(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自動二輪車の車両本体と車輪との間に生じる力を減衰させる減衰装置を有するサスペンションの伸長方向における、前記車両本体に対する前記車輪の基準位置からの変位量であるストローク量の変化の加速度が、予め定められた所定値以上である場合には、前記加速度が前記所定値未満である場合よりも、前記減衰装置の減衰力を大きくする機能と、
前記ストローク量が小さいほど前記所定値が小さくなるように、前記所定値を設定する機能と、
をコンピュータに実現させるプログラムを記録した、非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体。
自動二輪車の車両本体と車輪との間に生じる力を減衰させる減衰装置を有するサスペンションの伸長方向における、前記車両本体に対する前記車輪の基準位置からの変位量であるストローク量の変化の速度を用いて、前記減衰装置の減衰力を制御する第1制御機能と、
前記第1制御機能の制御による第1減衰力で、前記サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを判定する機能と、
前記最も伸長した状態になると判定した場合に、前記第1減衰力よりも大きくなるように前記減衰力を制御する第2制御機能と、
をコンピュータに実現させるプログラムを記録した、非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、自動二輪車1の概略構成を示す図である。
図2は、減衰装置200の概略構成を示す図である。
図3は、制御装置100の概略構成を示す図である。
自動二輪車1は、前側の車輪である前輪2と、後側の車輪である後輪3と、車両本体10とを備えている。車両本体10は、自動二輪車1の骨格をなす車体フレーム11と、ハンドル12と、ブレーキレバー13と、シート14等を有している。
【0014】
また、自動二輪車1は、前輪2と車両本体10とを連結する前輪側のサスペンション21を有している。また、自動二輪車1は、前輪2の左側に配置されたサスペンション21と前輪2の右側に配置されたサスペンション21とを保持する2つのブラケット15と、2つのブラケット15の間に配置されたシャフト16とを備えている。シャフト16は、車体フレーム11に回転可能に支持されている。サスペンション21は、路面等から前輪2に加わった衝撃を吸収する懸架スプリング21sと、懸架スプリング21sの振動を減衰する減衰装置21dとを備えている。
【0015】
また、自動二輪車1は、後輪側のサスペンション22を有している。サスペンション22は、路面等から後輪3に加わった衝撃を吸収する懸架スプリング22sと、懸架スプリング22sの振動を減衰する減衰装置22dとを備えている。減衰装置22dは、後輪3と車両本体10との間に生じる力を減衰させる。
【0016】
以下の説明において、減衰装置21dと減衰装置22dとをまとめて「減衰装置200」と称する場合もある。
また、前輪側のサスペンション21と後輪側のサスペンション22とをまとめて「サスペンション」と称する場合もある。また、前輪2と後輪3とをまとめて「車輪」と称する場合もある。また、懸架スプリング21sと懸架スプリング22sとをまとめて「スプリング」と称する場合もある。
【0017】
自動二輪車1は、減衰装置21d及び減衰装置22dの減衰力を制御する制御装置100を備えている。制御装置100には、サスペンション21のストローク量を検出するストロークセンサ31と、サスペンション22のストローク量を検出するストロークセンサ32からの出力信号が入力される。以下の説明において、ストロークセンサ31とストロークセンサ32とをまとめて「ストロークセンサ30」と称する場合もある。
本発明に係る懸架装置20は、サスペンション(サスペンション21及びサスペンション22)と、制御装置100とを有する装置である。
【0018】
(減衰装置)
減衰装置200は、作動油で満たされたシリンダ210と、シリンダ210内に移動自在に収容されたピストン221と、ピストン221を保持するピストンロッド222とを備えている。シリンダ210の一方側(
図2においては上側)の端部210aが車両本体10に連結されている。ピストンロッド222は、一方側の端部にピストン221を保持し、他方側(
図2においては下側)の端部222aが車輪に連結されている。なお、本発明における減衰装置はこのような形態に限定されない。本発明における減衰装置は、シリンダ210の他方側の端部が車輪に連結されるとともに、ピストンロッド222の他方側の端部がピストン221を保持し、ピストンロッド222の一方側の端部が車両本体10に連結されていても良い。
【0019】
減衰装置200においては、ピストン221が車両本体10側(
図2においては上側)へ移動することで減衰装置200の全長が縮む圧縮行程が行われ、ピストン221が車輪側(
図2においては下側)へ移動することで減衰装置200の全長が伸びる伸長行程が行われる。
シリンダ210内は、ピストン221がシリンダ210内に収容されていることにより、圧縮行程において作動油の圧力が高まる圧縮側の油室211と、伸長行程において作動油の圧力が高まる伸長側の油室212とに区画されている。
【0020】
減衰装置200は、シリンダ210内の油室211に接続された第1油路231と、シリンダ210内の油室212に接続された第2油路232とを有している。また、減衰装置200は、第1油路231と第2油路232との間に設けられた第3油路233と、第3油路233に設けられた減衰力制御弁240とを有している。また、減衰装置200は、第1油路231と第3油路233の一方の端部とを接続する第1分岐路251と、第1油路231と第3油路233の他方の端部とを接続する第2分岐路252と、を有している。また、減衰装置200は、第2油路232と第3油路233の一方の端部とを接続する第3分岐路253と、第2油路232と第3油路233の他方の端部とを接続する第4分岐路254と、を有している。
【0021】
また、減衰装置200は、第1分岐路251に設けられ、第1油路231から第3油路233へと向かう作動油の移動を許容し、第3油路233から第1油路231へと向かう作動油の移動を禁止する第1チェック弁271を有している。また、減衰装置200は、第2分岐路252に設けられ、第3油路233から第1油路231へと向かう作動油の移動を許容し、第1油路231から第3油路233へと向かう作動油の移動を禁止する第2チェック弁272を有している。
また、減衰装置200は、第3分岐路253に設けられ、第2油路232から第3油路233へと向かう作動油の移動を許容し、第3油路233から第2油路232へと向かう作動油の移動を禁止する第3チェック弁273を有している。また、減衰装置200は、第4分岐路254に設けられ、第3油路233から第2油路232へと向かう作動油の移動を許容し、第2油路232から第3油路233へと向かう作動油の移動を禁止する第4チェック弁274を有している。
また、減衰装置200は、作動油を貯留するとともに作動油を給排する機能を有するリザーバ290と、リザーバ290と第3油路233の他方の端部とを接続するリザーバ通路291とを有している。
【0022】
減衰力制御弁240は、ソレノイドを有しており、ソレノイドに通電する電流量が制御されることによって、弁を通過する作動油の圧力を制御可能である。本実施の形態に係る減衰力制御弁240は、ソレノイドに供給される電流量が大きくなるのに従って弁を通過する作動油の圧力を高くする。ソレノイドに通電する電流量は、制御装置100によって制御される。
【0023】
ピストン221が油室211の方に移動すると、油室211の油圧が上昇する。そして、油室211内の作動油が、第1油路231、及び、第1分岐路251を介して、減衰力制御弁240に向かう。減衰力制御弁240を通過する作動油の圧力が減衰力制御弁240の弁圧にて調整されることにより、圧縮側の減衰力が調整される。減衰力制御弁240を通過した作動油は、第4分岐路254、及び、第2油路232を介して、油室212に流入する。
【0024】
他方、ピストン221が油室212の方に移動すると、油室212の油圧が上昇する。そして、油室212内の作動油が、第2油路232、及び、第3分岐路253を介して、減衰力制御弁240に向かう。減衰力制御弁240を通過する作動油の圧力が減衰力制御弁240の弁圧にて調整されることにより、伸長側の減衰力が調整される。減衰力制御弁240を通過した作動油は、第2分岐路252、及び、第1油路231を介して、油室211に流入する。
【0025】
(制御装置100)
制御装置100は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等からなる算術論理演算回路である。
制御装置100には、ストロークセンサ31にて検出されたサスペンション21のストローク量Rpfが出力信号に変換された、前輪側のストローク信号sfが入力される。また、制御装置100には、ストロークセンサ32にて検出されたサスペンション22のストローク量Rprが出力信号に変換された、後輪側のストローク信号srが入力される。
【0026】
制御装置100は、減衰力制御弁240のソレノイドに供給する電流量を制御することにより、減衰力を制御する。具体的には、制御装置100は、減衰力を大きくする場合には、減衰力制御弁240のソレノイドに供給する電流量を大きくし、減衰力を小さくする場合には、減衰力制御弁240のソレノイドに供給する電流量を小さくする。
【0027】
制御装置100は、ストロークセンサ30からのストローク信号sf、srを用いて、サスペンションのストローク量Rpf、Rpr等を算出する算出部110を備えている。また、制御装置100は、減衰力制御弁240のソレノイドに供給する目標電流Itf、Itrを設定する設定部120と、減衰力制御弁240を駆動させる駆動部130とを備えている。
【0028】
算出部110は、ストローク量Rpf、Rprを算出するRp算出部111を備えている。また、算出部110は、単位時間当たりのストローク量Rpf、Rprの変化量、言い換えれば、ストローク量Rpf、Rprの変化の速度である速度Vpf、Vprを算出する、Vp算出部112を備えている。また、算出部110は、単位時間当たりの速度Vpf、Vprの変化量、言い換えれば、ストローク量Rpf、Rprの変化の加速度である加速度Apf、Aprを算出する、Ap算出部113を備えている。
【0029】
Rp算出部111は、ストロークセンサ31からの出力値を用いて、サスペンション21のストローク量Rpfを算出する。また、Rp算出部111は、ストロークセンサ32からの出力値を用いて、サスペンション22のストローク量Rprを算出する。ストローク量Rpfとストローク量Rprとをまとめて「ストローク量Rp」と称する場合もある。ストローク量Rpは、車両本体10に対する車輪の基準位置からの変位量である。例えば、サスペンションが最も伸びた状態のときに、ストローク量Rp=0とすることができる。つまり、サスペンションが伸びるほどストローク量Rpは小さくなり、サスペンションが縮むほどストローク量Rpは大きくなる。
【0030】
Vp算出部112は、単位時間当たりの、Rp算出部111が算出したストローク量Rpfの変化量を算出することにより、前輪側の速度Vpfを算出する。また、Vp算出部112は、単位時間当たりの、Rp算出部111が算出したストローク量Rprの変化量を算出することにより、後輪側の速度Vprを算出する。速度Vpfと速度Vprとをまとめて「速度Vp」と称する場合もある。なお、以下の説明において、サスペンションの伸長方向にストローク量Rpが変化する場合の符号をプラス、サスペンションの圧縮方向にストローク量Rpが変化する場合の符号をマイナスとして、サスペンションの伸長方向における速度Vpの符号をプラス、サスペンションの圧縮方向における速度Vpの符号をマイナスとする。
【0031】
Ap算出部113は、単位時間当たりの、Vp算出部112が算出した速度Vpfの変化量を算出することにより、前輪側の加速度Apfを算出する。また、Ap算出部113は、単位時間当たりの、Vp算出部112が算出した速度Vprの変化量を算出することにより、後輪側の加速度Aprを算出する。加速度Apfと加速度Aprとをまとめて「加速度Ap」と称する場合もある。なお、以下の説明において、サスペンションの伸長方向における加速度Apの符号をプラス、サスペンションの圧縮方向の加速度Apの符号をマイナスとする。
設定部120については後で詳述する。
【0032】
駆動部130は、例えば電源の正極側ラインと、減衰力制御弁240のソレノイドのコイルとの間に接続された、スイッチング素子としてのトランジスタ(Field Effect Transistor:FET)を備えている。
【0033】
より具体的には、駆動部130は、減衰装置21dの減衰力制御弁240へと供給する目標電流が、設定部120によって設定された目標電流Itfとなるように、トランジスタをスイッチング動作させる。また、駆動部130は、減衰装置22dの減衰力制御弁240へと供給する目標電流が、設定部120によって設定された目標電流Itrとなるように、トランジスタをスイッチング動作させる。
【0034】
以下に、設定部120について詳述する。
図4は、設定部120の概略構成を示す図である。
設定部120は、Vp算出部112が算出した速度Vpf、Vprを用いて、減衰力制御弁240のソレノイドへと供給する、目標電流Itを設定する、第1設定部121を有している。
【0035】
また、設定部120は、第1設定部121が設定する目標電流Itによる減衰装置200の第1減衰力で、サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを判定する判定部123を備えている。
また、設定部120は、判定部123が最も伸長した状態になると判定した場合に、減衰装置200の減衰力制御弁240のソレノイドへと供給する、目標電流Itを設定する、第2設定部124を有している。
【0036】
第1設定部121は、速度Vpfを用いて、減衰装置21dの減衰力制御弁240のソレノイドへと供給する、前輪側の目標電流Itfを設定する。また、第1設定部121は、速度Vprを用いて、減衰装置22dの減衰力制御弁240のソレノイドへと供給する、後輪側の目標電流Itrを設定する。なお、第1設定部121が目標電流Itfを設定する手法と第1設定部121が目標電流Itrを設定する手法とは同様である。以下では、目標電流Itfと目標電流Itrとをまとめて「目標電流It」と称する場合もある。
【0037】
図5は、目標電流Itと速度Vpとの関係の例を示す制御マップの概略図である。
第1設定部121は、速度Vp(速度Vpf又は速度Vpr)に応じた目標電流Itを算出する。第1設定部121は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記録しておいた、目標電流Itと速度Vpとの関係を示す
図5に例示した制御マップに、速度Vpを代入することにより目標電流Itを算出する。
【0038】
図5に例示した制御マップにおいては、速度Vpがサスペンションの圧縮方向の速度である場合には、目標電流Itは、速度Vpが第1所定速度V1以上であるときには速度Vpが小さいほど目標電流Itが大きくなるように設定されている。また、目標電流Itは、速度Vpが第1所定速度V1より小さいときには圧縮方向の所定電流It1となるように設定されている。また、速度Vpがサスペンションの伸長方向の速度である場合には、目標電流Itは、速度Vpが第2所定速度V2以下であるときには速度Vpが大きいほど大きくなるように設定されている。また、目標電流Itは、速度Vpが第2所定速度V2より大きいときには伸長方向の所定電流It2となるように設定されている。なお、第1設定部121は、自動二輪車1の移動速度である車速に応じて、目標電流Itと速度Vpとの関係を示す制御マップを切り替えて用いても良い。また、第1設定部121は、サスペンションが最も伸長した状態にはならないと判定部123が判定した場合に、目標電流Itを設定する。
このようにして、第1設定部121は、目標電流Itを設定することで、減衰装置200の減衰力を制御する。
【0039】
なお、第1設定部121は、ローパスフィルタにて抽出された、Vp算出部112が算出した速度Vpを用いて、最も伸長した状態になるか否かを判定しても良い。ローパスフィルタは、所定の周波数(例えば5Hz)より大きい周波数帯域成分を除去して、所定の周波数以下の低周波数帯域成分だけを抽出するフィルタである。
【0040】
判定部123は、第1設定部121が設定する目標電流Itfによる減衰装置21dの減衰力で、前輪側のサスペンション21が最も伸長した状態になるか否かを判定する。また、判定部123は、第1設定部121が設定する目標電流Itrによる減衰装置22dの減衰力で、後輪側のサスペンション22が最も伸長した状態になるか否かを判定する。判定部123が、サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを判定する手法については後で詳述する。
【0041】
第2設定部124は、前輪側のサスペンション21が最も伸長した状態になると判定部123が判定した場合に、予め定められた前輪側の抑制電流Icfを、目標電流Itfに設定する。抑制電流Icfは、第1設定部121が設定する目標電流Itfよりも大きな電流(例えば所定電流It2よりも大きな電流)であり、減衰装置21dの減衰力を最大限に高めることができる電流であることを例示することができる。抑制電流Icfは、減衰装置21dの減衰力制御弁240のソレノイドに供給することができる最大の電流であることを例示することができる。
【0042】
また、第2設定部124は、後輪側のサスペンション22が最も伸長した状態になると判定部123が判定した場合に、予め定められた後輪側の抑制電流Icrを、目標電流Itrに設定する。抑制電流Icrは、第1設定部121が設定する目標電流Itrよりも大きな電流(例えば所定電流It2よりも大きな電流)であり、減衰装置22dの減衰力を最大限に高めることができる電流であることを例示することができる。抑制電流Icrは、減衰装置22dの減衰力制御弁240のソレノイドに供給することができる最大の電流であることを例示することができる。
以下では、抑制電流Icfと抑制電流Icrとをまとめて「抑制電流Ic」と称する場合もある。
【0043】
(判定手法)
次に、判定部123が、サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを判定する手法について説明する。
図6は、車輪を固定して、サスペンションを最も縮めた後に、車両本体10の拘束を外した場合、及び、車両本体10を固定して、サスペンションを最も縮めた後に、車輪の拘束を外した場合における、ストローク量Rp、速度Vp及び加速度Apの変化の例を示す図である。
【0044】
車輪を固定して、サスペンションを最も圧縮した状態(ストローク量Rpが最大状態)にした後に、車両本体10の拘束を外した場合の状況(以下、「状況1」と称する場合がある。)は、例えば、自動二輪車1が、ジャンプした後に着地することでサスペンションが最も縮んだ後に起こり得る。他方、車両本体10を固定して、サスペンションを最も縮めた後(ストローク量Rpを最大状態にした後)に、車輪の拘束を外した場合の状況(以下、「状況2」と称する場合がある。)は、例えば、自動二輪車1がジャンプした直後に車輪が路面から浮いているときに起こり得る。以下、状況1における、ストローク量Rp、速度Vp、加速度Apを、それぞれ、ストローク量Rp1、速度Vp1、加速度Ap1と称す。また、状況2における、ストローク量Rp、速度Vp、加速度Apを、それぞれ、ストローク量Rp2、速度Vp2、加速度Ap2と称す。
【0045】
サスペンションが最も縮むと、スプリングが最も縮むことからスプリングの位置エネルギーが蓄えられる。また、車輪よりも車両本体10の方が質量は大きい(例えば、車両本体10の質量は車輪の質量の5倍である)。また、車両本体10に働く重力は、サスペンションを縮める方向に作用するのに対して、車輪に働く重力は、サスペンションを伸ばす方向に作用する。
【0046】
以上の理由により、
図6のストローク量Rp1の変化に示すように、状況1においては、サスペンションは最も伸長した状態(ストローク量Rp1が最も小さい状態)に至らない。一方、
図6のストローク量Rp2の変化に示すように、状況2においては、サスペンションは最も伸長した状態に至る。
【0047】
また、以上の理由により、
図6に示すように、状況2における車輪の拘束を外した直後の加速度Ap2は、状況1における車両本体10の拘束を外した直後の加速度Ap1の約10倍である。例えば、加速度Ap1が2G(1G=9.8(m/s
2))であるのに対して、加速度Ap2が20Gである。自動二輪車1の機種によっては、加速度Ap1は、大きくても10Gであると考えられる。他方、加速度Ap2は、どの機種においても20G以上であると考えられる。それゆえ、自動二輪車1の機種に関わらず、状況2における加速度Ap2は、状況1における加速度Ap1の少なくとも2倍以上になると考えられる。
【0048】
また、
図6の速度Vp1の変化に示すように、車両本体10の拘束を外した直後においては、速度Vp1が小さいことから、減衰装置200の減衰力は小さい。同様に、
図6の速度Vp2に示すように、車輪の拘束を外した直後においては、速度Vp2が小さいことから、減衰装置200の減衰力は小さい。
【0049】
これらのことより、加速度Apが大きい場合には、その後に、サスペンションが最も伸長した状態に至るおそれがあることが分かる。
【0050】
以上説明した事項に鑑み、判定部123は、Ap算出部113が算出した加速度Apが予め定められた所定値以上である場合に、サスペンションが最も伸長した状態に至るおそれがあると判定する。所定値は、以下のことを考慮して定められた値であることを例示することができる。
図6からも分かるように、サスペンションが最も縮んだ後に車輪の拘束を外すと、その後に、サスペンションが最も伸長した状態に至る。一方、サスペンションが最も縮んだ後に車両本体10の拘束を外しても、その後に最も伸長した状態には至らない。この違いは、加速度Ap1及び加速度Ap2の、値の違いに起因する。サスペンションが最も縮んだ後に車両本体10の拘束を外した直後の加速度Apは、自動二輪車1の機種によらず大きくても10G以上とはならないと考えられる。
以上のことより、所定値は10Gであることを例示することができる。
【0051】
なお、判定部123は、ローパスフィルタにて抽出された、Ap算出部113が算出した加速度Apを用いて、最も伸長した状態になるか否かを判定しても良い。ローパスフィルタは、所定の周波数(例えば5Hz)より大きい周波数帯域成分を除去して、所定の周波数以下の低周波数帯域成分だけを抽出するフィルタである。
【0052】
次に、フローチャートを用いて、設定部120が行う目標電流設定処理の手順について説明する。
図7は、設定部120が行う目標電流設定処理の手順を示すフローチャートである。
設定部120は、この目標電流設定処理を、予め定めた期間(例えば1ミリ秒)毎に繰り返し実行する。
【0053】
設定部120は、加速度Apが所定値以上であるか否かを判定する(ステップ(以下「S」と称する場合もある。)701)。これは、判定部123が、Ap算出部113が算出した加速度Apを取得するとともに、取得した加速度Apが所定値以上であるか否かを判定する処理である。
【0054】
加速度Apが所定値以上である場合(S701でYes)、第2設定部124が、上述した抑制電流Icを、目標電流Itとして設定する(S702)。
他方、加速度Apが所定値未満である場合(S701でNo)、第1設定部121が、Vp算出部112が算出した速度Vpを取得するとともに、取得した速度Vpと例えば
図5に示した制御マップとに基づいて算出した値を、目標電流Itとして設定する(S703)。抑制電流Icは、第1設定部121が設定する目標電流Itよりも大きい。そのため、上記形態にすることにより、制御装置100は、加速度Apが所定値以上である場合には、加速度Apが所定値未満である場合よりも、減衰装置200の減衰力を大きくする。
【0055】
制御装置100が、このようにして減衰装置200の減衰力を制御することで、以下の利点が得られる。例えば、自動二輪車1がジャンプした直後に車輪が路面から浮いた場合など、サスペンションが縮んだ後に車輪の拘束が外れた場合に、早期に減衰力が高められる。その結果、サスペンションが最も伸長した状態になることが抑制される。それゆえ、サスペンションが最も伸長した状態になったときの衝撃を緩和するためのばねや、オイルロック効果を得るための機構が不要となる。その結果、サスペンションの減衰力のセッティングの自由度が増す。他方、自動二輪車1が、ジャンプした後に着地した場合など、サスペンションが縮んだ後に車両本体10の拘束が外れた場合には、速度Vpに応じた減衰力となり、抑制電流Icに応じた減衰力よりも小さくなる。それゆえ、乗り心地は、抑制電流Icが設定される場合よりも良い。このように、制御装置100によれば、サスペンションが最も伸長した状態になるおそれがある場合に減衰力を大きくして最も伸長した状態になるのを抑制する制御を行いつつ、この制御を行うことに起因して乗り心地に悪影響を与えることを抑制することができる。
【0056】
以上説明したように、懸架装置20は、車両本体10と車輪との間に生じる力を減衰させる減衰装置200を有するサスペンションを備えている。また、懸架装置20は、サスペンションの伸長方向における加速度Apが予め定められた所定値以上である場合には、加速度Apが所定値未満である場合よりも減衰装置200の減衰力を大きくする、減衰力制御部の一例としての第2設定部124を備える。懸架装置20によれば、サスペンションが最も伸長した状態になるおそれがある場合に減衰力を大きくすることにより、最も伸長した状態になることを抑制することができる。さらに、懸架装置20によれば、最も伸長した状態になることを抑制する制御を行いつつ、この制御を行うことに起因して乗り心地に悪影響を与えることを抑制することができる。
【0057】
また、懸架装置20は、車両本体10と車輪との間に生じる力を減衰させる減衰装置200を有するサスペンションと、サスペンションの伸長方向における速度Vpを用いて減衰力を制御する第1制御部の一例としての第1設定部121とを備えている。また、懸架装置20は、第1設定部121の制御による第1減衰力(第1設定部121が設定する目標電流Itによる減衰力)で、サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを判定する判定部123を備えている。また、懸架装置20は、判定部123が、最も伸長した状態になると判定した場合に、前記第1減衰力よりも大きくなるように減衰力を制御する第2制御部の一例としての第2設定部124を備えている。懸架装置20によれば、サスペンションが最も伸長した状態になるおそれがある場合に減衰力を大きくすることにより最も伸長した状態になることを抑制しつつ、最も伸長した状態になることを抑制する制御を行うことに起因して乗り心地に悪影響を与えることを抑制することができる。
ここで、判定部123は、ストローク量Rpの変化の加速度Apが予め定められた所定値以上である場合に最も伸長した状態になると判定しても良い。これにより、判定部123は、精度高く最も伸長した状態になると判定することができる。
【0058】
以上説明した制御装置100が行なう処理は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現することができる。この場合、制御装置100に設けられた制御用コンピュータ内部のCPUが、制御装置100の各機能を実現するプログラムを実行し、これらの各機能を実現させる。例えば、プログラムを記録した非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体を、制御装置100に提供し、制御装置100のCPUが、記録媒体に格納されたプログラムを読み出す。この場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が、上述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラム自体、及びそれを記録した記録媒体は、本発明を構成することになる。このようなプログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMを例示することができる。
【0059】
図8は、記録媒体300の概略構成を示す図である。記録媒体300は、減衰装置200の減衰力を制御する機能を、コンピュータに実現させるプログラムP1を記録した、非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体である。
図8に示すように、記録媒体300は、プログラムP1を格納する。
プログラムP1は、速度Vpを用いて、減衰力制御弁240のソレノイドへと供給する、目標電流Itを設定する、第1設定機能301を有している。
また、プログラムP1は、第1設定機能301が設定する目標電流Itによる減衰装置200の減衰力で、サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを判定する判定機能303を備えている。
また、プログラムP1は、判定機能303が最も伸長した状態になると判定した場合に、減衰力制御弁240のソレノイドへと供給する、目標電流Itを設定する、第2設定機能304を有している。
【0060】
第1設定機能301は、
図4に示した第1設定部121の機能を実現するモジュールである。
判定機能303は、
図4に示した判定部123の機能を実現するモジュールである。
第2設定機能304は、
図4に示した第2設定部124の機能を実現するモジュールである。
【0061】
以上説明したように、記録媒体300は、減衰装置200の減衰力を制御する機能を、コンピュータに実現させるプログラムP1を記録した、非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体である。記録されたプログラムP1は、減衰装置200を有するサスペンションの伸長方向における加速度Apが予め定められた所定値以上である場合には、加速度Apが所定値未満である場合よりも、減衰装置200の減衰力を大きくする機能の一例としての第2設定機能304を、コンピュータに実現させる。
【0062】
また、記録されたプログラムP1は、減衰装置200を有するサスペンションの伸長方向における速度Vpを用いて減衰装置200の減衰力を制御する、第1制御機能の一例としての第1設定機能301を、コンピュータに実現させる。また、記録されたプログラムP1は、第1設定機能301の制御による第1減衰力で、サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを判定する機能の一例としての判定機能303を、コンピュータに実現させる。また、記録されたプログラムP1は、最も伸長した状態になると判定した場合に、前記第1減衰力よりも大きくなるように減衰力を制御する第2制御機能の一例としての第2設定機能304を、コンピュータに実現させる。
ここで、判定機能303は、加速度Apが予め定められた所定値以上である場合に、最も伸長した状態になると判定しても良い。
【0063】
なお、記録媒体300から読み出されたプログラムが、制御装置100に設けられた制御用コンピュータ内部のメモリに書きこまれた後、そのプログラムの指示に基づき、CPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現されるようにしても良い。
また、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、ネットワークを介して配信することにより、制御装置100のハードディスクやROM等の記録手段又はCD−RW、CD−R等の記録媒体に格納する。そして、使用時に制御装置100のCPUがこの記録手段や記録媒体に格納されたプログラムを読み出して実行するようにしても良い。
【0064】
<第2の実施形態>
図9は、自動二輪車400の概略構成を示す図である。
図10は、設定部520の概略構成を示す図である。
自動二輪車400は、上記自動二輪車1の設定部120に代えて、設定部520を備えている点が異なる。設定部520は、ストローク量Rpを用いて閾値THを設定する閾値設定部522を備えている点が、設定部120と異なる。以下、自動二輪車1と異なる点について説明する。自動二輪車1と自動二輪車400とで、同じ形状、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0065】
図9に示すように、自動二輪車400は、減衰装置21d及び減衰装置22dの減衰力を制御する制御装置500を備えている。本発明に係る懸架装置420は、サスペンション(サスペンション21及びサスペンション22)と、制御装置500とを有する装置である。
【0066】
制御装置500は、算出部110と、設定部520と、駆動部130とを備えている。
設定部520は、
図10に示すように、第1設定部121と、第2設定部124とを備えている。
また、設定部520は、閾値THを設定する閾値設定部522を備えている。閾値THを設定する手法については後で詳述する。
また、設定部520は、閾値設定部522が設定した閾値THを用いて、第1設定部121が設定する目標電流Itによる減衰装置200の減衰力で、サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを判定する判定部523を備えている。より具体的には、判定部523は、Ap算出部113が算出した加速度Apが、閾値設定部522が設定した閾値TH以上である場合にサスペンションが最も伸長した状態になると判定する。
【0067】
図11は、ストローク量Rpと閾値THとの関係の例を示す制御マップの概略図である。
閾値設定部522は、ストローク量Rpが小さいほど閾値THが小さくなるように、閾値THを設定する。
ストローク量Rpが小さいほど、サスペンションが最も伸長した状態(ストローク量Rpが最小)となるまでの伸長量は小さい。それゆえ、ストローク量Rpが小さいほど、加速度Apが小さくてもサスペンションが最も伸長した状態に達しやすい。そのため、サスペンションが最も伸長した状態になることを抑制するためには、ストローク量Rpが小さいほど、閾値THは小さいほうが望ましい。ただし、ストローク量Rpが大きい場合の閾値THを小さくすると、サスペンションが最も伸長した状態になるおそれがない状況(例えば上記状況1)においても、加速度Apが閾値TH以上となり、最も伸長した状態になるおそれがあると判定してしまう。
かかる事項に鑑み、閾値設定部522は、最も伸長した状態になることを精度高く抑制しつつ、乗り心地が悪化しないように、ストローク量Rpが小さいほど小さな閾値THを設定する。
【0068】
閾値設定部522は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記録しておいた、ストローク量Rpと閾値THとの関係を示す
図11に例示した制御マップに、ストローク量Rpを代入することにより、閾値THを算出する。
図11に例示した制御マップにおいては、ストローク量Rpが最大であるとき(サスペンションが最も縮んだ状態であるとき)の閾値THが閾値TH0となるように設定されている。また、ストローク量Rpが予め定められた所定量Rp0よりも小さい場合には、閾値THが予め定められた閾値TH1となるように、設定されている。そして、ストローク量Rpが所定量Rp0以上である場合には、ストローク量Rpが小さいほど閾値THが小さくなるように、設定されている。なお、閾値TH0は10G、閾値TH1は3Gであることを例示することができる。
【0069】
次に、フローチャートを用いて、設定部520が行う目標電流設定処理の手順について説明する。
図12は、設定部520が行う目標電流設定処理の手順を示すフローチャートである。
設定部520は、この目標電流設定処理を、予め定めた期間(例えば1ミリ秒)毎に繰り返し実行する。
【0070】
設定部520は、先ず、閾値THを設定する(S1201)。これは、閾値設定部522が、Rp算出部111が算出したストローク量Rpを用いて閾値THを設定する処理である。そして、設定部520は、加速度Apが、S1201にて設定した閾値TH以上であるか否かを判定する(S1202)。これは、判定部523が、Ap算出部113が算出した加速度Apを取得するとともに、取得した加速度Apが閾値TH以上であるか否かを判定する処理である。
【0071】
加速度Apが閾値TH以上である場合(S1202でYes)、第2設定部124が、上述した抑制電流Icを、目標電流Itとして設定する(S1203)。
他方、加速度Apが閾値TH未満である場合(S1202でNo)、第1設定部121が、Vp算出部112が算出した速度Vpを取得するとともに、取得した速度Vpと例えば
図5に示した制御マップとに基づいて算出した値を、目標電流Itとして設定する(S1204)。
【0072】
制御装置500が、このようにして減衰装置200の減衰力を制御することで、サスペンションが最も伸長した状態になることを精度高く抑制することができる。その結果、サスペンションの減衰力のセッティングの自由度を確度高く高めることができる。
【0073】
以上説明したように、懸架装置420は、車両本体10と車輪との間に生じる力を減衰させる減衰装置200を有するサスペンションを備えている。また、懸架装置420は、サスペンションの伸長方向における加速度Apが、予め定められた所定値の一例としての閾値TH以上である場合には、加速度Apが閾値TH未満である場合よりも、減衰装置200の減衰力を大きくする、減衰力制御部の一例としての第2設定部124を備えている。さらに、懸架装置420は、ストローク量Rpが小さいほど閾値THが小さくなるように閾値THを設定する、所定値設定部の一例としての閾値設定部522を備えている。懸架装置420によれば、サスペンションが最も伸長した状態になることを精度高く抑制することができる。その結果、サスペンションの減衰力のセッティングの自由度を確度高く高めることができる。
【0074】
また、懸架装置420は、車両本体10と車輪との間に生じる力を減衰させる減衰装置200を有するサスペンションと、サスペンションの伸長方向における速度Vpを用いて減衰力を制御する、第1制御部の一例としての第1設定部121とを備えている。また、懸架装置420は、第1設定部121の制御による第1減衰力(第1設定部121が設定する目標電流Itによる減衰力)で、サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを判定する判定部523を備えている。また、懸架装置420は、判定部523が、サスペンションが最も伸長した状態になると判定した場合に、前記第1減衰力よりも大きくなるように減衰力を制御する、第2制御部の一例としての第2設定部124を備えている。さらに、懸架装置420は、ストローク量Rpが小さいほど閾値THが小さくなるように閾値THを設定する所定値設定部の一例としての閾値設定部522を備える。懸架装置420によれば、サスペンションが最も伸長した状態になることを精度高く抑制することができる。その結果、サスペンションの減衰力のセッティングの自由度を確度高く高めることができる。
【0075】
図13は、記録媒体320の概略構成を示す図である。記録媒体320は、減衰装置200の減衰力を制御する機能を、コンピュータに実現させるプログラムP2を記録した、非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体である。
図13に示すように記録媒体320は、プログラムP2を格納する。
プログラムP2は、第1設定機能301を有している。
また、プログラムP2は、閾値THを設定する閾値設定機能322と、第1設定機能301が設定する目標電流Itによる減衰装置200の減衰力で、サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを、閾値THを用いて判定する判定機能323を備えている。
また、プログラムP2は、判定機能323が最も伸長した状態になると判定した場合に、減衰力制御弁240のソレノイドへと供給する、目標電流Itを設定する、第2設定機能304を有している。
【0076】
閾値設定機能322は、
図10に示した閾値設定部522の機能を実現するモジュールである。
判定機能323は、
図10に示した判定部523の機能を実現するモジュールである。
【0077】
以上説明したように、記録媒体320は、減衰装置200の減衰力を制御する機能を、コンピュータに実現させるプログラムP2を記録した、非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体である。記録されたプログラムP2は、減衰装置200を有するサスペンションの伸長方向における加速度Apが、予め定められた所定値の一例としての閾値TH以上である場合には、加速度Apが閾値TH未満である場合よりも、減衰装置200の減衰力を大きくする機能の一例としての第2設定機能304を、コンピュータに実現させる。また、記録されたプログラムP2は、ストローク量Rpが小さいほど閾値THが小さくなるように閾値THを設定する閾値設定機能322を、コンピュータに実現させる。
【0078】
また、記録されたプログラムP2は、減衰装置200を有するサスペンションの伸長方向における速度Vpを用いて、減衰装置200の減衰力を制御する第1制御機能の一例としての第1設定機能301を、コンピュータに実現させる。また、記録されたプログラムP2は、第1設定機能301の制御による第1減衰力で、サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを判定する機能の一例としての判定機能323を、コンピュータに実現させる。また、記録されたプログラムP2は、サスペンションが最も伸長した状態になると判定した場合に、前記第1減衰力よりも大きくなるように減衰力を制御する、第2制御機能の一例としての第2設定機能304を、コンピュータに実現させる。
ここで、判定機能323は、加速度Apが閾値TH以上である場合に、サスペンションが最も伸長した状態になると判定しても良い。そして、記録されたプログラムP2は、ストローク量Rpが小さいほど閾値THが小さくなるように閾値THを設定する閾値設定機能322を、コンピュータに実現させる。
【0079】
<第3の実施形態>
図14は、自動二輪車600の概略構成を示す図である。
図15は、設定部720の概略構成を示す図である。
自動二輪車600は、上記自動二輪車1の設定部120に代えて、設定部720を備えている点が異なる。より具体的には、設定部720は、設定部120の第2設定部124に代えて、第2設定部724を備えている点が異なる。以下、自動二輪車1と異なる点について説明する。自動二輪車1と自動二輪車600とで、同じ形状、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0080】
図14に示すように、自動二輪車600は、減衰装置21d及び減衰装置22dの減衰力を制御する制御装置700を備えている。本発明に係る懸架装置620は、サスペンション(サスペンション21及びサスペンション22)と、制御装置700とを有する装置である。
【0081】
制御装置700は、算出部110と、設定部720と、駆動部130とを備えている。
設定部720は、
図15に示すように、第1設定部121と、判定部123とを備えている。
また、設定部720は、判定部123が最も伸長した状態になると判定した場合に、減衰力制御弁240のソレノイドへと供給する、目標電流Itを設定する、第2設定部724を有している。
【0082】
図16は、加速度Apと目標電流Itとの関係の例を示す制御マップの概略図である。
第2設定部724は、加速度Apに応じた目標電流Itを設定する。
上述したように、加速度Apが大きいほど、サスペンションが最も伸長した状態(ストローク量Rpが最小)となり易い。それゆえ、第2設定部724は、最も伸長した状態になることを確度高く抑制するために減衰力を大きくするべく、加速度Apが大きいほど目標電流Itを大きく設定する。他方、加速度Apが所定値以上であるとしても、加速度Apが小さいほど、サスペンションが最も伸長した状態になり難い。それゆえ、第2設定部724は、最も伸長した状態になることを抑制する制御を行うことに起因して乗り心地が悪化することを抑制するために、最も伸長した状態になり難い場合には減衰力を小さくするべく、加速度Apが小さいほど目標電流Itを小さく設定する。
【0083】
第2設定部724は、例えば、予め経験則に基づいて作成しROMに記録しておいた、加速度Apと目標電流Itとの関係を示す
図16に例示した制御マップに、加速度Apを代入することにより、目標電流Itを算出する。
図16に例示した制御マップにおいては、加速度Apが予め定められた最大値Apx以上である場合には、目標電流Itが抑制電流Icとなるように設定されている。また、加速度Apが予め定められた最小値Apn以下である場合には、目標電流Itが予め定められた最小電流Inとなるように設定されている。また、加速度Apが最小値Apnより大きく最大値Apxより小さい場合には、加速度Apが大きくなるほど、目標電流Itが、最小電流Inから抑制電流Icまで徐々に大きくなるように設定されている。なお、最小値Apnは3G、最大値Apxは15Gであることを例示することができる。最小電流Inは、第1設定部121が設定する目標電流Itよりも大きな電流(例えば所定電流It2よりも大きな電流)であり、抑制電流Icよりも小さな電流であることを例示することができる。
【0084】
次に、フローチャートを用いて、設定部720が行う目標電流設定処理の手順について説明する。
図17は、設定部720が行う目標電流設定処理の手順を示すフローチャートである。
設定部720は、この目標電流設定処理を、予め定めた期間(例えば1ミリ秒)毎に繰り返し実行する。
【0085】
設定部720は、加速度Apが所定値以上であるか否かを判定する(S1701)。これは、判定部123が、Ap算出部113が算出した加速度Apを取得するとともに、取得した加速度Apが所定値以上であるか否かを判定する処理である。
【0086】
加速度Apが所定値以上である場合(S1701でYes)、第2設定部724が、目標電流Itを設定する(S1702)。これは、第2設定部724が、Ap算出部113が算出した加速度Apを取得するとともに、取得した加速度Apと例えば
図16に示した制御マップとを用いて算出した値を、目標電流Itとして設定する処理である。
他方、加速度Apが所定値未満である場合(S1701でNo)、第1設定部121が、目標電流Itを設定する(S1703)。これは、第1設定部121が、Vp算出部112が算出した速度Vpを取得するとともに、取得した速度Vpと例えば
図5に示した制御マップとを用いて算出した値を、目標電流Itとして設定する処理である。
【0087】
制御装置700が、このようにして減衰装置200の減衰力を制御することで、サスペンションが最も伸長した状態になることを精度高く抑制することができる。その結果、サスペンションの減衰力のセッティングの自由度を確度高く高めることができる。
【0088】
上述のように、制御装置700は、加速度Apが大きいほど減衰力を大きくしても良い。つまり、第2設定部724が算出する目標電流Itは、加速度Apが最小値Apnより大きく最大値Apxより小さい場合には、加速度Apが大きいほど、目標電流Itが大きくしても良い。これにより、制御装置700によれば、最も伸長した状態になることを抑制する制御を行うことに起因して乗り心地が悪化することを抑制することができる。その結果、サスペンションの減衰力のセッティングの自由度を確度高く高めることができる。
【0089】
以上説明したように、懸架装置620は、車両本体10と車輪との間に生じる力を減衰させる減衰装置200を有するサスペンションを備えている。また、懸架装置620は、サスペンションの伸長方向における加速度Apが、予め定められた所定値以上である場合には、加速度Apが所定値未満である場合よりも、減衰装置200の減衰力を大きくする、減衰力制御部の一例としての第2設定部724を備えている。そして、第2設定部724は、加速度Apが大きいほど目標電流Itを大きくしても良い。つまり、第2設定部724は、加速度Apが大きいほど減衰力を大きくしても良い。これにより、懸架装置620によれば、サスペンションが最も伸長した状態になることを確度高く抑制することができる。その結果、サスペンションの減衰力のセッティングの自由度を確度高く高めることができる。また、懸架装置620によれば、最も伸長した状態になることを抑制する制御を行うことに起因して乗り心地が悪化することを抑制することができる。
【0090】
また、懸架装置620は、車両本体10と車輪との間に生じる力を減衰させる減衰装置200を有するサスペンションと、サスペンションの伸長方向における速度Vpを用いて減衰力を制御する、第1制御部の一例としての第1設定部121とを備えている。また、懸架装置620は、第1設定部121の制御による第1減衰力(第1設定部121が設定する目標電流Itによる減衰力)で、最も伸長した状態になるか否かを判定する判定部123を備えている。また、懸架装置620は、判定部123が、最も伸長した状態になると判定した場合に、前記第1減衰力よりも大きくなるように減衰力を制御する第2制御部の一例としての、第2設定部724を備えている。そして、第2設定部724は、加速度Apが大きいほど目標電流Itを大きくしても良い。つまり、第2設定部724は、加速度Apが大きいほど減衰力を大きくしても良い。これにより、懸架装置620によれば、サスペンションが最も伸長した状態になることを確度高く抑制することができる。その結果、サスペンションの減衰力のセッティングの自由度を確度高く高めることができる。また、懸架装置620によれば、最も伸長した状態になることを抑制する制御を行うことに起因して乗り心地が悪化することを抑制することができる。
【0091】
図18は、記録媒体330の概略構成を示す図である。記録媒体330は、減衰装置200の減衰力を制御する機能を、コンピュータに実現させるプログラムP3を記録した、非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体である。
図18に示すように、記録媒体330は、プログラムP3を格納する。
プログラムP3は、第1設定機能301と、判定機能303とを有している。
また、プログラムP3は、判定機能303が最も伸長した状態になると判定した場合に、減衰力制御弁240のソレノイドへと供給する、目標電流Itを設定する、第2設定機能334を有している。
第2設定機能334は、
図15に示した第2設定部724の機能を実現するモジュールである。
【0092】
以上説明したように、記録媒体330は、減衰装置200の減衰力を制御する機能を、コンピュータに実現させるプログラムP3を記録した、非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体である。記録されたプログラムP3は、減衰装置200を有するサスペンションの伸長方向における加速度Apが予め定められた所定値以上である場合には、加速度Apが所定値未満である場合よりも、減衰装置200の減衰力を大きくする機能の一例としての第2設定機能334を、コンピュータに実現させる。
ここで、第2設定機能334は、加速度Apが大きいほど目標電流Itを大きくしても良い。
【0093】
また、記録されたプログラムP3は、減衰装置200を有するサスペンションの伸長方向における速度Vpを用いて、減衰装置200の減衰力を制御する、第1制御機能の一例としての第1設定機能301を、コンピュータに実現させる。また、記録されたプログラムP3は、第1設定機能301の制御による第1減衰力で、サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを判定する機能の一例としての判定機能303を、コンピュータに実現させる。また、記録されたプログラムP3は、最も伸長した状態になると判定した場合に、前記第1減衰力よりも大きくなるように減衰力を制御する、第2制御機能の一例としての第2設定機能334を、コンピュータに実現させる。
ここで、第2設定機能334は、加速度Apが大きいほど目標電流Itを大きくしても良い。
【0094】
<第4の実施形態>
図19は、自動二輪車800の概略構成を示す図である。
図20は、設定部920の概略構成を示す図である。
自動二輪車800は、上記自動二輪車400の設定部520に代えて、設定部920を備えている点が異なる。より具体的には、設定部920は、設定部520の第2設定部124に代えて、第2設定部924を備えている点が異なる。以下、自動二輪車400と異なる点について説明する。自動二輪車400と自動二輪車800とで、同じ形状、機能を有する物については同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0095】
図19に示すように、自動二輪車800は、減衰装置21d及び減衰装置22dの減衰力を制御する制御装置900を備えている。本発明に係る懸架装置820は、サスペンション(サスペンション21及びサスペンション22)と、制御装置900とを有する装置である。
【0096】
制御装置900は、算出部110と、設定部920と、駆動部130とを備えている。
設定部920は、
図20に示すように、第1設定部121と、閾値設定部522と、判定部523とを備えている。
また、設定部920は、判定部523が最も伸長した状態になると判定した場合に、減衰力制御弁240のソレノイドへと供給する、目標電流Itを設定する、第2設定部924を有している。第2設定部924は、
図15に示した第2設定部724と同様に構成されている。
【0097】
次に、フローチャートを用いて、設定部920が行う目標電流設定処理の手順について説明する。
図21は、設定部920が行う目標電流設定処理の手順を示すフローチャートである。
設定部920は、この目標電流設定処理を、予め定めた期間(例えば1ミリ秒)毎に繰り返し実行する。
【0098】
設定部920は、先ず、閾値THを設定する(S2101)。これは、上記S1201と同様の処理である。そして、設定部920は、加速度Apが、S2101にて設定した閾値TH以上であるか否かを判定する(S2102)。これは、上記S1202と同様の処理である。
【0099】
加速度Apが閾値TH以上である場合(S2102でYes)、第2設定部924が、目標電流Itを設定する(S2103)。これは、第2設定部924が、Ap算出部113が算出した加速度Apを取得するとともに、取得した加速度Apと例えば
図16に示した制御マップとを用いて算出した値を、目標電流Itとして設定する処理である。
【0100】
他方、加速度Apが閾値TH未満である場合(S2102でNo)、第1設定部121が、目標電流Itを設定する(S2104)。これは、上記S1204と同様の処理である。
【0101】
制御装置900が、このようにして減衰装置200の減衰力を制御することで、サスペンションが最も伸長した状態になることを精度高く抑制することができる。その結果、サスペンションの減衰力のセッティングの自由度を確度高く高めることができる。
【0102】
ここで、制御装置700の第2設定部724と同様に、制御装置900の第2設定部924は、加速度Apが大きいほど減衰力を大きくしても良い。これにより、制御装置900によれば、最も伸長した状態になることを抑制する制御を行うことに起因して乗り心地が悪化することを抑制することができる。その結果、サスペンションの減衰力のセッティングの自由度を確度高く高めることができる。
【0103】
以上説明したように、懸架装置820は、車両本体10と車輪との間に生じる力を減衰させる減衰装置200を有するサスペンションと、サスペンションの伸長方向における加速度Apが予め定められた所定値の一例としての閾値TH以上である場合には、加速度Apが閾値TH未満である場合よりも、減衰装置200の減衰力を大きくする減衰力制御部の一例としての第2設定部924と、を備える。そして、第2設定部924は、加速度Apが大きいほど目標電流Itを大きくしても良い。つまり、第2設定部924は、加速度Apが大きいほど減衰力を大きくしても良い。これにより、懸架装置820によれば、サスペンションが最も伸長した状態になることを確度高く抑制することができる。その結果、サスペンションの減衰力のセッティングの自由度を確度高く高めることができる。また、懸架装置820によれば、最も伸長した状態になることを抑制する制御を行うことに起因して乗り心地が悪化することを抑制することができる。
【0104】
また、懸架装置820は、車両本体10と車輪との間に生じる力を減衰させる減衰装置200を有するサスペンションと、サスペンションの伸長方向における速度Vpを用いて減衰力を制御する、第1制御部の一例としての第1設定部121とを備えている。また、懸架装置820は、第1設定部121の制御による第1減衰力(第1設定部121が設定する目標電流Itによる減衰力)で、サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを判定する判定部523を備えている。また、懸架装置820は、判定部523が、サスペンションが最も伸長した状態になると判定した場合に、前記第1減衰力よりも大きくなるように減衰力を制御する、第2制御部の一例としての第2設定部924を備えている。そして、第2設定部924は、加速度Apが大きいほど目標電流Itを大きくしても良い。つまり、第2設定部924は、加速度Apが大きいほど減衰力を大きくしても良い。これにより、懸架装置820によれば、サスペンションが最も伸長した状態になることを確度高く抑制することができる。その結果、サスペンションの減衰力のセッティングの自由度を確度高く高めることができる。また、懸架装置820によれば、最も伸長した状態になることを抑制する制御を行うことに起因して乗り心地が悪化することを抑制することができる。
【0105】
図22は、記録媒体340の概略構成を示す図である。記録媒体340は、減衰装置200の減衰力を制御する機能を、コンピュータに実現させるプログラムP4を記録した、非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体である。
図22に示すように、記録媒体340は、プログラムP4を格納する。
プログラムP4は、第1設定機能301と、閾値設定機能322と、判定機能323と、第2設定機能334とを有している。
【0106】
以上説明したように、記録媒体340は、減衰装置200の減衰力を制御する機能を、コンピュータに実現させるプログラムP4を記録した、非一時的なコンピュータ読取可能な記録媒体である。記録されたプログラムP4は、減衰装置200を有するサスペンションの伸長方向における加速度Apが予め定められた所定値の一例としての閾値TH以上である場合には、加速度Apが閾値TH未満である場合よりも、減衰装置200の減衰力を大きくする機能の一例としての第2設定機能334を、コンピュータに実現させる。また、記録されたプログラムP4は、ストローク量Rpが小さいほど閾値THが小さくなるように閾値THを設定する閾値設定機能322を、コンピュータに実現させる。また、記録されたプログラムP4において、第2設定機能334は、加速度Apが大きいほど減衰力を大きくすると良い。
【0107】
また、記録されたプログラムP4は、減衰装置200を有するサスペンションの伸長方向における速度Vpを用いて減衰装置200の減衰力を制御する、第1制御機能の一例としての第1設定機能301を、コンピュータに実現させる。また、記録されたプログラムP4は、第1設定機能301の制御による第1減衰力で、サスペンションが最も伸長した状態になるか否かを判定する機能の一例としての判定機能323を、コンピュータに実現させる。また、記録されたプログラムP4は、サスペンションが最も伸長した状態になると判定した場合に、前記第1減衰力よりも大きくなるように減衰力を制御する、第2制御機能の一例としての第2設定機能334を、コンピュータに実現させる。
ここで、判定機能323は、加速度Apが閾値TH以上である場合に、サスペンションが最も伸長した状態になると判定しても良い。そして、記録されたプログラムP4は、ストローク量Rpが小さいほど閾値THが小さくなるように閾値THを設定する閾値設定機能322を、コンピュータに実現させる。また、記録されたプログラムP4において、第2設定機能334は、加速度Apが大きいほど減衰力を大きくすると良い。
【解決手段】懸架装置は、車両本体と車輪との間に生じる力を減衰させる減衰装置を有するサスペンションと、サスペンションの伸長方向における、車両本体に対する車輪の基準位置からの変位量であるストローク量の変化の加速度Apが、予め定められた所定値以上である場合には、加速度Apが所定値未満である場合よりも減衰装置の減衰力を大きくする第2設定部124と、を備える。