特許第6378368号(P6378368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6378368混合廃プラスチック類(MWP)を有益な石油化学製品に変換する方法
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  • 特許6378368-混合廃プラスチック類(MWP)を有益な石油化学製品に変換する方法 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378368
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】混合廃プラスチック類(MWP)を有益な石油化学製品に変換する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/12 20060101AFI20180813BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20180813BHJP
   C10G 47/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   C08J11/12ZAB
   C10G1/10
   C10G47/00
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-570164(P2016-570164)
(86)(22)【出願日】2014年12月23日
(65)【公表番号】特表2017-512246(P2017-512246A)
(43)【公表日】2017年5月18日
(86)【国際出願番号】EP2014079151
(87)【国際公開番号】WO2015128033
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2017年7月12日
(31)【優先権主張番号】14156623.2
(32)【優先日】2014年2月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503013200
【氏名又は名称】サウジ ベーシック インダストリーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SAUDI BASIC INDUSTRIES CORPORAITON
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ウォード、アンドリュー マーク
(72)【発明者】
【氏名】オプリンス、アーノ ヨハネス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ナレイアナスワミー、ラヴィチャンダー
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/169367(WO,A1)
【文献】 特開2007−119648(JP,A)
【文献】 特開昭50−087466(JP,A)
【文献】 特開平11−061147(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0151233(US,A1)
【文献】 特開昭58−179291(JP,A)
【文献】 特開2002−060757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B17/00−17/04、
C08J11/00−11/28、
C10G1/00−99/00、
C07B31/00−63/04、
C07C1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合廃プラスチック類(MWP)を石油化学製品に変換する方法であって、
混合廃プラスチック類(MWP)を熱分解反応器に供給するステップと、
前記MWPを気体ストリーム及び液体ストリームに変換するステップと、
前記気体ストリームを石油化学製品に更に処理するステップとを含み、
前記方法は、
i)前記液体ストリームを、常圧蒸留及び/又は減圧蒸留からの蒸留残油を含む水素化分解供給物とともに水素化分解ユニットに供給するステップと、
ii)前記液体ストリームを前記水素化分解供給物とともに水素化分解により気体ストリーム及び液体ストリームの少なくとも一方に変換するステップと、
iii)少なくとも1つの気体ストリームを石油化学製品に更に処理するステップとを更に含み、
ステップi)において、前記熱分解反応器からの前記液体ストリームは、まず、芳香族含有量の多い液体ストリームと芳香族含有量の少ない液体ストリームに分離され、前記芳香族含有量の少ない液体ストリームは、前記水素化分解ユニットに送られる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記熱分解反応器からの前記気体ストリームと前記水素化分解ユニットからの少なくとも1つの気体ストリームとを混合するステップと、
混合された気体ストリームを石油化学製品に更に処理するステップと、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱分解反応は、前記熱分解反応器からの前記液体ストリームの90%が350℃未満で沸騰するように実行されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱分解反応器からの前記気体ストリーム及び前記水素化分解ユニットからの少なくとも1つの気体ストリームは、蒸気分解ユニット、プロパン脱水素化ユニット、ブタン脱水素化ユニット、及び複合プロパン/ブタン脱水素化ユニットの群から選択された1以上の処理ユニットにおいて更に処理されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記熱分解反応器からの前記気体ストリーム及び前記水素化分解ユニットからの少なくとも1つの気体ストリームは、蒸気分解ユニットと、プロパン脱水素化ユニット、ブタン脱水素化ユニット、及び複合プロパン/ブタン脱水素化ユニットの群から選択された1以上の処理ユニットとにおいて更に処理されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記熱分解反応器からの前記気体ストリーム及び/又は前記水素化分解ユニットからの少なくとも1つの気体ストリームを、更なる処理の前に、軽質留分、C2留分、C3留分、及びC4留分に分離するステップを更に含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記C2留分を前記蒸気分解ユニットに、前記C3留分を前記プロパン脱水素化ユニットに、前記C4留分を前記ブタン脱水素化ユニットに、それぞれ供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップi)を実行する前に、前記熱分解反応器からの任意の前記液体ストリームから塩素を除去するために水素化するステップを含まないことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記混合廃プラスチック類(MWP)を前記熱分解反応器に供給する前に、PVCを除去するための分離器に前記MWPを供給するステップを更に含み、
分離されて得られたPVCストリームは、450℃未満の温度で熱的に脱塩化水素化され、前記熱分解反応器に供給されることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
水素化分解ユニット又はその供給物加熱器に導入する前に混合された混合物の、ASTM D7157−12に準拠して測定されたS値が1を超えるような重量又は体積比率で、前記液体ストリームと前記水素化分解供給物とを混合するステップを更に備えることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合廃プラスチック類(MWP)を有益な石油化学製品に変換する方法に関する。より具体的には、本方法は、混合廃プラスチック類(MWP)を熱分解反応器に供給するステップと、前記MWPを気体ストリーム及び液体ストリームに変換するステップと、前記気体ストリームを有益な石油化学製品に更に処理するステップとを含む。
【発明の概要】
【0002】
国際公開第WO2013/169367号は、粘度指数の高い潤滑油基油を生成する方法であって、a)(1)プラスチック原料の熱分解に由来する重質ワックスと、(2)潤滑油原料とを含むブレンドを水素化分解触媒及び水素の存在下で潤滑油水素化分解ゾーンにおいて潤滑油水素化分解条件下で水素化分解し、水素化分解されたストリームを生成するステップと、b)水素化分解されたストリームの少なくとも一部を水素異性化触媒及び水素の存在下で水素異性化ゾーンにおいて水素異性化条件下でデワックスし、基油を生成するステップとを含む方法に関する。重質ワックスは、当業者に周知で、例えば米国特許第6,143,940号に記載された手段により、プラスチック原料を熱分解することにより調整することができる。熱分解ゾーンの流出物は、一般に、広範囲の沸点を有する物質を含む。熱分解ゾーンの流出物(液体部分)は、かなり蝋状であり、高い流動点を有する。それは、n−パラフィン及びある程度のオレフィンを含む。
【0003】
このように、国際公開第WO2013/169367号は、プラスチック類の熱分解からの重質ワックスと従来の潤滑油原料の混合物を原料として使用し、水素化分解につづいて水素異性化及び水素化仕上処理により、粘度指数の高い潤滑油基油を生成する方法を開示する。重質ワックスは、30〜90重量%のn−パラフィン、5〜25重量%のオレフィン、及び5重量%未満の芳香族を含む。国際公開第WO2013/169367号は、水素化分解原料において重質ワックスを共に供給することにより、重質ワックスが生成物の343℃以上の留分中で濃縮されることを教示する。この参照の目的は、生成物の343℃以上の留分を最大化する、すなわち、潤滑油基油(343℃以上)を最大化することである。
【0004】
米国特許出願公開第2009/151233号は、a)熱分解油を生成するために、約450℃〜約650℃の温度において少なくとも75重量%のポリオフェフィンを含む前記廃プラスチック類と、バイオマスとを同時に熱分解するステップと、b)前記熱分解油を、650°F未満の留分と650°F以上の留分を含む少なくとも2つの留分に分離するステップと、c)前記少なくとも2つの留分の少なくとも1つを水素化処理し、少なくとも1つの水素化処理された中間生成物を生成するステップと、d)前記少なくとも1つの水素化処理された中間生成物を接触異性化し、少なくとも1つの異性化された生成物を生成するステップと、を含む方法に関する。米国特許出願公開第2009/151233号の目的は、バイオマスとプラスチック類を熱分解ユニットに共に供給するステップと、熱分解ユニットからの生成物の少なくとも1つの留分を水素化処理及び異性化して輸送燃料を生成するステップにより生成される輸送燃料を最大化することである。米国特許出願公開第2009/151233号は、熱分解液を石油供給物と共に水素化分解装置へ供給すること、及び混合された水素化分解供給物におけるアスファルテンの安定性に関するものではない。
【0005】
「プラスチック熱分解液の環境上好適なガソリン範囲の生成物への継続的改良」、H.S Jooら、Fuel Processing Technology、1998年1月1日、25〜40頁の記事は、水素化処理、水素化分解、及び蒸留からなる連続的な3ステップの方法を使用して、プラスチック熱分解からの残液をガソリン範囲の生成物に改質することに関する。この方法において、元の未処理の熱分解液が、90℃、20ミリバールにおける蒸留により2つの留分に分離され、供給物質は、元のプラスチック熱分解液の58%の量の残渣であった。この残渣は、分留により71重量%の軽油留分(205℃超)及び29重量%のナフサ留分を含む不透明な黒色の液体であった。この参照文献は、プラスチック熱分解プロセスからの残渣液体の水素化分解に関する。この熱分解プロセスからの液体生成物は、蒸留により、蒸留分(48重量%)及び残渣液体分(52重量%)を生成する。29重量%のナフサ範囲炭化水素及び71重量%の沸点が205℃超である炭化水素を含むこの残渣液体分は、水素化分解プロセスに供給される。生成物は、ガソリンの沸点範囲において46重量%の物質を含有していた。このように、この参照文献は、石油化学製品を最大化するための統合されたプロセスを教示していない。
【0006】
特開平11−061147号公報及び特開平11−061148号公報は、プラスチックの熱分解の方法において、塩素を除去するために熱分解油を水素化処理し、石油と混合して精製ユニットに供給することを開示する。
【0007】
特開平10−310778号公報は、0〜100容量%の熱分解油を沸点が250℃未満の石油ストリームに混合し、FCCユニットに供給するプロセスを開示する。熱分解油の品質は、ジエン価が0.1〜5g/100g、塩素分が0.0007〜1重量%、酸素分が0.0001〜1重量%を有する必要がある。
【0008】
廃プラスチック類は、大部分が埋め立て地に転用されるか、焼却され、わずかな部分が再利用に転用される。年来、拡大された規制及び埋め立て地に対する課税のため、再利用又は熱回収のため焼却される使用後の廃棄物の割合が徐々に増加している。欧州プラスチック工業会による2009年統計は、欧州においてほぼ2420万トンの廃プラスチック類が生じたことを示す。このうち、54%が再利用(22.6%)又は熱回収(31.3%)により処理された。埋め立てに転用されたプラスチックは、ほぼ46.1%であった。このように、廃プラスチック類の埋め立て地への処分は、ますます困難になっている。
【0009】
廃プラスチック類のナフサ、エチレン、プロピレン、及び芳香族などの生成物への熱分解は、廃プラスチック類の供給原料再利用のカテゴリー下に分類できる。ナフサの価格が劇的に跳ね上がっているため、ナフサ原料を用いた蒸気分解は、より安価な気体状炭化水素原料を用いた蒸気分解に比して不利な立場にある。蒸気分解のナフサ原料の一部が、熱分解などのプラスチック変換プロセスからの同量の生成物により置換されれば、ナフサ原料を用いた蒸気分解の経済状況は向上するであろう。
【0010】
持続的な蒸気分解プラントの運転に対して多大な経済上の影響を与えるためには、熱分解プロセスも持続的である必要がある。現在、廃プラスチック類を単一のステップにおいて石油化学製品に直接変換する大規模プラントは存在しない。世界中における従前の試みは、廃プラスチック類からの液体燃料の生成にフォーカスされてきた。これらのプラントは、小規模又は事実上モジュール式であった。このような小規模プラントにおいて実行される反応は、長期の滞留時間で実行されるので、より大規模な持続的運転には不向きである。近年のいくつかの試みは、廃プラスチック類から蒸気分解の供給原料を生成することにもフォーカスしてきた。しかしながら、これらの成功は、蒸気分解炉の稼働率に依存する。さらに、これらの生成された蒸気分解原料の分解炉における変換は、一般に、望ましくないメタンの高収率をもたらすであろう。
【0011】
混合廃プラスチック類(MPW)の熱分解は、気体及び液体の生成物を提供する。気体の生成物は、オレフィン成分に富んでいる。液体の生成物は、芳香族に富んでいる。熱分解反応器における運転の過酷さに依存して、熱分解反応器からの軽質オレフィンの収率を増加させることができるとともに、芳香族の収率を増加させることができる。液体の熱分解生成物は、様々な割合で全種類の成分、すなわち、パラフィン、イソパラフィン、ナフテン、オレフィン、及び芳香族を有する。
【0012】
本発明の態様又は特徴は、混合廃プラスチック類(MWP)を有益な石油化学製品に変換する方法において、有益な石油化学製品の収率を増加させることが可能な方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の態様又は特徴は、混合廃プラスチック類(MWP)を有益な石油化学製品に変換する方法において、熱分解反応器からの液体ストリームの化学的混合物を特定の水素化処理ユニットに使用する方法を提供することである。
【0014】
本発明は、混合廃プラスチック類(MWP)を有益な石油化学製品に変換する方法であって、混合廃プラスチック類(MWP)を熱分解反応器に供給するステップと、前記MWPを前記反応器において気体ストリーム及び液体ストリームに変換するステップと、前記気体ストリームを有益な石油化学製品に更に処理するステップとを含み、前記方法は、
i)前記液体ストリームを水素化分解供給物とともに水素化分解ユニットに供給するステップと、
ii)前記液体ストリームを前記水素化分解供給物とともに水素化分解により気体ストリーム及び液体ストリームの少なくとも一方に変換するステップと、
iii)少なくとも1つの気体ストリームを有益な石油化学製品に更に処理するステップとを更に含み、
ステップi)において、前記熱分解反応器からの前記液体ストリームは、まず、芳香族含有量の多い液体ストリームと芳香族含有量の少ない液体ストリームに分離され、前記芳香族含有量の少ない液体ストリームは、前記水素化分解ユニットに送られることを特徴とする方法に関する。
【0015】
本方法によれば、熱分解反応器からの液体ストリームが水素化分解反応器に送られ、少なくとも1つの気体ストリームに変換され、その気体ストリームからも有益な石油化学製品が得られるので、有益な石油化学製品の収率が著しく増加する。したがって、本発明による有益な石油化学製品は、熱分解反応器から直接得られる気体ストリームからだけでなく、水素化分解反応器から得られる気体ストリームからも生じる。
【0016】
本発明の基となる課題は、混合廃プラスチック類からのエタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブテン、及び、ベンゼン、トルエンキシレン、及びエチルベンゼンなどの芳香族などの石油化学製品を最大化することと、水素化分解器への安定的な供給を維持することも可能な統合されたプロセスを提供することである。好適な実施の形態において、本方法は、熱分解、水素化分解、蒸気分解、PDH及びBDHを組み合わせた統合プロセスにおいて、混合プラスチック類からの石油化学製品の生成を最大化することにフォーカスする。石油化学製品の生産を最大化するために、熱分解反応器は、好ましくは、熱分解器の出口における軽質ガスオレフィン及び芳香族の収率を最大化するような、より過酷な運転条件で運転される。240℃よりも低い沸点の液体生成物は、約70%の芳香族を含有する。これは、国際公開第WO2013/169367号とは異なる。水素化分解供給物においてアスファルテンの沈殿をもたらす不安定な水素化分解の供給物ブレンドの生成の可能性を最小化するために、従属項に記載されたブレンドルールを適用するのが好ましい。これは、とくに、アラブの重質な常圧又は減圧蒸留残油のように、石油原料がアスファルテンを多く含む実施の形態において有用である。この組み合わされた解決の効果は、実施例において実証された。150℃のC5−留分が最大化され、343℃以上の留分が最小化されたことが、実施例から明らかである。したがって、石油化学製品が最大化される。
【0017】
本明細書において使用される「少なくとも1つの気体ストリーム」という用語は、水素化分解反応が複数の気体ストリームをもたらし得ることを意味する。そのため、本発明は、水素化分解ユニットから得られる気体ストリームの数に限定されない。本明細書において使用される「有益な石油化学製品」という用語は、例えば、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、及びブテンなどの出発物質だけでなく、ベンゼン、トルエン、及びキシレン(BTX)にも関連する。
【0018】
本方法の更なる意外な利点は、熱分解反応器から得られる液体ストリームと水素化分解原料、好ましくは常圧蒸留からの粗製蒸留残油(AR)及び/又は減圧蒸留からの粗製蒸留残油(VR)との組合せにより、全原油(whole crude oil)と類似した沸騰曲線を有する、水素化分解ユニットへの混合供給ストリームが得られることである。
【0019】
さらに、常圧蒸留からの粗製蒸留残油(AR)及び/又は減圧蒸留からの粗製蒸留残油(VR)の問題点として、下流の処理ユニットに深刻な問題をもたらすアスファルテンの凝集がある。本発明者らは、熱分解反応器から得られる液体ストリームと水素化分解供給物を組み合わせ、混合して得られた供給物を水素化分解反応器に供給することにより、AR又はVR中のアスファルテンを溶解状態に維持し、これにより水素化処理触媒の汚染を低減させることができるというプラスの効果があることを発見した。言い換えれば、このような混合された原料供給物において、アスファルテンは溶解した状態に保たれる。
【0020】
さらに、水素化分解の分野における問題点は、水素化分解供給物中の望まれない金属の存在である。本発明者らは、熱分解反応器から得られる液体ストリームと水素化分解供給物を組み合わせ、混合して得られた供給物を水素化分解反応器に供給することにより、常圧蒸留残油(AR)又は減圧蒸留残油(VR)よりも少ない金属含有量の供給原料が、上述した液体ストリームの追加なしに得られることを発見した。
【0021】
さらに、水素化分解の分野における問題点は、水素化分解供給物中の硫黄含有量である。高い硫黄含有量は、水素化処理反応ゾーン中の水素化処理触媒の活性部位に対して水素と競争する多量の硫化水素の発生をもたらす。水素の分圧も減少するので、反応効率に影響する。本発明者らは、熱分解反応器から得られる液体ストリームと水素化分解供給物を組み合わせ、混合して得られた供給物を水素化分解反応器に供給することにより、常圧蒸留残油(AR)又は減圧蒸留残油(VR)よりも少ない硫黄含有量の供給原料が、上述した液体ストリームの追加なしに得られることを発見した。したがって、本発明は、MWP熱分解反応からの液体ストリームを、水素化分解ユニットへの水素化分解供給物の硫黄含有量を低減させるために、水素化分解供給物との混合物に使用することに関する。
【0022】
上述したように、混合廃プラスチック類(MWP)の熱分解は、気体及び液体を提供する。気体の生成物は、オレフィン成分に富んでいる。液体の生成物は、芳香族に富んでいる。熱分解反応器における運転の過酷さに依存して、熱分解反応器からの軽質オレフィンの収率を増加させることができるとともに、芳香族の収率を増加させることができる。液体の熱分解生成物は、様々な割合で全種類の成分、すなわち、パラフィン、イソパラフィン、ナフテン、オレフィン、及び芳香族を有する。
【0023】
本発明による熱分解反応器の運転条件は、550〜730℃、触媒と供給物の比が6以上、流動接触分解(FCC)触媒及びZSM−5ゼオライト触媒を含む複合触媒の運転条件を含む。ここで、ZSM−5ゼオライト触媒は、複合触媒の少なくとも10重量%を構成する。水素化分解ユニットが配置された下流において有益な石油化学製品を高い収量で得る観点から、熱分解反応器からの液体ストリームの90%が350℃未満で沸騰するような熱分解反応が実行されることが好ましい。このように、熱分解反応器が運転される方法は、高過酷度熱分解プロセスと呼ばれる。高過酷度熱分解プロセスは、より多くの軽質オレフィンだけでなく、安定的な水素化分解の供給原料を維持するのに十分な芳香族も生成する。本発明による水素化分解反応器のプロセス条件は、330〜500℃の温度、70〜200バールの圧力範囲、固定された沸騰床又は懸濁床反応器の使用を含む。水素化分解の触媒は、アルミナ担持Co−Mo/Ni−Mo触媒やその他の商業的に使用される触媒などの、市販されている水素化分解触媒である。
【0024】
本明細書において使用される「混合廃プラスチック類(MWP)」という用語は、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、天然及び合成ゴム、タイヤ、充填ポリマー、複合材料、プラスチックアロイ、溶媒に溶解したプラスチック、バイオマス、バイオオイル、及び石油のうち少なくとも1つを含む。
【0025】
本発明によれば、熱分解反応器からの液体ストリームは、芳香族含有量の多い液体ストリームと芳香族含有量の少ない液体ストリームに分離され、芳香族含有量の少ない液体ストリームは、水素化分解ユニットに送られる。この分離は、水素化分解供給物のアスファルテン凝集傾 向がない場合に好ましい。
【0026】
本発明によれば、水素化分解ユニットからの少なくとも1つの気体ストリームは、有益な石油化学製品に更に処理される。好適な実施の形態において、熱分解反応器からの気体ストリームは、水素化分解ユニットからの少なくとも1つの気体ストリームとを混合され、混合された気体ストリームは、有益な石油化学製品に更に処理される。
【0027】
好適な実施の形態によれば、熱分解反応器からの気体ストリーム及び水素化分解ユニットからの少なくとも1つの気体ストリームは、蒸気分解ユニット、プロパン脱水素化ユニット、ブタン脱水素化ユニット、及び複合プロパン/ブタン脱水素化ユニットの群から選択された1以上の処理ユニットにおいて更に処理され、より好ましくは、蒸気分解ユニットと、プロパン脱水素化ユニット、ブタン脱水素化ユニット、及び複合プロパン/ブタン脱水素化ユニットの群から選択された1以上の処理ユニットとにおいて更に処理される。
【0028】
本方法は、熱分解反応器からの気体ストリーム及び/又は水素化分解ユニットからの少なくとも1つの気体ストリームを、更なる処理の前に、軽質留分、C2留分、C3留分、及びC4留分に分離するステップを更に含む。
【0029】
C2留分を蒸気分解ユニットに、C3留分をプロパン脱水素化ユニットに、C4留分をブタン脱水素化ユニットに、それぞれ供給することが好ましい。C3留分及びC4留分の双方を含む混合ストリームの場合、その混合ストリームを複合プロパン/ブタン脱水素化ユニットに送るのが好ましい。その供給口に未変換のC3及びC4の再循環を含めてもよい。
【0030】
好適な実施の形態によれば、出発物質である混合廃プラスチック類(MWP)は、MWPを熱分解反応器に供給する前に、分離器に送られる。このため、熱分解ユニットへの供給物には、極微量のPVC/塩素しか存在しない。分離されたPVCストリームは、450℃未満の温度で熱的に脱塩化水素化され、水素化分解ユニット又は熱分解反応器に供給されてもよい。この方法により、反応ゾーンの冶金学上の問題が解決される。別の好適な実施の形態によれば、本方法は、ステップi)を実行する前に、熱分解反応器からの任意の液体ストリームから塩素を除去するために水素化するステップを含まない。
【0031】
このように、本発明は、MWP熱分解反応からの液体ストリームを、水素化分解ユニットへの水素化分解供給物の金属含有量を低減させるために、水素化分解供給物との混合物に使用することに関する。
【0032】
さらに、本発明は、MWP熱分解反応からの液体ストリームを、水素化分解ユニットへの水素化分解供給物の粘度を低減させるために、水素化分解供給物との混合物に使用することにも関する。
【0033】
本発明は、ステップi)において、水素化分解ユニットに言及する。しかし、具体的な実施の形態において、水素化分解ユニットだけでなく、例えばコーカーやFCCユニットなどの他のユニットも使用することができる。
【0034】
以下、添付の図面とともに、本発明を更に詳細に説明する。本図において、熱分解液は、常圧蒸留及び/又は減圧蒸留からの粗製蒸留残油よりもかなり軽質であるが、H/C原子比が例えば1.4〜1.5であり、これは常圧蒸留及び/又は減圧蒸留からの粗製蒸留残油のH/C原子比に近い。したがって、この場合、混合ブレンドは、全原油に類似した沸騰曲線を有するであろう。
【0035】
芳香族化合物が熱分解液から抽出される実施例によれば、熱分解液の残りの部分は、例えば2〜2.2のH/C原子比を有するであろう。この値は、おそらく、常圧蒸留及び/又は減圧蒸留からの粗製蒸留残油のH/C原子比よりも高い。このような非芳香族熱分解液と常圧蒸留及び/又は減圧蒸留からの粗製蒸留残油との組合せを用いた水素化分解供給物において、こうして得られた混合供給物の水素含有量が増加される。この熱分解油から水素化分解ユニットへの非芳香族の供給ルートは、水素化分解ユニットへの供給物としての粗製残油が、この非芳香族熱分解油とブレンドすることによるアスファルテン凝縮傾向がない場合に、とくに有用である。
【0036】
本発明は、プラスチック類からの石油化学製品を最大化するための統合されたプロセスを教示するとともに、水素化分解装置への安定的な供給を維持するために供給物ブレンドをいかに調整すべきかを教示する。本発明は、好ましくは、軽質オレフィンを最大化し、水素化分解の供給安定性を促進するための芳香族液体を生成するために、高過酷度の先行する熱分解プロセスを使用する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の方法の実施の形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
唯一の図に概略的に示されるプロセス及び装置101を参照する。図には、熱分解反応器2及び水素化分解ユニット9が示される。混合廃プラスチック類1が熱分解反応器2に導入され、気体生成物12及び液体生成物5が得られる。気体生成物12は、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンを含むストリーム13、エタンを含むストリーム14、プロパンを含むストリーム15、ブタンを含むストリーム16、及びエチレン、プロピレン、ブテンを含むストリーム17などの個々のストリームに更に分離されてもよい。ストリーム14は蒸気分解ユニットにおいて、ストリーム15はプロパン脱水素化ユニットにおいて、ストリーム16はブタン脱水素化ユニットにおいて、更に処理されてもよい。前述したように、混合廃プラスチック類(MWP)1は、MWPを熱分解反応器2に供給する前に、PVCの除去のための分離ステップ(図示せず)を施されてもよい。分離されたPVCストリームは、450℃未満の温度で熱的に脱塩化水素化されてから、熱分解反応器2に供給されてもよい。
【0039】
好適な実施の形態において、熱分解反応器2からの液体ストリーム5は、分離ユニット4において、高芳香族含有ストリーム6と低芳香族含有ストリーム7とに分離される。低芳香族含有ストリーム7は、水素化分解ユニット9に送られる。ストリーム7は、水素化分解ユニット9の供給口に、水素化分解供給物3とともに供給される。水素化分解ユニット9において、導入された混合液体供給物は、水素(図示せず)の存在下で水素化分解され、気体生成物11及び液体生成物10に変換される。液体生成物10は、別の化学プロセスにおいて更に処理されてもよい。気体生成物11は、有益な石油化学製品に更に変換される。気体生成物11は、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンを含むストリーム13、エタンを含むストリーム14、プロパンを含むストリーム15、ブタンを含むストリーム16、及びエチレン、プロピレン、ブテンを含むストリーム17などの個々のストリームに更に分離されてもよい。ストリーム14は蒸気分解ユニットにおいて、ストリーム15はプロパン脱水素化ユニットにおいて、ストリーム16はブタン脱水素化ユニットにおいて、更に処理されてもよい。気体生成物11は、気体生成物12に混合されてもよく、混合気体生成物は、上述したように、有益な石油化学製品に更に処理される。蒸気分解供給物3の例は、例えば、常圧蒸留及び/又は減圧蒸留からの粗製蒸留残油である。ユニット9は、水素化分解ユニットとしたが、ユニット9は、コーカー又はFCCユニットであってもよい。本明細書において使用される「有益な石油化学製品」の例は、例えば、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、及びブテンなどの出発物質だけでなく、ベンゼン、トルエン、及びキシレン(BTX)などにも関連する。
【0040】
これらの混合プラスチック熱分解油を、水素化分解供給物、例えば常圧蒸留及び/又は減圧蒸留からの粗製蒸留残油と組み合わせることにより、下記の更なる利点も生じる。
【0041】
ある特徴は、混合供給物の金属含有量が、常圧蒸留及び/又は減圧蒸留からの粗製蒸留残油のみと比べて低減されることである。これにより、水素化分解反応器の供給物の単位体積当たりの脱金属の必要性を低減させることができる。
【0042】
別の特徴は、熱分解液の追加により、常圧蒸留及び/又は減圧蒸留からの粗製蒸留残油の粘度も低減させることである。これにより、混合ストリームをより容易かつスムーズにポンプで水素化処理に送り込むことができる。
【0043】
別の特徴は、アスファルテンは、本発明により実現される粘度の低い溶液中で、より安定であると本発明者らは考えていることである。これにより、アスファルテンの堆積による水素化処理触媒の汚染が低減される。
【0044】
前述したように、熱分解液を芳香族及び非芳香族に分離し、非芳香族を常圧蒸留及び/又は減圧蒸留からの粗製蒸留残油とともに水素化分解に送ることも、本方法の利点である。芳香族は水素化分解を迂回させることにより、芳香族の高い収率を提供することができる。この、石油化学製品の収率を増加させるための、熱分解油から水素化分解ユニットへの非芳香族の供給ルートは、水素化分解ユニットへの供給物としての粗製残油が、この非芳香族熱分解油とブレンドすることによるアスファルテン凝縮傾向がない場合に、とくに有用である。
【0045】
粗製残油がアスファルテン凝縮傾向を有する状況においては、芳香族の抽出を実施せずに、全熱分解油を粗製残油とブレンドするのが好ましい。これらの実施の形態において、熱分解油に存在する芳香族は、水素化分解ユニットへの供給物における総芳香族含有量を増加させ、これによりアスファルテンが溶解状態に保たれる。粗製残油は、水素化分解ユニット又はその供給物加熱器に導入する前に混合された供給物と溶媒の混合物の、ASTM D7157−12に準拠して測定されたS値が、1より大きくなるような重量又は体積比率で熱分解油とブレンドされる。
【0046】
実施例1:
長さ783mm、直径15mmのin-situ流動床実験室管状反応器を使用した。反応器は、それぞれ独立して温度制御される3ゾーンのゾーン分割管状炉に収容された。それぞれのゾーンのサイズは、9.3インチ(236.2mm)であった。炉の内部に配置された反応器の総加熱長は、591mmであった。反応器壁温度は、それぞれのゾーンの中央で測定し、それぞれのゾーンの炉の加熱制御に用いた。反応器は円錐状の底を有し、反応床温度は、サーモウェルの内部に収容され、反応器の内部の円錐状の底の頂部に配置された熱電対を用いて測定した。また、反応器壁温度は、反応器の底部が高温であることを確認するために、円錐状の底部において測定した。反応器の底は、炉のエンドキャップの熱損失の効果を最小化し、反応器の底壁の温度と測定される内部の床の温度との差を20℃以内に維持するために、炉の底のゾーンの中央に配置した。19重量%のHDPE、21重量%のLDPE、24重量%のPP、12重量%のC4−LLDPE、6重量%のC6−LLDPE、11重量%のPS、及び7重量%のPETの組成を有する1.5gの混合プラスチック供給物を調整した。廃FCC触媒とZSM−5ゼオライト触媒を、廃GCC触媒を62.5重量%、ZSM−5ゼオライト触媒を37.5重量%の比率で組み合わせて用いた。プラスチック原料は、200ミクロンのプラスチックパウダーの形とした。FCC触媒は、運転中の精製所から得られる廃FCC触媒とした。使用した廃FCC触媒は、0.23重量%のコーク残量を有した。使用したZSM−5ゼオライト触媒は、市販されているZSM−5ゼオライト触媒とした。実験に使用した乾燥触媒混合物は、8.95gとした。使用した触媒/プラスチック原料の比は、〜5.96であった。プラスチック原料は、カップでかき回すことにより触媒と混合し、反応器に供給した。原料を充填する前に、反応器の内部の熱電対により測定した床の温度は、700℃であった。175Ncc/分(ノルマルcc/分)の窒素ガスのフローを流動化及び搬送ガスとして用いた。反応器からの変換生成物は、収集し、コンデンサーにおいて凝縮した。不凝縮生成物は気体収集容器に収集し、気体混合物を精製ガス分析機(M/s AC Analyticals社、オランダ)を用いて分析した。液体生成物は、模擬蒸留GC(M/s AC Analyticals社、オランダ)を用いて、それらの沸点分布の特性を明らかにした。さらに、詳細な炭化水素分析(C13炭化水素まで)を、DHA分析機(M/s AC Analyticals社、オランダ)を用いて実行した。触媒に付着したコークは、赤外線ベースのCO及びCO分析機を用いて測定した。物質収支は、気体、液体、及びコークの収量を合計することにより決定した。個々の生成物の収率を決定し、正規化された生成物ベースで報告した。これらの結果を下記の表1に示す。
【0047】
この実験からの軽質ガスオレフィンの収率は、34.91重量%であった。生成物は、46.6重量%の気体、50.4重量%の液体、及び3.1重量%のコークであった。沸点が220℃未満である液体生成物の収率は、43.57重量%であった。沸点が240℃未満の液体生成物の詳細な炭化水素分析を表2に示す。液体は、〜75.4重量%の芳香族を有した。
表1:混合プラスチックの熱分解による生成物の収率
【表1】
表2:沸点が240℃未満である混合プラスチック熱分解ストリームの詳細な炭化水素分析
【表2】
【0048】
実施例2:
アラブ産の重質原油の340℃以上の残油(AHAR)の飽和系、芳香族、樹脂、及びアスファルテン(SARA)分析は、53.7/34.8/3.1/8.1である。沸点240℃未満のプラスチック熱分解油(plastic pyrolysis oil:PP油)のSARA分析は、24.6/75.4/0/0である。異なる重量比率のこれらのストリームの組合せの分析結果を、これらの混合物における安定なアスファルテンの推測された濃度とともに示す。
【表3】
【0049】
表から分かるように、安定なアスファルテンの組合せは、混合物中のPP油の比率が30重量%以上である全ての比率を有するAHARとPP油の混合物で得られる。
【0050】
実施例3:
実施例1において得られた100kgの混合プラスチックの熱分解により生成された50.39kgの熱分解油を、200kgのアラブ産軽質ARと混合し、394℃、186kg/cmgで運転される水素化分解ユニットに供給した。収量は下記の通りである。
【表4】
【0051】
実施例4:
100kgの混合プラスチック類及び200kgのAL ARを、上記の実施例1及び3に記載した条件下で、熱分解及び水素化分解の組合せにより処理した総プロセス収量を、300kgのAL ARを同じ条件下で処理した場合と比較して、下記に示す。
【表5】
【0052】
本実施例から分かるように、プラスチック熱分解油が水素化分解ユニットにおいてAL ARとともに処理される場合、HS及びNHがより少なくなり、より多くのエタン、プロパン、ブタン、C5−150℃ナフサ留分が得られ、良好な収量のエチレン、プロピレン、及びブテンが得られる。
【0053】
実施例5:
100kgの混合プラスチック類及び200kgのAL ARを、上記の実施例1及び3に記載した条件下で、熱分解及び水素化分解の組合せにより処理し、このプロセスで生成されたエタン、プロパン、及びブタンを、それぞれ、エタン蒸気分解、プロパン脱水素化、及びブタン脱水素化により更に変換した総プロセス収量を、300kgのAL ARを同じ条件下で処理し、エタン、プロパン、及びブタンに対して同じ改質ステップを適用した場合と比較して、下記に示す。
【表6】
【0054】
本実施例から分かるように、混合プラスチック熱分解油及びAL ARが上述したように処理され、生成されたエタン、プロパン、及びブタンが、それぞれ、蒸気分解ステップ、プロパン脱水素化ステップ、及びブタン脱水素化ステップを用いて更に変換される場合、プロセス全体により、非常に多くのエチレン、プロピレン、ブテン、及びC−150℃ナフサ留分が得られる。また、HS及びNHの収量が低減される。
【0055】
実施例6:
AL粗製残油とプラスチック熱分解油の組合せにより、下記の表に示すように、混合供給物ストリームにおける金属の濃度の低減がもたらされる。
【表7】
【0056】
本発明者らは、混合廃プラスチック類(MWP)を熱分解装置において有益な石油化学製品に変換することができることを見出した。液体部分は、水素化分解装置において改質することができる。熱分解油により、AL ARよりも多くのプロパン及びブタンが水素化分解装置から得られる。したがって、PP油が水素化分解装置においてAL ARとともに処理される場合、より多くの石油化学製品が生成される。PP油の一部は220〜370℃で沸騰し、PP油の一部は220℃未満で沸騰する。水素化分解装置におけるこれらの留分の性能は、水素化分解装置におけるLCO及びFCCナフサの性能にほぼ等しい。実施例5は、この、水素化分解装置の生成物に対する供給物の差異の効果を捕捉する。
【表8】
【0057】
本方法の別の利点は、AL ARにPP油を混合することによりもたらされるアスファルテンの溶解性である。H2Sの収量が減少するので、触媒のより多くのサイトがALARの水素化分解のために利用可能となり、ALARの水素化分解を改良することができる。金属及びNH3も減少するが、いずれも水素化分解のために良好である。工学的観点からは、より沸点が低い物質が供給物中に存在する結果として、蒸発を増加させることができ、これにより、おそらくより良好な分散と供給物及び触媒の湿潤が促進されるので、より良好な触媒の利用を促進することができる。さらに、より軽質な成分が蒸発するように、反応器の供給炉は増大した熱条件の要求に直面し、これにより潜熱負荷がもたらされる。
図1