(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、液体から化合物を吸着、精製または分離するために用いることができる、より効率的で、また機械的に安定な合成膜を対象とし、この膜は、吸着、精製または分離の課題の要求に従って選ぶことができる、膜内に閉じ込められた粒子を有する。
【0017】
本明細書において用いられる「ドープされた膜」という表現は、この膜特性を調整する目的で、この膜の形成中に膜内へ粒子(「不純物」と呼ばれることもある。)を取り込むことを指す。
【0018】
本明細書において用いられる「粒子」という表現は、疎水性材料またはイオン交換材料などの、ある種の非中空材料またはゲル−タイプの材料の、非中空の断片またはゲル状の断片を指す。本明細書において用いられる「ゲル」または「ゲル−タイプ」という表現は、永続的な空孔構造を持たない材料または樹脂を指す。一般に、該空孔は小さいと考えられ、一般に30Åを超えず、ゲル状(gelular)空孔または分子空孔と呼ばれる。空孔構造は、ポリマーの架橋レベル、溶媒の極性および運転条件に伴って変化する、ポリマー鎖と架橋結合との間の距離によって決まる。ゲルタイプの樹脂は、一般に半透明である。断片または粒子は、おおよそ球の形または引き伸ばされた、もしくは立方体でもよい、不規則でとがった形状など、様々な形状を有してもよい。本発明の文脈において論じる粒子は、0.1から約100μmの平均サイズ(直径)を有する。
【0019】
本明細書において用いられる「イオン交換材料」という表現は、周囲の媒体中のイオンと交換が可能な変化しやすいイオンを含む不溶性のポリマーマトリックスを指す。一般にイオン交換樹脂は、0.30から1.2mmの間の粒径を有するほぼ球形のビーズの形態で水で濡れた状態で供給される。所与の樹脂は、官能基と関連し、樹脂粒子の外面に付着している特徴的な水分を有する。特に、水で濡れたイオン交換樹脂は、あるイオンの形態から別の形態に変わるときに収縮または膨張し、また、乾燥および/または非極性溶媒と接触しているときは収縮する。
【0020】
本発明による膜は、中空糸のみならず様々な幾何形状、平坦な被覆シートおよび非中空糸で提供できることが本発明の1つの態様である。先行技術と比べて小さい肉厚を有する中空糸膜の調製が可能であり、従って使用時に、より接近しやすく、膜の効率が高くなるようにすることが本発明の特定の態様である。
【0021】
先行技術に従って閉じ込められた粒子を持つ膜を調製するとき、安定な膜、特に中空糸膜を得ることが問題である。先行技術に記載されている工程においては、マクロボイドの形成および肉厚の変化により、中空糸膜が不安定になる傾向がある。紡糸中に繊維が紡糸ノズルで裂けるため、紡糸は一般に難しく、工程はしばしば中断される。従って、先行技術に見られる繊維は一般に、約250μmの大きな肉厚を持つ非中空糸または中空糸である。従って、本発明の1つの態様において、膜は、中空糸膜または平坦なシート膜のいずれも150μm未満の肉厚を有する。本発明の特定の態様によれば、肉厚は100から150μmの間である。
【0022】
本発明の別の態様によれば、先行技術の膜と比較して膜の物理的な安定性が改善されて、また肉厚が低減されるこのような膜を得るためには、40重量%未満の低い粒子充填量を持つ膜を調製することが極めて重要である。本発明の特定の態様によれば、粒子充填量は、膜の全重量に対して5重量%から40重量%の間の範囲にあるべきである。本発明のさらに別の態様において、粒子充填量は、膜の全重量の20重量%から35重量%の範囲にあるべきである。
【0023】
同時に、粒子の平均サイズおよび紡糸溶液中におけるこの粒子の挙動を綿密に制御することが重要である。本明細書において用いられる粒径データとは、それ自体および膜内に取り込まれたときの両方の湿潤状態の粒子を指す。15または20μmを超える平均径を持つ粒子は、有用な膜を得るためには問題となることが明らかになった。同じことが、前出の15から20μmを下回るさらに小さな粒子にも当てはまり、この粒子は、粒子が互いに離れたままで、また粉砕時ならびに特に紡糸溶液の生成および紡糸そのものの間にすぐに塊にならないように、粉砕工程および紡糸溶液の調製工程ならびに紡糸そのものが制御されていない場合は、粉砕時に直径で1μmから0.1μmの間ほど小さくなることもある。従って、閉じ込められた粒子が20μm未満、好ましくは15μm未満の平均径を有する膜を提供することが本発明の1つの態様である。本発明の1つの態様によれば、閉じ込められた粒子は、10μm未満の平均径を有するべきである。本発明の1つの態様によれば、閉じ込められた粒子の平均径は、15μm未満であるべきである。本発明の別の態様によれば、閉じ込められた粒子の平均径は、0.1μmから10μmの範囲にあるべきである。
【0024】
本発明に従って膜内に閉じ込めることができる粒子および本明細書に開示されている工程は、先行技術(参照により本明細書に組み込まれるWO2004/003268A1)においても開示されているものなど、様々な特性のものであってもよい。本発明の1つの態様によれば、粒子は、当技術分野において広く知られ、市販もされているイオン交換材料から調製されるイオン交換粒子である。本発明の1つの特定の態様によれば、陽イオンまたは陰イオン交換材料を、本発明のドープされた膜を調製するために用いることができる。本発明の別の態様によれば、粒子は、活性炭、カーボンナノチューブ、疎水性シリカ、スチレン系ポリマー、ポリジビニルベンゼンポリマーおよびスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーからなる群から選ばれる疎水性粒子である。
【0025】
本発明の1つの態様によれば、ドープされた膜を調製するために塩基性陰イオン交換材料が用いられ、これは、ポリスチレンまたはスチレン−ジビニルベンゼンをベースとしてもよく、スルホン酸、ポリアミンまたは第四級もしくは第三級アミンで修飾されてもよい。本発明の1つの態様によれば、粒子は、第四級アンモニウム基、ジメチルエタノールアミン基、ジメチルエタノールベンジルアンモニウム基、ベンジルトリアルキルアンモニウム基、ベンジルジメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムおよび/またはトリメチルベンジルアンモニウム官能基などの活性基を保持する、スチレンおよびジビニルベンゼンのコポリマーをベースとする。本発明の特定の態様によれば、用いられる粒子は、第四級アンモニウム基を保持する、スチレンおよびジビニルベンゼンのコポリマーをベースとする。本発明の1つの態様によれば、スチレンおよびジビニルベンゼンのコポリマーは、トリメチルベンジルアンモニウム官能基を保持し、コレスチラミン(cholestyramine)、Cuemid、MK−135、Cholbar、Cholbar、Questran、Quantalan、コレスチラミン(Colestyramine)またはダウエックス(登録商標)1x2−Clおよびピュロライト(登録商標)社のコレスチラミンとも呼ばれる。本発明の別の態様によれば、陰イオン交換材料は塩化物の形で用いられる。
【0026】
同様に使用可能な陰イオン交換媒体は、例えば、Amberlite(登録商標)の商品名で知られている。例えば、Amberlite(登録商標)は、第四級アンモニウム基、ベンジルジメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム基またはジメチルエタノールアミン基などの活性基または官能基を有するスチレン−ジビニルベンゼンで形成されたマトリックスを備える。使用可能な他の陰イオン交換媒体は、例えば、ダウエックス(登録商標)の商品名で知られている。例えば、ダウエックス(登録商標)は、トリメチルベンジルアンモニウムなどの活性基または官能基を有することができるスチレン−ジビニルベンゼンで形成されたマトリックスを備える。
【0027】
本発明のさらに別の態様において、本発明の膜内に閉じ込められた粒子は、例えば、Luviquat(登録商標)として知られるビニルイミダゾリウムメトクロリドビニルピロリドンコポリマーをベースとする。
【0028】
本発明のさらに別の態様によれば、粒子は、DOWEX(商標)OPTIPORE(商標)L493およびV493もしくはAmberlite(登録商標)XAD(登録商標)−2、ポリジビニルベンゼンポリマーもしくはスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー(例えばAmberlite(登録商標)XAD4もしくはAmber−chrom(商標)CG161)、ポリ(1−フェニルエテン−1,2−ジイル)(Thermocole)、もしくは表面に化学的に結合された疎水性基を有するシリカである疎水性シリカ、またはこれらの組み合わせのような、スチレン系ポリマーなどの電荷を帯びていない疎水性粒子でもよい。疎水性シリカは、ヒュームドシリカおよび沈降シリカのいずれからも作ることができる。疎水性シリカは、ヒュームドシリカおよび沈降シリカのいずれからも作ることができる。使用可能な疎水性基は例えば、アルキル鎖またはポリジメチルシロキサン鎖である。使用可能な別の疎水性材料は、どのような官能基も持たないスチレンおよびジビニルベンゼンのコポリマーであるUjotitとして知られ、Ujotit PA−30、Ujotit PA−40またはUjotit PA−20として入手できる。本発明に従って用いることができる活性炭粒子は、例えば、Printex(登録商標)XE2(デグサAG)またはNorit(登録商標)GAC1240PLUS A(ノリット・ネーデルラントBV)などのカーボンから得ることができる。
【0029】
用いることができる陽イオン交換粒子は、アガロース、セルロース、デキストラン、メタクリレート、ポリスチレンのマトリックスを通常ベースとしているか、またはポリアクリル酸である。これらは例えば、Sepharose(登録商標)CM、Sephadex、Toyopearl(登録商標)、Amberlite(登録商標)、ダイヤイオン(商標)、ピュロライト(登録商標)、ダウエックス(登録商標)およびデュオライト(登録商標)SO
3Hなどの商品名でそれぞれ一般に知られ、市販されている。
【0030】
本発明のドープされた膜を得るためには、20μm未満または15μm未満、例えば、0.1から10μmの間の平均粒径を持つ粒子の調製を可能にする粉砕方法を提供し、粉砕の間または粉砕後ならびに紡糸溶液の生成および/または紡糸そのものの間に、粒子がさらに大きな粒子に形を変えず、または塊にならないことが重要である。言い換えれば、粉砕方法およびその後の紡糸溶液の生成では、約0.1から15μmの上記平均サイズを持つ粒子を確実に維持しなければならない。
【0031】
本発明の1つの態様によれば、用いられる粒子は、ゲルイオン交換材料(ゲル樹脂)をベースとする。例えば、ダウエックス(登録商標)1x2−Clは、100から200メッシュの間の粒径を持つゲルとして提供されている。例えば、前述の陰イオン交換材料の通常の粒径は、特定の出発原料に応じて20から400メッシュ(μm)の範囲にある。陰イオン交換材料など、ほとんどのイオン交換材料は、ゲルとして提供されている。ゲル樹脂は一般に、例えば、微孔性の樹脂と比べてイオン容量が大きい。このようなイオン交換樹脂は吸湿性であり、材料によって含まれる水分量は、架橋および官能基のタイプに左右される。第四級アンモニウムなどの官能基を持つ低架橋ゲル樹脂は、大量の水を含み、膨潤する。従って、水を添加および除去すると、膨潤および収縮を生じる。材料の吸湿特性および膨潤特性は、粉砕工程ならびに、特に紡糸溶液の生成および次の紡糸工程に著しく影響を与える。試験では、追加の水がない状態で行ったイオン交換材料の乾式粉砕において、約1から7μmの所望の範囲の微粒子が生じることを示すことができた。しかし粒子は、他の成分の中でも、水を含む標準的なポリマー溶液に加えると膨潤した。さらに、粒子は特に、水を含む紡糸溶液に加えると塊になることが示された。ポリマー溶液中に最終的に存在する粒子は、粒子の紡糸溶液への添加または、この逆の添加が非常にゆっくりと行われた場合でも、再び最大20から30μmのサイズを有し、紡糸の間にこのようなサイズで膜内に堆積したことが明らかになった(実施例1、2.2、3および6参照)。結果として大きな粒子によってノズルが詰まるため、膜の紡糸は難しく、しばしば中断され、この場合、紡糸が中断され、繊維が裂ける。生じる膜内には、
図3に示すSEMを見て分かる通り、粒子が豊富にある、水によって形成された空洞または空隙内に粒子がよく見えている。さらに、膜の外面または内面に近い、またはこれらの面を貫いている大きな粒子は膜を不安定にし、また膜構造から洗い流されやすい。従って、目標とする物質を液体から除去または吸着するためのこのような膜の効果および有用性は制限される。
【0032】
次に、このような問題を避けるために、水溶液中または水および有機溶媒を含む溶液中で粒子を粉砕することが重要であることを示すことができる。有機溶媒は通常、紡糸溶液を生成するためにも用いられる有機溶媒とする。この結果、粒子、水および、場合により、有機溶媒を含む懸濁液が生成される。懸濁液を生成するために用いられる水の量は変わってもよい。
【0033】
本発明の1つの態様によれば、水は、紡糸溶液を生成するために必要な水の量に対応した量で加えるべきである。言い換えれば、通常なら紡糸溶液の成分となる十分な量の水は、粉砕するためのイオン交換材料に既に加えられている。従って、後の段階、例えば、最終的な紡糸溶液の生成の間に加えられる水のどのような影響も回避される。しかし、本発明による所期のサイズの粒子の形成および維持を支え、粒子がさらに膨潤および/または凝集するのを回避できる量の水である限り、十分な量の水の一部のみ粉砕工程に加えることも可能である。
【0034】
本発明の別の態様によれば、水は有機溶媒によって補われ、この溶媒は、通常なら膜紡糸溶液を生成するために用いられる有機溶媒に応じて選ばれる。このような有機溶媒は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン(NEP)、N−オクチル−2−ピロリドン(NOP)などのN−アルキル−2−ピロリドン(NAP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、THF、ブチロラクトン、特に4−ブチロラクトン、およびε−カプロラクタムまたはこれらの混合物を含む群から選ぶことができる。しかし、合成膜の調製のための有機溶媒としても用いられるどのような他の有機溶媒を工程内で用いてもよい。このような有機溶媒は一般に、当技術分野において周知である。本発明の1つの態様によれば、水とNMPの混合物がイオン交換材料を粉砕するために用いられる。
【0035】
本発明の別の態様によれば、水および任意選択の有機溶媒に加えて、ポリビニルピロリドン(PVP)を粉砕溶液に加えることができる。PVPの濃度は変わってもよい。通常、PVP濃度は、最終的なポリマー紡糸溶液の組成によって決まる。従って、PVPを含むポリマー組成をベースとしたドープされた膜用の粒子は、ポリマー紡糸溶液に加えられることになるPVPの最大の総量までの濃度でPVPを含んでもよい溶液中で粉砕することができる。例えば粒子のない膜は、80から99重量%のポリエーテルスルホンなどの疎水性ポリマーおよび1から20重量%のポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマーからなっていてもよい。PVPは、大きな(≧100kD)および小さな(<100kD)分子成分からなり、ここでPVPは、膜内のPVPの全重量に基づいて10から45重量%の高分子量成分および膜内のPVPの全重量に基づいて55から90重量%の低分子量成分からなる。本発明による膜を調製するための紡糸溶液には、例えば、12から19重量%の間の疎水性ポリマーおよび5から12重量%のPVPが含まれ、該PVPは、低分子および高分子PVP成分からなる。高分子量および低分子量PVPの例には例えば、それぞれPVP K85/K90およびPVP K30がある。PVPは、粉砕懸濁液を安定化し、所望のサイズでの粒子の維持を促進することが明らかになった。
【0036】
このような粉砕工程によって粉砕時間を大幅に削減することができることが、本発明の別の態様である。さらに、驚いたことに、より軟らかい材料は、本発明による工程においてさらに容易に粉砕されることが分かったため、エネルギー消費も大幅に低減される。通常、脆い、または頑強な材料が粉砕には、より適している。
【0037】
様々な粉砕機が、本発明による粉砕工程のために用いることができる。このようなミルでは、圧力、温度およびエネルギー投入量が制御可能であるべきである。撹拌ビーズミルは、例えば、Nitzsch、ホソカワアルピネまたはWABなどのメーカーから市販されている。例えば、NitzschのLABSTARミルは、一般に実験室規模の用途に用いられるが、本発明に従って使用することができる。特定の粉砕材料について得られた工程データは、さらにスケールアップ時に利用することができて、同じメーカーから入手できる生産機に適用できることもある。
【0038】
本発明の1つの態様によれば、膜は、本発明による膜内に閉じ込められた材料に結合または吸着した液体物質から除去または精製するために、効果的に用いることができる。1つの態様によれば、本発明の膜は、液体から核酸を除去または精製するために用いられる。別の態様によれば、本発明の膜は、内因性および/または外因性毒素を含む、ある種の目標物質を液体から除去または精製するために用いられる。このような液体には、例えば、全血、例えば、血漿のような血液分画などの血液製剤、細胞培養懸濁液もしくはこれらの上清および/またはこれらの任意の分画ならびに水、有機溶媒またはこれらの混合物をベースとした溶液が含まれてもよく、1つまたは複数の化合物がこれらの液体から除去または精製され、これらの化合物は、膜にドープされたイオン交換粒子または活性炭粒子などの疎水性または親水性材料に結合または吸着することになる。膜内に閉じ込められる材料は、当該液体から除去または精製されることになっている目標化合物に応じて選ばれることが必要になる。
【0039】
本発明の膜は、様々な幾何形状、例えば中空糸の幾何形状などで調製および使用してもよい。また、膜は平坦なシート膜として調製してもよい。さらに非中空膜を調製することも可能である。本発明の1つの態様によれば、中空糸膜の肉厚は150μm未満である。本発明の別の態様において、非中空糸膜または中空糸膜の内径は400μm未満、一般に250μmから400μmの間である。
【0040】
本発明の別の態様によれば、膜は、血液または例えば、血漿などの血液製剤から、ある種の化合物を除去、吸着、分離および/精製するために用いられる。本発明のさらに別の態様によれば、膜は、水溶液、例えば、水または透析液などからある種の化合物を除去、吸着、分離および/精製するために用いられる。
【0041】
本発明の1つの態様によれば、膜は、膜内に閉じ込められた粒子を有することを特徴とし、ここで粒子は、活性炭粒子および/またはスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーをベースとした疎水性粒子および/または、陽イオン交換材料もしくは陰イオン交換材料、例えば、ポリ第四級アンモニウム官能化されたスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーをベースとした陰イオン交換材料などのイオン交換材料からなっていてもよい。
【0042】
別の態様によれば本発明は、膜内に閉じ込められた粒子を有することを特徴とする膜に関し、ここで粒子は、例えば、Luviquat(登録商標)などのポリ第四級アンモニウム官能化されたビニルイミダゾリウムメトクロリドビニルピロリドンコポリマーをベースとした塩基性陰イオン交換材料からなる。
【0043】
本発明の別の態様によれば、ポリ第四級アンモニウム官能化されたスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーおよびビニルイミダゾリウムメトクロリドビニルピロリドンコポリマーは、ジメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、ジメチルエタノールベンジルアンモニウム、ジメチルエタノールアンモニウムおよびベンジルトリエチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1つの第四級アンモニウムで官能化されている。本発明のさらに別の態様によれば、官能化されたポリ第四級アンモニウムコポリマーは、本発明の膜を調製および提供するために、塩化物の形で用いられる。
【0044】
本発明の別の態様によれば、粒子は、膜の全質量の5から40重量%を補う。本発明のさらに別の態様によれば、粒子は、膜全体の20から35重量%の間の量で存在する。
【0045】
本発明の別の態様によれば、粒子は、直径で15μm未満の平均サイズを有する。本発明のさらに別の態様によれば、粒子は、直径で0.1から10μmの間の平均サイズを有する。本発明のさらに別の態様によれば、粒子は、直径で0.1から1.0μmの間の平均サイズを有する。
【0046】
本発明の別の態様によれば、膜は別の場合には、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドおよびポリアクリロニトリルからなる群から選択される少なくとも1つの疎水性ポリマーならびに少なくとも1つの親水性ポリマーからなる。本発明のさらに別の態様によれば、親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグリコールモノエステル、水溶性セルロース系誘導体、ポリソルベートおよびポリエチレン−ポリプロピレンオキシドコポリマーからなる群から選択される。ポリマー紡糸溶液中の粒子含有量は変わってもよい。1つの態様によれば、粒子含有量は、紡糸溶液の約0.1から12重量%である。別の態様によれば、紡糸溶液中の粒子含有量は、紡糸溶液の1から10重量%である。本発明のさらに別の態様によれば、粒子含有量は、紡糸溶液の1から8重量%である。
【0047】
本発明の1つの態様によれば、本発明のドープされた膜は、微孔性膜である。微孔性膜は、当技術分野において周知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれるEP1875957A1の開示に従って調製することができる。本明細書において用いられる「微孔性」という表現は、膜内の選択的な分離層の平均空孔直径が、0.1から10μm、好ましくは0.1から1.0μmの範囲にあるという特徴がある膜を指す。
【0048】
本発明の1つの態様によれば、ドープされた微孔性中空繊維膜は、凝固(precipitation)浴中に、中空繊維紡糸ノズルの外環スリットを通じてポリマー溶液を押し出し、同時に中空繊維紡糸ノズルの内側の孔を通じて中心流体(center fluid)を押し出すステップを含む工程において調製することができて、この工程によるポリマー溶液には、疎水性および/またはイオン交換粒子が0.1から10重量%、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)またはポリアリールエーテルスルホン(PAES)などの疎水性ポリマーが10から26重量%、ポリビニルピロリドン(PVP)が8から15重量%、例えば、NMPなどの溶媒が55から75重量%、ならびに水が3から9重量%含まれる。中心流体には、例えば、NMPなどの溶媒が70から90重量%、水が10から30重量%含まれ、凝固浴には、例えば、NMPなどの溶媒が0から20重量%、水が80から100重量%含まれる。
【0049】
本発明の別の態様によれば、本発明のドープされた膜は限外濾過膜である。このタイプの膜には、選択的な層の上で、デキストラン篩実験から求められる孔径が約2から6nmであるという特徴がある。限外濾過膜の調製は当技術分野において周知であり、例えば、US−A4,935,141、US−A5,891,338およびEP1578521A1(これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる。)に詳細に記載されている。本発明の1つの態様によれば、本発明によるドープされた限外濾過膜は、粒子ならびに疎水性および親水性ポリマーを、膜の調製に用いられるポリマー溶液中の疎水性ポリマーの割合が5から20重量%、親水性ポリマーの割合が2から13重量%になるような量で含むポリマー混合物から調製する。
【0050】
本発明の別の態様によれば、本発明による膜を調製するためのポリマー溶液は、イオン交換粒子および/または疎水性粒子を0.1から8重量%、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)およびポリアリールエーテルスルホン(PAES)からなる群から選択される第1のポリマーを11から19重量%、ポリビニルピロリドン(PVP)などの第2のポリマーを0.5から13重量%、ポリアミド(PA)を0重量%から5重量%、好ましくは0.001から5重量%、水を0から7重量%、ならびにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)(これが好ましい。)、N−エチル−2−ピロリドン(NEP)、N−オクチル−2−ピロリドン(NOP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびガンマ−ブチロラクトン(GBL)からなる群から選択される溶媒を100重量%までの残余分だけ含む。
【0051】
本発明のさらに別の態様において、本発明の膜の調製に用いられるポリマー溶液には、ドープされた膜内に含まれる粒子に加えて、疎水性ポリマーとしてポリエーテルスルホンまたはポリスルホンが12から15重量%、PVPが5から10重量%含まれ、該PVPは、低分子および高分子PVP成分からなる。紡糸溶液中に含まれる総PVPは、22から34重量%、好ましくは25から30重量%の高分子量(>100kDa)成分および66から78重量%、好ましくは70から75重量%の低分子量(≦100kDa)成分からなる。高分子量および低分子量PVPの例は例えば、それぞれPVP K85/K90およびPVP K30である。本発明の工程内で用いられるポリマー溶液には、さらに溶媒が66から86重量%、適した添加剤が1から5重量%含まれることが好ましい。適した添加剤には例えば、水、グリセロールおよび/またはその他のアルコールがある。水が特に好ましく、使用時は、紡糸溶液中に1から8重量%、好ましくは2から5重量%存在する。本発明の工程内で用いられる溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ブチロラクトンおよび該溶媒の混合物から選ばれるのが好ましい。NMPが特に好ましい。膜を調製するために用いられる中心流体または孔の液体には、前述の溶媒が少なくとも1つ、ならびに水、グリセロールおよびその他のアルコールから選ばれる凝固媒体が含まれる。中心流体は、45から70重量%の凝固媒体および30から55重量%の溶媒からなることが最も好ましい。中心流体は、51から57重量%の水および43から49重量%のNMPからなることが好ましい。このような膜を調製するための方法は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願第08008229号に詳細に開示されている。
【0052】
本発明のさらに別の態様によれば、本発明のドープされた膜は、いわゆる蛋白質分離膜であり、「血漿精製膜」または「血漿分画膜」と呼ばれることもある。このような膜は、100kD未満の分子量を有する分子の90%以上を通過させる一方で、1000kDを超える分子量を有する分子は、非常に限られた範囲でのみ(≦10%)膜壁を通過するという特徴がある。従って、膜によって血漿を主に大きな蛋白質/脂質を含む分画と、例えば、アルブミンなどの小さな蛋白質を含む分画とに分離することができる。このタイプの膜は周知であって、市販もされており、例えば、「Monet(登録商標)」フィルター(フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランドGmbH)がある。
【0053】
本発明の1つの態様によれば、膜は中空糸の幾何形状を有する。本発明の別の態様によれば、膜は平坦なシートの幾何形状を有する。
【0054】
中空糸の幾何形状の本発明の膜を調製するための方法を提供することが本発明の別の目的であり、この方法には、(a)場合により、PVPおよび/または有機溶媒も含む水溶液中で最大15μmの平均サイズまで粒子を粉砕するステップと、(b)場合により、粉砕された粒子を有機溶媒中でさらに懸濁させるステップと、(c)少なくとも1つの親水性ポリマーおよび少なくとも1つの疎水性ポリマーとステップ(a)または(b)の懸濁液とを組み合わせるステップと、(d)ポリマー粒子懸濁液を撹拌して粒子が懸濁したポリマー溶液を得るステップと、(e)ポリマー粒子懸濁液を脱気するステップと、(f)中心流体はノズルの内側の開口部を通じて押し出され、ポリマー溶液を2つの同心の開口部を持つノズルの外環スリットを通じて懸濁粒子と共に押し出すステップと、(g)場合により、凝固中の繊維の外側にあるポリマー溶液を、水含有量に対して0から10重量%の間の含有量で溶媒を含む湿った蒸気/空気混合物にさらすステップと、(h)非溶媒の浴中に凝固中の繊維を浸すステップと、(i)膜を洗浄ならびに場合により乾燥および滅菌するステップとが含まれる。
【0055】
平坦なシートの幾何形状の本発明の膜を調製するための方法を提供することが本発明の別の目的であり、この方法には、(a)場合により、PVPおよび/または有機溶媒の存在下で水溶液中で最大15μmの平均サイズまで粒子を粉砕するステップと、(b)場合により、有機溶媒中で粒子溶液をさらに懸濁させるステップと、(c)少なくとも1つの親水性ポリマーおよび少なくとも1つの疎水性ポリマーとステップ(a)または(b)の懸濁液とを組み合わせるステップと、(d)ポリマー粒子懸濁液を撹拌して粒子が懸濁したポリマー溶液を得るステップと、(e)ポリマー粒子懸濁液を脱気するステップと、(f)滑らかな表面上に均一なフィルムとして懸濁粒子と共にポリマー溶液をキャストするステップと、(g)膜を洗浄ならびに場合により膜を乾燥および/または滅菌するステップとが含まれる。
【0056】
本発明のさらに別の態様において、もちろん本発明に基づいた中空糸膜を作製することが可能であり、ここで膜は、同心円状に配置された複数の層を有し、少なくとも1つの層には、本発明による膜内に閉じ込められた15μm未満の平均粒子サイズを有する粒子が5から40重量%含まれる。イオン交換粒子および/またはカーボン粒子を含む層に隣接した層は、例えば体外システム内において、血液または血液成分の処理を伴う用途で血液と接触する層が好ましい。このように、どのような粒子も膜から洗い流されるリスクが最小限に抑えられる。また、粒子を含む層の外面および内面に隣接する層を有することも可能である。多層膜は、WO2006/019293A1(参照により本明細書に組み込まれる。)に開示されているものと類似させて生産することができる。
【実施例】
【0057】
[実施例1]
水ありおよび水なしでのイオン交換樹脂の粉砕
粉砕は、Netzsch製LabStar LS1粉砕機を用いて行った。ダウエックス(登録商標)1x2陰イオン交換体を、別々の2つのバッチAおよびバッチBで、水および有機溶媒としてのNMPの存在下で粉砕した(それぞれバッチBおよびバッチAに対応する
図4Aおよび4Bも参照)。バッチCは水がない状態で粉砕した。表Iに粉砕処理の設定をまとめた。
【0058】
【表1】
【0059】
エネルギー投入量、ポンプ速度および粉砕された粒子で得られる平均サイズを制御するために工程データを収集した。
図4は、表Iの上記バッチの結果を示す。見て分かる通りバッチAでは、q99%が7.6μmの粒子が生じた。バッチBでは、q99%が5.9μmの粒子が生じた。水の存在下ではバッチAおよびバッチBの大部分の粒子が、1μmをはるかに下回る直径を有する。
【0060】
比較例のバッチC(
図5も参照)では、q99%が8.0μmの粒子が生じ、このこと自体は、少なくとも15μm未満の粒子を得るという目標に関しては満足のいく結果であった。しかし、バッチAおよびバッチBの生じた粒子は既に膨潤していた。しかし、バッチCの粒子は、紡糸溶液中に存在する水とまだ接触させてはいなかった(実施例2.2参照)。
【0061】
[実施例2]
2.1 水の存在下で粉砕された粒子を含む紡糸溶液の調製
バッチAの粒子(実施例1参照)を、ドープされた微孔性膜を調製するための紡糸溶液の調製に用いた。ポリマー組成は、疎水性ポリエーテルスルホン(PES)と高分子量(PVP K85)および低分子量(PVP K30)を有するポリビニルピロリドンの混合物との組み合わせになるよう選んだ。紡糸溶液にはさらに、溶媒としてのNMPおよび水が含まれていた。
【0062】
バッチA(2414.48g)は、粉砕後、陰イオン交換粒子(19.88%)、NMP(65.21%)およびH
2O(14.91%)からなっていた。この懸濁液をガラス製の反応器内に満たし、NMP1362.97gを加えた。懸濁液が均質になるまでU=600分
−1で撹拌した。続いて、懸濁液の均質化および解凝集のため、ヒールッシャー製超音波装置(UP400S)を用いて撹拌下で1時間処理した。UP400Sは、サイクル1、出力45%およびエネルギー投入量150Wに設定した。
【0063】
次いで、PVP K85(180g)を懸濁液に加え、撹拌機を1000分
−1に設定した。PVP K85を撹拌下で溶解し、超音波を1時間かけた。次いで、PVP K30を360g加え、同様に撹拌下で溶解し、超音波をかけた。次いで、PES960gを加え、15分後に超音波装置を取り外した。撹拌速度は、懸濁液の見掛け粘度に合わせた。PESが完全に溶解した後、平均粒径を粒子計数器で求めた。この目的のために、溶液を100μl採取し、ガラス瓶内のNMP600mlに加えた。サンプルを約15分から20分間撹拌した。粒子計数器は、以下の通り設定した。チャネル設定:16/2−100μm、サンプル量:5ml、流量:60ml/分、試験回数:9回、希釈係数:1.0、最初の試験は棄却。約15μmより大きな粒子は、紡糸溶液中に検出されなかった。
【0064】
紡糸できる状態の紡糸溶液は、粉砕されたダウエックス(登録商標)1x2陰イオン交換体:8%、NMP:61%、PVP K85:3%、PVP K30:6%、PES:16%、H
2O:6%からなっていた(重量%)。
【0065】
バッチBの粒子を含む紡糸溶液は、これに応じて調製した。バッチ(1622.9g)Bには、粉砕後、粉砕されたダウエックス(登録商標)1x2粒子(17.75%、NMP:68.87%および水(13.35%)が含まれていた。NMP(1083.82g)を、上でバッチAについて記述した通り処理した懸濁液に加え、PVP K85(108.27g)、PVP K30(216.54g)およびPES(577.44g)を加えた。約15μmより大きな粒子は、紡糸溶液中に検出されなかった。紡糸できる状態の紡糸溶液は、粉砕されたダウエックス(登録商標)1x2陰イオン交換体:8%、NMP:61%、PVP K85:3%、PVP K30:6%、PES:16%、H
2O:6%からなっていた(重量%)。
【0066】
2.2 有機溶媒の存在下で粉砕された粒子を含む比較例の紡糸溶液の調製
粉砕後の実施例2(バッチC)の陰イオン交換体粒子懸濁液には、NMP(222.07)および25重量%の陰イオン交換粒子(191.92g)が含まれていた。懸濁液を、実施例2.1に記載されているように超音波で1時間処理した。最適な均質化および解凝集を保証するために、幾つかのバッチを(別々に)処理した。次いで、処理した懸濁液を三つ口フラスコに移した。フラスコ内の最終的なNMP含有量を、NMP1830g(最終的なポリマー溶液の61重量%)および陰イオン交換材料239.9g(最終的なポリマー溶液の8%)の合計に合わせて設定した。PVP K85(90g)を徐々に溶液に加え(最終的なポリマー溶液の3%)、続いて注意深くPVP K30を180g加えた(最終的なポリマー溶液の6%)。PVP成分が完全に溶解するまで超音波処理を施した。次いで、PES(480g)を45℃の温度で徐々に加えた(最終的なポリマー溶液の16%)。最後に、H
2O(180g)を注意深く加えた(最終的なポリマー溶液の6%)。
【0067】
粒径を制御した各ステップの後に、以下の結果を得た。(1)粒子およびNMPの混合後:d99=20μm、(2)PVP K85添加後:d99=30μm、(3)PVP K30添加後:d99=30μm、(4)PES添加後:d99=25μm、(5)十分な水の添加後:d99=30μm。次いで、ポリマー溶液を紡糸に使用した。
【0068】
[実施例3]
ドープされた中空糸膜の調製
中空糸の紡糸は、実施例2のすべてのポリマー溶液について当技術分野で説明されている通り行った。各種膜に使用したポリマー成分および溶媒成分は、再び表IIに記載しており、表中、サンプル2から3aは、バッチAの粒子を含む紡糸溶液を用いて調製し(実施例1および2.1)、サンプル4から5は、バッチBの粒子を含む紡糸溶液を用いて調製した(実施例1および2.1)。サンプル1は、実施例1(バッチC)に記載されている粒子を含む実施例2.2による紡糸溶液から調製した。また表IIは、紡糸工程に用いた中心流体の組成を示す。
【0069】
【表2】
【0070】
紡糸工程用に、実施例2のそれぞれのポリマー溶液を、安定したステンレス製容器に移した。容器を閉じて、溶液を脱気するために真空にした。溶液を脱気し、次いで50℃に加熱して紡糸ダイ(1200×440×220μm)を通過させ、凝固浴に入れた。中心流体として、H
2O22%とNMP78%の混合物を用いた(表II)。紡糸ダイ(SD)および紡糸シャフト(SS)の温度は、表IIIから得られる。中空糸膜は、13.0から13.2m/分の間の紡糸速度で形成した(表III参照)。ダイを出る液体の繊維は、温度が約65℃の加熱された凝固(水)浴中を通過させた(表III参照)。繊維は、ダイを出るとき、凝固浴から出る水蒸気に包まれていた。ダイの出口と凝固浴との間の距離は、7 to cmであった(表III参照)。凝固された繊維は、幾つかの水浴を通して導き、オンライン乾燥を施し、続いて繊維をうねらせた。繊維を束にした。
【0071】
生じた中空糸膜は、375から388μmの間の内径および116から122μmの間の肉厚を有していた(表IV参照)。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
[実施例4]
Amberlite(登録商標)IRA410またはPEI、ダウエックス(登録商標)1x2陰イオン交換体およびカーボン粒子でドープされた中空糸膜の調製
ドープされた微孔性中空糸膜は、実施例3に従って調製し、ここで、ポリエチレンイミン(PEI、表Va中のサンプル1から12、サンプル14から16参照)ならびに粉砕されたダウエックス(登録商標)1x2陰イオン交換粒子および高伝導性カーボンブラック粒子Printex(登録商標)XE2(デグサAG)(表V中のサンプル13、サンプル17から24参照)の両方が膜内に閉じ込められた。紡糸溶液の調製は、実施例2.1で先述の通り行った。ポリマー組成は、表Vに記載の通りであった。表VIに、この二重ドープされた膜の生産に適用した紡糸パラメータをまとめた。サンプル1から16をオンライン乾燥し、繊維にうねりを施した。サンプル1から16については、標準的な500×350×170μmを用いた。その他のサンプルについては、1200×440×220μmの紡糸ノズルを用いた。
【0075】
【表5】
【0076】
これに応じて、以下のポリマー組成に基づき、Amberlite(登録商標)IRA−410粒子を含む中空糸膜を調製した(表Vb)。サンプル10から13は、比較のためにAmberlite(登録商標)IRA−410粒子を全く用いずに調製した。サンプル10から16については、三重の紡糸口金を用いた。使用した他の紡糸口金は、サンプル2およびサンプル6から9については600×305×170μmの紡糸口金、サンプル1については500×350×170μmの紡糸口金およびサンプル3から5については1200×440×220であった。紡糸は、表VIbにまとめた通りに行った。また、内径および肉厚も表VIbに示した。DNA捕捉能(吸着)は、サケ精子DNAを用いて測定した(C=40μg/ml、透析液、RT、Q=1.9ml/分、T=50分)。結果は、閉じ込められたAmberlite(登録商標)IRA−410が全くない膜と比較して、
図8に示した。イオン交換体が存在すると、明らかにDNA濃度が低減することが分かる。
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
ダウエックス(登録商標)1x2およびPrintex(登録商標)XE2粒子を用いた繊維の寸法を表VIIに示す。PEIを用いた繊維については約50μmまで、ダウエックス(登録商標)1x2陰イオン交換粒子およびカーボンブラック粒子Printex(登録商標)XE2を用いた繊維については約70から80μmまで肉厚を減らすことが可能であった。
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
[実施例5]
Luviquat(登録商標)FC370粒子を含む平坦なシート膜の調製
Luviquat(登録商標)FC370(BASF AG)粒子(ポリ[(3−メチル−1−ビニルイミダゾリウムクロリド)−コ−(1−ビニルピロリドン)]ポリクアテルニウム)を含むドープされた平坦なシート膜を調製した。ポリマー溶液には、PEASが13.6重量%、PVP K90が2.0重量%、PVP K30が5.0重量%およびNMPが79.4重量%含まれていた。すべての成分をNMP中に溶解して60℃で撹拌した。加えて懸濁液を濾過した(50μm)。温度が50℃の凝固溶液には、水56重量%およびNMP44重量%が含まれていた。特殊なコーターナイフを利用することにより、最終的なポリマー溶液を、支持面として機能する滑らかな表面(ガラススライド)上に均一なフィルムとしてキャストした。まず60℃のポリマー溶液を、シリンジを用いて一定に保ちながらガラススライド上に直接塗布した。コーターナイフを一定の速度で駆動させて、均一なポリマーフィルムを作製した。ポリマーの薄膜を塗布したこのガラススライドを、凝固浴内に速やかに浸した。続いて凝固された膜を取り出し、一連の膜すべてを調製するまで非溶媒中に保管した後、規定のサイズに切断した。切断後、膜を蒸留水で洗浄、乾燥して、最後に、滅菌に用いる特殊な袋に詰めた。
【0083】
[実施例6]
Amberlite(登録商標)IRA−410(比較例)でドープされた平坦なシート膜の調製
ドープされた平坦なシート膜を実施例5に従って調製し、ここで、Amberlite(登録商標)IRA−410(塩化物の形)粒子を様々な濃度で膜内に閉じ込めた(0%、30%および50%)。Amberlite(登録商標)粒子を水中に懸濁させて粉砕し、20μmを超えるサイズの粒子を取り除くために、この材料をPE製の網(50μmおよび20μm)に通した。次いで真空ロータリーエバポレーター内で過剰な水を除去し、NMPを加え、続いて残留する水を取り除くために真空ロータリーエバポレーターを用いて再度処理した。次にポリマー溶液の他の成分をNMP懸濁液に加えた(表VIII参照)。この段階で既に粒子の凝着が見られた。
【0084】
[実施例7]
変性ポリ(p−フェニレンエーテル)(PPE)でドープされた膜の調製
ドープされた微孔性中空糸膜は、実施例3に従って調製し、ここで変性PPEを陰イオン交換体として膜に加えた。変性PPE(FUMA−Tech GmbH、St.Ingbert、5または15%溶液)はPPEの臭素化により生成し、NMP中に溶解させ、n−メチルイミダゾールと反応させた。生じた構造は以下の通り。
【0085】
【化1】
ポリマー組成は、表VIIIに記載の通りであった。表VIII(a)は、陰イオン交換成分あり(a1からa3)および陰イオン交換成分なし(a4)の限外濾過膜を調製するための組成を示す。生じた膜は、表VIII(b)に示す通り調製した。内径は約213から217μm、肉厚は約48から50μmであった。次に、ミニモジュールの助けを借りてDNA捕捉性を比較した(表VIII(c))。再度、サケ精子DNA(40mg/l)を用いて、2ml/分、T=100分で全量濾過した。陰イオン交換体により、DNAの捕捉性を改善することができた。
【0086】
【表10】
【0087】
【表11】
【0088】
【表12】
【0089】
表VIII(d)は、変性PPEを用いた微孔性膜を調製するための組成を示す(表VIII(e))。内径は、b1およびb2について、それぞれ258および259μm、肉厚は、40および42μmであった。前述のようにミニモジュールを用いて再びDNA捕捉性を評価(表VIII(f))し、表VIII(a)および(b)に前述の通り調製した限外濾過膜a4と比較した。再び、DNA捕捉能は明らかに改善された。
【0090】
【表13】
【0091】
【表14】
【0092】
【表15】
【0093】
[実施例8]
ハンドバンドルおよびミニモジュールの調製
紡糸工程後の膜束の調製は、後に続く性能試験用の繊維束を調製するために必要である。最初の工程ステップでは、繊維束を23cmの規定の長さに切断する。次の工程ステップは、繊維の末端を溶かす方法からなる。光学的な制御を用いると、すべての繊維を確実によく溶かすことができる。次いで、繊維束の末端をポッティングキャップ内に移す。ポッティングキャップを機械的に固定し、ポッティングチューブをポッティングキャップの上に置く。次いで繊維は、ポリウレタンを用いてポッティングする。ポリウレタンが硬化した後、ポッティングした膜束を規定の長さに切断し、乾燥保管してから様々な性能試験に使用する。
【0094】
ミニモジュール[=ハウジング内の繊維束]は、同様の方法で調製する。ミニモジュールは、繊維の保護を確実にし、また蒸気滅菌に用いられる。ミニモジュールの製作には、以下の特定のステップが含まれる。
【0095】
(A)必要な繊維の数は、360cm
2の有効表面Aについて式(1)に従って算出する。
【0096】
A=π×d
i×l×n[cm
2](1)
式中、d
iは繊維の内径[cm]であり、nは繊維の量を表し、lは有効繊維長[cm]を表す。
【0097】
(B)繊維束を20cmの規定の長さに切断する。
【0098】
(C)溶融工程の前に、繊維束をハウジング内に移す。
【0099】
ポッティング工程の前に、ミニモジュールを一晩、真空乾燥オーブンに入れる。
【0100】
[実施例9]
膜の液体透過率(Lp)の決定
透過率は、実施例8に記載されているハンドバンドルまたは平坦なシート膜のいずれかを用いて決定した。所与のハンドバンドルのLpを決定するため、該ハンドバンドルの一端をシールし、一定の圧力下で規定量の水を束に通す。この工程には、ある一定の時間がかかることになる。該時間、膜表面積、適用した圧力および膜を通過した水の容積に基づき、Lpを算出することができる。用いる式は、
【0101】
【数1】
であり、式中、Lpは対流透過率[・10
−4cm/bar・s]、Vは水の容積[cm
3]、pは圧力[bar]、Tは時間、およびAは、Α=π・d・l・nで表される、束の有効な膜表面である。適用した圧力は400mmHgであった。
【0102】
平坦なシート膜のLpを決定するために、水浴および試験溶液(蒸留水)を37℃に加熱する。膜(A=27.5cm
2)を試験溶液中に少なくとも30分間浸漬する。浸漬した膜を測定装置に挿入する。600mmHg(0.8bar)の最大圧力をかける。水1mlの通過に必要な時間を求める。用いる式は、
【0103】
【数2】
である。