【実施例】
【0058】
実施例1
形成圧力
前記粉末のための止血組成物は、好ましくは、1:7の重量比の鉄酸塩:水素樹脂混合物であるが、この比は1:3〜1:12の範囲を有する。前記水素樹脂は、好ましくは、水素形態の2%架橋スルホン化ポリ(スチレン)樹脂である。前記水素樹脂は500ミクロンの範囲の不溶性無傷ビーズとして利用可能であるか、又は80ミクロン〜200ミクロンの平均サイズの、それよりもずっと細かい断片に摩砕したものであり得る。器具の形成は部分的には、無傷ビーズに対する破砕された樹脂の割合に基づいて行われる。前記架橋水素イオン交換樹脂は温度の上昇によって溶融することはなく、また、圧力によって低温流れを起こすこともない。そのため、無傷樹脂ビーズそのものだけを圧力によって平板に成型することはできない。
【0059】
図46の3列目に見られるように、45kpsi(約310.264MPa)においては、無傷ビーズは互いに結合して固体を形成することはない。
図46の3列目に示すように、無傷ビーズと断片との混合物(61〜89%:39〜11%)は互いに結合するであろう。1列目に示すように、断片の、無傷ビーズに対する割合が充分である(40〜100%:0〜60%)ことが、無傷ビーズを積み重ねた際に生成する隙間を埋め、材料を機械的に平板状に結合するのに充分な相互作用を可能にすることによって、使用可能な固体を形成するために必要である。
【0060】
前記断片の全て、又は一部は、樹脂単独であってもよく、又は、前記無傷樹脂ビーズ間の隙間を埋めるための他の添加物に置換されていてもよい。充填密度及び接触面を増やして強固な平板が形成されるようにするため、それら添加物は、鉄酸カリウム(好ましい)、結合剤(ステアリン酸塩、ワックス)、固体滑沢剤、抗菌剤、他の非晶質固体材料(炭酸カルシウム)、及び樹脂と同様のサイズを有しない他の非球形吸収材料のうちの、1つ又は複数の組み合わせであってよい。
【0061】
実施例2
最小厚
図47に見られるように、好ましく1:7の鉄酸カリウム:水素樹脂である止血粉末を、実験室用プレスを使用して平板状の固体に調製した。約0.5mm〜30mmの平板厚の予備平板形成試験によって、前記止血粉末を固形器具へと圧縮するための約0.5mmの最小厚が確立された。
図47の写真は、少なくとも0.5mmの厚さが、完全な使用可能な平板を生成するのに必要であることを示す。前記材料は<250pmにまで摩砕した。しかし、摩砕サイズの変化は、完全な平板を形成するのに必要な粉末の最低厚に影響する可能性がある。取り扱い又は使用の容易さに基づくと、45Kpsi(約310.264MPa)で作製された薄い(0.53mm)20mm径の平板(#3)は、29Kpsi(約199.948MPa)の形成圧における薄い平板よりも強い結着性を有していた。試験#1において、29Kpsi(約199.948MPa)は、0.426mm厚の平板の形成に不充分であったが、試験#2において、0.535mm厚の脆く不安定な平板が形成された。
【0062】
3種の試験により、施用時に利用可能な止血器具の評価を行った:密度試験、形成試験、及び脆弱性試験。
【0063】
実施例3
密度試験
図48においては、平板密度試験を使用し、固体密度(ml/g)と形成圧(psi)の関係を8K(約55.158MPa)〜45Kpsi(約310.264MPa)の範囲で決定した。45Kpsi(約310.264MPa)超ではプレス圧に対する密度の増加がフラットになるように見える。45Kpsi(約310.264MPa)の圧力は、固形平板を形成するのに必要な力の量を決定するために試験に使用した20mm丸テーブルダイス(round table die)の最大定格圧力である。平板の結着性は、ハーネスアンドウェッティング率(harness and wetting rate)の測定により決定した。また、適当な平板パラメーターを選択するにあたり、複数の平板の手動による破壊も行った。
【0064】
実験室用プレスである、単体のLANE STOKESディスクプレス上において、1/8インチ(約0.318cm)厚の20mm丸ダイス(0.487in
2(約3.142cm
2))を使用して試験を行ったところ、次のことが示された。
・8Kpsi(約55.158MPa)未満では平板は脆すぎて取り扱いが困難であり、ダイスから外す際に壊れることが多い。
・12Kpsi(約82.737MPa)〜15Kpsi(約103.421MPa)の間では、平板は取り扱いは可能だが、容易に壊れる。
【0065】
・20L〜33Kpsi(約227.527MPa)の間では、平板は満足できるものである。さらなる評価を、29Kpsi(約199.948MPa)で行った。
【0066】
実施例4
脆弱性試験
本平板脆弱性試験は、次の平板のためのFDAガイドラインに基づく。
Q4B Evaluation and Recommendation of Pharmacopoeial Texts for Use in the ICH Regions: Annex 9 Disc Friability General Chapter
http://www.fda.gov/downloads/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/UCM176888.pdf
【0067】
脆弱性については、タンブリング試験(tumbling test)中の質量減少を決定する。平板を100回、特定の高さから落下させ、どれだけの質量が失われたか決定するために測定を行う。USPによると、他にドシァ(dosier)による指定が無い限り、平均損失は平板の1%以下とすべきである。
【0068】
前記USP試験は、他の多数の平板とともに瓶に詰められた平板が、患者による摂取の前に質量を失わないように保証するものである。質量が失われると摂取される薬物の量が減少する。局所的に施用される止血平板の場合、処方される薬物はなく、さらに重要なことには、平板は個々の単位で包装され、保護されて、到着の際に平板が無傷であることが保証されるであろう。あらゆる破損のリスクが包装により緩和されるであろう。
【0069】
改良された平板脆弱性試験を、平板をビーカーから2インチ(5.08cm)のPVCチューブを通して受け手側ビーカーへと注ぐようにデザインした。前記PVCの上部から受け手側ビーカーの面までの高さは150mmとした(USP脆弱性プロトコルに基づく)。平板脆弱性試験では、平均損失量は2.5%であることが示された。この損失量は許容範囲である。なぜなら、前記平板は外用で/局所的に創傷面に施用され、また、単位化され、保護された包装によって破損が緩和されるためである。
【0070】
実施例5
接着試験
同一の1:7の鉄酸カリウム:水素樹脂からなる組成物より調製した20mm平板及び遊離粉末が、出血面に対する接着を達成する能力について試験した。血液密閉剤試験を次のように採用した。
1.0.10mLのEDTA安定化ブタ血液を、プラスチックボート内に描いた1インチ(2.54cm)径の円内に配置し、均一に拡げた。
2.前記の均一に拡げた血液の上に、試験材料を注ぎ、又は設置した。
3.中程度の手動圧力を、前記試験材料上に90秒間加えた。
4.血液と前記試験材料の作用により形成された血液密閉剤を、その接着及び強度に関して、スパチュラを用いた削り取りにより試験した。
【0071】
その結果、前記遊離粉末は、中程度の接着を示す不均一な血液密閉剤を生成し、削り取った際には、持ち上げられた密閉剤に関して中程度の強度を提供した。未使用の遊離粉末の余剰部分は大気に曝露され、不活性化されており、さらなる使用のための能力を大部分失っていた。一方、前記の20mm径の平板は割れて2つの部分に分かれ、第一の部分には、より厚みがあり、優れた接着と強度を示す血液密閉剤が現れ、第二の部分は、未使用かつ無傷な平板のかなりの部分を有していた。使用した平板を構成する前記第二の部分は、出血、及び浸出物の吸収を止めるための貯留部として残る。
【0072】
実施例6
止血における粉末と固形平板の比較
図49に示すように、同一の1:7の鉄酸カリウム:水素樹脂からなる組成物より調製した20mm径平板及び遊離粉末の止血効果について、低圧重力流系を使用して試験した。その結果、低圧重力流系については、粉末の機械的圧縮と遊離粉末そのものの使用とを比較した際に止血に対する影響は無かった。次の実施例では、高い空気圧での試験において、前記平板が、前記遊離粉末と比較して驚くべき優れた性能を有することが明瞭に示された。
【0073】
60mlの注射器に約25mlの血液を満たす。1.5インチ(3.81cm)の透明アクリルブロックから試験ブロックを形成する。1/4インチ(0.635cm)の可撓性ビニル管に接続する懸りのある継手が嵌合するように設計された入口孔と、1/8インチ(約0.318cm)径の出口孔と、を想定する。前記注射器を、前記試験ブロック頂部の上方30cmに持ち上げ、20mmHg(水銀)(約2.666kPa)と同等の30cmH
2Oの圧力を生成する。
【0074】
バルブを開き、血液を表面に出す。バルブを閉じ、血液を前記出口から約0.5インチ(約1.27cm)の範囲に拡がらせた。試験材料を、前記出口孔を覆う血液上に配置した。接触圧を100グラム質量で60秒間維持した。60秒後、該100グラム質量を取り除き、バルブを30秒間開いた。血液が前記出口孔から出なければ、前記出口孔の密閉が生じたこととなり、前記試験試料は試験に合格となった。
【0075】
下記表1に示すように、粉末(N=5)及び平板(Tablet)(N=10)は全ての試験に合格した。
【表1】
【0076】
実施例7
密閉試験
粉末対固形平板
同一の1:7の鉄酸カリウム:水素樹脂からなる組成物より調製した20mm径平板及び遊離粉末の止血効果について、高気圧系を使用して試験した。その研究デザイン及び実験について、詳細を以下に述べる。装置の概略を
図50に示す。高気圧試験中の止血効果において、前記平板は、前記遊離粉末よりも予想外に優れていることを示す結果が得られた。期待に反する遊離粉末と比べて、前記平板は、より高圧の出血を止めることのできる有意に強固な密閉剤を生成する。この驚くべき発見は、血液に対する不均一で再現性のない力を提供する前記遊離粉末と比較して、前記平板の均一な面が極めて大きな手動圧力を血液に及ぼすことを可能にすることを意味する。さらには、血液と接触する前記平板面の緻密な性質、及び前記平板内に濃縮された前記組成物の巨大な貯留部が、急速な脱水、及び前記の低密度遊離粉末よりも有意に優れた接着を可能にする。前記遊離粉末の極めて大きな表面積は、該粉末が、血液とより小さな面でしか接触していない前記平板と比べて有意に良好に働くだろうという予想につながるであろう。
【0077】
本試験において、試験ブロックが1.5インチ(3.81cm)の透明アクリルブロックから生成される。該試験ブロックは、1/4インチ(0.635cm)の可撓性ビニル管に接続する懸りのある継手が嵌合するように設計された入口孔と、1/8インチ(約0.318cm)径の出口孔と、を有する。第一の工程は、注射器のピストンを引き戻し、圧力計の電源を入れ、該圧力計が最大値を記録するように設定することである。注射器のピストンを押し、血液密閉剤が破綻するまで前記の系に圧力を加える。前記圧力計は密閉剤の破綻直前に発生した最大圧力を記録する。次の血液を前記1/8インチ(約0.318cm)出口孔周辺に設置する。その後、平板を該血液の上に設置する。該血液が完全に孔を取り囲むように、そして、該平板も完全に孔を覆うように注意する。手袋をはめた指を使用して、平板にわずかな手動圧力を加える。この圧力によって、平板の下から液状の血液が押し出される。平板を約15秒間凝固させた後、前記ピストンを押す。
【0078】
第一の試みの間、圧力計の最大表示度数が408mmHg(約54.396kPa)に達し、管が注射器から外れた。ジップタイを使用して以後の外れを防止し、500mmHg(約66.661kPa)の圧力を終点に設定した。
【0079】
前記平板を15回試験したところ、全てが一貫して、密閉剤が破綻することなく、500mmHg(約66.661kPa)の終点まで到達した。一方、前記遊離粉末は100mmHg(約13.332kPa)の終点にしか到達せず、前記平板の予想を超える優れた性能が示された。
【0080】
比較的遊離した粉末は、同一の試験において310mmHg(約41.330kPa)の平均保持圧力に達した。該粉末が遊離粉末試験中に保持具に詰まり、保持具が塞がれるのを防ぐために、小型のフォイルディスク(foil disk)を使用した。該粉末は、密閉剤の結着性を維持するために75g質量も必要とした。驚くべき事に、前記固体は、模擬創傷上に配置された固体を保持するための質量を追加しなくとも、前記遊離粉末より良好に予備形成された。
【0081】
実施例8
酸素生成
鉄酸カリウムは湿潤時に分解する。分解時、鉄酸カリウムは酸素ガスを放出した:
2K
2FeO
4+2H
2O→Fe
2O
3+4KOH+1.5O
2 (g)
【0082】
ある質量のPRO QR粉末と、平板へと圧縮された同様な質量の粉末とで、湿潤時に生成する酸素の量を測定するように試験を設計する。この試験のために、実験室用プレスを使用し、20mm径の平板ダイス中の2〜3グラムの粉末に45Kpsi(約310.264MPa)を印加した。加工時、20mm径の平板を製造するには、典型的には29Kpsi(約199.948MPa)が必要であろう。この試験では、前記粉末の機械的圧縮による鉄酸カリウムの分解の可能性をさらに高めるために、過剰な力を用いている。
【0083】
この試験により、湿潤時、粉末はグラムあたり3.90mlの酸素ガスを解放し、粉末を平板状に圧縮したものはグラムあたり4.05mlの酸素ガスを解放するであろうという結論が得られた。前記粉末と前記平板とで、回収された酸素の違いは割合にして3.77%である。この違いは良好な分析試験を示すために使用される5%変動係数の範囲内である。従って、結果はほぼ同一であり、前記粉末を平板に圧縮することによる鉄酸カリウムの分解は起こらないと結論づけることができる。
【0084】
この実験においては、前記粉末又は平板の試料を小型の乾燥した瓶内に設置する。該瓶は密閉され、生成したあらゆる気体が強制的に小さなチューブを通して排出されるような閉鎖系となっている。この出口チューブの排出口は、部分的に水中に沈めて倒立させた、中身が満たされた(水で満たされた)メスシリンダー中に気泡が入るように配置される。気泡が該メスシリンダー中に入ると、その気泡が同じ容積の水と置き換わる。これにより、発生した気体が測定可能である。
【0085】
前記粉末又は平板が濡れると、前記鉄酸カリウムが分解して酸素を解放する。前記試験材料を前記閉鎖系の乾燥した瓶内に配置する。注射器を使用して水を該瓶の中に注入する。この試験では、各回で15mlの水を注入した。この水の容積を計算において考慮に入れた。より正確な結果の読み取りのために、前記メスシリンダーを50mlのビュレットに置き換えることも行った。前記気体測定の起算点は、15mlの水を前記の閉鎖系の空の瓶に注入することにより生成される変位点とした。
【0086】
実施例9
円盤崩壊試験
本試験は、止血平板が水中で物理的に構成材料にまで分解される時間を測定するように設計される。該平板は、水を吸収すると膨潤する親水性ポリマーと、鉄酸カリウムと、からなる粉末を手動で圧縮したものからなる。前記ポリマーが濡れて膨潤すると、前記平板の崩壊が引き起こされる。湿潤速度は前記平板がプレスされる圧力に依存する。
【0087】
本実験においては、チューブ内の平板上を横切るように水を流す。約2mmの開口を有するふるいを用いて、2.9cm径のチューブ内で平板を支持する。サイフォンブレークを上昇させ、該ふるいの上、2インチ(5.08cm)〜3インチ(7.62cm)の水位を保つ。本試験における流速は562ml/分とした。終点は、該ふるい上に何ら材料が存在しなくなった時点とした。
【0088】
ポンプの電源を入れる。水を流しながら前記円盤を前記チューブ内に落とし、ストップウォッチを始動させる。該円盤を観察し、該ふるい上に何ら材料が存在しなくなった時点で時間を記録する。
【0089】
9個の平板を、実験室用プレス上で、20mmのダイスを用いて、様々な量の力で製造した。機械製造の試料をStokes単レーン平板プレス上で製造した。その機械により、前記実験室用プレスのための1500mgの平均重量の試料を製造した。15個の試料を前記Stokes単レーン円盤プレス上で製造した。平均質量750mg。試験した全ての平板は、およそ1/8インチ(約3.175mm)の類似した厚みを有していた。
【0090】
崩壊速度は、8Kpsi(約55.158MPa)(崩壊時間:40秒)〜45Kpsi(約310.264MPa)(崩壊時間:180秒)の範囲では、平板に対するプレス圧に対して直線的であることが、20mm径の円形平板について示される。従って、湿潤又は崩壊速度は、粒子の緻密度と、材料の「次の」層を湿潤させる毛管作用とに関係しており、最短の好ましい崩壊時間である40秒は8Kpsi(約55.158MPa)の形成圧によって達成される。
【0091】
多数の例示的な側面及び態様を上に説明してきたが、当業者であれば特定の改変、変形、追加、及びそれらの組み合わせを認識するであろう。従って、添付の特許請求の範囲及び今後導入される請求項は、その真の精神及び範囲に含まれるあらゆる改変、変形、追加、及びそれらの組み合わせを全て含むことが意図される。