【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的の少なくとも1つを達成することへの寄与は、ペースト成分として以下を含むペーストによって成される。
a.ペーストの総重量に基づいて少なくとも55重量%、又は少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%の銀粉末、
b.無機反応系、好ましくはガラスフリット、
c.有機ビヒクル、
d.粒子成分としてAl及びAgを含む添加粒子。
ここで、Al及びAgは、添加粒子中に元素として存在する、又はAlとAgの一方若しくは両方を含む1種以上の単相元素混合物中に存在する、又は元素としてAlとAgの一方若しくは両方と1種以上の元素混合物の組合せである。
【0014】
本発明によるペーストの一実施形態においては、添加粒子は、ペーストの総重量に基づいて約0.1から約5重量%の範囲、又は約0.2から約3重量%の範囲、又は約0.3から約2重量%の範囲である。
【0015】
本発明によるペーストの一実施形態においては、添加粒子は、添加粒子の総重量に基づいて0.1重量%を超える、好ましくは0.05重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下のAl又はAg以外の元素を含まない。
【0016】
本発明によるペーストの一実施形態においては、添加粒子は、Al及びAgの少なくとも1種の単相混合物、好ましくはAl−Ag合金を添加粒子の総重量に基づいて少なくとも約95重量%、好ましくは少なくとも約98重量%、より好ましくは少なくとも約99重量%含む。
【0017】
本発明によるペーストの一実施形態においては、添加粒子の結晶化度は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%である。上述したAlとAgの単相混合物が存在する場合、単相混合物は上記結晶化度を有することが好ましい。ある場合には、本発明に従って採用された添加粒子を後述のX線分析に供したときに、アモルファス相は認められなかった。
【0018】
本発明によるペーストの一実施形態においては、添加粒子は、少なくとも1個のコア、好ましくは1個のコア、及び少なくとも1個のシェル、好ましくは1個のシェルを含み、少なくとも1個のコアは、その表面積の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%の上に重ねられた少なくとも1個のシェルを有する。
【0019】
好ましくは添加粒子が上述したコア−シェル構造を有する、本発明によるペーストの一実施形態においては、以下の基準の少なくとも1つ、好ましくは全部を満たす。
a.少なくとも1個のコアは、コアの総重量に基づいて少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%のAlを含む。
b.少なくとも1個のシェルは、シェルの総重量に基づいて少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%のAgを含む。
c.1個以上のコア、好ましくは単一のコアの混合重量は、粒子の総重量に基づいて少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%である。
d.少なくとも1個のシェルは、個々の重量が粒子の総重量に基づいて50重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは30重量%未満である。
【0020】
この実施形態の態様は、上のように分類された基準の以下の組合せに関係し、それを満たす:a、ab、ac、ad、abc、abd、acd、abcd、b、bc、bd、bcd、c、cd、d。
【0021】
好ましくは添加粒子が上述した合金を有する、本発明によるペーストの一実施形態においては、以下の基準の少なくとも一方又は両方を満たす。
a.添加粒子は、添加粒子の総重量に基づいて約5から約70重量%の範囲、好ましくは約10から約65重量%の範囲、より好ましくは約15から約62重量%の範囲のAlを含む。
b.添加粒子は、添加粒子の総重量に基づいて約30から約95重量%の範囲、好ましくは約35から約90重量%の範囲、より好ましくは約38から約85重量%の範囲のAgを含む。
【0022】
本発明によるペーストの一実施形態においては、添加粒子は、AlとAgの共融混合物、好ましくは合金を含む。Alコア及びAgシェル構造の添加粒子は、好ましくは、溶融時に共融混合物を示す。
【0023】
好ましくはAl−Agコアシェルが上述した添加粒子中に存在する、本発明によるペーストの一実施形態においては、以下の基準の少なくとも一方又は両方を満たす。
a.添加粒子は、添加粒子の総重量に基づいて約50から約90重量%の範囲、好ましくは約55から約85重量%の範囲、より好ましくは約60から約80重量%の範囲のAlを含む。
b.添加粒子は、添加粒子の総重量に基づいて約10から約50重量%の範囲、好ましくは約15から約45重量%の範囲、より好ましくは約20から約40重量%の範囲のAgを含む。
【0024】
本発明によるペーストの一実施形態においては、無機反応系は、ペーストの総重量に基づいて約0.1から約7重量%の範囲、好ましくは約0.5から約6重量%の範囲、より好ましくは約1から約5重量%の範囲である。
【0025】
本発明によるペーストの一実施形態においては、無機反応系はガラスフリットである。
【0026】
本発明によるペーストの一実施形態においては、添加粒子のd
50値は、約0.1から約15μmの範囲、好ましくは約1から約12μmの範囲、より好ましくは約1から約7μmの範囲である。
【0027】
本発明によるペーストの一実施形態においては、添加粒子の比表面積は、約0.01から約25m
2/gの範囲、好ましくは約0.1から約20m
2/gの範囲、より好ましくは約1から約15m
2/gの範囲である。
【0028】
上記目的の少なくとも1つを達成することへの寄与は、以下の太陽電池前駆体成分を含む太陽電池前駆体によって成される。
a.ウェーハ、
b.ウェーハの上に重ねられた本発明によるペースト。
【0029】
本発明による太陽電池前駆体の一実施形態においては、ウェーハは、pドープ層及びnドープ層を有する。
【0030】
本発明による太陽電池前駆体の一実施形態においては、ペーストをpドープ層の上に重ねる。
【0031】
本発明による太陽電池前駆体の一実施形態においては、nドープ層の厚さはpドープ層の厚さよりも厚い。
【0032】
本発明による太陽電池前駆体の一実施形態においては、ペーストを2つのドープ層のうち薄い方の上に重ねる。
【0033】
上記目的の少なくとも1つを達成することへの寄与は、以下の調製ステップを含む、太陽電池の調製プロセスによって成される。
a.本発明による太陽電池前駆体の用意、
b.太陽電池を得るための太陽電池前駆体の焼成。
【0034】
上記目的の少なくとも1つを達成することへの寄与は、本発明によるプロセスによって得ることができる太陽電池によって成される。
【0035】
本発明の一実施形態においては、太陽電池はn型太陽電池である。
【0036】
上記目的の少なくとも1つを達成することへの寄与は、その少なくとも1個が本発明による、少なくとも2個の太陽電池を含むモジュールによって成される。
【0037】
上記実施形態は、互いに組み合わせることができる。各可能な組合せは、本明細書の開示の一部である。
【0038】
ウェーハ
本発明による好ましいウェーハは、光を高効率で吸収して電子−正孔対を生成し、正孔と電子を境界を越えて、好ましくはいわゆるpn接合境界を越えて、高効率で分離可能な太陽電池の領域のなかの領域である。本発明による好ましいウェーハは、前面ドープ層と背面ドープ層で構成された単体を含むウェーハである。
【0039】
ウェーハは、適切にドープされた四価元素、二元化合物、三元化合物又は合金からなることが好ましい。この状況における好ましい四価元素は、Si、Ge又はSn、好ましくはSiである。好ましい二元化合物は、2種以上の四価元素の組合せ、III族元素とV族元素の二元化合物、II族元素とVI族元素の二元化合物、又はIV族元素とVI族元素の二元化合物である。四価元素の好ましい組合せは、Si、Ge、Sn又はCから選択される2種以上の元素の組合せ、好ましくはSiCである。III族元素とV族元素の好ましい二元化合物はGaAsである。本発明によればウェーハがSiに基づくことが最も好ましい。最も好ましいウェーハ材料としてSiについて本願明細書の残りの部分を通して明示的に言及する。Siについて明示的に述べる以下の本文のセクションは、上記他のウェーハ組成物にも適用される。
【0040】
ウェーハの前面ドープ層と背面ドープ層が接する場所はpn接合境界である。n型太陽電池においては、背面ドープ層は、電子供与性n型ドーパントがドープされ、前面ドープ層は、電子受容性又は正孔供与性p型ドーパントがドープされる。p型太陽電池においては、背面ドープ層は、p型ドーパントがドープされ、前面ドープ層は、n型ドーパントがドープされる。本発明によれば、まずドープSi基板を用意し、次いで逆のタイプのドープ層を基板の片面に適用することによって、pn接合境界を有するウェーハを調製することが好ましい。本発明の状況においてはn型太陽電池が好ましい。本発明の別の一実施形態においては、pドープ層とnドープ層をウェーハの同じ面に配列することができる。このウェーハ設計は、「光起電力の科学及び工学ハンドブック」(Handbook of Photovoltaic Science and Engineering)、第2版、ジョン・ワイリー&サンズ(John Wiley&Sons)、2003、7章に例示された、くし形背面接触(interdigitated back contact)と呼ばれることが多い。
【0041】
ドープSi基板は当業者によく知られている。ドープSi基板は、当業者に既知の方法であって、当業者が本発明の状況において適切であると考える任意の方法で調製することができる。本発明による好ましいSi基板源は、単結晶Si、多結晶Si、アモルファスSi及び改良金属(upgraded metallurgical)Siであり、単結晶Si又は多結晶Siが最も好ましい。ドープSi基板を形成するドーピングは、Si基板の調製中にドーパントを添加することによって同時に実施することができ、又は後続ステップで実施することができる。Si基板の調製に続くドーピングは、例えば、ガス拡散エピタキシによって実施することができる。ドープSi基板は、市販品を入手することも容易である。本発明によれば、一選択肢として、Si基板の最初のドーピングは、ドーパントをSi混合物に添加することによって、その形成と同時に実施することができる。本発明によれば、一選択肢として、前面ドープ層、及び存在する場合、高濃度ドープ背面層は、ガス相エピタキシによって適用することができる。このガス相エピタキシは、好ましくは、約500℃から約900℃の範囲、より好ましくは約600℃から約800℃の範囲、最も好ましくは約650℃から約750℃の範囲の温度で、約2kPaから約100kPaの範囲、好ましくは約10から約80kPaの範囲、最も好ましくは約30から約70kPaの範囲の圧力で実施される。
【0042】
Si基板が幾つかの形状、表面組織及びサイズを有し得ることは当業者に知られている。形状は、とりわけ立方体、円盤、ウェーハ及び不規則な多面体を含めて、幾つかの異なる形状の1つとすることができる。本発明による好ましい形状は、ウェーハ形状である。ウェーハは、2つの寸法が類似し、好ましくは等しく、第3の寸法が他の2つの寸法よりかなり小さい立方体である。この文脈におけるかなり小さいとは、好ましくは、少なくとも約100倍小さいことである。
【0043】
種々の表面タイプが当業者に知られている。本発明によれば、粗面のSi基板が好ましい。基板の粗さを評価する一方法は、基板の表面近傍(sub−surface)の表面粗さパラメータを評価することである。これは、基板の全表面積よりも小さく、好ましくは全表面積の1/100未満であり、本質的に平面である。表面粗さパラメータの値は、表面近傍の面積と、平均二乗変位を最小にすることによって表面近傍に最良適合された平面上に表面近傍を投影することによって形成された理論表面の面積との比によって与えられる。より高い表面粗さパラメータ値は、より粗く、より不規則な表面を示し、より低い表面粗さパラメータ値は、より平滑で、より平坦な表面を示す。本発明によれば、Si基板の表面粗さは、好ましくは、光吸収、及びフィンガーと表面の接着を含めて、ただしそれだけに限定されない幾つかの因子間の最適バランスがとれるように変更される。
【0044】
Si基板の2つの大きい方の寸法は、得られる太陽電池に求められる用途に適するように変更することができる。本発明によれば、Siウェーハの厚さは、約0.5mm未満、より好ましくは約0.3mm未満、最も好ましくは約0.2mm未満であることが好ましい。一部のウェーハは、最小サイズが約0.01mm以上である。
【0045】
本発明によれば、前面ドープ層は背面ドープ層よりも薄いことが好ましい。本発明の一実施形態においては、pドープ層の厚さは、約10nmから約4μmの範囲、好ましくは約50nmから約1μmの範囲、最も好ましくは約100から約800nmの範囲である。
【0046】
前面ドープ層は、一般に、背面ドープ層よりも薄い。本発明の一実施形態においては、背面は、pドープ層よりも厚いnドープ層を含む。
【0047】
高濃度ドープ層は、Si基板の背面の背面ドープ層と任意の更なる層の間に適用することができる。かかる高濃度ドープ層は、背面ドープ層と同じドーピングタイプであり、かかる層は、一般に、+で示される(n
+型層はn型背面ドープ層に適用され、p
+型層はp型背面ドープ層に適用される)。この高濃度ドープ背面層は、金属被覆を助け、基板/電極界面領域における導電性を改善するのに役立つ。本発明によれば、高濃度ドープ背面層は、存在する場合、厚さが約10nmから約30μmの範囲、好ましくは約50nmから約20μmの範囲、最も好ましくは約100nmから約10μmの範囲であることが好ましい。
【0048】
ドーパント
好ましいドーパントは、Siウェーハに添加したときに、電子又は正孔をバンド構造に導入することによってpn接合境界を形成するドーパントである。本発明によれば、これらのドーパントの種類(identity)及び濃度は、pn接合のバンド構造プロファイルを調整し、必要に応じて光吸収及び伝導率プロファイルを設定するように特異的に選択されることが好ましい。本発明による好ましいp型ドーパントは、Siウェーハバンド構造に正孔を添加するドーパントである。それらは、当業者によく知られている。当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考えるすべてのドーパントをp型ドーパントとして採用することができる。本発明による好ましいp型ドーパントは、三価元素、特に周期表13族の三価元素である。この状況における好ましい周期表13族元素としては、B、Al、Ga、In、Tl又はその少なくとも2種の組合せが挙げられるが、それだけに限定されない。Bが特に好ましい。本発明の一実施形態においては、pドープ層は、ドーパントとしてBを含む。
【0049】
本発明による好ましいn型ドーパントは、Siウェーハバンド構造に電子を添加するドーパントである。それらは、当業者によく知られている。当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考えるすべてのドーパントをn型ドーパントとして採用することができる。本発明による好ましいn型ドーパントは、周期表15族の元素である。この状況における好ましい周期表15族元素としては、N、P、As、Sb、Bi又はその少なくとも2種の組合せが挙げられ、Pが特に好ましい。本発明の一実施形態においては、nドープ層は、ドーパントとしてPを含む。
【0050】
上述したように、pn接合の様々なドーピングレベルは、得られる太陽電池の所望の性質を調整するように変更することができる。
【0051】
本発明によれば、背面ドープ層は、好ましくは約1×10
13から約1×10
18cm
−3の範囲、好ましくは約1×10
14から約1×10
17cm
−3の範囲、最も好ましくは約5×10
15から約5×10
16cm
−3の範囲のドーパント濃度で、軽くドープされることが好ましい。一部の市販品は、ドーパント濃度約1×10
16の背面ドープ層を有する。
【0052】
本発明の一実施形態においては、高濃度ドープ背面層(存在する場合)は、好ましくは約1×10
17から約5×10
21cm
−3の範囲、より好ましくは約5×10
17から約5×10
20cm
−3の範囲、最も好ましくは約1×10
18から約1×10
20cm
−3の範囲の濃度で、高濃度ドープされる。
【0053】
導電性ペースト
本発明による好ましい導電性ペーストは、表面に塗布することができ、焼成すると表面に電気接触した固体電極体を形成するペーストである。ペーストの成分及びその割合は、ペーストが焼結、印刷適性などの所望の性質を有し、得られる電極が所望の電気的性質及び物性を有するように、当業者が選択することができる。金属粒子は、主に、得られる電極体が導電性であるように、ペースト中に存在することができる。表面層を通してSiウェーハ中に適切に焼結させるために、無機反応系を採用することができる。本発明の状況において好ましい導電性ペーストの組成例は、
i)金属粒子、好ましくは銀粒子、好ましくは少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも約70重量%、最も好ましくは少なくとも約80重量%、
ii)好ましくは約0.1から約6重量%の範囲、より好ましくは約0.5から約5重量%の範囲、最も好ましくは約1から約4重量%の範囲の無機反応系、好ましくはガラスフリット、
iii)好ましくは約5から約40重量%の範囲、より好ましくは約5から約30重量%の範囲、最も好ましくは約5から約15重量%の範囲の有機ビヒクル、
iv)好ましくは約0.1から約5重量%の範囲、又は約0.2から約3重量%の範囲、又は約0.3から約2重量%の範囲のAl及びAgを粒子成分として含む添加粒子、ここで、Al及びAgは、添加粒子中に元素として存在する、又はAlとAgの一方若しくは両方を含む1種以上の単相元素混合物中に存在する、又は元素としてAlとAgの一方若しくは両方と1種以上の元素混合物の組合せである、並びに
v)好ましくは約0から約15重量%の範囲、より好ましくは約0から約10重量%の範囲、最も好ましくは約0.3から約5重量%の範囲の更なる添加剤を含む。ここで、重量%は各々、導電性ペーストの総重量に基づき、合計100重量%になる。
【0054】
導電性ペーストの印刷適性を高めるために、本発明によれば、導電性ペーストは、印刷適性を高める粘度及びチキソトロピー指数を有することが好ましい。ペースト中のすべての溶媒は、印刷プロセス中の温度より高いが、焼成プロセスの温度より低い沸点を有することも好ましい。本発明の一実施形態においては、導電性ペーストは、以下の基準の少なくとも1つを満たす。
−約5から約35Pasの範囲、好ましくは約10から約25Pasの範囲、最も好ましくは約15から約20Pasの範囲の粘度。
−ペースト中のすべての溶媒の沸点が約90から約300℃の範囲である。
【0055】
Al及びAgを含む添加粒子
Al及びAgを含む好ましい添加粒子は、太陽電池の有利な諸性質、特に電気的性質に寄与する添加剤である。添加粒子は、1相又は2つ以上の相を示し得る。添加粒子の相は、例えば、その化学組成、構造又はその両方が互いに異なってもよい。2相間の化学組成の相違は、相の一方には存在するが他方には存在しない1種以上の元素から生じ、又は2相中、例えば、成分の割合が異なる合金中に存在する元素の割合の相違から生じ、又は成分元素の相違と割合の相違の両方の組合せから生じ得る。2相間の構造の相違は、異なる対称性、又は長距離秩序、短距離秩序の程度及び/又は性質、若しくは部位占有率の順序の相違、又はその組合せの形を取り得る。一例は、例えば、異なる同素体間、好ましくは合金の同素体間の点群対称性、空間群対称性、又は配向秩序の程度の相違であり得る。別の一例は、部位の原子の秩序の程度及び/又は性質が異なる合金間、例えば、規則合金、部分的規則合金又は不規則合金間の相違であり得る。1つを超える相が存在する場合、一部の好ましい配列は、凝集体、又は外側のコーティングを有する中心核からなる構造である。好ましい凝集体は、化学組成、構造又はその両方が互いに異なる2つ以上の相を含む粒子である。この状況における好ましい凝集体の一タイプは、圧力、加熱、焼結、加圧、圧延、粉砕などの手段によって、2個以上の構成粒子の連結から生じ得る粒子である。この状況における好ましい凝集体の別の一タイプは、温度変化中、圧力変化中、添加剤若しくはシード剤(seeding agent)の添加中、又は他の手段中に生じ得る粒子など、1つ以上の相を2つ以上の相に分離して生じる粒子である。このようにして形成された一つの好ましい凝集体は、例えば冷却によって、共晶相が1つ以上の更なる相から分離した凝集体である。本発明の一実施形態においては、粒子は、単相を含む。本発明の別の一実施形態においては、粒子は、少なくとも2つ以上の相を含む。
【0056】
Al及びAgは、元素として、又は1種以上の単相混合物中に存在することができる。ここで、元素は、Al又はAgから選択される1種、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも99重量%、より好ましくは少なくとも99.9重量%の該元素から各々が主としてなる1個以上の領域を意味すると理解される。99.9999重量%もの高純度の元素を採用することができる。本発明の一実施形態においては、添加粒子は、元素(単数又は複数)として存在するAl又はAgの少なくとも一方又は両方を含み、好ましくは該元素を少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、最も好ましくは少なくとも99.9重量%含む。
【0057】
Al及びAgから選択される少なくとも一方又は両方をその中に含むことができる好ましい単相混合物は、Al又はAg以外の1種以上の元素も含むことができ、又はAl及びAgで全体を構成することができる。これら両方の場合において、Al及びAgは、別の元素に共有又はイオン結合したと考えられるものではないことが好ましい。この状況における好ましい単相混合物は、合金又はブレンド、好ましくは合金である。この状況におけるAl及びAg以外の好ましい元素は、金属、好ましくは遷移金属、好ましくはCu、Au、Pt、Pd及びNiから選択され、好ましくはAu又はCu、より好ましくはAuである。単相混合物は、アモルファス、結晶、又は好ましくは高レベルの結晶化度、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%の結晶化度を有する、部分結晶と部分アモルファスとすることができる。ある場合には、本発明に従って採用された添加粒子を後述のX線分析に供したときに、アモルファス相は認められなかった。単相混合物が添加粒子中に存在する場合、本発明によれば、Al及びAgの1種以上を含む単相混合物の少なくとも1種は、高レベルの結晶化度、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%の結晶化度を有することが好ましい。ある場合には、本発明に従って採用された添加粒子を後述のX線分析に供したときに、アモルファス相は認められなかった。本発明の一実施形態においては、粒子は、5重量%以下、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満のAl及びAg以外の元素を含む。
【0058】
本発明の一実施形態においては、粒子は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、最も好ましくは約0.1重量%以下のAl及びAg以外の元素と一緒に、Al及びAgを含む少なくとも1種の単相混合物を含む。この実施形態の一態様においては、添加粒子は、少なくとも1種のAl−Ag合金を含む。この実施形態の更に別の一態様においては、添加粒子は、Al−Ag合金の共融混合物を含む。この実施形態の別の一態様においては、Al及びAgを含む少なくとも1種のかかる単相は、高レベルの結晶化度、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%の結晶化度を有する。ある場合には、本発明に従って採用された添加粒子を後述のX線分析に供したときに、アモルファス相は認められなかった。
【0059】
一実施形態においては、添加粒子は、少なくとも1つのシェル相、又はコーティングに封入された少なくとも1つのコア相を含む。好ましいコア相は、その表面積の少なくとも一部、好ましくは全部の上に重ねられた別の相を有するコア相である。好ましいシェル相は、別の相の表面積の少なくとも一部、好ましくは全部の上に重ねられたシェル相である。コアシェル実施形態においては、少なくとも1個のコア、好ましくは1個のコアは、その表面積の少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の上に重ねられた少なくとも1個のシェル、好ましくは1個のシェルを有することが好ましい。コアシェル構造は、被覆粒子としても知られる。本発明の一実施形態においては、添加粒子は、銀被覆アルミニウムを含む。
【0060】
添加粒子が、多様な形状、表面、サイズ、表面積と体積の比、及び酸化物層を示し得ることは当業者によく知られている。多数の形状が当業者に知られている。幾つかの例は、球状、角、細長い(棒状又は針状)及び平坦(シート状)である。添加粒子は、形状の異なる粒子の組合せとして存在することもできる。生成電極の有利な電気接触、接着及び導電率に好都合な形状又は形状の組合せを有する添加粒子が、本発明によれば好ましい。表面性を考慮せずにかかる形状を特徴づける一方法は、長さ、幅及び厚さのパラメータによるものである。本発明の状況においては、粒子の長さは、両方の終点が粒子内に含まれる最長空間変位ベクトルの長さによって与えられる。粒子の幅は、両方の終点が粒子内に含まれる、上で定義した長さベクトルに垂直である最長空間変位ベクトルの長さによって与えられる。粒子の厚さは、両方の終点が粒子内に含まれる、どちらも上で定義した長さベクトルと幅ベクトルの両方に垂直である最長空間変位ベクトルの長さによって与えられる。本発明による一実施形態においては、できるだけ均一な形状の添加粒子が好ましい。すなわち、長さ、幅及び厚さに関する比ができるだけ1に近い、好ましくはすべての比が約0.7から約1.5の範囲、より好ましくは約0.8から約1.3の範囲、最も好ましくは約0.9から約1.2の範囲にある形状が好ましい。この実施形態における添加粒子の好ましい形状の例は、したがって、球及び立方体、又はその組合せ、又はその1つ以上と別の形状の組合せである。本発明の一実施形態においては、添加粒子は球状である。本発明による別の一実施形態においては、均一性の低い形状を有する添加粒子が好ましく、好ましくは長さ、幅及び厚さの寸法に関する比の少なくとも1つが約1.5を超える、より好ましくは約3を超える、最も好ましくは約5を超える。この実施形態による好ましい形状は、薄片状、棒状若しくは針状、又は薄片状、棒状若しくは針状と別の形状の組合せである。
【0061】
種々の表面タイプが当業者に知られている。生成電極の有利な電気接触及び伝導率をもたらす表面タイプは、本発明による添加粒子の表面タイプに好都合である。
【0062】
粒径d
50並びに関連値d
10及びd
90は、当業者に周知の粒子特性である。本発明によれば、添加粒子の平均粒径d
50は、約0.1から約15μmの範囲、より好ましくは約1から約12μmの範囲、最も好ましくは約5から約10μmの範囲にあることが好ましい。粒径d
50の測定は、当業者によく知られている。
【0063】
本発明の一実施形態においては、添加粒子の比表面積は、約0.01から約25m
2/gの範囲、好ましくは約0.1から約20m
2/gの範囲、より好ましくは約1から約15m
2/gの範囲である。
【0064】
金属粒子
銀は、本発明による好ましい金属粒子である。上記添加粒子のセクションで明示的に述べた金属粒子に加えて、それとは別に、本発明の状況における好ましい金属粒子は、金属伝導性を示す金属粒子、又は焼成すると金属伝導性を示す物質を生成する金属粒子である。導電性ペースト中に存在する金属粒子は、導電性ペーストが焼成によって焼結するときに形成される固体電極に金属伝導性を付与する。効果的な焼結に好都合であり、高伝導率及び低接触抵抗の電極をもたらす金属粒子が好ましい。金属粒子は、当業者によく知られている。当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考えるすべての金属粒子を導電性ペースト中の金属粒子として採用することができる。本発明による好ましい金属粒子は、金属、合金、少なくとも2種の金属の混合物、少なくとも2種の合金の混合物、又は少なくとも1種の金属と少なくとも1種の合金の混合物である。AlとAgの両方を含む粒子の全含有量の好ましい範囲は、上記添加粒子のセクションに記載されている。かかる粒子の全含有量への更なる寄与が金属粒子によってなされないことが好ましい。一実施形態においては、1重量%を超えるAlと1重量%を超えるAgの両方を含む金属粒子はない。別の一実施形態においては、金属粒子は、金属粒子の総重量に基づいて10重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満のAlを含む。
【0065】
銀と同様に、好ましくは銀に加えて、金属粒子として採用することができる好ましい金属は、本発明によれば、Au、Cu、Zn、Pd、Ni、Pb及びその少なくとも2種の混合物、好ましくはAuである。本発明による金属粒子として採用することができる好ましい合金は、Au、Ag、Cu、Zn、Ni、W、Pb及びPdのリストから選択される少なくとも1種の金属を含む合金、又はこれらの合金の混合物若しくは2種以上である。
【0066】
本発明の一実施形態においては、金属粒子は、1種以上の更に異なる金属又は合金で被覆された金属又は合金、例えば、銀で被覆された銅を含む。
【0067】
金属粒子の追加の成分としては、上記成分に加えて、形成される電極のより好都合な焼結性、電気接触、接着及び導電率に寄与する成分が、本発明によれば好ましい。当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考えるすべての追加の成分を金属粒子において採用することができる。導電性ペーストが塗布される面に対して相補的ドーパントである追加の置換成分が本発明によれば好ましい。n型ドープSi層のインターフェイスとなる電極を形成するときに、Si中でn型ドーパントとして作用することができる添加剤が好ましい。この状況における好ましいn型ドーパントは、15族元素、又は焼成するとかかる元素を生成する化合物である。本発明によるこの状況における好ましい15族元素は、P及びBiである。p型ドープSi層のインターフェイスとなる電極を形成するときに、Si中でp型ドーパントとして作用することができる添加剤が好ましい。好ましいp型ドーパントは、13族元素、又は焼成するとかかる元素を生成する化合物である。本発明によるこの状況における好ましい13族元素は、B及びAlである。
【0068】
金属粒子が、多様な形状、表面、サイズ、表面積と体積の比、酸素含有量、及び酸化物層を示し得ることは当業者によく知られている。多数の形状が当業者に知られている。幾つかの例は、球状、角、細長い(棒状又は針状)及び平坦(シート状)である。金属粒子は、形状の異なる粒子の組合せとして存在することもできる。生成電極の有利な焼結、電気接触、接着及び導電率に好都合な形状又は形状の組合せを有する金属粒子が、本発明によれば好ましい。表面性を考慮せずにかかる形状を特徴づける一方法は、長さ、幅及び厚さのパラメータによるものである。本発明の状況においては、粒子の長さは、両方の終点が粒子内に含まれる最長空間変位ベクトルの長さによって与えられる。粒子の幅は、両方の終点が粒子内に含まれる、上で定義した長さベクトルに垂直である最長空間変位ベクトルの長さによって与えられる。粒子の厚さは、両方の終点が粒子内に含まれる、どちらも上で定義した長さベクトルと幅ベクトルの両方に垂直である最長空間変位ベクトルの長さによって与えられる。本発明による一実施形態においては、できるだけ均一な形状の金属粒子が好ましい。すなわち、長さ、幅及び厚さに関する比ができるだけ1に近い、好ましくはすべての比が約0.7から約1.5の範囲、より好ましくは約0.8から約1.3の範囲、最も好ましくは約0.9から約1.2の範囲にある形状が好ましい。この実施形態における金属粒子の好ましい形状の例は、したがって、球及び立方体、又はその組合せ、又はその1つ以上と別の形状の組合せである。本発明の一実施形態においては、導電性ペースト中のAg粒子は球状である。本発明による別の一実施形態においては、均一性の低い形状を有する金属粒子が好ましく、好ましくは長さ、幅及び厚さの寸法に関する比の少なくとも1つが約1.5を超える、より好ましくは約3を超える、最も好ましくは約5を超える。この実施形態による好ましい形状は、薄片状、棒状若しくは針状、又は薄片状、棒状若しくは針状と別の形状の組合せである。
【0069】
種々の表面タイプが当業者に知られている。効果的な焼結に好都合であり、生成電極の有利な電気接触及び伝導率をもたらす表面タイプは、本発明による金属粒子の表面タイプに好都合である。
【0070】
粒径d
50並びに関連値d
10及びd
90は、当業者に周知の粒子特性である。本発明によれば、金属粒子の平均粒径d
50は、約0.5から約10μmの範囲、より好ましくは約1から約10μmの範囲、最も好ましくは約1から約5μmの範囲にあることが好ましい。粒径d
50の測定は、当業者によく知られている。
【0071】
本発明の一実施形態においては、銀粒子のd
50は、約1から約4μmの範囲、好ましくは約2から約3.5μmの範囲、より好ましくは約2.8から約3.2μmの範囲である。
【0072】
本発明の別の一実施形態においては、アルミニウム粒子のd
50は、約1から約5μmの範囲、好ましくは約2から約4μmの範囲、より好ましくは約2.5から約3.5μmの範囲である。
【0073】
金属粒子は、表面コーティングと一緒に存在することができる。当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考える任意のかかるコーティングを金属粒子上に採用することができる。本発明による好ましいコーティングは、導電性ペーストの改善された印刷、焼結及びエッチング特性を高めるコーティングである。かかるコーティングが存在する場合、本発明によれば、コーティングは、各場合において金属粒子の総重量に基づいて約10重量%以下、好ましくは約8重量%以下、最も好ましくは約5重量%以下に相当することが好ましい。
【0074】
本発明による一実施形態においては、銀粒子は、導電性ペーストの割合として、約50重量%を超えて、好ましくは約70重量%を超えて、最も好ましくは約80重量%を超えて存在する。
【0075】
無機反応系
エッチング及び焼結を引き起こすために、無機反応系、好ましくはガラスフリットが本発明による導電性ペースト中に存在する。好ましい無機反応系は、好ましくは、ガラス、好ましくはガラスフリット、又は焼成するとガラスを形成することができる材料である。Siウェーハに適用され、したがって前面ドープ層と塗布された導電性ペーストの間に存在し得る任意の追加の層をエッチングし、Siウェーハを適度にエッチングするために、効果的なエッチングが必要である。Siウェーハの適切なエッチングとは、電極と前面ドープ層の良好な電気接触をもたらし、したがって低接触抵抗をもたらすのに十分な深さであるが、pn接合境界に干渉するほど深くはないことを意味する。本発明の状況における好ましい無機反応系、好ましくはガラスフリットは、ガラス転移を示すアモルファス又は部分結晶性固体粉末である。ガラス転移温度T
gは、加熱によってアモルファス物質が堅い固体から部分的に可動性の過冷却溶融物に変質する温度である。ガラス転移温度の測定方法は、当業者によく知られている。無機反応系、好ましくはガラスフリットによって引き起こされるエッチング及び焼結は、無機反応系、好ましくはガラスフリットのガラス転移温度よりも上で起こる。ガラス転移温度は、所望のピーク焼成温度よりも低いことが好ましい。無機反応系、好ましくはガラスフリットは、当業者によく知られている。当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考えるすべての無機反応系、好ましくはガラスフリットを導電性ペースト中の無機反応系として採用することができる。
【0076】
本発明の状況においては、導電性ペースト中に存在する無機反応系、好ましくはガラスフリットは、元素、酸化物、加熱すると酸化物を生成する化合物、他の化合物、又はその混合物を含むことが好ましい。この状況における好ましい元素は、Si、B、Al、Bi、Li、Na、Mg、Pb、Zn、Gd、Ce、Zr、Ti、Mn、Sn、Ru、Co、Fe、Cu、Ba及びCr、又はこのリストの2種以上の混合物である。本発明の状況における無機反応系、好ましくはガラスフリットが含むことができる好ましい酸化物は、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、希土類酸化物、V族及びVI族酸化物、他の酸化物、又はその組合せである。この状況における好ましいアルカリ金属酸化物は、酸化ナトリウム、酸化リチウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム又はその組合せである。この状況における好ましいアルカリ土類金属酸化物は、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム又はその組合せである。この状況における好ましいV族酸化物は、P
2O
5などの酸化リン、Bi
2O
3などの酸化ビスマス、又はその組合せである。この状況における好ましいVI族酸化物は、TeO
2、TeO
3などの酸化テルル、SeO
2などの酸化セレン、又はその組合せである。好ましい希土類酸化物は、CeO
2などの酸化セリウム、及びLa
2O
3などの酸化ランタンである。この状況における他の好ましい酸化物は、SiO
2などの酸化ケイ素、ZnOなどの酸化亜鉛、Al
2O
3などの酸化アルミニウム、GeO
2などの酸化ゲルマニウム、V
2O
5などの酸化バナジウム、Nb
2O
5などの酸化ニオブ、酸化ホウ素、WO
3などの酸化タングステン、MoO
3などの酸化モリブデン、及びIn
2O
3などの酸化インジウム、好ましい元素として上に列挙した元素の更なる酸化物、又はその組合せである。好ましい酸化物は、さらに、無機反応系、好ましくはフリットガラスの好ましい元素成分として列挙した元素の少なくとも2種を含む混合酸化物、又は上記酸化物の少なくとも1種と上記金属の少なくとも1種を加熱することによって形成される混合酸化物である。上に列挙した酸化物及び混合酸化物の少なくとも2種の混合物も本発明の状況において好ましい。
【0077】
上述したように、無機反応系、好ましくはガラスフリットは、導電性ペーストの所望の焼成温度より低いガラス転移温度を有することが好ましい。本発明の一実施形態においては、無機反応系、好ましくはガラスフリットのガラス転移温度は、約250から約530℃の範囲、より好ましくは約300から約500℃の範囲、最も好ましくは約320から約450℃の範囲の温度である。
【0078】
ガラスフリット粒子が、多様な形状、表面性、サイズ、表面積と体積の比、及びコーティング層を示し得ることは当業者によく知られている。
【0079】
ガラスフリット粒子の多数の形状が当業者に知られている。幾つかの例は、球状、角、細長い(棒状又は針状)及び平坦(シート状)である。ガラスフリット粒子は、形状の異なる粒子の組合せとして存在することもできる。生成電極の有利な焼結、接着、電気接触及び導電率に好都合な形状又は形状の組合せを有するガラスフリット粒子が、本発明によれば好ましい。
【0080】
平均粒径d
50並びに関連パラメータd
10及びd
90は、当業者に周知の粒子特性である。本発明によれば、ガラスフリットの平均粒径d
50は、約0.1から約10μmの範囲、より好ましくは約0.2から約7μmの範囲、最も好ましくは約0.5から約5μmの範囲にあることが好ましい。
【0081】
本発明の一実施形態においては、ガラスフリット粒子のd
50は、約0.1から約3μmの範囲、好ましくは約0.5から約2μmの範囲、より好ましくは約0.8から約1.5μmの範囲である。
【0082】
有機ビヒクル
本発明の状況における好ましい有機ビヒクルは、1種以上の溶媒、好ましくは有機溶媒に基づく溶液、乳濁液又は分散液である。これによって、導電性ペーストの成分が溶解、乳濁又は分散形態で確実に存在するようになる。好ましい有機ビヒクルは、導電性ペースト内の成分の最適な安定性をもたらし、有効なライン印刷適性を可能にする粘度を導電性ペーストに付与する有機ビヒクルである。本発明による好ましい有機ビヒクルは、ビヒクル成分として以下を含む。
(i)好ましくは約1から約10重量%の範囲、より好ましくは約2から約8重量%の範囲、最も好ましくは約3から約7重量%の範囲の結合剤、
(ii)好ましくは約0から約10重量%の範囲、より好ましくは約0から約8重量%の範囲、最も好ましくは約0.01から約6重量%の範囲の界面活性剤、
(ii)有機ビヒクル中の他の成分の割合でその割合が決まる1種以上の溶媒、
(iv)好ましくは約0から約10重量%の範囲、より好ましくは約0から約8重量%の範囲、最も好ましくは約1から約5重量%の範囲の任意に選択できる添加剤。
ここで、重量%は各々、有機ビヒクルの総重量に基づき、合計100重量%になる。本発明によれば、好ましい有機ビヒクルは、上記導電性ペーストの好ましい高レベルの印刷適性を達成可能にする有機ビヒクルである。
【0083】
結合剤
本発明の状況における好ましい結合剤は、好都合な安定性、印刷適性、粘度、焼結及びエッチング性を有する導電性ペーストの形成に寄与する結合剤である。結合剤は、当業者によく知られている。当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考えるすべての結合剤を有機ビヒクル中の結合剤として採用することができる。(「樹脂」と称するカテゴリに入ることが多い)本発明による好ましい結合剤は、ポリマー結合剤、モノマー結合剤、及びポリマーとモノマーの組合せである結合剤である。ポリマー結合剤は、少なくとも2種のモノマー単位が単一分子に含まれるコポリマーとすることもできる。好ましいポリマー結合剤は、ポリマー主鎖中に官能基を有するポリマー結合剤、主鎖から離れた官能基を有するポリマー結合剤、及び主鎖中の官能基と主鎖から離れた官能基の両方を有するポリマー結合剤である。主鎖中に官能基を有する好ましいポリマーは、例えば、ポリエステル、置換ポリエステル、ポリカーボネート、置換ポリカーボネート、主鎖中に環式基を有するポリマー、多糖、置換多糖、ポリウレタン、置換ポリウレタン、ポリアミド、置換ポリアミド、フェノール樹脂、置換フェノール樹脂、場合によっては別のコモノマーとの、1種以上の前述のポリマーのモノマーのコポリマー、又はその少なくとも2種の組合せである。主鎖中に環式基を有する好ましいポリマーは、ポリビニルブチラート(PVB)及びその誘導体、ポリテルピネオール及びその誘導体、又はその混合物である。好ましい多糖は、例えば、セルロース及びそのアルキル誘導体、好ましくはメチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース及びその誘導体、並びにその少なくとも2種の混合物である。主ポリマー鎖から離れた官能基を有する好ましいポリマーは、アミド基を有するポリマー、しばしばアクリル樹脂と称される、酸及び/又はエステル基を有するポリマー、又は上述の官能基の組合せを有するポリマー、又はその組合せである。主鎖から離れたアミドを有する好ましいポリマーは、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)及びその誘導体である。主鎖から離れた酸及び/又はエステル基を有する好ましいポリマーは、例えば、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリメタクリラート(PMA)及びその誘導体、又はポリメタクリル酸メチル(PMMA)及びその誘導体、又はその混合物である。本発明による好ましいモノマー結合剤は、エチレングリコール系モノマー、テルピネオール樹脂若しくはロジン誘導体、又はその混合物である。エチレングリコールに基づく好ましいモノマー結合剤は、エーテル基、エステル基を有するモノマー結合剤、又はエーテル基及びエステル基を有するモノマー結合剤であり、好ましいエーテル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及び高級アルキルエーテルであり、好ましいエステル基は、アセタート及びそのアルキル誘導体、好ましくはエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセタート又はその混合物である。アルキルセルロース、好ましくはエチルセルロース、その誘導体、及び結合剤の前述のリストの別の結合剤とのその混合物などが、本発明の状況における最も好ましい結合剤である。
【0084】
界面活性剤
本発明の状況における好ましい界面活性剤は、好都合な安定性、印刷適性、粘度、焼結及びエッチング性を有する導電性ペーストの形成に寄与する界面活性剤である。界面活性剤は、当業者によく知られている。当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考えるすべての界面活性剤を有機ビヒクル中の界面活性剤として採用することができる。本発明の状況における好ましい界面活性剤は、直鎖、分枝鎖、芳香族鎖、フッ素化鎖、シロキサン鎖、ポリエーテル鎖及びその組合せに基づく界面活性剤である。好ましい界面活性剤は、単鎖、二重鎖又は多鎖(poly chained)である。本発明による好ましい界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性又は両性イオン性の頭部を有する。好ましい界面活性剤は、ポリマー及びモノマー又はその混合物である。本発明による好ましい界面活性剤は、顔料親和性基を有することができ、好ましくは顔料親和性基を有するヒドロキシ官能性カルボン酸エステル(例えば、DISPERBYK(登録商標)108、BYK USA,Inc.製)、顔料親和性基を有するアクリラートコポリマー(例えば、DISPERBYK(登録商標)116、BYK USA,Inc.製)、顔料親和性基を有する変性ポリエーテル(例えば、TEGO(登録商標)DISPERS655、Evonik Tego Chemie GmbH製)、高顔料親和性基を有する他の界面活性剤(例えば、TEGO(登録商標)DISPERS662C、Evonik Tego Chemie GmbH製)とすることができる。上記リストにない本発明による他の好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール及びその誘導体、並びにアルキルカルボン酸及びその誘導体若しくは塩、又はその混合物である。本発明による好ましいポリエチレングリコール誘導体は、ポリ(エチレングリコール)酢酸である。好ましいアルキルカルボン酸は、完全飽和アルキルカルボン酸、及び一価又は多価不飽和アルキル鎖を有するアルキルカルボン酸、又はその混合物である。飽和アルキル鎖を有する好ましいカルボン酸は、アルキル鎖長が約8から約20炭素原子の範囲のカルボン酸、好ましくはC
9H
19COOH(カプリン酸)、C
11H
23COOH(ラウリン酸)、C
13H
27COOH(ミリスチン酸)C
15H
31COOH(パルミチン酸)、C
17H
35COOH(ステアリン酸)又はその混合物である。不飽和アルキル鎖を有する好ましいカルボン酸は、C
18H
34O
2(オレイン酸)及びC
18H
32O
2(リノール酸)である。本発明による好ましい単量体界面活性剤は、ベンゾトリアゾール及びその誘導体である。
【0085】
溶媒
本発明による好ましい溶媒は、焼成中にペーストからかなりの程度除去される導電性ペーストの成分、好ましくは焼成後に絶対重量が焼成前に比べて少なくとも約80%減少、好ましくは焼成前に比べて少なくとも約95%減少して存在する成分である。本発明による好ましい溶媒は、好都合な粘度、印刷適性、安定性及び焼結特性を有する導電性ペーストであって、好都合な導電率、及び基板との電気接触を有する電極を生成する導電性ペーストを形成することができる溶媒である。溶媒は、当業者によく知られている。当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考えるすべての溶媒を有機ビヒクル中の溶媒として採用することができる。本発明によれば、好ましい溶媒は、上記導電性ペーストの好ましい高レベルの印刷適性を達成可能にする溶媒である。本発明による好ましい溶媒は、標準周囲温度及び圧力(SATP)(298.15K、100kPa)下で液体として存在する溶媒、好ましくは沸点が約90℃を超え、融点が約−20℃を超える溶媒である。本発明による好ましい溶媒は、極性又は非極性、プロトン性又は非プロトン性、芳香族又は非芳香族である。本発明による好ましい溶媒は、モノアルコール、ジアルコール、ポリアルコール、モノエステル、ジエステル、ポリエステル、モノエーテル、ジエーテル、ポリエーテル、これらのカテゴリの官能基の少なくとも1個を含み、場合によっては別のカテゴリの官能基、好ましくは環式基、芳香族基、不飽和結合、1個以上のO原子がヘテロ原子で置換されたアルコール基、1個以上のO原子がヘテロ原子で置換されたエーテル基、1個以上のO原子がヘテロ原子で置換されたエステル基を含む溶媒、及び上記溶媒の2種以上の混合物である。この状況における好ましいエステルは、アジピン酸のジアルキルエステルであり、好ましいアルキル成分は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及び高級アルキル基、又は2種のかかるアルキル基の組合せであり、好ましくはアジピン酸ジメチル、及び2種以上のアジピン酸エステルの混合物である。この状況における好ましいエーテルは、ジエーテル、好ましくはエチレングリコールのジアルキルエーテルであり、好ましいアルキル成分は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル及び高級アルキル基又は2種のかかるアルキル基の組合せであり、2種のジエーテルの混合物である。この状況における好ましいアルコールは、第一級、第二級及び第三級アルコール、好ましくは第三級アルコールであり、テルピネオール及びその誘導体が好ましく、又は2種以上のアルコールの混合物である。1個を超える異なる官能基を化合させた好ましい溶媒は、しばしばテキサノールと呼ばれる2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソイソブチラート、及びその誘導体、しばしばカルビトールとして知られる2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、そのアルキル誘導体、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルカルビトール、好ましくはヘキシルカルビトール若しくはブチルカルビトール、及びそのアセタート誘導体、好ましくはブチルカルビトールアセタート、又は上記の少なくとも2種の混合物である。
【0086】
有機ビヒクル中の添加剤
有機ビヒクル中の好ましい添加剤は、上記ビヒクル成分とは異なる添加剤であって、有利な粘度、焼結、生成電極の導電率、基板との良好な電気接触などの電気伝導性ペーストの好都合な諸性質に寄与する添加剤である。当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考えるすべての添加剤を有機ビヒクル中の添加剤として採用することができる。本発明による好ましい添加剤は、チキソトロピー剤、粘度調節剤、安定剤、無機添加剤、増粘剤、乳化剤、分散剤又はpH調節剤である。この状況における好ましいチキソトロピー剤は、カルボン酸誘導体、好ましくは脂肪酸誘導体又はその組合せである。好ましい脂肪酸誘導体は、C
9H
19COOH(カプリン酸)、C
11H
23COOH(ラウリン酸)、C
13H
27COOH(ミリスチン酸)C
15H
31COOH(パルミチン酸)、C
17H
35COOH(ステアリン酸)C
18H
34O
2(オレイン酸)、C
18H
32O
2(リノール酸)又はその組合せである。この状況における脂肪酸を含む好ましい組合せはヒマシ油である。
【0087】
導電性ペースト中の添加剤
本発明の状況における好ましい添加剤は、明示した他の成分に加えて、導電性ペースト、それで製造される電極、又は得られる太陽電池の性能向上に寄与する、導電性ペーストに添加される成分である。当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考えるすべての添加剤を導電性ペースト中の添加剤として採用することができる。ビヒクル中に存在する添加剤に加えて、添加剤は、導電性ペースト中にも存在することができる。本発明による好ましい添加剤は、チキソトロピー剤、粘度調節剤、乳化剤、安定剤若しくはpH調節剤、無機添加剤、増粘剤及び分散剤、又はその少なくとも2種の組合せであり、無機添加剤が最も好ましい。本発明によるこの状況における好ましい無機添加剤は、Mg、Ni、Te、W、Zn、Mg、Gd、Ce、Zr、Ti、Mn、Sn、Ru、Co、Fe、Cu及びCr若しくはその少なくとも2種の組合せ、好ましくはZn、Sb、Mn、Ni、W、Te及びRu若しくはその少なくとも2種の組合せ、その酸化物、焼成すると金属酸化物を生成することができる化合物、又は上記金属の少なくとも2種の混合物、上記酸化物の少なくとも2種の混合物、焼成すると金属酸化物を生成することができる上記化合物の少なくとも2種の混合物、又は上記のいずれか2種以上の混合物である。
【0088】
太陽電池前駆体
上記目的の少なくとも1つを達成することへの寄与は、以下の太陽電池前駆体成分を含む太陽電池前駆体によって成される。
a.ウェーハ、好ましくはSiウェーハ、
b.ウェーハの上に重ねられた本発明によるペースト。
【0089】
一実施形態においては、1種以上の更なるペーストをウェーハの上に重ねる。
【0090】
好ましい太陽電池前駆体は、焼成するとn型太陽電池を与える太陽電池前駆体、好ましくは本発明の導電性ペーストを焼成すると前側電極を形成する太陽電池前駆体である。
【0091】
本発明による太陽電池前駆体の一実施形態においては、ペーストをpドープ層の上に重ねる。
【0092】
本発明による太陽電池前駆体の一実施形態においては、ペーストを2つのドープ層のうち薄い方の上に重ねる。
【0093】
太陽電池を製造するプロセス
上記目的の少なくとも1つを達成することへの寄与は、プロセスステップとして少なくとも以下を含む太陽電池を製造するプロセスによって成される。
i)特に上記実施形態のいずれかを組み合わせる、上述したような太陽電池前駆体の用意、及び
ii)太陽電池を得るための太陽電池前駆体の焼成。
【0094】
印刷
本発明によれば、導電性ペーストを塗布し、次いで前記導電性ペーストを焼成して焼結体を得ることによって、前面及び背面電極を適用することが好ましい。導電性ペーストは、含浸、浸漬、注入、滴下、注射、噴霧、ナイフコーティング、カーテンコーティング、はけ塗り若しくは印刷又はその少なくとも2つの組合せを含めて、ただしそれだけに限定されない、当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考える任意の方法で適用することができる。好ましい印刷技術は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、タンポン印刷、オフセット印刷、凸版印刷若しくはステンシル印刷又はその少なくとも2つの組合せである。本発明によれば、導電性ペーストは、印刷、好ましくはスクリーン印刷によって適用されることが好ましい。本発明の一実施形態においては、導電性ペーストは、スクリーンを介して前面に塗布される。この実施形態の一態様においては、スクリーンを介した塗布は、以下のパラメータの少なくとも1つを満たす。
−約290から約400の範囲、好ましくは約310から約390の範囲、より好ましくは約330から約370の範囲の網目数、
−約10から約30μmの範囲、好ましくは約12から約25μmの範囲、より好ましくは約15から約23μmの範囲のワイヤー太さ、
−約5から約25μmの範囲、好ましくは約10から約20μmの範囲、より好ましくは約13から約18μmの範囲のメッシュ上のエマルジョン(EoM)厚さ、
−約1から約3mmの範囲、好ましくは約1.8から約2.5mmの範囲、より好ましくは約2から約2.3mmの範囲のフィンガー間隔。
【0095】
本発明の一実施形態においては、導電性ペーストを前面の第1の領域に格子パターンで重ねる。この実施形態の一態様においては、この格子パターンは、幅が約20から約100μmの範囲、好ましくは約30から約80μmの範囲、より好ましくは約30から約60μmの範囲のフィンガー、及びそれに対して角度が約70から約90°の範囲の母線を含む。この母線の幅は、約0.5から約2.5mmの範囲、好ましくは約1から約2mmの範囲、より好ましくは約1.3から約1.8mmの範囲である。
【0096】
本発明の別の一実施形態においては、導電性ペーストを背面の更なる領域に格子パターンで重ねる。この実施形態の一態様においては、この格子パターンは、幅が約20から約180μmの範囲、好ましくは約30から約100μmの範囲、より好ましくは約40から約60μmの範囲のフィンガー、及びそれに対して角度が約70から約90°の範囲の母線を含む。この母線の幅は、約0.5から約2.5mmの範囲、好ましくは約1から約2mmの範囲、より好ましくは約1.3から約1.8mmの範囲である。
【0097】
焼成
本発明によれば、まず導電性ペーストを塗布し、次いで前記導電性ペーストを焼成して固体電極体を形成することによって、電極を形成することが好ましい。焼成は、当業者によく知られており、当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考える任意の方法で実施することができる。焼成は、ペースト中に存在する少なくとも1種のガラスフリット、好ましくは2種以上のガラスフリット、より好ましくはすべてのガラスフリットのガラス転移温度よりも上で実施しなければならない。
【0098】
本発明の一実施形態においては、焼成段階は、以下の基準の少なくとも1つを満たす。
−下記「焼成炉における温度プロファイル」と称する方法によって測定される温度を約700から約900℃の範囲、好ましくは約730から約880℃の範囲に保持すること、
−保持温度における約1から約10秒の範囲の時間。
【0099】
本発明によれば、約10秒から約2分の範囲、より好ましくは約25秒から約90秒の範囲、最も好ましくは約40秒から約1分の範囲の保持時間で焼成を実施することが好ましい。
【0100】
前面及び背面の導電性ペーストの焼成は、同時に又は逐次的に実施することができる。同時焼成は、両面に塗布した導電性ペーストが類似の、好ましくは同一の、最適焼成条件を有する場合に適している。適切な場合、本発明によれば、焼成を同時に実施することが好ましい。焼成を逐次的に行う場合、本発明によれば、背面導電性ペーストを最初に塗布し、焼成し、続いて前面に導電性ペーストを塗布し、焼成することが好ましい。
【0101】
太陽電池
上記目的の少なくとも1つを達成することへの寄与は、本発明によるプロセスによって得ることができる太陽電池によって成される。本発明による好ましい太陽電池は、電気エネルギー出力に変換される入射光の全エネルギーの割合の点で高効率であり、かつ軽量で耐久性のある太陽電池であり、好ましくはn型太陽電池である。
図2に例示したように、太陽電池の1つの層構成は以下の通りである:(i)前面電極、(ii)反射防止コーティング、(iii)前面不動態層、(iv)前面ドープ層、(v)pn接合境界、(vi)背面ドープ層、(vii)高濃度ドープ背面層、(viii)背面不動態層、(ix)背面電極。個々の層は、この一般的層構成から省略することができ、又は個々の層は、上で概説した一般的実施形態に記載の1つを超える層の機能を実際に果たすことができる。本発明の一実施形態においては、単一の層が、反射防止層と不動態層の両方として作用する。
図1に例示したように、別の層構成は以下の通りである:(I)前面電極、(II)前面ドープ層、(III)pn接合境界、(IV)背面ドープ層、(V)背面電極。
【0102】
反射防止コーティング
本発明によれば、反射防止コーティングは、太陽電池の前面の電極の前に外側の層として、しばしば最外側の層として、適用することができる。本発明による好ましい反射防止コーティングは、前面で反射される入射光の割合を減少させ、かつ前面を通過してウェーハに吸収される入射光の割合を増加させる反射防止コーティングである。好都合な吸収/反射比を生じ、採用した導電性ペーストによってエッチングしやすいが、導電性ペーストの焼成に必要な温度に耐え、電極界面付近における電子と正孔の再結合の増加の一因にならない反射防止コーティングが好ましい。当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考えるすべての反射防止コーティングを採用することができる。本発明による好ましい反射防止コーティングは、SiN
x、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、又はその少なくとも2種の混合物、及び/又はその少なくとも2つの層の組合せである。SiN
xが特に好ましく、特にSiウェーハを採用する場合にそうである。
【0103】
反射防止コーティングの厚さは、適切な光の波長に適合している。本発明によれば、反射防止コーティングの厚さは、約20から約300nmの範囲、より好ましくは約40から約200nmの範囲、最も好ましくは約60から約90nmの範囲であることが好ましい。
【0104】
不動態層
本発明によれば、電極の前に、又は反射防止層が存在する場合にはその前に、外側の層として、又は最外側の層として、1つ以上の不動態層を前側及び/又は後側に適用することができる。好ましい不動態層は、電極界面付近における電子/正孔再結合率を低下させる不動態層である。当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考える任意の不動態層を採用することができる。本発明による好ましい不動態層は、窒化ケイ素、二酸化ケイ素及び二酸化チタンであり、窒化ケイ素が最も好ましい。本発明によれば、不動態層の厚さは、約0.1nmから約2μmの範囲、より好ましくは約10nmから約1μmの範囲、最も好ましくは約30nmから約200nmの範囲であることが好ましい。
【0105】
単一の層が、反射防止層及び不動態層として働くことができる。本発明の一実施形態においては、反射防止層及び/又は不動態層として作用する1つ以上の層は、太陽電池前駆体中のpドープ層と上に重ねられた第1のペーストの間に存在する。この実施形態の一態様においては、反射防止層及び/又は不動態層として機能する層の少なくとも1つは、SiN
xを含む。ここで、xは、正であるが、必ずしも整数ではない。
【0106】
追加の保護層
太陽電池の原理機能に直接寄与する上記層に加えて、更なる層を機械及び化学的保護のために追加することができる。
【0107】
セルは、封入して化学的に保護することができる。封入は、当業者によく知られており、当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考える任意の封入を採用することができる。本発明によれば、かかる封入が存在する場合、しばしば透明熱可塑性樹脂と称される透明ポリマーが封入材料として好ましい。この状況における好ましい透明ポリマーは、例えば、シリコンゴム(silicon rubber)及びポリエチレン酢酸ビニル(PVA:polyethylene vinyl acetate)である。
【0108】
透明ガラスシートを太陽電池の前面に追加して、セルの前面を機械的に保護することができる。透明ガラスシートは、当業者によく知られており、当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考える任意の透明ガラスシートを太陽電池の前面の保護として採用することができる。
【0109】
背面保護材料を太陽電池の背面に追加して、機械的に保護することができる。背面保護材料は、当業者によく知られており、当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考える任意の背面保護材料を太陽電池の背面の保護として採用することができる。本発明による好ましい背面保護材料は、良好な機械的性質及び耐候性を有する背面保護材料である。本発明による好ましい背面保護材料は、ポリフッ化ビニルの層を有するポリエチレンテレフタラートである。本発明によれば、背面保護材料は、封入層の下に存在することが好ましい(背面保護層と封入の両方が存在する場合)。
【0110】
フレーム材料を太陽電池の外側に追加して機械的に支持することができる。フレーム材料は、当業者によく知られており、当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考える任意のフレーム材料をフレーム材料として採用することができる。本発明による好ましいフレーム材料は、アルミニウムである。
【0111】
ソーラーパネル
上記目的の少なくとも1つを達成することへの寄与は、少なくとも上述したように得られた、特に上記実施形態の少なくとも1つによる太陽電池と、少なくとももう1個の太陽電池とを含むモジュールによって成される。本発明による多数の太陽電池を空間的に配列し、電気的に接続して、モジュールと称する集合配列を形成することができる。本発明による好ましいモジュールは、幾つかの形態を取ることができ、好ましくはソーラーパネルとして知られる矩形表面を取ることができる。太陽電池を電気的に接続する多様な方法、及びかかるセルを機械的に配列し、固定して、集合配列を形成する多様な方法が当業者によく知られており、当業者に知られ、当業者が本発明の状況において適切と考える任意のかかる方法を採用することができる。本発明による好ましい方法は、低質量/出力比、低体積/出力比及び高耐久性をもたらす方法である。アルミニウムは、本発明による太陽電池を機械的に固定する好ましい材料である。
【0112】
以下、本発明を図によって説明する。図は、説明のためのものにすぎず、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。