(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
第1の態様では、本発明は、シリコーン組成物であって、少なくとも、
(A)オルガノシクロシロキサンを含むオルガノポリシロキサンと、
(B)少なくとも2つの架橋基Xを含むオルガノシランと、
(C)少なくとも2つの架橋基Xを含むオルガノシリコーン樹脂と、を含み、
オルガノシラン(B)及びオルガノシリコーン樹脂(C)のうちの少なくとも一方が、少なくとも3つの架橋基を含む、シリコーン組成物を提供する。
【0005】
該シリコーン組成物は、コンクリート等の基材の被覆における使用のための、シリコーン被覆組成物であり得る。
【0006】
一実施形態では、該シリコーン組成物は、少なくとも、
(A)オルガノシクロシロキサンを含み、成分(A)、(B)、及び(C)の合計重量に基づいて、10重量%〜80重量%の範囲である、オルガノポリシロキサンと、
(B)少なくとも2つの架橋基Xを含み、成分(A)、(B)、及び(C)の合計重量に基づいて、10重量%〜80重量%の範囲である、オルガノシランと、
(C)オルガノシリコーンが、成分(A)、(B)、及び(C)の合計重量に基づいて、10重量%〜80重量%の範囲である、少なくとも2つの架橋基Xを含む、オルガノシリコーン樹脂と、を含む。
【0007】
誤解を避けるために、成分(A)、(B)、及び(C)の合計重量は、これらの3つの成分の割合の判定の目的のために、総計100重量%となる。シリコーン組成物は、成分(A)、(B)、及び(C)の割合を計算する際に考慮されない、下記に記載の他の成分をさらに含み得る。
【0008】
別の実施形態では、架橋基Xは独立して、ケイ素、ヒドロキシル、アクリレート、アシル、アシルオキシ、ケトオキシム、アルケニル、アルコキシ、エポキシ、アミン、メルカプト、及びメタクリレートに直接結合した、水素を含む群のうちの1つ以上から選択される。
【0009】
さらに別の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、オルガノシクロシロキサン環中に3〜10個のケイ素原子を有するオルガノシクロキサンを含み得る。オルガノシクロシロキサンのシクロシロキサン環は、同じまたは異なる置換または非置換有機ラジカルで置換される。好適な有機ラジカルの例は、下記に提供される本用語の定義において提供される。好ましくは、オルガノシクロシロキサンは一般式(6)のものであり得、
【0011】
式中、R
13及びR
14は、独立して、置換または非置換有機ラジカルであり、fは3〜10、好ましくは4〜6の範囲の整数である。誤解を避けるために、一般式(6)において示される、オルガノポリシロキサンの各端から伸びている2つの未使用結合は、環状構造が提供されるように、同じ結合を表すことが意図される。オルガノシクロシロキサンは、より好ましくは、オクタ−C
1−6アルキルシクロテトラシロキサン及びデカ−C
1−6アルキルシクロペンタシロキサンのうちの一方または両方、さらにより好ましくは、オクタメチルシクロテトラシロキサン及びデカメチルシクロペンタシロキサンのうちの一方または両方である。
【0012】
さらなる実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、オルガノポリシロキサンの混合物であり得る。一層さらなる実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、既に定義された少なくとも2つの架橋基Xを含む、直鎖オルガノポリシロキサンをさらに含み得る。
【0013】
別の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)の一部を構成し得る直鎖オルガノポリシロキサンは、以下の一般式(5)の直鎖オルガノポリシロキサンであり得、
【0015】
式中、Xは既に定義された架橋基であり、R
4は共有結合または二価有機連結基であり、各R
5〜R
10は、独立して、置換もしくは非置換有機ラジカル、または基R
4Xであり、eは1〜70の範囲の整数である。一実施形態では、一般式(5)のオルガノポリシロキサンは、2つのR
4X基を含む。別の実施形態では、一般式(5)のオルガノポリシロキサンは、少なくとも3つのR
4X基を含む。このように、シリコーン組成物を架橋する際に三次元シリコーンが形成され得る。
【0016】
別の実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、25℃で100mPa.s未満の粘度を有する直鎖オルガノポリシロキサンをさらに含み得る。本明細書で使用される場合、粘度は、別途指示されない限り、ASTM D4287−00(2010)に従って、2rpmのスピンドル3を備える記録用Brookfield粘度計を使用して、25℃で判定され得る。この直鎖オルガノポリシロキサンは、既に記載された2つ以上の架橋基Xを含んで良く、またはかかる架橋基を有さなくて良い。一実施形態では、この直鎖オルガノポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサンであり得る。
【0017】
別の実施形態では、オルガノシラン(B)は以下の一般式(1)のものであり得、
R
(4−a)Si(R
1X)
a (1)
式中、Xは既に定義された架橋基であり、R
1は、アリール基を含有しない共有結合または二価有機連結基であり、Rは置換または非置換有機ラジカルであり、aは、2、3、または4、好ましくは3または4である。
【0018】
さらに別の実施形態では、式(1)のオルガノシラン(B)は、一般式(1)のオルガノシラン(B)であり得、式中、Rは、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
1は共有結合であり、Xは、1〜10、好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルコキシ基、及び以下の一般式(11)のケトオキシムラジカルのうちの一方または両方であり、
−O−N=CR
11R
12 (11)
式中、R
11及びR
12は、独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基である。より一層好ましくは、aは3または4である。
【0019】
別の実施形態では、オルガノシラン(B)は、架橋基Xのうちの少なくとも1つが一般式(11)のケトオキシムであり、R、R
1、R
11、R
12、及びaが前の段落で定義された通りである、ケトオキシムである。かかる実施形態では、架橋基X全てが一般式(11)のケトオキシムラジカルでない場合、残りの架橋基Xは、独立して、1〜10、好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルコキシ基である。
【0020】
さらなる実施形態では、オルガノシリコーン樹脂(C)は、少なくとも2つ、好ましくは3つ以上の既に定義された架橋基Xを含む、シルセスキオキサン樹脂系化合物であり得る。シルセスキオキサン樹脂系化合物は、以下の一般式(2)の少なくとも1つの構造単位、
(R
3SiO
(3−b)/2(R
2X)
b) (2)
及び少なくとも80モル%の、以下の一般式(8)の構造単位を含み得、
R
19SiO
3/2 (8)
式中、各R
3は、独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基及び2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基を含む群から選択され、R
19は、独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基、及びアルキル部分中に1〜5個の炭素原子を有し、アリール環(複数可)構造中に4〜10個の原子を有する、アルキルアリール基を含む群から選択され、R
2は、アリール基を含有しない共有結合または二価有機連結基であり、Xは上記に定義される架橋基であり、bは独立して0、1、または2であるが、ただし、シルセスキオキサン樹脂系化合物は少なくとも2つの架橋基Xを含む。
【0021】
好ましくは、R
3及びR
19は、独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基及び2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基を含む群から選択される。
【0022】
一実施形態では、一般式(2)の少なくとも1つの構造単位は、シルセスキオキサン樹脂系化合物の1〜20モル%未満の範囲等の、20モル%未満の非ゼロ量で存在し得る。かかる実施形態では、一般式(8)の構造単位は、少なくとも80モル%〜99モル%の量でシルセスキオキサン系化合物中に存在し得る。
【0023】
別の実施形態では、該少なくとも80モル%の一般式(8)の構造単位と比較して、一般式(2)の少なくとも1つの構造単位は、モル%に関して、シルセスキオキサン系化合物の残りを占める。
【0024】
好ましくは、シルセスキオキサン樹脂系化合物は、少なくとも3つの架橋基Xを含む。なおより好ましくは、シルセスキオキサン樹脂系化合物は、平均で分子当たり3つの架橋基を有する。好ましい実施形態では、R
3は、1〜5個の炭素原子を有する、メチル基等のアルキル基である。
【0025】
第2の態様では、第1の態様に従うシリコーン組成物を架橋することによって得られる架橋シリコーンが提供される。架橋工程は、シリコーン組成物を、任意選択的に酸またはアルカリの存在下で、水と反応させること等の、シリコーン組成物を硬化することを含み得る。
【0026】
第3の態様では、第1の態様のシリコーン組成物または第2の態様の架橋シリコーンで被覆された基材が提供される。
【0027】
一実施形態では、第1の態様のシリコーン組成物は、基材上で架橋されて、架橋シリコーンを提供する。
【0028】
別の実施形態では、基材は、セメント粉末等のセメントである。
【0029】
第4の態様では、基材がセメントである第3の態様の基材を含む、建築材料が提供される。
【0030】
一実施形態では、建築材料は、骨材、可塑剤、促進剤、及び空気連行剤のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0031】
第5の態様では、架橋シリコーン被覆基材を提供する方法であって、少なくとも、
−基材を提供する工程と、
−第1の態様に従うシリコーン組成物を基材に塗布して、シリコーン組成物で被覆された基材を提供する工程と、
−シリコーン組成物を基材上で架橋して、架橋シリコーン被覆基材を提供する工程と、を含む方法が提供される。
【0032】
一実施形態では、架橋工程は、
−基材上のシリコーン組成物を、任意選択的に酸またはアルカリの存在下で、水と接触させることを含み得る。
【0033】
別の実施形態では、基材は、セメント粉末等のセメントを含み得る。
【0034】
第6の態様では、架橋シリコーン被覆基材を提供する方法であって、少なくとも、
−基材を提供する工程と、
−基材を第2の態様に記載の架橋シリコーンと混合して、架橋シリコーン被覆基材を提供する工程と、を含む方法が提供される。
【0035】
一実施形態では、架橋シリコーンは、架橋シリコーン粉末である。
【0036】
別の実施形態では、基材は、セメント粉末等のセメントを含み得る。
【0037】
さらに別の実施形態では、基材を架橋シリコーンと混合する工程は、基材を架橋シリコーンで研削することを含み得る。
【0038】
第7の態様では、疎水化添加剤、嵩密度向上剤、及び流動性向上剤を含む群のうちの1つ以上としての、第1の態様に従うシリコーン組成物または第2の態様に従う架橋シリコーンの使用が提供される。
【0039】
一実施形態では、シリコーン組成物または架橋シリコーンは、セメント用の疎水化添加剤、セメント用の嵩密度向上剤、及びセメント用の流動性向上剤のうちの1つ以上として使用される。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書で開示されるシリコーン組成物は、セメント等の基材上に被覆を形成するために使用され得る。基材上の被覆は、架橋シリコーンを含む。架橋シリコーンは、架橋オルガノポリシロキサンであり得る。架橋シリコーンは、シリコーン組成物を架橋することによって調製されるか、または、シリコーン組成物を架橋することによって得られるシリコーンである。
【0041】
シリコーン組成物は、少なくとも、(A)オルガノシクロシロキサン及び任意選択的に直鎖オルガノポリシロキサンを含み、該直鎖オルガノポリシロキサンが少なくとも2つの架橋基を含む、オルガノポリシロキサン、(B)少なくとも2つの架橋基を含むオルガノシラン、ならびに(C)少なくとも2つの架橋基を含むオルガノシリコーンを含む、オルガノシリコーン樹脂の、3つの成分を含む。オルガノシラン(B)及びオルガノシリコーン樹脂(C)のうちの少なくとも一方が、少なくとも3つの架橋基を有する。好ましくは、オルガノシラン(B)及びオルガノシリコーン樹脂(C)の両方が、少なくとも1つのオルガノシランと、少なくとも3つの架橋基を有する少なくとも1つのオルガノシリコーン樹脂とを含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、シリコーン組成物の成分(A)、(B)、及び(C)は、概して「ケイ素含有化合物」と称され得る。少なくとも3つの架橋基を有するケイ素含有化合物を活用することは、広範囲架橋を形成することのできる組成物を提供し、架橋の際に基材上に三次元の被覆を提供する。
【0043】
該被覆は基材に疎水特性を与えることができ、湿気及び湿度からの保護を提供する。
【0044】
架橋シリコーン組成物を含む被覆は、基材の外部表面を形成し得る。この被覆が基材の外側表面を形成する場合、これは向上した取扱特性を与える。例えば、該被覆は、粉末化基材の嵩密度及び流動特性を向上させ得る。
【0045】
基材上の被覆は、基材上でシリコーン組成物を架橋することによって調製され得る。少なくとも1つの架橋基が、架橋反応に関与する化合物の各々上に存在し得る。本明細書で使用される場合、「架橋基」という用語は、架橋反応に関与することが可能な反応基を意味する。よって、直鎖オルガノポリシロキサンは、少なくとも1つの架橋基を有して存在し得る。同様に、オルガノシランは、少なくとも1つの架橋基を有して存在し得る。同様に、オルガノシリコーン樹脂は、少なくとも1つの架橋基を有して存在し得る。
【0046】
ケイ素含有化合物が架橋反応中に鎖を形成するために、少なくとも2つの架橋基が化合物上に存在し得る。よって、該組成物の直鎖オルガノポリシロキサン任意選択成分である、オルガノポリシロキサン(A)、オルガノシラン(B)、及びオルガノシリコーン樹脂(C)は、架橋して鎖を形成することができるように、各々が少なくとも2つの架橋基を含むべきである。
【0047】
オルガノポリシロキサン(A)中に存在するオルガノシクロシロキサンは、架橋基を含まないが、環状環の反応性により、架橋して鎖を形成することがなお可能であり、これは架橋反応に関与するために開裂され得ることが指摘される。
【0048】
しかしながら、シリコーン組成物中のケイ素含有化合物のうちの少なくとも1つが、高度架橋三次元被覆を提供するために、少なくとも3つの架橋基を有するべきである。
【0049】
好ましくは、該架橋基は基材と結合を形成することもまたできる。
【0050】
該架橋基は、独立して、ケイ素、ヒドロキシル、アクリレート、アシル、アシルオキシ、ケトオキシム、アルケニル、アルコキシ、エポキシ、アミン、メルカプト、及びメタクリレートに直接結合した、1つ以上の水素から選択され得る。該ヒドロキシル、アクリレート、アシル、ケトオキシム、アルケニル、アルコキシ、エポキシ、アミン、メルカプト、及びメタクリレート基は、ケイ素に直接結合され得る。
【0051】
該架橋基は、架橋反応を介した架橋が可能であるべきである。被覆の架橋シリコーンを生成する架橋反応は、縮合反応、ヒドロシリル化反応、または置換反応であり得る。例えば、ケイ素、アシル、アシルオキシ、ケトオキシム、及びアルコキシ基に直接結合した水素等の加水分解性架橋基は、ヒドロキシル基に転換され得、次いで縮合反応を受け得る。架橋は、任意選択的にアルカリまたは酸の存在下で、水の存在下で実行され得る。架橋の速度は典型的に、アルカリ性環境において、酸性環境においてよりも高い。水のみの存在下での架橋の速度は、水性アルカリ性または酸性環境における速度よりも遅く進む。セメント等のアルカリ性基材は、追加のアルカリの存在を必要とすることなく、良好な速度の架橋を提供し得る。架橋基が、アルケニル、アクリレート、またはメタクリレート等の、ケイ素及び炭素−炭素二重結合に直接結合した水素を含む場合、架橋はヒドロシリル化によるものであり得る。白銀含有化合物等のヒドロシリル化触媒が、シリコーン組成物中に存在し、ヒドロシリル化を容易にし得る。架橋基がアミン及びエポキシ基を含む場合、架橋は求核置換によるものであり得る。
【0052】
好ましい架橋基には、C
1−5アルキル−C(O)−O−基等の、ケイ素、ヒドロキシル、C
1−6アルコキシ、C
1−6アシル、ケトオキシム、及びC
1−6アシルオキシ基に直接結合した水素が挙げられる。かかる架橋基はケイ素に直接結合することが好ましい。
【0053】
あるいは、二価有機連結基R
1、R
2、R
4、R
18は、成分(A)の任意選択直鎖オルガノポリシロキサン、オルガノシラン(B)、またはオルガノシリコーン樹脂(C)に連結するために存在し得る。二価有機基は、独立して、1〜5個の炭素原子を有するアルキレン、環(複数可)構造中に4〜10個の炭素原子を有する二価アリール基、ならびにアルキル部分中に1〜5個の炭素原子及びアリール環(複数可)構造中に4〜10個の原子を有する二価アルキルアリール基から選択され得る。該アリール基は、アリール環(複数可)構造中に1〜3個のヘテロ原子を含み得る。該ヘテロ原子はO、N、及びSから選択され得る。該アルキレン、二価アリール基、及び二価アルキルアリール基は、各々が独立して置換または非置換であり得る。置換される場合、存在する1個以上の水素原子が上記に定義される架橋基と交換され、よって2つ以上の架橋基が二価有機基に直接結合される。例えば、二価有機基及び架橋基は合わせてメラミンラジカルであり得る。あるいは、存在する1個以上の水素原子は、独立して、フッ素または塩素原子等のハロゲン原子と交換され得る。好ましくは、二価有機連結基は、式−C
nH
2n−(式中、nは1〜5の整数)の基等の、1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基である。
【0054】
少なくとも3つの架橋基が、シリコーン組成物を形成するケイ素含有化合物のうちの少なくとも1つ上に存在する。このように、構造化された、架橋シリコーンを含む三次元被覆が提供される。対照的に、ケイ素含有化合物上に3つ未満の架橋基が存在する場合、かかる化合物は、架橋の際に、分子鎖の一部を形成することができるだけであり、三次元のネットワークを形成することはできない。
【0055】
本明細書で使用される場合、別途述べられない限り全ての実施形態において、「有機ラジカル」という用語は、炭素及び水素を含むラジカル基である。有機ラジカルは、独立して、1〜10、より好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル、2〜10、より好ましくは2〜5個の炭素原子を有するアルケニル基、環(複数可)構造中に4〜10個の炭素原子を有するアリール基、ならびにアルキル部分中に1〜5個の炭素原子及びアリール環(複数可)構造中に4〜10個の原子を有するアルキルアリール基を含む群から選択され得る。該アリール基は、アリール環(複数可)構造中に1〜3個のヘテロ原子を含み得る。ヘテロ原子は、O、N、及びSから選択され得る。典型的に、アリールまたはアルキルアリール基は、Ph(CH
2)
r−であり、式中、Phはフェニル基であり、rは0、1、2、3、または4である。
【0056】
有機ラジカルは置換または非置換であり得る。よって、Rを形成するアルキル、アルケニル、アリール、及びアルキルアリール基は、各々が独立して置換または非置換であり得る。置換される場合、1個以上の水素原子の各々が、フルオロもしくはクロロ置換基等のハロゲン原子によって、またはアミン基によって交換され得、これら自体も置換され得る。例えば、アミン基は、式−NH−R
15−NH
2の基であり得、式中、R
15は、1〜10、好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基等の、二価連結基である。例えば、基Rは、式−R
16−NH−R
15−NH
2の基であり得、式中、R
15及びR
16は、独立して、1〜10、より好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基である。
【0057】
好ましくは、有機ラジカルは、上記に定義される、置換もしくは非置換アルキル、または置換もしくは非置換アルケニル基である。オルガノシラン(B)は、架橋シリコーン被覆を形成するために使用され得るシリコーン組成物中に存在する。1種類のオルガノシラン化合物が単独で使用されて良く、またはオルガノシランの混合物が使用されても良い。少なくとも3つの架橋基を有さない他のケイ素含有化合物との組み合わせで使用される場合、オルガノシランは少なくとも3つの架橋基を含有するべきである。さらに、シリコーンポリエーテル等の他の化合物もまた架橋中に存在し得る。
【0058】
オルガノシラン(B)は、以下の一般式(1)の化合物であり得、
R
(4−a)Si(R
1X)
a (1)
式中、各Xは独立して、既に定義された架橋基であり、R
1は上記の共有結合または二価有機連結基であり、Rは上記の置換または非置換有機ラジカルであり、aは、2、3、または4である。他のケイ素含有化合物のいずれもが少なくとも3つの架橋基を含まない場合、aは3または4である。
【0059】
典型的に、R
1は共有結合であり、架橋基Xはヒドロキシル、またはケイ素、アシル、アシルオキシ、ケトオキシム、もしくはアルコキシに直接結合した水素等の加水分解性基であり、基Rは1〜10個の炭素原子を有する置換または非置換アルキルである。基Rが置換アルキル基である場合、これは、好ましくは、式−R
16−NH−R
15−NH
2の基であり、式中、R
15及びR
16は、独立して、1〜10、より好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基である。基Rとして好ましいアルキル基は、メチル、エチル、及びエチレンジアミンプロピルである。架橋基Xの好ましいアシル及びアシルオキシ基は、1〜5個の炭素原子を有するものであり、カルボニル基を含む。架橋基Xとして好ましいアルコキシ基は、1〜5個の炭素原子を有するものであり、メトキシ及びエトキシが最も好ましい。架橋基Xとして好ましいケトオキシム基は、以下の一般式(11)のものであり、
−O−N=CR
11R
12 (11)
式中、R
11及びR
12は独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、より好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基である。一実施形態では、オルガノシラン(B)は、メチル(エチルメチルケトオキシム)シラン、(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、及びメチルトリメトキシシランを含む群から選択される、1つ以上の化合物である。
【0060】
オルガノシリコーン樹脂(C)は、架橋シリコーン被覆を形成するために使用され得るシリコーン組成物中に存在する。オルガノシリコーン樹脂(C)は、単一のオルガノシリコーン樹脂またはオルガノシリコーン樹脂の混合物であり得る。少なくとも3つの架橋基を有しない他のケイ素含有化合物との組み合わせで使用される場合、オルガノシリコーン樹脂は少なくとも3つの架橋基を含有するべきである。さらに、シリコーンポリエーテル等の他の化合物もまた架橋中に存在し得る。オルガノシリコーン樹脂は、4つの可能モノマー単位である、M、D、T、及びQのうちの1つ以上によって画定され得る。本明細書で使用されるオルガノシリコーン樹脂は、MT、DT、MQ、MDT、MTQ、及びQDTの群から選択される、1つ以上の樹脂を含み得る。
【0061】
一実施形態では、オルガノシリコーン樹脂(C)は、0.2〜10重量%の架橋基Xを含み得る。好ましくは、オルガノシリコーン樹脂は、ケイ素に直接結合したヒドロキシル基等の、1〜5重量%の架橋基Xを含む。別の実施形態では、オルガノシリコーン樹脂は、0.5重量%のヒドロキシル基を有し、62重量%のCH
3SiO
3/2、24重量%の(CH
3)
2SiO
2/2、及び14重量%の(CH
3)
3SiO
1/2で組成された、ヒドロキシル化MDTシリコーン樹脂を含む。
【0062】
オルガノシリコーン樹脂(C)がシルセスキオキサン樹脂系化合物を含むのが好ましい。シルセスキオキサン樹脂系化合物は、以下の一般式(2)の少なくとも1つの構造単位、
(R
3SiO
(3−b)/2(R
2X)
b) (2)
及び少なくとも80モル%の、以下の一般式(8)の構造単位を含み得、
R
19SiO
3/2 (8)
式中、R
3は、独立して、1〜10、より好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル、及び2〜10、より好ましくは2〜5個の炭素原子を有するアルケニル基から選択され、R
19は、独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基、ならびにアルキル部分中に1〜5個の炭素原子及びアリール環(複数可)構造中に4〜10個の原子を有するアルキルアリール基を含む群から選択され、R
2は、上記に定義される共有結合または二価有機連結基であり、Xは上記に定義される架橋基であり、bは、0、1、または2であるが、ただし、シルセスキオキサン樹脂系化合物は少なくとも2つの架橋基を含む。
【0063】
一実施形態では、シルセスキオキサン樹脂系化合物は、好ましくは少なくとも3つの架橋基Xを含む。例えば、シルセスキオキサン樹脂系化合物は、一般式(2)(式中bが1)の3つの構造単位を含み得る。別の実施形態では、シルセスキオキサン樹脂系化合物は、一般式(2)(式中bが1)の少なくとも1つの構造単位、及び一般式(2)(式中bが2)の少なくとも1つの構造単位を含み得る。このように、シルセスキオキサン樹脂系化合物は、架橋の際に、シリコーン組成物の他の成分と三次元構造を形成し得る。
【0064】
好ましくは、基R
3及びR
19は、独立して、既に定義されたアルキルまたはアルケニル基であり、二価有機基R
2は共有結合または1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基であり、シルセスキオキサン樹脂系化合物は少なくとも3つの架橋基Xを含む。基R
3及びR
19は、好ましくは、独立して、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、より好ましくはメチル基から選択される。
【0065】
理論に束縛されるものではないが、シルセスキオキサン樹脂系化合物中のアルキルまたはアルケニル置換基の存在は、シリコーン組成物の架橋後のより柔軟な被覆を提供し、セメント等の被覆基材の吸湿性の減少等の、向上した被覆特性をもたらすと考えられる。かかるシリコーン組成物で被覆されたセメントは、さらに、非被覆セメントと比較して向上した圧縮強度を有する、モルタルブロック及びコンクリートを提供する。
【0066】
一実施形態では、シルセスキオキサン樹脂系化合物は、上記に定義される一般式(8)の少なくとも80モル%の構造単位で構成され得、式中、R
19は、独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基及び2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基を含む群から選択され、上記に定義される一般式(2)の少なくとも1つの構造単位が、モル%に関して、残りを占める。よって、かかる実施形態では、シルセスキオキサン樹脂系化合物の構造単位のいずれもが、フェニル基等のアリール置換基を含有しない。
【0067】
さらなる実施形態では、シリコーン組成物は、いかなるアリール置換基も含有せず、すなわち、シリコーン組成物を含む成分のいずれもが、アリール置換基を含有しない。本文脈で使用される場合、「アリール置換基」という用語は、1つ以上の芳香環を含む置換基を意味することが意図される。
【0068】
大体の実施形態では、シルセスキオキサン樹脂系化合物は、以下の一般式(7)の少なくとも1つの構造単位、
(R
17SiO
(3−b)/2(R
18X)
b) (7)
及び少なくとも80モル%の、以下の一般式(8)の構造単位を含み得、
R
20SiO
3/2 (8)
式中、R
17は、独立して、環(複数可)構造中に4〜10個の炭素原子を有するアリール基、ならびにアルキル部分中に1〜5個の炭素原子及びアリール環(複数可)構造中に4〜10個の原子を有するアルキルアリール基から選択され、R
18は、上記に定義される共有結合または二価有機連結基であり、R
20は、独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基、ならびにアルキル部分中に1〜5個の炭素原子及びアリール環(複数可)構造中に4〜10個の原子を有するアルキルアリール基を含む群から選択され、Xは上記に定義される架橋基であり、bは、0、1、または2であるが、ただし、シルセスキオキサン樹脂系化合物は、少なくとも2つの架橋基を含む。該アリール基は、アリール環(複数可)構造中に1〜3個のヘテロ原子を含み得る。ヘテロ原子は、O、N、及びSから選択され得る。一実施形態では、アリールまたはアルキルアリール基R
17は、Ph(CH
2)
rであり得、式中、Phはフェニル基であり、rは、0、1、2、3、または4である。
【0069】
好ましくは、基R
17及びR
20は、独立して、6〜10個の炭素原子を有するアリール基、ならびにアルキル部分中に1〜5個の炭素原子及びアリール環(複数可)構造中に4〜10個の原子を有するアルキルアリール基から選択され、二価有機基R
2は、共有結合または1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基であり、シルセスキオキサン樹脂系化合物は、少なくとも3つの架橋基Xを含む。基R
17及びR
20は、より好ましくは、フェニルまたはベンジル基から選択され、なおより好ましくはフェニル基である。
【0070】
理論に束縛されるものではないが、シルセスキオキサン樹脂系化合物中のフェニル等のアリール置換基の存在は、該シリコーン組成物から形成される被覆の靭性を向上させると考えられる。
【0071】
構造単位(2)及び(7)は、同じシルセスキオキサン樹脂系化合物中、またはオルガノシリコーン樹脂(C)を構成する異なるシルセスキオキサン樹脂系化合物中に存在し得る。例えば、一実施形態では、オルガノシリコーン樹脂(C)は、一般式(2)、(7)、及び(9)の構造単位を含むシルセスキオキサン樹脂系化合物を含む。かかる実施形態では、シルセスキオキサン樹脂系化合物は、a)上記に定義されるアリール及びアルキルアリール置換基の一方または両方、ならびにb)上記に定義されるアルキル及びアルケニル置換基の一方または両方の組み合わせを含有する。一般式(2)の少なくとも1つの構造単位及び一般式(7)の少なくとも1つの構造単位の組み合わせは、シルセスキオキサン樹脂系化合物中に、20モル%未満の非ゼロ量、例えば1〜20モル%で存在し得る。かかる実施形態では、一般式(8)の構造単位は、少なくとも80モル%〜99モル%の量でシルセスキオキサン系化合物中に存在し得る。別の実施形態では、一般式(2)の少なくとも1つの構造単位及び一般式(7)の少なくとも1つの構造単位の組み合わせは、モル%においてシルセスキオキサン樹脂の残り、すなわち、一般式(8)の構造単位の少なくとも80モル%と比較した残りを占め得る。
【0072】
別の実施形態では、オルガノシリコーン樹脂(C)は、一般式(2)の少なくとも1つの構造単位及び一般式(9)の少なくとも80モル%の構造単位から成る第1のシルセスキオキサン樹脂系化合物、ならびに一般式(7)の少なくとも1つの構造単位及び一般式(9)の少なくとも80モル%の構造単位から成る第2のシルセスキオキサン樹脂系化合物を含む、少なくとも2つのシルセスキオキサン樹脂系化合物を含む。一般式(2)または(7)の少なくとも1つの構造単位は、シルセスキオキサン樹脂系化合物中に、20モル%未満の非ゼロ量、例えば1〜20モル%未満で存在し得、一般式(9)の構造単位が、少なくとも80モル%〜99モル%の量で存在する。
【0073】
基R
3、R
17、R
19、及びR
20は、置換または非置換であり得る。よって、アルキル、アルケニル、アリール、及びアルキルアリール基は、各々が独立して置換または非置換であり得る。置換される場合、存在する1つ以上の水素原子が、1個以上の水素原子が交換され得、フルオロまたはクロロ置換基等のハロゲン原子によって交換され得る。
【0074】
典型的に、R
2及び存在する場合R
18は、共有結合であり、架橋基Xは、ヒドロキシル、またはケイ素、アシル、アシルオキシ、ケトオキシム、もしくはアルコキシに直接結合した水素等の加水分解性基であり、基R
3は、1〜5個の炭素原子を有するアルキルであり、存在する場合、R
17はPh(CH
2)
r−であり、式中、Phはフェニル基であり、rは、0、1、2、3、または4である。架橋基Xの好ましいアシル及びアシルオキシ基は、1〜5個の炭素原子を有するものであり、カルボニル基を含む。架橋基Xの好ましいアルコキシ基は、1〜5個の炭素原子を有するものであり、メトキシ及びエトキシが最も好ましい。好ましいR
3基は、メチル及びn−オクチルである。好ましいR
17基はフェニルである。
【0075】
一実施形態では、シルセスキオキサン樹脂系化合物は、エトキシ終端n−オクチルシルセスキオキサン樹脂、ヒドロキシル終端n−オクチルシルセスキオキサン樹脂、ヒドロキシル終端メチルシルセスキオキサン樹脂、ヒドロキシル終端メチルフェニルシルセスキオキサン樹脂の群のうちのより多くの1つを、任意選択的に、ヒドロキシル終端フェニルシルセスキオキサン樹脂及びトリメチルシロキシ終端アミノプロピルフェニルシルセスキオキサン樹脂のうちの一方または両方との組み合わせで含む。
【0076】
オルガノポリシロキサン(A)は、架橋シリコーン被覆を形成するのに使用され得る、シリコーン組成物中に存在する。オルガノポリシロキサン(A)は、オルガノシクロシロキサンを、任意選択的に直鎖オルガノポリシロキサンとの組み合わせで含む。さらに、シリコーンポリエーテル等の他の化合物もまた存在し得る。
【0077】
オルガノポリシロキサン(A)は、オルガノシクロシロキサン環中に、3〜10、好ましくは4〜6個のケイ素原子を有するオルガノシクロシロキサンを含み得る。好ましくは、オルガノポリシロキサンは以下の一般式(6)のものであり得、
【0079】
式中、R
13及びR
14は、独立して、置換または非置換有機ラジカルであり、fは3〜10、好ましくは4〜6の範囲の整数である。オルガノポリシロキサン(A)中のオルガノシクロシロキサンの存在は、これが架橋の一貫した鎖長を提供し得るため有利である。対照的に、直鎖オルガノポリシロキサンは、一般的に異なる鎖長を有するオルガノポリシロキサンの混合物として提供され、より低い均一性の架橋を提供する。
【0080】
基R
13及びR
14は、好ましくは、独立して、1〜10、より好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル、及び2〜10、より好ましくは2〜5個の炭素原子を有するアルケニル基である。基R
13及びR
14は置換または非置換であり得る。置換される場合、1個以上の水素原子は、フルオロまたはクロロ置換基等のハロゲン原子によって交換され得る。
【0081】
オルガノポリシロキサン(A)は、以下の一般式(5)の直鎖オルガノポリシロキサンをさらに含み得、
【0083】
式中、Xは既に定義された架橋基であり、R
4は共有結合または二価有機連結基であり、各R
5〜R
10は、独立して、置換もしくは非置換有機ラジカル、または基R
4Xであり、eは1〜70の範囲の整数である。一般式(5)のオルガノポリシロキサンが、少なくとも3つのR
4X基を含む場合、R
5〜R
10のうちの少なくとも1つが、基R
4Xである。
【0084】
基R
5〜R
10は、好ましくは、独立して、1〜10、より好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキル、2〜10、より好ましくは2〜5個の炭素原子を有するアルケニル基、環(複数可)構造中に4〜10個の炭素原子を有するアリール基、ならびにアルキル部分中に1〜5個の炭素原子及びアリール環(複数可)構造中に4〜10個の原子を有するアルキルアリール基である。該アリール基は、アリール環(複数可)構造中に1〜3個のヘテロ原子を含み得る。ヘテロ原子は、O、N、及びSから選択され得る。
【0085】
基R
5〜R
10は、置換または非置換であり得る。よって、R
5〜R
10を形成する、アルキル、アルケニル、アリール、及びアルキルアリール基の各々は、独立して置換または非置換であり得る。置換される場合、1個以上の水素原子は、フルオロまたはクロロ置換基等のハロゲン原子によって交換され得る。
【0086】
典型的にR
4は共有結合であり、架橋基Xは、ヒドロキシル、またはケイ素、アシル、アシルオキシ、ケトオキシム、もしくはアルコキシに直接結合した水素等の加水分解性基であり、基R
5〜R
10は、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルキルである。架橋基Xの好ましいアシル及びアシルオキシ基は、1〜5個の炭素原子を有するものであり、カルボニル基を含む。架橋基Xとして好ましいアルコキシ基は、1〜5個の炭素原子を有するものであり、メトキシ及びエトキシが最も好ましい。基R
5〜R
10として好ましいアルキル基は、メチル及びエチルである。
【0087】
直鎖オルガノポリシロキサンは、25℃で100mPa.s未満の粘度を有し得る。
【0088】
さらなるケイ素含有化合物もまたシリコーン組成物中に存在し得る。例えば、1つの架橋基を有するオルガノシラン及びオルガノシリコーン樹脂のうちの一方または両方が存在し得る。オルガノシラン及びオルガノシリコーンは、先に記載の通りであり得るが、各化合物上に1つまたは2つのみの架橋基が存在するという区別がある。例えば、一般式(1)のオルガノシラン(式中、aが1)、及び/または、樹脂中に1つのみの架橋基Xを有する一般式(2)の少なくとも1つの構造単位を含むオルガノシリコーン樹脂が、存在し得る。かかるケイ素含有化合物は、下記一般式(3)及び(4)として開示される。
【0089】
よって、シリコーン組成物は、以下の一般式(3)のオルガノシランをさらに含み得、
R
(4−c)Si(R
1X)
c (3)
式中、Xは、既に定義される架橋基であり、R
1は共有結合または二価有機連結基であり、Rは置換または非置換有機ラジカルであり、cは1である。基X、R
1、及びRの好ましい定義は、上記の一般式(1)のオルガノシランについてのものと同じである。
【0090】
シリコーン組成物は、以下の式(4)の少なくとも1つの構造単位を含むシルセスキオキサン樹脂系化合物、
(R
3SiO
(3−d)/2(R
2X)
d) (4)
及び少なくとも80モル%の、以下の一般式(8)の構造単位をさらに含み得、
R
19SiO
3/2 (8)
式中、R
3及びR
19は、独立して置換または非置換有機ラジカルであり、R
2は共有結合または二価有機連結基であり、Xは上記に定義される架橋基であり、dは0または1であるが、ただし、シルセスキオキサン樹脂系化合物は1つの架橋基Xを含む。基X、R
2、R
3、及びR
19の好ましい定義は、上記の一般式(2)のオルガノシランについてのものと同じである。
【0091】
一般式(4)の少なくとも1つの構造単位は、シルセスキオキサン樹脂系化合物中に、20モル%未満の非ゼロ量、例えば1〜20モル%未満で存在し得、一般式(9)の構造単位が少なくとも80モル%〜99モル%の量で存在する。
【0092】
シリコーン組成物は、上記のケイ素含有化合物を含む。シリコーン組成物は、追加の化合物をさらに含み得る。追加の化合物は、架橋反応に関与してもしなくても良い。かかる追加の化合物の例には、独立して、乳化剤等の相溶化剤、及び架橋反応のための触媒が挙げられる。
【0093】
一実施形態では、シリコーン組成物は、フェニル基等のアリール基を含有するいかなる成分も含まない。
【0094】
シリコーン組成物は液体であり得る。例えば、オルガノポリシロキサン(A)等のケイ素含有化合物のうちの1つ以上が、液体であり得る。液体化合物(複数可)は、シリコーン組成物中の他のケイ素含有化合物のための溶媒または分散剤として作用し得る。
【0095】
シリコーン組成物は、溶液または分散体として塗布され得るように、液体中で溶解または分散させても良い。液体は、有機液体を含み得る。液体が有機液体である場合、シリコーン組成物は、典型的に液体中の溶液として存在する。好ましい有機液体は、メタノール及びエタノール等のアルカノール、トルエン及びキシレン等の芳香族液体、ヘキサン、ヘプタン、及びオクタン等のアルカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン、シクロパラフィン等のシクロアルカン、石油エーテル及びジアルキルポリシロキサン等のシリコーン油、特にジメチルポリシロキサン等の液体炭化水素混合物である。乳化剤等の相溶化剤は、液体中でシリコーン組成物を安定化するために存在し得る。シリコーンポリエーテルは好適な乳化剤の1分類である。
【0096】
シリコーン組成物は、好ましくは液体形態で、任意の好適な方法によって、基材上に被覆され得る。
【0097】
シリコーン組成物が基材に塗布されると、シリコーン組成物は架橋されて架橋ケイ素被覆基材を提供し得る。架橋反応は、周囲温度または周囲温度を超えて、例えば、形態周囲温度〜150℃の範囲、好ましくは40〜150℃の範囲の温度で、より好ましくは50〜70℃の温度で実行され得る。架橋反応は硬化反応であり得る。
【0098】
よって、シリコーン被覆基材を提供するための方法であって、少なくとも、
−基材を提供する工程と、
−本明細書に開示されるシリコーン組成物を基材に塗布して、シリコーン組成物で被覆された基材を提供する工程と、
−シリコーン組成物を基材上で架橋して、架橋シリコーン被覆基材を提供する工程と、を含む、方法もまた提供される。
【0099】
基材はセメント粉末等のセメントであり得る。架橋反応の速度は、セメント等のアルカリ性の高い基材の存在下で実行される場合、高くなる。その結果、シリコーン組成物が架橋の間にセメント基材を被覆するのを保証するため、シリコーン組成物は混合しながらセメント基材に塗布されるのが好ましい。
【0100】
シリコーン組成物は、液体形態のシリコーン組成物を基材と混合することによって、基材に塗布され得る基材及びシリコーン組成物の混合物は、例えばミキサー内で攪拌され得る。
【0101】
あるいは、液体中の被覆組成物は、噴霧によって基材に塗布され得る。
【0102】
架橋は上記のように実行され得る。典型的に、架橋工程は、
−シリコーン組成物で被覆された基材上のシリコーン組成物を、任意選択的に酸またはアルカリの存在下で、水と接触させることを含む。
【0103】
驚くべきことに、基材に塗布される前に、シリコーン組成物が架橋されて架橋シリコーンを形成する場合でさえ、有利な特性がなお観察されることが分かった。
【0104】
よって、架橋シリコーン被覆基材を提供するための方法であって、少なくとも、
−基材を提供する工程と、
−基材を架橋シリコーンと混合して、架橋シリコーン被覆基材を提供する工程と、を含む方法もまた提供される。
【0105】
架橋シリコーンは、
−本明細書に開示されるシリコーン組成物を架橋して、架橋シリコーンを提供する工程によって提供され得る。
【0106】
架橋シリコーンは固体であり得る。よって、基材を架橋シリコーンと混合する工程は、基材を架橋シリコーンで研削することを含み得る。
【0107】
架橋シリコーンが未反応架橋基を含むことが好ましい。かかる基は、基材上の被覆の特性を向上させ得る。特に、シリコーン組成物から形成された架橋シリコーンが、セメント等の基材上に被覆される場合、架橋シリコーンはセメントへの向上した結合を呈する。
【0108】
このように、架橋シリコーンで被覆された基材が提供され得る。
【0109】
基材上の架橋シリコーン被覆は、被覆セメントの少なくとも0.05重量%を構成し得、あるいは被覆セメントの0.5〜5重量%、または0.5〜2.0重量%の範囲であり得る。
【0110】
疎水化添加剤、嵩密度向上剤、及び流動性向上剤を含む群のうちの1つ以上としての、本明細書に開示されるシリコーン組成物または架橋シリコーンの使用がさらに提供される。
【0111】
基材がセメントである場合、架橋シリコーン被覆セメントは、建築材料中で使用され得る。よって、架橋シリコーン被覆セメントを含む建築材料が提供される。建築材料は、骨材、可塑剤、促進剤、及び空気連行剤のうちの1つ以上を含み得る。
【0112】
本明細書で使用される場合、「セメント」という用語は、水和の結果として水の存在下で硬化する、無機粘結剤材料を指す。セメントの包括的でない例には、ポルトランドセメント、リン酸セメント、高アルミナセメント、高石膏セメント、無石膏セメント、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0113】
骨材は、コンクリートに嵩を提供する微粒子材料である。これは、圧縮応力に耐性であるべきであり、多様な大きさを有し得る。コンクリート中で使用される骨材の例には、砂、砂利、砕石、及び破砕コンクリートが挙げられる。セメントは、コンクリートを形成するための骨材のための粘結剤として使用され得る。水と混合されると、セメントは水和して、骨材を剛性構造に固定する結晶格子を形成する。
【0114】
骨材が砂を含む場合、提供されるコンクリート組成物は、補強モルタル組成物として使用され得ることが明らかとなり得る。
【0115】
スルホン化ナフタレン、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、スルホン化メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、変性リグノスルホン酸塩、及びアクリレート系ラテックス等の高分子添加剤等の、可塑剤は、特に低い水/セメント比で、固体を組成物中に分散させ、任意選択的にコンクリート組成物中に存在し得る。
【0116】
硝酸カルシウム及び硝酸ナトリウム等の促進剤は、セメントの水和の速度を上昇させ、よってコンクリート組成物の固定時間を増加させ、任意選択的にコンクリート組成物中に存在し得る。
【0117】
タンパク質加水分解物及びケラチン化合物、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム、硫酸石油ナフタレン、硫酸二級アルキルナトリウム、サポニン、硫酸アルキルアリールナトリウム、ならびに安定化けん化ロジン及び樹脂化合物等の、空気連行剤は、硬化の前に、コンクリーター(concreter)組成物中に空気泡を導入して耐久性を向上させ、さらに任意選択的にコンクリート組成物中に存在し得る。
【0118】
コンクリート組成物は、少なくとも、
−本明細書に開示される架橋シリコーン被覆セメントを骨材と混合して、混合物を提供する工程と、
−該混合物に水を添加する工程と、
−該混合物を固定する工程と、を含む方法によって、架橋シリコーン被覆セメントから調製され得る。
【0119】
混合及び添加の工程は、同時に生じても良い。
【0120】
該方法は、骨材の添加の前に可塑剤を添加する工程をさらに含み得る。
【0121】
該方法は、混合物を固定する工程の前に、典型的に混合を伴って、空気連行剤を添加する工程をさらに含み得る。
【0122】
別の実施形態では、コンクリート組成物を調製する方法は、
−本明細書に開示される架橋シリコーン被覆セメントを水と混合して、ペーストを提供することと、
−骨材をペーストに添加して混合物を提供することと、
−さらに水を混合物に添加することと、
−該混合物を固定することと、を含み得る。
【0123】
本発明の実施形態は、例示として提示され、限定的であることは意味されない、以下の実施例への参照によってより良好に理解され得る。
【実施例】
【0124】
以下の実験的な実施例は、セメント上の多数の架橋シリコーン被覆の調製を説明する。
【0125】
吸湿性
架橋シリコーン被覆セメントを、吸湿性について試験し、非被覆セメントと比較した。非被覆及び被覆セメント試料の各10gを、同一寸法のアルミカップ内に配置し、99%を越える湿度及び30℃の温度に設定した湿度室内で、高湿度の雰囲気に曝露した。被覆及び非被覆セメントの吸湿性は、その後2日及び90日後に個々の試料の重量を測定し、凝固に留意することによって判定した。重量の増加は、セメント試料によって吸収された水の量を示す。
【0126】
嵩密度
架橋シリコーン被覆セメントの嵩密度は、タップ法を使用して試験し、非被覆セメントのものと比較した。100ml容量の蓋付きメスシリンダーが本測定において使用された。空の蓋付きメスシリンダーの重量は、化学天秤上で3桁の精度で記録した。次いで、被覆または非被覆セメントの、精密に計量した50gの試料を、メスシリンダーに添加し、その後シリンダーを100回タップした。被覆または非被覆セメントによって占められた体積を、その後測定し、記録した。該試験は、各試料について5回反復し、示度を平均した。
【0127】
圧縮強度
架橋シリコーン被覆セメントを、圧縮強度について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆及び非被覆セメントは、被覆または被覆セメントを、重量により等しい割合で、3種類の砂と混合することにより、モルタル標本の調製において使用された。使用した3種類の砂は、1級砂(粒径>2mmかつ<1mm)、2級砂(粒径>1mmかつ<0.5mm)、及び3級砂(粒径>0.5mmかつ<0.09mm)であった。水対セメント比は、重量で0.47に固定された。セメント及び砂は、完全に混合し、次いで混合しながら正確な量の水を添加した。混合物は、次いで振動台上の7cm×7cm×7cmの寸法の軟鋼型に注いだ。振動台は、均一な充填及び空気除去を達成するため、混合物を型に充填した後2分間作動させたままにした。型はその後標識化し固定のために保存した。24時間後、モルタル標本は型から除去し、標識化して、強度を得るために水中で保存した。圧縮強度試験は、モルタル標本ブロックの、3日間、7日間、及び28日間熟成で、標準圧縮強度機(CSM)を使用してなされた。
【0128】
材料
以下の実施例は、多数のシルセスキオキサン樹脂系化合物を使用する。これらのシルセスキオキサン樹脂系化合物は、従来の方法により、オルガノクロロシランまたはクロロシランの混合物の、水での加水分解によって調製した。
【0129】
ヒドロキシル終端メチルシルセスキオキサン樹脂は、メチルトリクロロシラン:ジメチルジクロロシランの、重量で約9:1混合物の、水での加水分解によって調製された、トルエン中の50重量%固体のTD樹脂である。
【0130】
ヒドロキシル終端フェニルシルセスキオキサン樹脂は、フェニルトリクロロシランの、水での加水分解から調製された、100重量%固体のフェニルシルセスキオキサン固体薄片樹脂である。
【0131】
ヒドロキシル終端メチルフェニルシルセスキオキサン樹脂は、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、及びメチルトリクロロシランの混合物の、水での加水分解によって調製される。
【0132】
エトキシ及びヒドロキシル終端n−オクチルシルセスキオキサン樹脂は、n−オクチルトリエトキシシランの水での加水分解によって調製される。
【0133】
トリメチルシロキシ終端アミノプロピルフェニルシルセスキオキサン樹脂は、フェニルトリエトキシシラン及びγ−アミノプロピルトリエトキシシランの、ヘキサメチルジシロキサンの存在下での、水での加水分解によって調製される。
【0134】
実施例1(組成物−樹脂)
40gのヒドロキシル終端メチルシルセスキオキサン樹脂を500mlビーカー内に取り、35gのデカメチルシクロペンタシロキサン流体をそれに添加した。混合物は、樹脂が完全に溶解するまで撹拌した。この混合物に、10gのメチルトリ(エチルメチルケトオキシム)シラン、1gの(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、及び14gのメチルトリメトキシシランを添加し、良く撹拌して均質な混合物を作製した。
【0135】
5gの上記の混合物を、995gの普通ポルトランドセメント(OPC)に添加し、家庭用混合物粉砕機(Bajaj Electric Co.電力760W)を、蓋を付けて1分間使用して混合した。これは、使用準備が完了した被覆セメントを与えた。
【0136】
被覆セメントは、次いで吸湿性について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントによる吸湿性は、90日間の曝露の後でさえ、セメントの硬化無く最大0.01重量%であり、一方で非被覆セメントは2日以内に最大2.5重量%の吸湿性を示し、この時点で表面はセメント硬化によって完全に固体になったことが観察された。
【0137】
被覆及び非被覆セメントの嵩密度は、タップ法を使用して試験した。被覆セメントの嵩密度は、非被覆セメントのものと比較して30%上昇したことが観察された。
【0138】
処理されたセメントは、次いで圧縮強度について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントから作製されたモルタルブロックの圧縮強度は、28日間の熟成後、非被覆セメントから作製されたものと比較して、7%向上したことが分かった。
【0139】
実施例2(組成物−代替樹脂)
40gのヒドロキシル終端メチルフェニルシルセスキオキサン樹脂を500mlビーカー内に取り、35gのデカメチルシクロペンタシロキサン流体をそれに添加した。混合物は、樹脂が完全に溶解するまで撹拌した。この混合物に、10gのメチルトリ(エチルメチルケトオキシム)シラン、1gの(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、及び14gのメチルトリメトキシシランを添加し、撹拌して均質な混合物を作製した。
【0140】
5gの上記の混合物を、995gの普通ポルトランドセメント(OPC)に添加し、家庭用混合物粉砕機(Bajaj Electric Co.電力760W)を、蓋を付けて1分間使用して混合した。これは、使用準備が完了した被覆セメントを与えた。
【0141】
被覆セメントは、次いで吸湿性について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントによる吸湿性は、90日間の曝露の後でさえ、セメントの硬化無く最大0.02重量%であり、一方で非被覆セメントは2日以内に最大2.5重量%の吸湿性を示し、この時点で表面はセメント硬化によって完全に固体になったことが観察された。
【0142】
被覆及び非被覆セメントの嵩密度は、タップ法を使用して試験した。被覆セメントの嵩密度は、非被覆セメントのものと比較して28%上昇したことが観察された。
【0143】
被覆セメントは、次いで圧縮強度について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントから作製されたモルタルブロックの圧縮強度は、28日間の熟成後、非被覆セメントから作製されたものと比較して、3%向上したことが分かった。
【0144】
実施例3(組成物−樹脂の混合物)
20gのヒドロキシル終端メチルシルセスキオキサン樹脂及び20gのヒドロキシル終端フェニルシルセスキオキサン樹脂を500mlビーカーに取り、35gのデカメチルシクロペンタシロキサン流体をそれに添加した。混合物は、樹脂が完全に溶解するまで撹拌した。この混合物に、10gのメチルトリ(エチルメチルケトオキシム)シラン、1gの(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、及び14gのメチルトリメトキシシランを添加し、良く撹拌して均質な混合物を作製した。
【0145】
5gの上記の混合物を、995gの普通ポルトランドセメント(OPC)に添加し、家庭用混合物粉砕機(Bajaj Electric Co.電力760W)を、蓋を付けて1分間使用して良く混合した。これは、使用準備が完了した被覆セメントを与えた。
【0146】
被覆セメントは、次いで吸湿性について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントによる吸湿性は、90日間の曝露の後でさえ、セメントの硬化無く最大0.01重量%であり、一方で非被覆セメントは2日以内に最大2.5重量%の吸湿性を示し、この時点で表面はセメント硬化によって完全に固体になったことが観察された。
【0147】
被覆及び非被覆セメントの嵩密度は、タップ法を使用して試験した。被覆セメントの嵩密度は、非被覆セメントのものと比較して、29%上昇したことが観察された。
【0148】
被覆セメントは、次いで圧縮強度について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントから作製されたモルタルブロックの圧縮強度は、28日間の熟成後、非被覆セメントから作製されたものと比較して6%向上したことが分かった。
【0149】
実施例4(組成物−代替環状シロキサン)
40gのヒドロキシル終端メチルシルセスキオキサン樹脂を500mlビーカー内に取り、35gのデカメチルシクロテトラシロキサン流体をそれに添加した。混合物は、樹脂が完全に溶解するまで撹拌した。この混合物に、10gのメチルトリ(エチルメチルケトオキシム)シラン、1gの(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、及び14gのメチルトリメトキシシランを添加し、良く攪拌して均質な混合物を作製した。
【0150】
5gの上記の混合物を、995gの普通ポルトランドセメント(OPC)に添加し、家庭用混合物粉砕機(Bajaj Electric Co.電力760W)を、蓋を付けて1分間使用して良く混合した。これは、使用準備が完了した被覆セメントを与えた。
【0151】
被覆セメントは、次いで吸湿性について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントによる吸湿性は、90日間の曝露の後でさえ、セメントの硬化無く最大0.01重量%であり、一方で非被覆セメントは、2日以内に最大2.5重量%の吸湿性を示し、この時点で表面はセメント硬化によって完全に固体になったことが観察された。
【0152】
被覆及び非被覆セメントの嵩密度は、タップ法を使用して試験した。被覆セメントの嵩密度は、非被覆セメントのものと比較して30%上昇したことが観察された。
【0153】
被覆セメントは、次いで圧縮強度について試験し、非被覆セメントと比較した。処理されたセメントから作製されたモルタルブロックの圧縮強度は、28日間の熟成後、非処理セメントから作製されたものと比較して、7%向上したことが分かった。
【0154】
実施例5(シリコーン樹脂の混合物及び環状流体の混合物)
20gのヒドロキシル終端メチルシルセスキオキサン樹脂及び20gのヒドロキシル終端フェニルシルセスキオキサン樹脂を500mlビーカーに取り、20gのデカメチルシクロペンタシロキサン流体及び15gのオクタメチルシクロテトラシロキサンをそれに添加した。混合物は、樹脂が完全に溶解するまで撹拌した。この混合物に、10gのメチルトリ(エチルメチルケトオキシム)シラン、1gの(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、及び14gのメチルトリメトキシシランを添加し、撹拌して均質な混合物を作製した。
【0155】
5gの上記の混合物を、995gの普通ポルトランドセメント(OPC)に添加し、家庭用混合物粉砕機(Bajaj Electric Co.電力760W)を、蓋を付けて1分間使用して混合した。これは、使用準備が完了した被覆セメントを与えた。
【0156】
被覆セメントは、次いで吸湿性について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントによる吸湿性は、90日間の曝露の後でさえ、被覆セメントの硬化無く最大0.03重量%であり、一方で非被覆セメントは2日以内に最大2.5重量%の吸湿性を示し、この時点で表面はセメント硬化によって完全に固体になったことが観察された。
【0157】
被覆及び非被覆セメントの嵩密度は、タップ法を使用して試験した。被覆セメントの嵩密度は、非被覆セメントのものと比較して、26%上昇したことが観察された。
【0158】
被覆セメントは、次いで圧縮強度について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントから作製されたモルタルブロックの圧縮強度は、28日間の熟成後、非被覆セメントから作製されたものと比較して、5%向上したことが分かった。
【0159】
実施例6(樹脂及び代替シランの混合物)
エトキシ及びヒドロキシル終端n−オクチルシルセスキオキサン樹脂、ならびにトリメチルシロキシ終端アミノプロピルフェニルシルセスキオキサン樹脂の各20gを500mlビーカー内に取り、35gのデカメチルシクロペンタシロキサン流体をそれに添加した。混合物は、樹脂が完全に溶解するまで攪拌した。この混合物に、10gのn−オクチルトリエトキシシラン、1gの(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、及び14gのメチルトリメトキシシランを添加し、撹拌して均質な混合物を作製した。
【0160】
5gの上記の混合物を、995gの普通ポルトランドセメント(OPC)に添加し、家庭用混合物粉砕機(Bajaj Electric Co.電力760W)を、蓋を付けて1分間使用して混合した。これは、使用準備が完了した被覆セメントを与えた。
【0161】
被覆セメントは、次いで吸湿性について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントによる吸湿性は、90日間の曝露の後でさえ、セメントの硬化無く最大0.04重量%であり、一方で非被覆セメントは2日以内に最大2.5重量%の吸湿性を示し、この時点で表面はセメント硬化によって完全に固体になったことが観察された。
【0162】
被覆及び非被覆セメントの嵩密度は、タップ法を使用して試験した。被覆セメントの嵩密度は、非被覆セメントのものと比較して、25%上昇したことが観察された。
【0163】
被覆セメントは、次いで圧縮強度について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントから作製されたモルタルブロックの圧縮強度は、28日間の熟成後、非被覆セメントから作製されたものと比較して、7%向上したことが分かった。
【0164】
実施例7(代替シラン及び上昇温度)
40gのヒドロキシル終端メチルシルセスキオキサン樹脂を500mlビーカー内に取り、35gのデカメチルシクロペンタシロキサン流体をそれに添加した。混合物は、樹脂が完全に溶解するまで80℃で攪拌した。この混合物に、10gのアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランシラン及び15gのメチルトリメトキシシランを添加し、80℃で攪拌して均質な混合物を作製した。
【0165】
5gの上記の混合物を、995gの普通ポルトランドセメント(OPC)に添加し、家庭用混合物粉砕機(Bajaj Electric Co.電力760W)を、蓋を付けて1分間使用して混合した。これは、使用準備が完了した被覆セメントを与えた。
【0166】
被覆セメントは吸湿性について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントによる吸湿性は、90日間の曝露の後でさえ、セメントの硬化無く最大0.01重量%であり、一方で非被覆セメントは2日以内に最大2.5重量%の吸湿性を示し、この時点で表面はセメント硬化によって完全に固体になったことが観察された。
【0167】
被覆及び非被覆セメントの嵩密度は、タップ法を使用して試験した。被覆セメントの嵩密度は、非被覆セメントのものと比較して、25%上昇したことが観察された。
【0168】
被覆セメントは、次いで圧縮強度について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントから作製されたモルタルブロックの圧縮強度は、28日間の熟成後、非被覆セメントから作製されたものと比較して、6%向上したことが分かった。
【0169】
実施例8(より高い温度での、樹脂の混合物、環状の混合物、及びシラン)
20gのヒドロキシル終端メチルシルセスキオキサン樹脂及び20gのヒドロキシル終端フェニルシルセスキオキサン樹脂を500mlビーカーに取り、20gのデカメチルシクロペンタシロキサン流体及び15gのオクタメチルシクロテトラシロキサンをそれに添加した。混合物は、樹脂が完全に溶解するまで、80℃で攪拌した。この混合物に、10gのメチルトリ(エチルメチルケトオキシム)シラン、1gの(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、及び14gメチルトリメトキシシランを添加し、80℃で攪拌して均質な混合物を作製した。
【0170】
5gの上記の混合物を、995gの普通ポルトランドセメント(OPC)に添加し、家庭用混合物粉砕機(Bajaj Electric Co.電力760W)を、蓋を付けて1分間使用して混合した。これは、使用準備が完了した被覆セメントを与えた。
【0171】
被覆セメントは吸湿性について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントによる吸湿性は、90日間の曝露の後でさえ、被覆セメントの硬化無く最大0.03重量%であり、一方で、非被覆セメントは2日以内に最大2.5重量%の吸湿性を示し、この時点で表面はセメント硬化によって完全に固体になったことが観察された。
【0172】
被覆及び非被覆セメントの嵩密度は、タップ法を使用して試験した。被覆セメントの嵩密度は、非被覆セメントのものと比較して、26%上昇したことが観察された。
【0173】
被覆セメントは、圧縮強度について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントから作製されたモルタルブロックの圧縮強度は、28日間の熟成後、非被覆セメントから作製されたものと比較して、5%向上したことが分かった。
【0174】
実施例9(直鎖及び環状オルガノポリシロキサンの混合物)
40gのヒドロキシル終端メチルシルセスキオキサン樹脂を500mlビーカー内に取り、15gのジメチルシロキサンヒドロキシル終端72cst及び20gのデカメチルシクロペンタシロキサン流体をそれに添加した。混合物は、樹脂が完全に溶解するまで撹拌した。この混合物に、10gのメチルトリ(エチルメチルケトオキシム)シラン、1gの(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、及び14gのメチルトリメトキシシランを添加し、良く撹拌して均質な混合物を作製した。
【0175】
5gの上記の混合物を、995gの普通ポルトランドセメント(OPC)に添加し、家庭用混合物粉砕機(Bajaj Electric Co.電力760W)を、蓋を付けて1分間使用して混合した。これは、使用準備が完了した被覆セメントを与えた。
【0176】
被覆セメントは、次いで吸湿性について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントによる吸湿性は、90日間の曝露の後でさえ、セメントの硬化無く最大0.03重量%であり、一方で非被覆セメントは2日以内に最大2.5重量%の吸湿性を示し、この時点で表面はセメント硬化によって完全に固体になったことが観察された。
【0177】
被覆及び非被覆セメントの嵩密度は、タップ法を使用して試験した。被覆セメントの嵩密度は、非被覆セメントのものと比較して、25%上昇したことが観察された。
【0178】
処理されたセメントは、次いで圧縮強度について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントから作製されたモルタルブロックの圧縮強度は、28日間の熟成後、非被覆セメントから作製されたものと比較して、4%向上したことが分かった。
【0179】
参考例1(直鎖オルガノポリシロキサンのみ)
40gのヒドロキシル終端メチルシルセスキオキサン樹脂を500mlビーカー内に取り、35gのジメチルシロキサンヒドロキシル終端72cstをそれに添加した。混合物は、樹脂が完全に溶解するまで撹拌した。この混合物に、10gのメチルトリ(エチルメチルケトオキシム)シラン、1gの(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、及び14gのメチルトリメトキシシランを添加し、良く撹拌して均質な混合物を作製した。
【0180】
5gの上記の混合物を、995gの普通ポルトランドセメント(OPC)に添加し、家庭用混合物粉砕機(Bajaj Electric Co.電力760W)を、蓋を付けて1分間使用して混合した。これは、使用準備が完了した被覆セメントを与えた。
【0181】
被覆セメントは、次いで吸湿性について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントによる吸湿性は、90日間の曝露の後でさえ、セメントの硬化無く最大0.03重量%であり、一方で非被覆セメントは2日以内に最大2.5重量%の吸湿性を示し、この時点で表面はセメント硬化によって完全に固体になったことが観察された。
【0182】
被覆及び非被覆セメントの嵩密度は、タップ法を使用して試験した。被覆セメントの嵩密度は、非被覆セメントのものと比較して、22%上昇したことが観察された。
【0183】
処理されたセメントは、次いで圧縮強度について試験し、非被覆セメントと比較した。被覆セメントから作製されたモルタルブロックの圧縮強度は、28日間の熟成後、非被覆セメントから作製されたものと比較して、3%向上したことが分かった。
【0184】
本発明は、本明細書に記載される具体的な実施例に限定されると考えられるべきではなく、むしろ本発明の全ての態様を網羅すると理解されるべきである。本発明が適用され得る様々な修正及び同等の方法、ならびに多数の構造及び装置が、当業者に容易に明らかになり得る。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得、これは本明細書に記載されるものに制限されると見なされないことを理解し得る。
本開示は以下の態様も包含する。
[1] 少なくとも、
(A)オルガノシクロシロキサンを含むオルガノポリシロキサンと、
(B)少なくとも2つの架橋基Xを含むオルガノシランと、
(C)少なくとも2つの架橋基Xを含むオルガノシリコーン樹脂と、を含み、
前記オルガノシラン(B)及び前記オルガノシリコーン樹脂(C)のうちの少なくとも一方が、少なくとも3つの架橋基を含む、シリコーン組成物。
[2] 前記架橋基Xが独立して、ケイ素、ヒドロキシル、アクリレート、アシル、アシルオキシ、ケトオキシム、アルケニル、アルコキシ、エポキシ、アミン、メルカプト、及びメタクリレートに直接結合した、水素を含む群のうちの1つ以上から選択される、上記態様1に記載のシリコーン組成物。
[3] 前記オルガノシラン(B)が、以下の一般式(1)のものであり、
R(4-a)Si(R1X)a (1)
式中、Xが既に定義された架橋基であり、R1が共有結合または二価有機連結基であり、Rが置換または非置換有機ラジカルであり、aが、2、3、または4、好ましくは3または4である、上記態様2に記載のシリコーン組成物。
[4] 前記オルガノシラン(B)式中、Rが1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、R1が共有結合であり、Xが1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基及び以下の一般式(11)のケトオキシムのうちの一方または両方であり、
−O−N=CR11R12 (11)
式中、R11及びR12が、独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基である、上記態様3に記載のシリコーン組成物。
[5] 前記オルガノシリコーン樹脂(C)が、以下の一般式(2)の少なくとも1つの構造単位と、
(R3SiO(3-b)/2(R2X)b) (2)
以下の一般式(8)の少なくとも80モル%の構造単位と、を含むシルセスキオキサン樹脂系化合物であり、
R19SiO3/2 (8)
式中、各R3及びR19が独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基及び2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基を含む群から選択され、R2が、共有結合またはアリール基を含有しない二価有機連結基であり、Xが上記に定義される架橋基であり、bが、0、1、または2であるが、ただし、前記シルセスキオキサン樹脂系化合物が、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの架橋基Xを含む、上記態様2〜4のいずれかに記載のシリコーン組成物。
[6] オルガノポリシロキサン(A)が、既に定義された少なくとも2つの架橋基Xを含む直鎖オルガノポリシロキサン、例えば以下の一般式(5)の直鎖オルガノポリシロキサンをさらに含み、
【化1】
式中、Xが既に定義された架橋基であり、R4が共有結合または二価有機連結基であり、各R5〜R10が、独立して、置換もしくは非置換有機ラジカル、または前記基R4Xであり、eが1〜70の範囲の整数である、上記態様2〜5のいずれかに記載のシリコーン組成物。
[7] オルガノポリシロキサン(A)が、オルガノシクロシロキサン環中に3〜10個のケイ素原子を有するオルガノシクロシロキサンを含む、上記態様1〜6のいずれかに記載のシリコーン組成物。
[8] 前記オルガノポリシロキサン(A)の前記オルガノシクロシロキサンが、以下の一般式(6)のものであり、
【化2】
式中、R13及びR14が、独立して、置換または非置換有機ラジカルであり、fが3〜10、好ましくは4〜6の範囲の整数である、上記態様1〜7のいずれかに記載のシリコーン組成物。
[9] 上記態様1〜8のいずれかに記載のシリコーン組成物を架橋することによって得られる架橋シリコーン。
[10] 上記態様1〜8のいずれかに記載のシリコーン組成物または上記態様9に記載の架橋シリコーンで被覆された基材。
[11] 上記態様1〜8のいずれかに記載のシリコーン組成物が、前記基材上で架橋されて、架橋シリコーンを提供する、上記態様10に記載の基材。
[12] 前記基材がセメントである、上記態様10または上記態様11に記載の基材。
[13] 上記態様11に記載の基材を含む、建築材料。
[14] 架橋シリコーン被覆基材を提供するための方法であって、少なくとも、
−基材を提供する工程と、
−上記態様1〜8のいずれかに記載のシリコーン組成物を前記基材に塗布して、前記シリコーン組成物で被覆された基材を提供する工程と、
−前記シリコーン組成物を前記基材上で架橋して、架橋シリコーン被覆基材を提供する工程と、を含む、前記方法。
[15] 前記架橋工程が、
−前記基材上の前記シリコーン組成物を、任意選択的に酸またはアルカリの存在下で、水と接触させることを含む、上記態様14に記載の方法。
[16] 架橋シリコーン被覆基材を提供するための方法であって、少なくとも、
−基材を提供する工程と、
−前記基材を上記態様9に記載の架橋シリコーンと混合して、架橋シリコーン被覆基材を提供する工程と、を含む、前記方法。
[17] 上記態様9に記載の架橋シリコーンがシリコーン粉末である、上記態様16に記載の方法。
[18] 前記基材を架橋シリコーンと混合する前記工程が、前記基材を架橋シリコーンと粉砕することを含む、上記態様16または上記態様17に記載の方法。
[19] 前記基材がセメントである、上記態様13〜18のいずれかに記載の方法。
[20] 疎水化添加剤、嵩密度向上剤、及び流動性向上剤を含む群のうちの1つ以上としての、上記態様1〜8のいずれかに記載のシリコーン組成物、または上記態様9に記載の架橋シリコーンの使用。