特許第6378380号(P6378380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378380
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】ワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20180813BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20180813BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   A61K39/39
   A61K39/145
   A61P31/16
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-33269(P2017-33269)
(22)【出願日】2017年2月24日
(62)【分割の表示】特願2014-230744(P2014-230744)の分割
【原出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-114898(P2017-114898A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-85839(P2012-85839)
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深坂 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 有道
(72)【発明者】
【氏名】浅利 大介
(72)【発明者】
【氏名】堀 光彦
(72)【発明者】
【氏名】審良 静男
(72)【発明者】
【氏名】竹内 理
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/151431(WO,A1)
【文献】 Am. J. Respir. Crit. Care Med., 2010, Vol.181, A2629
【文献】 VIRUS REPORT, 2008, Vol.5, No.1, pp.74-81
【文献】 日本免疫学会総会・学術集会記録, 2005, Vol.35, p.17, S11-4
【文献】 日本細菌学雑誌, 2006, Vol.61, No.1, p.147, III-G-2
【文献】 AIDS Research and Human Retroviruses, 2010, Vol.26, No.10, p.A35, Abstract Number.P02.04
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00−39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物の口腔内に投与されるワクチン組成物であって、
少なくとも一種類の感染症由来抗原と、
トール様受容体2/6(TLR2/6)アゴニスト又はその塩とを含み、
前記トール様受容体2/6(TLR2/6)アゴニストは、ジアシル化リポペプチド又はその誘導体若しくは塩を含み、
前記ジアシル化リポペプチドは、PamCSK又はMALP−2である
ことを特徴とするワクチン組成物。
【請求項2】
感染症由来抗原は、インフルエンザウイルス由来抗原である請求項1載のワクチン組成物。
【請求項3】
インフルエンザウイルス由来抗原は、ヘマグルチニンタンパクである請求項記載のワクチン組成物。
【請求項4】
インフルエンザウイルス由来抗原は、ウイルス全粒子である請求項記載のワクチン組成物。
【請求項5】
粘膜免疫応答及び全身性免疫応答を誘導せしめるものであり、
前記粘膜免疫応答は、抗原特異的IgA抗体産生であり、
前記全身性免疫応答は、抗原特異的IgG抗体産生及び抗原特異的細胞性免疫産生である
請求項1、2、3又は4記載のワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症の予防又は治療剤として有用で舌下投与可能なワクチン組成物に関する。特に本発明は、トール様受容体4(TLR4)アゴニスト、トール様受容体2/6(TLR2/6)アゴニスト、及び、環状ビスジヌクレオチド又はその誘導体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種類をアジュバントとして、感染症由来抗原とともに舌下投与することで、効果的に全身性免疫応答及び粘膜免疫応答を誘導せしめることが可能なワクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチン製剤の剤形としては、現在製品化されているものそのほとんどが注射剤である。注射型ワクチンは、血中(全身性)の免疫応答(IgG抗体の産生)を誘導するが、粘膜での免疫応答(IgA抗体の産生)は誘導せず、感染後による病原体の増殖を防ぐことはできるが、粘膜経路による病原体の感染自体を防御することは困難であるという問題点があった。
そこで、近年、粘膜からのワクチン接種に注目が浴びており、なかでも、インフルエンザウイルスを抗原として用いた粘膜投与(経鼻投与)型ワクチンの開発が脚光を浴びている。
【0003】
粘膜投与型ワクチンは、全身性免疫(IgG抗体の産生)を誘導するだけでなく、粘膜免疫(IgA抗体の産生)を誘導することが可能である。このIgA抗体は、対象となる疾患の病原体のタイプをあまり厳格に区別しないのが特徴であり、年々変わる病原体の流行型が変化しても対応することが可能であり、パンデミック防止に効果的であると考えられている。
また、経鼻投与型ワクチンが脚光を浴びているのは、消化管粘膜への抗原の投与では胃酸の影響やタンパク分解酵素の影響を受けやすく、これらを防ぐことが困難であるのに対し、経鼻粘膜への抗原の投与ではこれらの影響がないことがその理由の1つとして挙げられる。更に、鼻腔粘膜上にはNALTと呼ばれる抗原認識組織があり、免疫応答に効果的であることも理由の1つである。
しかしながら、鼻腔粘膜への抗原の投与は、効果は高いが急性脳症等の重篤な副作用の可能性も高く、また老人や乳児等では経鼻投与自体が煩雑で難しく、更に鼻水等の身体的要因により安定した効果が得られない問題点があった。
【0004】
一方で、抗原を経口投与し、嚥下後、消化管粘膜(小腸)等で全身性免疫及び粘膜免疫を誘導させようとする試みも多数行われている。この際の懸念点は、胃酸による抗原の分解、タンパク分解酵素による抗原の分解をいかに防ぐかということである。これらを解決するために、胃酸を中和する制酸剤を多量に含ませたり、マイクロスフェア等の被膜技術によって抗原を守るような技術が開発されてきた。
しかし、実際に開発が成功したものは、元々胃酸での安定性が高い生弱毒化ポリオウイルスワクチンや生弱毒化ロタウイルスワクチンであった。
【0005】
また、経口投与で、嚥下せずに口腔内粘膜(特に舌下粘膜)経路で免疫応答させる製剤として、アレルギーワクチンが挙げられる。このワクチンは、Sublingual Imunotherapy(SLIT)と呼ばれ、舌下にアレルギーの抗原となるタンパク(アレルゲン)を含む植物由来の抽出物を継続して投与することにより、当該アレルゲンに対して免疫寛容を起こすようになり、アレルギー反応が起こらなくなる現象を利用したものである。近年ヨーロッパにおいて当該治療法が認知され、現在は多数の製品が上市されている。
この口腔粘膜経路、特に舌下粘膜経路で免疫応答させる製剤を用いた治療法は、アレルゲンを皮下に注射していた従来の治療法(Subcutaneous Immunotherapy)と比較して、患者のQOL及び重篤な副作用であるアナフィラキシーショックが起こりにくいとの観点から、大変脚光を浴びている。
しかし、当該治療法は、あくまで特異的な免疫寛容を起こさせる製剤を利用するものであり、免疫を活性化させる療法ではなかった。口腔粘膜は、一般的には、免疫が起こりにくく、これら免疫寛容を引き起こすことができても、免疫を活性化することは難しいと考えられてきた。
【0006】
口腔粘膜経路、特に舌下粘膜経路で粘膜免疫及び全身性免疫を誘導する例としては、以下の報告が成されている。
抗原としてOVAを用い、免疫賦活剤(アジュバント)としてコレラトキシンを用い、舌下に投与することにより、OVA特異的な全身性免疫応答(IgG産生)並びに、OVA特異的な粘膜免疫応答(IgA産生)が認められることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、当該提案においては、神経毒性が高いコレラトキシンを免疫賦活剤として用いており、安全性に対して問題があった。
【0007】
また、抗原としてOVAを用い、免疫賦活剤としてTLR4アゴニストである3脱−O−アシル化モノホスホリル脂質Aを用い、舌下に投与することにより、OVA特異的な全身性免疫応答(IgG産生)及びOVA特異的な粘膜免疫応答(IgA産生)が認められることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。当該提案においては、舌下投与においてTLR4アゴニストを免疫賦活剤として用いているが、感染症由来抗原に関する実施例がなく、効果に抗原の種類に対する汎用性があるかどうかは明確ではない。更に、OVAの投与量が80〜160μgであり、3脱−О−アシル化モノホスホリル脂質Aの投与量の20〜40μgとかなり投与量が多く、安全性を考慮した場合には実用性に欠ける部分があった。
【0008】
また、合成アジュバントであるGlucopyranosyl Lipidの合成法に関する提案(例えば、特許文献3参照)の中にも、抗原と当該アジュバントを併用して粘膜投与することで粘膜免疫応答が誘導される旨が記載されている。また、TLR2/6リガンドであるMALP−2を用い、抗原としてβ−ガラクトシダーゼを用い、マウスに経鼻投与することで、血清中のIgG及び鼻腔洗浄液中のIgAが誘導されることを提案(例えば、特許文献4参照)している。しかしながら、感染症由来の抗原及び口腔粘膜への投与に関しては、実施例がなく効果に汎用性があるかどうかは不明であった。更に、環状ビスジヌクレオチドであるc−di−GMP又はc−di−AMPを免疫賦活剤として用い、抗原としてβ−ガラクトシダーゼを用い、マウスに経鼻投与することで、血清中のIgGが誘導されることを提案(例えば、特許文献5参照)しているが、経鼻投与でのIgA誘導に関しては言及しておらず、また、感染症由来の抗原及び口腔粘膜への投与に関しては実施例がなく、効果に汎用性があるかどうかは不明であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0112974号明細書
【特許文献2】特表2003−519669号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0310602号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0276813号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0286296号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、感染症の予防又は治療剤として有用で、効果的に全身性免疫応答及び粘膜免疫応答を誘導させることのできる舌下投与可能なワクチン組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、口腔内投与、特に舌下投与において、トール様受容体4(TLR4)アゴニスト、トール様受容体2/6(TLR2/6)アゴニスト、及び、環状ビスジヌクレオチド又はその誘導体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種類をアジュバントとして、感染症由来抗原と共に舌下投与することで、効果的に全身性免疫応答及び粘膜免疫応答を誘導させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、ヒト又は動物の口腔内に投与されるワクチン組成物であって、少な
くとも一種類の感染症由来抗原と、トール様受容体2/6(TLR2/6)アゴニスト又
はその塩とを含み、前記トール様受容体2/6(TLR2/6)アゴニストは、ジアシル化リポペプチド又はその誘導体若しくは塩を含み、前記ジアシル化リポペプチドは、PamCSK又はMALP−2であるワクチン組成物である
また、上記感染症由来抗原は、インフルエンザウイルス由来抗原であることが好ましい。
また、上記インフルエンザウイルス由来抗原は、ヘマグルチニンタンパクであることが好
ましい。
また、上記インフルエンザウイルス由来抗原は、ウイルス全粒子であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のワクチン組成物は、粘膜免疫応答及び全身性免疫応答を誘導せしめるものであり、上記粘膜免疫応答は、抗原特異的IgA抗体産生であり、上記全身性免疫応答は、抗原特異的IgG抗体産生及び抗原特異的細胞性免疫産生であることが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のワクチン組成物は、少なくとも一種類の感染症由来抗原を含有する。
上記感染症由来抗原とは、被験生物体によって生じる免疫応答の標的であることができるあらゆる物質を指す。また、上記感染症由来抗原は、免疫担当細胞に接触した際に、免疫応答(例えば、免疫担当細胞の成熟、サイトカイン産生、抗体産生等)の標的であってもよい。
【0015】
本発明で使用する感染症由来抗原としては、感染性病原体及び感染性病原体由来の抗原であれば特に限定されない。
上記感染性病原体から罹る疾患としては特に限定されず、例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、HSV−I、HSV−II、CMV、またはVZV)、ポックスウイルス(例えば、痘瘡若しくはワクシニア、又は、伝染性軟属腫などのオルトポックスウイルス)、ピコルナウイルス(例えば、ライノウイルス又はエンテロウイルス)、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、パラインフルエンザウイルス、おたふく風邪ウイルス、はしかウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV))、コロナウイルス(例えば、SARS)、パポバウイルス(例えば、生殖器疣、尋常性胱贅、又は、足底疣費を引き起こすものなどの乳頭腫ウイルス)、ヘパドナウイルス(例えば、肝炎Bウイルス)、フラビウイルス(例えば、肝炎Cウイルス又はデングウイルス)、又は、レトロウイルス(例えば、HIVなどのレンチウイルス)などのウイルス感染から罹る疾患などのウイルス疾患、エシェリキア属、エンテロバクター、サルモネラ、ブドウ球菌、赤痢菌、リステリア、アエロバクター、ヘリコバクター、クレブシエラ、プロテウス、シュードモナス、連鎖球菌、クラミジア、マイコプラズマ、肺炎球菌、ナイセリア、クロストリジウム、バシラス、コリネバクテリウム、マイコバクテリウム、カンピロバクター、ビブリオ、セラチア、プロビデンシア、クロモバクテリウム、ブルセラ、エルシニア、ヘモフィルス、又は、ボルデテラなどの細菌感染から罹る疾患などの細菌疾患、クラミジア、カンジダ症、アスペルギルス症、ヒストプラスマ症、クリプトコックス髄膜炎をはじめとするがこれに限定されるものではない真菌疾患、マラリア、ニューモシスティスカリニ肺炎、レーシュマニア症、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症、及び、トリパノソーマ感染等が挙げられる。
【0016】
本発明において、上記感染症由来抗原は、インフルエンザウイルス由来抗原であることが好ましい。
ここで、上記インフルエンザウイルスとは、オルソミクソウイルス科に属する直径約100nmの粒子サイズを有するRNAエンベロープウイルスであり、内部タンパクの抗原性に基づいて、A、B及びC型に分けられる。上記インフルエンザウイルスは、脂質二重層構造を有するウイルスエンベロープに取り囲まれた内部ヌクレオキャプシド又は核タンパク質と会合したリボ核酸(RNA)のコアと、外部糖タンパク質とからなる。上記ウイルスエンベロープの内層は、主としてマトリックスタンパク質で構成され、外層は大部分が宿主由来脂質物質で構成される。また、上記インフルエンザウイルスのRNAは、分節構造をとる。なお、世界中で大流行するインフルエンザは、A型インフルエンザウイルスによるものであり、このA型インフルエンザウイルスは、ヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)の2種類のエンベロープ糖タンパク質を有し、抗原性の違いによってHAでは16種、NAでは9種の亜型に区別されている。
本発明においては、上記感染症由来抗原としては、A型及びB型インフルエンザウイルス由来抗原が好適に用いられる。なお、上述したA型及びB型インフルエンザウイルスの亜型としては特に限定されず、これまで単離された亜型であっても将来単離される亜型であってもよい。
【0017】
本発明において、インフルエンザウイルス由来抗原としては、上記インフルエンザウイルスを構成する種々の成分の少なくとも一部であれば特に限定されるものではなく、例えば、精製ウイルス粒子が有機溶媒/界面活性剤若しくは他の試薬で不活化されたウイルス全粒子、又は、該ウイルス全粒子の中から不純物を取り除き、HA及び/若しくはNAを精製して作られたウイルスサブユニット等が挙げられる。免疫原性の観点から、HAサブユニット又はウイルス全粒子が好ましい。上記ウイルス全粒子は、ホルマリン等により不活化されたものがより好ましい。また、不純物が少なく、免疫賦活剤などのアジュバントが必須となるHAサブユニット(スプリット)について特に有効である。
上記インフルエンザウイルス抗原の調製方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が限定なく使用できる。例えば、インフルエンザ感染動物又はインフルエンザの患者から単離されたウイルス株をニワトリ卵等に感染させて常法により培養し、精製したウイルス原液から抗原を調製する方法が挙げられる。また、遺伝子工学的に培養細胞中で調製したウイルス由来の抗原を用いてもよい。
【0018】
本発明のワクチン組成物において、上記感染症由来抗原は有効量含有されていればよいが、例えば、1個体に1回投与のために、本発明のワクチン組成物の全量に対して、0.001〜1000μgの範囲で含有されていることが好ましい。より好ましくは0.01〜100μgの範囲であり、更に好ましくは0.1μg〜50μgの範囲である。0.001μg未満であると、感染症の予防又は治療剤としての機能が不充分となることがあり、1000μgを超えると、安全性に関して問題となることがある。なお、本明細書にいう「1個体」とは、任意の哺乳動物であってよく、好ましくはヒトである。
【0019】
本発明のワクチン組成物は、トール様受容体4(TLR4)アゴニスト、トール様受容体2/6(TLR2/6)アゴニスト、及び、環状ビスジヌクレオチド又はその誘導体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種類を含有する。
これらの化合物は、本発明のワクチン組成物において免疫賦活剤として機能するものである。
【0020】
上記トール様受容体4(TLR4)アゴニストとしては、リポポリサッカライド又はその塩が好適に挙げられる。なお、本明細書にいうリポポリサッカライドは、リポポリサッカライドそれ自体のほか、その性質を有する限りその誘導体であってもよい。本明細書にいう塩とは、任意の有機酸又は無機酸であってよいが、好ましくは薬学的に許容される塩である。
また、上記リポポリサッカライドは、グラム陰性菌細胞壁からの抽出物又はその改変体であってもよく、合成品であってもよい。
上記グラム陰性菌としては、例えば、Eschericha Coli属、Shigella属、Salmonella属、Klebsiella属、Proteus属、Yersinia属、V.cholerae属、Vparahaemolyticus属、Haemophilus属、Pseudomonas属、Legionella属、Bordetella属、Brucella属、Francisella tularensis属、Bacteroides属、Neisseria属、Chlamydia属、Plesiomonas属、Prophyromonas属、Pantoea属、Agrobacterium属、Stenortophomonas属、Enterobacter属、Acetobacter属、Xanthomonas属、Zymomonas属等が挙げられる。
なかでも、Eschericha Coli属由来、Salmonella属由来、Pantoea属由来、Acetobacter属由来、Zymomonas属由来、Xanthomonas属由来又はEnterobacter属由来のものであることが好ましい。これらは、古来より多くの食品、漢方薬に含まれ、生体への安全性が担保されており、特にPantoea属由来は、現在健康食品として用いられており、より有効であるといえる。これらの菌由来の抽出物又はその改変体をそのまま用いることも可能である。
【0021】
また、上記グラム陰性菌細胞壁からの抽出物又は精製したリポポリサッカライドとして用いる場合には、一般的には生体への安全性を加味する必要があり、これらを解毒化するための改変体として用いることもできる。一方、Acetobacter属(Acetobacter aceti、Acetobacter xylinum、Acetobacter orientalis等)、Zymomonas属(Zymomonas mobilis等)、Xanthomonas属(Xanthomonas campestris等)、Enterobacter属(Enterobacter cloacae等)、Pantoea属(Pantoea agglomerans等)は、古来より多くの食品、漢方薬に含まれ、生体への安全性が担保されており、これらの菌由来の抽出物又は精製したリポポリサッカライドをそのまま用いることも可能である。
【0022】
また、上記トール様受容体4(TLR4)アゴニストとしては、上記リポポリサッカライドの誘導体、例えば、多糖部分を除去したリピドA又はモノホスホリルリピッドA、3−脱−アシル化MPL等が挙げられ、若しくは塩であってもよい。
上記リポポリサッカライドの多糖部分を除去したリピドAとしては、上記グラム陰性菌由来の単離物であればよく、あるいはこれらグラム陰性菌由来の単離物と同じ構造になるように合成した物を用いてもよい。
また、上記リピドAの改変体としては、脱リン酸化を行ったモノホスホリルリピッド(MPL)又は塩も好適に用いられる。なお、本明細書にいうモノホスホリルリピッドは、モノホスホリルリピッドそれ自体のほか、その性質を有する限りその誘導体であってもよい。特に既に医療用途で免疫賦活剤として実績がある3−脱−アシル化物モノホスホリルリピッド(3D−MPL)、又は、米国特許出願公開第2010/0310602号明細書で提案されている脱アシル化されていない合成Glucopyranosyl lipidが生体への安全性の観点から好ましい。
また、上記モノホスホリルリピッドとしては、安全性及び使用前例のあるサルモネラ菌由来のものも好適に用いられる。
【0023】
上記トール様受容体2/6(TLR2/6)アゴニストとしては、例えば、ジアシル化リポペプチド又はその誘導体若しくは塩を含むことが好ましい。
上記ジアシル化リポペプチドとしては、安全性及び使用前例のあるPamCSK、MALP−2、FSL−1又はこれの誘導体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種類を含むことが好ましい。
【0024】
また、上記トール様受容体2/6(TLR2/6)アゴニストとしては、マイコプラズマ細胞膜からの抽出物又はその改変体であってもよく、合成品であってもよい。
上記マイコプラズマとしては、例えば、Mycoplasma pneumoniae、Mycoplasma genitalium、Mycoplasma hominis、Ureaplasma、Mycoplasma salivarium、Mycoplasma fermentans、Mycoplasma gallisepticum、Mycoplasma hyopneumoniae、Mycoplasma laboratorium、Mycoplasma mycoides、Mycoplasma ovipneumoniae等が挙げられる。
【0025】
上記マイコプラズマ細胞膜からの抽出物又は精製したジアシル化リポペプチドとして用いる場合には、一般的には生体への安全性を加味する必要があり、これらを解毒化するための改変体として用いることもできる。
【0026】
上記環状ビスジヌクレオチドとしては、環状ビスジプリンヌクレオチド又はその誘導体若しくは塩であればよく、例えば、安全性の面からc−di−GMP、c−di−AMP又はその導体若しくは塩が好ましい。
【0027】
上記TLR4アゴニスト、TLR2/6アゴニスト及びc−di−GMPは、いずれも舌下免疫賦活剤として充分な機能を有するものであり、特にTLR4アゴニストは安価に手に入り、またヒトでも使用実績がある。例えば、上記TLR4アゴニストの一つであるパントエア菌由来LPSは、健康食品として広く使用されており、ヒトでの適応が容易であるといった利点がある。
【0028】
本発明のワクチン組成物において、上述した3種類の免疫賦活剤(TLR4、TLR2/6、環状ビスジヌクレオチド)のそれぞれの含有量としては、例えば、1個体に1回投与のために、本発明のワクチン組成物の全量に対して、0.1μg〜100mgの範囲で含有されていることが好ましい。0.1μg未満であると、充分な感染症の予防又は治療剤としての機能が得られないことがあり、100mgを超えると、安全性に関して問題となることがある。上記免疫賦活剤含有量のより好ましい下限は0.3μg、より好ましい上限は50mgである。
【0029】
また、本発明のワクチン組成物は、上述した3種類の群より選ばれる免疫賦活剤を少なくとも1種類含めば、これらと他の従来公知の免疫賦活剤を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明のワクチン組成物は、上述した感染症由来抗原及び免疫賦活剤に必要に応じて他の成分(例えば、リン酸緩衝溶液等)を加え、公知の方法で攪拌混合することで調製することができる。
また、本発明のワクチン組成物を用いて、液剤、固形製剤、噴霧剤を調製することが可能であり、上述した材料以外に、所望により、賦形剤、結合剤、香料、矯味剤、甘味剤、着色剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤等を適宜使用してもよい。
これらの材料としては特に限定されず、従来公知のものが使用できる。
【0031】
ここで、上記固形製剤には、錠剤、コーティング錠、散剤、顆粒剤、紬粒剤、口腔内崩壊錠、口腔内貼付剤、ゼリー剤、フィルム剤が含まれ、口腔粘膜、舌下粘膜に投与する固形状のものであれば特に限定されない。
【0032】
本発明のワクチン組成物は、ヒト又は動物(哺乳類、鳥類等)の口腔内への投与されるものであるが、当該口腔内への投与は、舌下粘膜への投与であることが好ましい。上述したように、口腔粘膜は、一般的には、免疫が起こりにくく、これら免疫寛容を引き起こすことができても、免疫を活性化することは難しいと考えられていたが、本発明のワクチン組成物は、少なくとも一種類の感染症由来抗原とともに、上述した特定の免疫賦活剤を併用するため、口腔粘膜への投与であっても、効果的に全身性免疫応答及び粘膜免疫応答を誘導することができる。
また、舌下粘膜への投与であることで、消化管粘膜へ抗原を投与する場合のように胃酸の影響やタンパク分解酵素の影響を受けることがなく、また、鼻腔粘膜へ抗原を投与する場合のように急性脳症等の重篤な副作用の可能性がなく、老人や乳児等でも投与が容易で更に鼻水等の身体的要因による安定した効果が妨げられることもない。
【0033】
また、本発明のワクチン組成物の投与方法としては、前述した通りである。また、その投与量としては、動物種、対象の年齢、性別、体重等を考慮して決められるが、例えば、感染症由来抗原としてHAを用いた場合、通常0.1μg〜50μgを1回又は2回以上投与することができる。好ましくは複数回の投与であり、この場合、1〜4週間の間隔をあけて投与することが好ましい。上記感染症由来抗原としてウイルス全粒子を用いた場合、HA換算で投与量を設定すればよい。なお、上記HAの重量は、SRD力価若しくはLowry法により測定した値である。
【発明の効果】
【0034】
本発明のワクチン組成物は、少なくとも一種類の感染症由来抗原とともに、上述した特定の免疫賦活剤を併用するため、口腔粘膜、特に舌下粘膜への投与により、効果的に全身性免疫応答及び粘膜免疫応答を誘導させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1参考例1〜5、実施例、比較例1〜9のマウス血清中インフルエンザHA特異的IgG力価の結果を示すグラフである。
図2参考例1〜5、実施例、比較例1〜9のマウス鼻腔洗浄液中インフルエンザHA特異的IgA力価の結果を示すグラフである。
図3参考例6〜8、比較例10〜12のマウス血清中インフルエンザHA特異的IgG力価の結果を示すグラフである。
図4参考例6〜8、比較例10〜12のマウス鼻腔洗浄液中インフルエンザHA特異的IgA力価の結果を示すグラフである。
図5参考例9、比較例13、14のインフルエンザウイルス感染時のマウス生存率を表すグラフである。
図6参考例10、比較例1、14のマウス血清中インフルエンザHA特異的IgG力価の結果を示すグラフである。
図7参考例10、比較例1、14のマウス鼻腔洗浄液中インフルエンザHA特異的IgA力価の結果を示すグラフである。
図8参考例11、12、比較例15、16、1のマウス血清中インフルエンザHA特異的IgG力価の結果を示すグラフである。
図9参考例11、12、比較例15、16、1のマウス鼻腔洗浄液中インフルエンザHA特異的IgA力価の結果を示すグラフである。
図10参考例11、13、14、比較例16、1のマウス血清中インフルエンザHA特異的IgG力価の結果を示すグラフである。
図11参考例11、13、14、比較例16、1のマウス鼻腔洗浄液中インフルエンザHA特異的IgA力価の結果を示すグラフである。
図12参考例15、16、比較例17、18のマウス血清中インフルエンザHA特異的IgG力価の結果を示すグラフである。
図13参考例15、16、比較例17、18のマウス鼻腔洗浄液中インフルエンザHA特異的IgA力価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
参考例1)
インフルエンザHA抗原含有溶液(A/IvPR8/34(H1N1)、阪大微生物病研究会製)76.3μL(236μg/mL)と、大腸菌由来リポポリサッカライド(ナカライテスク社製)溶液30μL(1mg/mL)とに、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加えて120μLのワクチン組成物を調製した。
予め準備したマウス(メス7週齢C57BL/6マウス、日本エスエルシー社)5匹に麻酔(ソムノペンチル;共立製薬社製)をかけた後、それぞれのマウスの舌下に調製したワクチン組成物を20μL投与した。
当該投与から1週間後、再度マウスに麻酔をかけ、それぞれのマウスの舌下に調製したワクチン組成物を20μL投与した。
2度目の投与から更に1週間後に、マウスの血清及び鼻腔洗浄液を採取し、血清中インフルエンザHA特異的IgG力価及び鼻腔洗浄液中インフルエンザHA特異的IgA力価の測定をELISA法により測定を行った。なお、詳細な測定方法は後述する。
【0038】
参考例2〜5、実施例5
大腸菌由来リポポリサッカライドの代わりに、参考例2ではパントエア菌由来リポポリサッカライド(自然免疫応用技研社製)を用い、参考例3ではグルコピラノシルリピッド(MPLAs、InvivoGen社製)を用い、参考例4ではFSL−1(InvivoGen社製)を用い、実施例5ではPamCSK(InvivoGen社製)を用い、参考例5ではc−di−GMP(Cyclic diguanosine monophosphate、BIOLOG社製)を用いた以外は、参考例1と同様にしてワクチン組成物を調製し、表1に示した投与量で参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0039】
(比較例1)
予め準備したマウス(メス7週齢C57BL/6マウス、日本エスエルシー社)5匹に麻酔をかけた後、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を120μL用意し、それぞれのマウスの舌下に20μL投与した。以降の操作は参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0040】
(比較例2)
リン酸緩衝液の代わりに、インフルエンザHA抗原含有溶液(A/IvPR8/34(H1N1)、阪大微生物病研究会製)76.3μL(236μg/mL)に、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加え120μLのワクチン組成物を調製した。以降の操作は表1に示した投与量で参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0041】
(比較例3〜9)
インフルエンザHA抗原(A/IvPR8/34(H1N1)、阪大微生物病研究会製)に加え、比較例3ではペプチドグリカン(サルモネラ菌由来PGN、InvivoGen社製)を用い、比較例4ではZymosan(ナカライテスク社製)を用い、比較例5ではPamCSK(InvivoGen社製)を用い、比較例6ではPoly(I:C )(InvivoGen社製)を用い、比較例7ではflagellin(InvivoGen社製)を用い、比較例8ではimiquimod(InvivoGen社製)を用い、比較例9ではCpG(InvivoGen社製)を用いた以外は、比較例2と同様にしてワクチン組成物を調製し、表1に示した投与量で参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0042】
【表1】
【0043】
参考例6〜8
インフルエンザHA抗原含有溶液(A/IvPR8/34(H1N1)、阪大微生物病研究会製)19μL(236μg/mL)に加え、参考例6ではグルコピラノシルリピッド(MPLAs、InvivoGen社製)溶液30μL(1mg/mL)に、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加えて120μLのワクチン組成物を調製し、麻酔下にてマウス(メス7週齢BALB/cマウス、日本エスエルシー社)に20μL舌下投与した。参考例6におけるグルコピラノシルリピッドの代わりに、参考例7ではFSL−1(InvivoGen社製)を用い、参考例8ではc−di−GMP(Cyclic diguanosine monophosphate、BIOLOG社製)を用いてワクチン組成物を調製した。投与量は表2の通りであり、調製後の操作はマウスの種類が異なる以外は参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0044】
(比較例10)
インフルエンザHA抗原含有溶液(A/IvPR8/34(H1N1)、阪大微生物病研究会製)19μL(236μg/mL)にリン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加え120μLのワクチン組成物を調製した。投与量は表2の通りであり、調製後の操作はBALB/cマウスを用いている以外は参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0045】
(比較例11、12)
インフルエンザHA抗原(A/IvPR8/34(H1N1)、阪大微生物病研究会製)76.3μL(236μg/mL)に加え、比較例11ではペプチドグリカン(サルモネラ菌由来PGN、InvivoGen社製)30μL(20mg/mL)に、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加えて120μLのワクチン組成物を調製した。比較例11におけるペプチドグリカンの代わりに、比較例12ではPamCSK(InvivoGen社製)を用いてワクチン組成物を調製した。投与量は表2の通りであり、調製後の操作はBALB/cマウスを用いている以外は参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0046】
【表2】
【0047】
参考例9
インフルエンザHA抗原含有溶液(A/IvPR8/34(H1N1)、阪大微生物病研究会製)152.6μL(236μg/mL)にパントエア菌由来リポポリサッカライド(自然免疫応用技研社製)60μL(1mg/mL)、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加え240μLのワクチン組成物を調製した。
予め準備したマウス(メス7週齢BALB/cマウス、日本エスエルシー社製)10匹に麻酔をかけた後、それぞれのマウスの舌下に調製したワクチン組成物を20μL投与した。
当該投与から1週間後、再度マウスに麻酔をかけ、それぞれのマウスの舌下に調製したワクチン組成物を20μL投与した。
2度目の投与から更に1週間後に、致死量のインフルエンザウイルス(A/IvPR8/34(H1N1)、阪大微生物病研究会製)を感染させ、その後2週間経過観察を行い、生存率測定を行った。なお、詳細な測定方法は後述する。
【0048】
(比較例13、14)
比較例13ではインフルエンザHA抗原含有溶液(A/IvPR8/34(H1N1)、阪大微生物病研究会製)のみを含んだ溶液、比較例14ではリン酸緩衝液を調製した。表3の通りの投与量で参考例9と同じ手順で試験を行った。
【0049】
【表3】
【0050】
参考例10
インフルエンザHA抗原含有全粒子溶液(A/California/7/2009(H1N1)、阪大微生物病研究会製)10.1μL(1776μg/mL)にパントエア菌由来リポポリサッカライド(自然免疫応用技研社製)30μL(1mg/mL)、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加え120μLのワクチン組成物を調製した。
表4に示した投与量で参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0051】
(比較例14−2)
比較例14−2ではインフルエンザHA抗原含有全粒子溶液(A/California/7/2009(H1N1))のみを含んだ溶液を調製した。表4に示した投与量で参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0052】
【表4】
【0053】
参考例11
インフルエンザHA抗原含有溶液(A/California/7/2009(H1N1)、阪大微生物病研究会製)36μL(500μg/mL)にパントエア菌由来リポポリサッカライド(自然免疫応用技研社製)30μL(1mg/mL)、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加え120μLのワクチン組成物を調製した。
表5に示した投与量で参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0054】
参考例12
参考例11におけるパントエア菌由来リポポリサッカライドの代わりに、参考例12ではc−di−GMP(Cyclic diguanosine monophosphate、BIOLOG社製)を用い、参考例11と同様にしてワクチン組成物を調製し、表5に示した投与量で参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0055】
(比較例15)
参考例11におけるパントエア菌由来リポポリサッカライドの代わりに、比較例15ではimiquimod(InvivoGen社製)を用い、表5に示した投与量で参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0056】
(比較例16)
参考例11におけるパントエア菌由来リポポリサッカライドの代わりに、比較例16では他に何も加えず、インフルエンザHA抗原含有溶液(A/California/7/2009(H1N1)、阪大微生物病研究会製)のみを含んだ溶液を作成した。表5に示した投与量で参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0057】
【表5】
【0058】
参考例13
インフルエンザHA抗原含有溶液(A/Victria/361/2009(H3N2)、阪大微生物病研究会製)33.7μL(534μg/mL)にパントエア菌由来リポポリサッカライド(自然免疫応用技研社製)30μL(1mg/mL)、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加え120μLのワクチン組成物を調製した。表6に示した投与量で参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0059】
参考例14
インフルエンザHA抗原含有溶液(B/Brisbane/60/2008、阪大微生物病研究会製)47.4μL(380μg/mL)にパントエア菌由来リポポリサッカライド(自然免疫応用技研社製)30μL(1mg/mL)、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加え120μLのワクチン組成物を調製した。表6に示した投与量で参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0060】
【表6】
【0061】
参考例15
ワクチン組成物の調製は参考例11と同じである。すなわち、インフルエンザHA抗原含有溶液(A/California/7/2009(H1N1)、阪大微生物病研究会製)36μL(500μg/mL)にパントエア菌由来リポポリサッカライド(自然免疫応用技研社製)30μL(1mg/mL)、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加え120μLのワクチン組成物を調製した。
表7に示した投与量でBALB/cマウスを用いた以外は参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0062】
参考例16)
OVA(Ovalbumin、シグマ社製)18μL(1mg/mL)にパントエア菌由来リポポリサッカライド(自然免疫応用技研社製)30μL(1mg/mL)、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加え120μLのワクチン組成物を調製した。
表7に示した投与量でBALB/cマウスを用いた以外は参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0063】
(比較例17)
参考例15におけるパントエア菌由来リポポリサッカライドの代わりに、比較例17では他に何も加えず、インフルエンザHA抗原含有溶液(A/California/7/2009(H1N1)、阪大微生物病研究会製)のみを含んだ溶液を調製した。表7に示した投与量でBALB/cマウスを用いた以外は参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0064】
(比較例18)
参考例16におけるパントエア菌由来リポポリサッカライドの代わりに、比較例18では他に何も加えず、OVA(Ovalbumin、シグマ社製)のみを含んだ溶液を調製した。表7に示した投与量でBALB/cマウスを用いた以外は参考例1と同じ手順で試験を行った。
【0065】
【表7】
【0066】
(試験方法)
マウス血清中のインフルエンザHA若しくはOVA特異的IgG力価を測定することにより、全身性免疫応答を評価した。また、マウス鼻腔洗浄液中のインフルエンザHA若しくはOVA特異的IgA力価を測定することにより、粘膜免疫応答を評価した。それぞれの評価法に関しては次に示す。また、それぞれの評価結果を図1〜13(図5除く)に示した。
一方でマウスにインフルエンザウイルスを感染させることでワクチン効果を確認する、ウイルス感染実験を行った。評価結果を図5に示した。
【0067】
(マウス血清中インフルエンザHA特異的IgG力価測定方法(ELISA法))
ELISA用96ウェルプレートに炭酸緩衝液にて希釈した各インフルエンザHA(例えばA/IvPR8/34(H1N1)特異的IgG抗体価を測定する時にはA/IvPR8/34(H1N1)インフルエンザHA抗原溶液)若しくはOVA含有溶液(5μg/mL)を100μLずつ添加し、一晩放置した。
予め準備した洗浄液(Tween20含有PBS)で3回ウェルを洗浄し、ブロッキング剤(Block Ace、DSファーマバイオメディカル社製)を精製水で4g/100mLに希釈したブロッキング溶液を200μLずつ添加し、2時間室温で放置した。その後、洗浄液(Tween20含有PBS)で3回ウェルを洗浄した。
予めマウスから採取した血清を4℃下3000Gで10分間遠心し、上清20μLにリン酸緩衝液(ナカライテスク社製)300μLを加えて希釈血清溶液を調製した。
ブロッキング剤(Block Ace、DSファーマバイオメディカル社製)をリン酸緩衝液(ナカライテスク社製)で0.4g/100mLに希釈した溶液を用いて、前述の希釈血清溶液を用いて2倍ずつ16回段階希釈し、その溶液をそれぞれ50μLずつ添加し、2時間室温で放置した。
その後、洗浄液(Tween20含有PBS)で3回ウェルを洗浄し、ブロッキング剤(Block Ace、DSファーマバイオメディカル社製)をリン酸緩衝液(ナカライテスク社製)で0.4g/100mLに希釈した溶液でHRP標識抗マウスIgG抗体(Goat−anti−mouse IgG Fc HRP、BETHYL社製)を10000倍に希釈し、100μLずつ添加し、1時間室温で放置した。
その後、洗浄液(Tween20含有PBS)で3回ウェルを洗浄し、TMB溶液(ELISA POD TMBキット、ナカライテスク社製)を100μLずつ加えた。ここに1M硫酸溶液を100μLずつ加え、当該96ウェルプレートをマイクロプレートリーダー(168−11135CAM、バイオラッド社製)で450nmの吸光度を測定した。段階希釈時の吸光度を基に、マウス血清中IgG力価をLog2で求めた。
【0068】
(マウス鼻腔洗浄液中インフルエンザHA特異的IgA力価測定方法(ELISA法))
ELISA用96ウェルプレートに炭酸緩衝液にて希釈した各インフルエンザHA(例えばA/IvPR8/34(H1N1)特異的IgA抗体価を測定する時にはA/IvPR8/34(H1N1)インフルエンザHA)もしくはOVA含有溶液(5μg/mL)を100μLずつ添加し、一晩放置した。
予め準備した洗浄液(Tween20含有PBS)で3回ウェルを洗浄し、ブロッキング剤(Block Ace、DSファーマバイオメディカル社製)を精製水で4g/100mLに希釈したブロッキング溶液を200μLずつ添加し、2時間室温で放置した。
その後、洗浄液(Tween20含有PBS)で3回ウェルを洗浄し、ブロッキング剤(Block Ace、DSファーマバイオメディカル社製)をリン酸緩衝液(ナカライテスク社製)で0.4g/100mLに希釈した溶液を用いて、マウスから採取した鼻腔洗浄液を2倍ずつ12回段階希釈し、その溶液をそれぞれ50μLずつ添加し、2時間室温で放置した。
その後、洗浄液(Tween20含有PBS)で3回ウェルを洗浄し、ブロッキング剤(Block Ace、DSファーマバイオメディカル社製)をリン酸緩衝液(ナカライテスク社製)で0.4g/100mLに希釈した溶液でHRP標識抗マウスIgA抗体(Goat−anti−mouse IgA α HRP、BETHYL社製)を10000倍に希釈し、100μLずつ添加し、1時間室温で放置した。その後、洗浄液(Tween20含有PBS)で3回ウェルを洗浄し、TMB溶液(ELISA POD TMBキット、ナカライテスク社製)を100μLずつ加えた。ここに1M硫酸溶液を100μLずつ加え、当該96ウェルプレートをマイクロプレートリーダー(168−11135CAM、バイオラッド社製)で450nmの吸光度を測定した。段階希釈時の吸光度を基に、マウス鼻腔洗浄液中IgA力価をLog2で求めた。
【0069】
(マウスへのA/IvPR8/34(H1N1)インフルエンザウイルス感染実験(生存率測定))
ワクチン投与を行ったマウスについて、最終投与より一週間後、麻酔下にて希釈したA/IvPR8/34(H1N1)インフルエンザウイルスを15μL投与した(10×LD50:50% Lethal Dose)。その日を0日目とし、14日目までマウスの経過観察を行い、生存率を測定した。
【0070】
図1、2に示したように、参考例1〜5及び実施例5では、インフルエンザHA特異的IgG及びIgAが高レベルで産生しているのに対し、比較例1〜9では、インフルエンザHA特異的IgGに関しては産生しているものもあるが、インフルエンザ特異的IgAに関しては産生量が低かった。これらの結果から免疫賦活剤としてTLR4アゴニスト及びTLR2/6アゴニスト、環状ビスジヌクレオチドが舌下での粘膜免疫誘導に有効であることが見出された。
図3、4に示したように、参考例6〜8と比較例10〜12との比較により、インフルエンザHA抗原の投与量を0.75μgに減らした系においても、充分に舌下投与で全身性免疫及び粘膜免疫を誘導する事が可能であることが見出された。
図5に示したように、参考例9と比較例13、14との比較により、舌下免疫を行うことによって、致死量のインフルエンザウイルスに対して完全な感染防御を達成していることが見出された。
図6、7に示したように、参考例10と比較例14、1との比較により、全粒子タイプのワクチンにおいてもアジュバントを用いることによって充分に全身性免疫及び粘膜免疫を誘導することが可能であることが見出された。
図8、9に示したように、参考例11、12と比較例15、16、1との比較により、A/California/7/2009(H1N1)、すなわちヒトに感染する季節性インフルエンザについても全身性免疫及び粘膜免疫を誘導することが可能であることが見出された。
図10、11に示したように、参考例11、13、14と比較例16、1との比較により、舌下免疫によって様々なタイプのインフルエンザウイルスに対して全身性免疫及び粘膜免疫を誘導することが可能であることが見出された。
図12、13に示したように、参考例15、16と比較例17、18との比較により、インフルエンザHA特異的及びOVA特異的全身性免疫及び粘膜免疫が高く誘導されていることが見いだされた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のワクチン組成物は、少なくとも一種類の感染症由来抗原とともに、上述した特定の免疫賦活剤を併用するため、口腔粘膜への投与であっても、効果的に全身性免疫応答及び粘膜免疫応答を誘導することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13