特許第6378306号(P6378306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6378306管端部の接合部に対する摩擦撹拌溶接処理及びそれにより製造された製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378306
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】管端部の接合部に対する摩擦撹拌溶接処理及びそれにより製造された製品
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20180813BHJP
   F28F 9/18 20060101ALI20180813BHJP
   F16B 4/00 20060101ALI20180813BHJP
   F16B 9/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B23K20/12 362
   B23K20/12 330
   F28F9/18
   F16B4/00 D
   F16B9/00
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-501015(P2016-501015)
(86)(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公表番号】特表2016-518985(P2016-518985A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】US2014022615
(87)【国際公開番号】WO2014164501
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2017年3月9日
(31)【優先権主張番号】61/777,438
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/202,636
(32)【優先日】2014年3月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504242618
【氏名又は名称】ロッキード マーティン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ナガーニー ニコラス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ベックナー デレク エム.
(72)【発明者】
【氏名】エラー マイケル アール.
(72)【発明者】
【氏名】マウラー スコット エム.
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン トレヴァー ジェイ.
【審査官】 岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0000952(US,A1)
【文献】 実開昭59−083204(JP,U)
【文献】 特開2001−271812(JP,A)
【文献】 特開2002−048115(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0228194(US,A1)
【文献】 特開昭64−034724(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/023083(WO,A2)
【文献】 実開昭59−181997(JP,U)
【文献】 特開2012−187623(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2072938(EP,A2)
【文献】 特表2014−527467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
F28F 9/18
F16B 4/00
F16B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管を管板に接続する方法であって、
前記管板に隣接する前記管の管端部をフレア状に成形することも拡張することもなく、前記管端部と前記管板との間を、前記管端部を前記管板内に係止する締まりばめの状態で、前記管端部を前記管板の管板穴に挿入することであって、前記締まりばめは、前記管の外面を変更すること、前記管板穴の内面を変更すること、または、前記管の前記外面を変更することと前記管板穴の前記内面を変更することとの双方によって形成されている、前記管端部を前記管板の管板穴に挿入することと、
前記管の周囲に環を取り付けることと、
前記管板穴内に、または前記管板とは分離されているバッフルにある穴内に、前記環を少なくとも部分的に嵌合することと、
前記管を前記管板に摩擦撹拌溶接することと
を備える、方法
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記締まりばめは、ローレット加工またはフィンを含むように前記管の前記外面を変更することによって形成されている、方法
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記環は、径方向の内側に向かって撓むことで前記管の前記外面と係合することが可能な複数の可撓性のタブを含んでいる、方法
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記環は、さらに雄ねじを含み、前記管板穴または前記バッフルにある前記穴は、その内面に雌ねじを含み、前記環上の前記雄ねじを前記雌ねじに係合させるように、前記環を前記管板穴内または前記バッフルにある前記穴内にねじ込む、方法
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記環はさらに、前記管板穴または前記バッフルにある前記穴に対する前記環の回転を促進して、前記環を前記管板穴または前記バッフルにある前記穴へねじ込んだり、前記管板穴または前記バッフルにある前記穴から抜き出したりする工具嵌合構造を含み、該工具嵌合構造に嵌合する工具を使用して、前記環を前記管板穴内または前記バッフルにある前記穴内へねじ込む、方法
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記管端部が前記管板の1つの面と同一平面上になるまで、前記環を前記管板穴または前記バッフルにある前記穴へねじ込むことを備える、方法
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記管及び前記管板は、熱交換器の一部を形成する、方法
【請求項8】
熱交換器であって、
複数の穴と、内側と、外側とを有する第1管板と、
第1端と第2端とを有する複数の管であって、各管の前記第1端が、前記第1管板にある前記穴のうちの対応する1つの中に、各第1端と前記第1管板との間が締まりばめの状態で配置されている、複数の管と
を備え、
各管の前記第1端は、前記第1管板の前記外側で前記第1管板に摩擦撹拌溶接され、
各管の前記第1端はフレア状に成形されても拡張されてもない、熱交換器。
【請求項9】
請求項8に記載の熱交換器であって、さらに、
複数の穴と、内側と、外側とを有する第2管板を備え、
各管の前記第2端は、前記第2管板にある前記穴のうちの対応する1つの中に配置され、
各管の前記第2端は、前記第2管板の前記外側で前記第2管板に摩擦撹拌溶接されている、熱交換器。
【請求項10】
請求項9に記載の熱交換器であって、
前記管は、円筒状であり、前記第1端から前記第2端まで一定の直径を有している、熱交換器。
【請求項11】
請求項8に記載の熱交換器であって、
各管の前記第1端が摩擦強化構造を設けられた外面を有しているか、または、各管板の穴の内面に摩擦強化構造が設けられているか、または、各第1端の前記外面と各管の穴の前記内面との双方に摩擦強化構造が設けられている、熱交換器。
【請求項12】
請求項9に記載の熱交換器であって、
各管の前記第1端は、ローレット加工またはフィンが設けられた外面を有している、熱交換器。
【請求項13】
請求項9に記載の熱交換器であって、さらに、
前記管の各々の周囲に配置された環を備え、
前記環は、対応する前記管板の穴内に、または前記管板とは分離されているバッフルにある対応する穴内に部分的に嵌合している、熱交換器。
【請求項14】
請求項13に記載の熱交換器であって、
各環は、径方向の内側に向かって撓むとともに、対応する前記管の外面と係合する複数の可撓性のタブを含んでいる、熱交換器。
【請求項15】
請求項14に記載の熱交換器であって、
各環は、さらに雄ねじを含み、
各管板の穴または各バッフルの穴は、その内面に雌ねじを含み、
各環上の前記雄ねじは、前記雌ねじに係合されている、熱交換器。
【請求項16】
請求項15に記載の熱交換器であって、
各環は、さらに、その一端に、前記管板の穴またはバッフルの穴に対する前記環の回転を促進する工具嵌合構造を含む、熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[分野]
本開示は、例えばシェルアンドチューブ熱交換器等の熱交換器に対する摩擦撹拌溶接に関する。
[背景]
摩擦撹拌溶接(FSW)を施されたシェルアンドチューブ熱交換器は、例えば海洋熱エネルギー変換、加熱式淡水化、及び他の比較的低温プロセス等といった船舶グレード用途のために開発されてきた。さらに、FSW処理は、温度や圧力が高めの状況で稼働する他の熱交換器内でも使用されている。シェルアンドチューブ熱交換器に適用されているようなFSW処理では、固相接合や撹拌処理が用いられるが、ここでは、管壁の各端部を、回りを取り囲む管板材内に入れて、異種金属を導入することも、金属粒子構造に悪影響を与えることもせずに「撹拌」する。
【0002】
熱交換器内では、管束のいずれの端においても、従来のシェルアンドチューブ熱交換器と同様の設計で、管が管板内に挿入されている。各管の端部は、FSW処理前には通常フレア状に成形されている。このフレア状に成形すること、もしくは管端部を拡張することで、FSW処理中に加えられる力に対抗しながら、各管を所定の位置に留めることができる。
【0003】
FSW処理によって、機械的に圧延された管の端部と周囲の管板材との間に通常ならば存在するであろう隙間が排除される。隙間を排除することは、腐食作用がある海水環境において長寿命を有することが可能な熱交換器を得るのに望ましい。しかしながら、管の端部をフレア状に成形する処理、または管の端部を拡張する処理は、特に海水環境では隙間腐食が始まる場所になり得る望ましくない隙間や局所的に歪んだ箇所をもたらし得る場合もある。
[概要]
本説明は、シェルアンドチューブ熱交換器を製造する方法を述べている。ここで、管の端部は管板に固定されている一方で、管の端部近傍に隙間または局所的な変形をもたらすことなく、加えられたFSWの力に対抗している。具体的には、管の端部をフレア状に成形することも拡張することもせずに、締まりばめを用いて管端部を管板内に係止する。その後、FSW処理を用いて、管の端部を管板に溶接する。
【0004】
管及び管板は、アルミニウム、炭素鋼、ステンレス鋼、チタン、銅、または他の金属及びそれらの合金を含むが、これらに限定されない、シェルアンドチューブ熱交換器アセンブリに一般的に使用されている任意の金属で作られ得る。
【0005】
締まりばめは、管端部をフレア状に成形することや拡張することを回避するあらゆる適切な方法で実現可能である。一実施形態では、管端部表面または管板表面の局所的な変形及び隣接する表面の間のかじりによって、取り付けられた管端部がFSW処理中に生じる軸方向に加えられる大きな荷重を受けて外されることを防ぐのに十分な保持力をもたらすことができる。
【0006】
局所的な変形の一例として、管端部にある、管のローレット加工された外面がある。締まりばめを実現する他の例としては、例えば起伏や低フィン設計等といった外部特徴を有する配管や、取り付け中に変形して締まりばめの中で管端部を所定の位置に効果的に係止する、外側に高くなった特徴を有する管を使用することが挙げられるが、これらに限定されない。
【0007】
一実施形態において、管を管板に接続する処理は、管板に隣接する管の端部をフレア状に成形することも拡張することもなく、管の端部を管板にある穴に挿入し、管端部と管板との間を、管端部を管板内に係止する締まりばめの状態にする。その後、管端部に管板に対するFSWを施す。
【0008】
他の実施形態において、熱交換器は、第1管板を含み、第1管板は、複数の穴と、内側と、外側とを有している。複数の管は、第1端を有しており、第1端は、第1管板にある穴のうちの対応する1つの中に、各第1端と第1管板との間で締まりばめをした状態で配置され、各管の第1端はフレア状に成形されても拡張されてもない。各管の第1端には、第1管板の外側で、第1管板に対するFSWが施されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態における、記載された熱交換器を利用可能な従来のOTEC発電システムの配置の模式図である。
図2】本明細書に記載されている一実施形態に係るシェルアンドチューブ熱交換器の断面図である。
図3A図2の熱交換器の管板のうちの1つの端面図である。
図3B図3Aの領域A−Aの拡大図である。
図4】一例示的実施形態に係る管のうちの1つを図示している。
図5】締まりばめを形成するための一例示的実施形態を示す管の端部を図示している。
図6】締まりばめを形成するための別の例示的実施形態を示す管の端部を図示している。
図7】FSW前における管のうちの1つと管板との接合の詳細を示す断面図である。
図8】締まりばめを形成するための別の例示的実施形態を図示している。
図9A-9B】図5及び図6にそれぞれ示された管とともに用いられる図8の実施形態を図示している。
図10】管板における穴のうちの1つを通る断面図であって、管板の穴に取り付けられた図8の実施形態を図示している、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[詳細な説明]
本説明はシェルアンドチューブ熱交換器を製造する方法を説明し、ここでは、管に管板に対するFSWを施す前に、管の端部をフレア状に成形することも拡張することもせずに、締まりばめを用いて管の端部を管板に係止する。その後、FSW処理を用いて、管の端部を管板に溶接する。
【0011】
その結果得られるシェルアンドチューブ熱交換器は、陸上、水上、または水中のいずれにおいても、あらゆる熱交換用途に使用可能である。しかしながら、記載されたシェルアンドチューブ熱交換器は、隙間腐食が始まる場所を形成し得る、管の端部近傍での隙間や局所的な変形を排除するので、塩水環境において特に有利である。
【0012】
本発明の概念の説明に役立つように、OTECシステムにおけるシェルアンドチューブ熱交換器の特定の適用について説明する。ただし、シェルアンドチューブ熱交換器は、OTECシステムでの使用に限定されるのではなく、あらゆる熱交換用途に使用可能であることは認識されるべきである。
【0013】
さらに、本発明の概念は、シェルアンドチューブ熱交換器において使用することに限定されるのではなく、隙間腐食が始まる場所を形成し得る、管の端部近傍での隙間や局所的な変形を排除する方法を含むが、これに限定されない方法で、FSWを用いて管を支持構造に接続することが望ましいあらゆる熱交換器の用途に使用可能である。よって、本明細書及び請求項で用いられる管板という用語は、別段の指示がない限り、管を固定することになるあらゆる支持構造を広く包含することを意図している。
【0014】
図1は、従来のOTEC発電システム100の配置の模式図である。OTECシステムの全体構造及び動作は当業者には周知である。OTECシステム100は、例えば大洋、海、塩水湖、または淡水湖等のあらゆる適切な水域に配備可能である。
【0015】
この実施形態において、システム100は、海上プラットフォーム102と、タービン発電器104と、閉ループ導管106と、蒸発器110−1と、凝縮器110−2と、船殻112と、複数のポンプ114,116,124と、流体導管120,122,128,130とを含んでいる。閉ループ導管106は、作動流体108を、蒸発器110−1,凝縮器110−2,及びタービン発電器104を通じて送るための導管である。
【0016】
蒸発器110−1は、表面領域の温海水からの熱を作動流体108に伝達することによって、作動流体を蒸発させるように構成されているシェルアンドチューブ熱交換器であり得る。
【0017】
凝縮器110−2もまた、蒸発した作動流体108からの熱を深水領域からの冷海水に伝達することにより、蒸発した作動流体108を凝縮させて液体形態へと戻すように構成されているシェルアンドチューブ熱交換器であり得る。
【0018】
図2は、蒸発器110−1及び/または凝縮器110−2に使用可能なシェルアンドチューブ熱交換器110を図示している。この例において、熱交換器110は、シェル202と、第1流体流入口204と、流入マニホールド206と、流出マニホールド208と、第1流体流出口210と、二次流体ポート212と、二次流体ポート214と、管束を構成する複数の管216と、第1管板及び第2管板220と、バッフル224とを含んでいる。当業者であれば理解されるであろうように、熱交換器110は、管216を流通する一次流体と、管216の各々の外面にわたってシェル202を流通する二次流体との間で熱交換をもたらす。一実施形態において、一次流体流入口204及び一次流体流出口は、管216を流通する海水用である。蒸発器の場合、流体ポート212は作動流体の出口ポートとなり得る一方、流体ポート214は作動流体の入口ポートとなり得る。凝縮器の場合、流体ポート212は作動流体の入口ポートになり得る一方、流体ポート214は作動流体の出口ポートになり得る。
【0019】
熱交換器110の構造のさらなる情報は、米国特許第8,439,250号に開示されており、その全体を参照により本明細書に援用する。
図3A及び図3Bを参照して、管板220の各々は、機械的に硬質の板であり、熱交換器110の内部チャンバーに対向する内側面222(図7)から、マニホールド206,208のそれぞれに対向する外側面223(図7)まで管板220内を貫通する複数の穴218を含んでいる。各穴218は、直径D1を有する円形であるものとして図示されている。同様に、管板220は円形であるものとして図示されているが、熱交換器内での使用に適したあらゆる形状を有し得る。
【0020】
図4は、管216の1つの例を図示している。各管216は、第1端230及び第2端232と、中央流体路234とを含み、第1端と第2端との間は長さLである。図示されている例では、管216は、内径ID1、外径OD1を有する円筒形状であるものとして示されている。しかしながら、管板220内の管216及び穴218は、例えば矩形や三角形等といった、あらゆる相補的な形状を有し得る。
【0021】
管216及び管板220は、例えば、アルミニウム、炭素鋼、ステンレス鋼、チタン、銅、または他の金属及びそれらの合金を含み、これらに限定されない、シェルアンドチューブ熱交換器アセンブリに一般的に使用されているあらゆる金属で作られ得る。
【0022】
管216の端部230,232は、FSW処理を用いて、穴218にて管板220に接合されている。FSWは、同一材料、または異なる材料の2つの要素を接合する周知の方法である。FSWは、2つの要素の間の界面へと押し込まれる回転式プローブを用いる。プローブと各材料との間の非常に大きな摩擦力が、プローブの直近にある材料をその融点未満の温度まで加熱させる。これにより、隣接部分が軟化するが、材料は固体の状態のままであるので、元来の材料特性は保持されている。プローブを溶接線に沿って動かすと、2つの要素からの軟化した材料部分に対して後縁に向かって力が加わり、隣り合う領域を溶解させることにより、溶接部を形成する。
【0023】
上述したように、管端部をフレア状に成形することも拡張することもせずに、締まりばめを用いて、管216の端部230,232を管板220の穴内に係止する。その後、FSW処理を用いて、管端部を管板に溶接する。
【0024】
適切な摩擦ばめを形成するために存在する可能性は数多くあり、管端部をフレア状に成形することも拡張することもなく、摩擦ばめを形成するあらゆる技術が使用可能である。管の外面を変更することが可能であり、または、穴218の内面を変更することが可能であり、または、管の外面と穴の内面との変更を組み合わせることが使用可能である。
【0025】
図5は、使用可能な管250の端部を図示しており、ここで各端に隣接する管250の外面は、ローレット加工252されているとともに、ローレット加工された部分と管の終端部との間にはローレット加工されていない平滑部分254も有している。ローレット加工された外面を有する適切な管は、オハイオ州ミネルヴァのEnergy Transfer,Incから入手可能である。
【0026】
図5のこの例では、外側をローレット加工された管250の外径OD1は、穴218の直径D1と実質的に等しいか、またはわずかに小さいので、管250の端部を穴218に挿入し、管250の端部と穴218との間を締まりばめできる。この締まりばめは、FSW処理中に印加される荷重に対抗するのに十分なはずであるから、管の端部を所定の位置に係止し、FSW処理中に管が軸方向及び回転方向に動くのを防止する。
【0027】
さらに、図5の例では、FSW前及びFSW後の双方における管250の内径ID1は、一方の端部から他方の端部まで一定である。外径OD1も、FSW前及びFSW後の双方において、管の両端間で実質的に一定である。
【0028】
一実施形態において、管端部を穴218に挿入すると、平滑部分254の一部は、ローレット加工された部分252の一部とともに、穴内に位置する。
図6は、締まりばめを形成するためのフィンまたは(ねじ山に類似する)起伏262を外面に含む管260の別の実施形態を図示している。この構造を有する適切な管は、オハイオ州ミネルヴァのEnergy Transfer,Incから入手可能である。隙間によって分離されている可撓性のタブ266を有する任意の圧入環264をフィン262の周囲に配置して、締まりばめを強化することもできる。タブ266は内側に向かって撓むことによって、フィン262上に係止する。あるいは、管が一方向に摺動して穴に入った状態で、環264を管板220の穴218の内部に配置することができるが、タブがフィンと係合するので、環264を引き抜くことはできない。別の代替実施形態では、図7に示されるように、環264はバッフル224内の穴に嵌合するか、または、荷重を支持するためにバッフル224と係合することが可能である。
【0029】
図8は、管の周囲に配置可能な圧入環270の例を図示している。環270は、図6におけるタブ266と同様の可撓性のタブ272を有し得る。タブ272は、管の強化された外面(例えば図5におけるローレット加工252や図6におけるフィン262等)と締まりばめを形成するために径方向の内側に向かって撓むように設計されている。環270はまた、環における可撓性のタブ272のない部分上に、雄ねじ274を有し得る。雄ねじ274は、管板220の側面222にある受け穴278内、またはバッフル224内に形成された穴の両側に形成された、対応する雌めじ276(図10参照)内へとねじ込まれるようになっている。
【0030】
図10から明らかなように、受け穴278は、管250,260が摩擦ばめを形成する穴218の残りの部分よりも大きな直径を有する。穴278の内面には、環270の外側にある雄ねじ274と係合する雌ねじ276が形成されている。
【0031】
図9Aは、管板220(管板220は1つの穴を有する部分のみで示されている)内の穴の内部に固定された管250及び環270のアセンブリの例を描いている。図9Bは、管板220(管板220は1つの穴を有する部分のみで示されている)内の穴の内部に固定された管260及び環270のアセンブリの例を描いている。一実施形態において、環270は初めに、ローレット加工された管250か、フィンを有する管270のいずれかの上に圧入される。次に、管及び環のアセンブリを、管板またはバッフルのねじ切りされた穴278にねじ込む。
【0032】
環270を管板220の受け穴278にねじ込むことを支援するために、環270はまた、ねじ切りされた部分から突出している拡張円筒状特徴280を有し得る。拡張円筒状特徴280は、切欠282,平面、もしくは他のレンチまたは工具係合構造を有しているので、スパナレンチまたは他の工具を用いて環270を回転させることにより、環270及び管のアセンブリをねじ切りされた穴278内へ締め付ける、及び/または、環を穴から抜き出すことが可能である。
【0033】
環270上及び受け穴278上のねじ切り特徴によって、アセンブリ担当者は環−管アセンブリを、管端部が管板の外面223と同一平面上になるように管板220内へ正確にねじ留め/締め付けできる。この正確なねじ切り特徴により、他の圧入方法を用いることで取り付けの差異が生じる製造公差の問題が解決される。
【0034】
締まりばめを形成する他の例としては、図6と同様に、型締め形式のキーを溝を有し得る管上に圧締めすることによって、管板220の底側または管のバッフル224を係合することができる、係止及びキー形式も可能である。他の実施形態では、キーの代わりに、管板の穴の内面に係止する管上に、先細のフィンまたはくさびを一体に形成することで、締まりばめを形成することもできる。
【0035】
他の実施形態において、管板220の裏面に、図6において外側のフィンまたはねじ山262を管260上に合致させるねじ山パターンを切ることも可能である。その後、管260を、摩擦撹拌溶接に必要な抵抗をもたらす管板220の裏面にねじ込むこともできる。
【0036】
管端部を管板の穴に挿入したら、次に、FSWを用いて管端部を管板に溶接することが可能である。
管の第2端及び第2管板の場合、米国特許第8,439,250号に記載のような従来のFSW処理を用いて、第2端を第2管板に固定してもよく、ここで管の第2端は、管の第2端を伸長した後にFSWを施して、管の第2端を管板に溶接することによって、第2管板に対して固定化される。
【0037】
[処理例]
以下に、アルミニウム管をアルミニウム管板に固定するために用いられる処理例を説明する。この例示的な処理は、第2管板へは第1管板と同様にはアクセスすることができないので、熱交換器の片側(つまり管板の一方)のみに適用可能であり、両方の管板には適用できない。
【0038】
本例において、管は、長さが12インチで、(図5の実施形態と同様に)端部に3インチの平滑管を有し、1インチNPSスケジュール40の、粗くローレット加工された管であった。管板は、7本の管に対する穴を有する2インチ厚のアルミニウム管板であった。この例示的な処理では、管を支持するための裏支え用アンビル/裏支え力は用いられておらず、管板だけが支持されている。
【0039】
1.管板は、アルミニウムブロックを、管穴を塞ぐことなく、管板の対向する側の下に置くことによってFSW用アンビル上に支持されていた。ブロックの高さによって、管がアンビルで止められる前に管が管板の穴をどの程度貫通できるのかが決まった。
【0040】
2.管の外側及び管板の穴の内側を、イソプロピルアルコール、アセトン、または他の洗浄剤で洗浄した。
3.次に、管を管板の穴に挿入した。反対側の管端部をゴム製の槌を用いて叩き、管が管板の下にあるアンビルに接触するまで管を打ち込んで管板を貫通させた。適切に溶接するためには、管板の穴内には平滑管部分254が約0.5インチ残っていて、穴内にある管の残りの部分はローレット加工された部分252であった。
【0041】
4.これまでに、管はかじられる寸前でなければならず、管板内で動いてはいけない。溶接側(つまり管板の外側)では、管端部が管板の外面と同一平面上にあるように管を切断した。
【0042】
5.次に、溶接面と管の内側とを洗浄した。
6.次に、管をデバリングしたのち、管と管板とにFSWを施す。溶接が進むにつれて、管では軸方向に動くことも回転することも観察されないはずである。
【0043】
図7は、管板220の穴の1つに挿入された管216の例を図示し、管は、外面223と同一平面上にあるように切断されて、FSWの準備ができた状態である。図7からわかるように、FSWの前に、管端部をフレア状に成形したり、または、拡張したりすることはない。むしろ、管の内径及び外径は一定のままである。したがって、記載された方法は、管端部付近に、腐食が始まる場所になる可能性のある、いかなる隙間も他の局所的な変形ももたらさない。
【0044】
本出願で開示された各例は、全ての点において説明のためであると見なされるべきであり、限定するためであると見なされるべきではない。本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の請求項によって示されている。したがって、請求項の均等の意味及び範囲の範疇である全ての変更は、本発明に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10