特許第6378204号(P6378204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6378204レンズ部材、レンズ部材の製造方法、通信モジュール、通信モジュールの製造方法、レンズアレイおよび光源モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378204
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】レンズ部材、レンズ部材の製造方法、通信モジュール、通信モジュールの製造方法、レンズアレイおよび光源モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20180813BHJP
   G02B 7/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   G02B3/00 Z
   G02B3/00 A
   G02B7/02 A
   G02B7/02 B
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-552553(P2015-552553)
(86)(22)【出願日】2014年12月12日
(86)【国際出願番号】JP2014083061
(87)【国際公開番号】WO2015088032
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2016年6月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-257233(P2013-257233)
(32)【優先日】2013年12月12日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】317015179
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(72)【発明者】
【氏名】篠原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 康一
(72)【発明者】
【氏名】鈴石 光信
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第9810865(US,B2)
【文献】 特開2013−080900(JP,A)
【文献】 特開平05−273447(JP,A)
【文献】 特開2004−103170(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/089815(WO,A1)
【文献】 特開2011−131511(JP,A)
【文献】 特開2005−070568(JP,A)
【文献】 特開2003−270497(JP,A)
【文献】 特開2001−074914(JP,A)
【文献】 特開2004−239970(JP,A)
【文献】 特開平11−054849(JP,A)
【文献】 特開昭57−90611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00−1/08、3/00−3/14
G02B 6/26−6/27、6/30−6/34、6/42−6/43
G02B 7/00−7/24
B29C 33/12
F21V 5/00
F21V 5/04
F21V 17/00
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に表面実装されるレンズ部材であって、
既に作製された状態の球状のガラスレンズと、樹脂材料が複数の平面に囲まれた多角形柱状でかつ前記ガラスレンズと一体に成形された状態の実装部とを備え、
前記ガラスレンズは、前記実装部に、当該実装部に周囲を囲まれかつ当該実装部内に少なくとも一部が埋まった状態で支持され、
前記実装部の前記平面の一つが、前記基板に表面実装される場合に実装面に当接する基準面として成形された状態の平面とされ、
前記実装部には、互いに平行な一対の外面が前記ガラスレンズの光軸に直交するように配置され、前記ガラスレンズの光軸方向に沿った厚さをD、前記実装部の前記ガラスレンズの光軸に直交する一対の前記外面間の光軸方向に沿った距離をTとした場合に、
0.2D≦T≦2.0D
となっていることを特徴とするレンズ部材。
【請求項2】
前記実装部が前記ガラスレンズの一部を含む多角形柱状に形成され、前記実装部の断面多角形状の外周面を構成する3つ以上の平面のうちの少なくとも1つの前記平面と前記ガラスレンズの表面とが近接することにより、前記実装部の肉厚が薄くなる部分に当該平面から前記ガラスレンズの表面に至る孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ部材。
【請求項3】
前記実装部の前記基準面と前記ガラスレンズの表面とが近接することにより、前記実装部の肉厚が薄くなる部分に前記基準面から前記ガラスレンズの表面に至る孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ部材。
【請求項4】
前記ガラスレンズの前記実装部内に配置される外表面と、前記実装部の複数の前記平面との間の最短距離が0.1mm以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレンズ部材。
【請求項5】
前記実装部が直方体状に形成されるとともに、互いに平行な一対の外面が前記ガラスレンズの光軸に直交するように配置され、前記ガラスレンズの光軸方向に沿った厚さをD、前記実装部の前記ガラスレンズの光軸に直交する一対の前記外面間の光軸方向に沿った距離をTとした場合に、Tの値がDの値以上となっていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ部材。
【請求項6】
前記ガラスレンズの光が入射する入射面と、前記ガラスレンズの光が出射する出射面が前記実装部から露出していることを特徴とする請求項1に記載のレンズ部材。
【請求項7】
前記基板の前記実装部が取り付けられる前記実装面に設けられた凹部または貫通孔に挿入されるように、前記実装部の前記基準面から前記ガラスレンズの一部が突出していることを特徴とする請求項6に記載のレンズ部材。
【請求項8】
前記実装部が直方体状に設けられ
前記実装部の6つの外面のうちの互いに平行な少なくとも2つの前記外面の内側に前記ガラスレンズの外面が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ部材。
【請求項9】
前記実装部の6つの前記外面の内側に前記ガラスレンズの前記外面が配置され、前記実装部の前記外面のうちの互いに平行な少なくとも2つの前記外面に、前記ガラスレンズの前記外面に至る孔が設けられていることにより、前記ガラスレンズの前記外面の少なくとも2箇所が前記実装部から露出していることを特徴とする請求項8に記載のレンズ部材。
【請求項10】
既に作製された状態の球状のガラスレンズと、樹脂材料が複数の平面に囲まれた多角形柱状でかつ前記ガラスレンズと一体に成形された状態の実装部とを備え、前記ガラスレンズは、前記実装部に、当該実装部に周囲を囲まれかつ当該実装部内に少なくとも一部が埋まった状態で支持され、前記実装部の前記平面の一つが、基板に表面実装される場合に実装面に当接する基準面として成形された状態の平面とされ、
前記実装部には、互いに平行な一対の外面が前記ガラスレンズの光軸に直交するように配置され、前記ガラスレンズの光軸方向に沿った厚さをD、前記実装部の前記ガラスレンズの光軸に直交する一対の前記外面間の光軸方向に沿った距離をTとした場合に、0.2D≦T≦2.0Dとなっているレンズ部材と、
前記レンズ部材が表面実装される前記基板と、
レーザ光源を有する発光素子部と、
光ファイバの端部が固定可能なファイバ固定部と、を備え、
前記実装部の前記基準面が前記基板の実装面に当接して表面実装され、
前記発光素子部の前記レーザ光源からの光線が前記レンズ部材の前記ガラスレンズを介して前記ファイバ固定部に固定されうる光ファイバに入射するように、前記発光素子部と前記ファイバ固定部が前記基板に配置されていることを特徴とする通信モジュール。
【請求項11】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載されたレンズ部材の製造に用いられるレンズ部材の製造方法において、
既に作製された前記ガラスレンズが配置された型内に、流動性を有する前記樹脂材料を前記型に流入させて固めることにより、前記ガラスレンズを表面実装する際に前記基板の前記実装面に取り付けられる前記基準面を有する前記実装部を設けることを特徴とするレンズ部材の製造方法。
【請求項12】
基板に表面実装されるレンズ部材であって、既に作製された状態の球状のガラスレンズと、樹脂材料が複数の平面に囲まれた多角形柱状でかつ前記ガラスレンズと一体に成形された状態の実装部とを備え、前記ガラスレンズは、前記実装部に、当該実装部に周囲を囲まれかつ当該実装部内に少なくとも一部が埋まった状態で支持され、前記実装部の前記平面の一つが、前記基板に表面実装される場合に実装面に当接する基準面として成形された状態の平面とされ、前記実装部には、互いに平行な一対の外面が前記ガラスレンズの光軸に直交するように配置され、前記ガラスレンズの光軸方向に沿った厚さをD、前記実装部の前記ガラスレンズの光軸に直交する一対の前記外面間の光軸方向に沿った距離をTとした場合に、0.2D≦T≦2.0Dとなっているレンズ部材の製造方法であって、
既に作製された前記ガラスレンズが配置された型内に、流動性を有する前記樹脂材料を前記型に流入させて固めることにより、前記実装部を形成することを特徴とするレンズ部材の製造方法。
【請求項13】
基板に表面実装されるレンズアレイであって、
既に作製された状態の複数のガラス製のボールレンズと、樹脂材料が複数の平面に囲まれた多角形柱状に成形された状態の実装部とを備え、
複数の前記ボールレンズは、前記実装部に、当該実装部に周囲を囲まれかつ当該実装部内に少なくとも一部が埋まった状態で支持され、
前記実装部の前記平面の一つが、前記基板に表面実装される場合に実装面に当接する基準面として成形された状態の平面とされ、
前記実装部には、互いに平行な一対の外面が前記ボールレンズの光軸に直交するように配置され、前記ボールレンズの光軸方向に沿った厚さをD、前記実装部の前記ボールレンズの光軸に直交する一対の前記外面間の光軸方向に沿った距離をTとした場合に、
0.2D≦T≦2.0D
となっていることを特徴とするレンズアレイ。
【請求項14】
請求項13に記載のレンズアレイと、前記レンズアレイを介して光を照射する複数の発光素子とを備えることを特徴とする光源モジュール。
【請求項15】
既に作製された状態の球状のガラスレンズが配置された型内に、流動性を有する樹脂材料を前記型に流入させて固めることにより、前記ガラスレンズが複数の平面に囲まれた多角形柱状でかつ前記ガラスレンズと一体に成形された実装部内に少なくとも一部が埋まった状態で支持され、前記実装部の前記複数の平面のうち互いに平行な一対の外面が前記ガラスレンズの光軸に直交するように配置され、前記ガラスレンズの光軸方向に沿った厚さをD、前記実装部の前記ガラスレンズの光軸に直交する一対の前記外面間の光軸方向に沿った距離をTとした場合に、0.2D≦T≦2.0Dとなっているレンズ部材を形成する工程と、
前記実装部の成形された前記平面の一つの面を基板に表面実装される場合の基準面として、前記基板の実装面に当接して表面実装する工程と
発光素子部のレーザ光源からの光線が前記レンズ部材の前記ガラスレンズを介してファイバ固定部に端部が固定されうる光ファイバに入射するように、前記発光素子部と前記ファイバ固定部を前記基板に配置する工程とを備えたことを特徴とする通信モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ部材、レンズ部材の製造方法、通信モジュール、レンズアレイおよび光源モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信用のレンズには、例えば、レーザダイオードと、光ファイバの端部が搭載された基板(例えば、シリコンベンチ)上に表面実装されて、レーザ−ダイオードから出力される光を光ファイバに集光するものなどが知られている。
【0003】
このようなレンズには、一般的に樹脂レンズではなく、ガラスレンズが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、ガラスレンズの外周形状が四角となるスクエアレンズを用いている。基板(例えば、シリコンベンチ等)上に表面実装する上では、レンズの外周に平面(基準面)があることが好ましい。すなわち、基板のレンズを搭載する搭載面(基板上の平面)に、レンズの外周の平面を当接させるように載置することにより、レンズを基板の搭載面に安定して配置することができる。また、レンズの光軸と平面との配置関係が決まっていて、平面が基準面となっていれば、搭載面に基準面を当接させるだけで、光軸の基板からの距離などが決まることになる。したがって、基板の搭載面にスクエアレンズを、例えば、紫外線硬化樹脂等を用いて容易に接着固定することができる。
【0004】
また、既に成形された上述のスクエアレンズ以外の非球面ガラスレンズに、ダイシング、ポリッシング等の後加工により基準面を設けることも行われている。
【0005】
また、研磨加工のボールレンズを用いる場合に、ステンレス材を切削加工することにより設けられた鏡筒や、ニッケル合金をプレス加工した缶等に当該ボールレンズを低融点ガラスで封止する方法が知られており、この場合に、これら鏡筒や缶を介してボールレンズを基板に実装することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−150265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のような光通信用装置では、コストダウンと、ダウンサイジングとが求められている。成形だけでガラススクエアレンズを製造する場合の方が、研磨を必要とするガラスレンズを製造する場合に比較して、基準面の作製まで含めて、コスト的に有利であるが、更なるコストの低減が求められている。
【0008】
ここで、ガラスボールレンズ用途のガラス材料には、高融点のものがあり、ガラス材料によっては、成形だけでガラスレンズとすることが困難であり、ガラスレンズとするのに研磨を必要とするものも多い。この研磨を必要とするガラスボールレンズの場合には、真球状に研磨するのに基準面があると邪魔になるので、上述のスクエアレンズのように成形時に基準面を設けることが困難であり、研磨されて製造されたガラスレンズに、上述のダイシングやポリッシング等の後加工により基準面を設けることになり、コストの低減が困難であった。現状では、成形ではなく、真球加工されたガラスボールを、光学部品であるガラスボールレンズとして、基板に表面実装することを意図した製品は市場にないが、暫定評価目的として、ガラスボール全体にARコート膜を成膜した製品が存在する。
【0009】
また、ダウンサイジングにおいては、上述の鏡筒や缶を用いるガラスボールレンズの場合に、鏡筒や缶がダウンサイジングの邪魔になり、小型化が困難である。現状でも、サイズ上の問題で鏡筒や缶にガラスボールレンズを取り付けたレンズ部材を用いることが困難な小型化された製品がある。
この場合に、鏡筒や缶を用いずに、基板に断面V字状のV溝を設けて、真球状の球面レンズ(ボールレンズ)を直接表面実装することも可能だが、ボールレンズのように完全回転対称形となっていると、基板に設置して固定されるまで、光学的指向性が定まらない状態となり、柔軟にボールレンズを利用する事が困難であった。
【0010】
例えば、上述のようにARコートをボールレンズの表面に施す場合に、ボールレンズの実際に光が入射される面と出射される面とが基板に実装するまで確定していないので、ボールレンズの全面にARコートを施す必要がある。この場合、ボールレンズを基板に実装するために、ボールレンズを取り扱う際に、全面に施されたARコートを避けて取り扱うことができないので、例えば、ARコートを傷つける虞がある。この場合に、ボールレンズの光の入射や出射に使われる部分にARコートの傷が配置されてしまうと、歩留まりの低下を招いたり、光学特性の劣化を招いたりする虞がある。なお、例えば、上述のガラススクエアレンズや、鏡筒や缶を用いる場合には、ARコートが必要とされる面が明らかであり、かつ、ガラスレンズを表面実装する前にARコートを施しても、その部分を避けてレンズを取り扱うことが可能である。
すなわち、ボールレンズを鏡筒や缶に封止しないで単体で用いることは、実装時のハンドリング、自動実装への対応、基板への接着時のハンドリング等の観点から実用的ではない。
【0011】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、既製のガラスレンズに、このガラスレンズを取り付けるための実装部(成形体)を付加したレンズ部材、レンズ部材の製造方法、通信モジュール、レンズアレイおよび光源モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明のレンズ部材は、既に作製されたガラスレンズと、当該ガラスレンズに当該ガラスレンズとは異なる材料からなり、前記ガラスレンズが配置された型内に流動可能な状態の前記材料を流入させて固めることにより設けられた実装部とを備え、前記実装部には、前記ガラスレンズを表面実装する場合に、実装面に当接する基準面が設けられていることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、ガラスレンズは、例えば、球面レンズや非球面レンズであっても、基本的にガラスレンズとして成形や研磨(真球加工を含む)等により製造され、ダイシングやポリッシング等の後加工を行わずに、ガラスレンズ単体として、できるだけコストがかからないように設計や製造されたレンズを用いることができる。
【0014】
また、実装部としては、例えば、金型(型)内に上述のガラスレンズを固定した状態で、樹脂を射出成形することにより製造されたものや、型内に上述のガラスレンズを固定した状態で、流動性のあるゾル化前またはゾル化後の材料を型内に流入させて、ゾル−ゲル法によりガラスやセラミックとして製造されるものが考えられる。これらの場合に、実装部は、ガラスレンズと異なる材料からなる。実装部は、レンズ部材使用時に、光が入射、および出射する部分を露出した状態で、ガラスレンズから外れない程度にガラスレンズを覆うように設けられる。例えば、ガラスレンズの一部が内部に含まれた状態の軸方向に短い柱状に設けられ、ほぼ柱状の実装部の外周面に平面状の基準面が設けられる。
【0015】
ゾルーゲル法では、型内に例えば溶液状または溶液からゾル化したゾル状の材料を注入した後に、材料が溶液状の場合には、材料をゾル化した後にゲル化させ、また、材料がゾル状の場合には、材料をゲル化させ、さらに比較的低温(例えば100度以下)での加熱によりゲルを乾燥させるものであってもよい。この場合も、例えば、ゾル−ゲル法で製造されたガラスやセラミックにより低コストに基準面を有する実装部をガラスレンズと一体に設けることが可能になる。
【0016】
本発明の前記構成において、前記ガラスレンズを光軸方向から見た場合に円形となっていることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、例えば、実装部をプレスモールディングで製造する場合、金型のキャビティ内に配置されたガラスレンズをキャビティ内で加圧して成形するので、回転対称で外形が円形状である方が、成形精度を向上することができる。ガラスレンズとしては、例えば、後述の球状のガラスレンズ(ボールレンズ)や、非球面レンズを用いることができる。球状レンズは、光軸をどこに設定しても、光軸方向から見た形状(外形)は円となる。非球面レンズは、光軸方向から見て外形が円形となるとは限らないが、円形とすることが好ましい。
【0018】
本発明の前記構成において、前記ガラスレンズが真球加工されたガラスボールからなるガラスボールレンズであることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、ガラスボールレンズの製造コストの低減を図ることができる。すなわち、真円度にもよるが、例えば、ベアリングのボール等を作製するための一般的な真球加工により、ガラスボールレンズを製造した場合に、ガラスボールレンズに係るコストを低減することができる。すなわち、真球加工が基本的に研磨加工であっても、一度に多くのガラスボールを加工可能であり、成形された非球面レンズなどをガラスレンズとして用いた場合より、レンズ部材の製造コストを低減することができる。
【0020】
また、本発明の前記構成において、前記実装部が前記ガラスレンズの一部を含む多角形柱状に形成され、前記実装部の断面多角形状の外周面を構成する3つ以上の平面のうちの少なくとも1つの前記平面と前記ガラスレンズの表面とが近接することにより、前記実装部の肉厚が薄くなる部分に当該平面から前記ガラスレンズの表面に至る孔が形成されていることが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、例えば、実装部を断面正方形状の四角筒状の部材とした場合に、断面の正方形の各辺の長さをガラスレンズの直径に近づけた場合に、実装部の外周の4つの外周面となる平面のそれぞれにガラスレンズの表面が近接して、実装部に肉厚が薄くなる部分が生じる。この部分の肉厚が薄くなりすぎると、強度が低下し、肉厚が薄くなった部分が、例えば、破れるように壊れて、ガラスレンズから剥がれてしまう虞がある。
【0022】
そこで、肉厚が薄くなった部分に孔を設けることで、肉厚が薄くなる部分が無い構成とすることにより、実装部が、肉厚が薄くなった部分で壊れるのを防止できる。なお、この孔は、後加工ではなく、実装部を作製する際に設けておくことが好ましく、例えば、上述の平面に対応する型の内面にガラスレンズの表面に至る凸部を設け、前記凸部を取り除いた際に、孔が設けられる構造であることが好ましい。
【0023】
また、上述の実装部の外周の平面の少なくとも1つは、基準面として、例えば、基板にレンズ部材を表面実装する際に基板の実装面に接着等により固定される部分である。この基準面に肉厚が薄く脆弱な部分があると、この部分を基板に接着した際にこの部分が壊れる虞があり、レンズ部材が基板から剥がれる原因になる虞がある。したがって、この部分が始めから無い構造とすることにより、レンズ部材が基板から脱落するのを抑制することができる。また、接着に際し、紫外線硬化樹脂を用いる場合に、孔内に紫外線効果樹脂を充填することで、樹脂量を増やして接着を強固にすることができる。また、この場合に、孔に充填された紫外線硬化樹脂が、基板の実装面と、ガラスレンズの表面との両方に接触した状態とすることで、基板とガラスレンズとを直接接着する構造とすることにより、接着をより強固なものにすることができる。
【0024】
また、本発明の前記構成において、前記実装部の前記基準面と前記ガラスレンズの表面とが近接することにより、前記実装部の肉厚が薄くなる部分に前記基準面から前記ガラスボールレンズの表面に至る孔が形成されていることが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、上述のように孔が形成される前記平面が前記基準面であった場合と同様に、基板の実装面に固定された基準面で実装部が壊れて、レンズ部材が基板から脱落するのを防止することができる。また、孔に接着剤を注入することで、使用する接着剤の量を多くして、接着を強固にできるとともに、孔内の接着剤により、ガラスレンズと、基板とを直接接着することが可能になる。なお、接着剤を紫外線硬化樹脂とした場合に、例えば、実装部のガラスレンズを介して対向する位置にある面にもガラスレンズに至る孔を設け、ガラスレンズを介して基準面の孔内の紫外線硬化樹脂に紫外線を当てられる構成となっていることが好ましい。
【0026】
また、本発明の前記構成において、前記ガラスレンズの前記実装部内に配置される外面と、前記実装部の外面との間の最短距離が0.1mm以上であることが好ましい。
【0027】
このような構成によれば、実装部の肉厚(ガラスレンズ外面と実装部外面との最短距離)の最も薄い部分を0.1mm以上とすることにより、十分な強度を得ることができる。なお、上述のように実装部のガラスレンズとの間で肉厚が薄くなる部分に上述のように孔を設けることにより、肉厚が0.1mmより薄い部分がなくなるようにしてもよい。
【0028】
また、本発明の前記構成において、前記実装部が直方体状に形成されるとともに、互いに平行な一対の外面が前記ガラスレンズの光軸に直交するように配置され、前記ガラスレンズの光軸方向に沿った厚さをD、前記実装部の前記ガラスレンズの光軸に直交する一対の前記外面間の光軸方向に沿った距離をTとした場合に、Tの値がDの値以上となっていることが好ましい。
【0029】
このような構成によれば、ガラスレンズが実装部に略覆われた構造とすることができ、例えば、余計な外光の入射を実装部により効果的に抑止することができ、迷光対策として有効である。なお、ガラスレンズの光の入射面と出射面とは、実装部に上述のように孔を設けて露出させることが好ましい。なお、ガラスレンズを球状とした場合に、実装部にガラスレンズが保持された状態でガラスレンズの光軸方向が決まることになるが、ここでは、上述の一対の外面に直交する方向が球状のガラスレンズの光軸方向となる。
【0030】
また、本発明の前記構成において、前記実装部が直方体状に形成されるとともに、互いに平行な一対の外面が前記ガラスレンズの光軸に直交するように配置され、前記ガラスレンズの光軸方向に沿った厚さをD、前記実装部の前記ガラスレンズの光軸に直交する一対の前記外面間の光軸方向に沿った距離をTとした場合に、
0.2D≦T≦2.0D
となっていることが好ましい。
【0031】
このような構成によれば、実装部の光軸に直交する一対の外面間の距離Tを、ガラスレンズの光軸方向に沿った厚さDの0.2倍以上とすることにより、安定的に基板に配置可能となる。例えば、レンズ部材を基板に実装する場合に、レンズ部材が基板に接着される前に倒れづらい構造とすることができる。また、距離Tを厚さDの2倍以下とすることにより、取扱い易い構造とすることができる。実装部が光軸方向に長すぎると、例えば、レンズ部材を後述の通信モジュールに利用する場合に、実装部が発光素子としての半導体レーザと近接したり、光通信ケーブルの端面に近接したりして、作業性が悪くなる可能性がある。
【0032】
これら本発明のレンズ部材の製造に用いられるレンズ部材の製造方法において、既に作成された前記ガラスレンズが配置された型内に、前記ガラスレンズと異なる材料からなり、かつ、流動性を有する材料を流入させて固めることにより、前記ガラスレンズを表面実装する際に実装面に当接する基準面を有する実装部を設けることを特徴とする。
【0033】
このような構成によれば、上述のような作用効果を有するレンズ部材を製造することができる。
【0034】
また、本発明のレンズ部材は、ガラスレンズと、前記ガラスレンズの少なくとも一部が内部に収容された状態で成形され、前記ガラスレンズを支持する成形体(実装部)とを備え、
前記ガラスレンズの光が入射する入射面と、前記ガラスレンズの光が出射する出射面が前記成形体から露出していることを特徴とする。
【0035】
このような構成によれば、ガラスレンズが成形体に支持されているので、ガラスレンズに当該ガラスレンズの設置のための加工を施すことなく、ガラスレンズを支持する成形体を成形して、この成形体を介してガラスレンズをその設置位置に容易に設置することができる。
【0036】
また、本発明のレンズ部材は、ガラスレンズと、前記ガラスレンズの少なくとも一部が内部に収容された状態で成形され、前記ガラスレンズを支持する成形体とを備え、
前記成形体には、当該成形体を他の部材に取り付ける取付面が設けられ、
前記ガラスレンズの光が入射する入射面と、前記ガラスレンズの光が出射する出射面が前記成形体から露出していることを特徴とする。
【0037】
このような構成によれば、ガラスレンズが成形体に支持されているので、ガラスレンズに当該ガラスレンズの設置のための加工を施すことなく、ガラスレンズを支持するとともに、ガラスレンズを他の部材に取り付けるための取付面を有する成形体を成形して、この成形体を介してガラスレンズを他の部材に容易に取り付けることができる。また、成形体の寸法は、ガラスレンズの径と略同レベルとすることが可能であり、レンズ部材が使われる装置の小型化に寄与することができる。
【0038】
本発明の前記構成において前記他の部材の前記成形体が取り付けられる被取付面に設けられた凹部または貫通孔に挿入されるように、前記成形体の前記取付面から前記ガラスレンズの一部が突出していることが好ましい。
【0039】
このような構成によれば、他の部材の被取付面からガラスレンズの光軸までの距離をガラスレンズの半径より短くすることができる。取付面上に成形体を介してガラスレンズを他の部材に取り付けた場合には、被取付面からガラスレンズの光軸までの距離が、ガラスレンズの半径より長くなってしまうが、取付面から突出したガラスレンズの一部を被取付面の凹部や貫通孔に挿入した状態とすることで、被取付面から光軸までの距離をガラスレンズの半径より短くすることができ、レンズ部材を用いた装置の小型化を図ることができる。
【0040】
本発明のレンズ部材は、ガラスレンズと、前記ガラスレンズの少なくとも一部が内部に収容された状態で成形され、前記ガラスレンズを支持する成形体とを備え、
前記成形体には、当該成形体を他の部材に取り付ける取付面が設けられ、
前記成形体が直方体状に設けられるとともに、前記ガラスレンズが球状に設けられ、
前記成形体の6つの外面のうちの互いに平行な少なくとも2つの前記外面の内側に前記ガラスレンズの外面が配置されていることを特徴とする。
【0041】
このような構成によれば、球状のガラスレンズが直方体状の成形体に支持された状態となる。また、成形体の6つの外面のうちの少なくとも互いに平行な2つの外面の内側にガラスレンズの外面が配置される。この場合に、6つの外面のうち、ガラスレンズの外面が内側に配置される2つの外面を除いた残りの外面のうちの互いに平行な2つの外面では、例えば、ガラスレンズの外面が外側に配置されるようにしてもよい。すなわち、互いに平行な一対の外面からそれぞれからガラスレンズが突出した状態としてもよい。この場合には、ガラスレンズの成形体から突出する2つの部分を光の入射面と光の出射面とすることができる。この場合に、ガラスレンズが露出する2つの外面間の距離は、ガラスレンズの直径より短くなり、レンズ部材のさらなる小型化を図ることができる。
【0042】
本発明の前記構成において、前記成形体の互いに方向が異なる各辺の長さが前記ガラスレンズの直径より長くされ、
前記ガラスレンズの外面が前記成形体の6つの外面より内側に配置され、
前記成形体の互いに平行な少なくとも一対の前記外面に、前記ガラスレンズの前記外面に至る孔が設けられることにより、前記ガラスレンズの外面の少なくとも2箇所が前記成形体から露出していることが好ましい。
【0043】
このような構成によれば、ガラスレンズを成形体の6つの外面の内側に配置しても、ガラスレンズの入射面および出射面となる部分を成形体から露出させることができる。また、成形体の角部は、ガラスレンズの外面からある程度の距離を確保でき、成形体の強度を高めることができる。
【0044】
また、本発明の通信モジュールは、上述のレンズ部材と、発光素子と、これらレンズ部材および発光素子が実装される基板とを備え、前記発光素子の光を、前記レンズ部材を介して光通信ケーブルに入射することを特徴とする。
【0045】
このような構成によれば、上述のようなレンズ部材を用いて発光素子の光を光通信ケーブルの端面に集光して、光通信ケーブルに入射させることができるので、光通信モジュールの小型化や組立性の向上やコストダウンに寄与することができる。
なお、発光素子は、例えば、発光ダイオードや半導体レーザである。また、光通信ケーブルは、例えば、光ファイバを用いたものである。
【0046】
また、本発明のレンズアレイは、複数の球状のガラスレンズと、複数の前記ガラスレンズを所定の配列で並べた状態で、かつ、各ガラスレンそれぞれの少なくとも一部が内部に収容された状態で成形され、複数の前記ガラスレンズを支持する成形体とを備えることを特徴とする。
【0047】
このような構成によれば、レンズアレイは、基本的に複数のガラスレンズを成形体で支持するようにしたものであり、1つのガラスレンズを成形体で支持する場合と同様の作用効果を得ることができる。なお、成形体として例えば透明樹脂を用いることで、ガラスレンズへの光の入射またはガラスレンズからの光の出射を、成形体を介して行うものとしてもよく、例えば、各レンズの一個所だけが成形体から露出する構造であってもよい。例えば、板状のガラスに凸面を並べたレンズアレイと略同様の形状で略同様の機能を有するものとすることが可能であり、このようなレンズアレイに対してコストダウンを図ることができる。すなわち、板状のレンズアレイをガラスで成形したり、研磨したりする場合よりも、複数のガラスレンズを成形体で支持するようにしたレンズアレイの方が低コストに製造することができる。
【0048】
また、本発明の光源モジュールは、上述のレンズアレイと、前記レンズアレイを介して光を照射する複数の発光素子とを備えることを特徴とする。
【0049】
このような構成によれば、例えば、ガラスレンズが縦横に並べて配列されたレンズアレイの成形体に発光素子を備える例えば光源装置を取り付けることにより、レンズアレイを介して発光素子の光を照射することができる。この場合にも上述のように例えば板状のガラスに凸面を並べたレンズアレイに対して、コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、基板に表面実装する際に、実装面に当接する基準面を有するレンズ部材において、型内に既に作製されたガラスレンズを配置するとともに、ガラスレンズと異なる材料を型内で固めることで、基準面(取付面)を有する実装部(成形体)を前記ガラスレンズに固定された状態に設けることができ、基準面を有するガラス部材の低コスト化と小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の第1の実施の形態のレンズ部材を示す正面図である。
図2】同、レンズ部材を示す側面図である。
図3】同、レンズ部材を成形するための金型の概略を示す要部断面図である。
図4】同、可動金型を取り除いた状態の金型の概略を示す要部平面図である。
図5】同、金型を開いた状態の概略を示す要部断面図である。
図6】同、可動金型を取り除いた状態で、かつ開いた状態の金型の概略を示す要部平面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態のレンズ部材を示す図であって、(a)が底面図であり、(b)が平面図であり、(c)が側面図であり、(d)が正面図(背面図)である。
図8】同、レンズ部材の孔1aが形成されていない変形例を示す側面図である。
図9】同、基板に実装されたレンズ部材を示す側面図である。
図10】本発明の第3の実施の形態のレンズ部材を示す側面図である。
図11】本発明の第4の実施の形態のレンズ部材を示す側面図である。
図12】本発明の第5の実施の形態のレンズ部材を示す側面図である。
図13】本発明の第6の実施の形態のレンズ部材を示す正面図(背面図)である。
図14】同、レンズ部材を示す側面図である。
図15】同、実装部が二分された変形例を示す側面図である。
図16】同、実装部が二分された変形例を示す正面図である。
図17】本発明の第7の実施の形態のレンズ部材を説明するための図である。
図18】本発明の第8の実施の形態の通信モジュールを示す概略図である。
図19】本発明の第9の実施の形態のレンズアレイを示す図であって、(a)が側面図であり、(b)が正面図(背面図)である。
図20】同、変形例となるレンズアレイを示す概略図である。
図21】同、別の変形例となるレンズアレイを示す概略図である。
図22】本発明の第10の実施の形態の光源モジュールを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1および図2に示すように、レンズ部材1は、真球加工されたガラス製のボールレンズ(ガラスボールレンズ)2と、このボールレンズ2の一部が内部に入り込んだ状態で成形された樹脂製の実装部(成形体)13とを備える。
【0053】
ボールレンズ2は、例えば、ベアリングのボールなどと同様に周知の真球加工により、所定の真球度となるように加工されたものである。このような真球加工したガラスボールとしての既成品をボールレンズ2としてもよいし、指定した硝材からなるレンズ用ガラスを真球加工してボールレンズを製作するものとしてもよい。
【0054】
また、ガラス製のボールレンズ2の真球度、硝材の種類、直径等は、任意に選択可能であり、レンズ部材1の用途、要求される光学性能、レンズ部材1を用いる製品のサイズ、コスト等に基づいて決定される。また、使用可能な硝材は、特に限定されず、各種硝材を使用可能である。このようなボールレンズ2は、光軸方向(ボールレンズ2の中心を通る直径方向)から見て円形である。
【0055】
レンズ部材1の実装部13は、基本的に直方体であり、ここでは、断面正方形の直方体である。言い方を変えれば、実装部13は、断面正方形の軸方向に短い柱状であり、内部にボールレンズ2を略含むものである。実装部13を、断面正方形の角柱状の部材として見た場合に、4つの外周面が同じ形状の長方形となり、これら4面に対して残りの2面が正面と背面となる。なお、正面を光が入射する面とし、背面を光が出射する面としてもよい。
【0056】
この実装部13を基板の実装面に実装する場合に、上述の外周の4つの面のうちの1つが底面となる基準面(取付面)3であり、その左右に基準面3に対して直角に配置される面が左右の側面5であり、残りの基準面3に平行な面が天面4となる。
【0057】
また、この実施の形態では、実装部13は、断面正方形の直方体であり、その中心にボールレンズ2の中心が配置されているので、柱の軸回りに回転させた際に4回対称の立体であり、4つの面(3、4、5)のいずれを基準面(底面:取付面)としてもよいし、いずれを天面としても側面としてもよい。
【0058】
また、実装部13の基準面3、天面4、左右の側面5のいずれにも、長方形の面の中心を中心とする略円柱状の孔1aが形成されている。
【0059】
また、実装部13の軸方向(正面6の中央から背面7の中央を通る軸)の長さが、ボールレンズ2の直径より少し長くなっており、レンズ部材1を側面5側から見た場合に、その前後方向(正面6から背面7に至る方向)の長さが、その上下方向の(基準面(底面)3から天面4に至る方向)長さより短いが、前後方向の長さは、ボールレンズ2の直径より少し長くなっている。
【0060】
実装部13の上述の軸方向と平行で、ボールレンズ2の中心を通る線が光軸となる。ボールレンズ2の光軸は、基本的にボールレンズ2の中心を通るものであるが、実装部13にボールレンズ2が支持された状態で上述の実装部13の軸方向に沿う光軸が定まることになる。また、図3に示すように、直方体状の実装部13の互いに平行な一対の外面としての正面6と背面7がボールレンズ2の光軸に直交するように配置される。ここで、ボールレンズ2の光軸方向に沿った厚さをD、実装部13のボールレンズ2の光軸に直交する一対の前記外面(正面6および背面7)の間の光軸方向に沿った距離(実装部13の光軸方向に沿った長さ)をTとした場合に、Tの値がDの値以上となっている。すなわち、
1.0D≦T
となっている。
【0061】
この場合に、ボールレンズ2は、上述のように基本的に実装部13に略覆われた状態となり、ボールレンズ2が外光の影響を受け辛いものとなっている。これにおり迷光を抑制することができる。また、実装部13は、ボールレンズ2を支持してボールレンズ2を例えば基板に取り付けるためのものであるが、ボールレンズ2より長すぎると、基板上の他の部材との間隔が狭くなり、取扱いが難しくなるので、T≦2.0Dとなっていることが好ましい、また、実装部13のボールレンズ2の光の出射側となる背面7(正面8)はボールレンズ2の焦点よりボールレンズ2に近い側にあることが好ましい。
【0062】
実装部13内にボールレンズ2が完全に埋まった状態とする。すなわち、ボールレンズ2の外面は、直方体状の実装部13の6つの外面の内側に配置されることになる。実装部13には、上述の孔1aに加えて、レンズ部材1の正面6と背面7とには、それぞれ、ボールレンズ2の光が入射する面と、光が出射する面とを露出させるための孔6aおよび孔7aが設けられている。
すなわち、実装部13の外面のうちの互いに平行な少なくとも2つの外面(正面6と背面7)に、ボールレンズ2の外面に至る孔が設けられていることにより、ボールレンズ2の外面の少なくとも2箇所が実装部13から露出している。
【0063】
00
孔6aはレンズ部材1の実装部13の正面6からボールレンズ2の表面(外面)に至るように設けられ、孔7aはレンズ部材1の実装部13の背面7からボールレンズ2の表面に至るように設けられている。これら孔6a、7aの直径は、上述の孔1aより大きいが、ボールレンズ2の直径よりは小さい。また、孔6aの中心と、孔7aの中心を結ぶ線分がボールレンズ2の中心を通るように配置されている。
【0064】
本実施の形態において、実装部13の正面と背面とは同じ形状となっており、どちらを正面または背面としてもよく、これら正面および背面から露出するボールレンズ2の二つの球面のうちのどちらを入射面としても出射面としてもよい。
【0065】
実装部13の孔6aおよび孔7aで露出するボールレンズ2の表面(球面)には、ARコート膜が成膜されている。なお、実装部13の中心と、ボールレンズ2の中心は、必ずしも一致する必要はなく、ずれていても良いが、基準面3とボールレンズ2の光軸との距離は、設定された距離となっている必要がある。また、実装部13を構成する合成樹脂は、特に限定されるものではなく、周知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を用いることができる。また、レンズ部材1が表面実装される基板を有する製品の製造において、半田のリフロー工程がある場合に、実装部13の樹脂は、リフロー工程時の温度に耐える耐熱性を有する樹脂である必要がある。また、樹脂の色も、透明やその他の色であってもよいが、例えば、黒であってもよい。
【0066】
このようなレンズ部材1によれば、実装部13をガラス製のボールレンズ2と異なる材料でボールレンズ2が配置された型内で容易に製造することができる。また、実装部13には、基板(他の部材)の実装面(被取付面)に当接させてレンズ部材1を載置可能とする基準面3があるので、例えば、自動表面実装装置にセットされた基板に接着剤が塗布されたレンズ部材1を自動で表面実装することができる。ボールレンズ2単体のように転がるようなことがなく、V溝を実装面に設けなくとも、レンズ部材1を基板に表面実装することができる。
【0067】
また、ボールレンズ2は、必ずしもガラスレンズとして研磨する必要はなく、ベアリングのボールと同様の真球加工等により、多数のボールを一度に加工可能な方法を用いるので、低コストでガラス製の真球度の高いボールを用いることができる。この場合に、ボールレンズ2一つ一つのコストは、レンズを成形により形成する場合や、1つずつ研磨する場合に比較して低いものとなる。したがって、ボールレンズ2を製造した後に実装部13の成形が必要であっても、基板に表面実装するレンズのコストダウンを図ることができる。
【0068】
また、実装部13は、ボールレンズ2が完全に埋め込まれるように、前後方向、左右方向、上下方向とも、ボールレンズ2の直径より少しだけ長くなるが、上述の鏡筒や缶にボールレンズを取り付けたものよりもかなり小型にすることが可能である。
【0069】
また、レンズ部材1の小型化を図る際に、上述の実装部13の断面の正方形の一辺の長さがボールレンズ2の直径に近づくことになるが、この際に、実装部13の外周の各面(3、4、5)と、ボールレンズ2との間の距離が短くなり、実装部13の各面(3、4、5)と、ボールレンズ2とが最も近づく部分で、実装部13を構成する樹脂の厚みが薄くなってしまい、必要十分な強度が保てずに、脆弱な状態となる虞がある。例えば、強度的には、実装部13において、ボールレンズ2の実装部13内に配置される外面と、実装部13の外面との間の最短距離(最も薄い肉厚)が0.1mm以上であることが好ましい。
そこで、レンズ部材1の小型化を進める上では、各面(3、4、5)のボールレンズ2に近接する部分に、孔1aを設けることにより、脆弱になる虞のある部分を取り除くことが好ましい。例えば、上述の最短距離としての実装部13の肉厚が0.1mmより薄くなる部分に孔1aが設けられる構造とすることで、肉厚が0.1mmより薄くならないようにできる。
【0070】
これにより、レンズ部材1の小型化を図っても、実装部13の薄くなった部分が壊れるのを防止できる。これにより、レンズ部材1の更なる小型化を図ることが可能になる。
また、実装面に当接する基準面3に孔1aを設けた場合に、この孔1aに例えば接着剤として紫外線硬化樹脂を充填するようにすれば、紫外線硬化樹脂により、孔1aを介して直接基板とボールレンズ2とを接着することが可能になり、接着強度の向上を図ることができる。また、この際には、孔1a内に接着剤を充填することにより、接着剤の種類にもよるが、接着剤の量を増やして接着強度を高めることができる。
【0071】
また、接着剤が紫外線硬化樹脂の場合に、基準面3とともに天面4にも孔1aを形成することで、天面4の孔1aから基準面3の孔1aにボールレンズ2を介して紫外線を照射することが可能になり、レンズ部材1の基板への接着が容易になる。
【0072】
なお、実装部13の断面形状は、正方形に限られるものではなく、例えば、実装面からの天面4までの距離を短くするために、左右の側面5間の距離より天面4と基準面3との距離を短くしたり、左右幅を狭くするために、左右の側面5間の距離を天面4と基準面3との距離より短くしたりしてもよい。この場合に、各面(3、4、5)のうちの長い方の面だけに孔1aを設けるものとしてもよい。
【0073】
次に、本発明のレンズ部材1の製造方法を説明する。レンズ部材1の製造は、ボールレンズ2として、周知の真球加工により製造されたガラス製のボールであるガラスボールが用いられる。このガラスボールの外側に樹脂製の実装部13を樹脂成形により製造する。樹脂成形としては、例えば、射出成形が用いられる。この際の射出成形においては、図3図6に概略を示す金型が用いられる。
【0074】
金型は、樹脂が充填されて成形される空間としてキャビティ22を構成するようになっており、一対の金型(固定金型26.可動金型27)と、その間に配置されるスライドコア21とを備える。なお、スライドコア21は、固定金型26に対して、一方向に往復移動するように設けられているが、可動金型27に往復移動自在に設けてもよい。
【0075】
また、キャビティ22は、キャビティ22に樹脂を充填するランナ24がゲートを介して接続されている。ランナ24は、例えば、スライドコア21に設けられており、キャビティ22の外周の4つの角部のうちの1つの角部に接続されている。成形後にランナ24で成形されたランナ部24aは、ゲートで成形性された部分を含めて、キャビティ22に対応する実装部13の角部で切断される。例えば、本実施の形態では、図1に示す切断面25の位置でゲートにより成形された樹脂が切断される。この際に、ゲート痕(切断痕)が実装部13の上述の4つの面(3.4.5)からなる外周面より外側に出ないようになっている。
【0076】
また、固定金型26には、ボールレンズ2に対応する球面を備えたボール受部23が設けられ、このボール受部23の球面上にボールレンズ2が載置される。ボールレンズ2とボール受部23とは、球面で面接触し、ボール受部23とボールレンズ2との間にキャビティ22に充填された樹脂が入り込まないようになっている。このボール受部23は、固定金型26のキャビティ22の底面を構成する部分から突出して形成されており、このボール受部23により、レンズ部材1の実装部13の正面(または背面)の孔6a(孔7a)を成形するようになっている。
【0077】
また、スライドコア21は、上述の実装部13の4つの面(3、4、5)に対応して、4つ備えられ、それぞれ90度ずつ異なる4つの方向に沿って往復動自在となっている。また、スライドコア21の先端には、キャビティ22の周囲の4つの壁面のうちの1つずつを構成する先端面32を有するとともに、先端面32には、実装部13の外周の各面(3、4、5)の孔1aを形成するための円柱凸部29が設けられている。また、4つのスライドコア21は、それぞれの先端面32を近づけてこれら先端面32によりキャビティ22の4つの外面を構成するように最も前進させた閉じた位置と、樹脂成形後に実装部13が成形されたレンズ部材1を離型して取り出す際に、成形された実装部13の孔1aから円柱凸部29が完全に抜けた状態となるまで、4つのスライドコア21が後退することになる。
【0078】
可動金型27は、スライドコア21の部分を除いて、固定金型26と、面対称となる同様の形状を有するもので、ボール受部23を上下逆さにした形状のボール被覆部28を備える。ボール被覆部28は、ボール受部23と同様にボールレンズ2に対応する球面を備え、この球面が可動金型27を閉じた状態で、ボールレンズ2の球面に面接触するようになっており、ボール被覆部28とボールレンズ2との間にキャビティ22に充填された樹脂が入り込まないようになっている。このボール被覆部28は、固定金型26のキャビティ22の底面を構成する部分から突出して形成されており、このボール被覆部28により、レンズ部材1の実装部13の正面(または背面)の孔6a(孔7a)を成形するようになっている。
【0079】
このような金型による成形においては、まず、図5図6に示すように、各スライドコア21を矢印に沿って後退させるとともに、可動金型27を矢印に沿って上昇させて、ボール受部23の球面上にボールレンズ2を載せる。次に、スライドコア21を前進させて、図3および図4に示すように、キャビティ22の周囲をスライドコア21の4つの先端面32で囲んだ状態とするとともに、スライドコア21の円柱凸部29の先端面をボール受部23に保持されたボールレンズ2に当接させる。
【0080】
また、この際に可動金型27を降下させて固定金型26に近づける。この際に、キャビティ22の上側が可動金型27により閉じられるとともに、ボールレンズ2にボール被覆部28が被せられた状態となる。これにより、ボールレンズ2の光が入射または出射する面がボール受部23の球面と、ボール被覆部28の球面とにより覆われ、流動可能な状態の樹脂に接触しないようになっている。同様に、スライドコア21の円柱凸部29とボールレンズ2との接触面にも流動性を有する樹脂が入り込まないようになっている。
【0081】
固定金型26、可動金型27および4つのスライドコア21を閉じた状態で、樹脂をランナ24からゲートを介してキャビティ22に充填する。
これにより、ボールレンズ2の周囲に直方体状の実装部13が成形される。
【0082】
次に、上述の場合と逆に、可動金型27を上昇させるとともに、スライドコア21を後退させて、実装部13が成形されたレンズ部材1を取り出すことになる。
このようなレンズ部材1の製造方法によれは、ガラスレンズとして比較的安価な真球加工により製造されたボールレンズ2を用い、その周囲に樹脂成形で基準面3を有する実装部13を成形するだけなので、比較的安価に製造できる。すなわち、従来のガラス製の成形レンズであるスクエアレンズや、ボールレンズを筐体や缶に封止したレンズ部材よりコストを低減できる。また、実装部13は、ボールレンズ2の直径に近いサイズまで小型化可能であり、例えば、光通信用のデバイスの小型化要求に答えることができる。例えば、実装部13の断面の正方形の各辺の長さを、例えば、1mm、2mm、3mm等に設定することができる。なお、この際に実装部13のサイズに対応してボールレンズ2の直径が設定されることになる。なお、実装部13のサイズは、上述のものに限定されるものではなく、1mm以下であっても、3mm以上であってもよい。
【0083】
次に、第2の実施の形態のレンズ部材101について説明する。
なお、以下の各実施の形態において、各レンズ部材101、41、51、62、71、81は、第1の実施の形態のレンズ部材1と同様にボールレンズ2(または、後述の非球面レンズ72等)と樹脂製の実装部113、49、59、69、79、89とからなるもので、ボールレンズ2は、第1の実施の形態と同様であり、実装部113、49、59、69、79、89の形状が第1の実施の形態と異なるものとなっている。以下の説明では、第1の実施の形態と異なる部分を説明し、第1の実施の形態と同様の構成の説明を省略するか簡略化する。
【0084】
図7に示すように、レンズ部材101の実装部113は、第1の実施の形態と同様に基本的に直方体であり、ここでは、断面正方形の軸方向に短い四角柱である。
この実装部113を基板109(図9に図示)の実装面108(被取付面:図9に図示)に実装する場合に、上述の外周の4つの面のうちの1つが底面となる基準面103であり、その左右に基準面103に対して直角に配置される面が左右の側面105であり、残りの基準面103に平行な面が天面104となる。
【0085】
なお、図7において(a)が底面図、(b)が平面図、(c)が側面図、(d)が正面図(または背面図)である。
また、この実施の形態では、実装部113は、その中心にボールレンズ2の中心が配置されているので、断面正方形の四角柱の軸回りに回転させた際に4回対称の立体であり、4つの面(103、1044、105)のいずれを基準面(底面)としてもよいし、いずれを天面としても側面としてもよい。
【0086】
また、第1の実施の形態と同様に実装部113の基準面103、天面104、左右の側面105のいずれにも、長方形の面の中心を中心とする略円柱状の孔101aが形成されている。なお、図8に示すように、孔101aを基準面103、天面104、左右の側面105に設けないものとしてよい。また、孔101aを基準面103だけに設けるものとしての良いし、基準面103と天面104とだけに設けるものとしてもよいし、左右の側面105だけに設けるものとしてもよいが、少なくとも基準面103に設けること、または、基準面103と天面104とに設けることが好ましい。
【0087】
また、実装部113の軸方向の長さが、ボールレンズ2の直径より短くなっており、例えば、ボールレンズ2の半径程度か、半径より短くなっている。したがって、実装部113の中心にボールレンズ2の中心を配置した場合に、実装部113の正面106および背面107からボールレンズ2が露出した状態となっている。この実装部113から突出して露出するボールレンズ2の球面が光の入射面または出射面になる。
【0088】
したがって、実装部113の6つの外面(正面106、背面107、基準面103、天面104、左右の側面105)のうちの互いに平行な少なくとも2つ、ここでは4つの外面の内側にボールレンズ2の外面が配置されていることになるが、残りの外面である正面106および背面107に対しては、ボールレンズ2の外面が外側に突出して配置されることになる。なお、ボールレンズ2の光軸方向に沿った実装部113の長さ、すなわち、正面106と背面107との距離は、ボールレンズ2の光軸方向に沿った長さ、すなわち、直径より短いことになる。ここで、ボールレンズ2の光軸方向に沿った厚さをD、実装部113のボールレンズ2の光軸に直交する一対の外面としての正面106と背面107との光軸方向に沿った距離をTとした場合に、
0.2D≦T
となっていることが好ましい。すなわち、ボールレンズ2の直径Dに対して、距離Tが短すぎると、レンズ部材101を実装する際にレンズ部材101が不安定となって、レンズ部材101が倒れる可能性が高くなるので、実装部113の光軸方向に沿った長さは、ボールレンズ2の直径の0.2倍より長いことが好ましい。
【0089】
本実施の形態において、実装部113の正面106と背面107とは同じ形状となっており、どちらを正面106または背面107としてもよく、これら正面106および背面107から露出するボールレンズ2の二つの球面のうちのどちらを入射面としても出射面としてもよい。実装部113から露出するボールレンズ2の表面(球面)には、ARコート膜が成膜されている。
【0090】
図9に示すように、このようなレンズ部材101は、基板109の実装面108に載置された後に、実装面108に例えば接着固定される。この際には、例えば、自動表面実装装置が用いられ、基板109の実装面108の設定された位置(XY座標系の所定座標位置)に設定された向きでレンズ部材101が載置されて固定される。この際には、基準面103が実装面108に当接した状態となり、安定した状態で基板109上に配置されることになる。また、実装部113は、接着剤としての例えば紫外線硬化樹脂110により接着される。符号111および符号112がボールレンズ2の入射光または出射光を示す。
【0091】
次に、第3の実施の形態のレンズ部材41について説明する。
図10に示すように、このレンズ部材41は、2方向の光に対応したレンズ部材41であり、実装部49の正面46および背面47が同形状とされるとともに、実装部49の左右の側面45がこれら正面46および背面47と同形状とされている。すなわち、左右の側面45においても、正面46および背面47と同様に、ボールレンズ2が突出して露出した状態となっている。
【0092】
したがって、レンズ部材41において、正面46および背面47から露出するボールレンズ2の球面を光の入射面または出射面とすることができるとともに、左右の側面から露出するボールレンズ2の球面を光の入射面または出射面とすることができる。
すなわち、互いに略直交する二つの光に対して、レンズ部材41をレンズとして機能させることが可能であり、例えば、同時に2方向の光を集光または平行光に変換することが可能になる。ボールレンズ2を必要とする光の経路が複数設定されている基板において、コストの低減を図ることができる。なお、レンズ部材41の実装部49は、第1の実施の形態と同様に、基準面43、天面44、側面45、正面46、背面47を備える。
【0093】
次に、第4の実施の形態のレンズ部材51について説明する。
図11に示すように、このレンズ部材51は、実装部59に対してボールレンズ2を下側に偏心して配置したものである。第1〜第3の実施の形態では、基板109に実装されるレンズ部材1、101、41の実装部13、112、49の中心と、ボールレンズ2の中心が略一致しているが、第4の実施の形態では、ボールレンズ2の中心を下方に下げることにより、ボールレンズ2の表面の一部が底面としての基準面53から突出した状態となっている。
【0094】
したがって、レンズ部材51をそのまま基板60に配置することが困難なので、基板60の表面(被取付面)に凹部61が設けられ、レンズ部材51の基準面53から突出するボールレンズ2の一部が凹部61に収納された状態で、レンズ部材51の基準面53が基板60の表面に当接するようになっている。なお、凹部61に代えて貫通孔としてよい。
【0095】
基本的にレンズ部材1においては、ボールレンズ2の光軸を基板の実装面と平行とする場合に、光軸の実装面からの距離をボールレンズ2の半径以下とすることができない。そこで、上述のように基板60の表面(実装面)に凹部61を設け、下側に突出するボールレンズ2の一部を収容した状態でレンズ部材51を実装することにより、光軸の位置を基板60の表面からボールレンズ2の半径以下の距離となる位置に配置することが可能になる。なお、レンズ部材51の実装部59は、第1の実施の形態と同様に、基準面53、天面54、側面55、正面56、背面57を備える。
【0096】
次に、第5の実施の形態のレンズ部材62について説明する。
図12に示すように、このレンズ部材62は、第2の実施の形態のレンズ部材101と略同様のレンズ部材62の実装部69の天面64に上方に突出する凸部70を設けたものである。凸部70は、例えば、自動表面実装装置で、レンズ部材62を実装面に移動させる際に把持する部分を設けたものであり、この凸部70を把持することにより、実装部69より突出するボールレンズ2に把持装置が接触するのを防止することができる。なお、レンズ部材62の実装部69は、第1の実施の形態と同様に、基準面63、天面64、側面65、正面66、背面67を備える。
【0097】
次に、第6の実施の形態のレンズ部材71について説明する。
図13および図14に示すように、このレンズ部材71は、ボールレンズ2に代えて既に製造されている非球面レンズ72を用いたものであり、金型に非球面レンズ72をセットした状態で実装部79を樹脂により成形したものである。この場合に、レンズ部材71のコストは、非球面レンズ72により異なることになるが、非球面レンズ72に表面実装用の基準面を設けるものとした場合に、低コストで設けることが可能である。
なお、レンズ部材71は、第1の実施の形態と同様に、基準面73、天面74、側面75、正面76、背面77を備える。
また、非球面レンズ72は、その光軸方向から見て円形となっている。実装部13をプレスモールディングで製造する場合、金型のキャビティ内に配置された非球面レンズをキャビティ内で加圧して成形するので、回転対称で外形が円形状であるほうが、成形精度を向上することができる。なお、非球面レンズの外径を楕円形としてもよいが、成形精度は円形とした方が高くなると思われる。
【0098】
非球面レンズ72は、光学的機能を有する光学機能部72aと、その周囲に設けられ、レンズの取付等に用いられるフランジ部72bとを備える。非球面レンズ72の光学機能部72aの正面と背面とが実装部79の正面76と背面77に設けられた孔から露出している。本実施の形態では、実装部79において、入射面(正面76)側ではフランジ部72bの正面が露出し、出射(背面77)側ではフランジ部72bを覆うように実装部13を成形しているが、光学機能部72aが露出していれば、フランジ部72bは、露出してもしなくてもよい。
【0099】
次に、第6の実施の形態の変形例となるレンズ部材について説明する。図15および図16に示すように、この変形例は、一体型の実装部79に代えて、下部202と、上部201とからなる分割型の実装部200を用いたものである。実装部200に支持されるレンズは、上述の非球面レンズ72である。また、実装部200の下部202の底面が基準面となる。また、非球面レンズ72の出射面および入射面は、実装部200の上部201と、下部202との間で露出している。
【0100】
次に、第7の実施の形態のレンズ部材81について説明する。
図17に示すように、このレンズ部材81は、複数のレンズ部材81を多数個取りするように製造されるもので、例えば、複数の実装部89となる部分を一枚の板状の成形部82として成形するものとし、成形に際し、金型内に複数のボールレンズ2を縦横にマトリックス状に配列している。本実施の形態では、成形された成形部82にボールレンズ2が横2列、縦4列に並んで配置されているが、縦横の列数は、任意に設定可能である。
【0101】
成形時の状態から各ボールレンズ2を分離するように縦横の列に従って切断することにより、個々のレンズ部材81に分けて使用することになる。実装部89の形状は、第2の実施の形態における実装部113の各面(103、104、105)に孔1aを設けなかった形状になる。実装部89の製造には、成形後に切断加工を必要とするが、一度の成形で多くのレンズ部材81を成形可能となり、コストの低減を図ることができる。
【0102】
上述の各実施の形態では、実装部13、113、49、59、69、79、89(82)を合成樹脂の成形により製造するものとしたが、ゾル−ゲル法によりガラス(セラミック)により製造するものとしてもよい。この場合に実装部13、49、59、69、79、89(82)を形成するための型内にゾル化前またはゾル化後の流動性を有するガラス材料を充填した後に、ゾル化とゲル化またはゲル化を行う。その後に加熱して乾燥させることにより実装部13、49、59、69、79、89(82)を製造する。
【0103】
また、各実施の形態のレンズ部材は、上述のように光通信関係のデバイスに用いられる以外に、プロジェクタやヘッドアップディスプレイ等に有効に用いることができる。また、電子回路基板内でデータ伝送にレンズ部材を用いることができる。例えば、表面実装された出力側のレンズ部材に光源となるレーザダイオードからレーザ光を照射することにより平行光に変換し、このレーザ光を入力側のレンズ部材に入射させて集光して受光素子に照射する構造としてもよい。電子回路基板において、上述のレーザ光によりデータの伝送が可能な構造となる。すなわち、レンズ部材が小型化されているため、電子回路基板内で光通信が光ファイバを介さずに可能になる。
【0104】
次に、本発明の第8の実施の形態の通信モジュールについて説明する。
本実施の形態の通信モジュールは、上述の各実施例のいずれかのレンズ部材1、41.51、62、71、81、101を用いたものである。ここでは、第2の実施の形態のレンズ部材101が用いられている。
【0105】
図18に示すように、光通信モジュールでは、基板330上に発光素子331とレンズ部材101およびこれらを覆うハウジング332が設けられ、ハウジング332にはその一側面から突出したファイバ固定部333が形成されると共に、ファイバ固定部333には光ファイバ(光通信ケーブル)の端部が固定されている。
【0106】
発光素子331は、例えば、半導体レーザを備えるもので、上端部に発光点331aを有しており、この発光点331aからレーザ光が発振される。レンズ部材101は、ボールレンズ2の中心位置が、発光素子331の発光点331aと同じ高さとなるように配置される。発光素子331の発光点331aから発振されたレーザ光は発散光であり、これがレンズ部材101のボールレンズ2に入射し、収束光とされて出射される。そして出射された光は、光ファイバ334の端面に結合される。
【0107】
このような通信モジュールにおいては、上述のようなレンズ部材1、41.51、62、71、81、101を用いることにより、小型化が容易になる。
【0108】
次に、本発明の第9の実施の形態のレンズアレイについて説明する。
図19に示すように、本実施の形態のレンズアレイ401は、1つの成形体(実装部)402に一列にボールレンズ2を支持させたものである。すなわち、このレンズアレイ401の成形体402は、複数のボールレンズ2を一列に支持するように一体に成形されたものである。そのレンズアレイ401の形状は、基本的に上述の各実施の形態のレンズ部材1、41.51、62、71、81、101を一列に並べて一体にした形状と同様の形状を有するものである。本実施の形態では、第2の実施の形態のレンズ部材101から孔101aを除いた状態で、3つのレンズ部材101を繋げた場合と略同様の形状となっている。すなわち、成形体402のボールレンズ2の光軸方向に沿う長さが、ボールレンズ2の直径より短くなっており、ボールレンズ2が成形体402の正面406と、背面407で露出しており、これらのボールレンズ2の2箇所の露出部分の一方が入射面で他方が出射面となる。
このレンズアレイ401は、その成形体402に、正面406、背面407、左右の側面405、基準面(底面)403、天面404を備える。
【0109】
このようなレンズアレイ401は、上述のような通信モジュールにおいて、例えば、複数の光通信ケーブルに同時にレーザを入射する場合に用いられる。例えば、本実施の形態のレンズアレイ401では、3つの光通信ケーブルに同時にレーザを結合させることができる。
【0110】
レンズアレイ401は、基本的に、レンズ部材101等の本発明のレンズ部材1、41.51、62、71、81、101を一列に繋げた形状と同様の形状を有するものであり、各レンズ部材1、41.51、62、71、81、101と同様の作用効果を得ることができる。
【0111】
次に、本発明の第9の実施の形態の変形例について説明する。図20に示すように、変形例のレンズアレイ501は、例えば、一列にn個(nは2以上の整数)のボールレンズ2が成形体502に支持されている。成形体502は、透明な樹脂からなっている。各ボールレンズ2は、成形体502から例えば入射面となる部分だけが露出し、出射面側は成形体502から露出せずに、成形体502の内部にある。なお、出射面側を露出し、入射面側を成形体50に覆われた状態としてもよい。
【0112】
成形体502は、例えば、ボールレンズ2が露出する側の外面が正面506となり、正面506に平行で、ボールレンズ2が露出していない外面が背面507となる。また、これら正面506と背面507に直交する外面のうちのボールレンズ2の並び方向に沿って長い一対の外面が天面と基準面504となる。図中成形体502の手前側の面が基準面504となっている。残りの一対の狭い外面が側面405となる。
【0113】
第8の実施の形態の別の変形例を説明する。図21に示すレンズアレイ601は、n×m(nとmは、2以上の整数)の配列でボールレンズ2が縦横に複数ずつ並んで成形体602に支持されたものである。このレンズアレイ601においてもレンズアレイ501と同様に成形体602が透明樹脂から形成されおり、ボールレンズ2は、それぞれ、一個所だけ露出しており、例えば、入射面だけが露出している。なお、出射面だけが露出するものとしてもよい。
【0114】
レンズアレイ601の基準面は、ボールレンズ2が露出する外面と直交する4つの外面のいずれでよい。また、上述の4つの外面のいずれも基準面として使用可能とし、使用形態や状況に応じて基準面を選択可能としてもよい。この変形例では、図中下側を向く外面を基準面604としている。レンズアレイ601は、レンズアレイ501で一列だけボールレンズ2が配置されていたのに対して、複数列にボールレンズ2が配置されていることが異なるが、基本構成は、レンズアレイ501と略同様である。
【0115】
なぽ、レンズアレイ601は、例えば、後述の光源モジュール用のレンズアレイとして使用可能であり、光源モジュールで使用する場合に、ボールレンズ2が露出する面と平行な面を、例えば、後述の発光素子を備える光源部に対する基準面としてもよい。すなわち、レンズアレイ601と発光素子が複数搭載された光源部(例えば、発光素子用基板)とを重ねた状態に配置する際に、基準面でレンズアレイ601と、光源部との位置決め(位置合わせ)が可能となっていてもよい。
【0116】
次に、本発明の第10の実施の形態の光源モジュールについて説明する。
図22に示すように、光源モジュールは、上述のボールレンズ2が縦横に配列されたレンズアレイ601と、同様に複数の発光ダイオードや半導体レーザ等の光学素子が縦横に配列された光源部603とを有するものである。
光源モジュールは、バックライトやその他の照明等として用いられたり、液晶ディスプレイ等と組み合わされて表示装置として用いられたりするものである。
【0117】
上述の各実施の形態において、基準面(取付面)3、43、53、63、73、103、403、504、604を実装部13、49、59、69、79、89、113や成形体402,502,602に削って設けてもよい。すなわち、実装部13、49、59、69、79、89、113や成形体402,502,602の成形後に切削加工により基準面3、43、53、63、73、103、403、504、604を設けてもよい。また、基準面3、43、53、63、73、103、403、504,604は、基板等の他の部材への取り付け時に位置決め基準となる凹部または凸部を有するものとしても良い。上述のように基準面3、43、53、63、73、103、403、504、604は、基板等の他の部材に取り付けた際に他の部材とボールレンズ2等のレンズの光軸との間の距離(基板上の高さ)を規制するものである。
【符号の説明】
【0118】
1 レンズ部材
1a 孔
2 ガラスボールレンズ(ガラスレンズ:ボールレンズ:ガラスボール)
3 基準面(底面:取り付け面)
13 実装部(成形体)
41 レンズ部材
43 基準面(底面:取り付け面)
49 実装部(成形体)
51 レンズ部材
53 基準面(底面:取り付け面)
59 実装部(成形体)
62 レンズ部材
63 基準面(底面:取り付け面)
69 実装部(成形体)
71 レンズ部材
73 基準面(底面:取り付け面)
79 実装部(成形体)
81 レンズ部材
89 実装部(成形体)
101 レンズ部材
103 基準面(底面:取り付け面)
108 実装面(被取付面)
113 実装部(成形体)
330 基板
331 光学素子
401 レンズアレイ
402 成形体(実装部)
403 基準面(取付面)
501 レンズアレイ
502 成形体(実装部)
504 基準面(実装面)
601 レンズアレイ
602 成形体(実装部)
603 光源部(光学素子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22