特許第6378222号(P6378222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6378222排ガス浄化触媒装置、排ガス浄化システム、及び排ガス浄化触媒装置の劣化検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378222
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】排ガス浄化触媒装置、排ガス浄化システム、及び排ガス浄化触媒装置の劣化検出方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20180813BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20180813BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20180813BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20180813BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20180813BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20180813BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B01J23/63 AZAB
   F01N3/10 A
   F01N3/28 J
   F01N3/20 C
   F01N3/24 U
   F01N3/08 A
   F01N3/08 B
   B01D53/94 280
   B01D53/94 245
   B01D53/94 223
【請求項の数】11
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-25367(P2016-25367)
(22)【出願日】2016年2月12日
(65)【公開番号】特開2017-140604(P2017-140604A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2017年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【弁理士】
【氏名又は名称】河野上 正晴
(72)【発明者】
【氏名】信川 健
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和成
(72)【発明者】
【氏名】小里 浩隆
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−297372(JP,A)
【文献】 特開2013−136032(JP,A)
【文献】 特表2010−521301(JP,A)
【文献】 特開2001−123827(JP,A)
【文献】 特開2011−036740(JP,A)
【文献】 特開2003−013728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/73
B01D 53/86−53/90
B01D 53/94−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面上に形成されている、Pdを含有している第一の触媒層と、前記第一の触媒層の表面上に形成されている第二の触媒層とを含む排ガス浄化触媒装置であって、
前記第二の触媒層において、セリア、Pd、及びRhが、混合状態で同一層に含有され、
前記第一及び第二の触媒層において、前記基材の体積1Lあたりの蛍石型構造のセリアの総質量が、15.0g以下であり、かつ
前記第二の触媒層において、前記基材の体積1LあたりのPdの質量が、0.32g以上である、
排ガス浄化触媒装置。
【請求項2】
前記第二の触媒層において、前記Pdの一部又は全部が、前記セリアに担持されている、
請求項1に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項3】
前記第二の触媒層が、アルミナを更に含有し、
前記第二の触媒層において、前記Pdの一部又は全部が、前記アルミナに担持されている、
請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項4】
前記第一及び第二の触媒層において、前記基材の体積1Lあたりの蛍石型構造のセリアの総質量が、0.0g以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項5】
前記第二の触媒層において、前記基材の体積1LあたりのPdの質量が、0.64g以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
【請求項6】
排ガスを排出する内燃機関と、前記排ガスを処理する第一の触媒装置と、前記第一の触媒装置で処理された前記排ガスを処理する第二の触媒装置とを含む排ガス浄化システムであって、
前記第一の触媒装置が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置であり、
前記第二の触媒装置が、三元触媒装置、NOx吸蔵還元型触媒装置、及び選択触媒還元型触媒装置からなる群から選択される触媒装置である、
排ガス浄化システム。
【請求項7】
前記第二の触媒装置で処理された前記排ガスを処理する第三の触媒装置をさらに含み、
前記第三の触媒装置が、三元触媒装置、NOx吸蔵還元型触媒装置、及び選択触媒還元型触媒装置からなる群から選択される触媒装置である、
請求項6に記載の排ガス浄化システム。
【請求項8】
前記第二の触媒装置がNOx吸蔵還元型触媒装置であり、
前記第三の触媒装置が選択触媒還元型触媒装置である、
請求項7に記載の排ガス浄化システム。
【請求項9】
前記内燃機関が、リーンバーンエンジンである、請求項6〜8のいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の排ガス浄化システムにおいて前記第一の触媒装置の劣化を検出する方法であって、
前記第一の触媒装置にリッチ雰囲気の排ガスを供給し、その後で、前記第一の触媒装置に、酸素濃度が1%〜2%の範囲であるリーン雰囲気の排ガスを供給すること、
前記リーン雰囲気の排ガスを供給している間に前記第一の触媒装置において消費される酸素量を評価することを含む、
排ガス浄化触媒装置の劣化検出方法。
【請求項11】
前記リッチ雰囲気のガスの空燃比が、12.5〜13.7の範囲である、請求項10に記載の排ガス浄化触媒装置の劣化検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒装置、排ガス浄化システム、及び排ガス浄化触媒装置の劣化検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、例えば自動車の排ガスは、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、及び粒子状物質(PM)等の成分を含有している。これらの排ガス中の成分は環境汚染、例えば大気汚染、光化学スモッグ、酸性雨等の環境汚染の原因となるため、自動車の排ガスの排出量が、各国で制限されている。
【0003】
この排ガス中の成分が大気中に排出されることを抑制するために、種々の触媒装置が開発されている。また、これらの触媒装置を備えた排ガス浄化システムが知られている。この排ガス浄化システムの例として、エンジンから排出される排ガスの排気通路に沿って、スタートコンバータ(SC:Start Converter)型触媒装置、NOx吸蔵還元(NSR:NOx Storage Reduction)型触媒装置、及び選択触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)型触媒装置がこの順で配置されている排ガス浄化システムが知られている。
【0004】
このシステムは、排ガスが、リッチ雰囲気、ストイキ雰囲気、及びリーン雰囲気で変化した場合でさえ、一酸化炭素等の上記の成分を効率的に浄化することができる。なお、リッチ雰囲気、ストイキ雰囲気、及びリーン雰囲気とは、それぞれ、空燃比が、理論空燃比未満、理論空燃比、及び理論空燃比超である雰囲気を意味する。例えば、リッチ雰囲では、排ガス中に還元剤(例えばCOやHC)が比較的多く存在し、リーン雰囲気では、排ガス中に酸化剤(例えばNOx)が比較的多く存在し、ストイキ雰囲気では、上記の還元剤と酸化剤が化学当量で存在している。
【0005】
かかるシステムや、これに含まれているスタートコンバータ型触媒装置の排ガス浄化能力をさらに向上させる余地がある。
【0006】
特許文献1の排ガス浄化用触媒装置は、担体としての酸素吸蔵材、及びPdを含有している第一の触媒層;並びに、この第一の触媒層の表面上に形成されている、担体としての酸素吸蔵材、Pd、及びRhを含有している第二の触媒層を含む。また、この排ガス浄化用触媒装置では、これら第一及び第二の触媒層に含有されているPdの少なくとも一部が、酸素吸蔵材に担持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−136032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の排ガス浄化用触媒装置では、第二の触媒層に含有されているPdの量が多い場合には、PdとRhが合金化して、RhのNOx浄化能力が低下する旨、記載されている。
【0009】
したがって、本発明は、排ガス浄化能力が向上した排ガス浄化触媒装置、これを組み込んだ排ガス浄化システム、及びこの排ガス浄化触媒装置の劣化検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、以下の手段により、上記の課題を解決できることを見出した。
【0011】
〈1〉基材と、上記基材の表面上に形成されている、Pdを含有している第一の触媒層と、上記第一の触媒層の表面上に形成されている第二の触媒層とを含む排ガス浄化触媒装置であって、
上記第二の触媒層において、セリア、Pd、及びRhが、混合状態で同一層に含有され、
上記第一及び第二の触媒層において、上記基材の体積1Lあたりの蛍石型構造のセリアの総質量が、16.0g以下であり、かつ
上記第二の触媒層において、上記基材の体積1LあたりのPdの質量が、0.32g以上である、
排ガス浄化触媒装置。
〈2〉上記第二の触媒層において、上記Pdの一部又は全部が、上記セリアに担持されている、
上記〈1〉項に記載の排ガス浄化触媒装置。
〈3〉上記第二の触媒層が、アルミナを更に含有し、
上記第二の触媒層において、上記Pdの一部又は全部が、上記アルミナに担持されている、
上記〈1〉又は〈2〉項に記載の排ガス浄化触媒装置。
〈4〉上記第一及び第二の触媒層において、上記基材の体積1Lあたりの蛍石型構造のセリアの総質量が、0.0g以上である、上記〈1〉〜〈3〉項のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
〈5〉上記第二の触媒層において、上記基材の体積1LあたりのPdの質量が、0.64g以下である、上記〈1〉〜〈4〉項のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置。
〈6〉排ガスを排出する内燃機関と、上記排ガスを処理する第一の触媒装置と、上記第一の触媒装置で処理された上記排ガスを処理する第二の触媒装置とを含む排ガス浄化システムであって、
上記第一の触媒装置が、〈1〉〜〈5〉項のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒装置であり、
上記第二の触媒装置が、三元触媒装置、NOx吸蔵還元型触媒装置、及び選択触媒還元型触媒装置からなる群から選択される触媒装置である、
排ガス浄化システム。
〈7〉上記第二の触媒装置で処理された上記排ガスを処理する第三の触媒装置をさらに含み、
上記第三の触媒装置が、三元触媒装置、NOx吸蔵還元型触媒装置、及び選択触媒還元型触媒装置からなる群から選択される触媒装置である、
上記〈6〉項に記載の排ガス浄化システム。
〈8〉上記第二の触媒装置がNOx吸蔵還元型触媒装置であり、
上記第三の触媒装置が選択触媒還元型触媒装置である、
上記〈7〉項に記載の排ガス浄化システム。
〈9〉上記内燃機関が、リーンバーンエンジンである、上記〈6〉〜〈8〉項のいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。
〈10〉上記〈6〉〜〈9〉項のいずれか一項に記載の排ガス浄化システムにおいて上記第一の触媒装置の劣化を検出する方法であって、
上記第一の触媒装置にリッチ雰囲気の排ガスを供給し、その後で、上記第一の触媒装置に、酸素濃度が1%〜2%の範囲であるリーン雰囲気の排ガスを供給すること、
上記リーン雰囲気の排ガスを供給している間に上記第一の触媒装置において消費される酸素量を評価することを含む、
排ガス浄化触媒装置の劣化検出方法。
〈11〉上記リッチ雰囲気のガスの空燃比が、12.5〜13.7の範囲である、上記〈10〉項に記載の排ガス浄化触媒装置の劣化検出方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排ガス浄化能力が向上した排ガス浄化触媒装置、これを組み込んだ排ガス浄化システム、及びこの排ガス浄化触媒装置の劣化検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、排ガス浄化触媒装置の劣化を検出する本発明の方法に関し、エンジンから排出された排ガスの空燃比(A/F)と、時間との関係を示した概略図である。
図2図2は、排ガス浄化触媒装置の劣化を検出する本発明の方法の一実施形態を示すチャート図である。
図3図3は、例A1〜例A3の排ガス浄化触媒装置に関して、触媒の温度(℃)及びリーン雰囲気でのHC浄化率(%)の関係を示す図である。
図4図4は、例B1〜例B7の排ガス浄化触媒装置の第二の触媒層に含有されているPd及びRhに関して、Rhの質量に対するPdの質量の割合(質量比)、及びリーン雰囲気でのHC浄化率(%)の関係を示す図である。
図5図5は、例B1〜例B7の排ガス浄化触媒装置の第二の触媒層に含有されているPd及びRhに関して、Rhの質量に対するPdの質量の割合(質量比)、及びリッチ雰囲気でのNOx浄化率(%)の関係を示す図である。
図6図6は、例C1及び例C2の排ガス浄化触媒装置の概略図である。
図7図7は、例C3の排ガス浄化触媒装置の概略図である。
図8図8は、例C1〜例C3の排ガス浄化触媒装置のリーン雰囲気でのHC浄化率(%)を示した図である。
図9図9は、酸素消費量検出試験において、リッチ雰囲気の排ガスの空燃比が12.5であるときの、例C1〜例C3の排ガス浄化触媒装置の酸素消費量(正規化)を示した図である。
図10図10は、酸素消費量検出試験において、リッチ雰囲気の排ガスの空燃比が13.7であるときの、例C1〜例C3の排ガス浄化触媒装置の酸素消費量(正規化)を示した図である。
図11図11は、酸素消費量検出試験において、リッチ雰囲気の排ガスの空燃比が13.7であるときの、例C1〜例C3の排ガス浄化触媒装置のCO生成量(mg)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、図面の寸法比率は、説明の都合上変更されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0015】
本発明において、「基材の体積」とは、ハニカム構造の孔を含む基材の体積を意味する。
【0016】
〈Rhの特性〉
Rhは、NOxの還元反応を触媒する能力が高い金属である一方で、比較的酸化され易い金属である。例えば、Rh微粒子は、リーン雰囲気では、ほとんど酸化されている状態である。このRh酸化物微粒子をリッチ雰囲気に曝した場合には、Rh酸化物微粒子がRh金属微粒子に還元される。このRh金属微粒子が、RhのNOx還元能力を発揮すると考えられている。すなわち、リッチ雰囲気において、Rh微粒子がNOxの還元反応を効率的に触媒するためには、Rh微粒子の状態が、その酸化物でなく、金属の状態である必要がある。
【0017】
〈セリアの特性〉
セリアは、リーン雰囲気で酸素を吸蔵し、リッチ雰囲気で酸素を放出するOSC(Oxygen Storage Capacity)特性を有する。このため、OSC材としてのセリアを三元触媒等で好適に採用することができる。なお、酸素を吸蔵した状態のセリアを立方晶系蛍石型構造のセリア(CeO型)としても言及し、かつ酸素を放出した状態のセリアを六方晶系蛍石型構造のセリア(Ce型)としても言及してもよい。
【0018】
セリアのこのOSC能によれば、リッチ雰囲気において、多量のセリアがRh酸化物微粒子それ自体の還元を抑制して、Rh金属微粒子がNOxの還元反応を触媒する効率が不十分となる可能性がある。
【0019】
〈Pdの特性〉
Pdは、HCやCOの酸化反応を触媒する能力が高い金属である一方で、Rhと比較的に合金化し易い金属である。Pd及びRhが合金化した場合には、RhがNOxの還元反応を触媒する能力が低下する可能性がある。
【0020】
このPdの特性によれば、Pdの量、特にRhの量に対するPdの量が比較的に多い場合には、Rh及びPdが合金化し、これによってRhがNOx還元反応を触媒する能力が低下する可能性がある。
【0021】
本発明者らは、上記のセリア、Rh、及びPdの関係を検討し、下記の排ガス浄化触媒装置を見出した。
【0022】
《本発明の排ガス浄化触媒装置》
〈本発明の排ガス浄化触媒装置の手段1〉
本発明の排ガス浄化触媒装置は、基材と、基材の表面上に形成されている、Pdを含有している第一の触媒層と、第一の触媒層の表面上に形成されている第二の触媒層とを含む。この排ガス浄化触媒装置では、第二の触媒層において、セリア、Pd、及びRhが、混合状態で同一層に含有され;第一及び第二の触媒層において、基材の体積1Lあたりの蛍石型構造のセリアの総質量が、16.0g以下である。
【0023】
本発明の排ガス浄化触媒装置では、第一及び第二の触媒層において、基材の体積1Lあたりの蛍石型構造のセリアの総質量が、十分に小さい。したがって、リッチ雰囲気において、セリアがRh酸化物の還元を、ほとんど抑制することなく、Rh金属がNOxの還元反応を十分に触媒することができる。
【0024】
したがって、第一及び第二の触媒層において、基材の体積1Lあたりの蛍石型構造のセリアの総質量は、16.0g以下、15.0g以下、14.0g以下、13.0g以下、又は10.0g以下でよい。
【0025】
また、本発明の排ガス浄化触媒装置では、任意選択的に第一及び第二の触媒層が、Rh金属への還元を抑制しない範囲の量で上記の構造のセリアを有している。したがって、リーン雰囲気及びリッチ雰囲気を、ストイキ雰囲気及びその付近の雰囲気に緩和し、これによってHC、CO、及びNOxを一括して浄化することが可能であり、かつ/又はリッチ雰囲気において、Rh金属が、NOxの還元反応を十分に触媒することが可能である。
【0026】
したがって、基材の体積1Lあたりの第一及び第二の触媒層の上記の構造のセリアの総質量は、特に限定されないが、0.0g以上、0.0g超、1.0g以上、又は3.0g以上でよい。
【0027】
なお、セリアの構造の例は、蛍石型構造、及びパイロクロア型構造を挙げることができる。蛍石型構造のセリアの酸素吸蔵速度、及び酸素放出速度は、比較的速い。したがって、このセリアは、それぞれ、リーン雰囲気及びリッチ雰囲気の変化に対する感度が高く、これによってこれらの雰囲気が、ストイキ雰囲気及びその付近の雰囲気に迅速に緩和され易い。
【0028】
他方、パイロクロア型構造のセリアの酸素吸蔵速度及び酸素放出速度は、比較的遅い。したがって、このセリアは、リーン雰囲気及びリッチ雰囲気の変化に対する感度が低く、これらの雰囲気が、ストイキ雰囲気及びその付近の雰囲気に迅速に緩和されにくい。
【0029】
したがって、本発明者らは、主なOSC材として機能し、かつRh及びPdに対する影響、特にRhに対する影響が大きい蛍石型構造のセリアに着目し、この量を規定するのが好ましいことを知見した。
【0030】
〈本発明の排ガス浄化触媒装置の手段2〉
さらに、本発明の排ガス浄化触媒装置では、第二の触媒層において、基材の体積1LあたりのPdの質量が、0.32g以上である。
【0031】
上記したように、排ガス浄化触媒装置中の特定構造のセリアの量が少ないため、Rhの触媒活性が十分に発揮される。したがって、Pdとの合金化によるRhの性能の低下を相殺することが可能であるため、本発明の排ガス浄化触媒装置は、比較的多くの量のPdを含有することができる。Pdの量が比較的に多い場合には、リーン雰囲気におけるHC等の酸化反応が促進され、これによってHC等の浄化率を向上することができる。
【0032】
したがって、第二の触媒層において、基材の体積1LあたりのPdの質量は、0.32g以上、0.35g以上、0.40g以上、0.45g以上、又は0.51g以上でよい。さらに、第一の触媒層に含有されているPdの質量に対して、第二の触媒層に含有されているPdの質量の質量比は、0.05以上、0.25以上、0.40以上、0.45以上、又は0.48以上でよい。
【0033】
また、本発明の排ガス浄化触媒装置では、Pdの量が比較的に少ない場合には、Rhの触媒活性を十分に発揮することができる。
【0034】
したがって、第二の触媒層において、基材の体積1LあたりのPdの質量は、特に限定されないが、0.64g以下、0.62g以下、又は0.60g以下でよい。さらに、第一の触媒層に含有されているPdの質量に対して、第二の触媒層に含有されているPdの質量の質量比は、特に限定されないが、0.68以下、0.66以下、又は0.64以下でよい。
【0035】
なお、第二の触媒層に含有されているPd及びRhに関して、Rhの質量に対するPdの質量の質量比は、特に限定されないが、0.33以上、1.33以上、2.00以上、2.12以上、2.66以上、又は3.00以上でよく、かつ6.00以下、7.00以下、8.00以下、10.00以下、又は12.64以下でよい。
【0036】
この質量比が比較的小さい場合には、Rhの割合が多くなる。したがって、リッチ雰囲気でのNOxの浄化が促進される。この質量比が比較的大きい場合には、Pdの割合が多くなる。したがって、リーン雰囲気でのHCの浄化が促進される。
【0037】
すなわち、これらの事実によれば、本発明の排ガス浄化触媒装置は、第二の触媒層において、セリア、Pd、及びRhが、混合状態で同一層に含有されている場合でさえ、高い排ガス浄化能力を達成することができる。
【0038】
したがって、本発明によれば、排ガス浄化能力が向上した排ガス浄化触媒装置を提供することができる。
【0039】
〈本発明の排ガス浄化触媒装置の任意選択的な手段1〉
また、本発明の排ガス浄化触媒装置では、任意選択的に第二の触媒層において、Pdの一部又は全部が、セリアに担持されている。
【0040】
Pd、及びそれが担持されているセリアの組み合わせは、HC等を酸化するのに好適である。したがって、HC等の浄化率をより向上することができる。
【0041】
〈本発明の排ガス浄化触媒装置の任意選択的な手段2〉
また、本発明の排ガス浄化触媒装置では、任意選択的に第二の触媒層が、アルミナを更に含有し、かつPdの一部又は全部が、アルミナに担持されている。
【0042】
Pd、及びそれが担持されているアルミナの組み合わせは、排ガス中の高沸点HCを分解し、この高沸点HCを、比較的に還元力の高い低沸点HC、CO、及びHに転換することができる。また、これらの還元力は、上記の順に高いことが知られている(すなわち、還元力:高沸点HC<低沸点HC<CO<H)。したがって、例えばリッチ雰囲気において、還元力の低い高沸点HCを、比較的に還元力の高い低沸点HC、CO、及びHに転換し、結果としてこれらを還元剤として使用することができる。
【0043】
結果として、Pd、及びそれが担持されているアルミナの組み合わせは、排ガスの雰囲気が、弱リッチ雰囲気である場合でさえ、Rh酸化物やセリアの還元を促進することができる。
【0044】
なお、排ガス浄化触媒装置を構成している材料及び元素、並びにその量等に関して、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法によって、測定することができる。
【0045】
本発明の排ガス浄化触媒装置の構成等を、下記で説明する。
【0046】
〈本発明の排ガス浄化触媒装置の構成〉
(基材)
基材は、排ガスを通過させるガス流路(孔としても言及される)を有する。このガス流路の構造は、例えばハニカム構造、フォーム構造、又はプレート構造でよい。基材の材質の例は、特に限定されず、コーディエライト、SiC等のセラミックス製のもの、金属製のもの等でよい。
【0047】
(第一の触媒層)
第一の触媒層は、Pd、並びに任意選択的な触媒金属、担体、及びシンタリング抑制材を含有している。
【0048】
Pd以外の触媒金属及び担体、並びにそれらの量は、第一の触媒層に含有されているPdの作用効果、並びに第二の触媒層に含有されているセリア、Pd、及びRhの作用効果を抑制しない限り、特に限定されない。
【0049】
第一の触媒層に含有されている担体の例として、特に限定されないが、シリカ(SiO)、酸化マグネシウム(MgO)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、及びそれらの固溶体、並びにそれらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0050】
SiOは、NOxの還元反応を触媒する触媒金属と相性がよい。MgOは、NOxを吸蔵するKやBaとの相性がよい。ZrOは、他の粉末担体のシンタリングを抑制する。また、ZrOは、触媒金属としてのRhと組み合わせることによって、水蒸気改質反応を生じてHを生成することができる。酸塩基両性担体、例えば、Alは高い比表面積を有し、かつ拡散障壁として機能するため、これを、触媒の能力を向上させるのに用いることができる。また、TiOは、触媒金属の硫黄被毒を抑制する効果を発揮することができる。
【0051】
なお、セリアの形態は、それ単独の粒子の形態、又はセリア及び一若しくは複数の他の酸化物を含有している複合酸化物粒子の形態でもよい。「複合酸化物微粒子」とは、少なくとも2種類の金属酸化物が少なくとも部分的に固溶している材料を意味している。したがって、例えば、セリア及びジルコニアを含有している複合酸化物粒子とは、セリア及びジルコニアが少なくとも部分的に固溶しており、特にセリア及びジルコニアが、少なくとも部分的に、単一の結晶構造の酸化物を共に形成していることを意味する。すなわち、例えば、「セリア及びジルコニアを含有している複合酸化物粒子」は、セリア及びジルコニアが固溶している部分だけでなく、セリア及びジルコニアが、それぞれ単独で存在している部分を有していてもよい。
【0052】
セリアの形態が、セリア及び一又は複数の他の酸化物を含有している複合酸化物粒子の形態である場合には、セリアの質量は、これが含有されている複合酸化物粒子中のセリアの割合(質量%)と、当該複合酸化物粒子の質量とを掛け合わせることによって算出される値である。例えば、蛍石型構造のセリアの質量は、これが含有されている複合酸化物粒子中の蛍石型構造のセリアの割合(質量%)と、当該複合酸化物粒子の質量とを掛け合わせることによって算出される値である。
【0053】
シンタリング抑制材は、担体同士のシンタリング、触媒金属同士のシンタリング、及び担体に対する触媒金属の埋没を抑制することができる。シンタリング抑制材の例は、特に限定されないが、硫酸バリウムでよい。
【0054】
(第二の触媒層)
第二の触媒層は、セリア、Pd、及びRh、並びに任意選択的な触媒金属、担体、例えばアルミナ担体、及びシンタリング抑制材を含有している。
【0055】
Pd及びRh以外の触媒金属並びにセリア以外の担体、並びにそれらの量は、第一の触媒層に含有されているPdの作用効果、及び第二の触媒層に含有されているセリア、Pd、及びRhの作用効果を抑制しない限り、特に限定されない。
【0056】
第二の触媒層に含有されている担体に関して、上記の第一の触媒層に含有されている担体の記載を参照することができる。
【0057】
第二の触媒層に含有されているシンタリング抑制材に関して、上記の第一の触媒層に含有されているシンタリング抑制材の記載を参照することができる。
【0058】
本発明の排ガス浄化触媒装置に関して、下記の排ガス浄化触媒装置の製造方法の記載と、下記の本発明の排ガス浄化システムの記載と、下記の本発明の排ガス浄化触媒装置の劣化検出方法の記載とを参照することができる。
【0059】
《排ガス浄化触媒装置の製造方法》
排ガス浄化触媒装置を製造する方法は、例えば、下記の工程を含む:
基材に、第一の触媒層スラリーを塗工して、第一の触媒層スラリー層を形成し、第一の触媒層スラリー層を乾燥及び/又は焼成して、第一の触媒層を形成する工程;かつ
基材の表面上に形成された第一の触媒層に、さらに第二の触媒層スラリーを塗工して、第二の触媒層スラリー層を形成し、第二の触媒層スラリー層を乾燥及び/又は焼成して、第二の触媒層を形成する工程。
【0060】
〈第一の触媒層を形成する工程〉
(第一の触媒層スラリーの調製及び塗工)
第一の触媒層を形成する工程は、第一の触媒層スラリーを調製する操作を含んでよい。
【0061】
第一の触媒層スラリーは、上記の本発明の排ガス浄化触媒装置の第一の触媒層に含まれる材料の他に、溶媒及びバインダーを含んでよい。
【0062】
溶媒の例は、特に限定されないが、例えば水やイオン交換水でよい。また、バインダーの例は、特に限定されないが、アルミナバインダーでよい。
【0063】
第一の触媒層スラリーを塗工する方法の例は、特に限定されないが、ウォッシュコート法でよい。
【0064】
(第一の触媒層スラリー層の乾燥等)
第一の触媒層スラリー層を乾燥する温度、時間、及び雰囲気は、特に限定されないが、例えば80℃〜120℃の範囲、1時間〜10時間の範囲、及び大気雰囲気でよい。第一の触媒層スラリー層を焼成する温度、時間、及び雰囲気は、特に限定されないが、400℃〜1000℃の範囲、2時間〜4時間の範囲、及び大気雰囲気でよい。
【0065】
〈第二の触媒層を形成する工程〉
(第二の触媒層スラリーの調製及び塗工、並びにその層の乾燥等)
第二の触媒層を形成する工程では、第二の触媒層スラリーを調製する操作を含んでよい。
【0066】
第二の触媒層スラリーの調製及び塗工、並びにその層の乾燥等に関して、上記の第一の触媒層スラリーの調製及び塗工、並びにその層の乾燥等の記載を参照することができる。
【0067】
排ガス浄化触媒装置の製造方法に関して、上記の本発明の排ガス浄化触媒装置の記載と、下記の本発明の排ガス浄化システムの記載と、下記の本発明の排ガス浄化触媒装置の劣化検出方法の記載とを参照することができる。
【0068】
従来の排ガス浄化システムと、本発明の排ガス浄化システムとを、以下で説明する。
【0069】
《排ガス浄化システム》
〈従来の排ガス浄化システム〉
従来の排ガス浄化システムの例として、上記したように、内燃機関;第一の触媒装置としてのスタートコンバータ型触媒装置(以下、SC型触媒装置としても言及される);第二の触媒装置としてのNOx吸蔵還元型触媒装置(以下、NSR型触媒装置としても言及される);及び第三の触媒装置としての選択触媒還元型触媒装置(以下、SCR型触媒装置としても言及される)を含む排ガス浄化システムが知られている。
【0070】
上記の内燃機関は、排ガスを排出する。この排ガス中には、空燃比がリッチである場合に、HCやCOが比較的多く含まれ、また空燃比がリーンである場合には、NOxが比較的多く含まれる。
【0071】
上記のSC型触媒装置、特にOSC材が含有されている三元触媒型のものは、リーン雰囲気で酸素を吸蔵し、かつリッチ雰囲気で酸素を放出し、これによってストイキ雰囲気及びその近傍の雰囲気を作り出すことができる。また、このSC型触媒は、このストイキ雰囲気及びその近傍の雰囲気において、HC、CO、及びNOxを一括で反応させて浄化する。
【0072】
さらに、このSC型触媒装置は、リッチ雰囲気下で排ガス中に含まれる窒素が水素と反応することにより、アンモニア(NH)を生成する可能性がある。
【0073】
上記のNSR型触媒装置は、リーン雰囲気下では、排ガス中に含まれるNOxを吸蔵する。また、NSR型触媒装置は、吸蔵しているNOxをリッチ雰囲気下で放出する。リッチ雰囲気下で放出されたNOxは、HCやCOにより還元される。この際、上記のSC型触媒装置の場合と同様に、NSR型触媒装置もNHを生成する可能性がある。
【0074】
上記のSCR型触媒装置は、SC型触媒装置及びNSR型触媒装置がリッチ雰囲気下で生成するNHを吸蔵し、かつこのNHをリーン雰囲気で利用することができる。具体的には、このSCR型触媒装置では、リーン雰囲気においてNHと、排ガス中のNOxとが反応し、このNOxが選択的に還元される。
【0075】
したがって、従来の排ガス浄化システムは、排ガス中のHC、CO、及びNOxを比較的効率的に浄化することができる。
【0076】
しかしながら、従来の排ガス浄化システムでは、SC型触媒装置に含有されているOSC材から放出された酸素が、リッチ雰囲気中の還元剤を消費し、これによって当該SC型触媒装置の下流の触媒装置、例えばNSR型触媒装置及びSCR型触媒装置等の触媒装置において、NOxの還元効率が、低下する可能性がある。
【0077】
〈本発明の排ガス浄化システム〉
本発明の排ガス浄化システムは、排ガスを排出する内燃機関と、排ガスを処理する第一の触媒装置と、第一の触媒装置で処理された排ガスを処理する第二の触媒装置とを含む。このシステムでは、第一の触媒装置が、本発明の排ガス浄化触媒装置であり、第二の触媒装置が、三元触媒装置、NOx吸蔵還元型触媒装置、及び選択触媒還元型触媒装置からなる群から選択される触媒装置である。
【0078】
上記したように、本発明の排ガス浄化触媒装置では、基材の体積1Lあたりの第一及び第二の触媒層の特定構造セリアの総質量が、十分に小さい。したがって、本発明の排ガス浄化触媒装置では、リッチ雰囲気で放出される酸素量が少なく、これによってリッチ雰囲気中の還元剤が消費されることを抑制することができる。すなわち、本発明の排ガス浄化触媒装置を、本発明の排ガス浄化システムに適用した場合には、リッチ雰囲気で放出される比較的多量の酸素量を予期して、燃料を過剰に使用する必要がなくてもよい。
【0079】
また、上記したように、本発明の排ガス浄化触媒装置は、NOxの還元反応及びHCの酸化反応を高効率で触媒することができる。
【0080】
したがって、本発明の排ガス浄化システムで第一の触媒装置として上記の本発明の排ガス浄化触媒装置を採用することによって、第一の触媒装置それ自体に高い排ガス浄化能力を発揮させつつ、第一の触媒装置で処理された排ガスを第二の触媒装置で処理する場合に、高いNOxの還元効率を達成することができる。
【0081】
これらの事実によれば、本発明の排ガス浄化システムは、従来の排ガス浄化システムより高い排ガス浄化能力を発揮することが可能である。
【0082】
なお、本発明の排ガス浄化システムは、任意選択的に、第二の触媒装置で処理された排ガスを処理する第三の触媒装置をさらに含む。また、この第三の触媒装置が、三元触媒装置、NOx吸蔵還元型触媒装置、及び選択触媒還元型触媒装置からなる群から選択されてもよい。この構成によって、排ガス浄化能力をさらに向上させることができる。
【0083】
また、本発明の排ガス浄化触媒装置は、第一の触媒装置が上記の本発明の排ガス浄化触媒装置であり、第二の触媒装置がNOx吸蔵還元型触媒装置であり、かつ第三の触媒装置が選択触媒還元型触媒装置であるのが好ましい。これによって、第一及び第二の触媒装置で生じたNHを、第三の触媒装置で効率よく使用し、これによって、排ガス浄化能力を向上させることができる。
【0084】
本発明の排ガス浄化システムに関して、上記の本発明の排ガス浄化触媒装置の記載と、上記の排ガス浄化触媒装置の製造方法の記載と、下記の本発明の排ガス浄化触媒装置の劣化検出方法の記載を参照することができる。
【0085】
《本発明の排ガス浄化触媒装置の劣化検出方法》
上記の本発明の排ガス浄化システムにおいて第一の触媒装置の劣化を検出する本発明の方法は、第一の触媒装置にリッチ雰囲気の排ガスを供給し、その後で、第一の触媒装置に、酸素濃度が1%〜2%の範囲であるリーン雰囲気の排ガスを供給すること、かつリーン雰囲気の排ガスを供給している間に第一の触媒装置において消費される酸素量を評価することを含む。
【0086】
〈排ガス浄化触媒装置の劣化を検出する従来の方法の説明〉
排ガス浄化触媒装置、特にOSC材を含有しているSC型触媒装置では、リッチ雰囲気でOSC材から酸素が放出され、この酸素がHC及びCO等を酸化する(酸素反応)。また、このSC型触媒装置では、リーン雰囲気でOSC材それ自体が酸素を吸蔵する(酸素吸蔵)。かかる触媒装置の劣化を検出する方法の例として、触媒装置の劣化の前後において、その酸素反応量及び酸素吸蔵量の総量(「酸素消費量」としても言及される)を測定し、劣化の前後の触媒装置の酸素消費量の差分を算出し、これによって触媒装置の劣化を検出する方法が知られている。しかしながら、この差分が小さい場合には、劣化の検出が困難になる可能性がある。
【0087】
なお、酸素消費量の差分が小さくなる理由の例は、排ガス浄化触媒装置の容量が小さいこと;OSC材が少ないこと;リーン雰囲気で供給される酸素濃度が高いため、触媒装置で消費されなかった酸素が触媒装置を通過し、この酸素が検出され、これによって酸素消費量の評価が困難になることなどを挙げることができる。
【0088】
〈排ガス浄化触媒装置の劣化を検出する本発明の方法の説明〉
排ガス浄化触媒装置の劣化を検出する本発明の方法では、第一の触媒装置、すなわち上記の本発明の排ガス浄化触媒装置にリッチ雰囲気の排ガスを供給することによって、排ガス浄化触媒装置中のセリアに吸蔵されている酸素の一部又は全部を放出させる。その結果として、排ガス浄化触媒装置中において、酸素を放出した状態のセリア(Ce型のセリアとしても言及される)の割合が増加し、リーン雰囲気での酸素吸蔵量が増加する。
【0089】
さらに、この方法では、第一の触媒装置に、リーン雰囲気の排ガス、特に酸素濃度が1%〜2%の範囲であるリーン雰囲気の排ガスを供給することによって、酸素反応量及び酸素吸蔵量の量、特に総量を測定する。
【0090】
リーン雰囲気の酸素濃度が高い場合には、酸素の消費、特に酸素の吸蔵が短時間で実質的に完了する。この場合には、酸素消費量の評価を、正確に行うことができない可能性がある。
【0091】
しかしながら、本発明の方法では、リーン雰囲気の酸素濃度が上記の低い範囲にあるため、排ガス浄化触媒装置で酸素が、長時間にわたって消費される。結果として、酸素が、十分に吸蔵され、かつ十分に反応して初めて、排ガス浄化触媒装置から酸素が流出し、この酸素が検出される。したがって、酸素消費量の評価を、より正確に行うことができる。
【0092】
これらの事実によれば、劣化の前後の触媒装置の酸素消費量の差分が小さい場合でさえ、酸素消費量の評価を、より正確に行うことができる。したがって、OSC材としてのセリアの量が比較的少ない本発明の排ガス浄化触媒装置に関して、本発明の方法を好適に適用することができる。
【0093】
なお、本発明の方法におけるリーン雰囲気の空燃比の例は、14.8以上、14.9以上、又は15.0以上でよく、かつ15.3以下、15.2以下、又は15.1以下でよい。これによって、問題、例えば、第一の触媒装置で吸蔵される酸素が還元剤等で過剰に消費される等の問題を回避することができる。
【0094】
〈本発明の方法の任意選択的な手段1〉
(リーン雰囲気での酸素反応量の増加)
また、本発明の排ガス浄化触媒装置の第二の触媒層では、任意選択的にPdの一部又は全部が、蛍石型構造のセリアに担持されている。この場合には、上記したようにリーン雰囲気において、HCやCO等の酸化活性を向上させることができる。したがって、リーン雰囲気において、酸素消費量、特に酸素反応量が増加する。
【0095】
(リーン雰囲気での酸素吸蔵量の増加)
また、この構成を採用した本発明の方法では、リッチ雰囲気を比較的強いリッチ雰囲気にしてよい。例えば、このリッチ雰囲気の空燃比を、12.0以上、12.3以上、又は12.5以上にしてよく、かつ13.0以下、12.8以下、又は12.6以下にしてよい。この場合には、比較的強いリッチ雰囲気によって、酸素を吸蔵した状態のセリアを、酸素を放出した状態のセリアに十分に転換することができる。
【0096】
さらに、上記のように、セリア、特に蛍石型構造のセリアは、OSC特性を有する。このOSC特性は、触媒金属、例えば、Pd等の触媒金属が担持されているセリアにおいてより顕著に発揮する。すなわち、Pdが担持されているセリアは、高いOSC特性を有する。
【0097】
したがって、本発明の方法において、かかる構成を有している排ガス浄化触媒装置にリッチ雰囲気の排ガスを供給した場合には、この排ガス浄化触媒装置中のセリアに吸蔵されている酸素の大部分を迅速に放出させることができる。
【0098】
これによって、リッチ雰囲気において、酸素を放出した状態のセリアの割合を高め、リーン雰囲気において、セリアの酸素吸蔵量を向上することができる。したがって、リーン雰囲気において、酸素消費量、特に酸素吸蔵量が増加する。
【0099】
これらの事実によれば、本発明の方法における酸素消費量の評価を、更に正確に行うことができる。
【0100】
〈本発明の方法の任意選択的な手段2〉
(リーン雰囲気での酸素吸蔵量の増加)
さらに、本発明の排ガス浄化触媒装置の第二の触媒層が、任意選択的にアルミナを更に含有し、かつPdの一部又は全部が、アルミナに担持されている場合には、上記したようにリッチ雰囲気において、排ガス中の高沸点HCを分解し、この高沸点HCを、比較的に還元力の高い低沸点HC、CO、及びHに転換することができる(還元力:高沸点HC<低沸点HC<CO<H)。したがって、リッチ雰囲気において、このCOやH等がセリア中の酸素と迅速に反応し、酸素を放出した状態のセリアの割合が高まり、これによってリーン雰囲気において、セリアの酸素吸蔵量を向上することができる。
【0101】
また、この構成を採用した本発明の方法では、リッチ雰囲気を比較的弱いリッチ雰囲気にしてよい。例えば、このリッチ雰囲気の空燃比を、13.2以上、13.5以上、又は13.7以上にしてよく、かつ14.2以下、14.0以下、又は13.8以下にしてよい。この場合には、比較的弱いリッチ雰囲気でさえ、アルミナ担持Pdによる高沸点HCの分解で生じたCOやH等が、酸素を吸蔵した状態のセリアを、酸素を放出した状態のセリアに転換することができる。
【0102】
すなわち、この構成を採用した本発明の方法では、リッチ雰囲気を比較的弱いリッチ雰囲気にしてよいため、排ガス浄化触媒装置の劣化の検出をする際の燃費を、抑制することができる。
【0103】
図1は、排ガス浄化触媒装置の劣化を検出する本発明の方法に関し、エンジンからの排ガスの空燃比(A/F)と、時間との関係を示した概略図である。図1の14.7の点線は、理論空燃比を示し;リーンの点線は、通常走行時の空燃比を示し;リッチの点線は、通常走行時又は劣化検出時の空燃比を示し;かつ弱リーンの点線は、劣化検出時の空燃比を示している。特に、リッチの点線は、例えば12.5〜13.7の範囲に存在し、また弱リーンの点線は、例えば酸素濃度が1%〜2%である空燃比の範囲に存在している。
【0104】
図2は、排ガス浄化触媒装置の劣化を検出する本発明の方法の一実施形態を示すチャート図である。
【0105】
最初に、エンジンを始動する(S1)。次に、劣化検出を開始する条件が充足したかどうかを判定する(S2)。劣化検出を開始する条件を充足した場合には、排ガスの空燃比をリッチ雰囲気に制御する(S3)。次に、排ガス浄化触媒装置を通過した排ガスの雰囲気がリッチ雰囲気(空燃比が14.7以下)になったかどうかを判定する(S4)。かかる排ガスの雰囲気がリッチ雰囲気になった場合には、排ガスの空燃比をリーン雰囲気(酸素濃度が1%〜2%)に制御する(S5)。このリーン雰囲気の排ガスを供給している間に消費される酸素量を、測定する(S6)。この酸素消費量が、排ガス浄化触媒装置の劣化条件に適合するかを判定する(S7)。そして、排ガス浄化触媒装置が、劣化しているか(S8)、又は正常に機能しているか(S9)を判定する。
【0106】
排ガス浄化触媒装置の劣化を検出する本発明の方法に関して、上記の本発明の排ガス浄化触媒装置の記載と、上記の排ガス浄化触媒装置の製造方法の記載と、上記の本発明の排ガス浄化システムの記載とを参照することができる。
【0107】
以下に示す実施例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
【実施例】
【0108】
《留意》
以下、各例の排ガス浄化触媒装置の製造方法を示すが、この製造方法で使用する材料の量、例えば「アルミナ型複合粉末」等の材料の量は、この排ガス浄化触媒装置の構成を表現した表(各例で参照されたい)に記載されている「アルミナ型複合酸化物」等の量を達成することができるような量であることを理解されたい。
【0109】
また、各例の表において、単位「g/L」とは、基材の体積1Lあたりに担持されている材料の質量(g)を意味する。例えば、表に「アルミナ型複合酸化物16.5(g/L)」と記載されている場合には、この表現は、基材の体積1Lあたりに、アルミナ型複合酸化物が16.5g担持されていることを意味している。
【0110】
また、「上流端」とは、ハニカム基材を通過する排ガスがハニカム基材に進入する入口部分を意味し、かつ「下流端」とは、かかる排ガスがハニカム基材から退出する出口部分を意味する。
【0111】
《例A1〜例A3:触媒金属の組み合わせの検討》
基材と、基材の表面上に形成されている第一の触媒層と、第一の触媒層の表面上に形成されている第二の触媒層とを含む排ガス浄化触媒装置に関して、リーン雰囲気でのHC浄化率(%)を測定し、各例の排ガス浄化触媒装置の各層に含有されている触媒金属の組み合わせを検討した。
【0112】
〈例A1の排ガス浄化触媒装置の製造〉
(第一の触媒層スラリーの調製及び塗工)
アルミナ型複合粉末(La:1wt%、Al:99wt%)に、Pdを含む硝酸Pd溶液を加え、これを1時間にわたって攪拌し、120℃で30分にわたって乾燥し、500℃で2時間にわたって焼成し、これによってPd担持粉末を調製した。
【0113】
アルミナ型複合粉末(La:1wt%、Al:99wt%)に、Ptを含む硝酸Pt溶液を加え、これを1時間にわたって攪拌し、120℃で30分にわたって乾燥し、500℃で2時間にわたって焼成し、これによってPt担持粉末を調製した。
【0114】
上記のPd担持粉末、及びPt担持粉末にセリアジルコニア型複合粉末(CeO:30wt%、ZrO:60wt%、La:5wt%、Y:5wt%)と、パイロクロア型構造を有するセリアジルコニア型複合粉末(CeO:54.3wt%、ZrO:45.7wt%)と、アルミナ型複合粉末(La:4wt%、Al:96wt%)と、シンタリング抑制材としての硫酸バリウム粉末と、バインダーとしてのアルミナバインダーと、溶媒としてのイオン交換水とを混合し、これによって第一の触媒層スラリーを得た。
【0115】
この第一の触媒層スラリーを用いてコージェライト製ハニカム基材(0.875L、600セル、3ミル)の上流端から下流端に向かって、全長の90%の長さでウォッシュコートを施し、これによって第一の触媒層スラリー層を形成した。
【0116】
(第一の触媒層スラリー層の乾燥等)
これを乾燥及び焼成することによって第一の触媒層を形成した。
【0117】
(第二の触媒層スラリー1の調製及び塗工:上流から全長の22%)
アルミナ型複合粉末(La:4wt%、Al:96wt%)に、Pdを含む硝酸Pd溶液を加え、1時間にわたって攪拌し、120℃で30分にわたって乾燥し、500℃で2時間にわたって焼成し、これによってPd担持粉末を調製した。
【0118】
このPd担持粉末にセリアジルコニア型複合粉末(CeO:60wt%、ZrO:30wt%、La:3wt%、Pr11:7wt%)と、シンタリング抑制材としての硫酸バリウム粉末と、バインダーとしてのアルミナバインダーと、溶媒としてのイオン交換水とを混合し、これによって第二の触媒層スラリー1を得た。
【0119】
上記のハニカム基材の上流端から下流端に向かって、全長の22%(「上流側コート率」としても言及される)の長さでウォッシュコートを施し、これによって第二の触媒層スラリー1層を形成した。
【0120】
(第二の触媒層スラリー1層の乾燥等)
これを乾燥及び焼成することによって第二の触媒層1を形成した。
【0121】
(第二の触媒層スラリー2の調製及び塗工:下流端から全長の80%)
セリアジルコニア型複合粉末(CeO:20wt%、ZrO:44wt%、La:2wt%、Nd:2wt%、Al:30wt%、Y:2wt%)に、Rhを含む硝酸Rh溶液を加え、1時間にわたって攪拌し、120℃で30分にわたって乾燥し、500℃で2時間にわたって焼成し、これによってRh担持粉末を調製した。
【0122】
このRh担持粉末にアルミナ型複合粉末(La:1wt%、Al:99wt%)と、バインダーとしてのアルミナバインダーと、溶媒としてのイオン交換水とを混合し、これによって第二の触媒層スラリー2を得た。
【0123】
この第二の触媒層スラリー2を用いて上記のハニカム基材の下流端から上流端に向かって、全長の80%(「下流側コート率」としても言及される)の長さでウォッシュコートを施し、これによって第二の触媒層スラリー2層を形成した。
【0124】
(第二の触媒層スラリー2層の乾燥等)
これを乾燥及び焼成することによって第二の触媒層2を形成した。以上の工程によって、例A1の排ガス浄化触媒装置を得た。
【0125】
〈例A2及び例A3の排ガス浄化触媒装置の製造〉
例A1の排ガス浄化触媒装置の製造において、第一の触媒層スラリー中の触媒金属としてのPtを無くし、かつPdの量を変更し、並びに第二の触媒層スラリー中の触媒金属としてのPdを例A3で更に採用したことを除き、例A2及び例A3の排ガス浄化触媒装置を例A1の排ガス浄化触媒装置と同様に調製した。
【0126】
例A1の排ガス浄化触媒装置の構成を下記の表1に示し、かつ例A1〜例A3の排ガス浄化触媒装置を構成している触媒金属の配置及びその量を下記の表2に示している。
【0127】
【表1】
【0128】
なお、表1において、「全長」とは、ハニカム基材の全長を意味している。
【0129】
【表2】
【0130】
〈評価〉
例A1〜例A3の排ガス浄化触媒装置に対して耐久試験を行った後、これらの触媒のリーン雰囲気でのHC浄化率(%)を評価した。
【0131】
(耐久試験)
耐久試験は、例A1〜例A3の排ガス浄化触媒装置をV型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温950℃で50時間にわたって、リッチ、ストイキ、及びリーンの雰囲気の各排ガスを所定の時間で流通させ、これを1サイクルとし、このサイクルを繰り返すことにより、行った。
【0132】
(HC浄化率の評価)
耐久試験後、2Lリーンバーンエンジンの排気側の下流に、排ガス浄化触媒装置を接続し、エンジンを始動させ、堀場MEXA7500Dにて排ガス中のHC浄化率を測定した。触媒の温度(℃)、エンジンの回転数(rpm)、トルク(Nm)、吸入空気量(g/s)、及び空燃比(A/F)を下記の表3に示し、かつ結果を図3に示している。
【0133】
【表3】
【0134】
図3は、例A1〜例A3の排ガス浄化触媒装置に関して、触媒の温度(℃)及びリーン雰囲気でのHC浄化率(%)の関係を示す図である。
【0135】
図3からは、例A1(第一の触媒層にPt有り)及び例A2(第一の触媒層にPt無し)の排ガス浄化触媒装置を比較し、各触媒の温度(400℃、435℃、480℃、及び520℃)で例A2の排ガス浄化触媒装置が、より高いHC浄化率を達成していることが分かる。
【0136】
また、図3からは、例A2(第二の触媒層において、下流端から全長の80%にPd無し)及び例A3(第二の触媒層において、下流端から全長の80%にPd有り)の排ガス浄化触媒装置の各温度(400℃、435℃、480℃、及び520℃)を比較して、例A3の排ガス浄化触媒装置が、より高いHC浄化率を達成していることが分かる。これは、例A3の第二の触媒層に含有されているPdが、HC酸化反応を触媒する高い能力を有し、かつPdが、基材の下流端から全長の80%までコートされていることによって、このPd及び排ガスの間の接触頻度が向上したためと考えられる。
【0137】
《例B1〜例B7:第二の触媒層に含有されているPdの量の検討》
基材と、基材の表面上に形成されている第一の触媒層と、第一の触媒層の表面上に形成されている第二の触媒層とを含み、第一の触媒層がPdを含有し、かつ第二の触媒層がPd及びRhを含有している排ガス浄化触媒装置に関して、リーン雰囲気でのHC浄化率(%)及びリッチ雰囲気でのNOx浄化率(%)を測定し、第二の触媒層に含有されているPdの量を検討した。
【0138】
〈例B2の排ガス浄化触媒装置の製造〉
(第一の触媒層スラリーの調製及び塗工)
アルミナ型複合粉末(La:1wt%、Al:99wt%)に、Pdを含む硝酸Pd溶液を加え、これを1時間にわたって攪拌し、120℃で30分にわたって乾燥し、かつ500℃で2時間にわたって焼成し、これによってPd担持粉末を調製した。
【0139】
このPd担持粉末にセリアジルコニア型複合粉末(CeO:30wt%、ZrO:60wt%、La:5wt%、Y:5wt%)と、パイロクロア型構造を有するセリアジルコニア型複合粉末(CeO:54.3wt%、ZrO:45.7wt%)と、アルミナ型複合粉末(La:4wt%、Al:96wt%)と、シンタリング抑制材としての硫酸バリウム粉末と、バインダーとしてのアルミナバインダーと、溶媒としてのイオン交換水とを混合して第一の触媒層スラリーを得た。
【0140】
この第一の触媒層スラリーを用いてコージェライト製ハニカム基材(0.875L、600セル、3ミル)の上流端から下流端に向かって、全長の90%の長さでウォッシュコートを施し、これによって第一の触媒層スラリー層を形成した。
【0141】
(第一の触媒層スラリー層の乾燥等)
これを乾燥及び焼成することによって第一の触媒層を形成した。
【0142】
(第二の触媒層スラリーの調製及び塗工)
ジルコニア複合酸化物(ZrO:64wt%、La:2wt%、Nd:2wt%、Al:30wt%、Y:2wt%)に、Rhを含む硝酸Rh溶液を加え、これを1時間にわたって攪拌し、120℃で30分にわたって乾燥し、かつ500℃で2時間にわたって焼成し、これによってRh担持粉末を調製した。
【0143】
セリアジルコニア型複合粉末(CeO:30wt%、ZrO:60wt%、La:5wt%、Y:5wt%)にPdを含む硝酸Pd溶液を加え、1時間にわたって攪拌し、120℃で30分にわたって乾燥し、500℃で2時間にわたって焼成し、これによってPd担持粉末を調製した。
【0144】
これらのRh担持粉末及びPd担持粉末粉末にアルミナ型複合粉末(La:1wt%、Al:99wt%)と、バインダーとしてのアルミナバインダーと、溶媒としてのイオン交換水とを混合し、これによって第二の触媒層スラリーを得た。
【0145】
この第二の触媒層スラリーを用いて上記のハニカム基材の下流端から上流端に向かって、全長の100%の長さでウォッシュコートを施し、これによって第二の触媒層スラリー層を形成した。
【0146】
(第二の触媒層スラリー層の乾燥等)
これを乾燥及び焼成することによって第二の触媒層を形成した。以上の工程によって、例B2の排ガス浄化触媒装置を得た。
【0147】
〈例B1、及び例B3〜例B7の排ガス浄化触媒装置の製造〉
例B2の排ガス浄化触媒装置の製造において、第一及び第二の触媒層に含有されているPdの量を変更し、かつ例B6及びB7で第二の触媒層に含有されているRhの量を変更したことを除き、例B1、及び例B3〜例B7の排ガス浄化触媒装置を例B2の排ガス浄化触媒装置と同様に調製した。
【0148】
例B2の排ガス浄化触媒装置の構成を下記の表4に示し、かつ例B1〜例B7の排ガス浄化触媒装置を構成している触媒金属の配置及びその量を下記の表5に示している。
【0149】
【表4】
【0150】
【表5】
【0151】
〈評価〉
例B1〜例B7の排ガス浄化触媒装置に対して耐久試験を行った後、これらの触媒のリーン雰囲気でのHC浄化率(%)、及びリッチ雰囲気でのNOx浄化率(%)を評価した。
【0152】
(耐久試験)
耐久試験は、例A1〜例A3で行った耐久試験と同じである。
【0153】
(HC浄化率の評価)
耐久試験後、HC浄化率の評価を行った。HC浄化率の評価の条件は、例A1〜例A3で行ったものと同じであり、かつ表3の条件番号4を採用した。結果を図4に示している。
【0154】
図4は、例B1〜例B7の排ガス浄化触媒装置に関して、第二の触媒層に含有されているPd及びRhに関して、Rhの質量に対するPdの質量の割合(質量比)、及びリーン雰囲気でのHC浄化率(%)の関係を示す図である。なお、図4中の点は、左側から、それぞれ、例B1〜例B7を示している。
【0155】
図4からは、第二の触媒層(上層)にPdを含まない例B1の排ガス浄化触媒装置と比較して、例B2〜例B7、特に例B3〜例B7の排ガス浄化触媒装置は、高いHC浄化率を達成していることが分かる。すなわち、第二の触媒層(上層)に含有されているPdの含有量が、0.08g/L〜0.64g/Lの範囲、特に0.32g/L〜0.64g/Lの範囲である場合には、高いHC浄化率を達成していることが理解される。
【0156】
(リッチ雰囲気でのNOx浄化率)
2Lリーンバーンエンジンの排気側の下流に、排ガス浄化触媒装置を接続し、エンジンを始動させ、堀場MEXA7500Dにて排ガス中のNOx浄化率を測定した。触媒の温度(℃)は550℃であり、エンジンの回転数(rpm)は3000rpmであり、かつ空燃比(A/F)は14.2であった。結果を図5に示している。
【0157】
図5は、例B1〜例B7の排ガス浄化触媒装置に関して、第二の触媒層に含有されているPd及びRhに関して、Rhの質量に対するPdの質量の割合(質量比)、及びリッチ雰囲気でのNOx浄化率(%)の関係を示す図である。なお、図5中の点は、左側から、それぞれ、例B1〜例B7を示している。
【0158】
図5からは、例B1〜例B5の排ガス浄化触媒装置に関して、第二の触媒層に含有されているPdの含有量が増加した場合でさえ、リッチ雰囲気でのNOx浄化率が高い率で維持され、又は向上していることが理解される。
【0159】
なお、図5の例B6(Rh:0.08g/L)及び例B7(Rh:0.04g/L)では、リッチ雰囲気でのNOx浄化率が、それぞれ約94%及び約88%であるが、これは、PdによってRhのNOx浄化能力が低下したためでなく、第二の触媒層に含有されているRhの含有率が低いためと考えられる。
【0160】
例えば、例B4及び例B7の組み合わせ、並びに例B5及び例B6の組み合わせに関して、いずれの組み合わせも第二の触媒層に含有されているPdの含有量は同じであるが、Rhの含有量が異なる。これらの組み合わせに関してリッチ雰囲気におけるNOx浄化率の増減は、第二の触媒層に含有されているRhの含有量の増減に相関している。
【0161】
《例C1〜例C3:総合性能の検討》
基材と、基材の表面上に形成されている第一の触媒層と、第一の触媒層の表面上に形成されている第二の触媒層とを含み、第一の触媒層がPdを含有し、かつ第二の触媒層がPd及びRhを含有している排ガス浄化触媒装置に関して、総合性能を検討した。
【0162】
〈例C1の排ガス浄化触媒装置の製造:Pd−セリア担持型〉
例B2の排ガス浄化触媒装置の製造において、第一及び第二の触媒層に含有されているPdの量を変更したことを除き、例C1の排ガス浄化触媒装置を例B2の排ガス浄化触媒装置と同様に調製した。例C1の排ガス浄化触媒装置の構成を下記の表6に示している。
【0163】
【表6】
【0164】
〈例C2の排ガス浄化触媒装置の製造:Pd−アルミナ担持型〉
(第一の触媒層スラリーの調製及び塗工)
アルミナ型複合粉末(La:1wt%、Al:99wt%)に、Pdを含む硝酸Pd溶液を加え、これを1時間にわたって攪拌し、120℃で30分にわたって乾燥し、500℃で2時間にわたって焼成し、これによってPd担持粉末を調製した。
【0165】
このPd担持粉末にセリアジルコニア型複合粉末(CeO:30wt%、ZrO:60wt%、La:5wt%、Y:5wt%)と、パイロクロア型構造を有するセリアジルコニア型複合粉末(CeO:54.3wt%、ZrO:45.7wt%)と、アルミナ型複合粉末(La:4wt%、Al:96wt%)と、シンタリング抑制材としての硫酸バリウム粉末と、バインダーとしてのアルミナバインダーと、溶媒としてのイオン交換水とを混合し、これによって第一の触媒層スラリーを得た。
【0166】
この第一の触媒層スラリーを用いてコージェライト製ハニカム基材(1.075L、600セル、2.5ミル)の上流端から下流端に向かって、全長の90%の長さでウォッシュコートを施し、これによって第一の触媒層スラリー層を形成した。
【0167】
(第一の触媒層スラリー層の乾燥等)
これを乾燥及び焼成することによって第一の触媒層を形成した。
【0168】
(第二の触媒層スラリーの調製及び塗工)
ジルコニア複合酸化物(ZrO:64wt%、La:2wt%、Nd:2wt%、Al:30wt%、Y:2wt%)に、Rhを含む硝酸Rh溶液を加え、1時間にわたって攪拌し、120℃で30分にわたって乾燥し、500℃で2時間にわたって焼成し、これによってRh担持粉末を調製した。
【0169】
アルミナ型複合粉末(La:1wt%、Al:99wt%)にPdを含む硝酸Pd溶液を加え、1時間にわたって攪拌し、120℃で30分にわたって乾燥し、500℃で2時間にわたって焼成し、これによってPd担持粉末を調製した。
【0170】
これらのRh担持粉末及びPd担持粉末粉末にセリアジルコニア型複合粉末(CeO:20wt%、ZrO:44wt%、La:2wt%、Nd:2wt%、Al:30wt%、Y:2wt%)と、バインダーとしてのアルミナバインダーと、溶媒としてのイオン交換水とを混合し、これによって第二の触媒層スラリーを得た。
【0171】
この第二の触媒層スラリーを用いて上記のハニカム基材の下流端から上流端に向かって、全長の100%の長さでウォッシュコートを施し、これによって第二の触媒層スラリー層を形成した。
【0172】
(第二の触媒層スラリー層の乾燥等)
これを乾燥及び焼成することによって第二の触媒層を形成した。以上の工程によって、例C2の排ガス浄化触媒装置を得た。例C2の排ガス浄化触媒装置の構成を下記の表7に示している。
【0173】
【表7】
【0174】
〈例C3の排ガス浄化触媒装置の製造:第二の触媒層分離型〉
例A1の排ガス浄化触媒装置の製造において、第一の触媒層スラリーを調製するときに、Pt担持粉末を作製する工程を省略し、Pd担持粉末を作製する工程でPdの量を変更し、かつ基材を変更したことを除き、例C3の排ガス浄化触媒装置を例A1の排ガス浄化触媒装置と同様に調製した。例C3の排ガス浄化触媒装置の構成を下記の表8に示している。
【0175】
【表8】
【0176】
例C1及び例C2の排ガス浄化触媒装置の概略を図6に示し、かつ例C3の排ガス浄化触媒装置の概略を図7に示している。
【0177】
図6は、例C1及び例C2の排ガス浄化触媒装置の概略図である。図6の排ガス浄化触媒装置100では、基材110と、基材110の表面上に形成されている、Pdを含有している第一の触媒層120と、第一の触媒層120の表面上に形成されている第二の触媒層130とを含む。また、この排ガス浄化触媒装置100では、第二の触媒層において、セリア、Pd、及びRhが、混合状態で同一層に含有されている。
【0178】
図7は、例C3の排ガス浄化触媒装置の概略図である。図7の排ガス浄化触媒装置200では、基材210と、基材210の表面上に形成されている、Pdを含有している第一の触媒層220と、第一の触媒層220の表面上に形成されている第二の触媒層230とを含む。また、この排ガス浄化触媒装置200では、第二の触媒層230が、Pdを含有している上流部231、及びRhを含有している下流部232に分割されている。
【0179】
〈評価〉
例C1〜例C3の排ガス浄化触媒装置に対して耐久試験を行った後、これらの触媒のリーン雰囲気でのHC浄化率(%)、及び酸素消費量検出試験を行った。
【0180】
(耐久試験)
耐久試験は、各例の排ガス浄化触媒装置をV型8気筒エンジンの排気系に接続し、触媒の温度を950℃にし、この状態を100時間にわたって保持することによって行った。
【0181】
(リーン雰囲気でのHC浄化率)
耐久試験後、各例の排ガス浄化触媒装置をL型4気筒で排気量2Lのエンジンの排気系に接続し、このエンジンの回転数を2000rpm、トルクを77Nm、空燃比を25(排ガスの構成:NOx=110ppm、HC=3300ppmC、CO=900ppm、O=10%)に調整した。
【0182】
エンジンから排出されるNOx量が所定量に達した後、空燃比を12.5(リッチ雰囲気)に制御し、その次に、空燃比を25(リーン雰囲気)に制御し、HC浄化率を測定した。結果を図8に示している。
【0183】
図8は、例C1〜例C3の排ガス浄化触媒装置のリーン雰囲気でのHC浄化率(%)を示した図である。図8からは、例C1〜例C3の排ガス浄化触媒装置の順で、HC浄化率が高いことが分かる。
【0184】
これは、例C1の排ガス浄化触媒装置では、第二の触媒層において、Pdの一部又は全部がセリアに担持され、かつセリア、Pd、及びRhが、混合状態で同一層に含有されていることによって、HC浄化率が向上したためと考えられる。また、例C2の排ガス浄化触媒装置では、第二の触媒層において、Pdの一部又は全部がアルミナに担持され、かつセリア、Pd、及びRhが、混合状態で同一層に含有されていることによって、HC浄化率が比較的向上したと考えられる。
【0185】
なお、例C3の排ガス浄化触媒装置では、第二の触媒層の上流部の短い区間において、Pdの一部又は全部がセリアに担持されているが、セリア、Pd、及びRhが、混合状態で同一層に長い区間で含有されていないため、HC浄化率が比較的低くなったと考えられる。
【0186】
さらに、例C1〜例C3の排ガス浄化触媒装置では、第一及び第二の触媒層において、基材の体積1Lあたりの蛍石型構造のセリアの総質量が、十分に小さい。このため、第二の触媒層において、Pdの相対量(Rhの量に対するPdの量)、及びPdの絶対量を増加させ、これによってHC酸化反応を十分に触媒することができる。
【0187】
(酸素消費量検出試験)
耐久試験後、酸素消費量検出試験を行った。この酸素消費量検出試験は、排ガス浄化触媒装置の劣化を検出する際の工程の一つである。
【0188】
一般的には、リーン雰囲気での酸素消費量が多いほど、排ガス浄化触媒装置の劣化検出の精度は向上する。しかしながら、例C1〜例C3の排ガス浄化触媒装置では、セリア、特に蛍石型構造のセリアの量が少ない。したがって、例C1〜例C3の排ガス浄化触媒装置の酸素消費量が、上記の構造のセリアが少ない場合でさえ、劣化検出に必要な量を充足するかどうかを評価した。
【0189】
酸素消費量検出試験の概要は下記のとおりである:
耐久試験後、各例の排ガス浄化触媒装置をL型4気筒で排気量2Lのエンジンの排気系に接続し、回転数を2000rpm、トルクを77Nm、空燃比を25(排ガスの構成:NOx=110ppm、HC=3300ppmC、CO=900ppm、O=10%)に調整した。エンジンから排出されるリーン雰囲気でのNOx排出量の積算値が300mgに達した後、排ガスの空燃比をリッチ雰囲気に制御し、次に、排ガスの空燃比をリーン雰囲気、特に弱リーン雰囲気(酸素濃度が1%〜2%の範囲:空燃比が15.0)に制御した。上記リーン雰囲気の排ガスを供給している間に消費される酸素量を、測定した。
【0190】
なお、排ガスの空燃比をリッチ雰囲気にする際には、2つの空燃比12.5(A)及び13.7(B)を採用した結果を、それぞれ図9及び図10に示している。
【0191】
(A)リッチ雰囲気の空燃比が12.5の場合:
図9からは、例C1、例C2、及び例C3の排ガス浄化触媒装置の順で、酸素消費量が高いことが分かる。
【0192】
空燃比が12.5であるリッチ雰囲気におけるセリアの還元の程度(酸素を放出したセリアの割合)に関しては、例C1及び例C2の排ガス浄化触媒装置の還元力が、例C3の排ガス浄化触媒装置の還元力より高いと考えられる。
【0193】
これは、例C1の排ガス浄化触媒装置に関しては、Pdが、セリアに担持され、このセリアが高いOSC特性を発揮し、これによってセリアの還元が促進されるためである。また、例C2に関しては、Pdが、アルミナに担持され、この組み合わせが、高い還元力を有しているH等を生成し、このH等が、セリアを還元するためである。したがって、排ガス浄化触媒装置において酸素を放出した状態のセリアの割合が高い場合には、リーン雰囲気での酸素吸蔵量、ひいては酸素消費量が向上してよい。
【0194】
なお、例C1の排ガス浄化触媒装置では、Pdがセリアに担持されているため、リーン雰囲気での酸素吸蔵量が、特に向上すると考えられる。
【0195】
リーン雰囲気におけるHC等の酸化の効率に関しては、例C1及び例C2の排ガス浄化触媒装置が、例C3の排ガス浄化触媒装置より高いと考えられる。これは、例C1及び例C2の排ガス浄化触媒装置では、Pdが、それぞれセリア及びアルミナに担持され、かつ排ガスとの接触面積が大きいため、Pdの触媒活性が向上するためである。したがって、リーン雰囲気での酸素反応量、ひいては酸素消費量が向上してよい。
【0196】
なお、担体に担持されているPdの触媒活性は、その担体がセリアである場合に特に高い(例C1)。この場合には、リーン雰囲気での酸素反応量がより向上してよい。
【0197】
これらの事実及び論理によれば、例C1、例C2、及び例C3の排ガス浄化触媒装置の順で、酸素消費量が高いことが理解される。
【0198】
(B)リッチ雰囲気の空燃比が13.7の場合:
図10からは、例C2、例C1、及び例C3の排ガス浄化触媒装置の順で、酸素消費量が高いことが分かる。
【0199】
空燃比が13.7であるリッチ雰囲気におけるセリアの還元の程度(酸素を放出したセリアの割合)に関しては、例C1及び例C2の排ガス浄化触媒装置の還元力が、例C3の排ガス浄化触媒装置の還元力より高いと考えられる。
【0200】
これは、上記の(A)のセリアの還元の程度に関する論理と同じである。したがって、排ガス浄化触媒装置において酸素を放出したセリアの割合が高い場合には、リーン雰囲気での酸素吸蔵量、ひいては酸素消費量が向上してよい。
【0201】
なお、空燃比が13.7のリッチ雰囲気である場合には、還元剤(HC等)の量が比較的少ない。この場合には、Pdと、それが担持されているアルミナとの組み合わせ(例C2)が、セリアの還元に関して、特に有利であると考えられる。これは、この組み合わせが、高い還元力を有するH等を生成することが可能なためである。したがって、この場合には、リーン雰囲気での酸素吸蔵量がより向上してよい。
【0202】
リーン雰囲気におけるHC等の酸化の効率に関しては、例C1及び例C2の排ガス浄化触媒装置が、例C3の排ガス浄化触媒装置より高いと考えられる。これは、上記の(A)のリーン雰囲気におけるHC等の酸化の効率に関する論理と同じである。したがって、排ガス浄化触媒装置においてPdが、セリア及び/又はアルミナに担持されている場合には、リーン雰囲気での酸素反応量、ひいては酸素消費量が向上してよい。
【0203】
これらの事実及び論理によれば、例C2、例C1、及び例C3の排ガス浄化触媒装置の順で、酸素消費量が高いことが理解される。
【0204】
なお、図11に、リッチ雰囲気の排ガスの空燃比が13.7であるときの、例C1〜例C3の排ガス浄化触媒装置のCO生成量(mg)を示している。
【0205】
図11からは、例C2、例C1、及び例C3の排ガス浄化触媒装置の順にリッチ雰囲気でのCO生成量が多いことが分かる。これは、例C2の排ガス浄化触媒装置では、Pdがアルミナに担持されているためと考えられる。なお、例C3の排ガス浄化触媒装置でも、Pdがアルミナに担持されているが、第二の触媒層の上流から全長の22%に、これらが配置されているため、排ガスとの接触面積が小さく、これによってCO生成量が少なくなったと考えられる。
【0206】
本発明の好ましい実施形態を詳細に記載したが、特許請求の範囲から逸脱することなく、本発明で使用される装置、機器、及び薬品等について、そのメーカー、等級、及び品質等の変更が可能であることを当業者は理解する。
【符号の説明】
【0207】
100,200 排ガス浄化触媒装置
110,210 基材
120,220 第一の触媒層
130,230 第二の触媒層
231 上流部
232 下流部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11