(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記時間変動する第1の磁場を生成するための前記手段は、前記少なくとも1つの励起回路を通って流れる時間変動する電流を有するように構成された少なくとも1つの励起回路を含むか、または、
前記時間変動する第2の磁場を生成するための前記複数の手段は、各磁気振動子が前記励起周波数にほぼ等しい前記機械的共振周波数を有する、複数の磁気振動子を含む、
請求項1に記載の電力送信機。
前記時間変動する第1の磁場を生成するための前記手段は、前記少なくとも1つの励起回路を通って流れる時間変動する電流に応答して前記時間変動する第1の磁場を生成するように構成された少なくとも1つの励起回路であり、
前記時間変動する第2の磁場を生成するための前記複数の手段は、複数の磁気振動子であり、前記複数の磁気振動子の各磁気振動子が前記励起周波数にほぼ等しい機械的共振周波数を有し、前記複数の磁気振動子は、前記第1の磁場に応答して前記時間変動する第2の磁場を生成するように構成された、
請求項1に記載の電力送信機。
前記時間変動する第1の磁場を生成するステップは、前記複数の磁気振動子の少なくとも一部分を囲む少なくとも1つのコイルを含む少なくとも1つの励起回路を通る電流を流すステップを含み、
前記複数の磁気振動子は、マイクロ電気機械システム(MEMS)構造体であり、
前記時間変動する第2の磁場を生成するステップは、前記第1の磁場によって可動磁気要素に印加されるトルクに応答して軸の周りに前記複数の磁気振動子の各磁気振動子の前記可動磁気要素を回転させるステップを含む、
請求項6に記載の方法。
前記時間変動する第1の磁場を生成するように構成された少なくとも1つの励起回路は、前記機械的共振周波数にほぼ等しい周波数において0に等しい虚数成分を有するインピーダンスを有するか、または、
前記時間変動する第2の磁場を生成するステップは、前記可動磁気要素が回転すると前記可動磁気要素に復元力を印加するステップをさらに含む、
請求項7に記載の方法。
前記複数の磁気振動子の各磁気振動子は、前記第1の磁場によって可動磁気要素に印加されるトルクに応答して軸の周りを回転するように構成された前記可動磁気要素を含み、
前記可動磁気要素は、前記可動磁気要素が回転すると前記可動磁気要素に復元力を印加するように構成された少なくとも1つのばねを含む、
請求項10に記載の電力受信機。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面に示された様々な特徴は、縮尺どおりに描かれていない場合がある。したがって、明確にするために、様々な特徴の寸法は任意に拡大または縮小されている場合がある。加えて、図面のいくつかは、所与のシステム、方法、またはデバイスの構成要素のすべてを描写していない場合がある。最後に、本明細書および図の全体を通して、同様の特徴を示すために同様の参照番号が使用される場合がある。
【0014】
添付の図面に関して下記に詳細に記載される説明は、本発明の例示的な実施形態を説明するためのものであり、本発明を実践することができる唯一の実施形態を表すためのものではない。本説明全体にわたって使用される「例示的」という用語は、「例、実例、または例示として機能すること」を意味しており、必ずしも、他の例示的な実施態様よりも好ましい、または有利であると解釈されるべきではない。詳細に記載される説明は、本発明の例示的な実施形態の完全な理解を与えるための具体的な詳細を含んでいる。場合によっては、いくつかのデバイスがブロック図の形式で示される。
【0015】
ワイヤレスで電力を伝達することは、物理的な導電体を使用することなく、電場、磁場、電磁場などに関連する任意の形態のエネルギーを送信機から受信機に伝達する(たとえば、電力は、自由空間を通って伝達され得る)ことを指す場合がある。電力伝達を達成するために、ワイヤレス場(たとえば、磁場)内に出力された電力は、「受信アンテナ」によって受信されるか、捕捉されるか、または結合される場合がある。
【0016】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、例示的なワイヤレス電力伝達システム100の機能ブロック図である。エネルギー伝達を提供するために、場105を生成するのに、電源(図示せず)から、送信機104に入力電力102を提供することができる。受信機108は、場105に結合し、出力電力110に結合されたデバイス(図示せず)によって蓄積または消費するための出力電力110を生成することができる。送信機104と受信機108の両方は、距離112だけ離間される。例示的な一実施形態では、送信機104および受信機108は、相互共振関係に従って構成される。受信機108の共振周波数および送信機104の共振周波数が、ほぼ同じか、または極めて近いとき、送信機104と受信機108との間の伝送損失は最小となる。したがって、大型コイルが極めて近い(たとえば、mm)ことが必要である可能性がある純粋に誘導性の解決策とは対照的に、より大きい距離にわたる、ワイヤレス電力伝達を提供することができる。したがって、共振誘導結合技法は、効率の改善と、様々な距離にわたる様々な誘導コイル構成を用いた電力伝達とを可能にし得る。
【0017】
受信機108は、送信機104によって生成されたエネルギー場105内に位置する際に電力を受信し得る。場105は、送信機104によって出力されたエネルギーが受信機108によって捕捉され得る領域に相当する。場合によっては、場105は、以下でさらに説明するように、送信機104の「近接場」に相当し得る。送信機104は、エネルギー伝送を出力するための送信アンテナ114を含む場合がある。受信機108は、エネルギー伝送からエネルギーを受信するか、または捕捉するための受信アンテナ118をさらに含む。近接場は、送信アンテナ114から電力を最小限に放出する、送信アンテナ114内の電流および電荷から生じる強い反応場(reactive field)が存在する領域に相当し得る。場合によっては、近接場は、送信アンテナ114の約1波長(または1波長の数分の一)内にある領域に相当し得る。送信アンテナ114および受信アンテナ118は、それらに関連付けられる応用形態およびデバイスに従ってサイズを決定される。上述のように、効率的なエネルギー伝達は、電磁波のエネルギーの大部分を遠距離場に伝搬するのではなく、送信アンテナ114の場105のエネルギーの大部分を受信アンテナ118に結合することによって起こり得る。場105内に配置されるとき、送信アンテナ114と受信アンテナ118との間に、「結合モード」を発生させることができる。この結合が起こる場合がある、送信アンテナ114および受信アンテナ118の周りのエリアは、本明細書では結合モード領域と呼ばれる。
【0018】
図2は、本発明の様々な例示的な実施形態による、
図1のワイヤレス電力伝達システム100において使用され得る例示的な構成要素の機能ブロック図である。送信機204は、発振器222、ドライバ回路224、およびフィルタ/整合回路226を含み得る、送信回路206を含むことができる。発振器222は、周波数制御信号223に応答して調整され得る、40kHz、85kHz、140kHz、468.75KHz、6.78MHz、または13.56MHzなどの所望の周波数の信号を生成するように構成され得る。発振器信号は、たとえば送信アンテナ214の共振周波数において送信アンテナ214を駆動するように構成されたドライバ回路224に提供され得る。ドライバ回路224は、発振器222から方形波を受信し、正弦波を出力するように構成されたスイッチング増幅器であり得る。たとえば、ドライバ回路224は、E級増幅器であり得る。フィルタ/整合回路226は、高調波または他の不要な周波数をフィルタ除去し、送信機204のインピーダンスを送信アンテナ214に整合させるために含まれる場合もある。送信アンテナ214を駆動した結果として、送信機204は、電子デバイスを充電または給電するのに十分なレベルで電力をワイヤレスで出力し得る。一例として、提供される電力は、異なる電力要件を有する異なるデバイスを給電または充電するために、たとえば、300ミリワットから5ワット程度であり得る。キロワット範囲の(たとえば、電気自動車のワイヤレス充電のための)比較的高いまたは比較的低い電力レベルも提供され得る。
【0019】
受信機208は、整合回路232と、
図2に示すバッテリー236を充電するかまたは受信機208に結合されたデバイス(図示せず)に給電するためにAC電力入力からDC電力出力を生成するための整流器/スイッチング回路234とを含み得る受信回路210を含むことができる。整合回路232は、受信回路210のインピーダンスを受信アンテナ218に整合させるために含まれる場合がある。加えて、受信機208と送信機204は、別々の通信チャネル219(たとえば、ブルートゥース、zigbee、セルラーなど)上で通信し得る。代替的には、受信機208および送信機204は、ワイヤレス場205の特性を使用して帯域内シグナリングを介して通信することができる。
【0020】
以下でより十分に説明されるように、選択的に無効にできる、関連する負荷(たとえば、バッテリー236)を最初に有する場合がある受信機208は、送信機204によって送信され、受信機208によって受信される電力の量が、バッテリー236を充電するのに適切であるかどうかを判定するように構成することができる。さらに、受信機208は、電力量が適切であると判定すると、負荷(たとえば、バッテリー236)を有効にするように構成され得る。いくつかの実施形態では、受信機208は、バッテリー236を充電することなく、ワイヤレス電力伝達場から受信した電力を直接利用するように構成され得る。たとえば、近接場通信(NFC)または無線周波数識別デバイス(RFID)などの通信デバイスは、ワイヤレス電力伝達場から電力を受け取り、ワイヤレス電力伝達場と相互作用することによって通信し、および/または送信機204もしくは他のデバイスと通信するために受信した電力を利用するように構成され得る。
【0021】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、送信アンテナまたは受信アンテナ352を含む、
図2の送信回路206または受信回路210の一部分の概略図である。
図3に示すように、以下で説明するものを含む例示的な実施形態において使用される送信回路または受信回路350は、アンテナ352を含み得る。アンテナ352は、「ループ」アンテナ352と呼ばれるか、または「ループ」アンテナ352として構成される場合もある。また、アンテナ352は、本明細書では、「磁気」アンテナもしくは誘導コイルと呼ばれるか、または「磁気」アンテナもしくは誘導コイルとして構成される場合もある。「アンテナ」という用語は、一般に、別の「アンテナ」に結合するためのエネルギーをワイヤレスで出力するか、または受け取ることができる構成要素を指す。アンテナは、電力をワイヤレスで出力するか、または受信するように構成されるタイプのコイルと呼ばれる場合もある。本明細書で使用するアンテナ352は、電力をワイヤレスで出力するおよび/または受信するように構成されるタイプの「電力伝達構成要素」の一例である。アンテナ352は、空芯、またはフェライトコア(図示せず)などの物理的コアを含むように構成され得る。空芯ループアンテナは、コアの近くに配置された外部の物理デバイスに対してより耐性があり得る。さらに、空芯ループアンテナ352により、コアエリア内に他の構成要素を配置することが可能になる。加えて、空芯ループにより、送信アンテナ214(
図2)の結合モード領域がより強力な場合がある送信アンテナ214(
図2)の平面内に、受信アンテナ218(
図2)をより容易に配置することが可能になる場合がある。
【0022】
上述のように、送信機104と受信機108との間のエネルギーの効率的な伝達は、送信機104と受信機108との間の整合した共振またはほぼ整合した共振の間に起こり得る。しかしながら、送信機104と受信機108との間の共振が整合しないときであっても、効率に影響が及ぶ場合があるものの、エネルギーを伝達することができる。エネルギーの伝達は、送信アンテナ214コイルの場105からのエネルギーを、近傍にある受信アンテナ218に結合することによって起こり、この場105は、送信アンテナ214からのエネルギーを自由空間に伝播させるのではなく確立される。
【0023】
ループアンテナまたは磁気アンテナの共振周波数は、インダクタンスおよびキャパシタンスに基づく。インダクタンスは単にアンテナ352によって作り出されたインダクタンスとすることができるのに対して、キャパシタンスは、所望の共振周波数で共振構造を作り出すために、アンテナのインダクタンスに加えられる場合がある。非限定的な例として、共振周波数で信号358を選択する共振回路を作り出すために、送信回路または受信回路350にキャパシタ354およびキャパシタ356を加えることができる。したがって、より大きい直径のアンテナでは、共振を持続させるのに必要なキャパシタンスのサイズは、ループの直径またはインダクタンスが大きくなるにつれて小さくなる場合がある。さらに、アンテナの直径が大きくなるにつれて、近接場の効率的なエネルギー伝達面積が増加する場合がある。他の構成要素(たとえば、本明細書で説明するいくつかの実施形態による磁気振動子)を使用して形成される他の共振回路も考えられる。別の非限定的な例として、アンテナ352の2つの端子間に並列にキャパシタを配置することができる。送信アンテナの場合、アンテナ352の共振周波数に実質的に相当する周波数を有する信号358を、アンテナ352への入力とすることができる。
【0024】
一実施形態では、送信機104は、送信アンテナ114の共振周波数に相当する周波数を有する時変磁場を出力するように構成され得る。受信機が場105内にあるとき、時変磁場は、受信アンテナ118内に電流を誘導し得る。上述のように、受信アンテナ118が送信アンテナ114の周波数で共振するように構成される場合、エネルギーを効率的に伝達することができる。負荷を充電するか、または負荷に給電するために提供され得るDC信号を生成するために、受信アンテナ118内に誘導されたAC信号を上述のように整流することができる。
【0025】
図4は、本発明の例示的な実施形態による、
図1のワイヤレス電力伝達システムにおいて使用され得る送信機404の機能ブロック図である。送信機404は、送信回路406および送信アンテナ414を含み得る。送信アンテナ414は、
図3に示すアンテナ352であり得る。送信回路406は、発振信号を与えることによって、送信アンテナ414にRF電力を供給、その結果、送信アンテナ414の周りにエネルギー(たとえば、磁束)を生成し得る。送信機404は、任意の適切な周波数で動作し得る。例として、送信機404は、6.78MHzのISMバンドで動作し得る。
【0026】
送信回路406は、送信回路406のインピーダンス(たとえば、50オーム)を送信アンテナ414に整合させるための固定インピーダンス整合回路409と、高調波放射を、受信機108(
図1)に結合されたデバイスの自己ジャミングを防ぐレベルまで低減させるように構成されたローパスフィルタ(LPF)408とを含み得る。他の例示的な実施形態は、限定はしないが、特定の周波数を減衰させる一方で他の周波数を通過させるノッチフィルタを含む、異なるフィルタトポロジーを含むことができ、アンテナ414への出力電力、またはドライバ回路424によって引き出されるDC電流などの、測定可能な送電メトリックに基づいて変化し得る、適応インピーダンス整合を含むことができる。送信回路406は、発振器423によって決定されるRF信号を駆動するように構成されたドライバ回路424をさらに含む。送信回路406は、個別のデバイスもしくは回路から構成されるか、または代わりに、一体型アセンブリから構成され得る。送信アンテナ414から出力される例示的なRF電力は、2.5ワット程度とすることができる。
【0027】
送信回路406は、発振器423の周波数または位相を調整し、かつ取り付けられた受信機を介して隣接するデバイスと対話するための通信プロトコルを実装するように出力電力レベルを調整するために、特定の受信機の送信フェーズ(またはデューティサイクル)の間に発振器423を選択的に有効にするためのコントローラ415をさらに含み得る。コントローラ415は、本明細書ではプロセッサ415と呼ばれる場合もあることに留意されたい。発振器位相および送信経路内の関係する回路の調整により、特に、ある周波数から別の周波数に移行する際の帯域外放射の低減が可能になり得る。
【0028】
送信回路406は、送信アンテナ414によって生成された近接場の近傍において作動中の受信機の存否を検出するための負荷感知回路416をさらに含み得る。例として、負荷感知回路416はドライバ回路424に流れる電流を監視し、以下でさらに説明するように、その電流は、送信アンテナ414によって生成された場の近傍における作動中の受信機の存否によって影響を及ぼされる場合がある。ドライバ回路424上の負荷に対する変化の検出は、エネルギーを伝送するために発振器423を有効にするかどうか、および作動中の受信機と通信するかどうかを決定する際に使用するためにコントローラ415によって監視される。以下でより十分に説明するように、ドライバ回路424で測定される電流は、無効なデバイスが送信機404のワイヤレス電力伝達領域内に位置するかどうかを判定するために使用され得る。
【0029】
送信アンテナ414は、リッツ線を用いて、または抵抗損を低く保つために選択された厚さ、幅、および金属のタイプを有するアンテナストリップとして実装され得る。一実装形態では、送信アンテナ414は、一般に、テーブル、マット、ランプ、または他の可搬性の低い構成などの、より大きい構造と関連付けて構成され得る。したがって、送信アンテナ414は、一般に、実用的な寸法のため「巻く」必要がない場合がある。送信アンテナ414の例示的な実装形態は、「電気的に小型」(すなわち、波長の数分の一)とし、共振周波数を規定するためにキャパシタを使用することによって、より低い使用可能な周波数で共振するように同調され得る。送信アンテナは、本明細書で説明する例示的な実施形態による磁気振動子のシステムを使用することもできる。
【0030】
送信機404は、送信機404に関連し得る受信機デバイスの所在および状態に関する情報を収集および追跡し得る。したがって、送信回路406は、(本明細書ではプロセッサとも呼ばれる)コントローラ415に接続される、存在検出器480、密閉型検出器460、またはこれらの組合せを含み得る。コントローラ415は、存在検出器480および密閉型検出器460からの存在信号に応答してドライバ回路424によって供給される電力量を調整し得る。送信機404は、たとえば、ビル内にある従来のAC電力を変換するためのAC-DCコンバータ(図示せず)、従来のDC電源を送信機404に適した電圧に変換するためのDC-DCコンバータ(図示せず)などの多くの電源を介して、または従来のDC電源(図示せず)から直接電力を受け取り得る。
【0031】
非限定的な例として、存在検出器480は、送信機404のカバレッジエリアに挿入される、充電されるべきデバイスの最初の存在を感知するために利用される運動検出器であり得る。検出後、送信機404はオンにされる可能性があり、デバイスによって受け取られるRF電力は、所定の方法でRxデバイス上のスイッチを切り替えるために使用される可能性があり、これにより次に、送信機404の駆動点インピーダンスに対する変化をもたらす。
【0032】
別の非限定的な例として、存在検出器480は、たとえば、赤外線検出手段、運動検出手段、または他の適切な手段によって人を検出することが可能な検出器である可能性がある。いくつかの例示的な実施形態では、送信アンテナ414が特定の周波数で送信することができる電力量を制限する規制が存在し得る。場合によっては、これらの規制は、人を電磁放射から守ることを意図されている。しかしながら、送信アンテナ414が、たとえば、ガレージ、工場の作業場、店舗などの、人が占有しない、または人が占有する頻度が低いエリアに配置される環境が存在する場合がある。これらの環境に人がいない場合、通常の電力制限規制よりも高く、送信アンテナ414の電力出力を増加させることが許容可能な場合がある。言い換えれば、コントローラ415は、人の存在に応答して、送信アンテナ414の電力出力を規制レベル以下に調整し、人が送信アンテナ414の電磁場による規制距離の外側にいるとき、送信アンテナ414の電力出力を、規制レベルを超えるレベルに調整することができる。
【0033】
非限定的な例として、密閉型検出器460(本明細書では、密閉型コンパートメント検出器または密閉型空間検出器と呼ばれることもある)は、包囲体が閉状態または開状態であるときを判定するための感知スイッチなどのデバイスであり得る。送信機が閉状態の包囲体内にあるとき、送信機の電力レベルを増加させ得る。
【0034】
例示的な実施形態では、送信機404が無期限にオンのままではない方法が使用され得る。この場合、送信機404は、ユーザが決定した時間の後に遮断するようにプログラムされ得る。この特徴は、送信機404の周囲のワイヤレスデバイスが十分充電された後、送信機404、特にドライバ回路424が長く動作するのを防ぐ。このイベントは、リピータまたは受信アンテナ218のいずれかから送られた、デバイスが十分に充電されたという信号を検出するための回路の故障に起因する場合がある。送信機404の周囲に別のデバイスが配置されている場合に、送信機404が自動的にシャットダウンすることを防止するために、送信機404の自動遮断機能は、定められた期間その周囲で動作が検出されなかった後にだけ、作動され得る。ユーザは、非活動時間間隔を決定し、その時間間隔を必要に応じて変更することができる場合がある。非限定的な例として、この時間間隔は、特定のタイプのワイヤレスデバイスが最初に完全に放電されるという仮定の下に、そのデバイスを完全に充電するのに必要な時間間隔よりも長い可能性がある。
【0035】
図5は、本発明の例示的な実施形態による、
図1のワイヤレス電力伝達システムにおいて使用され得る受信機508の機能ブロック図である。受信機508は、受信アンテナ518を含む場合がある受信回路510を含む。受信機508は、それに受信した電力を提供するためのデバイス550にさらに結合する。受信機508は、デバイス550の外部にあるものとして示されているが、デバイス550に統合され得ることに留意されたい。エネルギーは、受信アンテナ518にワイヤレスで伝搬され、次いで、受信回路510の残りの部分を介してデバイス550に結合される場合がある。例として、充電デバイスには、モバイルフォン、携帯型音楽プレーヤ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、コンピュータ周辺デバイス、通信デバイス(たとえば、ブルートゥースデバイス)、デジタルカメラ、補聴器(および他の医療用デバイス)などのデバイスが含まれ得る。
【0036】
受信アンテナ518は、送信アンテナ414(
図4)と同じ周波数において、または指定された周波数範囲内で共振するように同調され得る。受信アンテナ518は、送信アンテナ414と同様な寸法にすることができるか、または関連するデバイス550の寸法に基づいて異なるサイズにすることができる。例として、デバイス550は、送信アンテナ414の直径または長さよりも小さい直径寸法または長さ寸法を有するポータブル電子デバイスであり得る。そのような例では、受信アンテナ518は、同調キャパシタ(図示せず)のキャパシタンス値を低減させ、受信コイルのインピーダンスを増加させるために多巻きコイルとして実装され得る。例として、受信アンテナ518は、アンテナ径を最大化し、受信アンテナ518のループ巻き(すなわち、巻線)数と、巻線間のキャパシタンスとを低減するために、デバイス550の実質的な外周の回りに配置され得る。
【0037】
受信回路510は、受信アンテナ518に対するインピーダンス整合をもたらすことができる。受信回路510は、受信されたRFエネルギー源をデバイス550によって使用するための充電電力に変換するための電力変換回路506を含む。電力変換回路506は、RF-DC変換器520を含み、DC-DC変換器522も含み得る。RF-DC変換器520は、受信アンテナ518において受信されたRFエネルギー信号を、V
rectによって表される出力電圧を有する非交流電力に整流する。DC-DC変換器522(または他の電力調整器)は、整流されたRFエネルギー信号を、V
outおよびI
outによって表される出力電圧および出力電流を有する、デバイス550に適合するエネルギーポテンシャル(たとえば、電圧)に変換する。部分的および完全な整流器、調整器、ブリッジ、ダブラー、ならびにリニア変換器およびスイッチング変換器を含む、様々なRF-DC変換器が企図される。
【0038】
受信回路510は、受信アンテナ518を電力変換回路506に接続するか、または代替的には電力変換回路506を切断するためのスイッチング回路512をさらに含み得る。電力変換回路506から受信コイル518を切断することにより、デバイス550の充電を中断するだけでなく、送信機404(
図2)から「見える」ような「負荷」も変更する。
【0039】
上記で開示したように、送信機404は、送信機ドライバ回路424に提供されるバイアス電流の変動を検出することができる負荷感知回路416を含む。したがって、送信機404は、受信機が送信機の近接場内に存在するときに判定するための機構を有する。
【0040】
複数の受信機508が送信機の近接場内に存在するとき、他の受信機がより効率的に送信機に結合できるようにするために、1つまたは複数の受信機の装荷および除荷を時間多重化することが望ましい場合がある。受信機508はまた、他の近くの受信機への結合を解消するか、または近くの送信機への装荷を低減させるためにクローキングされ得る。受信機のこの「除荷」は、本明細書では「クローキング」とも呼ばれる。さらに、受信機508によって制御され送信機404によって検出される、除荷と装荷との間のこのスイッチングは、以下でより十分に説明するように、受信機508から送信機404への通信機構を実現することができる。加えて、受信機508から送信機404にメッセージを送信することを可能にするプロトコルが、このスイッチングに関連付けられ得る。例として、スイッチング速度は、100μ秒程度であり得る。
【0041】
例示的な実施形態では、送信機404と受信機508との間の通信は、従来の双方向通信(すなわち、結合場を使用する帯域内シグナリング)ではなく、デバイス感知および充電制御機構を指す。言い換えれば、送信機404は、エネルギーが近接場で利用可能であるかどうかを調整するために送信された信号のオン/オフキーイングを使用し得る。受信機は、これらのエネルギー変化を送信機404からのメッセージとして解釈し得る。受信機側から、受信機508は、場から受け入れている電力量を調整するために受信アンテナ518の同調および離調を使用することができる。場合によっては、同調および離調は、スイッチング回路512を介して実現され得る。送信機404は、場からの使用される電力のこの差を検出し、これらの変化を受信機508からのメッセージとして解釈し得る。送信電力の変調および負荷挙動の他の形態を利用してよいことに留意されたい。
【0042】
受信回路510は、送信機から受信機への情報信号伝達に相当し得る、受信したエネルギーの変動を識別するために使用される、信号伝達検出器/ビーコン回路514をさらに含んでよい。さらに、信号伝達/ビーコン回路514は、低減されたRF信号エネルギー(すなわち、ビーコン信号)の送信を検出し、低減されたRF信号エネルギーを公称電力に整流し、受信回路510内の給電されていない回路または電力が枯渇した回路のいずれかを呼び起こして受信回路510をワイヤレス充電するために構成するために使用することもできる。
【0043】
受信回路510は、本明細書で説明するスイッチング回路512の制御を含む、本明細書で説明する受信機508の処理を調整するためのプロセッサ516をさらに含む。また、受信機508のクローキングは、充電電力をデバイス550に提供する外部の有線充電ソース(たとえば、壁コンセント/USB電力)の検出を含む他のイベントが発生したときにも起こる可能性がある。プロセッサ516は、受信機のクローキングを制御するのに加えて、ビーコン回路514を監視してビーコン状態を判定し、送信機404から送信されたメッセージを抽出することもできる。プロセッサ516は、性能の改善のためにDC-DC変換器522を調整することもできる。
【0044】
図6は、
図4の送信回路406に使用され得る送信回路600の一部分の概略図である。送信回路600は、
図4で上述したように、ドライバ回路624を含み得る。上述のように、ドライバ回路624は、方形波を受け取り、送信回路650に提供される正弦波を出力するように構成され得るスイッチング増幅器であり得る。場合によっては、ドライバ回路624は、増幅器回路と呼ばれることがある。しかしながら、ドライバ回路624は、E級増幅器として示されているが、本発明の実施形態による任意の適切なドライバ回路624が使用され得る。ドライバ回路624は、
図4に示される発振器423からの入力信号602によって駆動され得る。ドライバ回路624はまた、送信回路650を介して供給され得る最大電力を制御するように構成された駆動電圧V
Dを提供され得る。高調波を解消または低減するために、送信回路600は、フィルタ回路626を含み得る。フィルタ回路626は、3極(キャパシタ634、インダクタ632、およびキャパシタ636)ローパスフィルタ回路626であり得る。
【0045】
フィルタ回路626によって出力された信号は、アンテナ614を含む送信回路650に提供され得る。送信回路650は、ドライバ回路624によって提供されるフィルタ処理済み信号の周波数で共振し得る、(たとえば、アンテナのインダクタンスもしくはキャパシタンス、または追加のキャパシタ構成要素に起因し得る)キャパシタンス620およびインダクタンスを有する直列共振回路を含み得る。送信回路650の負荷は、可変抵抗器622によって表すことができる。この負荷は、送信回路650から電力を受け取るように配置されたワイヤレス電力受信機508の関数であり得る。
【0046】
図7は、以下の式のように表現され得る、ファラデーの電磁誘導の法則に基づく非放射エネルギー伝達を示す。
【0048】
ここで、∇×E(t)は、交番磁場によって生成される電場の渦を示す。送信機は、1次側を形成し、受信機は、送信距離だけ分離された2次側を形成する。1次側は、交番磁場を生成する送信アンテナを表す。2次側は、ファラデーの電磁誘導の法則を使用して交番磁場から電力を抽出する受信アンテナを表す。
【0049】
1次側と2次側との間に存在する全体的に弱い結合は、漂遊インダクタンスと見なされ得る。この漂遊インダクタンスは、今度は、リアクタンスを増加させ、リアクタンス自体は、1次側と2次側との間のエネルギー伝達を妨害し得る。この種の弱く結合されたシステムの伝達効率は、動作周波数のリアクタンスとは正反対に調整されたキャパシタを使用することによって改善され得る。システムがこのように調整されるとき、システムは、その動作周波数で共振する補償変圧器になる。次いで、電力伝達効率は、1次側および2次側における損失によって制限されるだけである。これらの損失自体は、品質係数またはQ値および1次側と2次側との間の結合係数によって規定される。異なる調整手法を使用することができる。例としては、限定はしないが、1次側または2次側において(たとえば、いずれかが開回路であるとき)見られる全リアクタンスの補償、および漂遊インダクタンスの補償がある。補償は、電力伝達を最大化するためのソースおよび負荷のインピーダンス整合の一部と見なされる場合もある。したがって、インピーダンス整合は、このように、電力伝達量を増加させ得る。
【0050】
送信機700と受信機750との間の距離Dが増加するとき、伝達効率は、減少し得る。増加した距離において、効率を改善するために、より大きいループおよび/またはより大きいQ値を使用し得る。しかしながら、これらのデバイスがポータブルデバイスに内蔵されるとき、ループのサイズ、したがって、その結合およびそのQ値は、ポータブルデバイスのパラメータによって限定され得る。
【0051】
効率は、アンテナ損失を低減させることによって改善され得る。一般に、損失は、不完全導体材料、およびループの近傍の渦電流に起因する場合がある。比較的低い周波数(たとえば、1MHz未満など)において、アンテナのサイズを人工的に増加させるために、フェライト材料などのフラックス拡大材料を使用することができる。渦電流損は、磁場を集中させることによって本質的に低減され得る。抵抗値を低下させるために、表皮効果を緩和するための、低周波数における撚り線またはリッツ線などの特別な種類の線を使用することもできる。
【0052】
共振誘導エネルギー伝達に代わるものは、本明細書で説明するように磁気機械的システムを使用する。磁気機械的システムは、交番磁場からエネルギーを抽出し、そのエネルギーを機械的エネルギーに変換し、次いで、ファラデーの電磁誘導の法則を使用して電気エネルギーに再変換する、エネルギー受信システムの一部分であり得る。
【0053】
一実施形態によれば、磁気機械的システムは、磁石、たとえば、外部の交番磁場の力の下で振動することができるように取り付けられた永久磁石から形成される。これは、磁場からのエネルギーを機械的エネルギーに変換する。一実施形態では、この振動は、磁気双極子モーメントmのベクトルに垂直であって、磁石の重心にも位置する軸の周りの回転モーメントを使用する。これは、平衡を可能にし、したがって、重力の効果を最小化する。このシステムに印加される磁場は、T=μ
0(m×H)のトルクを生成する。このトルクは、要素磁石の磁気双極子モーメントを場のベクトルの方向に沿って揃える傾向がある。交番磁場を仮定すると、トルクは、運動する磁石を加速し、それによって、振動する磁気エネルギーを機械的エネルギーに変換する。
【0054】
図8は、本明細書で説明するいくつかの実施形態による例示的な磁気振動子を概略的に示す。
図8の磁気振動子は、磁気モーメントm(t)(たとえば、磁気双極子モーメントなどの、一定の大きさであるが時間変動する角度を有するベクトル)を有する磁石800を含み、磁石800は、少なくとも1つのばね(たとえば、ねじりばね810)によって下部基板(図示せず)に機械的に結合される。このばねは、磁場からのトルクが印加されないとき、磁石を801に示す位置に保持する。この非トルク位置801は、0と見なされる。磁気トルクは、ばね定数K
Rを有するばねの力に対して磁石800をばねの復元力とは反対に位置802まで動かす。磁気振動子は、慣性モーメントIを有しK
RおよびIに比例する周波数の共振を示すねじり振子であると見なされ得る。摩擦損失およびたいていの場合には極めて弱い電磁放射が、振動する磁気モーメントによって引き起こされる。この磁気振動子が、その共振に近い周波数を有する交番磁場H
AC(t)を受ける場合、磁気振動子は、印加磁場の強度に応じて角度変位θ(t)で振動し、共振における最大ピーク変位に達する。
【0055】
別の実施形態によれば、ばねの復元力の一部またはすべては、追加の静磁場H
0によって置き換えられ得る。この静磁場は、トルクT
0 = μ
0(m × H)を与えるように向く場合がある。別の実施形態は、磁気振動子の復元力を生成するためにばねと静磁場の両方を使用し得る。機械的エネルギーは、ファラデーの電磁誘導、たとえば発電機の原理を使用して電気エネルギーに再変換される。この原理は、たとえば、
図9に示すように磁気電気システム900の周りに巻かれた誘導コイル905において使用され得る。910などの負荷は、コイル905の両端に接続され得る。この負荷は、システムを減衰させ磁気振動子のQ値を低下させる機械的トルクとして現れる。加えて、磁石が振動し、したがって強い交番磁場の成分を生成するとき、および磁石が導電性である場合、磁石内に渦電流が発生する。これらの渦電流もシステムの損失に寄与する。
【0056】
一般に、結合コイル内の電流から得られる交番磁場によって、いくつかの渦電流が生成される場合もある。磁気機械的システム内の比較的小さい磁石は、渦電流効果を低減させる場合がある。一実施形態によれば、この損失効果を最小化するために、比較的小さい磁石のアレイが使用される。
【0057】
磁気機械的システムは、磁石の角度変位がピーク値に達する場合、飽和状態を示す。このピーク値は、外部のH磁場の方向および強度から、またはねじりばねを塑性変形から守るために915などの変位ストッパの存在によって決定され得る。このピーク値は、磁石要素のための限られた利用可能な空間などのパッケージによって制限される場合もある。電気負荷を変更することによる電気的切断は、飽和状態を制御し、したがって磁気機械的システムの損傷を防ぐための代替方法と見なされ得る。
【0058】
一実施形態に従って、疎結合レジーム(たとえば、大きい空間を囲む大型ループアンテナによって生成される外部磁場から取り入れられたエネルギーの場合などにおける弱い結合)を仮定すれば、負荷時のQが無負荷時のQの半分になるとき、最適整合が得られ得る。一実施形態によれば、誘導コイルは、出力電力量を最大化するために、その条件を満足するように設計される。送信機と受信機との間の結合が比較的強い場合(たとえば、密結合レジーム)、最適整合は、無負荷時のQよりもはるかに小さい負荷時のQを利用し得る。
【0059】
そのような運動する磁石のアレイを使用するとき、そのアレイを形成する磁石間に相互結合が存在する場合がある。この相互結合は、内部の力および消磁を引き起こし得る。一実施形態によれば、磁石のアレイは、径方向に対称性があり、たとえば、
図10Aおよび
図10Bに示すように、通常のまたは偏長のいずれかの回転楕円体であり得る。
図10Aは、磁化された球体内の磁束密度の平行な磁力線を示す。
図10Bは、磁化された球体内の対応する磁場強度(H)を示す。これらの図から、回転楕円体形状の3次元アレイにおける磁石間にほぼ0の変位力が存在する場合があることがわかる。
【0060】
したがって、磁石は、1000に示す回転楕円体またはディスクの軸と一直線になるのが好ましい。これによって、内部力が磁石の角度変位を消す。これによって、共振周波数は、機械的システムパラメータのみによって規定される。球体は、これらの有利な因子を有するが、1/3ほどの低い反磁化係数を有する場合もあり、ここにおいて最適反磁化係数は1である。すべての方向において軸と等しい向きを仮定すれば、ディスク形状のアレイを使用することもできる。ディスク形状の3Dアレイは、ディスク半径がその厚さよりもはるかに長く、磁石が適切に方向付けられ吊るされている場合、低い変位力をもたらす場合もある。ディスクは、たとえば1により近い、より高い磁化係数を有し得る。
【0061】
ディスクの磁化係数は、幅と直径との比に依存する。ディスク形状のアレイは、回転楕円体がホストデバイスの厚さを増加させることなく容易に使用され得る平坦な部分を有しないので、デバイスへの統合によりふさわしい形状因子にパッケージングされ得る。
【0062】
以下は、磁気機械的システムとフェリ磁性体(フェライト)との比較である。フェリ磁性体またはフェライトが、磁気機械的システムとしてモデル化されるか、または逆に、磁気機械的システムが、従来のフェライト材料によっては達成することができない特別な性質を有するフェライトと見なされ得る。このことは、以下に示される。
【0063】
フェリ磁性物質では、隣接する原子の磁気モーメントは、反強磁性体のほぼ反対方向に並ぶが、そのモーメントは、完全には補償せず、その結果、正味の磁気モーメントが存在する。しかしながら、その正味の磁気モーメントは、永久磁石に使用され得る強磁性体におけるものよりも小さい。
【0064】
比較的弱い磁気効果が存在しても、フェライトとして知られるこれらのフェリ磁性体のうちのいくつかは、低導電率を有する。このことにより、これらの材料は、誘導される渦電流が比較的低いので、ACインダクタおよび変圧器のコアに有用になる。
【0065】
渦電流が減衰されるように互いに電気絶縁した複数の小型要素磁石から成る磁気機械的システムにおいて、低導電率が見出される場合もある。
【0066】
結晶強磁性体およびフェリ磁性体は、ワイス磁区とも呼ばれる磁区において構造化され得る。磁区内の原子は、正味の磁気モーメントが生じるように並ぶ。これらの磁区は、磁気機械的システムの磁石と見なされ得る。
【0067】
多くの磁性体において、程度の差はあれ、磁区の磁化自体は、主な結晶方向のうちの1つに沿って並ぶ傾向がある。この方向は、磁化容易方向と呼ばれ、最小エネルギーの状態を表す。フェライト材料では、結晶磁区の方向は、外部磁場が印加されていない場合、ランダムに向いており、その結果、完全に消去され、巨視的レベルでは結果として生じる正味の磁気モーメントは0であると見なされる場合がある。これは、「要素」磁石が等しく方向付けられる磁気機械的システムとは対照的である。
【0068】
別の(非容易)方向において結晶の磁区の磁気モーメントを回転させるために、回転角度に応じて一定の力および仕事が必要とされる。そのような仕事は、フェリ磁性体が外部磁場を受ける場合に実行される。
【0069】
磁区の磁化の向きを最小エネルギーのその状態に再び設定する磁気機械的システムの力(たとえば、機械的または磁気的)は、外部磁場が除去された場合、磁気機械的システムのねじりばねと見なされ得る。フェライト内の結晶磁区が様々な形状およびサイズを有するので、それらの磁区は、様々なばね定数として現れる。磁気機械的システムでは、要素振動子は、等しいばね定数を有し得る。
【0070】
比較的強い外部磁場により、多くの磁区が、外部磁場によって与えられた方向に並ぶか、またはその方向によりよく並ぶ。この効果は、磁気分極と呼ばれる。これは、以下の式で数学的に表され得る。
B=μ
0H+J=μ
0(H+M)=μ
0μ
rH
ここで、Jは磁気分極、Mは磁化、μ
rは比透磁率である。
【0071】
磁化効果は、回転可能な磁気モーメントを使用した、因子μ
rによる受信位置における磁束密度の大きさと見なされ得る。磁束密度の局所的大きさのこの原理は、上述の磁気機械的システムに固有のものである。したがって、比透磁率は、磁気機械的システムに起因する場合がある。共振システムでは、この比透磁率は、周波数の関数であり、共振周波数の近傍の最大値に達する。
【0072】
フェライト材料において起こり得る磁区の磁化を変更するための別の機構は、磁化の方向は同じままであるが、個々の磁区によって占有される体積が変わり得ることである。磁壁運動と呼ばれるこのプロセスでは、磁化方向が磁場方向に最も近い磁区は、より大きくなるが、あまり好ましくない方向を向く磁区は、サイズが縮小する。
【0073】
この種類の磁化プロセスは、上述の磁気機械的システムの磁化プロセスとは異なる。外部磁場が継続的に増加する場合、フェライト材料は、飽和点に達するまで徐々に磁化される。飽和状態は、磁区の正味の磁気モーメントが外部磁場と最大限に並ぶ状態である。
【0074】
上述の磁気機械的システムは、要素磁石の角度変位が最大ピーク角度変位に達するとき、飽和する。外部交番磁場が印加されるときの動的挙動は異なる。この目的で、バルクフェライト材料の磁化プロセスが検討され得る。フェライトの典型的な磁化曲線(外部磁場Hの関数としてのM)を検討すると、フェライトが異なる動的挙動を示す、3つの主な領域が識別され得る。
【0075】
低磁化において、磁壁運動および回転は、大部分は可逆的である。可逆的であることは、外部磁場が増加し次いで再びその元の磁場強度まで減少するとき、ヒステリシス効果を除いて、元の磁化状態に戻り得ることを意味する。
【0076】
磁化曲線の第2の領域は、磁化の勾配(M対H)が比較的大きく、不可逆的な磁壁運動が起こる領域である。
【0077】
曲線の第3のセクションは、不可逆的な磁区回転のうちの1つである。ここで、勾配は、極めて平坦であり、外部磁場に沿った残りの磁区の磁化を回転させるのに必要な高い磁場強度を示す。
【0078】
不可逆的な磁壁運動または磁区の回転は、多かれ少なかれ顕著にすべてのフェライトが示す磁化曲線におけるよく知られたヒステリシスを説明する。ヒステリシスは、磁化または電磁誘導Bが外部磁場に対して遅延することを意味する。結果として、所与の場Hにおける電磁誘導Bは、フェライトサンプルの以前の磁気履歴の情報なしには特定されない場合がある。したがって、ヒステリシスは、材料に固有のメモリと見なされ得る。
【0079】
ヒステリシスループに含まれるエリアは、たとえば、外部交番磁場から生じた、循環磁化プロセスにおいて受けた磁気損失の尺度である。
【0080】
ワイヤレスエネルギー伝達の適用に関して、フェライトをヒステリシス損が通常は顕著になる、少なくとも磁化の第2の領域へ駆動する要件が存在する。この要件は、たとえば通信受信アンテナに関して様々である。しかしながら、このことは、本明細書ではこれ以上示さない。
【0081】
比較的高い周波数では、以下の2つの主な損失寄与因子が、フェライト材料において識別され得る。
- 不可逆的な磁区の変化によるヒステリシス損、および
- フェライト内の残留導電性による渦電流損。ヒステリシス損は、ヒステリシスループを1周するサイクルへのエネルギーが速度に依存しないとき、周波数に比例して増加する。渦電流損は、ヒステリシスループを拡大する効果を有する。
【0082】
上述のねじりばねを使用した磁気機械的システムは、不可逆的な効果が懸念されるヒステリシスがほとんど無い。比較的高い周波数では、渦電流損も予測される必要がある。比較的低い周波数(≪1MHz)では、磁気機械的システムは、飽和状態に近いレベルにおいて高いQ値を提供する可能性を有する。
【0083】
交番磁場では、フェライトコア材料は、その複素透磁率によって特徴付けられ得る。
μ=μ'+jμ"
実数部分および虚数部分は、それぞれ、外部磁場に対する同相の磁化および直交位相の磁化を有する透磁率を表す。
【0084】
2つの透磁率は、しばしば、フェライト材料のデータシートにプロットされたものに見出され得る。通常、実数部分は、周波数とともにほとんど一定の状態であり、わずかに上昇し、次いでより高い周波数において急激に降下する。他方、虚数成分(損失を表す)は、最初は緩やかに上昇し、次いで、実数成分が急激に降下している場所において極めて急激に増加する。
【0085】
カットオフの寸前に起こるμ'の最大値は、フェリ磁性共鳴である。フェリ磁性共鳴は、フェライト材料の本質的性質であり、その材料が使用され得る上側の周波数と見なされ得る。その材料の透磁率μ'が高くなるほど、フェリ磁性共鳴の周波数は低くなることも観測される。共鳴のこの現象は、磁区の回転、カウンタートルク(ばね)、および一定の慣性モーメントを示す。共鳴周波数が、いわゆる磁気回転比に依存することが示され得る。
【0086】
比較的低い周波数の用途のために作製されるフェライトは、磁気機械的システムと同様の一定の共鳴現象を示すが、極めて低いQ値を有し、その結果、この効果は、磁気共鳴性のワイヤレス電力システム用には技術的に利用されない場合がある。
【0087】
いくつかのフェライト材料(たとえば、イットリウム鉄ガーネット)では、材料が強い静磁場を受ける場合、マイクロ波周波数(>1GHz)において高いQ値(10,000まで)を有する磁気回転共鳴が観測され得る。電子スピン歳差運動に基づくこの効果は、サーキュレータ、アイソレータ、高Qフィルタ、および振動子などのマイクロ波構成要素を構築するために利用され得る。しかしながら、マイクロ波範囲の結合された磁気共鳴を使用した非放射エネルギー伝達は、極めて短い範囲に制限される。
【0088】
磁気回転共鳴は、原子レベルにおける磁気機械的システムと見なされ得る。しかしながら、違いは、磁気モーメントが、軸方向に振動するのではなく、静磁場の磁力線の周りで歳差運動をしていることである。しかしながら、どちらの場合も、運動する磁気モーメントおよび角度変位が存在する。
【0089】
したがって、磁気機械的システムは、そのエネルギー伝達の一部としてフェリ磁性および磁気回転を使用し得ることがわかる。
【0090】
磁気機械的システムは、単一の永久磁石または複数の(アレイ状の)要素磁石から形成され得る。理論的解析は、以下のことを示す。
- 磁気モーメントと慣性モーメントとの比は、要素磁石の数とともに増加する。この比率は、強磁性からわかる磁気回転比と同様である。
- 磁気機械的システムの性能は、この比率とともに増加する。磁気機械的受信機の性能のメリットの数値は、次の式のように表され得る。
【0092】
ここで、P
avは最適整合の条件の下で利用可能な電力を示し、H
ACは外部交番磁場の強度であり、Vsは磁気機械的システムが必要とする体積である。固有電力変換係数と呼ばれる、メリットのあるこの数値は、振子が励起磁場の方向に垂直に向く場合、交番磁場H
AC'から単位システム体積当りどれだけの電力が抽出され得るかを示す。
【0093】
長さl
emの棒磁石の仮定を使用した理論的解析は、所与のシステムQ値および動作周波数に関して、固有電力変換係数がl
em2l、したがってNe
2/3に反比例して増加することを示すが、ここで、Neは単位システム体積にフィットする要素振動子の数である。この式は、飽和状態のアイテムに対しては保持されず、このことは、ねじり振子の角度変位がストッパによって制限されないことを意味する。これは、単一の振動する磁石を超える要素磁石のアレイの利点を示す極めて興味深い結果である。固有電力変換係数が高くなるほど、システムが飽和する、磁場強度は比較的低くなる場合がある。
【0094】
飽和の結果として、所与の周波数において、単位システム体積当りの有効電力の上限が存在し、その上限は以下のものに依存する。
- 最大ピーク角度変位θ
peak
- 外部交番磁場の強度H
AC。
【0095】
理論は、この上限がH
AC'とともに線形増加することを示す。この上限は、磁気機械的システムの重要な設計パラメータである。比率として、
【0097】
が一定のままである限り、磁気機械的システムを設計する何らかの自由度が存在することも示されるが、ここで、Q
ULは磁気機械的システムの無負荷時のQ値である。
【0098】
上記の解析は、マイクロ磁気機械的振動子のアレイを使用することにより、単一のマクロ振動子を用いて実際に達成可能なものよりも良い可能性がある性能を有するシステムの設計が可能になることを示す。マクロサイズの振動子は、機械的システムでは実現できない極めて高いQ値を必要とする。
【0099】
別の実施形態は、磁気機械的システムを作り出すためにマイクロ電気機械システム(MEMS)を使用する。
図11は、本明細書で説明するいくつかの実施形態による、MEMS技術を使用して作製された磁気振動子の例示的なアレイを概略的に示す。アレイ1100は、1102などの多くの磁石要素から形成され得る。各磁石要素1102は、マイクロ加工されるか、またはシリコン基板にエッチングされた、2つのU字形スロット1112、1114から形成される。同様のサイズの永久棒磁石1104、1106がスロット内に形成される。磁石は、10μm以下であり得る。マイクロメートルレベルでは、結晶材料は、比較的大きいサイズとは異なるように挙動し得る。したがって、このシステムは、たとえば10°以上の高さの相当な角度変位と極めて高いQ値とを提供し得る。代わりに、本明細書で説明するいくつかの実施形態による他の構成は、磁気振動子を周囲の材料に結合する、他の位置および/または他の向きにおける、他の構造体(たとえば、ねじりばね)を利用し得る。
【0100】
これらのデバイスは、シリコンなどの単一のバルク材料内に形成され得る。
図11は、本明細書で説明するいくつかの実施形態による例示的な構造を示す。例示的な構成において、
図11に示す磁石要素1102は、共通の平面(たとえば、
図11に上面図で示し、ページの平面に平行に向く平坦なシリコンウエハの一部分)内に2次元構造で作製される場合があり、そのような2次元構造は、3次元構造を形成するために共に組み立てられ得る。しかしながら、
図11に示す例示的な構造は、2次元ウエハ構造内だけにあるものとして解釈されるべきでない。他の例示的な構成において、磁石要素1102の様々なサブセットは、3次元構造を形成するために共に組み立てられる別個の構造体内に作製され得る(たとえば、
図11に側面図で示す3つの上部磁石要素1102は、ページの平面に垂直に向く1つのシリコンウエハの一部分内に作製される場合があり、
図11に側面図で示す3つの下部磁石要素1102は、ページの平面に垂直に向く別のシリコンウエハの一部分内に作製される場合がある)。
【0101】
磁石1104、1106は、たとえば1テスラよりも高い高磁化を有し得る。例示的な実施形態では、磁石自体は、2つのハーフピース、すなわち上側に取り付けられた一方のピースおよび下側に取り付けられた他方のピースから構成され得る。これらのデバイスは、重心が回転軸と一致するように取り付けられ得る。このデバイスは、摩擦を低減させるために、低摩擦材料でカバーされ得るか、または舌状部とバルク材料との間のエリアに配置される真空部を有し得る。
【0102】
図12は、本明細書で説明するいくつかの実施形態による、磁気振動子1200の3次元アレイの切断領域を概略的に示す。
図12に示す例示的な構造は、ページに平行に向く単一の2次元ウエハ構造内にあり得るが、
図12は、2次元ウエハ構造内にだけあるものとして解釈されるべきでない。たとえば、
図12が2次元切断面を示す3次元アレイ1202は、ページに垂直に向く複数の平坦なウエハ部分を含む可能性があり、その結果、
図12の断面図は、複数のそのような平坦なウエハ部分からの磁気振動子1200の側面図を含む。一実施形態では、アレイ1202自体は、ディスク形状などの、径方向対称形状から形成される。
図12のディスク形状のアレイ1202は、ほぼすべての変位角度においてほぼ一定の反磁化係数を提供し得る。この実施形態では、誘導コイルは、MEMS磁気機械的システムによって生成される振動誘導磁場の動的成分を抽出するためにディスクの周りに巻かれ得る。システムの得られる動的成分は、次の式のように表され得る。
m
x(t)=|m|・sinθ(t)・e
x
【0103】
図13は、本明細書で説明するいくつかの実施形態による、複数の磁気振動子を有するディスク1302の周りに巻かれた例示的な誘導コイル1300を概略的に示す。
【0104】
単位システム体積当りの、磁気機械的システムによって受信され得る電力に関する数式は、以下のものに関して導出され得る。
- 幾何学的配置などのシステムパラメータ(たとえば、サイズまたは要素振動子の数)
- 材料特性
- 周波数
- 外部交番磁場強度。
【0105】
最大有効電力に関する式は、磁気機械的振動子の制限された角度変位およびQ値の制約の下で決定される。これらの式は、最適な設計パラメータを見出すために磁気機械的システムのポテンシャルを解析する。1次システムパラメータは、組のうちの任意の他のパラメータから独立したパラメータであり、したがって、別のパラメータの関数として表すことができない。
【0106】
システムを解析するために、1次パラメータの以下の組が選択された。
Vs: 磁気機械的システムの体積[m
3]。
l
em: 要素棒磁石の長さ[m]
ρ
em:要素磁石の長さと半径との比
ν
em: 要素磁石の比体積[m
3/kg]
H
em: 要素磁石の内部磁場強度[A/m]
α: 充填率(総磁気体積とシステム体積との比)
Q
UL: 機械的共振器の無負荷時のQ値。これは、機械的摩擦、放射、および機械的エネルギーから電気エネルギーへの変換による損失を含む。
θ
peak: 機械的共振器によってサポートされる磁石棒の最大ピーク変位角度[rad]。
f
0: 共振周波数[Hz]
H
AC: 外部から印加される交番磁場[A/m]
P
av_mech:有効機械出力(負荷への最大電力)
【0107】
2次システムパラメータおよび物理量は、以下のものを含む。
r
em:要素棒磁石の半径[m](=I
em/ρ
em)
【0109】
V
e:要素システム(共振器)が必要とする体積(=V
em/α)
N
e:システム体積内の要素磁石の数=V
s/V
e
I:要素磁石の慣性モーメント[kg m
2]。これは、υ
em、l
em、およびρ
emの関数である。
K
r:ねじりばね定数[kg m
2s
-2]。これは、Q
UL、f
0、およびIの関数である。
Γ
s:すべてのシステム損失を表す動回転摩擦(トルクに比例する角速度)[kg m
2s
-1]。これは、Q
UL、f
0、およびIの関数であり、機械的摩擦、放射、および機械的エネルギーから電気エネルギーへの変換による損失を含む。
Γ
L:負荷等価動回転摩擦[kg m
2s
-1]
【0111】
m:磁気モーメント(ベクトル)[Am
2]。これは、l
em、ρ
em、およびH
emの関数である。
θ:変位角度[rad]
φ:0変位における磁気モーメントベクトルと外部から印加される交番磁場のベクトルとの間の角度[rad]
【0112】
インダクタンス、キャパシタンス、および抵抗値から成る線形電気システムと、ねじりばね、慣性モーメント、および動摩擦(トルクに比例する角速度)から形成される回転機械システムとの間のアナロジーが存在する。このアナロジーをTable1(表1)に示す。
【0115】
式の導出を以下に示す。共振条件からねじりばね定数は、次の式のようになる。
K
r =(2πf
0)
2I
最適整合条件
Γ
L=Γ
s
は、磁気電気的トランスデューサ(誘導コイル+負荷)を用いて達成され得ることが仮定される。Q値の式(Table1(表1)参照)から、動摩擦は、次の式のようになる。
【0117】
上記に定義されたパラメータを使用して、要素磁石の磁気モーメントは、
m=V
em・H
em
と表すことができ、慣性モーメントは、次の式のようになる。
【0119】
上記のよく知られている式に基づいて、駆動トルクのRMS値は、次の式のようになる。
T=m・μ
0H
AC・sin(φ)
キルヒホッフの節点法則を適用することにより、回路内のトルク間の次の関係式が与えられる。
【0121】
共振周波数において、定義より次の式を得る。
【0125】
および整合条件から、次の式のようになる。
【0127】
ここで、要素システム当りの有効機械出力は、単純に次の式で表され得る。
【0129】
上記の式を使用して、磁気機械的システム全体から利用可能な総電力に関する次の関係式を得ることができる。
【0131】
この式は、所与のQ
ULおよび周波数に関して、有効電力が、要素棒磁石の長さに反比例して増加し、得られる角度変位を無視することを示す。要素振動子のピーク角度変位に関して、次の式、
【0133】
は、所与のQ値および周波数におけるピーク角度変位が、要素棒磁石の長さに反比例して増加することを示す。このように、外部磁場強度H
ACに、したがって外部磁場から抽出され得る電力にも、いくつかの制約を設定する。最大角度変位の制約を導入することは、周波数と磁石の長さとの積に関する次の関係式につながる。
【0135】
ピーク角度変位(飽和状態)に対する制約を使用して、最大有効電力に関する興味深い次の式を得ることができる。
【0137】
この式は、次のように、磁気機械的システムの総磁気モーメントm
totおよび外部磁気誘導BACに関して表すこともできる。
【0139】
この式は、Q値、棒磁石の長さにこれ以上依存せず、磁気機械的システムの設計における一定の自由度を示す。しかしながら、これらのパラメータは、ピーク角度変位θ
peakに隠れているか、またはその陰にある。最大有効電力は、周波数とともに線形増加する。この挙動は、ファラデーの電磁誘導の法則に直接基づくシステムにおいて見出すこともできる。
【0140】
磁気機械的システムの性能を定量化する有用な定義は、すでに説明してきた固有電力変換係数である。
【0142】
同様に、飽和磁場強度は、次の式のようになる。
【0144】
システムは、比較的低い飽和レベルと折り合いながら、高いk
cに対して設計され得る。逆に、システムは、比較的低いk
cと折り合いながら、比較的高い飽和レベルに対して設計され得る。
【0145】
数値の例
数値の例では、次のパラメータが仮定される。
V
s=4・10
-6m
3(=4cmの直径および3.1mmの厚さを有するディスクに等しい4cm
3)
υ
em=131.6・10
-6m
3/kg
H
em=1T/μ
0A/m
α=0.25
Q
UL=1000
θ
peak=0.175rad(=10°)
φ=0
主に注目する周波数は、f=135kHzである。
主に注目する磁場強度は、H
AC=5A/mである。
電力は、理論的には周波数とともに線形増加する。しかしながら、比較的高い周波数では、電力は、システム内の最大蓄積振動エネルギー、機械的歪みなどの他の因子によってさらに制限される場合があることに留意しなければならない。これらの他の因子は、以下の推定では考慮されない。
【0146】
外部交番磁場強度の関数としての有効電力は、要素磁石の異なる長さに関して計算され得る。20μmの長さの棒磁石を使用したシステムは約2.5Wにおいて飽和するが、10μmの棒長さを使用したシステムは約600mWの比較的低い値において飽和する。しかしながら、10μmのシステムは、20μmの棒を使用するシステムよりも敏感(高い固有電力変換係数)である。これは、5A/mの磁場強度においてチェックされ得る。
【0147】
この例に基づいて、4cmの直径および3cmの厚さを有するディスク形状のシステムが、135kHzにおいて1メートル当り5アンペアの磁場から260mWまでを抽出し得ることがわかる。
【0148】
上記の説明は、複数の磁気振動子およびピックアップコイルが使用される電力受信機の様々な特徴を開示する。以下の説明を考慮すると、電力受信機のこれらの同じ概念および構造(たとえば、複数の磁気振動子)の多くは、本明細書で説明するいくつかの実施形態に従って、電力送信機にも使用され得る。加えて、以下の説明は電力送信機の様々な特徴を開示するが、電力送信機のこれらの同じ概念および構造(たとえば、磁気振動子の少なくとも2つの平面、およびほぼ等しい大きさを有しほぼ反対方向を向く少なくとも2つの平面の総磁気モーメントの時間変動しない成分を有する3次元アレイ)の多くは、本明細書で説明するいくつかの実施形態に従って、電力受信機にも使用され得る。さらに、少なくとも1つの電力送信機および少なくとも1つの電力受信機を含む電力伝達システムは、本明細書で説明する構造を有する、少なくとも1つの電力送信機および少なくとも1つの電力受信機のうちの1つまたはその両方を有し得る。
【0149】
図14は、本明細書で説明するいくつかの実施形態による、少なくとも1つの電力受信機1402に電力をワイヤレスで伝達するように構成された例示的な電力送信機1400を概略的に示す。電力送信機1400は、少なくとも1つの励起回路1404を通って流れる時間変動する(たとえば、交番する)電流1408に応答して時間変動する(たとえば、交番する)第1の磁場1406を生成するように構成された少なくとも1つの励起回路1404を含む。時間変動する第1の磁場1406は、励起周波数を有する。電力送信機1400は、複数の磁気振動子1410(たとえば、
図14には示さないが、少なくとも1つの基板に機械的に結合される)をさらに含む。
図14は、複数の磁気振動子1410を示すのではなく、簡単のために、本明細書で説明するいくつかの実施形態に適合する1つの例示的な磁気振動子1410を概略的に示す。複数の磁気振動子の各磁気振動子1410は、励起周波数にほぼ等しい機械的共振周波数を有する。複数の磁気振動子1410は、第1の磁場1406に応答して時間変動する(たとえば、交番する)第2の磁場1412を生成するように構成される。
【0150】
図14によって概略的に示されるように、少なくとも1つの励起回路1404は、複数の磁気振動子1410の少なくとも一部分を囲む(たとえば、取り巻く)少なくとも1つのコイル1414を含む。少なくとも1つのコイル1414は、それを通って流れる時間変動する(たとえば、交番する)電流1408 I
1(t)を有し、磁気振動子1410にトルク(
図14に「励起トルク」と標示される)を印加する、時間変動する(たとえば、交番する)第1の磁場1406を生成する。それに応じて、磁気振動子1410は、軸の周りを回転する。このように、少なくとも1つの励起回路1404および複数の磁気振動子1410は、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換する。磁気振動子1410は、電力受信機1402(たとえば、上述の電力受信機)に電力をワイヤレスで送信する第2の磁場1412を生成する。たとえば、電力受信機1402は、第2の磁場1412によって印加されるトルクに応答して回転し、ピックアップコイル1420内に電流1418を誘導し、それによって機械的エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成された、受信用の複数の磁気振動子1416を含み得る。
【0151】
複数の磁気振動子を利用した電力送信機用のピックアップコイルに関して、
図13によって概略的に示されるように、電力送信機1400の少なくとも1つのコイル1414は、電力送信機1400の複数の磁気振動子1410の少なくとも一部分の周りに巻かれた単一の通常のコイルを含み得る。少なくとも1つのコイル1414の線は、少なくとも1つのコイル1414と複数の磁気振動子1410との間の結合を有利に改善(たとえば、最大化)するために、複数の磁気振動子1410の磁気モーメントの「動的」成分(以下により詳細に説明する)にほぼ垂直に向く場合がある。以下でより十分に説明するように、少なくとも1つのコイル1414を通って流れる励起電流は、従来の共振誘導システムにおいて使用される励起電流よりもはるかに低い可能性がある。したがって、本明細書で説明するいくつかの実施形態は、有利にも、少なくとも1つのコイル1414の設計に対する特別な要件を有しない。
【0152】
電力受信機の磁気振動子に関して、
図11において上述したように、本明細書で説明するいくつかの実施形態による電力送信機1400の磁気振動子1410は、MEMS作製技術などで知られているリソグラフィプロセスを使用して少なくとも1つの基板(たとえば、半導体基板、シリコンウエハ)の上に作製されたMEMS構造体であり得る。複数の磁気振動子1410の各磁気振動子1410は、第1の磁場1406によって可動磁気要素に印加されるトルクに応答して軸1422の周りに回転するように構成された可動磁気要素を含み得る。可動磁気要素は、基板に機械的に結合され、可動磁気要素が回転すると可動磁気要素に復元力を印加するように構成された少なくとも1つのばね1424(たとえば、ねじりばね、圧縮ばね、引張ばね)を含み得る。電力受信機1402の磁気振動子1416は、電力受信機1402の基板に機械的に結合され、可動磁気要素(たとえば、磁気双極子)が回転すると可動磁気要素に復元力を印加するように構成された少なくとも1つのばね1426(たとえば、ねじりばね、圧縮ばね、引張ばね)を含む可動磁気要素を含み得る。
【0153】
たとえば、複数の磁気振動子1410は、複数の平面を含むことができ、平面の各々は、シリコン基板および対応する磁気振動子1410の組を含む。
図11に概略的に示されるように、「U」字形スロットは、適切なエッチングプロセスを使用してシリコン基板内に形成され、それによって、材料(たとえば、磁気振動子の2つの「U」字形スロット間にとどまる材料)の梁によって吊るされた長尺部分(たとえば、舌状部)を形成することができる。これらの梁は、磁気振動子のための低摩擦ばね(たとえば、ねじりばね)として働く場合がある。磁気層が、磁気振動子の長尺部分に付加され得る。磁気振動子の3次元アレイは、複数のそのような平面を共に追加することによって作製することができ、高い磁石パッキング密度は、電力送信機の所望の性能を求めて達成され得る。
【0154】
図15は、本明細書で説明するいくつかの実施形態による例示的な電力送信機1500を概略的に示し、少なくとも1つの励起回路1502が、磁気振動子1504の機械的共振周波数にほぼ等しい周波数において駆動される。少なくとも1つの励起回路1502は、ある磁気モーメントおよびある慣性モーメントを有する磁気振動子1504に励起トルクを印加する第1の磁場を生成する。この磁気モーメントの方向は時間変動するが、その大きさは一定である。磁気振動子1504の共振周波数は、その慣性モーメント(そのサイズおよび寸法の関数)およびばね定数を含む、磁気振動子1504の機械的特性によって決定される。マイクロ電気機械システム(MEMS)磁気振動子1504では、共振周波数は、MHzの範囲にある場合があり、マクロ的磁気振動子1504では、共振周波数は、数百Hzの範囲にある場合がある。
【0155】
少なくとも1つの励起回路1502の入力インピーダンスは、実数成分および虚数成分を有し、これらの成分のどちらも周波数の関数として変化する。磁気振動子1504の共振周波数の近傍で、実数成分は最大になり、虚数成分は消える(たとえば、ほぼ0に等しくなる)(たとえば、少なくとも1つの励起回路1502の電流および電圧は互いに同相になる)。この周波数では、インピーダンスは、少なくとも1つのコイルの端子において見られるように、磁気振動子が強い交番磁場を生成することができても、ただ抵抗性があるように見える。少なくとも1つの励起回路1502と複数の磁気振動子1504との組合せは、「インダクタンスの無いインダクタ」のように見える場合があり、有利にも、従来の電力送信機に使用される共振同調キャパシタの必要性を回避(たとえば、解消)する。
【0156】
時間変動する(たとえば、交番する)第2の磁場が複数の磁気振動子1504によって生成されるので、従来の共振誘導システムなどに存在する、共振時の少なくとも1つの励起回路1502の導電体を通って流れる高電流は存在しない。したがって、少なくとも1つの励起回路1502(たとえば、励磁器コイル)における損失は、無視でき得る。いくつかのそのような構成では、少なくとも1つの励起回路1502において、リッツ線ではなく、細線または標準線が使用され得る。主な損失は、一般に機械的摩擦、空気抵抗、渦電流、および放射による、複数の磁気振動子1504およびその周囲において起こる。他のMEMSシステムと同様に、磁気振動子1504は、特にkHzおよびMHzの周波数の範囲において、電気共振器のQ値をはるかに超えるQ値を有し得る。たとえば、複数の磁気振動子1504のQ値は、10,000を超える場合がある。そのような高いQ値は、場合によっては、容量性負荷がかかったワイヤループを使用した他の共振誘導システムにおいて達成するのがより困難である場合がある。
【0157】
本明細書で説明するいくつかの実施形態の大きいQ値は、複数の磁気振動子1504によって提供される場合もある。負荷にワイヤレスで送信され得る電力は、磁気振動子1504に印加されたトルクの2乗平均(RMS)値τ
RMSと周波数(たとえば、角速度)のRMS値ω
RMSとの積である。電力伝達距離が増加する際の十分な振動(たとえば、磁気振動子1504の十分な角度変位)を可能にするために、トルクτ
RMS(たとえば、電力送信機1500の磁気振動子1504に印加される減衰トルク、または電力受信機の磁気振動子に印加される負荷トルク)は低減され得るが、そのような距離の増加は、より低い電力につながる。この電力損失は、磁気振動子1504およびねじりばね1506の慣性モーメントによって与えられる範囲内で周波数ω
RMSを増加させることによって補償され得る。磁気振動子1504の性能は、磁気回転比
【0159】
(ここで、mは磁気振動子1504の磁気モーメントであり、J
mは磁気振動子1504の慣性モーメントである)の関数として表すことができ、この比率は、有利にも、比較的高い周波数における十分な性能を実現するために十分高くなるように設定され得る。
【0160】
有利にも、単一の永久磁石の代わりに、通常の3次元アレイ内に配置される複数の小型の個々に振動する磁気振動子を使用することができる。複数の磁気振動子は、複数の磁気振動子と同じ総体積および質量を有する単一の永久磁石よりも大きい磁気回転比を有し得る。総磁気モーメントmおよび総質量M
mを有するN個の磁気振動子の3次元アレイの磁気回転比は、
【0162】
と表すことができ、ここで、l
mは等価単一磁石(N=1)の長さを示す。この式は、磁気回転比が磁気振動子のサイズの減少とともに2/3の累乗で増加することを示す。言い換えれば、小型磁気振動子のアレイによって生成される大きい磁気モーメントは、加速され、わずかなトルク(たとえば、電力送信機の少なくとも1つの励起回路を通って流れる小さい励起電流によって生成される励起トルク、または離間した電力送信機によって生成される、電力受信機における負荷トルク)によって振動を開始することができる。複数の磁気振動子の性能は、磁気振動子の数を増加させることによって慣性モーメントを増加させるよりも磁気モーメントが増加するので、磁気振動子の数を増加させることによって増大され得る。磁気振動子(たとえば、ミクロン範囲の特徴部のサイズを有する)のアレイを使用して、MHz範囲を超える共振周波数を使用することができる。
【0163】
図16は、本明細書で説明するいくつかの実施形態による、複数の磁気振動子1602の構成の例示的な部分1600を概略的に示す。
図16に示す部分1600は、複数の磁気振動子1602のうちの磁気振動子1602の組を含む。通常の構造の磁気振動子1602のこの配置は、原子格子構造(たとえば、3次元結晶)内の平面の配置と同様である。
【0164】
実線位置と破線位置との間の磁気振動子1602の振動は、「準静的」成分1604(
図16において垂直な実線矢印によって示される)および「動的」成分1606(
図16において垂直線に対して傾斜した実線矢印および破線矢印によって示され、実線矢印および破線矢印によって示された水平成分1608を有する)に分解され得る総磁気モーメントを生成する。動的成分1606は、エネルギー伝達を受け持つ。
図16などに示す例示的な構成では、30°の最大角度変位に対して、磁気振動子1602の組における20%の体積利用率、その表面において1.6テスラを有するレアアース金属磁気材料、160ミリテスラのピーク程度の「動的」磁束密度が、ほぼヒステリシス損なしに達成され、それによって、従来のフェライト技術をしのぐことができる。
【0165】
しかしながら、準静的成分1604は、エネルギー伝達においては価値がない可能性がある。実際には、実際の適用例では、準静的成分1604を回避する(たとえば、減少させるか、または解消する)のが望ましい場合があり、その理由は、準静的成分1604は、構造体の近傍のいかなる磁気材料も複数の磁気振動子1602の方に引き寄せ得る強い磁化(たとえば、強い永久磁石の磁化など)をもたらすからである。
【0166】
複数の磁気振動子1602によって生成される総磁場は、個々の磁気振動子1602にトルクを受けさせ、その結果、磁気振動子1602は、非ゼロ変位角度にとどまる場合がある。これらの力は、有効ねじりばね定数も変化させ、したがって、共振周波数を変更する場合がある。これらの力は、回転対称になるように複数の磁気振動子1602のアレイのマクロ的形状(たとえば、ディスク形状のアレイ)を選択することによって制御(たとえば、回避、低減、または解消)され得る。たとえば、径方向に対称であるアレイ(たとえば、
図10A、
図10B、および
図12に示した、通常のまたは偏長のいずれかの回転楕円体)を使用することは、回転楕円体形状の3次元アレイ内の磁気振動子1602間の有効ゼロ変位を生成し得る。磁化されたディスク内のいくつかの磁場成分の磁力線は、磁気モーメントの任意の向きに対して平行であり、ディスク形状のアレイでは、共振周波数は、主に磁気振動子の慣性モーメントおよびねじりばね定数によって決定され得る。
【0167】
図17は、本明細書で説明するいくつかの実施形態に従って、複数の磁気振動子1702の様々な部分の準静的成分が相殺する3次元アレイ1700内に複数の磁気振動子1702が配置される例示的な構成を概略的に示す。
図17の3次元アレイ1700は、複数の磁気振動子1702のうちの磁気振動子の第1の組1702aを含む少なくとも1つの第1の平面1704(たとえば、第1の層)を含み、磁気振動子の第1の組1702aの各磁気振動子1702aは、第1の方向を向く磁気モーメントを有する。磁気振動子の第1の組1702aは、時間変動する成分および時間変動しない成分を含む、第1の総磁気モーメント1706(
図17に上部の実線矢印および破線矢印によって示す)を有する。3次元アレイ1700は、複数の磁気振動子1702のうちの磁気振動子の第2の組1702bを含む少なくとも1つの第2の平面1708(たとえば、第2の層)をさらに含む。磁気振動子の第2の組1702bの各磁気振動子1702bは、第2の方向を向く磁気モーメントを有する。磁気振動子の第2の組1702bは、時間変動する成分および時間変動しない成分を含む、第2の総磁気モーメント1710(
図17に下部の実線矢印および破線矢印によって示す)を有する。第1の総磁気モーメント1706の時間変動しない成分および第2の総磁気モーメント1710の時間変動しない成分は、互いにほぼ等しい大きさを有し、互いにほぼ反対方向を向く。このように、磁気振動子の第1の組1702aおよび磁気振動子の第2の組1702bの磁気モーメントの準静的成分は、(たとえば、3次元アレイ1700の隣接平面間で磁気振動子の極性を交番させることによって)相殺する。対照的に、第1の総磁気モーメント1706の時間変動する成分および第2の総磁気モーメント1710の時間変動する成分は、互いにほぼ等しい大きさを有し、互いにほぼ同じ方向を向く。
【0168】
図17の構造は、磁気特性(たとえば、比透磁率が1より大きい)を有するが、磁化できない常磁性体(たとえば、軟質フェライト)の構造に類似する。そのようなアレイの構成は、有利であり得るが、磁気振動子上の外部磁場によって生成されるトルクに対して作用する逆トルクを生成する場合がある。この逆トルクは、一般に、ねじりばねのトルクに付加される。この逆トルクは、ねじりばねのトルクを補うための、または磁気振動子内にねじりばねが無い場合に使用するための復元力として使用され得る。加えて、この逆トルクは、複数の磁気振動子を構成する際の自由度を低減させ得る。
【0169】
図18は、本明細書で説明するいくつかの実施形態による、電力送信機1802(たとえば、アルミニウムまたは銅の背板1803に結合された送信機ベースパッド)および電力受信機1804(たとえば、アルミニウムまたは銅の背板1805に結合された受信機パッド)の例示的な構成1800を概略的に示す。電力伝達パッドの平坦なロープロファイル設計に関して、複数の磁気振動子を含む少なくとも1つのコイルおよび少なくとも1つのディスクが使用される、本明細書で説明する電力送信機1802および/または電力受信機1804が使用され得る。たとえば、電力送信機1802は、本明細書で説明するように複数の磁気振動子を含む少なくとも1つのコイル1806および少なくとも1つのディスク1808を含むことができ、電力受信機1804は、本明細書で説明するように複数の磁気振動子を含む少なくとも1つのコイル1810および少なくとも1つのディスク1812を含むことができる。いくつかのそのような構成は、平坦なフェライトコア(たとえば、本明細書で説明する少なくとも1つのコイルに類似する)および磁場を成形するための導体背板を使用する平坦な「ソレノイド」コイルに類似するソリューションにつながり得る。いくつかのそのような構成では、システムは、ほぼ水平な磁気モーメントを生成し、不整合の条件においても、比較的強い結合によって特徴付けられ得る。「ソレノイド」構成とは反対に、本明細書で説明するいくつかの実施形態は、比較的高いQ値の可能性を有し、(たとえば、自己共振するコアを使用することによって)同調キャパシタを必要としない。本明細書で説明するいくつかの実施形態における損失は、渦電流損失まで減る可能性があるが、ヒステリシス損および銅損はほとんど無い。
【0170】
図19は、本明細書で説明するいくつかの実施形態による、電力をワイヤレスで送信する例示的な方法1900の流れ図である。動作ブロック1910では、方法1900は、励起周波数を有する、時間変動する第1の磁場を生成するステップを含む。動作ブロック1920では、方法1900は、第1の磁場を複数の磁気振動子に印加することによって時間変動する第2の磁場を生成するステップをさらに含む。複数の磁気振動子の各磁気振動子は、励起周波数にほぼ等しい機械的共振周波数を有する。
【0171】
いくつかの実施形態では、電子デバイスをワイヤレスで充電する(たとえば、モバイル電子デバイスをワイヤレスで充電する)ために、ワイヤレスで送信される電力が使用される。いくつかの実施形態では、電気デバイス(たとえば、電気自動車)を給電するように構成されたエネルギー蓄積デバイス(たとえば、バッテリー)をワイヤレスで充電するために、ワイヤレスで送信される電力が使用される。
【0172】
上述した方法の様々な動作は、様々なハードウェアおよび/またはソフトウェアの構成要素、回路、および/またはモジュールなどの、動作を実行することが可能な任意の適切な手段によって実行され得る。一般に、図に示す任意の動作は、それらの動作を実行することが可能な対応する機能手段によって実行され得る。たとえば、電力送信機は、励起周波数を有する時間変動する第1の磁場を生成するための手段と、時間変動する第1の磁場に応答して時間変動する第2の磁場を生成するための手段とを含み得る。時間変動する第1の磁場を生成するための手段は、少なくとも1つの励起回路を通って流れる時間変動する電流を有するように構成された少なくとも1つの励起回路を含み得る。時間変動する第2の磁場を生成するための手段は、各磁気振動子が励起周波数にほぼ等しい機械的共振周波数を有する、複数の磁気振動子を含み得る。
【0173】
様々な異なる技術および技法のうちのいずれかを使用して、情報および信号が表され得る。たとえば、上記の説明全体にわたって言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、およびチップは、電圧、電流、電磁波、磁場もしくは磁性粒子、光学場もしくは光学粒子、またはそれらの任意の組合せによって表され得る。
【0174】
本明細書で開示された実施形態に関して説明された様々な例示的な論理ブロック、モジュール、回路、およびアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、またはその両方の組合せとして実装することができる。ハードウェアおよびソフトウェアのこの互換性を明確に示すために、様々な例示的な構成要素、ブロック、モジュール、回路、およびステップについて、概してそれらの機能性に関して上記に説明した。そのような機能性がハードウェアとして実装されるか、またはソフトウェアとして実装されるかは、具体的な適用例および全体的なシステムに課される設計制約に依存する。説明された機能性は特定の適用例ごとに様々な方法で実装できるが、そのような実装の決定は、本発明の実施形態の範囲からの逸脱を生じるものと解釈されるべきではない。
【0175】
本明細書で開示する実施形態に関して説明する様々な例示的なブロック、モジュール、および回路は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)もしくは他のプログラマブル論理デバイス、個別ゲートもしくはトランジスタ論理、個別ハードウェア構成要素、または、本明細書に説明された機能を実行するように設計されたそれらの任意の組合せで、実装または実行され得る。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであってもよいが、代替ではプロセッサは、任意の従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラまたはステートマシンであってもよい。プロセッサを、コンピューティングデバイスの組合せ、たとえばDSPおよびマイクロプロセッサの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアに関連する1つもしくは複数のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成として実装することもできる。
【0176】
本明細書で開示する実施形態に関して説明する方法またはアルゴリズムおよび機能のステップは、直接ハードウェアで具現化されても、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールで具現化されても、またはその2つの組合せで具現化されてもよい。ソフトウェアで実装される場合、それらの機能は、1つもしくは複数の命令もしくはコードとして有形の非一時的コンピュータ可読媒体上に記憶されるか、または有形の非一時的コンピュータ可読媒体を介して送信される場合がある。ソフトウェアモジュールは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読取り専用メモリ(ROM)、電気的プログラマブルROM(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD ROM、または、当技術分野で既知である任意の、他の形態の記憶媒体中に存在することができる。記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体から情報を読み取り、かつ記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに結合される。代替として、記憶媒体はプロセッサと一体であり得る。本明細書で使用する場合、ディスク(diskおよびdisc)は、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、光ディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピー(登録商標)ディスク、およびブルーレイディスクを含み、ディスク(disk)は、通常、磁気的にデータを再生し、ディスク(disc)は、レーザで光学的にデータを再生する。上記の組合せも、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。プロセッサおよび記憶媒体はASIC内に存在し得る。ASICはユーザ端末内に存在し得る。代替として、プロセッサおよび記憶媒体は、ユーザ端末内に個別構成要素として存在することができる。
【0177】
本開示の概要を示すために、本発明のいくつかの態様、利点、および新規の特徴が本明細書に説明されている。本発明の任意の特定の実施形態に従って、そのような利点の必ずしもすべてが達成されない場合があることを理解されたい。したがって、本発明は、本明細書に教示された1つの利点または利点のグループを、本明細書に教示または示唆され得る他の利点を必ずしも達成することなく、達成または最適化するように具現化または実行することができる。
【0178】
上述の実施形態への様々な修正が容易に明らかになり、本明細書に定義する一般原理は、本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく他の実施形態に適用され得る。したがって、本発明は、本明細書に示された実施形態に限定されるものではなく、本明細書に開示された原理および新規の特徴に一致する最も広い範囲を与えられるものである。