特許第6378418号(P6378418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6378418工作物を回転させるための回転ユニットを備える装置、及び加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378418
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】工作物を回転させるための回転ユニットを備える装置、及び加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/00 20060101AFI20180813BHJP
   B24B 29/00 20060101ALI20180813BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20180813BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B23Q7/00 D
   B24B29/00 E
   B24B41/06 B
   B24B9/00 601B
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-504349(P2017-504349)
(86)(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公表番号】特表2017-525572(P2017-525572A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】EP2015075074
(87)【国際公開番号】WO2016071188
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2017年1月27日
(31)【優先権主張番号】102014116017.7
(32)【優先日】2014年11月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508075937
【氏名又は名称】リスマック マシーネンバウ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クルメナウアー ステファン
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−067713(JP,A)
【文献】 特開2011−256043(JP,A)
【文献】 特開平03−216416(JP,A)
【文献】 特開2005−022871(JP,A)
【文献】 実開昭58−131219(JP,U)
【文献】 国際公開第2012/032265(WO,A1)
【文献】 米国特許第4867298(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0180142(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00
B24B 9/00
B24B 29/00
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物(6)を回転させるための回転ユニット(14)を備える装置(13)であって、
前記回転ユニット(14)は、
接触手段(18)を有する駆動可能に移動可能な回転体であって、前記接触手段(18)が、前記回転体の移動に伴って曲線状の移動経路(23)に沿って移動可能である、回転体と、
回転動作中に前記工作物(6)を案内するための案内機構であって、回転動作中に前記工作物(6)が前記移動経路(23)に沿って搬送可能に、前記接触手段(18)が前記回転動作中に前記工作物(6)に圧接するように移動可能となるように、前記移動経路(23)に沿って前記接触手段(18)に隣接して実現される、案内機構と
を備え
前記回転体(15)は、回転軸を中心に回転可能であり、前記接触手段の放射状に延在する接触要素(18)を周縁部に有して実現され、
前記接触手段は、複数の長尺状放射要素を備え、
前記放射要素は、前記回転体の径方向に対して前記回転体の移動方向に傾斜している
ことを特徴とする装置(13)。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記回転ユニット(14)は、板状の金属工作物(6)を回転させるように実現されている
ことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置であって、
前記回転ユニット(14)は、約20ミリメートルから約280ミリメートルの範囲内である幅寸法及び長さ寸法を備え、約1ミリメートルから約20ミリメートルの範囲内である厚さ寸法を備える、板状の金属工作物(6)を回転させるように設計されている
ことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記回転体(15)は、軸を中心に回転駆動可能な円筒状の回転体(15)である
ことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記案内機構は、駆動されて移動可能である
ことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記案内機構は、駆動されて周回するベルト要素(24)を備える
ことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記放射要素は、径方向に対して約15度で配列されて存在している
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1〜のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記複数の長尺状放射要素は、凹むように構成されてい
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1〜のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記複数の長尺状放射要素は、放射要素の複数の束を備え、該複数の束の各々は、複数の放射要素から形成されている
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1〜のうちのいずれか1つに記載の装置であって、
前記複数の長尺状放射要素は、束の形態で存在していない複数の放射要素を含む
ことを特徴とする装置。
【請求項11】
工作物(6)の表面を自動加工するための加工装置(1)であり、前記加工装置(1)の加工経路に沿って前記工作物(6)を移動させるための搬送経路(11、12)と、前記工作物(6)に作用するために駆動されて移動可能な加工ユニット(2〜5、9)とを備える加工装置(1)であって、
請求項1〜10のうちのいずれか1つに記載された装置(13)が、前記工作物(6)の上面(6a)を自動加工するための第1の加工ユニット(2、3)と、前記工作物(6)の底面(6b)を自動加工するための第2の加工ユニット(4、5)との間にある
ことを特徴とする加工装置(1)。
【請求項12】
請求項11に記載の加工装置(1)であって、
前記工作物(6)は、板状の金属工作物(6)である
ことを特徴とする加工装置(1)。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の加工装置(1)であって、
前記加工装置(1)は、工作物の縁部を面取りするための、及び/又は工作物の表面(6a、6b)を研磨するための加工装置である
ことを特徴とする加工装置(1)。
【請求項14】
請求項11〜13のうちのいずれか1つに記載の加工装置(1)であって、
前記加工ユニット(2〜5、9)は、前記加工装置(1)の鉛直方向に可変に調整可能であるが、加工動作に関しては固定的に調整可能である
ことを特徴とする加工装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[従来技術]
例えば研磨による、工作物の、例えば板状の金属工作物の、加工の自動化度は、現在の設備においてより一層高められている。基本的には、工作物のすべての表面、具体的には平坦な上面及び底面は、標準的な同一の方法で加工する必要があり、その結果、アクセス可能とされる必要がある。これまでは、約280ミリメートルまでの最大縁部長さを有する様々な構成を有する工作物を、人間による監督無しで、確実に回転させることが可能ではなかった。したがって、工作物の上面を加工するための第1の加工工程の後に、それに続く工作物の底面の加工のために工作物が回転されることを確認するため、人間をその場に居合わせることが必要である。これは、不経済であったり、労力を要するので、工作物の加工の自動化度を高めることにおいて不利である。
[本発明の目的と利点]
本発明の目的は、例えば板状の金属工作物などの、工作物の表面の加工を、より効果的となるように設計することである。具体的には、約20ミリメートルから約280ミリメートルの間である端部長さを有する工作物の表面についての完全な加工の自動化度を高められる。
【0002】
上記目的は、独立請求項によって達成される。
従属請求項は、本発明の有利な変形例に関する。
本発明は、工作物を回転させるための回転ユニットを備える装置に起因する。
【0003】
これまで行われてきたアプローチは、例えば、工作物を、下方が開放されているショルダー部まで移動させて、それによって、工作物の自重で支持されている工作物が強制的に傾けられ、工作物を回転させる目的で、工作物が、ショルダー部より下方に位置する表面上に置かれる。しかしながら、この回転は、整っている条件が常に再現可能又は同じである場合のみに機能する。この成功は、具体的には、工作物がショルダー部に接近するときの工作物の移動速度や、形状、寸法、配置、重心や、また、工作物の材料の総重量に依存する。
【0004】
本発明の主要部は、回転ユニットが、接触手段を有する駆動されて移動可能な回転体であって、該接触手段が、回転体の移動に伴って曲線状の移動経路に沿って移動可能である、回転体と、回転動作中に工作物を案内するための案内機構であって、回転動作中に工作物が移動経路に沿って搬送可能に、接触手段が回転動作中に当該工作物に圧接するように移動可能となるように、移動経路に沿って接触手段に隣接して実現される、案内機構と、を備えることである。この結果、対応する工作物は、確実に、かつ、例外なく完全に自動的に回転可能である。
【0005】
有利な方法では、回転ユニットは、板状の金属工作物を回転させるように実現される。
有利な方法では、工作物の移動は、接触手段と接する主面側を用いて、回転動作全体にわたって案内される。このことは、本発明によれば、本発明に係る回転ユニットの予め決定可能な設計制限内である、工作物のあらゆる形状及び寸法について、例外なく達成される。開放空間へ降下する移動については、点又は線についての傾きが無いので、その結果、不特定な移動状態がもたらされる。
【0006】
工作物は、回転のときに、移動経路の一部、あるいは、具体的には移動経路全体にわたって、一方では、接触手段と工作物との間、他方では、案内機構と工作物との間の相互作用を利用して所定の方法で常に移動され、その結果、望まれない空間的な配置を取ることができない。回転動作中、工作物は、関連する主面側又は上面の全体について、具体的には、回転動作の前に工作物の底面を形成する表面全体について、妨げられることなく、また有利には接触手段と接触して、留まる。基本的には、接触手段は、工作物の関連する主面側の表面全体には当接しないが、例えば、多くの特定の平面状及び/又は線状の接触点に沿って、均一に分布する複数の点又は領域に、部分的に当接する。
【0007】
基本的には、接触手段の端部によって工作物との接触をもたらすことができ、該接触手段の端部は、無負荷の基本状態で、又は工作物と接触することなく、好適には、閉じた面又は曲面、例えば、幾何学的に規則的に形成される面の内側に、具体的には回転体の円筒状の切断された側面の内側に、位置する。回転動作中、工作物は、引き取られた工作物のための移動経路に沿って搬送されるが、この引き取られた工作物のための移動経路も、回転体が移動する場合の上記面の構成によって特定される。接触手段は、回転体にて工作物を受けて保持する機能を果たす。
【0008】
本発明によれば、工作物の平坦な主面側は、例えば、主面側の表面が上方に向けられる水平な配置から下方に向けられる水平な配置へと、水平軸を中心にして180度回転されて配置され得る。それとは逆に、回転動作前に下方に向けられていた工作物の主面側は、上面となって次の工程のためにアクセス可能となるように、上方に回転される。
【0009】
工作物の基本的な形状は、多くの場合、4つの角部又は複数の角部を有する、及び/又は、湾曲した縁の構成を有する。基本的には、平坦な両主面側間における工作物の材料厚は一定である。厚さ寸法については狭く実現されており、通常は主面側に対して直角をなす幅狭の側面は、工作物の厚み方向において、平坦な両主面側間に、すなわち上面と底面との間に、形成される。
【0010】
工作物の規定された移動は、回転ユニットによって生じ、該工作物は、回転移動と重なって、鉛直方向に、具体的には下方へ、移動する。工作物の回転移動が終了すると、当該工作物は、完全に回転されて、回転動作を開始する直前の状態、又は、回転ユニットによる工作物の引き取り移動の開始時の状態よりも、鉛直方向における下方に、垂直にオフセットされて配置されることが有利である。
【0011】
上記装置又は回転ユニットは、具体的には、表面を加工するための加工装置の2つのユニットの間に存在し得る。この場合、工作物は、工作物が受容された位置から工作物が取り除かれる位置まで搬送され得る。この2つの位置の間で、加工装置が通過することによって、上方からアクセス可能な表面領域又は上面が加工され、その後、本発明に係る回転装置による回転動作の後、上方を向くように回転された表面領域が加工され、この結果、工作物のすべての表面が加工のために自動的に供給される。
【0012】
案内機構は、具体的には、接触手段に隣接又は対向して、回転される工作物の厚さの範囲内の間隔分、接触手段から離間して配置されている。例えば、回転のときに工作物に作用する重力に起因するような、考慮されるべき、回転体の外側へ又は離れる方向への工作物の移動は、案内機構によって回避又は阻止することが可能である。具体的には、案内機構は、曲線状の移動経路の長さにわたって、接触手段から一定の又はほぼ一定の間隔が空けられている。具体的には、案内機構は、回転体によって引き取られた工作物の移動経路の少なくともほぼ全体において、径方向外側に間隔を空けて存在する。
【0013】
接触手段は、当該接触手段自体が幾分凹み、数センチメートルまでの、具体的には約20ミリメートルまでの、数値範囲内である厚さを備える工作物を回転させることができるように調整される。
【0014】
回転中、工作物は、回転動作全体にわたって接触手段と圧接したままであることが有利である。
案内機構は、曲線状の移動経路の全長にわたって、具体的には、平坦かつ曲線状に実現されている。この結果、工作物の一方の側において、当該工作物は、接触手段によって回転体に接触して引き取られ、また、他方の側において、案内機構によって、工作物が該接触手段から外れる又は傾き離れることが防止される。
【0015】
回転ユニットは、幅寸法及び長さ寸法が約20mmから約280mmの範囲内であり、厚さ寸法が約1mmから約20mmの範囲内である、板状の金属工作物を回転させるように設計されているとさらに有利である。したがって、工作物の長さ×幅×厚さとそのあらゆる中間寸法に言及する、最小寸法が約20mm×20mm×1mmから最大寸法が約280mm×280mm×20mmの工作物に関して、上記装置は、有益な又は効果的な寸法を有する。
【0016】
正確には、板状の金属工作物の大きさが上記寸法の場合は、これまで、自動化された方法で工作物を確実に回転させることが可能ではなかった。
さらに、回転ユニットは、軸を中心に回転駆動可能な円筒状の回転体を備えることが有利である。極めて小型で信頼性を有し、かつ、連続的に動作可能な回転機構は、円筒状又はローラ状回転体を用いて実現可能である。回転速度、及び、必要に応じて、回転方向も、例えば電気モータのような、回転ローラの回転に関連付けられた駆動ユニットによって調整可能である。円筒状の回転体は、円筒状の表面を有する内側円筒状ローラ基本体を備えることが有利であって、その外周には、外側を向くように又は外側に突出するように、接触手段が取り付けられている。接触手段の径方向外側の端部は、円筒状の回転体の外側寸法、すなわち外径、を形成する。
【0017】
案内機構は、駆動されて移動可能であると有利である。具体的には、案内機構は、アーチ状の面要素である。案内機構の周回速度は、具体的には、駆動手段を用いて可変に調整可能である。具体的には、案内機構の上記速度は、ローラ状回転体の外側における周回速度に相当する。それゆえ、工作物と案内機構との相対的な移動を避ける又は最小にとどめることができるので、その結果として、摩擦損失が好適に低減される。案内機構は、具体的には、接触手段の曲線状の移動経路に沿って、一定の間隔を空けて実現される。円筒状の回転体がある場合は、案内機構は、円筒状回転ユニットの外表面の外周の、約180度にわたって又は半周にわたって、存在することが有利である。案内機構は、具体的には、ローラの周回方向におけるローラの上方の挿入領域と、回転された工作物を送出するための下方の送出領域との間において実現される。したがって、接触手段によって形成される、円筒状の周方向側面を有する回転ローラの場合には、案内機構は、回転ローラの周方向側面の半分にわたって、半分がシェルの形態で実現される。
【0018】
また、案内機構は、駆動式周回ベルト要素を備えることが有利である。具体的には、案内機構は、連続的に周回するベルト、又は、リングの形態で閉じられて案内されるベルトであってもよい。ベルト要素に、張力装置が設けられ、張力装置を用いてベルトの最適な張力を設定することが可能であることが有利である。
【0019】
本発明の有利な変形例によれば、回転ユニットは、回転体を備え、該回転体は、回転軸を中心に回転可能であり、周縁部において、放射状に延在する、接触手段の接触要素を有して実現される。具体的には、接触要素は、均一に配置され、ローラ状の回転体の外周全体及び幅全体にわたって、その外側にて実現される。例えば、接触要素は、異なる好適な材料で構成してもよく、異なる形状又は寸法を備えてもよい。1つの回転体におけるすべての接触要素が、互いに同一であることが有利である。しかしながら、1つの回転体における異なる接触要素の組合せは除外されない。
【0020】
回転体の異なる設計については、回転体は、交換可能に、好適な方法で回転装置上に受容される。例えば、接触要素は、例えばブリッスル状又は薄板状要素等のような、同一の種類の、複数の細長い薄板状の要素を含んでもよい。薄板の表面は、具体的には、回転体の回転軸に対して平行に又は角度をなして配置され得る。
【0021】
接触手段は、複数の長尺状放射要素を含むことが有利である。放射要素は、例えば、繊維状、ブリッスル状、又は棒状であってもよい。工作物が受け取られる最初の接触から、工作物は、放射要素によって、好適に、把持され、取り込まれ、また保持され得る。
【0022】
具体的には、長尺状放射要素は、ブリッスル状の放射要素又は接触ブリッスルである。具体的には、すべての放射要素が均一に又は一様に実現される。放射要素は、具体的には、屈曲可能であり、弾性を有し、あるいは、剛性を有して、自己再設定する。このため、具体的には、別の塑性材料、金属材料、又は複合材料を用いることが可能である。
【0023】
放射要素の外形は、具体的には、1ミリメートル未満から約1又は2ミリメートルの範囲内の直径を有する円筒形状である。放射要素の典型的な長さ寸法は、例えば、約10から20センチメートル以上である。
【0024】
回転体上の放射要素の分布、厚さ、又は、総数は、回転装置の設計又は工作物に依存する。
さらに、放射要素は、回転体の移動方向にそれぞれの長手軸を有し、回転体において角度をなして傾斜しており、好ましくは、径方向に対して、約10度から20度、具体的には約15度で配列されて存在することがとりわけ有利である。上記径方向は、回転体又はローラ本体の回転軸を基準とする。上記15度は、放射要素の径方向内側の脚部又は径方向内側の端部を基準とする。また、上記15度は、作動のため又は回転体に接近するように移動される工作物を受けるために、回転ユニットに少ない力を用いればよいので、とりわけ有利である。
【0025】
具体的には、すべての放射要素が、対応するように15度の角度で配置される。放射要素は、少なくともその前方自由端が、屈曲可能又は折り曲げ可能であることが有利である。
【0026】
また、接触手段は、凹むように構成されている複数の長尺状放射要素を備えることも有利である。したがって、接触手段又は放射要素と、工作物との間が、とりわけ効果的に粘着又は接着して接触され得る。例えば突部及び/又は凹部などの輪郭を有する工作物の場合は、結果として放射要素もその輪郭によって画定される領域に接触して又は圧接して移動するので、そのような工作物でさえ移動経路に沿って確実に取り込み、保持し、移動させることができる。
【0027】
さらに、接触手段は、各束が複数の放射要素から形成される複数の放射要素の束を含む、複数の長尺状放射要素を含むことが有利である。上記放射状の束によって、とりわけ効果的に工作物を保持して接触することができ、また、工作物の表面に対してとりわけ可変に粘着することができる。具体的には、上記束のすべては、同様に互いに離間される。具体的には、1つの回転体上の放射要素の束はすべて、同数の個別の放射要素から形成される。
【0028】
複数の放射要素は、例えば、回転体の基本体における円筒状の側面にある対応する穴に挿入されて、固定され得る。
しかしながら、接触要素は、束の形態で存在していない複数の長尺状放射要素から形成されてもよい。
【0029】
本発明は、また、工作物の、好ましくは板状の金属工作物の、表面を自動加工するための、具体的には工作物の角部を面取りするため及び/又は工作物の表面を研磨するための、加工装置であって、当該加工装置の加工経路に沿って工作物を移動させるための搬送経路と、工作物に作用するために駆動されて移動可能な加工ユニットとを有する加工装置に関する。加工装置は、具体的には、研磨研削体を用いて、工作物を研磨するための、面取り及び/又は研磨装置である。これらの種の装置は、例えば、板状の金属工作物を例えば溶接加工又はレーザ切削加工した後に、当該工作物に例えば艶出しなどのさらなる加工がなされる前に、バリやドロスを除去するため及び縁部を丸み付けするために必要である。
【0030】
本発明に係る加工装置の本質的な局面は、上記で説明した装置が、工作物の上面又は第1の主面側を自動加工するための第1の加工ユニットと、工作物の底面又は第2の主面側を自動加工するための第2の加工ユニットとの間に存在することである。これによって、とりわけ、長さ×幅×厚さの最大寸法が280×280×20mmである平板状の工作物の場合、金属工作物の表面全体の加工が、完全に自動的かつ連続的に達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明のさらなる特徴及び利点は、図面において概略的に示された本発明の例示的な実施形態を用いてより詳細に説明される。図面の詳細は以下のとおりである。
図1】金属工作物を自動加工するための、本発明に係る加工装置の部分斜視図を示している。
図2】上記装置の個々の要素を省略して、図1における構成の側面からの断面図を示している。
図2a図2における円形領域Aに係る拡大断面図を示している。
図3】ハウジング部を透明にして、図1における構成に係る、本発明に係る回転装置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明に係る加工装置1を断面斜視図にて極めて概略的に示しており、この加工装置1は、縁の丸み付け装置として実現され、金属工作物6を自動加工するための連続的動作をするように設計されている。加工装置1は、具体的には、例えば、約20×20×1ミリメートル(長さ×幅×高さ又は厚さ)から約200×200×20ミリメートルまでの範囲内の寸法を有し、鋼材から形成された板状の平らな外形を加工するのに適している。工作物は、例えば厚板であって、例えばつや出しなどの工作物のさらなる加工のために除去されねばならない、尖った縁がある表面や縁部の構成を含む、例えば溶接、切削及び分離、又はレーザ処理がなされた後の厚板であり得る。この除去は、工作物6の表面を自動的に機械研磨する、あるいは、工作物6の角を面取り又は丸み付けする、材料の除去加工によって達成される。工作物6のあらゆる表面領域又は縁部領域が完全に加工されなければならないので、第1の主面側6a(図2参照)が一旦加工されたら、当該工作物6を回転させる必要があり、それによって、第1の加工工程中は、接触面に又は反対側に位置する第2の主面側6bに支持されている工作物6によって、隠されていた表面領域も、表面加工のためにアクセス可能あるいは解放される。工作物6を回転させるために、加工装置1は、本発明に係る、回転ユニット14を有する回転装置13を備える。
【0033】
加工装置1は、工作物を搬送するためにある上側の周回供給ベルト11の上方に、2つの回転ローラ状研磨要素2及び3を備え、工作物を搬送するためにある下側の周回供給ベルト12の上方に、2つの回転ローラ状研磨要素4及び5を備える。互いに平行にオフセットしている研磨要素2及び3は共に、供給ベルト11に対して研磨要素2及び3が所望の位置となるように、供給ベルト11の周回方向に沿って、供給ベルト11の走行方向に対して平行に、角度をなして、あるいは、横断する方向に、垂直軸について調整可能である。それに対応して、研磨要素4及び5は、供給ベルト12に対して調整可能である。図1では、研磨要素2及び3、又は、研磨要素4及び5は、それぞれの供給ベルト11又は12の走行方向に対して角度をなしている。
【0034】
研磨要素2及び3、又は、研磨要素4及び5を用いる工作物6の加工は、当該工作物6が、上側の供給ベルト11上に載置されて搬送方向P1に移動される、及び、下側の供給ベルト12上に載置されて搬送方向P2に移動される、工作物6の搬送移動中において、供給ベルト11及び12上の工作物6の供給経路に沿って行われる。いずれも水平軸を中心に回転駆動される回転可能な研磨要素2〜5はすべて、具体的には、例えば縁部を丸み付けするための研磨モップ装置として実現される。
【0035】
いずれの場合においても、搬送方向P1又はP2に対して横断する方向に駆動される、周回研磨ベルト10を備える断面加工ユニット9が、搬送方向P1における研磨要素2及び3の前方に、また、搬送方向P2における研磨要素4及び5の前方に、若干距離を置いて存在する。断面加工ユニット9は、工作物6の粗い突部又はバリを除去するのに用いられる。
【0036】
加工装置1は、2本の平行な鉛直支柱7を有するフレームを備え、該鉛直支柱7の間に壁部7aが延在する。互いに交差して接続され、それらを用いて加工装置1を床領域に設置することが可能な、水平に配置された3つの脚部支柱8は、底部で支柱7に接続している。
【0037】
電気モータは、加工装置1の供給ベルト11及び12のための駆動手段19として機能する。該電気モータは、複数のローラの回りを案内される駆動ベルト20を周回駆動し、ひいては、駆動ベルトは、供給ベルト11及び12、並びに、以下において再度さらに説明される周回案内ベルト24も駆動する。
【0038】
2つの断面加工ユニット9、さらに、2つの上側の研磨要素2、3、及び、2つの下側の研磨要素4、5は、いずれも、加工装置1の鉛直方向Vに可変に調整可能であるが、加工動作に関しては固定的に調整可能である。これは、具体的には、工作物6の材料厚や形状又は輪郭に依存する、工作物6の表面における研磨要素2〜5の研磨の深さを一致させるためである。
【0039】
供給ベルト11上で断面加工ユニット9並びに研磨要素2及び3によって上面側の加工を受ける供給ベルト11上の工作物6が、その底面も加工され得るように、本発明に係る回転装置13には、回転ユニット14が設けられている。回転ユニット14は、モータ駆動される回転ローラ15として実現される回転体を備える。回転ローラ15は、軸Rを中心に回転方向U(図3参照)に回転する。回転装置13は、鉛直方向にオフセットされた供給ベルト11と12との間の鉛直方向の空間に、上側の供給ベルト11と下側の供給ベルト12との間に存在する。
【0040】
回転装置13は、移動方向P1における供給ベルト11の後端で、回転ローラ15の上方周縁挿入領域16において、回転ローラ15によって供給ベルト11から工作物6を受ける。
【0041】
回転ローラ15が方向Uに回転することによって、工作物6は、回転ローラ15の外周上の半円状の移動経路23に沿って下方に搬送される。工作物6は、下方側の送出領域17内に進められ、水平軸を基準としてあるいは供給ベルト11上の状態を基準として180度回転されて、搬送方向P2に移動する下側の供給ベルト12へと進められる。供給ベルト12上に載置された回転後の工作物6は、まず、下方側の断面加工装置9を通過するように案内されて、当該装置に加工され、その後、広範囲にわたる表面処理のために、下方側の回転研磨要素4、5を通過する。これによって、工作物6のこれまで未加工であった表面は、研磨要素4、5の下方を通過すると完全に加工される。
【0042】
極めて概略的な図によれば、回転ローラ15には、複数の接触手段が設けられており、該複数の接触手段は、本明細書では、一例として、同一種類の接触薄板18として実現されている。回転方向Uに対して横断する方向に配列されている接触薄板18の代替として、回転ローラ15には、他の接触手段、具体的には、例えば接触ブリッスル等のような、細長の放射要素が設けられてもよく、該接触ブリッスルは、複数の個別のブリッスルが組み合わされて各束が形成される複数のブリッスル束として存在すると有利である。接触薄板18又は接触ブリッスルは、回転ローラ15のローラ本体部21の外周全体及び軸方向の外表面に、均等に又は規則的に分布して存在する。
【0043】
回転ローラ15の外周は、供給ベルト11及び12との間の鉛直方向の空間に適合されており、該回転ローラ15は、その内部に円筒状のローラ本体部21を備える。該ローラ本体部21の円筒形状の中心軸は、回転駆動可能な回転ローラ15のピボット軸受構成のための回転軸Rと一致する。
【0044】
図2及び図2aに具体的に図示されているように、接触薄板18は、ローラ本体部21の外側に、その円筒状の側面21aの全体にわたって、同様に配列されて存在している。側面21aにおける接触薄板18のそれぞれの脚部を参照すると、接触薄板18は、直線Sに沿って軸Rに対して正確に放射状をなす配列とは対照的に、回転ローラ15の回転方向Uの方向に約15度の角度αで傾斜されている(図2a参照)。これによって、接触薄板18が正確に放射状に配列されている場合に比べて、挿入領域16において工作物6を受けるときに回転ローラ15によって印加されるトルクが低減される。図2aは、図面をより明確にするために、1つの接触薄板18のみを単独で示している。
【0045】
それに対応して、ブリッスルを有する回転ローラ15の代替実現例の場合には、回転ローラ19の接触ブリッスル又はブリッスル束も、放射状の配列に対して、回転方向Uに約15度で傾斜されて配列されていると有利である。
【0046】
配列された接触薄板18によって、接触手段が工作物6を下方から押圧し、当該工作物を固定しながら、上側の供給ベルト11の端部から工作物6を最適に取り込むことができる。可撓性を有し、屈曲可能な、又は剛性を有する接触手段は、移動して、挿入領域16で工作物6に接触し、曲線状の移動経路23に沿って領域16から領域17までの移動する間、当該工作物を保持する。この場合、工作物6は、必要に応じて、接触手段内に若干沈み込むが、これは、工作物6の位置決め及び保持について好適である。これによって、工作物6は、回転動作中、所定の位置に留まる。
【0047】
回転ローラ15が下方に傾斜された移動経路23に沿って回転する場合に工作物6が外側又は下方に傾くことがないように、接触手段又は接触薄板18の自由端に対向する外側に、移動経路23に沿って案内機構が存在しており、該案内機構は、周回する案内ベルト24として構成されており、挿入領域16及び送出領域17から、又は、供給ベルト11,12から離れている側の回転ローラ15の半周にわたって、挿入領域16から送出領域17まで延在している。
【0048】
方向P3に周回駆動される案内ベルト24は、例えば駆動手段19によって駆動される駆動式駆動ローラ25を含む複数のローラに沿って案内される。
回転ローラ15が、回転ユニット14の固定ハウジング27に対して水平方向H(図3参照)にわずかに変位して移動可能となるように、回転ローラ15は、予張力がかけられたばね28によって、回転軸Rの領域においてハウジング27に弾性的に受容される。これによる安全面での効果が得られるのは、例えば、使用者が、回転ローラ15と周囲の案内ベルト24との間に詰まるであろう過度に大きな工作物を挿入した場合に、変位可能に取り付けられた回転ローラ15が所定の値で変位して、「工作物過大」という情報とともに加工装置1が停止される場合である。
【0049】
また、張力装置26は、案内ベルト24のベルト張力を調節するために設けられる。
研磨要素2,3を有するユニット、研磨要素4,5を有するユニット、並びに、断面加工ユニット9は、いずれも、壁部7aに対して、鉛直方向Vに調整可能であることが有利である。
【0050】
また、周回する搬送ベルトが一定の張力下で作動するように、当該搬送ベルトが張力装置を備えると有利である。
また、回転装置13が旋回して離れ得るように構成されていると、それによって、加工装置1の残りの部分が、回転作業が無くとも、少なくとも平面上で適切に作動することができることになり、さらに、例えば、回転装置13の設計外である大形の工作物をも加工することができるので有利である。
【符号の説明】
【0051】
1…加工装置、2…研磨要素、3…研磨要素、4…研磨要素、5…研磨要素、6…工作物、6a,6b…主面側、7…供給ベルト、7a…壁部、8…支柱、9…断面加工ユニット、10…研磨ベルト、11…供給ベルト、12…供給ベルト、13…回転装置、14…回転ユニット、15…回転ローラ、16…挿入領域、17…送出領域、18…接触薄板、19…駆動手段、20…駆動ベルト、21…ローラ本体部、21a…側面、22…ばね要素、23…移動経路、24…案内ベルト、25…駆動ローラ、26…張力装置、27…ハウジング、28…ばね。
図1
図2
図2a
図3