【文献】
International Journal of Pharamaceutics,2012年 3月,Vol.428,p.152-163
【文献】
Annals New York Academy of Sciences,1985年,Vol.446,p.296-307
【文献】
Macromol. Biosci.,2006年,Vol.6,p.846-854
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1種の活性薬剤が、前記ホスト分子と複合体化されるか、前記ポリマーマトリクス内に分散されるか、前記脂質シェル中に分散されるか、もしくは前記脂質シェルに結合されるか、またはそれらの組み合わせが行われている、請求項1または請求項2に記載のナノリポゲル。
前記ポリマーマトリクスが、ポリ(乳酸);ポリ(グリコール酸);ポリ(乳酸−co−グリコール酸);ポリヒドロキシアルカノアート;ポリカプロラクトン;ポリ(オルトエステル);ポリ酸無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン);ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン);ポリカーボネート;ポリアミド、ポリペプチド、およびポリ(アミノ酸);ポリエステルアミド;ポリ(ジオキサノン);ポリ(アルキレンアルキラート);親水性ポリエーテル;ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリラート;ポリシロキサン;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー;ポリケタール;ポリホスファート;ポリヒドロキシバレラート;ポリアルキレンオキサラート;ポリアルキレンスクシナート;ポリ(マレイン酸);ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリ(アルキレンオキシド);セルロース;ポリアクリル酸;アルブミン;コラーゲン;ゼラチン;プロラミン;ポリサッカリド;ポリエチレングリコール(PEG)ならびにそれらの誘導体、コポリマー、およびブレンドからなる群より選択されるポリマーを含む、請求項1〜3のいずれかに記載のナノリポゲル。
前記少なくとも1種の活性薬剤が、小分子活性薬剤、タンパク質、ポリペプチド、ポリサッカリド、および核酸からなる治療薬、予防薬、診断薬、および栄養補助薬の群より選択される、請求項1〜4のいずれかに記載のナノリポゲル。
前記少なくとも1種の活性薬剤が、抗生物質、抗ウイルス剤、抗寄生虫薬、サイトカイン、成長因子、成長抑制物質、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、抗体およびその生物活性フラグメント、抗原およびワクチン処方物、抗炎症薬、免疫調節薬、およびオリゴヌクレオチド薬、常磁性分子、蛍光化合物、磁性分子、および放射性核種、X線造影剤、および造影剤からなる群より選択される、請求項5に記載のナノリポゲル。
前記少なくとも1種の活性薬剤が、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗有糸分裂薬、アントラサイクリン、細胞傷害性抗生物質、トポイソメラーゼインヒビター、血管内皮成長因子に対する抗体;サリドマイド;エンドスタチン;アンギオスタチン;受容体チロシンキナーゼ(RTK)インヒビター;チロシンキナーゼインヒビター;トランスフォーミング成長因子−αインヒビターまたはトランスフォーミング成長因子−βインヒビター、および上皮成長因子受容体に対する抗体からなる群より選択される、請求項6に記載のナノリポゲル。
前記脂質シェルが、任意選択的に架橋した1種またはそれより多くの同心状の脂質層から構成されており、前記脂質が生理学的pHで中性、アニオン性、またはカチオン性の脂質であり得る、請求項1〜7のいずれかに記載のナノリポゲル。
前記脂質が、コレステロール、リン脂質、リゾ脂質、リゾリン脂質、およびスフィンゴ脂質、ならびにそれらの誘導体からなる群より選択される、請求項8に記載のナノリポゲル。
ホスファチジルコリン;ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール;糖脂質;スフィンゴミエリン、セラミドガラクトピラノシド、ガングリオシド、セレブロシド;脂肪酸、ステロール;1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、1,2−ジヘキサデシルホスホエタノールアミン、1,2−ジステアロイルホスファチジルコリン、1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリン、1,2−ジミリストイルホスファチジルコリン、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、1,2−ジアシルオキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパン、N−[1−(2,3−ジオロイルオキシ)プロピル]−Ν,Ν−ジメチルアミン、1,2−ジアシルオキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、1,2−ジアルキルオキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン、3−[N−(N’,N’−ジメチルアミノ−エタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol);2,3−ジオレオイルオキシ−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)−エチル)−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロ−アセタート(DOSPA)、β−アラニルコレステロール、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ジC14−アミジン、N−tert−ブチル−N’−テトラデシル−3−テトラデシルアミノ−プロピオンアミジン、N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)ジドデシル−D−グルタマートクロリド(TMAG)、ジテトラデカノイル−N−(トリメチルアンモニオ−アセチル)ジエタノールアミンクロリド、1,3−ジオレオイルオキシ−2−(6−カルボキシ−スペルミル)−プロピルアミド(DOSPER)、およびN,N,N’,N’−テトラメチル−、N’−ビス(2−ヒドロキシルエチル)−2,3−ジオレオイルオキシ−1,4−ブタンジアンモニウムヨージド、1−[2−(アシルオキシ)エチル]2−アルキル(アルケニル)−3−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾリニウムクロリド誘導体、および第四級アミン上にヒドロキシアルキル部分を含む2,3−ジアルキルオキシプロピル第四級アンモニウム誘導体、1,2−ジオレオイル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORI)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシプロピルアンモニウムブロミド(DORIE−HP)、1,2−ジオレイル−オキシ−プロピル−3−ジメチル−ヒドロキシブチルアンモニウムブロミド(DORIE−HB)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシペンチルアンモニウムブロミド(DORIE−Hpe)、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシルエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、1,2−ジパルミチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DPRIE)、および1,2−ジステリルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DSRIE)からなる群より選択される脂質を含む、請求項8に記載のナノリポゲル。
前記ホスト分子が、シクロデキストリン、カリックスアレーン、スフェランドおよびククルビツリルからなる群より選択されるキャビタンドである、請求項1〜11のいずれかに記載のナノリポゲル。
前記ポリマーマトリクスが、脂肪族ポリエステルおよびポリ(アルキレンオキシド)からなる群より選択されるポリマーのブロックコポリマーを含む、請求項1〜12のいずれかに記載のナノリポゲル。
ホスト分子と可逆的に会合している第1の活性薬剤、および前記ポリマーマトリクス内に分散した第2の活性薬剤を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載のナノリポゲル。
前記少なくとも1種の活性薬剤が、免疫性危険シグナル伝達分子に結合するリガンドであるか、または抗体もしくはそのフラグメントである、請求項1〜22のいずれかに記載のナノリポゲル。
前記少なくとも1種の活性薬剤が、TLR3リガンド、TLR7リガンド、またはTLR9リガンドなどのToll様受容体リガンドである、請求項1〜23のいずれかに記載のナノリポゲル。
前記ポリマーマトリックスが、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントと、前記中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントのいずれかの末端に結合した隣接脂肪族ポリエステルセグメントとを含むトリブロックコポリマーから形成されている、請求項1〜24のいずれかに記載のナノリポゲル。
前記トリブロックコポリマーが、中心ポリエチレングリコール(PEG)セグメントと、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、およびポリラクチド−co−グリコリド(PLGA)から選択される隣接脂肪族ポリエステルセグメントとを含む、請求項25に記載のナノリポゲル。
前記シクロデキストリンが、前記ポリマーマトリクスと反応する1種またはそれより多くの反応性官能基で官能化されている;かつ/または前記シクロデキストリンの溶解度を改変する1種またはそれより多くのペンダント基で官能化されている、請求項27に記載のナノリポゲル。
前記ポリマーマトリクスと反応する前記1種またはそれより多くの反応性官能基が、メタクリラート、アクリラート、ビニル基、エポキシド、チイラン、アジド、アルキン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28に記載のナノリポゲル。
前記シクロデキストリンが、α−シクロデキストリン;β−シクロデキストリン;γ−シクロデキストリン;メチルα−シクロデキストリン;メチルβ−シクロデキストリン;メチルγ−シクロデキストリン;エチルβ−シクロデキストリン;ブチルα−シクロデキストリン;ブチルβ−シクロデキストリン;ブチルγ−シクロデキストリン;ペンチルγ−シクロデキストリン;ヒドロキシエチルβ−シクロデキストリン;ヒドロキシエチルγ−シクロデキストリン;2−ヒドロキシプロピルα−シクロデキストリン;2−ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン;2−ヒドロキシプロピルγ−シクロデキストリン;2−ヒドロキシブチルβ−シクロデキストリン;アセチルα−シクロデキストリン;アセチルβ−シクロデキストリン;アセチルγ−シクロデキストリン;プロピオニルβ−シクロデキストリン;ブチリルβ−シクロデキストリン;スクシニルα−シクロデキストリン;スクシニルβ−シクロデキストリン;スクシニルγ−シクロデキストリン;ベンゾイルβ−シクロデキストリン;パルミチルβ−シクロデキストリン;トルエンスルホニルβ−シクロデキストリン;アセチルメチルβ−シクロデキストリン;アセチルブチルβ−シクロデキストリン;グルコシルα−シクロデキストリン;グルコシルβ−シクロデキストリン;グルコシルγ−シクロデキストリン;マルトシルα−シクロデキストリン;マルトシルβ−シクロデキストリン;マルトシルγ−シクロデキストリン;α−シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;β−シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;γ−シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;カルボキシメチルエチルβ−シクロデキストリン;リン酸エステルα−シクロデキストリン;リン酸エステルβ−シクロデキストリン;リン酸エステルγ−シクロデキストリン;3−トリメチルアンモニウム−2−ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン;スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン;カルボキシメチルα−シクロデキストリン;カルボキシメチルβ−シクロデキストリン;カルボキシメチルγ−シクロデキストリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項27〜30のいずれかに記載のナノリポゲル。
前記シクロデキストリンが、1種またはそれより多くのペンダントアクリラート基またはペンダントメタクリラート基で官能化されたα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリンからなる群から選択される、請求項27〜31のいずれかに記載のナノリポゲル。
前記シクロデキストリンが、ペンダントアクリラート基またはペンダントメタクリラート基で官能化されたβ−シクロデキストリンであるか、あるいは2−ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンである、請求項27〜32のいずれかに記載のナノリポゲル。
前記少なくとも1種の活性薬剤をそれを必要とする被験体に送達するための組成物であって、前記組成物は、請求項1〜37のいずれか一項に記載のナノリポゲルを含む、組成物。
ホスト分子とポリマーマトリクスとを混合する工程、およびポリマー混合物を脂質とともに同時押し出しする工程を含む、請求項1〜37のいずれかに記載のナノリポゲルを作製する方法。
形成中に1種またはそれより多くの第1の活性薬剤を負荷し、そして形成後に1種またはそれより多くの第2の活性薬剤の存在下でのポリマーマトリクス−ホスト分子の再水和過程によって前記第2の活性薬剤を負荷する工程を含む、請求項1〜37のいずれかに記載のナノリポゲルを負荷する方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1-1】
図1A〜1Bは、ナノリポゲル粒子(nLG)作製の略図である。
図1Aでは、メタクリラート官能化シクロデキストリン(CD)を使用して、TGF−βインヒビター(SB505124)などの生物活性物質を可溶化した。
図1Bでは、ナノリポゲルを、生分解性架橋ポリマー、アクリル化薬物(CD−SB505)複合体、およびペプチドIL−2サイトカインなどの第2の薬物が負荷された凍結乾燥リポソームから処方した。このコア−シェル構造は、PEG化リポソーム外部を有する内部生分解性ポリマーマトリクス中への薬物を負荷したCDおよびIL−2の捕捉を容易にした。スクシニル化β−シクロデキストリン(CTD,Inc.)を、1:3の化合物モル比で1×PBS中にて室温で1時間撹拌することによって2−アミノエチルメタクリラート(Sigma)で官能化した。SB505124、ランダムスクシニル化β−CD、およびSB505124のランダムスクシニル化β−CDとの包接複合体の
1H NMRスペクトル(500MHz、D
2O)を決定した。SB505124の芳香族プロトン領域で認められた相違は、包接複合体の形成を示す。ローダミンBの芳香族プロトン領域で認められた相違を示したローダミンB、ランダムスクシニル化β−CD、およびローダミンBのランダムスクシニル化β−CDとの包接複合体の
1H NMRスペクトル(500MHz、D
2O)は、包接複合体の形成を示す。
【
図1-2】
図1A〜1Bは、ナノリポゲル粒子(nLG)作製の略図である。
図1Aでは、メタクリラート官能化シクロデキストリン(CD)を使用して、TGF−βインヒビター(SB505124)などの生物活性物質を可溶化した。
図1Bでは、ナノリポゲルを、生分解性架橋ポリマー、アクリル化薬物(CD−SB505)複合体、およびペプチドIL−2サイトカインなどの第2の薬物が負荷された凍結乾燥リポソームから処方した。このコア−シェル構造は、PEG化リポソーム外部を有する内部生分解性ポリマーマトリクス中への薬物を負荷したCDおよびIL−2の捕捉を容易にした。スクシニル化β−シクロデキストリン(CTD,Inc.)を、1:3の化合物モル比で1×PBS中にて室温で1時間撹拌することによって2−アミノエチルメタクリラート(Sigma)で官能化した。SB505124、ランダムスクシニル化β−CD、およびSB505124のランダムスクシニル化β−CDとの包接複合体の
1H NMRスペクトル(500MHz、D
2O)を決定した。SB505124の芳香族プロトン領域で認められた相違は、包接複合体の形成を示す。ローダミンBの芳香族プロトン領域で認められた相違を示したローダミンB、ランダムスクシニル化β−CD、およびローダミンBのランダムスクシニル化β−CDとの包接複合体の
1H NMRスペクトル(500MHz、D
2O)は、包接複合体の形成を示す。
【
図1-3】
図1A〜1Bは、ナノリポゲル粒子(nLG)作製の略図である。
図1Aでは、メタクリラート官能化シクロデキストリン(CD)を使用して、TGF−βインヒビター(SB505124)などの生物活性物質を可溶化した。
図1Bでは、ナノリポゲルを、生分解性架橋ポリマー、アクリル化薬物(CD−SB505)複合体、およびペプチドIL−2サイトカインなどの第2の薬物が負荷された凍結乾燥リポソームから処方した。このコア−シェル構造は、PEG化リポソーム外部を有する内部生分解性ポリマーマトリクス中への薬物を負荷したCDおよびIL−2の捕捉を容易にした。スクシニル化β−シクロデキストリン(CTD,Inc.)を、1:3の化合物モル比で1×PBS中にて室温で1時間撹拌することによって2−アミノエチルメタクリラート(Sigma)で官能化した。SB505124、ランダムスクシニル化β−CD、およびSB505124のランダムスクシニル化β−CDとの包接複合体の
1H NMRスペクトル(500MHz、D
2O)を決定した。SB505124の芳香族プロトン領域で認められた相違は、包接複合体の形成を示す。ローダミンBの芳香族プロトン領域で認められた相違を示したローダミンB、ランダムスクシニル化β−CD、およびローダミンBのランダムスクシニル化β−CDとの包接複合体の
1H NMRスペクトル(500MHz、D
2O)は、包接複合体の形成を示す。
【
図1-4】
図1C〜1Gはナノリポゲルの特徴付けを示す。ナノリポゲルのサイズを、室温のPBS中におけるZetaPALS装置(Brookhaven Instruments)での動的光散乱によって決定した。
図1Cは、SBまたはSB+IL−2のカプセル化が粒子の平均直径や多分散性に有意に影響を及ぼさなかったことを示す。平均直径および多分散性指数は、2ロットの各ナノリポゲル型(サンプルあたりの測定数はn=10)の代表値である。PC/コレステロールリポソーム、PC/コレステロール/PE−PEG−NH
2リポソーム、およびナノリポゲルのゼータ電位を、Malvernナノサイザーを使用して0.1×PBS中にて評価した。
図1Dは、アミン末端化PE−PEGを組み込んだリポソームおよびナノリポゲルのゼータ電位が中性付近であることが見出されたことを示す。
図1Eは、ナノリポゲル処方物の組成および処方特性を示す。
図1Fは、
1H NMRによって検証されたポリマー構造を示す。ナノリポゲルの低温TEMは、球状リポソーム構造の形成を示す。TEM分析のために、ナノリポゲルサンプルを四酸化オスミウムで染色し、次いで、FEI Tenai Biotwin顕微鏡で画像化した。低温で切片にしたサンプルの脂質特異的四酸化オスミウム染色は、粒子の外膜に限定される局在化した染色パターンであった。
図1Gは、光重合ポリマー/CDが界面活性剤によるリポソーム外部の破壊後でさえも光散乱によって検出可能であるナノ粒子ヒドロゲル構造を形成することを示す。
【
図1-5】
図1C〜1Gはナノリポゲルの特徴付けを示す。ナノリポゲルのサイズを、室温のPBS中におけるZetaPALS装置(Brookhaven Instruments)での動的光散乱によって決定した。
図1Cは、SBまたはSB+IL−2のカプセル化が粒子の平均直径や多分散性に有意に影響を及ぼさなかったことを示す。平均直径および多分散性指数は、2ロットの各ナノリポゲル型(サンプルあたりの測定数はn=10)の代表値である。PC/コレステロールリポソーム、PC/コレステロール/PE−PEG−NH
2リポソーム、およびナノリポゲルのゼータ電位を、Malvernナノサイザーを使用して0.1×PBS中にて評価した。
図1Dは、アミン末端化PE−PEGを組み込んだリポソームおよびナノリポゲルのゼータ電位が中性付近であることが見出されたことを示す。
図1Eは、ナノリポゲル処方物の組成および処方特性を示す。
図1Fは、
1H NMRによって検証されたポリマー構造を示す。ナノリポゲルの低温TEMは、球状リポソーム構造の形成を示す。TEM分析のために、ナノリポゲルサンプルを四酸化オスミウムで染色し、次いで、FEI Tenai Biotwin顕微鏡で画像化した。低温で切片にしたサンプルの脂質特異的四酸化オスミウム染色は、粒子の外膜に限定される局在化した染色パターンであった。
図1Gは、光重合ポリマー/CDが界面活性剤によるリポソーム外部の破壊後でさえも光散乱によって検出可能であるナノ粒子ヒドロゲル構造を形成することを示す。
【
図1-6】
図1C〜1Gはナノリポゲルの特徴付けを示す。ナノリポゲルのサイズを、室温のPBS中におけるZetaPALS装置(Brookhaven Instruments)での動的光散乱によって決定した。
図1Cは、SBまたはSB+IL−2のカプセル化が粒子の平均直径や多分散性に有意に影響を及ぼさなかったことを示す。平均直径および多分散性指数は、2ロットの各ナノリポゲル型(サンプルあたりの測定数はn=10)の代表値である。PC/コレステロールリポソーム、PC/コレステロール/PE−PEG−NH
2リポソーム、およびナノリポゲルのゼータ電位を、Malvernナノサイザーを使用して0.1×PBS中にて評価した。
図1Dは、アミン末端化PE−PEGを組み込んだリポソームおよびナノリポゲルのゼータ電位が中性付近であることが見出されたことを示す。
図1Eは、ナノリポゲル処方物の組成および処方特性を示す。
図1Fは、
1H NMRによって検証されたポリマー構造を示す。ナノリポゲルの低温TEMは、球状リポソーム構造の形成を示す。TEM分析のために、ナノリポゲルサンプルを四酸化オスミウムで染色し、次いで、FEI Tenai Biotwin顕微鏡で画像化した。低温で切片にしたサンプルの脂質特異的四酸化オスミウム染色は、粒子の外膜に限定される局在化した染色パターンであった。
図1Gは、光重合ポリマー/CDが界面活性剤によるリポソーム外部の破壊後でさえも光散乱によって検出可能であるナノ粒子ヒドロゲル構造を形成することを示す。
【
図1-7】
図1C〜1Gはナノリポゲルの特徴付けを示す。ナノリポゲルのサイズを、室温のPBS中におけるZetaPALS装置(Brookhaven Instruments)での動的光散乱によって決定した。
図1Cは、SBまたはSB+IL−2のカプセル化が粒子の平均直径や多分散性に有意に影響を及ぼさなかったことを示す。平均直径および多分散性指数は、2ロットの各ナノリポゲル型(サンプルあたりの測定数はn=10)の代表値である。PC/コレステロールリポソーム、PC/コレステロール/PE−PEG−NH
2リポソーム、およびナノリポゲルのゼータ電位を、Malvernナノサイザーを使用して0.1×PBS中にて評価した。
図1Dは、アミン末端化PE−PEGを組み込んだリポソームおよびナノリポゲルのゼータ電位が中性付近であることが見出されたことを示す。
図1Eは、ナノリポゲル処方物の組成および処方特性を示す。
図1Fは、
1H NMRによって検証されたポリマー構造を示す。ナノリポゲルの低温TEMは、球状リポソーム構造の形成を示す。TEM分析のために、ナノリポゲルサンプルを四酸化オスミウムで染色し、次いで、FEI Tenai Biotwin顕微鏡で画像化した。低温で切片にしたサンプルの脂質特異的四酸化オスミウム染色は、粒子の外膜に限定される局在化した染色パターンであった。
図1Gは、光重合ポリマー/CDが界面活性剤によるリポソーム外部の破壊後でさえも光散乱によって検出可能であるナノ粒子ヒドロゲル構造を形成することを示す。
【
図2-1】
図2A〜2Eは、nLG、リポソーム、および固体ポリマーナノ粒子(PLGA)からの放出プロフィールの比較である。初期キャリア質量によって正規化されたnLGからのCD可溶化SBまたはメタクリラート官能化CD(f−CD)可溶化SBの累積放出は、ナノリポゲルの重合によってSB放出の徐放性が改善されたことを示した(
図2A)。ヒドロキシプロピルβ−CDを、非官能化CDとのSB複合体化のために使用した。ELISA(免疫活性)研究および生物活性研究(生物活性)によって決定された初期ナノリポゲル質量によって正規化されたnLGからのIL−2の累積放出は、IL−2の生物活性がカプセル化の影響を受けないことを示していた(
図2B)。SBおよびIL−2の放出は、1ml全血清中での10mg nLGのインキュベーションの影響を受けなかった(
図2C)。リポソーム、ナノリポゲル、および分解性ポリマー(ポリラクチド−co−グリコリド)ナノ粒子(PLGA NP)からのSBの累積放出の比較により、ナノリポゲルビヒクル中への光硬化ポリマーの組み込みによってシクロデキストリン可溶化SBのより良好な徐放およびより完全な放出が可能になることが示された(
図2D)。PLGA NP(平均直径=150±50nm)を、修正された水/油/水二重エマルジョン技術の使用によって調製した。リポソームを、ポリマーコアを含めずにnLGと同一の様式で調製した。リポソームに、ナノリポゲルと同様にIL−2およびSBを負荷した。PLGA NPからのカプセル化SBの放出率の減少は、比較的疎水性のポリマーのSBとの相互作用に起因する。7日目に全粒子処方物を0.1N NaOH+1%SDSに溶解して100%放出を決定した(矢印)(
図2D)。リポソーム、ナノリポゲル、およびPLGA NPからのIL−2の累積放出の比較により、ナノリポゲル中へのIL−2のカプセル化によってサイトカインのより良好な徐放が可能になることが示された。累積放出を、7日間にわたって放出された全IL−2に対する%として示す。(
図2E)全グラフ中のデータは、三連のサンプルの平均±1標準偏差を示す。
図2Fは、PLGA、ナノリポゲル、およびリポソームのサイズおよびこれらへのIL−2およびSBの負荷を比較している。
【
図2-2】
図2A〜2Eは、nLG、リポソーム、および固体ポリマーナノ粒子(PLGA)からの放出プロフィールの比較である。初期キャリア質量によって正規化されたnLGからのCD可溶化SBまたはメタクリラート官能化CD(f−CD)可溶化SBの累積放出は、ナノリポゲルの重合によってSB放出の徐放性が改善されたことを示した(
図2A)。ヒドロキシプロピルβ−CDを、非官能化CDとのSB複合体化のために使用した。ELISA(免疫活性)研究および生物活性研究(生物活性)によって決定された初期ナノリポゲル質量によって正規化されたnLGからのIL−2の累積放出は、IL−2の生物活性がカプセル化の影響を受けないことを示していた(
図2B)。SBおよびIL−2の放出は、1ml全血清中での10mg nLGのインキュベーションの影響を受けなかった(
図2C)。リポソーム、ナノリポゲル、および分解性ポリマー(ポリラクチド−co−グリコリド)ナノ粒子(PLGA NP)からのSBの累積放出の比較により、ナノリポゲルビヒクル中への光硬化ポリマーの組み込みによってシクロデキストリン可溶化SBのより良好な徐放およびより完全な放出が可能になることが示された(
図2D)。PLGA NP(平均直径=150±50nm)を、修正された水/油/水二重エマルジョン技術の使用によって調製した。リポソームを、ポリマーコアを含めずにnLGと同一の様式で調製した。リポソームに、ナノリポゲルと同様にIL−2およびSBを負荷した。PLGA NPからのカプセル化SBの放出率の減少は、比較的疎水性のポリマーのSBとの相互作用に起因する。7日目に全粒子処方物を0.1N NaOH+1%SDSに溶解して100%放出を決定した(矢印)(
図2D)。リポソーム、ナノリポゲル、およびPLGA NPからのIL−2の累積放出の比較により、ナノリポゲル中へのIL−2のカプセル化によってサイトカインのより良好な徐放が可能になることが示された。累積放出を、7日間にわたって放出された全IL−2に対する%として示す。(
図2E)全グラフ中のデータは、三連のサンプルの平均±1標準偏差を示す。
図2Fは、PLGA、ナノリポゲル、およびリポソームのサイズおよびこれらへのIL−2およびSBの負荷を比較している。
【
図3-1】
図3A〜3Gは、制御放出、クリアランス、および生体内分布を示すグラフである。ナノリポゲルキャリアおよびカプセル化薬物ペイロードの両方の分布を二重標識NLGを使用して調査し、フルオレセイン標識ホスホエタノールアミンを、ローダミン負荷ナノリポゲルの脂質成分に組み込んだ。540/625nmおよび490/517nmでの分光蛍光分光分析は、スペクトル重複のない用量依存性蛍光を示す。
図3Aは、キャリア質量によって正規化された同時負荷nLGからのIL−2(ng/mg nLG)および薬物(μg SB/mg nLG)の累積放出のグラフである。全プロット中のエラーバーは、±1標準偏差を示す。全実験を少なくとも2回繰り返し、類似の結果を得た。
図3Bは、日数での時間をわたっての薬物用量のクリアランス(初期用量に対する百分率)を示すグラフである:ナノリポゲル中へのカプセル化により、注射1時間後および24時間後の血中の初期用量の残存率が有意に増大した(2集団t検定、p<0,01###)。
図3Cは、全身分布のグラフである。マウスに、静脈内尾静脈注射によって単回用量のローダミン負荷ナノリポゲルまたは可溶性ローダミン(食塩水中)を投与した。動物を、抽出および蛍光の定量のために注射の1、24、48、および72時間後に屠殺し、全身生体内分布を、ローダミン標識を使用して決定した。遊離色素を注射した動物と比較してナノリポゲル処置動物の主要器官において有意により大量の(2集団t検定、p<0,01)ローダミンが検出された。
図3Dは、皮下腫瘍における時間依存的蓄積nのグラフである:B6マウスにおけるB16腫瘍周囲注射後の累積的ローダミン腫瘍透過(円)。腫瘍周囲組織を回収して、腫瘍周囲のnLGの残存用量を定量した(四角)。制御放出はローダミンの放出を示すが、脂質ではない(
図3E)。皮下B16腫瘍を保有するマウスに、二重標識NLGの単回IV(尾静脈)注射を行った。注射1、2、3、および7日後に動物を屠殺し、均質化、抽出、およびローダミンおよびフルオレセイン−PEの定量のために組織を回収した。血清分析は、カプセル材料および送達ビヒクルの両方の循環の延長を示す。脂質(
図3F)と薬物ペイロード(
図3G)との間で類似の生体内分布パターンが認められ、肺および肝臓で最高の薬物蓄積が認められた。
【
図3-2】
図3A〜3Gは、制御放出、クリアランス、および生体内分布を示すグラフである。ナノリポゲルキャリアおよびカプセル化薬物ペイロードの両方の分布を二重標識NLGを使用して調査し、フルオレセイン標識ホスホエタノールアミンを、ローダミン負荷ナノリポゲルの脂質成分に組み込んだ。540/625nmおよび490/517nmでの分光蛍光分光分析は、スペクトル重複のない用量依存性蛍光を示す。
図3Aは、キャリア質量によって正規化された同時負荷nLGからのIL−2(ng/mg nLG)および薬物(μg SB/mg nLG)の累積放出のグラフである。全プロット中のエラーバーは、±1標準偏差を示す。全実験を少なくとも2回繰り返し、類似の結果を得た。
図3Bは、日数での時間をわたっての薬物用量のクリアランス(初期用量に対する百分率)を示すグラフである:ナノリポゲル中へのカプセル化により、注射1時間後および24時間後の血中の初期用量の残存率が有意に増大した(2集団t検定、p<0,01###)。
図3Cは、全身分布のグラフである。マウスに、静脈内尾静脈注射によって単回用量のローダミン負荷ナノリポゲルまたは可溶性ローダミン(食塩水中)を投与した。動物を、抽出および蛍光の定量のために注射の1、24、48、および72時間後に屠殺し、全身生体内分布を、ローダミン標識を使用して決定した。遊離色素を注射した動物と比較してナノリポゲル処置動物の主要器官において有意により大量の(2集団t検定、p<0,01)ローダミンが検出された。
図3Dは、皮下腫瘍における時間依存的蓄積nのグラフである:B6マウスにおけるB16腫瘍周囲注射後の累積的ローダミン腫瘍透過(円)。腫瘍周囲組織を回収して、腫瘍周囲のnLGの残存用量を定量した(四角)。制御放出はローダミンの放出を示すが、脂質ではない(
図3E)。皮下B16腫瘍を保有するマウスに、二重標識NLGの単回IV(尾静脈)注射を行った。注射1、2、3、および7日後に動物を屠殺し、均質化、抽出、およびローダミンおよびフルオレセイン−PEの定量のために組織を回収した。血清分析は、カプセル材料および送達ビヒクルの両方の循環の延長を示す。脂質(
図3F)と薬物ペイロード(
図3G)との間で類似の生体内分布パターンが認められ、肺および肝臓で最高の薬物蓄積が認められた。
【
図3-3】
図3A〜3Gは、制御放出、クリアランス、および生体内分布を示すグラフである。ナノリポゲルキャリアおよびカプセル化薬物ペイロードの両方の分布を二重標識NLGを使用して調査し、フルオレセイン標識ホスホエタノールアミンを、ローダミン負荷ナノリポゲルの脂質成分に組み込んだ。540/625nmおよび490/517nmでの分光蛍光分光分析は、スペクトル重複のない用量依存性蛍光を示す。
図3Aは、キャリア質量によって正規化された同時負荷nLGからのIL−2(ng/mg nLG)および薬物(μg SB/mg nLG)の累積放出のグラフである。全プロット中のエラーバーは、±1標準偏差を示す。全実験を少なくとも2回繰り返し、類似の結果を得た。
図3Bは、日数での時間をわたっての薬物用量のクリアランス(初期用量に対する百分率)を示すグラフである:ナノリポゲル中へのカプセル化により、注射1時間後および24時間後の血中の初期用量の残存率が有意に増大した(2集団t検定、p<0,01###)。
図3Cは、全身分布のグラフである。マウスに、静脈内尾静脈注射によって単回用量のローダミン負荷ナノリポゲルまたは可溶性ローダミン(食塩水中)を投与した。動物を、抽出および蛍光の定量のために注射の1、24、48、および72時間後に屠殺し、全身生体内分布を、ローダミン標識を使用して決定した。遊離色素を注射した動物と比較してナノリポゲル処置動物の主要器官において有意により大量の(2集団t検定、p<0,01)ローダミンが検出された。
図3Dは、皮下腫瘍における時間依存的蓄積nのグラフである:B6マウスにおけるB16腫瘍周囲注射後の累積的ローダミン腫瘍透過(円)。腫瘍周囲組織を回収して、腫瘍周囲のnLGの残存用量を定量した(四角)。制御放出はローダミンの放出を示すが、脂質ではない(
図3E)。皮下B16腫瘍を保有するマウスに、二重標識NLGの単回IV(尾静脈)注射を行った。注射1、2、3、および7日後に動物を屠殺し、均質化、抽出、およびローダミンおよびフルオレセイン−PEの定量のために組織を回収した。血清分析は、カプセル材料および送達ビヒクルの両方の循環の延長を示す。脂質(
図3F)と薬物ペイロード(
図3G)との間で類似の生体内分布パターンが認められ、肺および肝臓で最高の薬物蓄積が認められた。
【
図4-1】
図4A〜4Cは、皮下黒色腫に及ぼす腫瘍内ナノリポゲル治療の臨床効果を示すグラフである。
図4Aは、腫瘍面積対時間のグラフである(0日目は腫瘍細胞注射日であった)。赤色矢印は、処置(腫瘍内注射による)を示す。皮下腫瘍を保有するマウスを、最大の腫瘍寸法が15mmを超えた場合、または疾病の兆候を示した場合に安楽死させた。死亡日以降は死亡マウスの腫瘍面積を含めなかった。各群は、最初に、4匹が含まれていたnLG−SB+IL−2群以外は5匹のマウスを含んでいた。エラーバーは±1標準偏差を示す。nLG−SB群およびnLG−SB+IL−2群の腫瘍は、12日目から他のすべての群より有意に小さい(2集団t検定、P<0.001)。nLG−SB+IL−2群の腫瘍は、17日目からnLG−SB群より有意に小さく(P<0.01、##)、その後の全日数で小さかった(P<0.001)。
図4Bは、処置7日後のnLG処置群の腫瘍量のグラフである。腫瘍量決定前にマウスを直接安楽死させた。エラーバーは、6匹(nLG−Empty)、10匹(nLG−IL−2)、9匹(nLG−SB)、および10匹(nLG−SB+IL−2)のマウスにわたり平均した±1標準偏差を示す。各群は、最初に10匹のマウスを含んでいた。2集団t検定は、nLG−SB+IL−2群の腫瘍がnLG−Empty群(P<0.001、***)、nLG−IL−2群(P<0.001、***)、およびnLG−SB群(P<0.05、*)よりも有意に小さいことを示した。2集団t検定は、nLG−IL−2群の腫瘍量がnLG−Emptyよりも有意に小さいことを示した(P<0.05、#)。
図4Cは、
図4Aと同一の研究由来のマウスの生存プロットである。矢印は処置日を示す。nLG−SBで処置したマウスの生存は、Mantel−Cox解析およびGehan−Breslow−Wilcoxon解析によると有意に長く(P<0.01)、nLG−SB+IL−2は両解析によると有意に生存を延長させた(P<0.001)。研究を2〜3回繰り返し、類似の結果を得た。
【
図4-2】
図4A〜4Cは、皮下黒色腫に及ぼす腫瘍内ナノリポゲル治療の臨床効果を示すグラフである。
図4Aは、腫瘍面積対時間のグラフである(0日目は腫瘍細胞注射日であった)。赤色矢印は、処置(腫瘍内注射による)を示す。皮下腫瘍を保有するマウスを、最大の腫瘍寸法が15mmを超えた場合、または疾病の兆候を示した場合に安楽死させた。死亡日以降は死亡マウスの腫瘍面積を含めなかった。各群は、最初に、4匹が含まれていたnLG−SB+IL−2群以外は5匹のマウスを含んでいた。エラーバーは±1標準偏差を示す。nLG−SB群およびnLG−SB+IL−2群の腫瘍は、12日目から他のすべての群より有意に小さい(2集団t検定、P<0.001)。nLG−SB+IL−2群の腫瘍は、17日目からnLG−SB群より有意に小さく(P<0.01、##)、その後の全日数で小さかった(P<0.001)。
図4Bは、処置7日後のnLG処置群の腫瘍量のグラフである。腫瘍量決定前にマウスを直接安楽死させた。エラーバーは、6匹(nLG−Empty)、10匹(nLG−IL−2)、9匹(nLG−SB)、および10匹(nLG−SB+IL−2)のマウスにわたり平均した±1標準偏差を示す。各群は、最初に10匹のマウスを含んでいた。2集団t検定は、nLG−SB+IL−2群の腫瘍がnLG−Empty群(P<0.001、***)、nLG−IL−2群(P<0.001、***)、およびnLG−SB群(P<0.05、*)よりも有意に小さいことを示した。2集団t検定は、nLG−IL−2群の腫瘍量がnLG−Emptyよりも有意に小さいことを示した(P<0.05、#)。
図4Cは、
図4Aと同一の研究由来のマウスの生存プロットである。矢印は処置日を示す。nLG−SBで処置したマウスの生存は、Mantel−Cox解析およびGehan−Breslow−Wilcoxon解析によると有意に長く(P<0.01)、nLG−SB+IL−2は両解析によると有意に生存を延長させた(P<0.001)。研究を2〜3回繰り返し、類似の結果を得た。
【
図5】
図5A〜5Cは、nLG−SB+IL−2作用の適応免疫応答および作用機構を示す。各群は6匹のマウスを含んでおり、研究を2〜3回繰り返し、類似の結果を得た。
図5Aは、肺腫瘍中に存在する活性化CD8
+細胞の絶対数のグラフである(腫瘍数で正規化)。全群は、空のnLGと比較して有意に多数の細胞を有する(P<0.01)。
図5Bは、処置7日後にマウスから取り出した腫瘍中に存在する活性化CD8
+細胞の絶対数のグラフである(腫瘍量で正規化)。nLG−SBでの処置によって非負荷粒子よりも活性化CD8
+集団(P<0.05)が有意に増加し、nLG−IL−2またはnLG−SB+IL−2での処置も同様であった(P<0.001)。エラーバーは、6匹(nLG−Empty)、10匹(nLG−IL−2)、9匹(nLG−SB)、および10匹(nLG−SB+IL−2)のマウスにわたり平均した±1標準偏差を示す。各群は、最初に、10匹のマウスを含んでいた。
図5Cは、TILにおける活性化CD8
+:Treg比のグラフである。全群は、空のnLGと比較して比が有意に高かった(P<0.05)。
【
図6-1】
図6A〜6Cは、組み合わせ送達後の腫瘍免疫療法におけるNK細胞の役割を示すグラフである。各群は6匹のマウスを含んでおり、研究を2〜3回繰り返し、類似の結果を得た。
図6Aは、腫瘍中に存在するNK細胞の絶対数のグラフである(腫瘍数で正規化)。空の粒子群と比較して、nLG−SB+IL−2(P<0.05)、nLG−SB(P<0.05)、およびnLG−IL−2(P<0.01)による処置後の肺内に有意により多数のNKが存在した。
図6Bは、最初の処置から7日後に安楽死させた野生型(WT)マウスまたはNK枯渇(NKD)マウス由来の腫瘍量を比較したグラフである。各群は、最初に、10匹のマウスを含んでいた。nLG−SB+IL−2処置WT群は、すべての他の処置群よりも腫瘍が有意に小さかった(P<0.001)。NKD nLG−SBおよびnLG−SB+IL−2群は、そのWT対応物より有意に大きな腫瘍を有する(共にP<0.001)。研究を2〜3回繰り返し、類似の結果を得た。
図6Cは、同一の研究についての腫瘍中に存在するNK細胞の絶対数のグラフである(腫瘍量で正規化)。nLG−SB+IL−2処置群は、コントロール群(P<0.01)、SB処置群(P<0.05)、およびIL−2処置群(P<0.01)よりも有意に多数のNKを有している。エラーバーは、6匹(nLG−Empty)、10匹(nLG−IL−2)、9匹(nLG−SB)、および10匹(nLG−SB+IL−2)のマウスにわたり平均した±1標準偏差を示す。
【
図6-2】
図6A〜6Cは、組み合わせ送達後の腫瘍免疫療法におけるNK細胞の役割を示すグラフである。各群は6匹のマウスを含んでおり、研究を2〜3回繰り返し、類似の結果を得た。
図6Aは、腫瘍中に存在するNK細胞の絶対数のグラフである(腫瘍数で正規化)。空の粒子群と比較して、nLG−SB+IL−2(P<0.05)、nLG−SB(P<0.05)、およびnLG−IL−2(P<0.01)による処置後の肺内に有意により多数のNKが存在した。
図6Bは、最初の処置から7日後に安楽死させた野生型(WT)マウスまたはNK枯渇(NKD)マウス由来の腫瘍量を比較したグラフである。各群は、最初に、10匹のマウスを含んでいた。nLG−SB+IL−2処置WT群は、すべての他の処置群よりも腫瘍が有意に小さかった(P<0.001)。NKD nLG−SBおよびnLG−SB+IL−2群は、そのWT対応物より有意に大きな腫瘍を有する(共にP<0.001)。研究を2〜3回繰り返し、類似の結果を得た。
図6Cは、同一の研究についての腫瘍中に存在するNK細胞の絶対数のグラフである(腫瘍量で正規化)。nLG−SB+IL−2処置群は、コントロール群(P<0.01)、SB処置群(P<0.05)、およびIL−2処置群(P<0.01)よりも有意に多数のNKを有している。エラーバーは、6匹(nLG−Empty)、10匹(nLG−IL−2)、9匹(nLG−SB)、および10匹(nLG−SB+IL−2)のマウスにわたり平均した±1標準偏差を示す。
【
図7-1】
図7Aは、siRNA/デンドリマーポリプレックスと薬物の組み合わせをカプセル化し、外側シェルをターゲティング抗体または単鎖可変フラグメント(scFv)で共有結合的に修飾したLED調製の略図である。
図7Bは、LEDおよびモデル薬物であるメトトレキサート(MTX)をカプセル化したLEDの細胞傷害性のグラフである。バーは、1mg/ml〜10μg/mlのLEDまたは薬物またはその組み合わせの連続希釈物を示す。アジ化合物を、細胞死滅のポジティブコントロールとして使用する。
図7Cは、未修飾第4世代PAMAMデンドリマー(G4)、またはFCCP(小分子イオノフォア、カルボニルシアニドp−トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン)を使用するか使用しないで第一級アミンで置換し、遮蔽したシクロデキストリン分子(CD)に結合体化したデンドリマーでの処理後のエンドソーム破壊を示す細胞の百分率を示す棒グラフである。
図7Dは、種々のN/P比で種々のLED(G4、G4−3CD、G4−6CD)を使用してpGFPでトランスフェクションした全細胞に対する百分率としてのGFP陽性細胞数のを示す棒グラフである。
図7Eは、MFICD3+、CD4+細胞コントロール、および異なる投薬量のCD4siRNA構築物またはルシフェラーゼsiRNA構築物をカプセル化した種々のLEDの相対数を示す棒グラフである。
図7Fは、リポフェクタミン(登録商標)または異なるデンドリマー(G)−シクロデキストリン結合体(CD)の組み合わせ含む種々のLEDを使用したsiGFP構築物のトランスフェクション後のeGFPで安定にトランスフェクションした293T細胞中のGFPの発現レベルを示す棒グラフである。このグラフは、siGFPと複合体化した修飾デンドリマーのサイレンシング能力を評価するためにGFPの平均蛍光強度(MFI)を測定している。x軸を、以下のように読み取るべきである:mock:ナンセンスsiRNALFA:LFAに対するコントロールsiRNA G3:未修飾第3世代PAMAMデンドリマーG3 5X:1つのシクロデキストリンが結合体化されたG3デンドリマー(G3−1CD)G3 5xd:2CDが結合体化されたG3(G3−2CD)G3 10x:3CDが結合体化されたG3(G3−3CD)G3 20x:3.4CDが結合体化されたG3(G3−3.4CD)G4:未修飾のG4デンドリマー(G4)G4 5x:1CDが結合体化されたG4デンドリマー(G4−1CD)G4 5xd:1.3CDが結合体化されたG4デンドリマー(G4−1.3CD)G4 10x:G4−3CDG5:未修飾の第5世代(G5)デンドリマーG5 5x:G5−1CDG5 10x:G5−3CDG5 10x 0.5mg:他の処理で200ugの代わりに500ug使用したG5−3CDG5 10x D:G5−2.5CDG5 20x:G5−4CD 。
【
図7-2】
図7Aは、siRNA/デンドリマーポリプレックスと薬物の組み合わせをカプセル化し、外側シェルをターゲティング抗体または単鎖可変フラグメント(scFv)で共有結合的に修飾したLED調製の略図である。
図7Bは、LEDおよびモデル薬物であるメトトレキサート(MTX)をカプセル化したLEDの細胞傷害性のグラフである。バーは、1mg/ml〜10μg/mlのLEDまたは薬物またはその組み合わせの連続希釈物を示す。アジ化合物を、細胞死滅のポジティブコントロールとして使用する。
図7Cは、未修飾第4世代PAMAMデンドリマー(G4)、またはFCCP(小分子イオノフォア、カルボニルシアニドp−トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン)を使用するか使用しないで第一級アミンで置換し、遮蔽したシクロデキストリン分子(CD)に結合体化したデンドリマーでの処理後のエンドソーム破壊を示す細胞の百分率を示す棒グラフである。
図7Dは、種々のN/P比で種々のLED(G4、G4−3CD、G4−6CD)を使用してpGFPでトランスフェクションした全細胞に対する百分率としてのGFP陽性細胞数のを示す棒グラフである。
図7Eは、MFICD3+、CD4+細胞コントロール、および異なる投薬量のCD4siRNA構築物またはルシフェラーゼsiRNA構築物をカプセル化した種々のLEDの相対数を示す棒グラフである。
図7Fは、リポフェクタミン(登録商標)または異なるデンドリマー(G)−シクロデキストリン結合体(CD)の組み合わせ含む種々のLEDを使用したsiGFP構築物のトランスフェクション後のeGFPで安定にトランスフェクションした293T細胞中のGFPの発現レベルを示す棒グラフである。このグラフは、siGFPと複合体化した修飾デンドリマーのサイレンシング能力を評価するためにGFPの平均蛍光強度(MFI)を測定している。x軸を、以下のように読み取るべきである:mock:ナンセンスsiRNALFA:LFAに対するコントロールsiRNA G3:未修飾第3世代PAMAMデンドリマーG3 5X:1つのシクロデキストリンが結合体化されたG3デンドリマー(G3−1CD)G3 5xd:2CDが結合体化されたG3(G3−2CD)G3 10x:3CDが結合体化されたG3(G3−3CD)G3 20x:3.4CDが結合体化されたG3(G3−3.4CD)G4:未修飾のG4デンドリマー(G4)G4 5x:1CDが結合体化されたG4デンドリマー(G4−1CD)G4 5xd:1.3CDが結合体化されたG4デンドリマー(G4−1.3CD)G4 10x:G4−3CDG5:未修飾の第5世代(G5)デンドリマーG5 5x:G5−1CDG5 10x:G5−3CDG5 10x 0.5mg:他の処理で200ugの代わりに500ug使用したG5−3CDG5 10x D:G5−2.5CDG5 20x:G5−4CD 。
【
図7-3】
図7Aは、siRNA/デンドリマーポリプレックスと薬物の組み合わせをカプセル化し、外側シェルをターゲティング抗体または単鎖可変フラグメント(scFv)で共有結合的に修飾したLED調製の略図である。
図7Bは、LEDおよびモデル薬物であるメトトレキサート(MTX)をカプセル化したLEDの細胞傷害性のグラフである。バーは、1mg/ml〜10μg/mlのLEDまたは薬物またはその組み合わせの連続希釈物を示す。アジ化合物を、細胞死滅のポジティブコントロールとして使用する。
図7Cは、未修飾第4世代PAMAMデンドリマー(G4)、またはFCCP(小分子イオノフォア、カルボニルシアニドp−トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン)を使用するか使用しないで第一級アミンで置換し、遮蔽したシクロデキストリン分子(CD)に結合体化したデンドリマーでの処理後のエンドソーム破壊を示す細胞の百分率を示す棒グラフである。
図7Dは、種々のN/P比で種々のLED(G4、G4−3CD、G4−6CD)を使用してpGFPでトランスフェクションした全細胞に対する百分率としてのGFP陽性細胞数のを示す棒グラフである。
図7Eは、MFICD3+、CD4+細胞コントロール、および異なる投薬量のCD4siRNA構築物またはルシフェラーゼsiRNA構築物をカプセル化した種々のLEDの相対数を示す棒グラフである。
図7Fは、リポフェクタミン(登録商標)または異なるデンドリマー(G)−シクロデキストリン結合体(CD)の組み合わせ含む種々のLEDを使用したsiGFP構築物のトランスフェクション後のeGFPで安定にトランスフェクションした293T細胞中のGFPの発現レベルを示す棒グラフである。このグラフは、siGFPと複合体化した修飾デンドリマーのサイレンシング能力を評価するためにGFPの平均蛍光強度(MFI)を測定している。x軸を、以下のように読み取るべきである:mock:ナンセンスsiRNALFA:LFAに対するコントロールsiRNA G3:未修飾第3世代PAMAMデンドリマーG3 5X:1つのシクロデキストリンが結合体化されたG3デンドリマー(G3−1CD)G3 5xd:2CDが結合体化されたG3(G3−2CD)G3 10x:3CDが結合体化されたG3(G3−3CD)G3 20x:3.4CDが結合体化されたG3(G3−3.4CD)G4:未修飾のG4デンドリマー(G4)G4 5x:1CDが結合体化されたG4デンドリマー(G4−1CD)G4 5xd:1.3CDが結合体化されたG4デンドリマー(G4−1.3CD)G4 10x:G4−3CDG5:未修飾の第5世代(G5)デンドリマーG5 5x:G5−1CDG5 10x:G5−3CDG5 10x 0.5mg:他の処理で200ugの代わりに500ug使用したG5−3CDG5 10x D:G5−2.5CDG5 20x:G5−4CD 。
【
図7-4】
図7Aは、siRNA/デンドリマーポリプレックスと薬物の組み合わせをカプセル化し、外側シェルをターゲティング抗体または単鎖可変フラグメント(scFv)で共有結合的に修飾したLED調製の略図である。
図7Bは、LEDおよびモデル薬物であるメトトレキサート(MTX)をカプセル化したLEDの細胞傷害性のグラフである。バーは、1mg/ml〜10μg/mlのLEDまたは薬物またはその組み合わせの連続希釈物を示す。アジ化合物を、細胞死滅のポジティブコントロールとして使用する。
図7Cは、未修飾第4世代PAMAMデンドリマー(G4)、またはFCCP(小分子イオノフォア、カルボニルシアニドp−トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン)を使用するか使用しないで第一級アミンで置換し、遮蔽したシクロデキストリン分子(CD)に結合体化したデンドリマーでの処理後のエンドソーム破壊を示す細胞の百分率を示す棒グラフである。
図7Dは、種々のN/P比で種々のLED(G4、G4−3CD、G4−6CD)を使用してpGFPでトランスフェクションした全細胞に対する百分率としてのGFP陽性細胞数のを示す棒グラフである。
図7Eは、MFICD3+、CD4+細胞コントロール、および異なる投薬量のCD4siRNA構築物またはルシフェラーゼsiRNA構築物をカプセル化した種々のLEDの相対数を示す棒グラフである。
図7Fは、リポフェクタミン(登録商標)または異なるデンドリマー(G)−シクロデキストリン結合体(CD)の組み合わせ含む種々のLEDを使用したsiGFP構築物のトランスフェクション後のeGFPで安定にトランスフェクションした293T細胞中のGFPの発現レベルを示す棒グラフである。このグラフは、siGFPと複合体化した修飾デンドリマーのサイレンシング能力を評価するためにGFPの平均蛍光強度(MFI)を測定している。x軸を、以下のように読み取るべきである:mock:ナンセンスsiRNALFA:LFAに対するコントロールsiRNA G3:未修飾第3世代PAMAMデンドリマーG3 5X:1つのシクロデキストリンが結合体化されたG3デンドリマー(G3−1CD)G3 5xd:2CDが結合体化されたG3(G3−2CD)G3 10x:3CDが結合体化されたG3(G3−3CD)G3 20x:3.4CDが結合体化されたG3(G3−3.4CD)G4:未修飾のG4デンドリマー(G4)G4 5x:1CDが結合体化されたG4デンドリマー(G4−1CD)G4 5xd:1.3CDが結合体化されたG4デンドリマー(G4−1.3CD)G4 10x:G4−3CDG5:未修飾の第5世代(G5)デンドリマーG5 5x:G5−1CDG5 10x:G5−3CDG5 10x 0.5mg:他の処理で200ugの代わりに500ug使用したG5−3CDG5 10x D:G5−2.5CDG5 20x:G5−4CD 。
【
図8-1】
図8Aは、%MHC−SIINFEKL、マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)を示す棒グラフである。オボアルブミンのみ(OVA)、デンドリマーのみ、またはOVAとデンドリマーとの組み合わせを含むリポソームでの処理後のMHC−SINFEKL陽性細胞。*p<0.05(一元配置ANOVAボンフェローニ事後検定による)。
図8Bは、種々のコントロールならびに1種またはそれより多くのデンドリマー(すなわち、G5)、抗原(すなわち、オボアルブミン(OVA))、および標識する場合の表面修飾物質(すなわち、MPLA、および/またはCpG)を含むリポソームを用いた%MHC−SINFEKL陽性細胞(25.D16−PE染色による)を示す棒グラフである。MPLA、OVA、G5、およびCpGを含む粒子処方物を示さなかった。なぜなら、これらの粒子処方物は、極めて少量のOVAタンパク質をカプセル化し、粒子濃度が他の群より高いので、この量のOVAによる処理群の正規化によって細胞傷害性を示したからである。
図8Cは、漸増量のCpGが存在するLEDで処理した骨髄樹状細胞(BMDC)から発現したIL−6(pg/mL)を示す棒グラフである。
【
図8-2】
図8Aは、%MHC−SIINFEKL、マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)を示す棒グラフである。オボアルブミンのみ(OVA)、デンドリマーのみ、またはOVAとデンドリマーとの組み合わせを含むリポソームでの処理後のMHC−SINFEKL陽性細胞。*p<0.05(一元配置ANOVAボンフェローニ事後検定による)。
図8Bは、種々のコントロールならびに1種またはそれより多くのデンドリマー(すなわち、G5)、抗原(すなわち、オボアルブミン(OVA))、および標識する場合の表面修飾物質(すなわち、MPLA、および/またはCpG)を含むリポソームを用いた%MHC−SINFEKL陽性細胞(25.D16−PE染色による)を示す棒グラフである。MPLA、OVA、G5、およびCpGを含む粒子処方物を示さなかった。なぜなら、これらの粒子処方物は、極めて少量のOVAタンパク質をカプセル化し、粒子濃度が他の群より高いので、この量のOVAによる処理群の正規化によって細胞傷害性を示したからである。
図8Cは、漸増量のCpGが存在するLEDで処理した骨髄樹状細胞(BMDC)から発現したIL−6(pg/mL)を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
I.定義
「ナノリポゲル」は、本明細書中で使用される場合、単層または二層であり得るリポソームシェル内に、ホスト分子を含むことができるポリマーマトリクスコアを有し、任意選択的にコアとシェルが架橋しているコア−シェルナノ粒子をいう。
【0019】
「ホスト分子」は、本明細書中で使用される場合、活性薬剤と可逆的に会合して複合体を形成する分子または材料をいう。特定の実施形態では、ホストは、活性薬剤と包接複合体を形成する分子である。包接複合体は、活性薬剤(すなわち、ゲスト)または活性薬剤の一部が別の分子、分子群、または材料(すなわち、ホスト)の空隙内に挿入された場合に形成される。ホストは、小分子、オリゴマー、ポリマー、またはその組み合わせであり得る。例示的なホストには、ポリサッカリド(アミロース、シクロデキストリン、および複数のアルドース環を含む他の環状またはらせん状の化合物(例えば、モノサッカリド(グルコース、フルクトース、およびガラクトースなど)の1,4結合および1,6結合を介して形成された化合物)など)およびジサッカリド(スクロース、マルトース、およびラクトースなど)が含まれる。他の例示的なホスト化合物には、クリプタンド、クリプトファン、キャビタンド、クラウンエーテル、デンドリマー、イオン交換樹脂、カリックスアレーン、バリノマイシン、ナイジェリシン、カテナン、ポリカテナン、カルセランド、ククルビツリル、およびスフェランドが含まれる。
【0020】
「小分子」は、本明細書中で使用される場合、約2000g/mol未満、より好ましくは約1500g/mol未満、最も好ましくは約1200g/mol未満の分子量を有する分子をいう。
【0021】
「ヒドロゲル」は、本明細書中で使用される場合、共有結合架橋または非共有結合架橋によって共に保持された高分子の三次元網目構造から形成された水膨潤性ポリマーマトリクスをいう。これは相当量(重量)の水を吸収してゲルを形成することができる。
【0022】
「ナノ粒子」は、本明細書中で使用される場合、一般に、直径が約10nmから約1ミクロンまで(未満)、好ましくは100nm〜約1ミクロンの粒子をいう。粒子は任意の形状を有し得る。球状のナノ粒子を、一般に、「ナノスフェア」という。
【0023】
「分子量」は、本明細書中で使用される場合、一般に、特別の規定がない限り、バルクのポリマーの相対平均鎖長をいう。実際には、分子量を、種々の方法(ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)または細管式粘度測定(capillary viscometry)が含まれる)を使用して推定または特徴づけることができる。GPC分子量を、数平均分子量(Mn)と対照的な重量平均分子量(Mw)として報告する。細管式粘度測定により、特定の一連の濃度、温度、および溶媒条件を使用して希釈ポリマー溶液から決定した固有粘度として分子量が推定される。
【0024】
「平均粒径」は、本明細書中で使用される場合、一般に、粒子集団中の粒子の統計的平均粒径(直径)をいう。本質的に球状の粒子の直径は、物理的直径または流体力学直径をいうことができる。非球状粒子の直径は、優先的に、流体力学直径をいうことができる。本明細書中で使用される場合、非球状粒子の直径は、粒子表面上の2点間の最長の直線距離をいうことができる。平均粒径を、当該分野で公知の方法(動的光散乱など)を使用して測定することができる。
【0025】
「単分散」および「均一サイズ分布」は、本明細書中で互換的に使用され、全粒子が同一またはほぼ同一のサイズであるナノ粒子または微粒子の集団を説明する。本明細書中で使用される場合、単分散分布は、分布の90%がメジアン粒径の15%以内、より好ましくはメジアン粒径の10%以内、最も好ましくはメジアン粒径の5%以内にある粒子分布をいう。
【0026】
「活性薬剤」は、本明細書中で使用される場合、体内で局所的におよび/または全身に作用する生理学的にまたは薬理学的に活性な物質をいう。活性薬剤は、疾患または障害の処置(例えば、治療薬)、防止(例えば、予防薬)、または診断(例えば、診断薬)のために患者に投与される物質である。
【0027】
II.ナノリポゲル
ナノリポゲルは、活性薬剤の持続送達のためのリポソームおよびポリマーベースの粒子の両方の利点を組み合わせたコア−シェルナノ粒子である。以下でより詳細に考察するように、典型的には、外側シェルは、カーゴを保護し、生体適合性およびターゲティング分子での機能付与のための表面を提供する。外側シェルは、所望するまで(例えば、環境条件または刺激に応答して単分散性の再生可能な粒子集団を作製し、所望の細胞型への内在化を媒介するまで)成分が曝露されないように成分をカプセル化する。デンドリマーまたは他のポリマーであり得る内部コアは、外側シェルとは個別且つ付加的な機能性を有する。例えば、内側シェルは、薬物、ワクチン、または造影薬を二次的に堆積させ、異なる生理化学的特性を有する成分の粒子への負荷を増大させ、粒子から内容物を調整可能に放出させ、エンドソーム破壊によってDNA/RNA、薬物、および/またはタンパク質のサイトゾルでの利用可能性を増大させ、これらすべてによって薬物効果、抗原提示、およびトランスフェクション/サイレンシングが増強される。
【0028】
ナノリポゲルは、1種またはそれより多くのホスト分子を含むポリマーマトリクスコアを有する。ポリマーマトリクスは、好ましくは、1種またはそれより多くのポリ(アルキレンオキシド)セグメント(ポリエチレングリコールなど)および1種またはそれより多くの脂肪族ポリエステルセグメント(ポリ乳酸など)を含むヒドロゲル(架橋ブロックコポリマーなど)である。1種またはそれより多くのホスト分子(シクロデキストリン、デンドリマー、またはイオン交換樹脂など)は、ポリマーマトリクス内に分散しているか、ポリマーマトリクスに共有結合している。ヒドロゲルコアを、リポソームシェルで包囲する。
【0029】
ナノリポゲルを、その後に制御様式で放出することができる種々の活性薬剤を組み込むように構築することができる。活性薬剤を、ヒドロゲルマトリクス内に分散させるか、1種またはそれより多くのホスト分子と会合させるか、リポソームシェル内に分散させるか、リポソームシェルに共有結合させるか、その組み合わせを行うことができる。活性薬剤を、ナノリポゲル内のこれらの各局所に選択的に組み込むことができる。さらに、これらの各局所からの活性薬剤の放出速度を、独立して調整することができる。これらの各局所が異なる特性(サイズおよび疎水性/親水性が含まれる)を保有するので、これらの各局所に独立して組み込まれた化学的実体はサイズおよび組成が劇的に異なり得る。例えば、ナノリポゲルに、ポリマーマトリクス内に分散させた1種またはそれより多くのタンパク質およびホスト分子と会合した小分子疎水性薬物を負荷することができる。
【0030】
このような方法で、ナノリポゲルは、化学的組成および分子量が非常に異なる薬剤を同時徐放することができる。非限定的な例では、ナノリポゲルに、ポリマーマトリクス内に分散させたホスト分子に会合した疎水性の小分子抗原および免疫アジュバント(免疫賦活性タンパク質など)の両方を負荷することができる。これらのナノリポゲルは、免疫応答を至適化するためにアジュバントと共に抗原を徐放することができる。特定の例では、免疫賦活性タンパク質であるインターロイキン−2(IL−2)および低分子量有機分子である2−(5−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−2−tert−ブチル−3H−イミダゾール−4−イル)−6−メチルピリジン塩酸塩(トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)のインヒビター)のナノリポゲルによって同時持続送達が達成される。この構築物は、マウス系において、単独の薬剤または2種の薬剤の組み合わせの溶液での投与によって達成可能な抗腫瘍応答よりもはるかに優れた抗腫瘍応答が得られる。さらに、ナノリポゲルは、好ましくは、ナノリポゲル内にカプセル化させた1種またはそれより多くの活性薬剤の生体内分布を調整することができる。
【0031】
ナノリポゲルは、典型的には、球状であり、平均粒径は約50nmと約1000nmとの間、より好ましくは約75nmと約300nmとの間、最も好ましくは約90nmと約200nmとの間である。一定の実施形態では、ナノリポゲルの平均粒径は、約100nmと約140nmとの間である。粒子は、非球状であり得る。
【0032】
ナノリポゲルのリポソームシェル中に存在する脂質の性質に依存して、陽性、陰性、または中性付近の表面電荷を有するナノリポゲルを調製することができる。一定の実施形態では、ナノリポゲルは中性付近の表面電荷を保有する。一定の実施形態では、ナノリポゲルのζ電位は、約10mVと約−10mVとの間、より好ましくは約5mVと約−5mVとの間、より好ましくは約3mVと約−3mVとの間、最も好ましくは約2mVと約−2mVとの間である。
【0033】
A.コア
ナノリポゲルコアは、ポリマーマトリクスおよび1種またはそれより多くのホスト分子から形成される。ナノリポゲルコアは、1種またはそれより多くの活性薬剤をさらに含むことができる。活性薬剤を、ホスト分子と複合体化するか、ポリマーマトリクスを用いて分散させるか、それらの組み合わせを行うことができる。
【0034】
1.ポリマーマトリクス
ナノリポゲルのポリマーマトリクスを、1種またはそれより多くのポリマーまたはコポリマーから形成することができる。ポリマーマトリクスの組成および形態を変動させることにより、種々の制御放出特徴を達成することができ、それにより、中程度の一定用量の1種またはそれより多くの活性薬剤を長期間にわたって送達可能である。
【0035】
ポリマーマトリクスを非生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーから形成することができるが、しかし、好ましくは、ポリマーマトリクスは生分解性である。ポリマーマトリクスを、1日〜1年間、より好ましくは7日〜26週間、より好ましくは7日〜20週間、最も好ましくは7日〜16週間の範囲の期間にわたって分解されるように選択することができる。
【0036】
一般に、天然ポリマーを使用することができるが、合成ポリマーが好ましい。代表的なポリマーには、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリヒドロキシアルカノアート(ポリ3−ヒドロキシブチラートまたはポリ4−ヒドロキシブチラートなど);ポリカプロラクトン;ポリ(オルトエステル);ポリ酸無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン);ポリ(グリコリド−co−カプロラクトン);ポリカーボネート(チロシンポリカーボネートなど);ポリアミド(合成および天然のポリアミドが含まれる)、ポリペプチド、およびポリ(アミノ酸);ポリエステルアミド;他の生体適合性ポリエステル;ポリ(ジオキサノン);ポリ(アルキレンアルキラート);親水性ポリエーテル;ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリラート;ポリシロキサン;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー;ポリケタール;ポリホスファート;ポリヒドロキシバレラート;ポリアルキレンオキサラート;ポリアルキレンスクシナート;ポリ(マレイン酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン;ポリ(アルキレンオキシド)(ポリエチレングリコール(PEG)など);誘導体化セルロース(アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロースなど)、アクリル酸、メタクリル酸のポリマーまたはそのコポリマーもしくは誘導体(エステル、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(エチルメタクリラート)、ポリ(ブチルメタクリラート)、ポリ(イソブチルメタクリラート)、ポリ(ヘキシルメタクリラート)、ポリ(イソデシルメタクリラート)、ポリ(ラウリルメタクリラート)、ポリ(フェニルメタクリラート)、ポリ(メチルアクリラート)、ポリ(イソプロピルアクリラート)、ポリ(イソブチルアクリラート)、およびポリ(オクタデシルアクリラート)(本明細書中で集合的に「ポリアクリル酸)と呼ばれる)が含まれる)、ならびにその誘導体、コポリマー、およびブレンドが含まれる。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「誘導体」には、化学基の置換、付加、および当業者によって日常的に作製される上記のポリマー骨格への他の修飾を有するポリマーが含まれる。天然ポリマー(タンパク質(アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、プロラミン(ゼインなど)など)およびポリサッカリド(アルギナートおよびペクチンなど)が含まれる)を、ポリマーマトリクスに組み込むこともできる。種々のポリマーを使用してポリマーマトリクスを形成することができるが、一般に、得られたポリマーマトリクスはヒドロゲルであろう。一定の例では、ポリマーマトリクスが天然ポリマーを含む場合、天然ポリマーは、加水分解によって分解されるバイオポリマー(ポリヒドロキシアルカノアートなど)である。
【0038】
好ましい実施形態では、ポリマーマトリクスは、1種またはそれより多くの架橋性ポリマーを含む。好ましくは、架橋性ポリマーは、ナノリポゲル形成後にポリマーマトリクスを架橋可能な1種またはそれより多くの光重合性基を含む。適切な光重合性基の例には、ビニル基、アクリラート基、メタクリラート基、およびアクリルアミド基が含まれる。存在する場合、光重合性基を、架橋性ポリマーの骨格内、架橋性ポリマーの側鎖のうちの1つ以上内、架橋性ポリマーの末端の1つ以上で、またはその組み合わせに組み込むことができる。
【0039】
ポリマーマトリクスを、特定の適用に最適な特性(薬物放出速度が含まれる)を有するナノリポゲルを形成するための種々の分子量を有するポリマーから形成することができる。一般に、ポリマーマトリクスを構成するポリマーの平均分子量は約500Daおよび50kDaである。ポリマーマトリクスを非架橋性ポリマーから形成する場合、ポリマーの平均分子量は、典型的には、約1kDaと約50kDaとの間、より好ましくは約1kDaと約70kDaとの間、最も好ましくは約5kDaと約50kDaとの間の範囲である。ポリマーマトリクスを架橋性ポリマーから形成する場合、ポリマーは、典型的には、約500Daと約25kDaとの間、より好ましくは約1kDaと約10kDaとの間、最も好ましくは約3kDaと約6kDaとの間の範囲のより低い平均分子量を有する。特定の実施形態では、ポリマーマトリクスを、平均分子量が約5kDaの架橋性ポリマーから形成する。
【0040】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリクスを、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーまたは1種またはそれより多くのポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むブロックコポリマーから形成する。ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーまたはポリ(アルキレンオキシド)ポリマーセグメントは、8と500との間の反復単位、より好ましくは40と300との間の反復単位、最も好ましくは50と150との間の反復単位を含むことができる。適切なポリ(アルキレンオキシド)には、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシドまたはPEGとも呼ばれる)、ポリプロピレン1,2−グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリプロピレン1,3−グリコール、およびそのコポリマーが含まれる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリクスを、脂肪族ポリエステルまたは1種またはそれより多くの脂肪族ポリエステルセグメントを含むブロックコポリマーから形成する。好ましくは、ポリエステルまたはポリエステルセグメントは、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)PGA、またはポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)である。
【0042】
好ましい実施形態では、ポリマーマトリクスを、1種またはそれより多くのポリ(アルキレンオキシド)セグメント、1種またはそれより多くの脂肪族ポリエステルセグメント、および任意選択的な1種またはそれより多くの光重合性基を含むブロックコポリマーから形成する。これらの場合、1種またはそれより多くのポリ(アルキレンオキシド)セグメントは、得られたポリマーマトリクスが適切なヒドロゲルを形成するようにポリマーに必要な親水性を付与する一方で、ポリエステルセグメントは調整可能な疎水性/親水性および/または所望のin vivo分解特徴を有するポリマーマトリクスを提供する。
【0043】
ポリエステルセグメントの分解速度、しばしば対応する薬物放出速度を、数日(純粋なPGAの場合)から数ヶ月(純粋なPLAの場合)まで変化させることができ、ポリエステルセグメント中のPLAのPGAに対する比を変化させることによって容易に操作することができる。さらに、ポリ(アルキレンオキシド)(PEGなど)および脂肪族ポリエステル(PGA、PLA、およびPLGAなど)はヒトでの使用の安全性が確立されており、これらの材料はヒトへの臨床適用(薬物送達系が含まれる)において30年を超えて使用されている。
【0044】
一定の実施形態では、ポリマーマトリクスを、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメント、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントのいずれかの末端に結合した隣接脂肪族ポリエステルセグメント、および1種またはそれより多くの光重合性基を含むトリブロックコポリマーから形成する。好ましくは、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントはPEGであり、脂肪族ポリエステルセグメントは、PGA、PLA、またはPLGAである。
【0045】
一般に、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの平均分子量は、隣接ポリエステルセグメントの平均分子量より高い。一定の実施形態では、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの平均分子量は、1つの隣接ポリエステルセグメントの平均分子量の少なくとも3倍、より好ましくは1つの隣接ポリエステルセグメントの平均分子量の少なくとも5倍、最も好ましくは1つの隣接ポリエステルセグメントの平均分子量の少なくとも10倍である。
【0046】
いくつかの場合、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの平均分子量は、約500Daと約10,000Daとの間、より好ましくは約1,000Daと約7,000Daとの間、最も好ましくは約2,500Daと約5,000Daとの間の範囲である。特定の実施形態では、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの平均分子量は約4,000Daである。典型的には、各隣接ポリエステルセグメントの平均分子量は、約100Daと約3,500Daとの間、より好ましくは約100Daと約1,000Daとの間、最も好ましくは約100Daと約500Daとの間の範囲である。
【0047】
1つの好ましい実施形態では、ポリマーマトリクスを、以下:
【0049】
に示すトリブロックコポリマーから形成し、式中、mおよびnは、それぞれ独立して、1と500との間、より好ましくは10と150との間の整数である。
【0050】
好ましい天然ポリマーの例には、タンパク質(アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、およびプロラミン(例えば、ゼイン)など)およびポリサッカリド(アルギナート、セルロース誘導体、およびポリヒドロキシアルカノアート(例えば、ポリヒドロキシブチラート)など)が含まれる。微粒子のin vivo安定性を、ポリエチレングリコール(PEG)と共重合したポリ(ラクチド−co−グリコリド)などのポリマーの使用によって生成中に調整することができる。PEGを外面上に曝露する場合、PEGは、PEGの親水性によってこれらの材料が循環する時間を増大させることができる。
【0051】
好ましい非生分解性ポリマーの例には、エチレンビニルアセタート、ポリ(メト)アクリル酸、ポリアミド、コポリマー、およびその混合物が含まれる。
【0052】
マトリクスを、伝統的なイオン性ゲル化技術によって生成されたゲル型ポリマー(アルギナートなど)から作製することもできる。ポリマーを最初に水溶液に溶解し、硫酸バリウムまたはいくつかの生物活性剤と混合し、次いで、いくつかの場合に液滴を分離するために窒素ガス流を使用する微小滴形成デバイスによって押し出す。ゆっくり撹拌させた(およそ100〜170RPM)イオン性硬化浴を、形成された微小滴を捕捉するために押し出しデバイス下に配置する。微粒子を、十分な時間でゲル化させるために浴中で20〜30分間インキュベートする。微粒子の粒径を、種々のサイズの押出機の使用または窒素ガスの流量またはポリマー溶液の流量のいずれかの変化によって制御する。キトサン微粒子を、ポリマーの酸性溶液への溶解およびトリホスファートとの架橋によって調製することができる。カルボキシメチルセルロース(CMC)微粒子を、酸溶液へのポリマーの溶解および鉛イオンでの微粒子の沈殿によって調製することができる。負に荷電したポリマー(例えば、アルギナート、CMC)の場合、異なる分子量の正に荷電したリガンド(例えば、ポリリジン、ポリエチレンイミン)を、イオン結合させることができる。
【0053】
おそらく、脂肪族ポリエステル、特に、疎水性ポリ(乳酸)(PLA)、より親水性のポリ(グリコール酸)PGAおよびそのコポリマーであるポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)が最も広く使用されている。これらのポリマーの分解速度、しばしば対応する薬物放出速度を、数日(PGA)から数ヶ月(PLA)まで変化させることができ、PLAのPGAに対する比を変化させることによって容易に操作される。第2に、PLGAならびにそのホモポリマーPGAおよびPLAの生理学的適合性は、ヒトでの使用の安全性が確立されており、これらの材料は種々のヒトへの臨床適用(薬物送達系が含まれる)において30年を超える歴史がある。PLGAナノ粒子を、受動的または能動的なターゲティングのいずれかによって薬物の薬物動態学および標的組織への生体内分布を改善する種々の方法で処方することができる。微粒子を、カプセル化または結合された分子が数日から数週間にわたって放出されるようにデザインする。放出持続時間に影響を及ぼす要因には、周辺媒質のpH(PLGAの酸触媒加水分解に起因するpH5およびそれ未満で放出速度がより早い)およびポリマー組成が含まれる。脂肪族ポリエステルは疎水性が異なり、それによって分解速度に影響を及ぼす。特に、疎水性ポリ(乳酸)(PLA)、より親水性の高いポリ(グリコール酸)PGA、およびそのコポリマーであるポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)は、種々の放出速度を有する。これらのポリマーの分解速度、しばしば対応する薬物放出速度を、数日(PGA)から数ヶ月(PLA)まで変化させることができ、この速度はPLAのPGAに対する比を変化させることによって容易に操作される。
【0054】
2.ホスト分子
ホスト分子は、活性薬剤と可逆的に会合して複合体を形成する分子または材料である。可逆的に活性薬剤と複合体を形成する能力のために、ホスト分子は複合体化した活性薬剤のin vivoでの放出を調節するように機能することができる。
【0055】
いくつかの場合、ホスト分子は、活性薬剤と包接複合体を形成する分子である。包接複合体は、活性薬剤(すなわち、ゲスト)または活性薬剤の一部が別の分子、分子群、または材料(すなわち、ホスト)の空隙内に挿入された場合に形成される。典型的には、ゲスト分子は、宿主の枠組みや構造に影響を及ぼすことなくホスト分子と会合する。例えば、包接複合体の場合、ホスト分子中の利用可能な空隙のサイズおよび形状は、複合体形成の結果として実質的に不変である。
【0056】
ホスト分子は、小分子、オリゴマー、ポリマー、またはその組み合わせであり得る。例示的なホストには、ポリサッカリド(アミロース、シクロデキストリン、および複数のアルドース環を含む他の環状またはらせん状の化合物(例えば、モノサッカリド(グルコース、フルクトース、およびガラクトースなど)の1,4結合および1,6結合を介して形成された化合物)など)およびジサッカリド(スクロース、マルトース、およびラクトースなど)が含まれる。他の例示的なホスト化合物には、クリプタンド、クリプトファン、キャビタンド、クラウンエーテル、デンドリマー、イオン交換樹脂、カリックスアレーン、バリノマイシン、ナイジェリシン、カテナン、ポリカテナン、カルセランド、ククルビツリル、およびスフェランドが含まれる。
【0057】
さらなる他の実施形態では、有機ホスト化合物または有機ホスト材料には、カーボンナノチューブ、フラーレン、および/またはグラフィーム(grapheme)ベースのホスト材料が含まれる。カーボンナノチューブ(CNT)は、円柱ナノ構造を有する炭素の同素体である。ナノチューブは球状バッキーボールも含まれるフラーレン構造ファミリーのメンバーであり、ナノチューブの末端をバッキーボール構造の半球でキャッピングすることができる。その名称は、グラフェンと呼ばれる1原子の厚さの炭素シートによって形成された壁を有するその長い中空構造に由来する。これらのシートは特異的且つ個別の(「カイラル」)角で丸められ、ローリング角と半径との組み合わせがナノチューブの特性を決定する。ナノチューブを、単一壁ナノチューブ(SWNT)および多重壁ナノチューブ(MWNT)に分類することができる。ナノチューブおよび/またはフラーレンは、例えば、チューブまたはフラーレン内に送達すべき材料(すなわち、ゲスト)のカプセル化または捕捉によってホストとしての機能を果たすことができる。あるいは、チューブおよび/またはフラーレンの外部および/または内部を、送達すべきゲストと複合体化することができる官能基で官能化することができる。複合体化には、イオン相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、およびπ−π相互作用(πスタッキングなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
グラフェンは炭素同素体でもある。グラフェンの構造は、ハニカム状の結晶格子中に高密度に充填されたsp
2結合炭素原子の1原子の厚さの平面シートである。グラフェンは、いくつかの炭素同素体(グラファイト、チャコール、カーボンナノチューブ、およびフラーレンが含まれる)の基本構造要素である。送達すべきゲストは、ナノチューブおよびフラーレンについて上記のように、グラフェンまたは官能化グラフェンと会合および/または複合体化することができる。
【0059】
ホスト材料は無機材料でもあり得、無機リン酸塩およびシリカが含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
適切なホスト分子は、一般に、送達すべき活性薬剤の正体および所望の薬物放出プロフィールを考慮してナノリポゲルに組み込むために選択される。送達される活性薬剤との複合体を形成するために、ホスト分子を、一般に、立体的性質(サイズ)および電子的性質(電荷および極性)の両方の観点から活性薬剤に有利なように選択する。例えば、送達すべき活性薬剤と包接複合体を形成するホスト分子の場合、ホスト分子は、典型的には、活性薬剤を組み込むための適切なサイズの間隙を保有するであろう。さらに、ホスト分子は、典型的には、活性薬剤との複合体形成を促進するのに適切な疎水性/親水性の間隙を保有する。ゲスト−ホスト相互作用の強度は、ナノリポゲルからの活性薬剤の薬物放出プロフィールに影響を及ぼし、ゲスト−ホスト相互作用が強いほど一般に薬物放出が長期になるであろう。
【0061】
一般に、ホスト分子を、ナノリポゲルコアを形成するポリマーマトリクス内に分散させる。いくつかの場合、1種またはそれより多くのホスト分子を、ポリマーマトリクスに共有結合させる。例えば、ホスト分子を、ポリマーマトリクスと反応する1種またはそれより多くのペンダント反応性官能基で官能化することができる。特定の実施形態では、ホスト分子は、ポリマーマトリクスと反応してポリマーマトリクスと架橋する1種またはそれより多くのペンダント反応性官能基を含む。適切な反応性官能基の例には、メタクリラート、アクリラート、ビニル基、エポキシド、チイラン、アジド、およびアルキンが含まれる。
【0062】
一定の実施形態では、ホスト分子はシクロデキストリンである。シクロデキストリンは、6個(α−シクロデキストリン)、7個(β−シクロデキストリン)、8個(γ−シクロデキストリン)、またはそれを超えるα−(1,4)連結グルコース残基を含む環状オリゴサッカリドである。シクロデキストリンのヒドロキシル基が環の外側に配向している一方で、グルコシドの酸素および非交換性水素原子の2つの環は間隙の内側に向かっている。結果として、シクロデキストリンは、親水性の外部と組み合わせた疎水性の内部間隙を保有する。疎水性活性薬剤との組み合わせの際に、活性薬剤(すなわち、ゲスト)は、シクロデキストリン(すなわち、ホスト)の疎水性の内部に挿入される。
【0063】
シクロデキストリンを、大環状分子の一級または二級ヒドロキシル基またはその両方のいくつかまたはすべてが1種またはそれより多くのペンダント基で官能化されるように化学修飾することができる。ペンダント基は、ポリマーマトリクス(メタクリラート、アクリラート、ビニル基、エポキシド、チイラン、アジド、アルキン、およびその組み合わせなど)と反応することができる反応性官能基であり得る。ペンダント基はまた、シクロデキストリンの溶解度を改変する働きをすることができる。例示的なこの型の基には、1種またはそれより多くの(例えば、1、2、3、または4つの)ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボニル基、アシル基、オキシ基、およびオキソ基で任意選択的に置換されたスルフィニル、スルホニル、ホスファート、アシル、およびC
l〜C
12アルキル基が含まれる。これらのアルコール残基の修飾方法は当該分野で公知であり、多数のシクロデキストリン誘導体が市販されている。
【0064】
適切なシクロデキストリンの例には、α−シクロデキストリン;β−シクロデキストリン;γ−シクロデキストリン;メチルα−シクロデキストリン;メチルβ−シクロデキストリン;メチルγ−シクロデキストリン;エチルβ−シクロデキストリン;ブチルα−シクロデキストリン;ブチルβ−シクロデキストリン;ブチルγ−シクロデキストリン;ペンチルγ−シクロデキストリン;ヒドロキシエチルβ−シクロデキストリン;ヒドロキシエチルγ−シクロデキストリン;2−ヒドロキシプロピルα−シクロデキストリン;2−ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン;2−ヒドロキシプロピルγ−シクロデキストリン;2−ヒドロキシブチルβ−シクロデキストリン;アセチルα−シクロデキストリン;アセチルβ−シクロデキストリン;アセチルγ−シクロデキストリン;プロピオニルβ−シクロデキストリン;ブチリルβ−シクロデキストリン;スクシニルα−シクロデキストリン;スクシニルβ−シクロデキストリン;スクシニルγ−シクロデキストリン;ベンゾイルβ−シクロデキストリン;パルミチルβ−シクロデキストリン;トルエンスルホニルβ−シクロデキストリン;アセチルメチルβ−シクロデキストリン;アセチルブチルβ−シクロデキストリン;グルコシルα−シクロデキストリン;グルコシルβ−シクロデキストリン;グルコシルγ−シクロデキストリン;マルトシルα−シクロデキストリン;マルトシルβ−シクロデキストリン;マルトシルγ−シクロデキストリン;α−シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;β−シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;γ−シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;カルボキシメチルエチルβ−シクロデキストリン;リン酸エステルα−シクロデキストリン;リン酸エステルβ−シクロデキストリン;リン酸エステルγ−シクロデキストリン;3−トリメチルアンモニウム−2−ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリン;スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリン;カルボキシメチルα−シクロデキストリン;カルボキシメチルβ−シクロデキストリン;カルボキシメチルγ−シクロデキストリン、およびその組み合わせが含まれる。
【0065】
好ましいシクロデキストリンには、1種またはそれより多くのペンダントアクリラート基またはペンダントメタクリラート基で官能化されたα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリンが含まれる。特定の実施形態では、ホスト分子は、複数のメタクリラート基で官能化されたβ−シクロデキストリンである。例示的なこの型のホスト分子を以下:
【0067】
に例示し、ここで、RはC
1〜C
6アルキル基を示す。
【0068】
さらなる例として、ホスト分子はまた、イオン相互作用を介して活性薬剤と一過性に会合する材料であり得る。例えば、制御薬物放出で用いる当該分野で公知の従来のイオン交換樹脂は、ホスト分子としての機能を果たし得る。例えば、Chen,ら、“Evaluation of ion−exchange microspheres as carriers for the anticancer drug doxorubicin:in vitro studies.”J.Pharm.Pharmacol.44(3):211−215(1992)およびFarag,ら、“Rate of release of organic carboxylic acids from ion exchange resins”J.Pharm.Sci.77(10):872−875(1988)を参照のこと。
【0069】
例示を目的として、送達される活性薬剤がカチオン種である場合、適切なイオン交換樹脂は、生理学的に許容され得る足場上にスルホン酸基(または修飾スルホン酸基)または任意選択的に修飾されたカルボン酸基を含むことができる。同様に、活性薬剤がアニオン種である場合、適切なイオン交換樹脂は、アミンベースの基(例えば、強力な相互作用のためのトリメチルアミンまたは弱い相互作用のためのジメチルエタノールアミン)を含むことができる。カチオン性ポリマー(ポリエチレンイミン(PEI)など)は、複合体オリゴヌクレオチド(siRNAなど)のホスト分子として機能することができる。
【0070】
他の場合では、ホスト分子はデンドリマー(ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーなど)である。カチオン性およびアニオン性のデンドリマーは、上記のように活性薬剤とのイオン性会合によってホスト材料として機能することができる。さらに、中サイズのデンドリマー(第3世代および第4世代のPAMAMデンドリマーなど)は、例えば、核酸の複合体化によって活性薬剤に適応することができる内部ボイドスペースを保有し得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、ホスト分子は、シクロデキストリンと結合体化したデンドリマーである。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、デンドリマーの第一級アミンを遮蔽する。適切なデンドリマーおよびシクロデキストリンは上記で考察している。未修飾デンドリマー(すなわち、第4世代PAMAMデンドリマー(G4))は、経験的に、エンドソーム破壊において、シクロデキストリン(cyclodexrin)(CD)と結合体化したデンドリマーより優れている(以下の実施例を参照のこと)。理論に拘束されないが、PAMAMデンドリマー上の末端アミン基がプロトンスポンジ効果によってエンドソームを緩衝化し、エンドソームを破壊すると考えられる。したがって、CDが増えることによってエンドソーム破壊が減少する。以下の実施例で考察するように、デンドリマーとシクロデキストリンとの異なる組み合わせを使用して、細胞内でのトランスフェクション効率およびエンドソーム破壊レベルを調整することができる。
【0072】
好ましくは、1種またはそれより多くのホスト分子は、ポリマーマトリクスの約0.1%〜約40%w/w、より好ましくは全処方物の約0.1%〜約25%w/wの量で存在する。
【0073】
3.活性薬剤
送達すべき活性薬剤には、治療薬、栄養補助薬(nutritional agent)、診断薬、および予防薬が含まれる。活性薬剤は、小分子の活性薬剤または生体高分子(タンパク質、ポリペプチド、または核酸など)であり得る。適切な小分子活性薬剤には、有機化合物および有機金属化合物が含まれる。小分子活性薬剤は、親水性、疎水性、または両親媒性の化合物であり得る。
【0074】
ナノリポゲルに組み込むことができる例示的な治療薬には、腫瘍抗原、CD4+T細胞エピトープ、サイトカイン、化学治療剤、放射性核種、小分子シグナル伝達インヒビター、光熱アンテナ(photothermal antenna)、モノクローナル抗体、免疫性危険シグナル伝達分子(immunologic danger signaling molecule)、他の免疫療法薬、酵素、抗生物質、抗ウイルス剤(特に、プロテアーゼインヒビターのみまたはHIVまたはB型肝炎もしくはC型肝炎の処置のためのヌクレオシドとの組み合わせ)、抗寄生虫薬(蠕虫、原生動物)、成長因子、成長抑制物質(growth inhibitor)、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、抗体およびその生物活性フラグメント(ヒト化抗体、単鎖抗体、およびキメラ抗体が含まれる)、抗原およびワクチン処方物(アジュバントが含まれる)、ペプチド薬、抗炎症薬、免疫調節薬(先天性免疫系を活性化するためにToll様受容体に結合するリガンド(CpGオリゴヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない)、適応免疫系を動員して至適化する分子、細胞傷害性Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、およびヘルパーT細胞の作用を活性化または上方制御する分子、およびサプレッサーT細胞または調節性T細胞を不活化または下方制御する分子が含まれる)、ナノリポゲルの細胞内への取り込みを促進する薬剤(樹状細胞および他の抗原提示細胞が含まれる)、栄養補助物質(nutraceutical)(ビタミンなど)、およびオリゴヌクレオチド薬(DNA、RNA、アンチセンス、アプタマー、低分子干渉RNA、リボザイム、リボヌクレアーゼPのための外部ガイド配列、および三重鎖形成剤が含まれる)が含まれる。
【0075】
例示的な診断薬には、常磁性分子、蛍光化合物、磁性分子、および放射性核種、X線造影剤、および造影剤が含まれる。
【0076】
一定の実施形態では、ナノリポゲルは1種またはそれより多くの抗癌剤を含む。代表的な抗癌剤には、アルキル化剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバジン、ロムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、クロラムブシル、およびイフォスファミドなど)、代謝拮抗物質(フルオロウラシル(5−FU)、ゲムシタビン、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、フルダラビン、およびフロクスウリジンなど)、抗有糸分裂薬(タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル(docetaxel)など)およびビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、およびビンデシンなど)が含まれる)、アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシン、バルルビシン、イダルビシン、エピルビシン、およびアクチノマイシン(アクチノマイシンDなど)が含まれる)、細胞傷害性抗生物質(マイトマイシン、プリカマイシン、およびブレオマイシンが含まれる)、トポイソメラーゼインヒビター(カンプトセシン(カンプトセシン、イリノテカン、およびトポテカンなど)およびエピポドフィロトキシンの誘導体(アムサクリン、エトポシド、エトポシドホスファート、およびテニポシドなど)が含まれる)、血管内皮成長因子(VEGF)に対する抗体(ベバシズマブ(アバスチン(登録商標)など)、他の抗VEGF化合物;サリドマイド(サロミド(登録商標))およびその誘導体(レナリドマイド(レブリミド(登録商標))など);エンドスタチン;アンギオスタチン;受容体チロシンキナーゼ(RTK)インヒビター(スニチニブ(スーテント(登録商標))など);チロシンキナーゼインヒビター(ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標))、エルロチニブ(タルセバ(登録商標))、パゾパニブ、アキシチニブ、およびラパチニブなど);トランスフォーミング成長因子−αインヒビターまたはトランスフォーミング成長因子−βインヒビター、および上皮成長因子受容体に対する抗体(パニツムマブ(ベクチビックス(登録商標))およびセツキシマブ(エルビタックス(登録商標)など))が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
一定の実施形態では、ナノリポゲルは、1種またはそれより多くの免疫調節薬を含む。例示的な免疫調節薬には、サイトカイン、キサンチン、インターロイキン、インターフェロン、オリゴデオキシヌクレオチド、グルカン、成長因子(例えば、TNF、CSF、GM−CSF、およびG−CSF)、ホルモン(エストロゲン(ジエチルスチルベストロール、エストラジオール)、アンドロゲン(テストステロン、ハロテスチン(登録商標)(フルオキシメステロン))、プロゲスチン(メガス(登録商標)(酢酸メゲストロール)、プロベラ(登録商標)(酢酸メドロキシプロゲステロン))、およびコルチコステロイド(プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン)など)が含まれる。
【0078】
粒子と会合することができる免疫学的アジュバントの例には、TLRリガンド、C型レクチン受容体リガンド、NOD様受容体リガンド、RLRリガンド、およびRAGEリガンドが含まれるが、これらに限定されない。TLRリガンドには、リポ多糖(LPS)およびその誘導体、ならびにリピドAおよびその誘導体(モノホスホリルリピドA(MPL)、グリコピラノシルリピドA、PET−リピドA、および3−O−デスアシル−4’−モノホスホリルリピドAが含まれるが、これらに限定されない)が含まれ得る。特定の実施形態では、免疫学的アジュバントはMPLである。別の実施形態では、免疫学的アジュバントはLPSである。TLRリガンドには、TLR3リガンド(例えば、ポリイノシン酸−ポリシチジル酸(ポリ(I:C))、TLR7リガンド(例えば、イミキモドおよびレシキモド)、およびTLR9リガンドも含まれ得るが、これらに限定されない。
【0079】
ナノリポゲルはまた、抗原および/またはアジュバント(すなわち、免疫応答を増強する分子)を含むことができる。ペプチド、タンパク質、およびDNAベースのワクチンを使用して、種々の疾患または状態に対する免疫を誘導することができる。細胞媒介性免疫は、ウイルス感染細胞を検出および破壊するために必要である。最も伝統的なワクチン(例えば、タンパク質ベースのワクチン)は、体液性免疫のみを誘導することができる。DNAベースのワクチンが体液性免疫および細胞媒介性免疫の両方を誘導することができるので、DNAベースのワクチンは、ウイルスまたは寄生虫に対してワクチン接種するための固有の手段である。さらに、DNAベースのワクチンは、潜在的に、伝統的なワクチンより安全である。DNAワクチンは、相対的により安定であり、製造および保存の際の費用効果がより高い。DNAワクチンは、2つの主な成分(DNAキャリア(または送達ビヒクル)および抗原をコードするDNA)からなる。DNAキャリアはDNAを分解から保護し、特定の組織または細胞へのDNA侵入および有効レベルでの発現を容易にすることができる。
【0080】
一定の実施形態では、ナノリポゲルコアは2つ以上の活性薬剤を含む。好ましい実施形態では、ナノリポゲルコアは、好ましくは1種またはそれより多くの適切なホスト分子と会合した小分子疎水性活性薬剤およびポリマーマトリクス内に分散された親水性活性薬剤の両方を含む。特定の実施形態では、親水性活性薬剤は、タンパク質(治療サイトカインなど)である。ホスト分子と会合した疎水性活性薬剤およびポリマーマトリクス内に分散された親水性分子の組み込みにより、2つ以上の活性薬剤(多様な生理化学的特徴(溶解度、疎水性/親水性、分子量、およびその組み合わせなど)を有する2つ以上の活性薬剤が含まれる)を制御放出させることができる。
【0081】
実施例によって証明された好ましい実施形態では、ホスト分子を使用して、低分子量化合物(化学療法薬など)(ホスト分子が低分子量化合物の放出を遅延させる場合)およびより大きな親水性化合物(サイトカインなど)を、類似の期間にわたって両分子が放出するように送達させる。
【0082】
B.シェル成分
ナノリポゲルは、1種またはそれより多くの同心円状の脂質単層または脂質二重層から構成されるリポソームシェルを含む。シェルは、1種またはそれより多くの(one or)活性薬剤、ターゲティング分子、またはその組み合わせをさらに含むことができる。
【0083】
1.脂質
ナノリポゲルは、1種またはそれより多くの同心円状の脂質単層または脂質二重層から構成されるリポソームシェルを含む。リポソームシェルの組成を、in vivoでの1種またはそれより多くの活性薬剤の放出速度に影響を及ぼすように変化させることができる。脂質を、必要に応じて共有結合的に架橋させてin vivo薬物放出を変更することもできる。
【0084】
脂質シェルを、単一の脂質二重層(すなわち、シェルは単層であり得る)またはいくつかの同心円状の脂質二重層(すなわち、シェルは多層であり得る)から形成することができる。脂質シェルを単一の脂質から形成することができるが、好ましい実施形態では、脂質シェルを、1つを超える脂質の組み合わせから形成する。脂質は、生理学的pHで中性、アニオン性、またはカチオン性の脂質であり得る。
【0085】
適切な中性およびアニオン性の脂質には、ステロールおよび脂質(コレステロール、リン脂質、リゾ脂質、リゾリン脂質、およびスフィンゴ脂質など)が含まれる。中性およびアニオン性の脂質には、ホスファチジルコリン(PC)(卵PC、ダイズPCなど)(1,2−ジアシル−グリセロ−3−ホスホコリンが含まれる);ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール(PI);糖脂質;スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリンなど);スフィンゴ糖脂質(1−セラミジルグルコシドとしても公知)(セラミドガラクトピラノシド、ガングリオシド、およびセレブロシドなど);脂肪酸、カルボン酸基を含むステロール(コレステロールなど)、またはその誘導体;および1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンまたは1,2−ジオレオリルグリセリルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジヘキサデシルホスホエタノールアミン(DHPE)、1,2−ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、および1,2−ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)が含まれる)が含まれるが、これらに限定されない。これらの脂質の天然の誘導体(例えば、組織由来のL−α−ホスファチジル:卵黄、心臓、脳、肝臓、ダイズ)および/または合成の誘導体(例えば、飽和および不飽和の1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−アシル−2−アシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジヘプタノイル−SN−グリセロ−3−ホスホコリン)も適切である。
【0086】
適切なカチオン性脂質には、例えば、メチル硫酸塩として、TAP脂質とも呼ばれるN−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム塩が含まれる。適切なTAP脂質には、DOTAP(ジオレオイル−)、DMTAP(ジミリストイル−)、DPTAP(ジパルミトイル−)、およびDSTAP(ジステアロイル−)が含まれるが、これらに限定されない。他の適切なカチオン性脂質には、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2−ジアシルオキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパン、N−[1−(2,3−ジオロイルオキシ)プロピル]−Ν,Ν−ジメチルアミン(DODAP)、1,2−ジアシルオキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2−ジアルキルオキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3−[N−(N’,N’−ジメチルアミノ−エタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol);2,3−ジオレオイルオキシ−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)−エチル)−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロ−アセタート(DOSPA)、β−アラニルコレステロール、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ジC
14−アミジン、N−tert−ブチル−N’−テトラデシル−3−テトラデシルアミノ−プロピオンアミジン、N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)ジドデシル−D−グルタマートクロリド(TMAG)、ジテトラデカノイル−N−(トリメチルアンモニオ−アセチル)ジエタノールアミンクロリド、1,3−ジオレオイルオキシ−2−(6−カルボキシ−スペルミル)−プロピルアミド(DOSPER)、およびN,N,N’,N’−テトラメチル−、N’−ビス(2−ヒドロキシルエチル)−2,3−ジオレオイルオキシ−1,4−ブタンジアンモニウムヨージド、1−[2−(アシルオキシ)エチル]2−アルキル(アルケニル)−3−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾリニウムクロリド誘導体(1−[2−(9(Z)−オクタデセノイルオキシ)エチル]−2−(8(Z)−ヘプタデセニル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DOTIM)および1−[2−(ヘキサデカノイルオキシ)エチル]−2−ペンタデシル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DPTIM)など)、および第四級アミン上にヒドロキシアルキル部分を含む2,3−ジアルキルオキシプロピル第四級アンモニウム誘導体(例えば、1,2−ジオレオイル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORI)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル(dimetyl)−ヒドロキシプロピルアンモニウムブロミド(DORIE−HP)、1,2−ジオレイル−オキシ−プロピル−3−ジメチル−ヒドロキシブチルアンモニウムブロミド(DORIE−HB)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシペンチルアンモニウムブロミド(DORIE−Hpe)、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシルエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、1,2−ジパルミチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DPRIE)、および1,2−ジステリルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DSRIE))が含まれる。
【0087】
他の適切な脂質には、上記の中性、アニオン性、およびカチオン性の脂質のPEG化誘導体が含まれる。1種またはそれより多くのPEG化脂質誘導体の脂質シェルへの組み込みにより、その表面上にポリエチレングリコール鎖を示すナノリポゲルを得ることができる。得られたナノリポゲルは、その表面上にPEG鎖を欠くナノリポゲルと比較してin vivoでの安定性および循環時間が増大し得る。適切なPEG化脂質の例には、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(ethanlamine)−ポリエチレングリコール(DSPE−PEG)(DSPE PEG(分子量2000)およびDSPE PEG(分子量5000)が含まれる)、ジパルミトイル−グリセロ−スクシナートポリエチレングリコール(DPGS−PEG)、ステアリル−ポリエチレングリコール、およびコレステリル−ポリエチレングリコールが含まれる。
【0088】
好ましい実施形態では、脂質シェルを、1つを超える脂質の組み合わせから形成する。一定の実施形態では、脂質シェルを、少なくとも3つの脂質の混合物から形成する。特定の実施形態では、脂質シェルを、ホスファチジルコリン(PC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[アミノ(ポリエチレングリコール)−2000](DSPE−PEG)、およびコレステロールの混合物から形成する。
【0089】
いくつかの実施形態では、脂質シェルを、1種またはそれより多くのPEG化リン脂質および1種またはそれより多くのさらなる脂質またはステロールの混合物から形成する。一定の例では、1種またはそれより多くのPEG化脂質の1種またはそれより多くのさらなる脂質またはステロールに対するモル比は、約1:1〜約1:6、より好ましくは約1:2〜約1:6、最も好ましくは約1:3〜約1:5の範囲である。特定の実施形態では、1種またはそれより多くのPEG化脂質の1種またはそれより多くのさらなる脂質またはステロールに対するモル比は約1:4である。
【0090】
いくつかの実施形態では、脂質シェルを、1種またはそれより多くのリン脂質および1種またはそれより多くのさらなる脂質またはステロールの混合物から形成する。一定の例では、1種またはそれより多くのリン脂質の1種またはそれより多くのさらなる脂質またはステロールに対するモル比は、約1:1〜約6:1、より好ましくは約2:1〜約6:1、最も好ましくは約3:1〜約5:1の範囲である。特定の実施形態では、1種またはそれより多くのリン脂質の1種またはそれより多くのさらなる脂質またはステロールに対するモル比は約4:1である。
【0091】
好ましい実施形態では、脂質シェルを、リン脂質(ホスファチジルコリン(PC)など)、PEG化リン脂質(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[アミノ(ポリエチレングリコール)−2000](DSPE−PEG)など)、およびコレステロールの混合物から形成する。特定の実施形態では、脂質シェルを、3:1:1のモル比のホスファチジルコリン、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[アミノ(ポリエチレングリコール)−2000](DSPE−PEG)、およびコレステロールの混合物から形成する。
【0092】
2.ターゲティング分子およびRES取り込みを減少させる分子
ナノリポゲルの表面またはコアホストを、ターゲティング分子の結合によってターゲティングを容易にするように改変することができる。例示的な標的分子には、器官、組織、細胞、または細胞外基質、または特定の型の腫瘍もしくは感染細胞に会合する1種またはそれより多くの標的に結合するタンパク質、ペプチド、核酸、脂質、サッカリド、またはポリサッカリドが含まれる。ナノリポゲルがターゲティングする特異性の程度を、適切な親和性および特異性を有するターゲティング分子の選択によって調整することができる。例えば、ターゲティング部分は、ポリペプチド(悪性細胞上に排他的またはより大量に存在する腫瘍マーカー(例えば、腫瘍抗原)を特異的に認識する抗体など)であり得る。目的の細胞および組織にナノ粒子を誘導するために使用することができる適切なターゲティング分子ならびに標的分子のナノ粒子への結合体化方法は当該分野で公知である。例えば、Ruoslahti,ら、Nat.Rev.Cancer,2:83−90(2002)を参照のこと。ターゲティング分子には、ニューロピリンおよび内皮ターゲティング分子、インテグリン、セレクチン、および接着分子も含まれ得る。ターゲティング分子を、当該分野で公知の種々の方法を使用してナノリポゲルに共有結合させることができる。
【0093】
一定の実施形態では、リポソームシェルは1種またはそれより多くのPEG化脂質を含む。PEGまたは他の親水性ポリアルキレンオキシドは細網内皮系(「RES」)によるリポゲル取り込みを回避し、それにより、in vivo滞留時間を延長する。
【0094】
ナノリポゲル表面を、ターゲティング分子の結合によってターゲティングを容易にするように改変することができる。これらは、ターゲティングされる細胞の表面上の受容体または他の分子に結合するタンパク質、ペプチド、核酸分子、サッカリド、またはポリサッカリドであり得る。特異性の程度を、ターゲティング分子の選択によって調整することができる。例えば、抗体は非常に特異的である。これらの抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、フラグメント、組み換え抗体、または単鎖抗体であり得、これらの多くは市販されているか、標準的な技術を使用して容易に得られる。抗原提示細胞が結合するT細胞特異的分子および抗原ならびに腫瘍ターゲティング分子を、ナノリポゲル表面および/またはホスト分子に結合することができる。ターゲティング分子を、リポソームシェル表面上に存在する1種またはそれより多くのPEG鎖の末端に結合体化することができる。
【0095】
3.活性薬剤
ナノリポゲルのシェルは、任意選択的に、1種またはそれより多くの活性薬剤(上記活性薬剤のうちのいずれかが含まれる)を含むことができる。
【0096】
タンパク質などの疎水性活性薬剤をナノリポゲル表面に共有結合的に接続することができるのに対して、親水性活性薬剤をナノリポゲル表面に共有結合的に接続することができるかリポソームシェル内に分散させることができる。一定の実施形態では、リポソームシェルは1種またはそれより多くのPEG化脂質を含む。これらの場合、1種またはそれより多くの活性薬剤を、リポソームシェル表面上に存在する1種またはそれより多くのPEG鎖の末端に結合体化することができる。特定の実施形態では、1種またはそれより多くの活性薬剤を、所望の生理学的局所で活性薬剤の放出を誘発するために外部の化学的刺激または物理的刺激(周囲pHの変化など)に反応して切断する連結基を介してナノリポゲル表面に共有結合的に接続する。
【0097】
III.製造方法、負荷方法、および薬学的組成物
A.製造方法および負荷方法
ナノリポゲルは、核酸、タンパク質、および/または小分子の持続送達についてリポソームおよびポリマーベースの粒子の両方の利点を組み合わせたナノ粒子である。ナノリポゲルは、球状、円板、ロッド、または異なるアスペクト比の他の幾何学的形状であり得る。ナノスフェアは、より大きい可能性がある(すなわち、微粒子)。ナノリポゲルは、典型的には、遠隔負荷によって薬剤をカプセル化可能であり、且つ異なる放出速度を容易にするために特性を調整可能な合成ポリマーまたは天然ポリマーから形成される。放出速度を、ポリマー−脂質比を0.05〜5.0、より好ましくは0.5〜1.5に変化させることによって調整する。
【0098】
ナノリポゲルを、形成前、形成中、または形成後のいずれかに薬剤を負荷し、その後に薬剤のための制御放出ビヒクルとして機能するようにデザインする。ナノリポゲルに、その後に複数の薬剤が制御放出されるように1つを超える薬剤を負荷することができる。
【0099】
ナノリポゲルに、形成中に1種またはそれより多くの第1の薬剤を負荷し、形成後に第2の薬剤の存在下でのナノリポゲルの再水和過程によって1種またはそれより多くの第2の薬剤を負荷する。例えば、ナノリポゲルに、アジュバントとしての機能を果たす分子を負荷し、その後、形成後に標的抗原と共にアジュバントを制御放出させるための1種またはそれより多くの標的抗原を組み込む。あるいは、アジュバントを負荷したナノリポゲルを患者の腫瘍部位に挿入し、腫瘍を切除し、ナノリポゲルに放出される腫瘍抗原を負荷する。このナノリポゲルは、患者の体内に制御様式でアジュバントと共に腫瘍抗原を放出する。
【0100】
別の実施形態では、ナノリポゲルに抗原、アジュバントとしての機能を果たす分子、および抗原提示細胞のターゲティング分子を負荷し、このナノリポゲルは抗原提示細胞によって取り込まれ、抗原が適切にプロセシングされてTヘルパー細胞および細胞傷害性T細胞に提示されて細胞媒介性免疫応答が促進される。
【0101】
さらに別の実施形態では、アジュバントとしての機能を果たす分子および抗原提示細胞のためのターゲティング分子が負荷されたナノリポゲルを患者の腫瘍部位に挿入し、腫瘍を切除し、ナノリポゲルに放出される腫瘍抗原が負荷され、このナノリポゲルが抗原提示細胞によって取り込まれ、放出された腫瘍抗原が適切にプロセシングされ、Tヘルパー細胞および細胞傷害性T細胞に提示され、細胞媒介性免疫応答が促進される。
【0102】
B.薬学的組成物
ナノリポゲルを含む薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)、または皮下注射)、経皮(受動的であるかイオン導入法またはエレクトロポレーションを使用する)、または経粘膜(鼻、膣、直腸、または舌下)の投与経路または生体浸食性挿入物の使用による投与のためのものであり得、薬学的組成物を、各投与経路に適切な投薬形態で処方することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、組成物を、標的化細胞への組成物の送達に有効な量で、例えば、静脈内投与または腹腔内投与によって全身投与する。他の可能な経路には経皮または経口が含まれる。
【0104】
一定の実施形態では、組成物を、例えば、処置すべき部位への直接注射によって局所投与する。いくつかの実施形態では、組成物を、1種またはそれより多くの腫瘍に注射するか、または別様に直接投与する。典型的には、局所注射により、組成物の局所濃度が全身投与によって達成することができる濃度より高くなる。いくつかの実施形態では、組成物を、カテーテルまたはシリンジの使用によって適切な細胞に局所的に送達させる。かかる組成物を細胞へ局所的に送達する他の手段には、注入ポンプの使用(例えば、Alza Corporation,Palo Alto,Calif.)または埋没物隣接領域へのナノリポゲルの徐放に影響を及ぼし得る組成物のポリマー埋没物への組み込み(例えば、P.Johnson and J.G.Lloyd−Jones,eds.,Drug Delivery Systems(Chichester,England:Ellis Horwood Ltd.,1987を参照のこと)が含まれる。
【0105】
細胞に対して直接的に(ナノリポゲルの細胞との接触などによる)または間接的に(任意の生物学的過程の作用などによる)ナノリポゲルを提供することができる。例えば、ナノリポゲルを、生理学的に許容され得るキャリアまたはビヒクル中に処方し、細胞周囲の組織または流体に注入することができる。ナノリポゲルは、単純拡散、エンドサイトーシス、または任意の能動輸送機構もしくは受動輸送機構によって細胞膜を横切ることができる。
【0106】
さらなる研究を行うにつれて、種々の患者の種々の状態の処置に適切な投薬量レベルに関する情報が出現するであろう。当業者は、レシピエントの治療の状況、年齢、および一般的な健康状態を考慮して、適切な投与を確認することができるであろう。選択される投薬量は、所望の治療効果、投与経路、および所望の処置持続時間に依存する。一般に、0.001〜10mg/kg体重/日の投薬量レベルを哺乳動物に投与する。一般に、静脈内注射または静脈内注入のために、投薬量はより低い可能性がある。一般に、個体へ投与されるナノリポゲル会合活性薬剤の総量は、同一の所望の効果または意図する効果のために投与しなければならない、会合していない活性薬剤の量より少ないであろう。
【0107】
1.非経口投与用処方物
好ましい実施形態では、ナノリポゲルを、非経口注射によって水溶液で投与する。処方物は、懸濁液または乳濁液の形態であり得る。一般に、有効量の1種またはそれより多くの活性薬剤を含む薬学的組成物を提供し、この薬学的組成物は、任意選択的に、薬学的に許容され得る希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、および/またはキャリアを含む。かかる組成物は、希釈剤、滅菌水、種々の緩衝液の成分(例えば、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH、およびイオン強度の緩衝化食塩水;ならびに、任意選択的に、添加物(界面活性剤および溶解補助剤(solubilizing agent)(例えば、TWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)80、ポリソルベート20または80とも呼ばれる)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、および防腐剤(例えば、チメロサール(Thimersal)、ベンジルアルコール)および増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)など)を含むことができる。非水性溶媒または非水性ビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油およびトウモロコシ油など)、ゼラチン、および注射用有機エステル(オレイン酸エチルなど)である。処方物を凍結乾燥させ、使用直前に再溶解/再懸濁することができる。処方物を、例えば、細菌保持フィルタを介した濾過、組成物への滅菌剤の組み込み、組成物の照射、または組成物の加熱によって滅菌することができる。
【0108】
2.局所投与および粘膜投与のための処方物
ナノリポゲルを、局所適用することができる。局所投与には、肺、鼻、口(舌下、口内)、膣、または直腸の粘膜への適用が含まれ得る。これらの投与方法は、経皮または粘膜輸送構成要素でシェルを処方することによって有効となり得る。経皮送達のために、かかる構成要素には、化学的エンハンサーまたは物理的エンハンサー(エレクトロポレーションまたはマイクロニードル送達など)が含まれ得る。粘膜送達のために、外側シェルのPEG化またはキトサンもしくは他の粘膜浸透剤の添加、または経口送達のためのpH保護構成要素。
【0109】
組成物を吸入中に肺に送達させ、空気動力学的直径が約5ミクロン未満のエアロゾルまたは噴霧乾燥粒子のいずれかとして送達した場合に肺上皮内層を横切って血流に到達することができる。
【0110】
治療用製品の肺送達のためにデザインした広範な機械デバイスを使用することができ、機械デバイスには、噴霧器、定量吸入器、および粉末吸入器(すべて当業者によく知られている)が含まれるが、これらに限定されない。市販のデバイスのいくつかの具体例は、Ultravent(登録商標)噴霧器(Mallinckrodt Inc.,St.Louis,Mo.);Acorn(登録商標)II噴霧器(Marquest Medical Products,Englewood,Colo.);Ventolin(登録商標)定量吸入器(Glaxo Inc.,Research Triangle Park,N.C.);およびSpinhaler(登録商標)粉末吸入器(Fisons Corp.,Bedford,Mass.)である。Nektar、Alkermes、およびMannkindは全て、承認されているか臨床試験中の吸入用インスリン粉末調製物を有し、そのテクノロジーを本明細書中に記載の処方物に適用することができる。
【0111】
粘膜投与用の処方物は、典型的には、噴霧乾燥した薬物粒子であり、この粒子を錠剤、ゲル、カプセル、懸濁液、または乳濁液に組み込むことができる。標準的な薬学的賦形剤は、任意の調合者から利用可能である。経口処方物は、チューインガム、ゲルストリップ、錠剤、カプセル、またはロゼンジの形態であり得る。経口処方物は、腸での防御を付与するかGI管(腸上皮および粘膜が含まれる)を介した送達を増強することができる賦形剤または粒子に対する他の改変を含むことができる(Samstein,ら、Biomaterials..29(6):703−8(2008)を参照のこと)。
【0112】
経皮処方物も調製することができる。これらは、典型的には、軟膏、ローション、スプレー、またはパッチであろう。これらの全てを標準的なテクノロジーを使用して調製することができる。経皮処方物は、透過増強剤を含むことができる。化学的増強剤および物理的方法(エレクトロポレーションおよびマイクロニードルが含まれる)は、この方法と併せて役立ち得る。
【0113】
IV.処置方法
処置方法は、典型的には、1種またはそれより多くの活性薬剤を細胞中または細胞の微小環境に送達させるために1種またはそれより多くの活性薬剤を負荷したナノリポゲルの使用を含む。本方法は、典型的には、活性薬剤負荷ナノリポゲルを1種またはそれより多くの細胞に接触させる工程を含む。接触は、in vivoまたはin vitroで起こり得る。
【0114】
ナノリポゲルを使用した細胞または被験体への薬物または他のカーゴの投与を、コントロール(例えば、従来の送達方法(遊離カーゴ/薬物送達、従来のPLGAナノ粒子を使用した送達、またはリポフェクタミン(登録商標)などの従来のリポソーム法を使用した送達など))を使用した細胞または被験体への薬物または他のカーゴの送達)と比較することができる。ナノリポゲルを使用して、従来の送達方法と比較して高い有効性で標的細胞にカーゴを送達させることができる。いくつかの実施形態では、ナノリポゲルを使用して送達させる場合、従来の送達方法と比較して、同一またはより優れた治療上の利点を得るためにより少ないカーゴまたは薬物しか必要としない。
【0115】
いくつかの実施形態では、従来の送達方法と比較して毒性が少ないか存在しない。例えば、いくつかの実施形態では、被験体への負荷ナノリポゲルの投与後に、白血球、血小板、ヘモグロビン、およびヘマトクリットレベルは通常の生理学的範囲内にあり、肝臓や腎臓への毒性は認められず、体重ならびにアルカリホスファターゼの血清濃度、アラニントランスフェラーゼ、総ビリルビン、および血中尿素窒素は正常であり、または、その組み合わせである。
【0116】
A.in vivo法
開示された組成物を、in vivoでの細胞への活性薬剤の送達方法で使用することができる。いくつかのin vivoアプローチでは、組成物を治療有効量で被験体に投与する。本明細書中で使用される場合、用語「有効量」または「治療有効量」は、処置される障害の1種またはそれより多くの症状を処置、阻害、または緩和するか、そうでなければ、所望の薬理的および/または生理学的効果を得るのに十分な投薬量を意味する。正確な投薬量は、種々の要因(被験体に依存する変数(例えば、年齢、免疫系の健康状態など)、疾患、および実施される処置など)に応じて変化するであろう。
【0117】
1.薬物送達
粒子を使用して、有効量の1種またはそれより多くの治療薬、診断薬、および/または予防薬をかかる処置を必要とする個体に送達させることができる。投与されるべき薬剤の量は、処方医師によって容易に決定することができ、この量は、患者の年齢および体重ならびに処置すべき疾患または障害に依存する。
【0118】
粒子は、静脈内、皮下、または筋肉内に注射するか、鼻または肺の系に投与するか、腫瘍環境内に注射するか、粘膜表面(膣、直腸、口内、舌下)に投与するか、経口送達のためにカプセル化するかのいずれかでの薬物送達(本明細書中で使用される場合、「薬物」には、治療薬、栄養補助薬、診断薬、および予防薬が含まれる)で有用である。粒子を、乾燥粉末として、水性懸濁液(水、塩水、緩衝化食塩水中など)として、ヒドロゲル、オルガノゲルで、カプセル、錠剤、トローチ、または他の標準的な薬学的賦形剤で投与することができる。
【0119】
好ましい実施形態は、目的のカプスラント(capsulant)を用いて滅菌食塩水または他の薬学的に許容され得る賦形剤で再水和される乾燥粉末である。
【0120】
本明細書中で考察するように、組成物を、多数の活性薬剤(小分子、核酸、タンパク質、および他の生物活性薬剤が含まれる)のための送達ビヒクルとして使用することができる。活性薬剤または薬剤を、ナノリポゲル粒子内にカプセル化し、ナノリポゲル粒子内に分散させ、そして/またはナノリポゲル粒子表面と会合することができる。いくつかの実施形態では、ナノリポゲルは、細胞への同時投与のために2つ、3つ、4つ、またはそれを超える異なる活性薬剤をパッケージングする。
【0121】
2.トランスフェクション
開示された組成物は、ポリヌクレオチドの細胞トランスフェクションのための組成物であり得る。以下でより詳細に考察するように、トランスフェクションはin vitroまたはin vivoで起こり得、種々の用途(遺伝子療法および疾患の処置)に適用することができる。組成物は、コントロールと比較した場合、効率が高いか、毒性が低いか、その両方であり得る。いくつかの実施形態では、コントロールは、別のトランスフェクション試薬(リポフェクタミン2000など)で処理した細胞である。
【0122】
当業者は、ナノリポゲルによって送達される特定のポリヌクレオチドを、処置すべき状態または疾患に応じて選択することができる。ポリヌクレオチドは、例えば、目的の遺伝子またはcDNA、機能的核酸(阻害性RNA、tRNA、rRNAなど)、または目的の遺伝子もしくはcDNA、機能的核酸(tRNA、もしくはrRNA)をコードする発現ベクターであり得る。いくつかの実施形態では、2つ以上のポリヌクレオチドを組み合わせて投与する。
【0123】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはタンパク質をコードする。例示的なタンパク質には、例えば、(a)血管新生因子および他の因子(成長因子(酸性および塩基性線維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子、内皮分裂促進成長因子(endothelial mitogenic growth factor)、上皮成長因子、トランスフォーミング成長因子αおよびβ、血小板由来内皮成長因子、血小板由来成長因子、腫瘍壊死因子−α、肝細胞成長因子、およびインスリン様成長因子など)が含まれる);(b)細胞周期インヒビター(サイクリン依存性キナーゼ、チミジンキナーゼ(「TK」)および細胞増殖の干渉に有用な他の薬剤など);(c)骨形成タンパク質(「BMP」)(BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、およびBMP−16が含まれる)が含まれる。BMPは、典型的には、ホモ二量体、ヘテロ二量体、またはその組み合わせとして、単独または他の分子と共に提供することができる二量体タンパク質である。あるいはまたはさらに、BMPの上流効果または下流効果を誘導することができる分子を提供することができる。かかる分子には、「ヘッジホッグ」タンパク質またはこれをコードするDNAのうちのいずれかが含まれる。
【0124】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、宿主細胞のゲノム内に組み込まれない(すなわち、依然として染色体外である)。かかる実施形態は、ポリヌクレオチドの一過性発現または制御された発現に有用であり、挿入変異誘発のリスクを軽減できる。したがって、いくつかの実施形態では、ナノリポゲルを使用して、宿主細胞で一過性に発現するmRNAまたは非組み込み発現ベクターを送達させる。
【0125】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドを、宿主細胞のゲノムに組み込む。例えば、遺伝子療法は、疾患発症を担う欠損遺伝子を修正する技術である。研究者は、以下のいくつかの欠陥遺伝子を修正するためのアプローチのうちの1つを使用することができる:(a)非機能的遺伝子を置換するためにゲノム内の非特異的位置に正常遺伝子を挿入することができる。このアプローチが最も一般的である。(b)相同組換えによって異常遺伝子を正常遺伝子と交換することができる。(c)異常遺伝子をその正常な機能に戻す選択的逆変異によって異常遺伝子を修復することができる。(d)特定の遺伝子の制御(遺伝子がオンまたはオフする程度)を変更することができる。
【0126】
遺伝子療法は、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、AIDSウイルス、神経栄養ウイルス(neuronal trophic virus)、シンドビスウイルスおよび他のRNAウイルス(HIV骨格を有するこれらのウイルスが含まれる)の使用を含むことができる。ベクターとしての使用に適切になるウイルスの特性を共有する任意のウイルスファミリーも有用である。典型的には、ウイルスベクターは、非構造初期遺伝子、構造後期遺伝子、RNAポリメラーゼIII転写物、複製およびキャプシド形成に必要な逆位末端反復、およびウイルスゲノムの転写および複製を調節するためのプロモーターを含む。ベクターとして操作する場合、ウイルスは、典型的には、1種またはそれより多くの初期遺伝子を除去し、遺伝子または遺伝子/プロモーターカセットを、除去したウイルスDNAの代わりにウイルスゲノムに挿入する。
【0127】
相同組換え(HR)などの標的組み換えによる遺伝子ターゲティングは、別の遺伝子修正ストラテジーである。標的遺伝子座での遺伝子修正を、標的遺伝子に対して相同なドナーDNAフラグメントによって媒介することができる(Hu,ら、Mol.Biotech.,29:197−210(2005);Olsen,ら、J.Gene Med.,7:1534−1544(2005))。1つの標的化組み換え方法は、配列特異的様式で第3の鎖として二重鎖DNA中のホモプリン/ホモピリミジン部位に結合する三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)の使用を含む。三重鎖形成オリゴヌクレオチドは、二本鎖核酸または一本鎖核酸のいずれかと相互作用することができる。
【0128】
三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)およびペプチド核酸(PNA)を使用した標的化遺伝子療法は、米国特許出願公開第20070219122号に記載されており、HIVなどの感染症の処置のためのその使用は、米国特許出願公開第2008050920号に記載されている。三重鎖形成分子はまた、テールクランプペプチド核酸(tcPNA)(米国特許出願公開第2011/0262406号に記載のものなど)であり得る。高安定性PNA:DNA:PNA三重鎖構造を、2つのPNA鎖での二重鎖DNAのストランド侵入から形成することができる。この複合体では、PNA/DNA/PNA三重らせん部分およびPNA/DNA二重鎖部分は共に、ピリミジンリッチ三重らせんを置換し、ヌクレオチド除去修復経路を強く誘発し、ドナーオリゴヌクレオチドで組み換え部位を活性化することが示されている構造変化を引き起こす。2つのPNA鎖を共に連結してビス−PNA分子を形成することもできる。
【0129】
三重鎖形成分子は、1種またはそれより多くのドナーオリゴヌクレオチドと組み合わせて使用した場合に哺乳動物細胞において部位特異的相同組換えを誘導するために有用であり、この組み換えによって修正された配列が得られる。ドナーオリゴヌクレオチドを三重鎖形成分子に係留するか、三重鎖形成分子から分離することができる。ドナーオリゴヌクレオチドは、標的二重鎖DNAと比較して少なくとも1つのヌクレオチドの変異、挿入、または欠失を含むことができる。
【0130】
二重の二重鎖形成分子(偽相補性オリゴヌクレオチド対など)は、染色体部位でのドナーオリゴヌクレオチドでの組み換えを誘導することもできる。標的化遺伝子療法における偽相補性オリゴヌクレオチドの使用は、米国特許出願公開第2011/0262406号に記載されている。偽相補性オリゴヌクレオチドは、例えば立体障害のために相互に認識もハイブリッド形成もしないが、それぞれが標的部位で相補性核酸鎖を認識してハイブリッド形成することができるような1種またはそれより多くの修飾を含む相補性オリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、偽相補性オリゴヌクレオチドは、偽相補性ペプチド核酸(pcPNA)である。偽相補性オリゴヌクレオチドは、標的二本鎖DNA中にポリプリン配列を必要とする三重らせんオリゴヌクレオチドおよびビス−ペプチド核酸などの組み換え誘導法よりも効率的であり、標的部位の柔軟性を増大し得る。
【0131】
B.in vitro法
開示された組成物を、in vitroで細胞に活性薬剤を送達させる方法で使用することができる。例えば、ナノリポゲルを、細胞のin vitroトランスフェクションのために使用することができる。本方法は、典型的には、ポリヌクレオチドを細胞質内に導入するのに有効な量のポリヌクレオチドを含むナノリポゲルと細胞を接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドを、細胞の遺伝子型または表現型を変化させるのに有効な量で細胞に送達させる。細胞は、被験体から単離した初代細胞または樹立細胞株の細胞であり得る。細胞は、均質な細胞型の細胞であり得るか、異なる細胞型の不均質な混合物であり得る。例えば、ポリプレックスを、支持細胞培養物中または種々の分化状態の混合培養物中などの異なる型の細胞を保有する不均質な細胞株由来の細胞の細胞質内に導入することができる。細胞は、細胞培養物中に無期限に維持することができる形質転換された細胞株であり得る。例示的な細胞株は、American Type Culture Collectionから利用可能な細胞株(腫瘍細胞株が含まれる)である。
【0132】
任意の真核細胞をトランスフェクションして、特異的核酸(例えば、代謝遺伝子)を発現する細胞(初代細胞および樹立細胞株が含まれる)を産生することができる。適切な細胞型には、未分化または部分的に分化した細胞(幹細胞、全能細胞、多能性細胞、胚性幹細胞、内細胞塊、成体幹細胞、骨髄細胞、臍帯血由来の細胞、および外胚葉、中胚葉、または内胚葉由来の細胞が含まれる)が含まれるが、これらに限定されない。適切な分化細胞には、体細胞、ニューロン細胞、骨格筋、平滑筋、膵臓細胞、肝臓細胞、および心臓細胞が含まれる。別の実施形態では、siRNA、アンチセンスポリヌクレオチド(siRNAまたはアンチセンスポリヌクレオチドが含まれる)、または阻害性RNAを、本明細書中に記載の組成物を使用して細胞内にトランスフェクションすることができる。
【0133】
本方法は、例えば、欠損遺伝子を修復するか、細胞を脱分化するか、細胞を再プログラミングするための個別化治療の分野で特に有用である。例えば、標的細胞を、最初に当該分野で公知の方法を使用してドナーから単離し、ポリヌクレオチドを含むナノリポゲルと接触させてin vitro(ex vivo)に変化させ、必要とする患者に投与する。供給源または細胞には、患者または同種移植(allographic)ドナーから直接採取した細胞が含まれる。好ましい実施形態では、被験体に投与すべき標的細胞は、自家性(例えば、被験体由来)または同系であろう。同種異系細胞を、抗原的に適合しているが遺伝的に無関係のドナー(国家登録によって同定)から単離するか、遺伝的に関連する同胞または親から得たか由来する標的細胞の使用によって単離することもできる。
【0134】
細胞を、ポジティブ選択および/またはネガティブ選択技術によって選択することができる。例えば、特定の細胞表面タンパク質に結合する抗体を磁性ビーズに結合体化し、免疫原性手順を利用して所望の細胞型を回収することができる。一過性トランスフェクション前に標的細胞を富化することが望ましいかもしれない。本明細書中の特定の標的細胞を富化する組成物の文脈で使用する場合、「富化された」は、天然の細胞供給源で見いだされるよりも所望の構成要素(例えば、標的細胞)の比率が高いことを示す。細胞組成物を、少なくとも1桁の規模、好ましくは2〜3桁、より好ましくは10、100、200、または1000桁の規模で天然の細胞供給源よりも富化することができる。一旦標的細胞が単離されると、これらの細胞を、当該分野で公知の確立された方法にしたがって適切な培地中で成長させることによって増殖させることができる。樹立細胞株はまた、この方法で有用であり得る。細胞を、必要に応じて、トランスフェクション前に凍結保存することができる。
【0135】
次に、細胞を、in vitroで開示された組成物と接触させて、細胞を修復、脱分化、再分化、および/または再プログラミングさせる。細胞をモニタリングすることができ、治療のための投与に望ましい細胞型を選択することができる。例えば、いくつかの実施形態では、開示された方法を使用して、分化細胞から同種異系の多能性細胞または多分化能性細胞(すなわち、幹細胞)を作製するか、免疫細胞の表現型を変化させる。
【0136】
修復、脱分化、および/または再分化および/または再プログラミング後、細胞を必要とする患者に投与する。最も好ましい実施形態では、細胞を同じ患者から単離し、投与して戻す。代替的な実施形態では、細胞をある患者から単離し、別の患者に投与する。本方法を使用して、その後の使用のために長期間保存することができる変化した細胞の凍結ストックを産生することもできる。1つの実施形態では、線維芽細胞、ケラチノサイト、または造血幹細胞を患者から単離し、in vitroで修復、脱分化、または再プログラミングして患者用の治療細胞を得る。
【0137】
C.処置すべき疾患
ナノリポゲル送達ビヒクルを含む組成物を使用して、種々の疾患および状態(例えば、癌および感染症)を処置することができる。組成物を、被験体に治療的または予防的に投与することができる。例示的な治療的および予防的ストラテジーは、以下および実施例中により詳細に考察されている。
【0138】
例えば、いくつかの実施形態では、細胞透過性ペプチド(細胞浸透性ペプチドとしても公知)、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)、膜移行配列(MTS)、およびTrojanペプチド(例えば、刺激応答性細胞透過性ペプチド)を、ナノリポゲル形成においてデンドリマーに結合体化させる。細胞透過性ペプチドには、ウイルス由来または模倣ポリマー(TATなど)、インフルエンザ融合ペプチド、狂犬病ウイルス糖タンパク質フラグメント(RVG)、ニューロピリン、ペネトラチン、およびポリアルギニンが含まれるが、これらに限定されない。Anaspecは市販のCPPを有する。
【0139】
ナノリポゲルを使用して、透過するのが困難な細胞(HIV感染細胞、T細胞リンパ腫、およびB細胞が含まれるが、これらに限定されない)に活性薬剤を送達させることができる。
【0140】
いくつかの実施形態では、ナノリポゲルは、活性化または自己反応性のリンパ球、ウイルス感染細胞、および腫瘍細胞の免疫媒介中和に関与する細胞死受容体アゴニスト(Fas/CD95リガンドおよびTRAIL/Apo2Lなど)および細胞死受容体(Fas/CD95、TRAIL−R1/DR4、およびTRAIL−R2/DR5など)を含む。細胞死受容体依存性アポトーシスシグナル伝達経路の調節異常は、自己免疫疾患、免疫欠損、および癌の発症に関与している。さらに、デスリガンドTRAILは、ほとんどの非形質転換細胞型に影響を及ぼすことなく腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する能力を考慮すると、潜在的な抗癌剤として非常に興味が持たれている。FLICE抑制タンパク質(FLIP)は、カスパーゼ−8活性化を妨害することによってTRAIL媒介細胞死を強力に遮断する。FLIPの薬理的下方制御は、腫瘍細胞をTRAILによるアポトーシス誘導に対して感作する治療手段としての機能を果たし得る。したがって、デスリガンドまたは細胞死受容体を、細胞特異的送達および感受性標的細胞(癌細胞またはウイルス形質転換細胞など)のアポトーシスに対する感受性を増強するためのターゲティング部分および/または活性薬剤としてナノリポゲル上またはナノリポゲル内に組み込むことができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、ナノリポゲルは、サーチュインを特異的にターゲティングする部分を含む。サーチュインまたはSir2タンパク質は、ヒストンデアセチラーゼ活性またはモノリボシルトランスフェラーゼ活性のいずれかを保有するタンパク質クラスである。サーチュインは、細菌、古細菌、および真核生物における重要な生物学的経路を制御し、老化および転写制御、アポトーシス、およびストレス耐性への影響ならびにエネルギー効率および低カロリー状況での警告に関与している。したがって、サーチュインまたはSir2タンパク質を、抗老化予防または治療ストラテジーの一部としてターゲティングすることができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、活性薬剤は、ヒストンデアセチラーゼインヒビター(HDACi)を含む。HDACiは、HDAC酵素の機能を妨害する化学物質である。HDACiはHDAC酵素活性を阻害し、したがって、アセチル化ヒストンを優先する方向に均衡を保つ。HDACiをリジンアセチル化/脱アセチル化によってターゲティングすることもできるので、HDACiは多数の非ヒストンタンパク質活性に影響を及ぼすこともでき、それにより、多数の遺伝子クラスターのアセチル化のエピソードを増大させ、転写活性を増大させ、その後、特異的遺伝子を上方制御する。いくつかの実施形態では、活性薬剤は化学治療剤を含む。HDACiおよび化学療法薬の同時送達は、癌(多剤耐性癌(膵臓癌および黒色腫など)が含まれる)の処置に特に有効であり得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、ナノリポゲルは、ワクチンストラテジーの一部である。例えば、ナノリポゲルを使用して、抗原、免疫刺激薬、アジュバント、またはその組み合わせを送達することができる。いくつかの実施形態では、ナノリポゲルは、送達ビヒクルを特異的免疫細胞(例えば、樹状細胞などの抗原提示細胞)に誘導する標的部分を含む。いくつかの実施形態では、ナノリポゲルは、外側シェル上に提示した1種またはそれより多くの抗原提示細胞ターゲティング部分およびナノリポゲルの内側または外側のTLRリガンドを単独または抗原と組み合わせて含む。抗原は、任意の公知の抗原(例えば、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、もしくは別の微生物由来の抗原、または腫瘍抗原もしくは環境抗原)であり得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、ナノリポゲルは、低pHに遭遇した際にナノリポゲルの内容物が放出されるようなpH応答エレメントを含む。このストラテジーを使用して、低酸素条件下でのナノリポゲルの内容物の腫瘍細胞または微小環境または心臓細胞への送達を増大させることができる。いくつかの実施形態では、ナノリポゲルを光力学療法で使用する。例えば、pH感受性ナノリポゲルは、光力学療法薬(ハイパーシリンなど)を処置領域(例えば、腫瘍細胞または腫瘍微小環境)に放出することができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、活性薬剤には、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)が含まれる。TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することによって生成される人工制限酵素である。TALENを、効率的でプログラミング可能な特異的DNA切断のために使用することができ、これはin situでの強力なゲノム編集ツールである。TALEドメイン構築物を使用した合成転写因子を、複雑なゲノム中の特異的部位での発現に影響を及ぼす内因性活性化ドメインとのTALEのDNA結合ドメインの対合による遺伝子調節に使用することもできる。転写アクチベーター様エフェクター(TALE)を、実際に任意のDNA配列に結合するように迅速に操作することができる。したがって、TALENを、例えば、HIV関連遺伝子(CCR5など)を編集するか、遺伝病(嚢胞性線維症など)における一宿主性変異を処置するために遺伝子療法で使用することができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、ナノリポゲルは、病原体関連分子パターン分子(PAMP)ターゲティング部分を含む。PAMPは、先天性免疫系の細胞によって認識される病原体群と関連する小分子モチーフである。PAMPは、植物および動物の両方においてToll様受容体(TLR)および他のパターン認識受容体(PRR)によって認識される。PAMPは、いくつかの保存された非自己分子の同定によって先天性免疫応答を活性化し、感染から宿主を防御する。例えば、細菌リポ多糖(LPS)(細菌の細菌細胞膜上に見いだされる内毒素)は、原型PAMPであるとみなされる。LPSは、TLR4(先天性免疫系の認識受容体)によって特異的に認識される。他のPAMPには、細菌フラジェリン(TLR5によって認識される)、グラム陽性細菌由来のリポテイコ酸、ペプチドグリカン、および通常はウイルスに関連する核酸バリアント(二本鎖RNA(dsRNA)など)(TLR3によって認識される)、または非メチル化CpGモチーフ(TLR9によって認識される)が含まれるが、これらに限定されない。したがって、1種またはそれより多くのPAMPを使用して、感染症に対する免疫応答を増大させることができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、ナノリポゲルは、損傷関連分子パターン分子(DAMP)を含む。DAMPには、活性化細胞または壊死細胞によって放出される細胞内分子および傷害の際に上方制御されるか組織損傷後に分解される細胞外基質分子が含まれる。DAMPは、感染および組織損傷の際に組織損傷に対して免疫シグナルを発する危険シグナルであるが、過度の炎症(関節リウマチ、癌、およびアテローム性動脈硬化症が含まれる)にも関与している(Piccinini and Midwood,Mediators of Inflammation,Vol.2010,Article ID 672395,21 pages)。例えば、いくつかの実施形態では、DAMPを、DAMPが壊死細胞を模倣する免疫応答を誘導するためのナノリポゲルストラテジーの一部として使用することができる。例示的なDAMPには、F−アクチン、HMGB1(高移動度群ボックスタンパク質−1)、S100A8/S100A9、熱ショックタンパク質、尿酸、およびDNAが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、DAMPを、ワクチンストラテジー(例えば、癌ワクチンストラテジー)に組み込む。例えば、DAMPを、抗原提示細胞ターゲティングリガンドで修飾したナノリポゲルを使用して免疫細胞に送達させることができる。いくつかの実施形態では、癌ワクチンストラテジーはまた、1種またはそれより多くの腫瘍関連抗原の送達を含む。
【0148】
D.例示的な疾患処置ストラテジー
1.免疫治療方法および癌処置方法
どのようにして黒色腫および他の癌が抗腫瘍応答を回避するのかについての背後にある1つの機構は、先天性免疫系が腫瘍を「非自己」と認識できないことであると仮定されている。これは、腫瘍細胞による多数の免疫抑制因子(トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)(ナチュラルキラー細胞(NK)の数および機能ならびに細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の機能を低下させる一方で調節性Tリンパ球(Treg)の数を増加させる多面性サイトカイン)が含まれる)の分泌によって生じ得る。TGF−β活性は多数の動物疾患系(マウス腫瘍モデルが含まれる)で広く評価され、その分泌は高用量インターロイキン−2(IL−2)治療を妨害すると疑われており、これは、黒色腫および腎細胞癌に対するNK活性およびCTL活性を増強するが、大多数の患者で有効性を欠くと考えられている。これにより、グループは腫瘍から分泌される免疫抑制因子(TGF−βが含まれる)に反作用するためのストラテジーを評価した。腫瘍内TGF−βの正確な供給源は十分に確立されていないが、このサイトカインは、多数の異なる腫瘍(黒色腫が含まれる)において高レベルで見出されている。TGF−βは腫瘍細胞の成長および分化ならびに確立された腫瘍を宿主免疫応答から防御するための免疫抑制環境の維持にきわめて重要であり、そのことがTGF−βを癌治療のための理想的な標的にしていると考えられる。特に、NK細胞が抗腫瘍応答で重要な役割を果たすので、腫瘍床に存在するNK細胞数に及ぼすその抑制効果は、免疫寛容に重要であり得る。
【0149】
実施例は、腫瘍に対するIL−2およびSBの同時徐放の有効性を証明している。IL−2(可溶性の17kDaタンパク質)およびSB(小型の疎水性薬物(Log P=4.33))の非常に多様な生理化学的特性を考慮すると、徐放のための両薬剤の同時カプセル化は、従来の粒子テクノロジーでは困難な課題であった。例えば、リポソームは、親水性小分子のカプセル化のためおよびタンパク質のカプセル化のためでさえも容易に修飾されるが、これらの処方物の安定性およびカプセル化された薬剤の放出プロフィールは容易に調節されない。他方では、生分解性固体粒子(ポリ(ラクチック−co−グリコール酸)(PLGA)から作製された粒子など)は、安定性が高く、制御可能な放出特徴を有するが、治療サイトカインの容易なカプセル化および制御放出または組み合わせ送達には複雑な問題がある。
【0150】
転移性黒色腫は侵襲性が高く、非処置患者のメジアン生存期間は12ヶ月未満である。外科的介入、照射、および細胞傷害性化学療法が無効であることにより、結果として免疫療法が一次処置様式となる。およそ5%の転移性黒色腫患者は、高用量IL−2で処置した場合、おそらく、黒色腫特異的T細胞応答の活性化の誘導または拡大によって持続可能な完全寛解が達成される。しかし、高用量に関連するIL−2の毒性がその治療上の利点を妨害するので、より新しい世代の処方物では循環中のサイトカインの半減期の増大によって投与される用量を減少させることを目的とする。いくつかの例には、融合タンパク質(IL−2/Ig)、ペグ化IL−2、IL−2/抗IL−2複合体、リポソーム処方物、ウイルスベクター、およびプラスミドベクターが含まれる。TGF−βインヒビターおよびIL−2のナノリポゲル組み合わせ送達によって腫瘍免疫療法が増強される。ナノリポゲルからの2つの異なる化学的薬剤の徐放により、素晴らしい抗腫瘍効果が引き出される。腫瘍微小環境は、複数の免疫学的機構によって従来の免疫療法を妨害する。これらの機構のうちのいくつかは、局所腫瘍免疫応答を阻止するトランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)の分泌を含むと考えられる。したがって、高用量のインターロイキン−2(IL−2)でさえも、従来のサイトカインによるFDA承認された転移性黒色腫処置では制限された応答のみしか誘導されない。
【0151】
腫瘍微小環境の免疫阻害性を克服するために、制御様式で腫瘍微小環境にTGF−βのインヒビターをIL−2と共に放出するためのビヒクルが必要である。TGF−βの1つの周知のインヒビターは、2−(5−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−2−tert−ブチル−3H−イミダゾール−4−イル)−6−メチルピリジン塩酸塩(SB−505124として公知であり、本明細書中でSBと言及)である。しかし、IL−2(可溶性の17kDaタンパク質)およびSB(小型の疎水性薬物(Log P=4.33))の非常に多様な生理化学的特性を考慮すると、徐放のための両薬剤の同時カプセル化は、従来の粒子テクノロジーでは困難な課題であった。ナノリポゲルプラットフォームは、治療タンパク質および小分子疎水性薬物のカプセル化および持続送達のためにリポソームおよびポリマーベースの粒子の両方の特徴を組み合わせる。
【0152】
この系からのIL−2およびSBの両方の持続送達により、腫瘍内投与または全身投与後の黒色腫のB16/B6マウスモデルにおいて強力な抗腫瘍免疫応答が誘導される。TGF−βインヒビターおよびIL−2を放出するナノリポゲルによって腫瘍成長が有意に遅延し、腫瘍保有マウスが延命され、腫瘍内ナチュラルキラー細胞(NK)が増加した。さらに、この併用療法での寛解の誘導は免疫応答の先天性アームおよび適応性アームの両方の活性化によって媒介され、先天性アームはin vivoでの抗腫瘍活性の媒介において重要な役割を果たしていた。処方物は、循環中でのサイトカイン半減期の増大だけでなく、持続様式でのSB(腫瘍の免疫応答を妨害する能力を抑制する強力な多面性インヒビター)の同時送達によっても利点が得られる。
【0153】
免疫応答を刺激する一方で腫瘍阻害環境を克服する併用療法は、癌免疫療法の魅力的な様式である。以下の実施例の併用療法において有効であることが証明されたナノリポゲルプラットフォームは、処置レジメンにおいて薬物の組み合わせを同時に利用することが望ましい種々の疾患における治療のためのプラットフォームを提供する。かかる併用療法および併用療法が有用な疾患は、当該分野で周知である。
【0154】
例示的な癌治療を、以下の表1に概説する。表は、治療によって対処される病理学的異常;治療の細胞標的;ナノリポゲルのみまたはその任意の組み合わせによって送達することができる1、2、または3つの治療分子;ナノリポソームをターゲティングするために使用することができる所望の標的またはターゲティング部分;好ましい送達機構;および意図される治療の効果を示す。
【0156】
2.感染症
本明細書中に開示された組成物および方法を使用して処置することができるさらなる疾患の非限定的な例には、それぞれ抗ウイルス薬または抗生物質の組み合わせレジメンが望ましいストラテジーであるウイルスまたは微生物の感染症が含まれる。例えば、抗HIV処方物は、HIV複製を開始するためのアクチベーター、新規の細胞のHIV感染を防止するインヒビター、および他の細胞に悪影響を及ぼさない感染細胞内で排他的に活性化する死滅誘導物質の混合物を含み得る。外側脂質シェルを、全ヒトT細胞上で発現する分子に特異的に結合する抗体を使用して作製することができる。これは、内封成分を保護し、標的T細胞と融合するターゲティングビヒクルとしての機能を果たす。ナノリポゲルコアを、安全でFDA認証された「デンドリマー」をカプセル化するポリマーから作製する。
【0157】
この内側デンドリマーコアを、以下と複合体化する。1)HIVを活性化するHDACインヒビター(HDACi)。この薬剤は、ヒストン上のアセチル基を常に除去してヒストンの染色体DNAへの連続的結合を可能にし、HIVの潜伏状態の維持に役立つヒストンデアセチラーゼ(HDAC)として公知の酵素を阻害する;2)ウイルスRNAと排他的に結合してRNA干渉と呼ばれる細胞経路によってこれを破壊する低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれるRNAインヒビターをコードするプラスミド。siRNAを、最小の副作用で意図するmRNA標的のみをターゲティングして多大な利点を提供するようにデザインすることができる。感染細胞からのウイルスの拡散および非感染細胞中の増殖性感染を防止するために、これらのsiRNAを全T細胞中で発現することができる;および3)HIVタンパク質tatおよびrevによって排他的に活性化され、それにより、感染細胞中のみで発現されるプロモーターによって調節されるsiRNAをコードする別のプラスミド。これらのsiRNAを、細胞生存を促進するタンパク質のRNAに結合して破壊するようにデザインする。結合の際、系全体を、細胞の生理学的性質やホメオスタシスを変化させない細胞機構によって内在化し、粒子の最も外側が破壊されて内側の薬物/遺伝子複合体化コアを放出し、さらに分解されて成分を放出する。したがって、系は、T細胞(潜在性HIVのためのリザーバ)のみへの結合および感染T細胞のリザーバの選択的破壊について二重に調節される。
【0158】
HIVおよび他の感染症の処置のための例示的な治療およびストラテジーを、以下の表2に概説する。表は、治療によって対処される病理学的異常;治療の細胞標的;ナノリポゲルのみまたはその任意の組み合わせによって送達することができる1、2、または3つの治療分子;ナノリポソームをターゲティングするために使用することができる所望の標的またはターゲティング部分;好ましい送達機構;および意図される治療効果を示す。
【0161】
3.他の適応症
さらに別の非限定的な例は、血圧およびコレステロールレベルの両方を同時に低下させるために当該分野で周知の併用療法を使用する心血管疾患である。多数のかかる疾患において、生体内分布の調整によって処置ストラテジーで利点も得られ、本発明のいくつかの実施例で証明されるように、ナノリポゲルの使用によって生体内分布の調節が見込まれることは注目に値する。
【0162】
首尾のよい併用療法は、持続的な様式で異なる生理化学的特性を有する種々のエフェクター分子を腫瘍床へ放出する安全且つ柔軟な送達プラットフォーム(本研究で開発したナノリポゲル送達系など)である。最近の研究では、別のTGF−β受容体−Iインヒビター(LY364947)と細胞傷害性化学治療剤であるドキソルビシンとの組み合わせが粒子処方物において膵癌腫および胃癌腫に対して有効であったことが証明されている。サイトカイン(IL−2が含まれる)は、免疫学的細胞およびエフェクター細胞の機能で重要な可溶性タンパク質の複雑なネットワークを代表する。類似の様式で、小分子疎水性薬(TGF−βアンタゴニストなど)は、免疫応答を回避するために腫瘍によってもたらされたバリアを克服することができる免疫調節薬クラスを代表する。腫瘍床と組み合わせたこれらの薬剤の持続送達によって治療免疫応答を誘導することができる一方で、腫瘍微小環境の免疫耐性を軽減することができる。
【0163】
B16黒色腫モデルを使用して、不安定性タンパク質および疎水性小分子の両方の確実な同時かつ相乗的な送達の困難さを異なる薬物送達適用で個別の使用歴を有する不活性な生分解性成分から作製したナノスケール送達系の合理的操作によって取り組むことができることを確認した。実施例は、免疫系の先天性アームの活性化がIL−2およびSBの同時送達の相乗効果の根底にある重要な免疫学的機構であり、その結果、腫瘍保有マウスの腫瘍成長を遅延させて生存を増強することを例示している。IL−2と組み合わせたSBの投与によって先天性免疫系が刺激され、この組み合わせを受容したマウスにおける腫瘍内のNK数が大幅に増加した。NK枯渇後に治療有効性がないことが、両薬剤を放出するナノ粒子による先天性アームの刺激がこのモデルの生存の改善を達成するのに重要であることが証明された。SB、IL−2のみ、または組み合わせを放出する粒子も適応免疫系を刺激し、活性化CD8
+:Treg比を増強した。これらの結果は、併用療法が免疫系の両アームを同時に刺激することができることを示す。
【0164】
腫瘍ターゲティングを用いない場合でさえも可溶性サイトカインおよび疎水性薬物分子の両方を持続的な様式で放出するようにデザインしたナノキャリアを使用して重要な免疫調節薬の組み合わせを同時送達させ、それにより、局所免疫抑制環境を減少させて抗腫瘍応答を増強することができる。腫瘍部位でのIL−2およびTGF−βアンタゴニストの組み合わせにより、B16/B6マウス黒色腫モデルで有意に腫瘍を遅延させ、選択された場合では微視的に寛解した。黒色腫などの浸潤性腫瘍が、急速に成長する腫瘍を支持するための迅速な血管形成に起因する100〜800nmの孔を有する漏出性脈管構造を固有に生じることを注目すべきである。この脈管構造の欠陥および不十分なリンパ排液により、腫瘍床内へのナノ粒子の透過および滞留が亢進された。これは、しばしば、亢進された透過および滞留(EPR)と呼ばれ、「受動的ターゲティング」の一形態である。正常組織よりも腫瘍中の薬物負荷ナノ粒子の蓄積が増大することの根拠は、漏出性脈管構造によって供給される腫瘍床と異なり、正常組織がナノサイズの粒子よりも透過性が低い密着結合を有する毛細血管を含むことである。したがって、受動的ターゲティングにより、抗体または他の薬物の遊離投与と比較して固形腫瘍中の粒子濃度が数倍になり得る。これは、静脈内注射後に認められる生存の増大および有効な転移の処置を説明することができる。
【0165】
これは、どのようにしてナノリポゲルを使用して生体内分布に関する利点を得ることができるのかについての一例である。この生存指標をさらに増大させるための他のストラテジーには、腫瘍微小環境内の薬剤の選択的送達および滞留を改善するための注射頻度、注射あたりの投薬量、またはナノ粒子表面上の腫瘍滞留リガンドの包含の増大が含まれる。腫瘍に浸潤するリンパ球およびNKの活性を、サイトカインのIL−2ファミリーに属し、IL−2活性化細胞の生存を増強するように機能することができるさらなるサイトカイン(IL−15など)の送達によって増強することができる。
【0166】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照してさらに理解されるであろう。
【実施例】
【0167】
実施例1:抗腫瘍分子の送達のためのナノリポゲルの調製
材料と方法
ナノリポゲル合成。「ナノリポゲル」(「nLG」)粒子を、分解性ポリマーから作製した(
図1B)。リポソームを、光開始ヒドロゲル形成のためのナノスケールの鋳型として使用した。カプセル化タンパク質と併せた疎水性薬物の徐放を達成するために、メタクリラート結合体化β−シクロデキストリン(CD)を、リポソームの内部に組み込んだ。β−シクロデキストリンは、疎水性化合物のための可溶化剤としての長い歴史があり、種々の薬学的処方物中の重要な賦形剤である。この処方手順により、両方のタンパク質および小型の疎水性薬物を脂質二重層の内部に同時カプセル化することができた(
図1A〜1B)。
【0168】
結合体化したCDを、加水分解性エステル基を介したスクシニル化CDの感光性メタクリラート基との反応によって作製した。(
図1A)SBまたはローダミン(画像化用)の官能化CDとの複合体化を、500MHz Bruker分光計でのプロトン核磁気共鳴(
1H NMR)によって検証した。全サンプルを、基準としての溶媒を用いた特徴付けのためにD
2O中に1〜10mg/mlで溶解した。
【0169】
PLA−PEG−PLAジアクリラートを、Sawhney,ら、Macromole 26,581−587(1993)にしたがって2工程で合成した。全ての化学物質を、他で断らない限り、Sigmaから購入し、これらの化学物質はACSグレード以上であった。α,ω−ジヒドロキシポリ(エチレンオキシド)(分子量4000g/mol)、3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(dl−ラクチド)、およびスズ(II)2−エチルヘキサノアート(第一スズオクトアート)を、5:1:0.0075モル比で窒素下の丸底フラスコに入れ、反応物を真空下にて200℃で4時間撹拌し、その後に160℃で2時間撹拌した。室温への冷却後、得られたコポリマーをジクロロメタンに溶解し、無水エーテル中で沈殿させた。この中間体をジクロロメタン(10g/mL)に溶解し、氷浴中で0℃に冷却した。10gのポリマー中間体あたり、440μLのトリエチルアミンおよび530μLのアクリロイルクロリドを窒素下で添加し、反応混合物を、0℃で12時間撹拌し室温で12時間撹拌した。混合物を濾過し、得られたポリマーをジエチルエーテル中で沈殿させた。最終ポリマーをジクロロメタンに再溶解し、ヘキサン中で再沈殿させ、FTIRおよびNMRによって特徴づけた。
【0170】
ローダミンおよびSB505124のシクロデキストリンとの複合体化を、500MHz Bruker分光計でのプロトン核磁気共鳴(
1H NMR)分光法によって試験した。
【0171】
ナノリポゲル処方。全ての脂質をAvanti Polar Lipidsから入手し、さらに調製することなく使用した。ホスファチジルコリン(PC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[アミノ(ポリエチレングリコール)−2000](DSPE−PEG)、およびコレステロールを、3:1:1モル比にてクロロホルム中で混合し、リポソームをPeer,ら、Science 319,627−630(2008)の遠隔負荷技術を使用して処方した。脂質標識蛍光リポソームを、10%の1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[ポリ(エチレングリコール)2000−N’−カルボキシフルオレセイン](DSPE−PEG−フルオレセイン)の組み込みによって処方した。簡潔に述べれば、溶解した脂質をガラスシンチレーションバイアル中で混合し、その後に定方向窒素流を使用して溶媒を完全に除去した。これによって内部ガラス面に薄い脂質フィルムが形成され、これを1×リン酸緩衝化食塩水(PBS)の添加によって再水和した。30秒間ボルテックスおよびその後の室温で5分間の静置を1サイクルとしてこれを10回繰り返し、得られた多重膜リポソームをLIPEX押出機(Northern Lipids,Inc.)を使用して5μmポリカーボネート膜(Whatman)に10回、1μm膜に10回、最後に100nmに11回押し出した。次いで、得られた単層リポソームを凍結乾燥させた。
【0172】
凍結乾燥させたリポソームを、5%(w/v)ポリマー(
図1B)および光開始剤としての2.5mg/mL Ciba Irgacure 2959を含み、さらに他の添加物を含まないか(nLG−Empty)、9mg f−CD可溶化SB/100mg nLG(nLG−SB;SB505124、Sigma)、1μg IL−2/100mg脂質(LG−IL−2;Aldesleukin Proleukin,Novartis)、またはf−CD可溶化SBおよびIL−2(nLG−SB+IL−2)の両方を含む溶液で再構成した。CD(ランダムスクシニル化β−CD;CTD、Inc.)を、1:3の化合物モル比で1×PBS中にて室温で1時間撹拌することによって2−アミノエチルメタクリラート(Sigma)で官能化した。メタノールに溶解した薬物をf−CDに添加することによってSBをf−CDに組み込んだ。室温で20分間の強い撹拌によって複合体を形成させた後、メタノールを、定方向の窒素流を使用して蒸発させた。リポソームを再水和するための30分間のボルテックスを用いて再構成工程を進行させた。次いで、リポソームに、Blak−Ray長波長紫外線ランプ(Model B 100)を使用して作動距離10cmで8分間UV光を照射した。UV照射の直前に、大規模なゲル化(gellation)を防止するためにサンプルを5倍希釈した。得られたナノリポゲルを遠心分離(7200rcfで5分間)によってペレット化し、1×PBSに再懸濁した。この遠心分離/再懸濁手順を3回繰り返した。ナノリポゲルをアリコートにし、さらなる使用まで−20℃で凍結した。コンシステンシーのため、全ナノリポゲルを使用前に凍結した(in vitroまたはin vivo)。最終的なサイズおよび分散度を、1×PBSへ再懸濁したナノリポゲルのZetaPALS動的光散乱装置での分析によって確認した。PC/コレステロールリポソーム、PC/コレステロール/PE−PEG−NH
2リポソーム、およびナノリポゲルのゼータ電位を、Malvernナノサイザーを使用して0.1×PBS中にて評価した。
【0173】
TEM分析のために、ナノリポゲルサンプルを四酸化オスミウムで染色し、次いで、FEI Tenai Biotwin顕微鏡で画像化した。低温で切片にしたサンプルの脂質特異的四酸化オスミウム染色により、粒子の外膜に限定される局在化したパターンで染色された。
【0174】
結果
リポソームを、光開始ヒドロゲル形成のためのナノスケールの鋳型として使用した。カプセル化タンパク質と併せた疎水性薬物の徐放を達成するために、メタクリラート結合体化β−シクロデキストリン(CD)を、リポソームの内部に組み込んだ。β−シクロデキストリンは、疎水性化合物のための可溶化剤としての長い歴史があり、種々の薬学的処方物中の重要な賦形剤である。
【0175】
SBまたはローダミン(画像化用)の官能化CDとの複合体化を、
1H NMRを使用して検証した。官能化CD(f−CD)は光誘発重合中にリポソームカプセル化ポリマーマトリクスに共有結合するようになる。したがって、SBはポリマーエステル基のf−CD/SB加水分解およびその後のナノリポゲルからの拡散の際にのみ放出が可能であり、それにより、ゲル化CDの非存在下でのSBのバースト優先放出と比較して徐放が可能である。この系により、単一成分放出と比較して、その生物活性を損なうことなく遠隔負荷IL−2放出の制御が可能であり、タンパク質および薬物の両方の同時放出が可能であった。SB/IL−2負荷ナノリポゲルの放出プロフィールは血清中でのインキュベーションによって変化せず、7日目までに放出が実質的に完了した。
【0176】
SBおよびIL−2の放出プロフィールに及ぼすnLG内での重合の影響を証明するために、両薬剤の放出動態学を、両薬剤をカプセル化したリポソームおよび固体ポリ(ラクチド−co−グリコリド)ナノ粒子(PLGA NP)からの放出と比較した。ナノリポゲルビヒクル中への光硬化ポリマーの組み込みにより、リポソームと比較してSBのより多い徐放が可能であり、同一直径の従来の50:50(PLGA NP)と比較してより完全な放出が可能であった。薬物の放出動態学は、リポソームからの分散依存放出とPLGAからの加水分解依存放出との間のようである。リポソーム、ナノリポゲル、およびPLGA NPからのIL−2の累積放出の比較により、ナノリポゲル中へのIL−2のカプセル化によってより優れたサイトカインの徐放が可能であることが証明された。
【0177】
SBおよびIL−2の生物活性は、リポゲル組み込みの影響を受けなかった。IL−2(80%)および/または薬物(36%)のカプセル化は、ナノリポゲルの直径に有意に影響を及ぼさなかった。動的光散乱分析によって平均直径120nmおよび多分散指数0.2が明らかとなった。アミン末端化PEG化ホスファチジルエタノールアミンを組み込んだリポソームおよびナノリポゲルは、ホスファチジルコリンおよびコレステロールのみを使用して処方したリポソームのおよそ−22±10mVゼータ電位と比較して、中性ゼータ電位を示した。ナノリポゲルの低温TEMによって球状リポソーム構造の形成が示され、この構造は界面活性剤によるリポソーム外部の破壊後でさえも光散乱によって検出可能であり、インタクトなナノリポゲルとほぼ同一の直径を有する内側ゲルコアが確認された。この系のin vitro細胞傷害性は無視できた。
【0178】
このプラットフォームの生体内分布およびクリアランスを調査するために、CD可溶化ローダミンをSBの蛍光代替マーカーモデルとして使用した。CDでのローダミン複合体化は、CDとのゲスト−ホスト相互作用を認定するために以前から使用されている。これを、ここでは
1H NMRによって確認した。
【0179】
SBまたはSB+IL−2のカプセル化は、粒子の平均直径または多分散性に有意な影響を及ぼさなかった。
図1Dは、アミン末端化PE−PEGを組み込んだリポソームおよびナノリポゲルのゼータ電位が中性付近であることが見出されたことを示す。
図1Eは、ナノリポゲル処方物の組成および処方特性を示す。
図1Fは、
1H NMRによって検証したポリマー構造を示す。ナノリポゲルの低温TEMは球状リポソーム構造の形成を示した。
図1Gは、光重合ポリマー/CDが界面活性剤によるリポソーム外部の破壊後でさえも光散乱によって検出可能であるナノ粒子ヒドロゲル構造を形成することを示す。
【0180】
実施例2:in vitro放出および生物活性研究
材料と方法
制御放出研究。長期間にわたるカプセル化薬剤の制御放出についてのナノリポゲルビヒクルの利点を証明するために、SBおよび/またはIL−2を含むナノリポゲル粒子のin vitro放出を評価するための一連の研究を行った。放出研究を、37℃の1×PBS+10%ウシ胎児血清中での一定の撹拌を使用して行った。各時点で、容積を完全に除去し、遠心分離(7200rcfで5分間)後に新たな緩衝液と置換した。ナノリポゲルを、手作業のピペット操作によって再懸濁した。300nmでBeckman Coulterプレートリーダーを使用して、SB濃度を決定するために吸光度を測定した。読み取り値がカプセル化SBのみに起因することを確実にするために、nLG−Empty粒子由来の吸光度の読み取り値をnLG−SB粒子から得た読み取り値から差し引いた。IL−2放出を、製造者の説明書にしたがってヒト化捕捉抗体(BD、555051)およびビオチン化検出抗体(BD、555040)を有するIL−2 ELISAキット(BD Biosciences)を使用して決定した。これらの研究で使用したIL−2について、国際単位変換は、22MU=1.3mgであった。
【0181】
官能化CD(f−CD)は光誘発重合中にリポソームカプセル化ポリマーマトリクスに共有結合するようになる。したがって、SBはポリマーエステル基のf−CD/SB加水分解およびその後のナノリポゲルからの拡散の際にのみ放出が可能であり、それにより、ゲル化CDの非存在下でのSBのバースト優先放出と比較して徐放が可能である。
【0182】
生物活性研究。nLG−IL−2の累積放出を、完全培地(L−グルタミン(Sigma)、非必須アミノ酸(Gibco)、Hepes緩衝液(Sigma)、ゲンタマイシン(Sigma)、およびβ−メルカプトエタノール(Sigma)を補足した10%ウシ胎児血清(Atlanta Biological)およびペニシリン/ストレプトマイシン(Sigma)を含むRPMI培地(Gibco))中で1、3、5、および7日目に行った。脾細胞をB6マウスから単離し、10μg/mL抗CD3(1×PBS中にて4℃で一晩コーティングした)および5μg/mL可溶性抗CD28(BD Biosciences)で予めコーティングした24ウェルプレートの各ウェルの500μL T細胞培地に1×10
6細胞を添加した。放出研究由来の培地を0.22μmシリンジフィルタ(Whatman)で濾過し、500μLをウェルに添加した。さらに、全ウェルは5μg/mL可溶性抗CD28(BD Biosciences)を含んでいた。可溶性IL−2を、標準として種々の濃度でコントロールウェルに添加した。細胞を37℃でインキュベートし、細胞刺激を、IFN−γELISA(BD Biosciences)を使用して72時間後に評価した。
【0183】
結果
図2A〜2Eは、nLG、リポソーム(lipsosome)、および固体ポリマーナノ粒子(PLGA)からの放出プロフィールの比較である。初期キャリア質量によって正規化されたnLGからのCD可溶化SBまたはメタクリラート官能化CD(f−CD)可溶化SBの蓄積放出は、ナノリポゲルの重合によってSB放出の徐放性が改善されたことを示した(
図2A)。ヒドロキシプロピルβ−CDを、非官能化CDとのSB複合体化のために使用した。ELISA(免疫活性)研究および生物活性研究(生物活性)によって決定された初期ナノリポゲル質量によって正規化されたnLGからのIL−2の累積放出は、IL−2の生物活性がカプセル化の影響を受けないことを示していた(
図2B)。SBおよびIL−2の放出は、1ml全血清中での10mg nLGのインキュベーションの影響を受けなかった(
図2C)。リポソーム、ナノリポゲル、および分解性ポリマー(ポリラクチド−co−グリコリド)ナノ粒子(PLGA NP)からのSBの累積放出の比較により、ナノリポゲルビヒクル中への光硬化ポリマーの組み込みによってシクロデキストリン可溶化SBのより良好な徐放およびより完全な放出が可能になることが示された(
図2D)。PLGA NP(平均直径=150±50nm)を、修正された水/油/水二重エマルジョン技術の使用によって調製した。リポソームを、ポリマーコアの使用を除いてnLGと同一の様式で調製した。リポソームに、ナノリポゲルと類似のIL−2およびSBを負荷した。PLGA NPからのカプセル化SBの放出率の減少は、比較的疎水性のポリマーのSBとの相互作用に起因する。7日目に全粒子処方物を0.1N NaOH+1%SDSに溶解して100%放出を決定した(矢印)(
図2D)。リポソーム、ナノリポゲル、およびPLGA NPからのIL−2の累積放出の比較により、ナノリポゲル中へのIL−2のカプセル化によってサイトカインのより良好な徐放が可能になることが示された。累積放出を、7日間にわたって放出された全IL−2に対する%として示す。(
図2E)全グラフ中のデータは、三連のサンプルの平均±1標準偏差を示す。
図2Fは、PLGA、ナノリポゲル、およびリポソームのサイズおよびこれらへのIL−2およびSBの負荷を比較している。
【0184】
この系により、その生物活性を損なうことなく遠隔負荷IL−2放出の制御が可能であった。CDの外側のポリマーヒドロゲル空隙へのIL−2の負荷により、タンパク質および薬物の両方の同時放出が可能であった。単一成分放出と比較した両成分の総放出の減少(
図2C)は、ナノリポゲルの内側の立体的制約またはSBおよびIL−2の負荷効率の減少に起因する可能性が高かった。SB/IL−2負荷ナノリポゲルの放出プロフィールは血清中でのインキュベーションによって変化せず、7日目までに放出が実質的に完了した。
【0185】
SBおよびIL−2の放出プロフィールに及ぼすナノリポゲル内での重合の影響を証明するために、両薬剤の放出動態学を、両薬剤をカプセル化したリポソームおよび固体ポリ(ラクチド−co−グリコリド)ナノ粒子(PLGA NP)からの放出と比較した。ナノリポゲルビヒクル中への光硬化ポリマーの組み込みにより、リポソームと比較してSBのより多い徐放が可能であり、同一直径の従来の50:50(PLGA NP)と比較してより完全な放出が可能であった。薬物の放出動態学は、リポソームからの分散依存放出とPLGAからの加水分解依存放出との間である。リポソーム、ナノリポゲル、およびPLGA NPからのIL−2の累積放出の比較により、ナノリポゲル中へのIL−2のカプセル化によってより優れたサイトカインの徐放が可能であることが証明された。
【0186】
生物活性。ナノリポゲルビヒクルは、生物活性を損なうことなくカプセル化薬剤の放出を制御するのに必要な方法を提供する。SBおよびIL−2の生物活性は、リポゲル組み込みの影響を受けなかった。IFN−γ産生は、生物活性を決定するためのIL−2濃度と相関した。
【0187】
実施例3:ナノリポゲルの特徴付け
IL−2(80%)および/または薬物(36%)のカプセル化は、ナノリポゲルの直径に有意に影響を及ぼさなかった。動的光散乱分析によって平均直径120nmおよび多分散指数0.2が明らかとなった。アミン末端化PEG化ホスファチジルエタノールアミンを組み込んだリポソームおよびナノリポゲルは、ホスファチジルコリンおよびコレステロールのみを使用して処方したリポソームの−22±10mVゼータ電位と比較して、中性ゼータ電位を示した。ナノリポゲルの低温TEMによって球状リポソーム構造の形成が示され、この構造は界面活性剤によるリポソーム外部の破壊後でさえも光散乱によって検出可能であり、インタクトなナノリポゲルとほぼ同一の直径を有する内部ゲルコアが確認された。この系のin vitro細胞傷害性を無視できた。
【0188】
実施例4:生体内分布
ナノリポゲルの生体内分布およびクリアランスを調査するために、CD可溶化ローダミンをSBの蛍光代替マーカーモデルとして使用した。CDでのローダミン複合体化は、CDとのゲスト−ホスト相互作用を認定するために以前から使用されている。これを
1H NMRによって確認した。全身投与後のローダミンのin vivo薬物動態学を、尾静脈注射を介してnLG−rhod、等価用量の遊離ローダミン、またはPBSコントロールの単回静脈内投与を受けた健康なマウスにおいて評価した。
【0189】
結果
血液から抽出したローダミンの蛍光分光分析により、注射から1時間後および24時間後に残存する、ナノリポゲルの初期用量に対する量がそれぞれ15.7±4.1%および7.7±3.7%(平均±標準偏差)であることが示された。遊離ローダミンは迅速にクリアランスされ、注射後のいかなる時点でも血中で検出できなかった。
【0190】
図3A〜3Gは、制御放出、クリアランス、および生体内分布を示すグラフである。ナノリポゲルキャリアおよびカプセル化薬物ペイロードの両方の分布を二重標識NLGを使用して調査し、フルオレセイン標識ホスホエタノールアミンを、ローダミン負荷ナノリポゲルの脂質成分に組み込んだ。540/625nmおよび490/517nmでの蛍光分光分析は、スペクトル重複のない用量依存性蛍光を示した。
図3Aは、キャリア質量によって正規化された同時負荷nLGからのIL−2(ng/mg nLG)および薬物(μg SB/mg nLG)の累積放出のグラフである。全プロット中のエラーバーは、±1標準偏差を示す。
図3Bは、日数で表示した経時的な薬物用量のクリアランス(初期用量に対する百分率)を示すグラフである:ナノリポゲル中へのカプセル化により、注射1時間後および24時間後の血中の初期用量の残存率が有意に増大した(2集団t検定、p<0,01###)。
図3Cは、全身分布のグラフである。マウスに、静脈内尾静脈注射によって単回用量のローダミン負荷ナノリポゲルまたは可溶性ローダミン(食塩水中)を投与した。動物を、抽出および蛍光の定量のために注射の1、24、48、および72時間後に屠殺した。
【0191】
全身生体内分布を、ローダミン標識を使用して決定した。遊離色素を注射した動物と比較してナノリポゲル処置動物の主な器官において有意により大量の(2集団t検定、p<0,01)ローダミンが検出された。
図3Dは、皮下腫瘍における時間依存的蓄積nのグラフである:B6マウスにおけるB16腫瘍周囲注射後の累積的ローダミン腫瘍透過(円)。腫瘍周囲組織を回収して、腫瘍周囲のnLGの残存用量を定量した(四角)。制御放出はローダミンの放出を示すが、脂質ではない(
図3E)。皮下B16腫瘍を保有するマウスに、二重標識NLGの単回IV(尾静脈)注射を行った。注射1、2、3、および7日後に動物を屠殺し、均質化、抽出、およびローダミンおよびフルオレセイン−PEの定量のために組織を回収した。血清分析は、カプセル材料および送達ビヒクルの両方の循環の延長を示した。脂質(
図3F)と薬物ペイロード(
図3G)との間で類似の生体内分布パターンが認められ、肺および肝臓で最高の薬物蓄積が認められた。
【0192】
主な器官への生体内分布の分析により、肺、肝臓、および腎臓がナノリポゲルカプセル化ローダミンおよび遊離ローダミンの両方の主な蓄積部位であることが示された。ナノリポゲル中へのカプセル化により、ほとんどの組織の最初の総用量および3日間にわたる蓄積用量の両方が増大した。
【0193】
実施例5:細胞傷害性および安全性の研究
材料と方法
Cell titer blue(Invitrogen)を、製造者の説明書にしたがって細胞生存度のマーカーとして使用した。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(ATCC)を、5×10
4細胞/ウェル(細胞数の系列希釈を含んでいた標準を除く)の密度で96ウェルプレートに入れた。細胞を、1×PBS(ポジティブコントロール)、アジ化ナトリウム(ネガティブコントロール;Sigma)、リポソーム、またはナノリポゲルの系統希釈物と共に37℃で24時間インキュベートした。リポソームをナノリポゲルと同様に作製したが、凍結乾燥後に、純粋な1×PBSで再構成し、UV照射に供さなかった。ナノリポゲルは、nLG−Empty群に由来していた。24時間後、cell titer blue試薬を添加した(20μL/100μL体積)。細胞を37℃で4時間さらにインキュベートし、その後に細胞をペレット化し、上清の蛍光を測定した。100%細胞生存を1×PBS群由来の生存平均値と定義し、0%生存をアジ化合物群由来の生存平均値と定義した。全サンプルを三連で実験し、実験を3回繰り返して類似の結果を得た。
【0194】
ナノリポゲル粒子のin vivo安全性を試験するために、C57/Bl6マウスに単回静脈内用量のナノリポゲルを投与し、7日後に急性毒物学を測定した。肺毒性を組織学によって評価して、全身投与したナノリポゲルが任意の急性炎症を誘導したかどうかを決定した。
【0195】
結果
空のナノリポゲルまたはSB505124(SB)またはIL−2を用いて同時カプセル化したナノリポゲルの投与に由来する統計的に有意な毒性効果は認められなかった。アルカリホスファターゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼの血清レベルによって測定した場合、肝毒性(hepatoxicity)は認められなかった。マウスアルカリホスファターゼおよびアラニンアミノトランスフェラーゼについてのIDEXX VetTest(登録商標)システムによって得た正常な生理学的基準範囲は、それぞれ62〜209IU/Lおよび28−132IU/Lであった。さらに、血中尿素窒素レベルが正常マウス基準範囲18〜29mg/dLに含まれていたので、腎臓毒性は認められなかった。任意の血液学的毒性を同定するために、全血球算定も行った。白血球数、血小板数、およびヘモグロビン含量は全て、マウスの正常な生理学的範囲に含まれていた(白血球:1.8〜10.7×10
3細胞/uL;血小板:592〜2971×10
3細胞/uL;ヘモグロビン:11.0〜15.1g/dL)。肺のヘマトキシリンおよびエオシン染色では明らかな肺毒性は証明されなかった。細気管支および肺胞構造は正常なようであり、肺切片において上皮層の破壊や炎症性浸潤は認められなかった。
【0196】
in vitroでの結果は、ナノリポゲルがリポソームに対して類似の無視できる毒性しか持たないことを証明している。
【0197】
健康なC57/Bl6マウスに単回静脈内用量のナノ粒子併用療法薬またはコントロールを投与し、7日後に急性毒物学を測定した。血清アルカリホスファターゼや血清アラニンアミノトランスフェラーゼの測定において有意な毒性は認められなかった。マウスアルカリホスファターゼの正常な生理学的範囲はおよそ62〜209IU/Lであり、アラニンアミノトランスフェラーゼについてはおよそ28〜132IU/Lである。血中尿素窒素レベルが正常なマウス基準範囲18〜29mg/dLに含まれていたので、腎毒性は認められなかった。全血球算定により、白血球数、血小板数、およびヘモグロビン含量が正常な生理学的範囲内であることが証明された。肺毒性を組織学によって評価して、急性炎症の存在を決定した。肺のヘマトキシリンおよびエオシン染色では明らかな肺毒性や炎症性浸潤は証明されなかった。細気管支および肺胞構造は正常なようであり、上皮層の破壊は認められなかった。
【0198】
実施例6:腫瘍への薬物送達および抗腫瘍活性−皮下腫瘍
IL−2およびTGF−βアンタゴニスト単剤療法がB16黒色腫に対する抗腫瘍応答を増強する効果を決定した。
【0199】
材料と方法
対応のあるt検定(両側)を使用して、腫瘍面積および腫瘍量の相違を解析した。OriginProバージョン8.1(Microcal)およびPrismバージョン5.01(GraphPad Software,Inc.)を、分析のために使用した。Originを使用したカプラン・マイヤーおよびウィルコクソン・ゲーハン検定を使用して、生存研究を分析した。
【0200】
in vivo皮下腫瘍研究。B16−F10細胞(ATCC)をDMEM(Gibco)中で培養し、注射直前に1×PBS(氷上で保持)で2×10
6細胞/mLに懸濁した。皮下腫瘍研究のために、雌6〜8週齢B6アルビノマウスをAErrane(イソフルラン;Baxter)で鎮静し、右後側腹部の剪毛後に50μLの細胞懸濁液を皮下注射した。腫瘍をモニタリングし、平均腫瘍面積がおよそ5.5mm
2に到達した時に処置を開始した(B16注射から8〜10日後;群間で腫瘍サイズを正規化するために、マウスを再配置した)。腫瘍内ナノリポゲル投与のために、マウスをイソフルランで鎮静させた。各用量は、5mgナノリポゲルからなっていた。
【0201】
観察者は、腫瘍面積および生存研究について盲検化された。任意の1つの腫瘍寸法が15mmを超える場合、疾患の任意の徴候を示した時、またはFACS分析研究のための処置から1週間後に二酸化炭素を使用してマウスを安楽死させた。in vivo送達研究において、nLG−SBについての上記のように調製したf−CD可溶化ローダミン(Sigma)負荷ナノリポゲルを5mg注射/マウスで使用した。異なる時点で群あたり5匹のマウスを安楽死させ、腫瘍を抽出し、秤量した。
【0202】
ローダミンを、500μL脱イオン水(DI)中で腫瘍を均質化することによって抽出した。−80℃/室温での凍結/融解サイクル2回を使用して細胞が完全に溶解したことを確実にし、次いで、ホモジネートを室温に解凍し、40%(v/v)ジメチルスルホキシドおよび1%(v/v)TWEEN(登録商標)80を添加して粒子を溶解した。ボルテックス後、ホモジネートを−80℃で24時間凍結し、室温で解凍し、10分間ボルテックスし、次いで、細胞残渣を13000rpmでの30分間の遠心分離によってペレット化した。上清を除去し、蛍光を励起540nm/放出625nmで測定した。
【0203】
in vivo ナノリポゲル
ナノリポゲル中へのカプセル化によって遊離薬物のクリアランスが減少し、生体内分布が改善されたので、最初に治療有効性を評価するために皮下腫瘍の局所治療を評価した。可溶性SBのみの毎週の腫瘍内投与では腫瘍成長を遅延させることができず(
図4A)、前臨床の前立腺癌および胃癌動物モデルにおいてLY364947を使用した以前の結果と一致していた。可溶性SBおよびIL−2の両方を毎週用量で同時投与した場合に同様に効果がなかったことが観察された(
図4A)。個別に投与したナノリポゲルカプセル化SB(nLG−SB)により腫瘍成長が有意に遅延し(
図4A)、治療1週間後にマウスの腫瘍はより小さくなった(
図4B)。個別に投与したナノリポゲルカプセル化IL−2(nLG−IL−2)では腫瘍成長は有意に遅延しなかったが(
図4A)、1週間で腫瘍量はコントロール群中のマウスから得た腫瘍より有意に小さかった(
図4B)。
【0204】
これらの結果は、IL−2またはTGF−βシグナル伝達を阻害する小分子のいずれかの徐放の抗腫瘍応答の増強についての有効性がこれらの薬剤のパルス投与の有効性を超えることを示す以前の研究と一致する。全処置群を比較した場合、治療1週間後の腫瘍成長速度および腫瘍量の両方において最も顕著且つ有意な減少が、SBおよびIL−2の同時持続送達を受容したマウスで認められた(
図4Aおよび4B)。
【0205】
結果
処置マウスおよび未処置マウスにおける腫瘍サイズは、その生存と相関していた(
図4A;4C)。IL−2と組み合わせた可溶性SBまたはSBの投与では未処置コントロールを超えて生存は改善されなかった一方で、IL−2またはSBのみのナノリポゲル処方物は平均生存期間を少し増大させた(
図4C)。対照的に、ナノリポゲルによって送達された併用免疫療法は生存を劇的に増大させた(
図4C)。腫瘍動態学データから認められるように、各薬剤を放出する粒子の投与によって生存がわずかに改善されたが、両薬剤を放出する粒子による併用療法を受けたマウスは、他の処置群と比較して顕著に小さい腫瘍および長い生存期間が証明された。nLG−SB+IL−2を受容した動物のうち100%が、最初の腫瘍移植後の35日での研究エンドポイントまで生存した。60日間を通して、この群のコホート(40%)において完全な腫瘍退縮および生存が認められた(
図4C)。
【0206】
ローダミン負荷nLG(nLG−rhod)の局在化腫瘍周囲注射後の腫瘍への薬物送達を、腫瘍対腫瘍周囲組織におけるローダミン濃度の測定値の比較によって評価した。薬物動態学的プロフィールにより、nLGの局在化デポーからの薬物の持続送達が示唆され、腫瘍周囲投与の24時間後、初期用量の3±1%しか腫瘍塊に透過せず、初期用量の36±17%が周囲組織に残った。7日間にわたり、腫瘍内のローダミン累積濃度は初期用量の25±0.5%に増大した一方で、腫瘍周囲組織中の総ローダミン濃度は初期用量の4±2%に減少した。
【0207】
実施例7:in vivoナノリポゲルの生体内分布、安全性、および転移性肺腫瘍研究
重要な満たされていないニーズとして、遠隔転移性腫瘍の処置における短命なサイトカインおよび疎水性薬物の生体内分布の改善が挙げられる。一般に、TGF−βシグナル伝達に耐性を示すT細胞を含む改変マウスは肺内の転移性B16黒色腫沈着物の発生を抑制し、この腫瘍モデルにおいてIL−2治療を使用するか使用しないでTGF−β遮断を評価するさらなる動機付けが得られた。高浸潤性B16肺転移に対する全身ナノリポゲル治療の影響を、このモデルで試験した。B16細胞の静脈内注射によってB6マウスの肺内で転移性腫瘍が急速に成長することが以前に示されている。
材料と方法
転移性B16黒色腫を、Gorelik,ら、Nat Med 7,1118−1122(2001)によって記載のように雌6〜8週齢B6マウスにおいて50μLのB16細胞懸濁液の静脈内(尾静脈)投与によって確立した。尾静脈注射によって静脈内投与した5mgナノリポゲルからなる各用量を使用して、処置を7日後に開始した。外部への腫瘍成長、麻痺または脱力、有意な体重減少を示した時、またはFACS分析研究のための最初の処置から14日後にマウスを安楽死させた。屠殺後、胸腔(chest cavity)を露出させ、右心房を小さく切開して右心室に10mLの冷PBSを注入することによって肺灌流を行った。肺転移を、盲検化された観察者によって固有の腫瘍として0.1〜3mmの範囲の暗色円形塊を記録することによって計数した。
【0208】
ナノリポゲルの生体内分布研究を、5mgのf−CD可溶化ローダミン負荷ナノリポゲル(脂質キャリアのフルオレセイン標識を含むまたは含まない)の注射(局所または全身)後に健康なマウスおよび腫瘍保有マウスで行った。上記のように、ローダミンを均質化した組織から抽出し、定量した。急性毒物学を、緩衝液コントロール、空のナノリポゲル、またはSBおよびIL−2負荷ナノリポゲルの静脈内投与の7日後に健康なC57/Bl6マウスで評価した。血清中のアルカリホスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、および血中尿素窒素のレベルの測定によって肝毒性(hepatoxicity)および腎毒性を評価した。任意の血液学的毒性を同定するために、全血球算定を行った。最後に、肺毒性を、全身投与したナノリポゲルが任意の急性炎症を誘導したかどうかを決定するための組織学によって評価した。
【0209】
切除した腫瘍組織を10%ホルマリン中で24時間固定し、次いで、パラフィン包埋した。組織ブロックを5umスライスの切片にし、スライドガラスにマウント後、ヘマトキシリンおよび白血球染色抗LCA(CD45)−ペルオキシダーゼ結合体(1ug/ml)(Life technologies)で染色した。
【0210】
20倍の0.95NA Olympus対物レンズおよびLaVision Biotec二光子顕微鏡システムと組み合わせたOlympus BX61WI蛍光顕微鏡を、腫瘍脈管構造および腫瘍中のナノリポゲル蓄積の画像化のために使用した。簡潔に述べれば、麻酔したC57BL/6マウスの皮下腫瘍周囲の皮膚弁を曝露させるために切開した。生体内画像収集を、ナノリポゲルの静脈内投与から5分後に開始した。Verdiレーザー源によってポンピングした自動調整チタン−サファイア二光子レーザー(Chameleon Vision II,Coherent)を、励起光源のために使用した。放出光を、以下の帯域フィルタを装着した非デスキャン型検出器(non−descanned detector)を使用して回収した:435/90nm、525/50、および615/100。各xy面の視野は、0.8um/ピクセルの解像度で400μm×400μmまたは500μm×500μmのいずれかであった。z軸間隔が1または2μmの26と101との間の光学切片のスタックを、850nmまたは940nmのいずれかの波長に設定したレーザーを使用して、60秒毎に1時間にわたって収集した。Volocity(登録商標)ソフトウェア(Improvision)を使用して、連続したスタック画像を作製した。
【0211】
結果
Petersen,ら、J Immunother 29,241−249(2006)に記載のように、腫瘍浸潤リンパ球をB16黒色腫から単離した。処置を、尾静脈注射によって与え、細胞注射から1週間後に開始して、成長腫瘍に対する有効性を評価した。皮下腫瘍保有マウスの場合のように、ナノリポゲルカプセル化併用療法を受けた群で最大の生存の利益が認められた。マンテル・コックス解析により、食塩水のみを投与した(すなわち、処置なし)動物よりも生存において統計的に有意な(p<0.01)増大が証明された(
図5a)。nLG−SB+IL−2を投与した動物の半分は、45日目の研究エンドポイントまで生存した(
図5a)。
【0212】
全身腫瘍組織量に及ぼす処置の影響を試験するために、最初の処置から2週間後に動物を屠殺し、全肺サンプルを黒色腫沈着について視覚的に調査した。IL−2同時治療を使用するか使用しない可溶性SBの投与では、3週間で肺腫瘍数を減少させることができなかった(
図5b)。ナノリポゲル送達併用療法を受けた動物で全身腫瘍組織量の最大の減少が認められた(
図5b)。
【0213】
B16転移性肺腫瘍を保有するマウスにおいて生体内分布の比較を繰り返した。ローダミン負荷ナノリポゲルの脂質膜内へのフルオレセイン標識PEG−ホスホエタノールアミンの組み込みによって処方した二重標識ナノリポゲルを使用して、粒子輸送対ペイロード輸送を評価した。フルオレセイン標識PEGは、ローダミンの検出や放出を干渉しなかった。肺腫瘍保有マウスに、単回IV(尾静脈)用量の二重標識ナノリポゲルを投与した。B16転移は、しばしば、明視野での観察下でおよそ1mmの不規則な小節として視覚可能であった一方で、送達ビヒクルのフルオレセイン標識脂質およびローダミンは投与から24時間後までに蛍光フィルタ下で検出された。脂質の蛍光検出は、投与から4日後までに有意に減少した。
【0214】
肺組織の範囲を超えた遠位腫瘍中のナノリポゲルおよび薬物の蓄積について試験するために、生体内分布実験を遠位皮下腫瘍を保有するマウスで繰り返した。静脈内注射後、皮下腫瘍中および均質化した組織中の脂質およびローダミンの濃度を、投与後の種々の時点で定量した。脂質およびローダミンのピーク腫瘍濃度(それぞれ、腫瘍1グラムあたり8.8±4.0%および2.5±0.8%)が投与から1日後に認められた。全組織の分析により、ナノリポゲル系の脂質およびローダミン成分の両方に類似する生体内分布パターンが確認され、このことは、薬物ペイロードが生体内分布中の粒子に会合していることを示していた。腫瘍脈管構造内のナノリポゲルおよびペイロードの輸送を、静脈内注射後の時間分解二光子レーザー走査生体内顕微鏡法を使用した皮下腫瘍の画像化によって確証した。脈管構造に沿ったフルオレセイン標識ナノリポゲルの蓄積が、静脈内注射後30分以内に腫瘍周囲の領域および腫瘍自体の内部の両方で検出された。腫瘍脈管構造内の粒子輸送は、腫瘍微小環境内のカプセル材料の蛍光の増大を伴っていた。ローダミンの血管外遊出は、腫瘍周囲組織および腫瘍細胞間の間質腔で明らかであった。
【0215】
フルオレセイン標識PEGは、ローダミンの検出も放出も妨害しなかった。全組織の分析により、静脈内注射後30分以内にナノリポゲル系の脂質およびローダミン成分の両方ならびに腫瘍自体の内部にも類似する生体内分布パターンが確認された。
【0216】
実施例8:ナノリポゲルの抗腫瘍効果の免疫学的機構
材料と方法
徐放併用療法の治療効果および単剤療法として送達された各薬剤の相対的な寄与の背後にある免疫学的機構を解明するために、最初の治療用量から1〜2週間後に安楽死させたマウスにおいて腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を採取し、評価した。この時点を、全群内のマウスが分析に適切なTIL数を単離するために十分なサイズの皮下腫瘍(最大寸法が10mmまで)または十分な肺腫瘍数(5個超)のいずれかを発達させた時に基づいて選択した。
【0217】
腫瘍浸潤リンパ球をB16黒色腫から単離した。簡潔に述べれば、皮下腫瘍または肺腫瘍をマウスから切除し、秤量し、最大寸法がおよそ3mmの切片に切り刻み、次いで、皮下腫瘍用の175U/mLのコラゲナーゼIA(Sigma,no.C9891)または肺腫瘍用の100U/mLのコラゲナーゼIV(MP Biomedical,no.195110)を含む8mLの無血清RPMI培地 (Irving Scientific Santa Anna,CA)に入れた。得られた組織懸濁液を37℃で1時間インキュベートし、70μm組織フィルタを通過させ、得られた細胞を無血清RPMI培地で2回洗浄した。ペレットを0.5mLのRPMI培地に再懸濁し、次いで、リンパ球単離のためのマウスlympholyte−M培地(Accurate Chemical、Westbury、NY)に重層し、その後に製造者の説明書(Accurate Chemical)にしたがって1500×gで遠心分離した。得られたバフィーコート層を取り出し、上記のRPMI培地で洗浄し、次いで、0.5%ウシ血清アルブミン(Sigma)を含む1mLの1×PBSに再懸濁した。全細胞懸濁液を計数して、単離TILの絶対数を決定し、次いで、FACS染色および分析のために96ウェルプレートに分注した。
【0218】
Becton Dickenson LSRIIフローサイトメーターを使用して、製造者の説明書(eBioscience,San Diego,CA)にしたがってCD4、CD8、NK1.1、TCR−βの細胞表面発現ならびに細胞内FoxP3を評価することによって腫瘍保有マウス内の免疫エフェクター細胞(CD4
+、CD8
+T細胞、およびNK細胞)およびTregの百分率を定量した。絶対細胞数を、Coulterセルカウンターでの直接計数によって評価した。抗CD4(Pacific Blue結合体化、番号558107)、抗CD8−a(ペリジニン−クロロフィル−タンパク質(PercP)結合体化、番号553036)、抗NK1.1(フルオレセインイソチオシアナート(fluoroscein isothyocyanate)(FITC)結合体化、番号553164)、抗TCR−β(アロフィコシアニン(allophyocyanin)(APC)結合体化、番号553174)、抗CD44(FITC結合体化、番号553133)、および抗CD62L(APC結合体化、番号553152)を、Becton Dickenson Pharmingenから購入した。抗FoxP3キット(フィコエリトリン(phycoerytherin)結合体化FoxP3抗体を含む、番号72−5775−40)をeBioscienceから購入した。
【0219】
細胞を、(販売者の説明書にしたがって)非特異的結合を防止するために0.5% BSAおよびFc遮断抗体2.4G2(抗CD16/32)の200倍希釈物を含む1×PBSで適切に希釈した40μL抗体カクテルとインキュベートした。細胞を、抗体カクテルと4℃で30分間インキュベートし、次いで、LSRII Greenフローサイトメーターでの分析前に1回洗浄した。FoxP3の細胞内染色のために、細胞を固定し、透過処理し、購入済みのFoxP3染色キット(eBiosciences)を使用して染色した。
【0220】
全FACSデータを、FloJoソフトウェア(Tree Star Inc.,Ashland,OR)を使用して解析した。CD4 Tregs、CD8 T細胞、およびNK細胞の絶対数を、腫瘍1グラムで正規化したTILの絶対数にLSRII Greenフローサイトメーターによって測定したCD4
+/FoxP3
+細胞、CD8
+細胞、またはNK1.1
+/TCR−β細胞の百分率(生存、TCR−β+/−について最初にゲーティング)を掛けることによって決定した。CD8/Treg比を、CD8 T細胞の絶対数を調節性T細胞の絶対数で割ることによって得た。
【0221】
NK1.1抗体を、Yokoyama,W.M.Monoclonal antibody supernatant and ascites fluid production,in Curr Prot Immunol(ed.Margulies,D.H.)2.6.1−2.6.9(John Wiley & Sons,New York,2000)に記載のようにHB191ハイブリドーマから単離した。これらの抗体を、B16注射の1日前およびその後7日毎に腹腔内注射した。各注射は、250μLの1mg/ml溶液であった。
【0222】
NK1.1抗体を使用して処置したマウスで首尾よく生じたNK枯渇を確認するために、NK枯渇マウスおよびNK成熟マウスのおよそ300マイクロリットルの血液および脾臓を得た。機械的解離を使用して得た末梢血および脾細胞を、製造者のプロトコールにしたがってACK溶解緩衝液(Lonza,Walkersville,MD)で処理し、その後にテキストに記載の抗体を使用してNK1.1またはTCR−βについて染色した。NK1.1/TCR−β陰性細胞の百分率を、補足
図8の右下象限に示した。これは、抗NK1.1抗体を使用した首尾のよいNK枯渇を示す。
【0223】
結果
IL−2およびTGF−βアンタゴニストの単剤療法がB16黒色腫に対する抗腫瘍応答を増強する効果を評価した。ナノリポゲル中へのカプセル化が減少し、遊離薬物がクリアランスされ、生体内分布が改善され、それによって治療1週間後により小さい腫瘍を有するマウスが得られるので、1週間での腫瘍量はコントロール群のマウスから得た腫瘍より有意に小さかった。
【0224】
ナノリポゲルのみまたはSBと組み合わせた投与によって、IL−2は腫瘍内の活性化CD8
+T細胞の百分率および絶対数の両方を増大させ(
図6a;
図6b)、全CD4/CD8比およびT
regへの影響は最小であり、この結果は報告された臨床結果と一致していた。腫瘍の代表的な組織学的画像は、IL−2が腫瘍へのリンパ球浸潤を有意に増大させることを示していた。このサイトカインの持続投与もTIL集団において活性化CD8
+:T
reg比を増大させた(
図6c)。
【0225】
nLG−SBでの処置によって非負荷粒子(nLG−Empty)よりも活性化CD8
+集団を有意に増加させ(P<0.05)、nLG−IL−2またはnLG−SB+IL−2での処置も同様であった(P<0.001)。全群は、空のnLGと比較して比が有意に大きい(P<0.05)。
【0226】
しかし、これらのデータは、IL−2およびSBの両方を放出する粒子を受容したマウスで認められた結果を完全に説明しておらず、別の機構が処置マウスで認められた抗腫瘍効果の増強に関与し得ることが示唆された。TGF−βはNK細胞の数および機能を調節することもできるので、この細胞型がTILに存在する免疫系の先天性アームに関与するかどうかを評価した。全腫瘍保有マウスにおいて認められたTIL T
regの相対数と非常に対照的に、IL−2と組み合わせたSBの持続投与により、「空の」粒子またはIL−2またはSBのみのいずれかを放出する粒子のいずれかを受容した群と比較して、腫瘍床内に存在するNK細胞の百分率(
図6a)および絶対数(
図6c)が有意に増大した。
【0227】
両薬剤を放出する粒子で処置したマウスで認められた治療上の利点がNK依存性であることを確証するために、NK枯渇マウスにおいて研究を行った。NK1.1抗体を使用してマウスのNK細胞を枯渇させ、腫瘍細胞をNK枯渇マウスおよびNK細胞を保持するマウスに注射した。最初の処置から1週間後にマウスを再度安楽死させ、腫瘍量を測定した。
【0228】
空の粒子群と比較して、nLG−SB+IL−2(P<0.05)、nLG−SB(P<0.05)、およびnLG−IL−2(P<0.01)による処置後の肺内に有意により多数のNKが存在した。nLG−SB+IL−2処置群は、コントロール群(P<0.01)、SB処置群(P<0.05)、およびIL−2処置群(P<0.01)よりも有意に多くのNKを有する。nLG−SB+IL−2処置WT群は、全ての他の処置群よりも有意に小さな腫瘍を有する(P<0.001)。NKD nLG−SB群およびnLG−SB+IL−2群は、WT対応群よりも有意に大きな腫瘍を有する(共にP<0.001)。研究を2〜3回繰り返し、類似の結果を得た。
【0229】
NK枯渇は、IL−2のみを放出する粒子を受容したマウスの腫瘍サイズに影響を及ぼさなかった(
図6b)。対照的に、これらの細胞が存在しないことにより、SBおよびIL−2を放出する粒子を投与した動物における腫瘍成長の遅延が無効にされた(
図6b)。NK枯渇によって無効にされた、薬物のみを放出する粒子を受容したマウスにおける治療上の利点は中程度であった(
図6b)。SBのみを放出する粒子で処置したマウスのTILにおいて、NK細胞の増大は、中程度の統計的に有意なものであった(
図6c)。
【0230】
したがって、SBおよびIL−2治療薬を同時送達させる粒子で処置したマウスで認められた最大の治療上の利点は、腫瘍部位でのNK細胞数の増大に関連し、その結果、腫瘍内のエフェクター細胞集団が増加した可能性が高かった。
【0231】
重要なことに、全身治療後の臨床効果は、局在化治療および薬物生体内分布の結果と一致した。ナノリポゲル中へのカプセル化により、肺への初期用量および3日間にわたる用量の持続の両方が増大し、投与3日後、可溶性薬物の1.5±0.7%と比較して、肺内でナノリポゲルの初期用量の9.0±0.8%(平均±標準偏差)が測定された。この薬物動態学的影響は、生存の増大および腫瘍数の有意な減少と相関する。肺浸潤性リンパ球の分析により、腫瘍内nLG−SB+IL−2処置を受けた皮下腫瘍で認められるように、活性化CD8
+(
図5a)およびNK(
図6a)エフェクター細胞の数の増加が腫瘍抑制および生存の増大を媒介することが証明された。これらのデータは、転移性黒色腫に対する有意な抗腫瘍応答を臨床的に関連する投与様式でのTGF−βインヒビター薬およびIL−2の持続的な組み合わせ送達によって実際に達成することができることを示す。
【0232】
実施例9:ナノリポゲルキャリアおよびカプセル材料の分布の比較
材料と方法
ナノリポゲルキャリアおよびカプセル化薬物ペイロードの両方の分布を、二重標識ナノリポゲルを使用して調査した。フルオレセイン標識ホスホエタノールアミンを、ローダミン負荷ナノリポゲルの脂質成分に組み込んだ。540/625nmおよび490/517nmでの蛍光分光分析により、スペクトルが重複しない用量依存性の蛍光が証明された。脂質ではなくローダミンが制御放出された。
【0233】
皮下B16腫瘍を保有するマウスに、二重標識NLGの単回IV(尾静脈)注射を行った。注射の1、2、3、および7日後に動物を屠殺し、均質化、抽出、およびローダミンおよびフルオレセイン−PEの定量のために組織を回収した。
【0234】
結果
血清の分析により、カプセル材料および送達ビヒクルの両方の循環の延長が示された。類似の生体内分布パターンが脂質と薬物ペイロードとの間に認められ、肺および肝臓内の薬物蓄積が最高であった。
【0235】
実施例10:核酸、タンパク質、および薬物の組み合わせ送達のための脂質カプセル化デンドリマー
デンドリマーをカプセル化したナノリポゲルは、細胞に挿入される薬物およびsiRNA/デンドリマー複合体をカプセル化したリポソームからなるメインシェルを含む。樹状ポリマー(デンドリマー)は、中心コアから出発するその反復分岐構造によって識別される単分散ポリマーのクラスである。デンドリマーの多岐にわたる合成に固有の分岐により、枝分かれの増大またはより高い世代(第6世代以上)のほぼ球状に近づけることができるポリマーの幾何学的な成長をもたらす。この枝分かれにより、種々の疎水性小分子(薬物など)の捕捉および核酸の複合体化に理想的に適合するコアが作製される。例えば、スーパーフェクト(登録商標)は、市販の活性化デンドリマートランスフェクション薬である。その狭い分子量分布および小型(10nm未満)と組み合わせて、デンドリマーは、多数の適用(薬物および遺伝子送達が含まれる)に利用されている。核酸と複合体化したデンドリマーを、in vivo投与の際に迅速にクリアランスすることができる。それ故、この複合体の防御的ターゲティングは、部位特異的送達のためのより魅力的な様式であろう。リポソーム処方物は、以下の2つの機能を果たす:1)siRNA複合体化リポソームの防御的カプセル化および2)親水性小分子薬(リボアブリンなど)またはタンパク質(IFNαなど)の送達の促進。内側デンドリマーコアのsiRNAとの複合体化:核酸を、一般に、ヒストン周囲の核酸の生理学的パッケージングに類似するポリプレックス形成においてカチオン性ポリマーによって安定化する。カチオン性ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー(第5世代(G5)、直径5.4nm)は、この目的を果たす。
【0236】
材料と方法
siRNA/デンドリマーポリプレックスを、1:1〜10:1のアミン−ホスファート(N/P)比でのG5 PAMAMおよびsiRNAの組み合わせによって形成する。最適なサイレンシングが得られる正確な比を、ストックsiRNAおよびPAMAMを異なるモル比にて軽くボルテックスしながら滅菌10mM HEPES緩衝液(pH7.2)中にて室温で30分間混合することによって決定することができる。この手順により、リポソーム中へのカプセル化に適切な+20以上の電荷(ゼータ電位)および有効直径10nmを有するsiRNA−デンドリマーポリプレックスが得られる。次に、ポリプレックスを、リポソーム粒子中に薬物(IFNαおよび/またはリバビリン)と同時カプセル化する。ジステアロイル−グリセロ−ホスホコリン(DSPC)、コレステロール、およびジステアロイルグリセロ−ホスホエタノールアミン(DSPE)から構成され、アミン末端化ポリエチレングリコール(PEG2000)スペーサー(DSPE−PEG2000−NH2)を有する脱水脂質フィルムを、65:30:5のモル比で最初に混合し、次いで、siRNA/デンドリマーポリプレックスおよび薬物の10mg/ml溶液を使用して超音波処理下で再水和する。溶液中の薬物のsiRNA/デンドリマーに対する比を、処方中に調整することができる。最適比を、in vitroおよびin vivoでの有効性(efficiacy)研究で決定する。内因性の「ビルトイン」脂質PEG化は、PEGを使用しない粒子と比較してより長い時間の循環を容易にする。PEG組み込みにより、in vivo循環中での長寿命を容易にする立体的水和バリアシールドが得られる(すなわち、細網内皮系およびマクロファージによる非特異的取り込みの回避)。
【0237】
脂質存在下での薬物およびsiRNA/デンドリマーポリプレックスの混合後、溶液を一連のフィルタを通して押し出す。最初に5μmフィルタに3回、1μmフィルタに3回、および200nmフィルタに5回押し出し、押し出し物を滅菌チューブに回収する。過剰なsiRNA複合体、薬物、および脂質を、超遠心機中24000rpmにて4℃で45分間スピンすること(3×)によって除去する。
【0238】
図7Aは、siRNA/デンドリマーポリプレックスと薬物の組み合わせをカプセル化し、外側シェルをターゲティング抗体または単鎖可変フラグメント(scFv)で共有結合的に修飾したLED調製の略図である。抗体またはscFvのアミン末端化リポソームへの結合を、エチルジカルボジイミドおよびN−ヒドロキシスクシンイミドの存在下での0.1 MES緩衝液(pH5.5)中で10分間のタンパク質の活性化およびその後の緩衝化食塩水(pH7.4)中への粒子の添加によって達成する。この反応は、粒子上の曝露されたアミン基への共有結合のためにタンパク質上のカルボキシラート基を活性化する(ref)。最初に、反応化学量論(reaction stoichemetry)を粒子あたりおよそ1〜10個のscFv分子の密度が得られるように調整するが、この密度を、最大内在化を容易にするために反応の化学量論を変化させることによって容易に増大させることができる。総反応時間は、室温で30分間である。これらの反応条件は、カプセル化した薬剤の完全性にも機能にも影響を及ぼさない。
【0239】
LEDを、異なるメタクリラート結合体化β−シクロデキストリン(CD)および窒素/リン(N/P)比を使用して機能的発現ベクター(pGFP)のBMDC細胞、HeLa細胞、293T細胞への送達能力について試験し、リポフェクタミン(登録商標)2000およびリポソームを使用してベクター送達と比較した。
【0240】
LEDを、機能的siRNAの送達能力についても試験した。Jurkat(ヒトT細胞株)を、CD4またはルシフェラーゼ(Luc)に対するsiRNAをカプセル化し、内在化を媒介するために抗CD7で表面官能化したLEDとインキュベートした。
【0241】
結果
LEDは、培養におけるマクロファージを使用した
図7Aに記載の薬物内在化を容易にすることができる。薬物メトトレキサート(MTX)を、モデル薬物として使用した。
図7Bは、LEDおよびモデル薬物メトトレキサート(MTX)をカプセル化したLEDの細胞傷害性を示す。バーは、(左1mg/mlから右10ug/ml)から開始されるLED、薬物、または組み合わせの連続希釈を示す。細胞死滅のポジティブコントロールとしてアジ化合物を使用する。10%から始まって、左から右に1%まで増大し、グラフは、遊離薬物(MTX)と比較して、MTX含有LEDはわずかに毒性が低いことを示し、これはおそらく薬物隔離に起因する。LEDのみでは細胞傷害性を示さない。
【0242】
色素ローダミンをカプセル化したLEDは色素の内在化および細胞質局在化を容易にし、pGFPプラスミドを含むLEDは標準的なトランスフェクション薬(リポフェクタミン(登録商標)など)と比較して増強されたマクロファージのトランスフェクション効率を示した。
【0243】
PAMAMデンドリマー上の末端アミン基がプロトンスポンジ効果によってエンドソームを緩衝化し、エンドソームを破壊するかどうかを決定するために、アクリジンオレンジ(そのスペクトル特性がエンドソームまたはサイトゾル内の位置に応じて変化する色素)アッセイを、未修飾第4世代PAMAMデンドリマー(G4)、またはイオノフォアであるカルボニルシアニド−p−トリフルオロメトキシフェニルヒドラゾン(FCCP)を使用するか使用しないで第一級アミンで置換し、遮蔽したシクロデキストリン分子(CD)に結合体化したデンドリマーで処理したBMDCと共に使用した。結果は、試験した組み合わせのうち、未修飾G4デンドリマーがエンドソーム破壊で最良であり、G4−3CDがそれに続いたことを示す(
図7C)。G4−6CDは、試験した組み合わせのうち、エンドソーム破壊に最も有効ではなかった。このことは、プロトンスポンジ効果が第一級アミンによって媒介され、アミンのCDとの置換によって緩衝能が減少するという考えを支持している。
【0244】
LEDを、異なるデンドリマー(G)−シクロデキストリン結合体(CD)および窒素/リン(N/P)比を使用しても試験し、リポフェクタミン(登録商標)2000およびリポソームを使用した種々の細胞型へのベクター送達(pGFP)と比較した。CDは、デンドリプレックス(dendriplex)に有意に影響を及ぼした(
図7D)。デンドリプレックス(修飾デンドリマー由来)は、リポフェクタミン2000よりもBMDCに良好にトランスフェクションする。LEDはまた、ベクターをカプセル化したリポソームよりもBMDCに良好にトランスフェクションした。
【0245】
CD4またはルシフェラーゼ(Luc)に対するsiRNAをカプセル化し、抗CD7で表面官能化したLEDを、Jurkat(ヒトT細胞株)細胞内で内在化標的mRNAノックダウンを媒介する能力について試験した。結果は、LED送達siRNAがコントロールと比較してCD4またはLucの表面発現を減少させることを示した(
図7E)。
【0246】
第2の実験では、GFP発現のノックダウンのために利用した200ugのデンドリマーおよび400pmol siGFP(Ctl=LFA:siGFP)を含むLEDは、安定にトランスフェクションされた細胞株である。安定な293T−eGFP細胞を、SFDMEM中にてデンドリマーで4時間処理し、その後にGFP発現を調べた。ほとんどのデンドリマー(G)−シクロデキストリン結合体(CD)組み合わせで処理した細胞は、mockおよびリポフェクタミン(登録商標):siGFPコントロールと比較してGFP発現がより大きく減少した(
図7F)。
【0247】
実施例11:脂質カプセル化デンドリマーでの抗原交差提示
材料と方法
マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)を、オボアルブミン(OVA)のみ、デンドリマーのみ、またはOVAおよびデンドリマー(LED)の両方をカプセル化したリポソームとインキュベートした。
【0248】
結果
細胞のコントロールおよび空のリポソームは、検出不可能なレベルの25.D16抗体染色を示し、MHCクラスI−SIINFEKL複合体に結合する。LEDを受容した細胞は、最高レベルの抗原交差提示を示した。*p<0.05(一元配置ANOVAボンフェローニ事後検定による)。(
図8Aを参照のこと)。
【0249】
実施例12:脂質カプセル化デンドリマーでのワクチン送達
材料と方法
抗原提示
1×10
5 BMDC/ウェル(96ウェルプレート)+25uLリポソーム粒子。粒子群:
a.−/−(粒子の外側に何もない、内側に何もない)
b.−/OVA(外側に何もない、OVAをカプセル化)
c.−/G5+OVA(外側に何もない、内側にOVAおよびG5デンドリマー)
d.−/G5+OVA+CpG
e.MPLA/−(外側にMPLA、内側に何もない)
f.MPLA/OVA
g.MPLA/OVA+G5
h.MPLA/OVA+G5+CpG(外側にMPLA;OVA、G5デンドリマー、CpGをカプセル化) 。
【0250】
ここで、OVA=オボアルブミン、MPLA=モノホスホリルリピドA、G5=第5世代デンドリマー、CpG=CpGオリゴヌクレオチド(TLR9リガンド)。
【0251】
処理をBMDCと24時間インキュベートし、その後にWT脾細胞と4日間同時インキュベートした。
【0252】
炎症促進性サイトカイン産生の分析
BMDCを、抗原をカプセル化したリポソームナノ粒子とインキュベートし、漸増量のTLRリガンドCpGで24時間表面官能化し、その後、ELISAによって上清を分析した。
【0253】
結果
細胞を、25.D16−PE(フローサイトメトリーによって抗原交差提示について評価したところ、マウスMHCクラスI−SIINFEKL複合体に特異的な抗体)で染色した。結果は、−/OVA粒子がある程度の交差提示を誘導し、この交差提示はデンドリマーを含むOVA粒子によって増大することを示した。MPLA、CpG、およびデンドリマーを組み合わせた粒子は、最大量の交差提示を誘導する(
図8Bを参照のこと)。
【0254】
CpGで表面官能化したリポソームナノ粒子は、炎症促進性サイトカインIL−6産生の用量依存性増大も誘導した(ブランク粒子、0.1μg CpG/mg粒子、0.25μg CpG/mg粒子、および0.5μg CpG/mg粒子と比較している
図8Cを参照のこと)。
【0255】
組成物ならびにその製造方法および使用方法の修正形態および変形形態は、前述の詳細な説明から当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。全文献は、具体的に援用される。