(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378214
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】衛生的かつ無菌的なピグ洗浄ステーション
(51)【国際特許分類】
B08B 3/04 20060101AFI20180813BHJP
B08B 9/055 20060101ALI20180813BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
B08B3/04 Z
B08B9/055 551
B08B9/055 554
B08B3/02 Z
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-558474(P2015-558474)
(86)(22)【出願日】2014年2月23日
(65)【公表番号】特表2016-507375(P2016-507375A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】EP2014053487
(87)【国際公開番号】WO2014128285
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2017年2月2日
(31)【優先権主張番号】13156658.0
(32)【優先日】2013年2月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515221945
【氏名又は名称】ウレッシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】URESH AG
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ウルス ホーファー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ フーバー
【審査官】
村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公開第02348939(GB,A)
【文献】
米国特許第08146193(US,B1)
【文献】
特開昭55−020690(JP,A)
【文献】
特表平10−500757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/04
B08B 3/02
B08B 9/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプラインを洗浄するための洗浄チャンバと、プランジャと、洗浄流体のための少なくとも1つの側方入口および少なくとも1つの側方出口とを備える、パイプラインピグのための推進ステーションであって、
− 前記洗浄チャンバは、略円筒形で、前記プランジャと前記ピグの少なくとも一部とを収容するに足る長さを有し、かつ前記ピグを乱流する流体によって完全に包囲することができるように前記ピグの最大断面直径の√2倍までの断面直径を有する主要部分を有し、かつ、
− 前記プランジャは、前記洗浄チャンバの主要部分内を軸方向に移動可能であり、前記ピグに面する前端と、前記前端とは反対側の後端とを有し、かつ洗浄流体がプランジャの後から前へ、またはその反対へ導かれるように前記前端の前の空間と前記後端の後の空間とを繋ぐ少なくとも1つの内部流体チャネルを有する、推進ステーション。
【請求項2】
洗浄チャンバの壁であって洗浄チャンバにおける静止位置にあるプランジャの後端に近接する領域内に、洗浄流体の入口または出口として機能する1つまたは複数のさらなる側方開口を有する、請求項1に記載の推進ステーション。
【請求項3】
前記プランジャが、略円筒形の主要部と、前記主要部より小さい断面直径を有する前端部分とを有する、請求項1または請求項2のいずれかに記載の推進ステーション。
【請求項4】
前記プランジャが、前記プランジャの2つの側方開口を繋ぐ少なくとも1つのさらなる内部流体チャネルを有する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の推進ステーション。
【請求項5】
前記プランジャが、断面直径が拡大された後端部分を有し、かつ前記洗浄チャンバが、前記プランジャの後端部分に対応する広げられた端部分を有する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の推進ステーション。
【請求項6】
前記プランジャが、前記推進ステーションの外面から機械的に切り離されている、請求項1から請求項5のいずれかに記載の推進ステーション。
【請求項7】
パイプラインピグを洗浄するための、請求項1から請求項6のいずれかに記載の推進ステーションの使用。
【請求項8】
洗浄流体を前記側方入口を介して前記洗浄チャンバ内へ、前記ピグを包囲する際に前記流体の乱流が生じるに足る流量で導くステップを含む、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
プランジャを軸方向へ動かして、前記ピグが乱流する洗浄流体によって包囲される間に前記ピグを移動させるステップを含む、請求項7または請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記洗浄流体が温かい水性液体である、請求項7から請求項9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記洗浄流体が水蒸気である、請求項7から請求項9のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
前記洗浄流体が溶媒である、請求項7から請求項9のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
前記洗浄流体が気体流体である、請求項7から請求項9のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
前記洗浄チャンバ、前記プランジャおよび前記ピグが無菌である、請求項7から請求項13のいずれかに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
パイプラインピグは、広範な異なる産業環境において、典型的には、パイプラインを洗浄するため、またはパイプラインを調査するための何れにも使用される。洗浄に関して言えば、ピグは、通常、パイプライン内に残留する生成物または材料を押し出す、またはこすり落とすために使用され、後続の製造ステップの前に残余物をパージして洗い流すために必要な洗浄流体の量を大幅に低減する手助けをし、かつ一例においては、ラインから貴重な生成物を回収する手助けをする。効果的なピギングシステムは、廃棄物管理の改善に繋がる可能性があると同時に、プロセスステップ間に必要な時間間隔を短縮することができる。
【0002】
無菌処理が要求され得る食品産業および特に医薬品産業における高標準の品質および衛生に関する要件は、ピグ自体が使用後、システムから物理的に取り外されることなく自律的に洗浄されることが可能なピギングシステムの開発をもたらしている。「定置洗浄」設定は、ピグが、別段の無菌パイプライン環境へ汚染物質を導入する危険性なく、洗浄されて後続の再配置用に準備されることを可能にする。
【0003】
洗浄ステーションまたは洗浄機能と一体化されたパイプラインピグ推進ステーションは、この分野において知られている。典型的には、ピグは、ピグをパイプライン内へ推進するための機構の一部である場合も、一部でない場合もあるピグ捕獲エレメントによって、所定の場所に保持される。
【0004】
しかしながら、ピグトラップ内に保持されるピグの完全な洗浄は、洗浄流体が、特にトラップに接触しているピグ部位へ届きにくいことに起因して、達成が困難である可能性がある。必然的に、特にピグ表面に強く粘着または突き固められた物質を除去するには、洗浄時間の延長や洗浄流体の量の増加が必要とされる場合がある。ある種の形式のピグ、例えば、リブ付きのもの、および概してアクセスしにくい表面を有するものもやはり、洗浄がより困難である場合がある。
【0005】
英国特許第2348939号明細書は、ピグが周囲の洗浄流体による渦巻き作用に当てられることが可能な定置洗浄装置を有するパイプラインピグ推進トラップについて記載されている。このシステムは、狭間隔の弾性ディスクのグループを装備した円筒形のパイプラインピグを洗浄する場合に特に効果的であるとされている。この装置において、洗浄流体は、トラップの円筒体部分へ蟻継ぎ形状で統合される横へ延びる入口管接続部を介してピグトラップに入る。このような装置によって、流体は、円筒体へ接線方向に入り、渦巻き作用によってピグの全長を包囲する。洗浄流体は、装置の実施形態に依存して、入口管接続部に対して軸方向に平行または軸方向に垂直である、下側に位置づけられる出口管接続部を介して排出される。ピグトラップは、垂直に立ち上がっていて、ピグが洗浄のために、即ちその最下位置に位置合わせされると、回転可能な カムまたはプッシュロッド・コンポーネントとの接点が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許第2348939号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、先行技術によるステーションにが有する問題点および制限事項のうちの少なくとも1つを克服する、またはより効果的なピグ洗浄を可能にする、定置洗浄システムのための改良されたピグ推進ステーションを提供することにある。別の目的は、パイプラインピグを洗浄する改良された方法を提供することにある。他の目的は、明細書本文および請求項の記載を基礎として明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、主たる請求項において規定される洗浄チャンバを備える、パイプラインピグのための推進ステーションを提供する。具体的には、本推進ステーションは、さらに、洗浄流体のためのプランジャと、少なくとも1つの側方入口と、少なくとも1つの側方出口とを備える。
【0009】
洗浄チャンバは、略円筒形であり、プランジャとピグの少なくとも一部分とを収容するに足る長さを有する主要部分を有する。主要部分の断面直径は、ピグの最大断面直径の√2倍までであり、よってピグを流体によって完全に包囲することができる。好ましくは、この差は、流体の種類、温度および流量等の他の要素を考慮して、洗浄チャンバ内でピグを包囲する流体に乱流を呈させるに足るように選択される。
【0010】
プランジャは、洗浄チャンバの主要部分内部を軸方向に移動可能である。これは、ピグに面する前端と、前端とは反対側の後端とを有し、かつ前端の前の空間と後端の後の空間とを繋ぐ少なくとも1つの内部流体チャネルを有する。プランジャは、好ましくは、推進ステーションの外面から機械的に切り離される。さらに、プランジャは、側方開口を繋ぐ1つまたは複数のさらなる内部流体チャネルを有してもよい。
【0011】
プランジャは、略円筒形の主要部と、主要部より小さい断面直径を有する前端部分とを有するように成形されてもよい。これは、さらに、断面直径が拡大された後端部分を呈してもよい。この特徴に相応して、洗浄チャンバは、その内部でプランジャの拡大された後端部分が軸方向へ動作することができる広がった端部分を有してもよい。
【0012】
本発明は、さらに、パイプラインピグを洗浄するための、このような推進ステーションの使用法を提供する。この目的に沿って、洗浄流体は、ステーションの側方入口を介して洗浄チャンバ内へ導かれてもよい。好ましくは、流体は、ピグを包囲する際に流体の乱流が生じるに足る流量で導入される。プランジャは、洗浄プロセスの間、ピグが乱流する洗浄流体により包囲される間にピグを前後に動かすためにも、軸方向へ動かされてもよい。洗浄プロセスは、殺菌される洗浄チャンバ、プランジャおよびピグによって実行されてもよい。
【0013】
さらなる態様および実施形態は、詳細な説明、図面および請求項の記載を基礎として明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、プランジャがその静止位置にある、洗浄チャンバを有する推進ステーションの好適な実施形態の垂直縦断面を示す。
【
図2】
図2は、同じくプランジャがその静止位置にあり、かつピグが洗浄チャンバ内に位置合わせされている、洗浄チャンバを有する推進ステーションの好適な実施形態の垂直縦断面を示す。
【
図3】
図3は、プランジャが軸方向へ移動してピグをパイプラインへ押し戻している、洗浄チャンバを有する推進ステーションの好適な実施形態の垂直縦断面を示す。
【0015】
第1の態様において、本発明は、従属請求項に規定されている具体的な実施形態または任意選択の特徴を有する、主たる請求項に記載されているパイプラインピグのための新しい推進ステーションを提供する。
【0016】
具体的には、推進ステーションは、洗浄チャンバと、プランジャと、洗浄流体のための少なくとも1つの側方入口と、少なくとも1つの側方出口とを備える。洗浄チャンバは、略円筒形である、プランジャとピグの少なくとも一部とを収容するに足る長さを有する主要部分を有する。主要部分の断面直径は、ピグの最大断面直径の√2倍までであり、よってピグを流体によって完全に包囲することができる。プランジャは、洗浄チャンバの主要部分内を軸方向に移動可能である。これは、ピグに面する前端と、前端とは反対側の後端とを有し、かつ前端の前の空間と後端の後の空間とを繋ぐ少なくとも1つの内部流体チャネルを有する。
【0017】
驚くべきことに、本明細書に記述される推進ステーションは、ピグをパイプラインシステムから取り外すことなく、即ち、システム内の無菌環境を保全しながら、これまでに可能であったものよりも遙かに効果的なパイプラインピグの洗浄を可能にすることが発見されている。ステーションの空間形状は、ピグが洗浄チャンバ内に、機械的な保持手段によって所定の場所に保持されることなく位置合わせされることを見込んでいるが、これは、ピグの外面に、塞がれた場所またはアクセスできない場所なしに洗浄流体が完全に行き渡ることを意味する。ピグを所望される位置に保つものは、流体の流れである。さらに、本発明による洗浄チャンバを有する推進ステーションは、ピグが乱流する洗浄流体によって包囲されかつ洗われることを見込んでいる。ピグが平滑な形状および表面を有するとしても、洗浄チャンバ内で乱流を達成することは容易である。ピグ表面における乱流する流体は、層状の流れを呈する流体より遙かに優れた洗浄効果を有することが発見されている。したがって、本発明は、幾つかの優位点を同時にもたらし、即ち、ピグの表面は、例外なく全て洗浄され、かつさらに、最新技術による場合より遙かに効果的に洗浄される。ピグを無菌洗浄するために、ピグをパイプラインシステムから取り外す必要はない。
【0018】
本明細書で使用しているパイプラインピグは、パイプライン内部に沿って移動して、パイプライン内での物質の運搬を円滑にし、パイプラインを検査し、またはこれを洗浄することに適するデバイスである。パイプラインピグは、パイプラインゲージまたはパイプラインモールとも称されることがある。本発明を実施するために有益なパイプラインシステムは、具体的には、食品産業および医薬品産業において、原材料、中間生成物または最終製品を運搬するために使用されるものである。例えば、本明細書に記述している推進ステーションは、医薬品生産プラントの一部であってもよい。ある実施形態において、パイプラインシステムは、内部が無菌であって、製薬材料を無菌で運搬するために使用される。パイプ内径は、典型的には、約2cmから約20cmまでの範囲内であってもよい。ピグは、様々なパイプおよびパイプ径に対応するものが利用可能である。典型的には、ピグの最大直径は、ピグが動けるように、しかもピグが物質をパイプ内に押し通すこともできるように、対応するパイプラインの内径よりほんの僅かに小さい。
【0019】
本発明における推進ステーションは、内部にピグがパイプラインを塞ぐことなく留め置かれ、かつ再び推進されてもよい、パイプラインシステム内に統合されるステーションとして定義される。また、これは、ピグ洗浄ステーションとも称される場合がある。
【0020】
本発明によれば、推進ステーションの最重要部分である洗浄チャンバは、略円筒形である主要部分を有する。例えば、主要部分は、開口などに起因する僅かな偏りを除いて、円筒形であってもよい。主要部分の長さは、プランジャと、ピグの少なくとも一部、好ましくはピグ全体、とを収容するに足りる。パイプラインの断面直径、延てはピグのそれとも比べれば、主要部分の断面直径は、流体、具体的には洗浄流体が、ピグを完全に包囲するようにピグの回りへ導かれることを可能にするに足る大きさに拡大される。また、ピグ周囲の空間、即ち、洗浄チャンバの主要部分とピグとの直径差も、流体の乱流を達成するに足るものであるように選択されるべきである。個々の事例で必要とされる最小差は、流体の性質およびその流量にも依存することになる。しかしながら、典型的には、洗浄チャンバの主要部分の断面直径は、ピグの最大断面直径より少なくとも約10%大きい。さらなる実施形態において、各直径は、少なくとも約20%、または少なくとも約30%異なる。
【0021】
一方で、各直径間の差は、ピグを包囲する流体の乱流、ならびにピグ表面における流体の高速性が保全され得ることを保証するために、大きいものであるべきでもない。したがって、直径差は、ピグの最大断面直径の√2倍、即ち約1.41倍より大きいものであってはならない。言い替えれば、ピグの(最大)直径が100mmであれば、洗浄チャンバの主要部分は、約141mmを超える直径を有してはならない。
【0022】
本発明のコンテキストにおいて、プランジャは、パイプまたはピストンのような中空円筒内部で軸方向の、例えば前後に往復移動する動作を実行することができるデバイスとして理解されるべきである。プランジャは、例えば、洗浄後にピグをパイプライン内へ押し戻すことができなければならない。プランジャは、洗浄チャンバの少なくとも主要部分内で軸方向へ移動可能である。プランジャの主要部は、円筒状に成形されてもよい。プランジャは、ピグに面する前端または前面と、前端とは反対側の後端または後面とを有する。さらに、これは、前端の前の空間と後端の後の空間とを繋ぐ少なくとも1つの内部流体チャネルを有する。チャネルは、プランジャの長手方向の中心軸に沿って位置合わせされてもよい。流体チャネルを介して、プランジャ前後の空間の間に流体連通が存在し、よって、例えば洗浄流体は、プランジャ内部を介してその後から前へ、またはその反対へ導かれてもよい。後から前へ導かれれば、このような流体の流れは、プランジャとピグとの間の小さい距離を保持するために使用される可能性もある。
【0023】
場合により、プランジャは、略円筒形の主要部と、主要部より小さい断面直径を有する前端部分とを有する。このタイプの幾何学的形状は、流体が完全にピグの周囲をプランジャへ向かって流れることを可能にすることから効果的であり、プランジャにおいて、流体は、静止位置にあるプランジャの主要部と狭くなった前端部分との移行部に、またはその近くに位置合わせされ得る洗浄チャンバ壁内の側方流体出口を介して洗浄チャンバを出てもよく、またはこの逆でもよい。
【0024】
場合により、プランジャは、各々がプランジャの2つの側方開口を繋ぐ1つまたは複数のさらなる内部流体チャネルを有してもよい。場合により、プランジャ内の2つ以上のチャネル間に流体接続部が存在してもよい。プランジャのその後端付近における2つの側方開口を繋ぐ流体チャネルが存在すれば、洗浄チャンバ内に対応する流体入口または出口開口を有することも有益である。
【0025】
プランジャによる洗浄チャンバ内の軸方向動作は、規定の長さに制限されてもよい。これは、例えば、プランジャが拡大された断面直径を有する後端部分を有し、かつ洗浄チャンバがプランジャの後端部分に相応する広がった端部分を有するように設計することによって達成されてもよい。
【0026】
プランジャは、内部流体チャネルを介する流体の流れを除いてプランジャ前後の空間の間の流体の流れを制限するように側方開口の上流または下流に位置合わせされ得る、シールリング等の1つまたは複数のシールを装備してもよい。
【0027】
特に好適な実施形態において、プランジャは、推進ステーションの外面から機械的に切り離される。言い替えれば、プランジャは、推進ステーションの内部に完全に封入される。このようなプランジャは、例えば、磁気的に駆動されてもよい。この構造では、パイプラインシステムの内部空間へ汚染物質が導入される危険性が大幅に低減される。したがって、本実施形態は、微生物学的、ウイルス性および他の汚染物質の排除が最重要である、無菌製品の製造に使用される製薬パイプラインシステムにとって特に有益である。
【0028】
既に述べたように、推進ステーションは、洗浄流体のための少なくとも1つの側方入口と、少なくとも1つの側方出口とを有する。当然ながら、推進ステーションの実際の機能構造に依存して、側方流体入口は、流体出口としても機能する場合があり、逆もまた同様である。好ましくは、推進ステーションは、少なくとも2つの側方開口を有し、その各々は、洗浄流体等の流体の入口または出口の何れかとして機能してもよく、かつその各々は、ピグを包囲する際に洗浄液の乱流を達成するに足る直径を有する。乱流を有効化するための開口の最小直径は、事例毎に、流体の性質および流量、および洗浄チャンバおよびピグ間の直径の差にも依存する。好適な実施形態の1つにおいて、推進ステーションは、洗浄チャンバの主要部分の直径の少なくとも10%の直径を有する少なくとも2つの側方開口を有する。このような開口は、先に述べたように、プランジャ前端部分の位置における、またはこれに近い洗浄チャンバ壁内に位置合わせされてもよい。さらに、このタイプの開口は、洗浄チャンバの主要部分より僅かに外側へ位置決めされてもよい。このように位置合わせされている開口の1つを介して推進ステーションへ導入され、かつ他の開口から除去される洗浄流体は、洗浄チャンバ内でピグの回りを流れ、これを完全に包囲することになる。
【0029】
類似する別の開口は、プランジャが静止位置にある状態で洗浄チャンバ内に位置合わせされるピグの中心に近い、洗浄チャンバの壁内に位置決めされてもよい。このような開口を介して導入される洗浄流体は、さらに、乱流に寄与する場合がある。
【0030】
1つまたは複数のさらなる側方開口は、場合によりより小さい直径を有して、例えば洗浄チャンバにおける、静止位置にあるプランジャの後端に近接する領域内にも存在する場合がある。
【0031】
さらなる態様において、本発明は、先に述べたような推進ステーションの、パイプラインピグを洗浄するための使用法を提供する。好ましくは、本使用法は、洗浄流体を、側方開口のうちの少なくとも1つを介して、ピグを包囲する際に流体の乱流を発生するに足る流量で導入することを含む。場合により、プランジャは、洗浄プロセスの間、ピグが乱流する洗浄流体によって包囲される間にピグを動かすために、軸方向へ動かされてもよい。
【0032】
洗浄流体は、同時に、または連続して導入される液体または気体、またはこれらの混合体または組合せであってもよい。液体形式で適切な洗浄流体は、有機溶剤等の水溶液または水性溶媒、例えばエタノール、であってもよい。さらに、エタノールと水の混合体の使用も企図される。他の事例では、温水または温かい希釈水溶液が使用されてもよい。有益である可能性のある気体洗浄流体には、水蒸気が含まれる。ある実施形態において、洗浄流体は、無菌である。
【0033】
無菌温水、水蒸気、ならびにエタノール−水混合物は、全て、具体的には、無菌製剤を製造するための無菌製薬パイプラインシステムにおけるピグの無菌洗浄に有益である場合がある。
【0034】
定置洗浄(CIP)または定置滅菌(SIP)状態下でピグおよび/または推進ステーションの洗浄および/または滅菌を実行した後、ピグおよび/または推進ステーションは、場合により、濾過空気または濾過窒素等の不活性ガスを用いて乾燥されてもよい。
【0035】
洗浄されたピグは、次に、プランジャによってパイプラインへ押し戻されてもよい。
【0036】
本発明のさらなる任意選択の実施形態および任意選択の特徴は、図面に開示されている。
【0037】
図1は、洗浄チャンバ(2)および静止位置にあるプランジャ(3)を伴う、本発明による推進ステーション(1)の好適な実施形態の垂直縦断面を示している。推進ステーションは、3つの側方開口(4、4’、4’’)を提示し、その各々は、洗浄流体の入口または出口の何れかとして機能してもよい。開口のうちの1つ(4)は、洗浄チャンバ(2)の外側に位置決めされ、別の開口(4’’)は、プランジャ(3)の狭められた前端部分(6)の位置に近い、またはほぼその位置における洗浄チャンバの壁内へ位置決めされる。プランジャの略円筒形主要部(5)の断面直径は、洗浄チャンバ(2)の主要部分の内径にほぼ一致する。
【0038】
プランジャは、プランジャ(3)の前端(7)における空間と後端(8)の後の空間とを繋ぐ内部流体チャネル(10)を有する。この特定の実施形態において、プランジャ(3)がその静止位置に存在しないとき、流体用の空間は、後端(8)の後にのみ存在する。さらなる内部流体チャネル(11)は、狭められた前端部分(6)に近い、またはこれに隣接する2つの側方開口を繋ぎ、かつさらに別の内部流体チャネル(12)は、後端(8)に近い2つの側方開口を繋ぐ。洗浄チャンバ(2)の壁内の比較的小さい側方開口(13)は、流体の入口または出口として機能してもよく、かつプランジャの後部セクションにおける内部流体チャネル(12)に対応する。
【0039】
さらに、プランジャ(3)の後端部分(9)は、プランジャの主要部(5)よりも拡大された断面直径を呈する。広げられた後端部分(9)に対応して、洗浄チャンバも、プランジャ(3)の軸方向動作を可能にしかつこれを制限する広げられた端部分(15)を呈する。2つのシールリング(14、14’)は、前端(6)に近い内部流体チャネル(11)の両側に位置決めされる。
【0040】
図2は、
図1と同じ推進ステーション(1)を示しているが、洗浄チャンバ(2)の円筒形主要部分(17)の内部にほぼ完全に位置決めされたピグ(16)を伴っている。主要部分(17)の断面直径は、ピグ(16)の最大断面直径より約30−40%大きい。したがって、例えば洗浄チャンバ(2)のすぐ外側の側方開口(4)を介して導入され、かつプランジャ(3)の前端部分(6)に近いチャンバ(2)の壁内の側方開口(4’’)を介して洗浄チャンバ(2)を出る洗浄流体は、ピグ(16)の回りを流れてこれを完全に包囲することができる。追加的な洗浄流体は、ピグ(16)の中心に近い洗浄チャンバ(2)の壁内の側方開口(4’)を介して導入されてもよい。
【0041】
図3は、
図1および
図2と同じ推進ステーション(1)を示しているが、プランジャ(3)は、もうその静止位置にはなく、軸方向へ移動してピグ(16)をパイプラインへ押し戻している。