【実施例】
【0013】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、プラネタリギヤ30と、モータMG1,MG2と、インバータ41,42と、バッテリ50と、冷却装置60と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUという)70と、を備える。
【0014】
エンジン22は、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力する内燃機関として構成されている。このエンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により運転制御されている。
【0015】
エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートから入力されている。各種センサからの信号としては、以下のものを挙げることができる。エンジン22のクランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサからのクランク角θcr。スロットルバルブのポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサからのスロットル開度TH。エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための種々の制御信号が出力ポートを介して出力されている。種々の制御信号としては、以下のものを挙げることができる。燃料噴射弁への駆動信号。スロットルバルブのポジションを調節するスロットルモータへの駆動信号。イグナイタと一体化されたイグニッションコイルへの制御信号。エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。このエンジンECU24は、HVECU70からの制御信号によりエンジン22を運転制御する。また、エンジンECU24は、必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをHVECU70に出力する。エンジンECU24は、クランクポジションセンサにより検出されたクランク角θcrに基づいて、クランクシャフト26の回転数、即ち、エンジン22の回転数Neを演算している。
【0016】
プラネタリギヤ30は、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。プラネタリギヤ30のサンギヤには、モータMG1の回転子が接続されている。プラネタリギヤ30のリングギヤには、駆動輪38a,38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結された駆動軸36とモータMG2の回転子とが接続されている。プラネタリギヤ30のキャリヤには、エンジン22のクランクシャフト26が接続されている。
【0017】
モータMG1は、回転子コアに永久磁石が埋め込まれた回転子と、固定子コアに三相コイルが巻回された固定子と、を有する同期発電電動機として構成されている。このモータMG1は、上述したように、回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されている。モータMG2は、モータMG1と同様の同期発電電動機として構成されている。このモータMG2は、上述したように、回転子が駆動軸36に接続されている。モータMG1,MG2は、モータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40によってインバータ41,42の図示しないスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
【0018】
モータECU40は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。各種センサからの信号としては、以下のものを挙げることができる。モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサからの回転位置θm1,θm2。モータMG1,MG2の各相に流れる電流を検出する電流センサからの相電流。モータECU40からは、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU40は、HVECU70と通信ポートを介して接続されており、HVECU70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の駆動状態に関するデータをHVECU70に出力する。モータECU40は、回転位置検出センサにより検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算している。
【0019】
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、電力ライン54によってインバータ41,42と接続されている。このバッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52により管理されている。
【0020】
バッテリECU52は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。各種センサからの信号としては、以下のものを挙げることができる。バッテリ50の端子間に設置された電圧センサからの電池電圧Vb。バッテリ50の出力端子に取り付けられた電流センサからの電池電流Ib。バッテリ50に取り付けられた温度センサからの電池温度Tb。バッテリECU52は、HVECU70と通信ポートを介して接続されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータをHVECU70に出力する。バッテリECU52は、電流センサにより検出された電池電流Ibの積算値に基づいて蓄電割合SOCを演算している。蓄電割合SOCは、バッテリ50の全容量に対するバッテリ50から放電可能な電力の容量の割合である。
【0021】
冷却装置60は、冷却油によってモータMG1,MG2を冷却する装置として構成されている。この冷却装置60は、オイルパン61と、供給流路62と、機械式オイルポンプ63と、オイルクーラ64と、油温センサ65と、を備える。オイルパン61は、冷却油を貯留している。供給流路62は、オイルパン61の冷却油を機械式オイルポンプ63,オイルクーラ64を介してモータMG1,MG2に供給するための流路として構成されている。この供給流路62は、オイルクーラ64よりも上流側の第1所定位置(例えば、オイルパン61との連通部)からオイルクーラ64よりも下流側の第2所定位置(例えば、モータMG1,MG2への供給部)に向けて車両における高さが高くなるように構成されている。機械式オイルポンプ63は、エンジン22の動力によって作動し、オイルパン61の冷却油を吸引してモータMG1,MG2側に圧送する。オイルクーラ64は、冷却油を冷却する。油温センサ65は、供給流路62のオイルクーラ64よりも上流側に取付られている。
【0022】
この冷却装置60では、エンジン22の運転時には、機械式オイルポンプ63が作動し、オイルパン61の冷却油が機械式オイルポンプ63,オイルクーラ64を介してモータMG1,MG2に供給される(冷却油が順方向に流れる)ことにより、モータMG1,MG2が冷却される。なお、モータMG1,MG2に供給された冷却油は、その後、オイルパン61に戻る。この冷却装置60では、上述したように、供給流路62が、第1所定位置から第2所定位置に向けて車両における高さが高くなるように構成されている。このため、エンジン22が停止されて機械式オイルポンプ63が停止すると、冷却油が供給流路62の第2所定位置よりも上流側で逆方向に流れる(逆流する)。
【0023】
HVECU70は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMやデータを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。各種センサからの信号としては、以下のものを挙げることができる。油温センサ65からの油温(以下、検出油温という)Tod。イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号。シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP。アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc。ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP。車速センサ88からの車速V。HVECU70は、上述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されている。このHVECU70は、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0024】
なお、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトポジションセンサ82により検出されるシフトポジションSPとしては、駐車時に用いる駐車ポジション(Pポジション),後進走行用のリバースポジション(Rポジション),中立のニュートラルポジション(Nポジション),前進走行用のドライブポジション(Dポジション)などがある。
【0025】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、ハイブリッド走行モード(HV走行モード),電動走行モード(EV走行モード)などの走行モードで走行する。HV走行モードは、エンジン22の運転とモータMG1,MG2の駆動とを伴って走行する走行モードである。EV走行モードは、エンジン22を運転停止すると共にモータMG2を駆動して走行する走行モードである。
【0026】
HV走行モードでは、HVECU70は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに基づいて、走行に要求される(駆動軸36に出力すべき)要求トルクTr*を設定する。続いて、設定した要求トルクTr*に駆動軸36の回転数Nrを乗じて、走行に要求される走行用パワーPdrv*を計算する。ここで、駆動軸36の回転数Nrとしては、モータMG2の回転数Nm2や、車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数を用いることができる。
【0027】
そして、走行用パワーPdrv*からバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じて、車両に要求される要求パワーPe*を計算する。そして、要求パワーPe*がエンジン22から出力されると共に要求トルクTr*が駆動軸36に出力されるように、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*,モータMG1,MG2の基本トルクTm1tmp,Tm2tmpを設定する。次に、モータMG1の基本トルクTm1tmpをトルク制限Tm1lim,−Tm1limで制限して、モータMG1のトルク指令Tm1*を設定する。また、モータMG2の基本トルクTm2tmpをトルク制限Tm2lim,−Tm2limで制限して、モータMG2のトルク指令Tm2*を設定する。トルク制限Tm1lim,Tm2limについては後述する。
【0028】
そして、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*をエンジンECU24に送信すると共に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。エンジンECU24は、目標回転数Ne*および目標トルクTe*を受信すると、目標回転数Ne*および目標トルクTe*に基づいてエンジン22が運転されるように、エンジン22の吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを行なう。モータECU40は、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を受信すると、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようにインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0029】
EV走行モードでは、HVECU70は、まず、HV走行モードと同様に、要求トルクTr*を設定する。続いて、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定する。そして、要求トルクTr*が駆動軸36に出力されるようにモータMG2の基本トルクTm2tmpを設定する。次に、モータMG2の基本トルクTm2tmpをトルク制限Tm2lim,−Tm2limで制限して、モータMG2のトルク指令Tm2*を設定する。そして、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信する。モータECU40は、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を受信すると、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようにインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0030】
ここで、トルク制限Tm1lim,Tm2limについて説明する。トルク制限Tm1lim,Tm2limは、モータMG1,MG2の永久磁石の過熱を抑制して永久磁石を保護する(減磁が生じるのを抑制する)ために用いられる。このトルク制限Tm1lim,Tm2limは、基本的には、油温センサ65により検出された最新の検出油温Todを制限用油温Tocとして用いて設定するものとした。まず、最新の検出油温Todを制限用油温Tocに設定し、設定した制限用油温Tocを閾値Torefと比較する。ここで、閾値Torefは、モータMG1,MG2の永久磁石の保護を考慮するために永久磁石の温度を推定する必要がある所定温度領域か否かを判定するために用いられる閾値である。この閾値Torefとしては、例えば、65℃や70℃,75℃などを用いることができる。制限用油温Tocが閾値Toref未満のときには、所定温度領域ではないと判断し、トルク制限Tm1lim,Tm2limにモータMG1,MG2の定格値を設定する。制限用油温Tocが閾値Toref以上のときには、所定温度領域であると判断し、制限用油温Tocが高いほど高くなる傾向にモータMG1,MG2の永久磁石の温度Tpm1,Tpm2を推定する。続いて、推定した永久磁石の温度Tpm1,Tpm2を閾値Tpmref1,Tpmref2と比較する。閾値Tpmref1,Tpmref2は、モータMG1,MG2の永久磁石の保護のために、モータMG1,MG2のトルク制限を開始する温度である。モータMG1については、温度Tpm1が閾値Tpmref1未満のときには、トルク制限Tm1limにモータMG1の定格値を設定し、温度Tpm1が閾値Tpmref1以上のときには、トルク制限Tm1limに、温度Tpm1が高いほどモータMG1の定格値から小さくなる傾向の値を設定する。また、モータMG2については、温度Tpm2が閾値Tpmref2未満のときには、トルク制限Tm2limにモータMG2の定格値を設定し、温度Tpm2が閾値Tpmref2以上のときには、トルク制限Tm2limに、温度Tpm2が高いほど定格値から小さくなる傾向の値を設定する。
【0031】
図2は、オイルパン61に貯留されている冷却油の実際の油温Toaと、油温センサ65により検出される検出油温Todと、の時間変化の様子の一例を示す説明図である。エンジン22の運転中(時刻t11まで)は、エンジン22の動力によって機械式オイルポンプ63が作動し、冷却油がオイルパン61からモータMG1,MG2側に圧送される。このため、実油温Toaと検出油温Todとが略等しい。したがって、検出油温Todを制限用油温Tocとして用いてトルク制限Tm1lim,Tm2limを設定することにより、モータMG1,MG2の過熱を抑制して、モータMG1,MG2の永久磁石を保護することができる、と考えられる。しかし、時刻t11にエンジン22が停止されて機械式オイルポンプ63が停止すると、上述したように、冷却油が供給流路62の第2所定位置よりも上流側で逆方向に流れる(逆流する)。そして、オイルクーラ64によって冷却された冷却油が供給流路62を逆流して油温センサ65付近に至ると、モータMG1,MG2の温度(永久磁石の温度)が低下しているか否かに拘わらず、検出油温Todが比較的迅速に低下する。このときに、検出油温Todを制限用油温Tocとして用いてトルク制限Tm1lim,Tm2limを設定すると、モータMG1,MG2のトルクが十分に制限されなくなり、モータMG1,MG2の温度(永久磁石の温度)上昇を十分に抑制できない可能性がある。その後、時刻t12にエンジン22が始動されて機械式オイルポンプ63が作動すると、冷却油がオイルパン61からモータMG1,MG2側に圧送されることにより、検出油温Todが実油温Toaに近づく。実施例では、エンジン22の停止後の検出油温Todの変化(特に検出油温Todの低下)を考慮して、以下の処理を行なうものとした。
【0032】
図3は、実施例のHVECU70により実行される逆流判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、エンジン22の停止後に実行される。
【0033】
逆流判定ルーチンが実行されると、HVECU70は、まず、最新の検出油温Todと、過去検出油温Tod0と、を入力する(ステップS100)。ここで、最新の検出油温Todは、油温センサ65により検出された最新の値を入力するものとした。過去検出油温Tod0は、油温センサ65により所定時間tp(例えば、4秒や5秒,6秒など)前に検出された値を入力するものとした。
【0034】
こうしてデータを入力すると、最新の検出油温Todを上述の閾値Torefと比較する(ステップS110)。最新の検出油温Todが閾値Toref未満のときには、所定温度領域ではないと判断して、そのまま本ルーチンを終了する。
【0035】
ステップS110で、最新の検出油温Todが閾値Toref以上のときには、最新の検出油温Todから過去検出油温Tod0を減じて検出油温変化量ΔTodを計算する(ステップS120)。続いて、計算した検出油温変化量ΔTodを閾値ΔTodrefと比較する(ステップS130)。ここで、閾値ΔTodrefは、冷却油が供給流路62を逆流することによる検出油温Todの比較的迅速な低下を検知するのに用いられる閾値である。この閾値ΔTodrefとしては、例えば、所定時間が4秒や5秒,6秒などの場合に、−2℃や−2.5℃,−3℃などを用いることができる。
【0036】
検出油温変化量ΔTodが閾値ΔTodrefより大きいときには、ステップS100に戻る。ステップS130で検出油温変化量ΔTodが閾値ΔTodref以下のときには、冷却油が供給流路62を逆流することによる検出油温Todの比較的迅速な低下を検知したと判定する(ステップS140)。続いて、ステップS100で入力した過去検出油温Tod0を保持油温Tosetに設定する(ステップS150)。そして、制限用油温Tocを検出油温Todから保持油温Tosetに切り替えて、即ち、保持油温Tosetを制限用油温Tocとして用いたトルク制限Tm1lim,Tm2limの設定を開始して(ステップS160)、本ルーチンを終了する。
【0037】
こうして保持油温Tosetを制限用油温Tocとして用いたトルク制限Tm1lim,Tm2limの設定を開始すると、その後、後述の戻し条件が成立するまで、保持油温Tosetを制限用油温Tocとして用いてトルク制限Tm1lim,Tm2limを設定する。これにより、冷却油が供給流路62を逆流することによる検出油温Todの比較的迅速な低下によってトルク制限Tm1lim,Tm2limが大きくなってモータMG1,MG2のトルクが十分に制限されなくなる、というのを抑制することができる。この結果、エンジン22の停止後にモータMG1,MG2の温度(永久磁石の温度)が大きく上昇するのを抑制することができ、モータMG1,MG2の永久磁石の保護をより確実に行なうことができる。
【0038】
図4は、エンジン22の停止後の制限用油温Tocの時間変化の様子の一例を説明する説明図である。エンジン22の停止後に、検出油温変化量ΔTod(=Tod−Tod0)が閾値ΔTodref以上に至る時刻t11よりも前は、検出油温Todを制限用油温Tocとして用いる。そして、時刻t11に検出油温変化量ΔTodが閾値ΔTodref以下に至ると、そのときの過去検出油温Tod0を保持油温Tosetに設定し、それ以降は、保持油温Tosetを制限用油温Tocとして用いる。これにより、エンジン22の停止後にモータMG1,MG2の温度(永久磁石の温度)が大きく上昇するのを抑制することができ、モータMG1,MG2の永久磁石の保護をより確実に行なうことができる。
【0039】
また、保持油温Tosetを制限用油温Tocとして用いたトルク制限Tm1lim,Tm2limの設定を開始すると、HVECU70は、
図5の油温保持中処理ルーチンを実行する。
【0040】
油温保持中処理ルーチンが実行されると、HVECU70は、まず、最新の検出油温Todと、保持油温Tosetと、を入力する(ステップS200)。ここで、最新の検出油温Todは、油温センサ65により検出された最新の値を入力するものとした。保持油温Tosetは、
図3のルーチンにより設定された値を入力するものとした。
【0041】
こうしてデータを入力すると、最新の検出油温Todを保持油温Tosetと比較する(ステップS210)。そして、最新の検出油温Todが保持油温Toset未満のときには、ステップS200に戻る。この場合、保持油温Tosetを用いたトルク制限Tm1lim,Tm2limの設定を継続する。
【0042】
ステップS210で、最新の検出油温Todが保持油温Toset以上に至ったときに、戻し条件が成立したと判定する(ステップS220)。そして、制限用油温Tocを保持油温Tosetから検出油温Todに切り替えて(戻して)、即ち、検出油温Todを制限用油温Tocとして用いたトルク制限Tm1lim,Tm2limの設定を再開して(ステップS230)、本ルーチンを終了する。
【0043】
図6は、制限用油温Tocを保持油温Tosetから検出油温Todに切り替える際の様子を示す説明図である。図中、時刻t22は、検出油温Todと保持油温Tosetとが等しくなる時刻である。上述の
図2と合わせて考えれば、エンジン22の始動後に検出油温Todが上昇して保持用油温Toset以上に至ったときに、制限用油温Tocを保持油温Tosetから検出油温Todに切り替えることになる。
【0044】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20では、最新の検出油温Todを制限用油温Tocとして用いてモータMG1,MG2のトルク制限Tm1lim,Tm2limを設定し、このトルク制限Tm1lim,Tm2limによってモータMG1,MG2のトルクを制限する。そして、エンジン22の停止後に、最新の検出油温Todが閾値Toref以上で且つ最新の検出油温Todから過去検出油温Tod0を減じて得られる検出油温変化量ΔTodが閾値ΔTodref以下に至ると、そのときの過去検出油温Tod0を保持油温Tosetに設定し、その後は、保持油温Tosetを制限用油温Tocとして用いる。これにより、エンジン22の停止後に、モータMG1,MG2のトルクが十分に制限されなくなるのを抑制することができる。この結果、エンジン22の停止後にモータMG1,MG2の温度(永久磁石の温度)が大きく上昇するのを抑制することができ、モータMG1,MG2の永久磁石の保護をより確実に行なうことができる。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、保持油温Tosetを制限用油温Tocとして用いたトルク制限Tm1lim,Tm2limの設定を開始した後に、最新の検出油温Todが保持油温Toset以上に至ると、検出油温Todを制限用油温Tocとして用いたトルク制限Tm1lim,Tm2limの設定を再開するものとした。しかし、他の条件が成立したときに、検出油温Todを制限用油温Tocとして用いたトルク制限Tm1lim,Tm2limの設定を再開するものとしてもよい。
図7は、HVECU70により実行される油温保持中処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、保持油温Tosetを制限用油温Tocとして用いたトルク制限Tm1lim,Tm2limの設定を開始した後にイグニッションオフ操作が行なわれたときに実行される。なお、この変形例では、イグニッションオフ中(放置中)も、トルク制限Tm1lim,Tm2limの設定を継続するものとした。
【0046】
図7の油温保持中処理ルーチンが実行されると、HVECU70は、まず、運転者によるイグニッションオフ操作(システム停止処理)が行なわれてからのソーク時間(放置時間)tscを入力する(ステップS300)。こうしてソーク時間tscを閾値tscrefと比較する(ステップS310)。ここで、閾値tscrefとしては、50分や60分,70分などを用いることができる。
【0047】
ソーク時間tscが閾値tscref未満のときには、ステップS300に戻る。そして、ソーク時間tscが閾値tscref以上に至ると、戻し条件が成立したと判定する(ステップS320)。そして、制限用油温Tocを保持油温Tosetから検出油温Todに切り替えて(戻して)、即ち、検出油温Todを制限用油温Tocとして用いたトルク制限Tm1lim,Tm2limの設定を再開して(ステップS330)、本ルーチンを終了する。
【0048】
この変形例では、運転者によるイグニッションオフ操作されてからのソーク時間tscが閾値tscref以上に至ったときに、制限用油温Tocを保持油温Tosetから検出油温Todに切り替える(戻す)ものとした。しかし、イグニッションオフ中(放置中)にトルク制限Tm1lim,Tm2limを設定しない場合には、
図7のルーチンを実行する必要がない。この場合、次回にイグニッションオン操作が行なわれたときに、ソーク時間tscが閾値tscref未満のときには、制限用油温Tocを保持油温Tosetから検出油温Todに切り替えず、ソーク時間tscが閾値tscref以上のときには、制限用油温Tocを保持油温Tosetから検出油温Todに切り替えるものとしてもよい。
【0049】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の停止後に、検出油温Todが閾値Toref以上で且つ検出油温変化量ΔTodが閾値ΔTodref以下に至ると、そのときの過去検出油温Tod0を保持油温Tosetに設定し、その後は、保持油温Tosetを制限用油温Tocとして用いるものとした。しかし、エンジン22の停止後に、検出油温Todが閾値Toref未満でも、検出油温変化量ΔTodが閾値ΔTodref以下に至ると、そのときの過去検出油温Tod0を保持油温Tosetに設定し、その後は、保持油温Tosetを制限用油温Tocとして用いるものとしてもよい。
【0050】
実施例では、エンジン22とプラネタリギヤ30とモータMG1,MG2とバッテリ50とを備えるハイブリッド自動車20の構成とした。しかし、エンジンと1つのモータとバッテリとを備えるいわゆる1モータハイブリッド自動車の構成としてもよい。
【0051】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG2が「モータ」に相当し、冷却装置60が「冷却装置」に相当し、HVECU70とエンジンECU24とモータECU40とが「制御手段」に相当する。
【0052】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0053】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。