(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378212
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】耐火被覆材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
E04B1/94 V
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-557579(P2015-557579)
(86)(22)【出願日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】JP2014000181
(87)【国際公開番号】WO2015107566
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山脇 慎平
(72)【発明者】
【氏名】清水 玄宏
(72)【発明者】
【氏名】山脇 翔太
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
実公平03−032642(JP,Y2)
【文献】
特開昭60−067147(JP,A)
【文献】
特開平10−152913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
B32B 15/00 − 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性繊維質材料からなる断熱材層に、少なくとも金属箔層を含む外装材層を積層してなる耐火被覆材であって、
少なくとも前記金属箔層に凹凸賦形加工が施されていることを特徴とする耐火被覆材。
【請求項2】
前記外装材層が、少なくとも金属箔層と熱可塑性樹脂フィルム層を含み、前記金属箔層の厚さが5〜10μm、前記熱可塑性樹脂フィルム層の厚さが8〜18μmであることを特徴とする請求項1記載の耐火被覆材。
【請求項3】
前記凹凸賦形加工により形成される前記金属箔層の凹凸形状において、凹部と凸部の平均高低差が0.01〜0.2mmであり、当該凹凸形状が不規則なパターンをなすことを特徴とする請求項1又は2記載の耐火被覆材。
【請求項4】
前記凹凸賦形加工を施した後の前記金属箔層の任意の方向に沿った長さが、凹凸賦形加工を施す前の状態に比べて0.05〜1.0%収縮していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐火被覆材。
【請求項5】
前記外装材層が、表層から不織布層、金属箔層、熱可塑性樹脂フィルム層の順に積層された積層シートからなり、当該積層シートが前記断熱材層に接着して積層された請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐火被覆材。
【請求項6】
前記断熱材層を形成する前記難燃性繊維質材料が、SiO2:30〜55重量%、CaO:10〜35重量%、Al2O3:5〜25重量%、MgO:3〜15重量%、FeO:3〜15重量%を含み、これらの成分の含有量が合計で90重量%以上の化学組成のロックウールフェルトであることを特徴とした請求項1〜5のいずれか一項に記載の耐火被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨建築物等の耐火性を向上するために利用される耐火被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨構造の建築物にあっては、火災時に鉄骨製の梁や柱が高温に晒されると、鉄骨材が軟化して荷重に耐えられずに床が落ちてしまったり、壁が倒れたりして、建物が倒壊してしまう危険がある。このため、鉄骨材の表面を耐火性の断熱材で被覆して建物の耐火性能を向上させることが知られており、例えば、H型鋼からなる鉄骨柱などには、特許文献1の
図1に示されるように、ロックウール等からなる耐火被覆材をH型鋼の形状に沿わせるように巻き付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−152913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1には、ロックウールからなるフェルトにアルミニウム箔が積層された耐火被覆材が例示されているが、このような耐火被覆材を移送、保管に際してロール状に巻き取ったり、施工作業時にH型鋼などの鉄骨材の形状に沿って巻き付けたりするときに、アルミニウム箔に目立ったシワが生じるなどして施工後の見栄えが悪くなってしまうことがある。特に、H型鋼のフランジ部の先端部分に沿って、耐火被覆材を折り曲げるようにして巻き付ける場合には、アルミニウム箔が裂けてしまうこともあり、このような場合には、新たな耐火被覆材を用意して施工をやり直さなければならない。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、少なくとも金属箔層を含む外装材層を積層してなる耐火被覆材において、金属箔層に目立ったシワが生じてしまったり、金属箔層が裂けてしまうのを抑止できる耐火被覆材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る耐火被覆材は、難燃性繊維質材料からなる断熱材層に、少なくとも金属箔層を含む外装材層を積層してなる耐火被覆材であって、少なくとも前記金属箔層に凹凸賦形加工が施されている構成としてある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の耐火被覆材は、移送、保管に際してロール状に巻き取ったり、施工作業時にH型鋼などの鉄骨材に巻き付けたりするときに、金属箔層に目立ったシワが生じてしまうのを抑止できる。さらに、H型鋼のフランジ部の先端部分に沿って折り曲げるようにして巻き付ける場合には、金属箔層に形成された凹凸形状が延びて、金属箔層の裂けを抑止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る耐火被覆材の一例の概略を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る耐火被覆材の他の例の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1及び
図2は、本実施形態に係る耐火被覆材の概略を示す断面図であり、耐火被覆材1は、断熱材層2に外装材層3を積層してなる積層構造を有している。
【0011】
断熱材層2は、難燃性繊維質材料からなり、例えば、ロックウールフェルト、セラミックファイバーフェルト等を用いることができる。
ロックウールフェルトとしては、その化学組成が、SiO2:30〜55重量%、好ましくは35〜45重量%、CaO:10〜35重量%、好ましくは15〜32重量%、Al2O3:5〜25重量%、好ましくは10〜22重量%、MgO:3〜15重量%、好ましくは5〜12重量%、FeO:3〜15重量%、好ましくは4〜12重量%を含み、これらの成分の含有量が合計で90重量%以上、好ましくは93重量%以上であるのが好ましい。
【0012】
このようなロックウールフェルトは、上記の化学組成となるように、高炉スラグ、転炉スラグ、玄武岩、角閃岩、輝緑岩、珪石、ドロマイト、ろう石、長石、とう石等を配合して、これらの混合物をキュポラ炉で加熱、溶融した溶融物をローター方式等の任意の方式で繊維化し、次いで、バインダー(例えば、フェノール樹脂等)を吹き付けながら集綿し、マット状に積層した後に、加熱してバインダーを硬化させることによって形成することができ、嵩密度が70〜130kg/m
3程度、厚さが20〜65mm程度のフェルト状に形成するのが好ましい。
【0013】
本実施形態における耐火被覆材1は、このような難燃性繊維質材料からなる断熱材層2に外装材層3が積層されるが、外装材層3は、少なくとも金属箔層5を含み、
図1及び
図2に示す例では、熱可塑性樹脂フィルム層4/金属箔層5/不織布層6からなる三層構造としてある。
【0014】
熱可塑性樹脂フィルム層4には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアクリル、アイオノマー、セルロース、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。熱可塑性樹脂フィルム層4に用いるフィルムは、厚さ8〜18μmであるのが好ましく、かかるフィルムは柔軟であるとともに、靱性が高く、破れにくいものが好ましい。
【0015】
金属箔層5には、例えば、アルミニウム等の金属を厚さ5〜10μmに延展した金属箔を用いることができる。外装材層3が、このような金属箔層5を含むようにすることで、耐火被覆材1に微粒子非透過性、ガス非透過性等の諸機能を付与することができる。
また、不織布層6には、ポリエステル製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製等の不織布を用いることができ、その目付量は、10〜50g/m
2であるのが好ましい。
【0016】
断熱材層2に外装材層3を積層するには、熱可塑性樹脂フィルム層4、金属箔層5、不織布層6のそれぞれを一層ずつ順次積層していってもよいが、これらの層を公知のラミネート技術により積層した積層シートとしてから、断熱材層2に接着して積層するのが生産性の点から好ましい。かかる積層シートを断熱材層2に接着して積層するにあたり、不織布層6を断熱材層2に対向させて、耐火被覆材1が、表面側から熱可塑性樹脂フィルム層4/金属箔層5/不織布層6/断熱材層2の順に積層された積層構造となるようにしてもよく(
図1参照)、熱可塑性樹脂フィルム層4を断熱材層2に対向させて、耐火被覆材1が、表面側から不織布層6/金属箔層5/熱可塑性樹脂フィルム層4/断熱材層2の順に積層された積層構造となるようにしてもよい(
図2参照)。
【0017】
本実施形態において、断熱材層2に積層される外装材層3には凹凸賦形加工が施されている。これにより、外装材層3の表面には、凹凸賦形加工による凹凸形状が規則的又は不規則なパターンで形成されるが、凹凸賦形加工としては、エンボス加工、しわ加工、シボ加工、梨地加工等が挙げられる。
なお、作図上、
図1及び
図2では凹凸形状の図示を省略している。
【0018】
凹凸賦形加工によって形成される凹凸形状は、隣接する凹部と凸部とにおいて、当該凹部の最深部と当該凸部の最頂部との平均高低差が、0.01〜0.5mmであるのが好ましく、0.01〜0.2mmであるのがより好ましい。
【0019】
また、凹凸賦形加工は、少なくとも金属箔層5に施されていればよいが、加工時のハンドリングを考慮すると、外装材層3を形成する積層シートに凹凸賦形加工を施してから、これを断熱材層2に積層するのが好ましい。外装材層3を形成する積層シートに凹凸賦形加工を施す場合、当該積層シートは、任意の方向に沿った長さが、凹凸賦形加工を施す前の状態に比べて0.05〜1.0%収縮しているのが好ましく、0.1〜0.3%収縮しているのがより好ましい。
【0020】
このような凹凸賦形加工を施すことで、微粒子非透過性、ガス非透過性等の諸機能が付与された耐火被覆材1を得るために、金属箔層5を外装材層3に含ませた場合であっても、移送、保管に際して耐火被覆材1をロール状に巻き取ったり、施工作業時にH型鋼等の鉄骨材に巻き付けたりするときに、金属箔層5に目立ったシワが生じてしまうのを抑止できる。さらに、H型鋼のフランジ部の先端部分に沿って耐火被覆材1を折り曲げるようにして巻き付ける場合には、金属箔層5に形成された凹凸形状が延びて、金属箔層5の裂けを抑止することもできる。
【0021】
また、耐火被覆材1が、表面側から熱可塑性樹脂フィルム層4/金属箔層5/不織布層6/断熱材層2の順に積層された積層構造となるようにした態様にあっては、断熱材層2に対向して積層される不織布層6が、断熱材層2の表面の難燃性繊維質材料の振動を抑制し、断熱材層2から繊維や塵が離脱しないようにすることができる。そして、金属箔層5は、その微粒子非透過性、ガス非透過性によって、断熱材層2を形成する難燃性繊維質材料に起因する微粒子や気体(バインダーから遊離する有機ガス等)が外部に飛散、拡散するのも防止する。さらに、金属箔層5上に積層された熱可塑性樹脂フィルム層4は、金属箔層5の欠損を予防し作業性を向上させることを可能とするとともに、金属箔層5の欠損箇所からの外気の侵入による結露を予防し、断熱材層2の水分による劣化を防止することができる。
【0022】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0023】
例えば、前述した実施形態では、断熱材層2の一方の面に、熱可塑性樹脂フィルム層4/金属箔層5/不織布層6からなる外装材層3を積層した例を挙げているが、外装材層3は、少なくとも金属箔層5を含んでいればよく、断熱材層2の他方の面にも、例えば、別の不織布層を積層するようにしてもよい。さらに、外装材層3を形成する積層シートの少なくとも一部の層で断熱材層2を包むようにして、断熱材層2の表裏両面に当該積層シートを積層するようにしてもよく、本発明に係る耐熱被覆材の積層構造は、前述した実施形態には限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、鉄骨建築物等の耐火性を向上するための耐火被覆材として利用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 耐火被覆材
2 断熱材層
3 外装材層
4 熱可塑性樹脂フィルム層
5 金属箔層
6 不織布層