合、吸気通路3と同様の方法で排気通路4に傾斜部分が形成される。