(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記断熱材と組み合わされた熱ダイオードが、前記熱交換器が動作停止したときに、前記冷却チャンバーに戻る熱漏洩を阻止するように、前記熱受容ループと前記熱排出ループは、前記熱交換器が動作停止したときに、前記熱ダイオードとして動作する、請求項1に記載の熱電冷却システム。
前記断熱材と組み合わされた熱ダイオードが、1つ以上の熱電冷却器が動作停止したときに、前記冷却チャンバーに戻る熱漏洩を阻止するように、前記熱受容ループ及び前記熱排出ループは、前記複数の熱電冷却器の1つ以上の熱電冷却器が動作停止したときに、前記熱ダイオードとして動作する、請求項2に記載の熱電冷却システム。
前記熱交換器の前記低温側ヒートシンクは、前記冷却チャンバーの壁の外側に取り付けられ、前記断熱材は前記熱交換器の前記低温側ヒートシンクと前記冷却チャンバーの前記壁の間の断熱材を備える、請求項5に記載の熱電冷却システム。
前記断熱材と組み合わされた熱ダイオードが、前記熱交換器が動作停止したときに前記冷却チャンバーに戻る熱漏洩を阻止するように、前記受容ループ及び前記第2の受容ループは、前記熱交換器が動作停止したときに、前記熱ダイオードとして動作する、請求項10に記載の熱電冷却システム。
少なくとも1つの追加的な冷却チャンバーを更に備え、前記第2の受容ループは、前記少なくとも1つの追加的な冷却チャンバーのうちの1つから熱を抽出するように動作する、請求項10に記載の熱電冷却システム。
前記熱交換器は、前記冷却チャンバー及び前記少なくとも1つの追加的な冷却チャンバーからなるグループのうちの1つの壁の外側に取り付けられている、請求項12に記載の熱電冷却システム。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に説明される実施形態は、当業者が実施形態を実施できるようにするために必要な情報を表し、また実施形態を実施する最善の形態を説明している。以下の説明を添付の図面に照らして読めば、当業者であれば、本開示の概念を理解し、本明細書で特に取り上げられていないこれらの概念の適用を認識し得る。これらの概念および適用が、本開示および添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることを理解されたい。
【0043】
当然のことながら、様々な要素を表すために、第1、第2、などの語が本明細書において使用される場合があるが、これらの要素は、これらの語によって限定されるべきではない。これらの語は、ある要素を別の要素と区別するためにだけ用いられる。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素は、第2の要素と称し得るし、同様に、第2の要素は、第1の要素と称し得る。本明細書において使用される場合、「および/または(and/or)」の語は、関連して列挙された項目のうちの1つ以上の任意の組み合わせおよびすべての組み合わせを含む。
【0044】
「下方(below)」または「上方(above)」または「上部(upper)」または「下部(lower)」または「水平(horizontal)」または「鉛直(vertical)」などの相対語は、図に示されている、ある要素、層、または領域と、別の要素、層、または領域との関係を説明するために、本明細書において使用される場合がある。当然のことながら、これらの語および上述の内容は、図に示された装置の向きに加えて、様々な向きを包含することを意図している。
【0045】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、本開示を限定するものではない。本明細書において使用される場合、単数形(”a,””an,”および”the”)は、単数ではないことが文脈上明らかでないかぎり、複数形もまた含むことを意図している。さらに当然のことながら、本明細書において使用される場合、「備える(”comprises,””comprising”)」、「含む(”includes,””including”)」の語は、表明された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を規定するが、1つ以上のその他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。
【0046】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての語(技術用語および科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。さらに当然のことながら、本明細書において使用される語は、本明細書および関連分野の文脈におけるそれらの意味と矛盾のない意味を有するものと解釈すべきであり、本明細書において明示的に定義されていない限り、理想化された意味や過度に形式的な意味では解釈されない。
【0047】
図1は、本開示の一実施形態による熱電冷却システム100を示している。図示のように、熱電冷却システム100は、冷却チャンバー102と、熱交換器104と、冷却チャンバー102内における冷却を制御するコントローラ106とを含む。熱交換器104は、高温側ヒートシンク108と、低温側ヒートシンク110と、複数の熱電冷却器(TEC)を含むカートリッジ112とを含み、ここで、各TECは、低温側ヒートシンク110と熱的に結合される低温側と、高温側ヒートシンク108と熱的に結合される高温側とを有する。TECは、好ましくは、薄膜デバイスである。TECのうちの1つ以上がコントローラ106によって起動されると、起動されたTEC(複数可)は、高温側ヒートシンク108を加熱し、また低温側ヒートシンク110を冷却するように動作して、それによって、冷却チャンバー102から熱を抽出するための熱伝達を促進する。より具体的には、TECのうちの1つ以上が起動されると、高温側ヒートシンク108が加熱されて、それによって蒸発器を形成し、また低温側ヒートシンク110が冷却されて、それによって凝縮器を形成する。
【0048】
凝縮器として作用することで、低温側ヒートシンク110は、低温側ヒートシンク110と結合された受容ループ114を介する、冷却チャンバー102からの抽熱を促進する。受容ループ114は、熱電冷却システム100の内壁115に熱的に結合される。内壁115は、冷却チャンバー102を画定する。一実施形態では、受容ループ114は、内壁115内に組み込まれる、または内壁115の面上に直接組み込まれる。受容ループ114は、冷却媒体(例えば、二相冷却剤)を受容ループ114を通して流す、または通過させる任意のタイプの配管によって形成される。受容ループ114と内壁115との熱結合により、冷却媒体が受容ループ114を通って流れる時に、冷却媒体は、冷却チャンバー102から熱を抽出する。受容ループ114は、例えば、銅管、プラスチック管、ステンレス鋼管、アルミニウム管などで形成され得る。
【0049】
低温側ヒートシンク110および受容ループ114によって形成された凝縮器は、任意の好適な熱交換技術により動作する。1つの好ましい実施形態では、受容ループ114は、冷却媒体が低温側ヒートシンク110から受容ループ114を通って低温側ヒートシンク110に戻るように移動して、それによって、二相の受動的な熱輸送を用いて冷却チャンバー102を冷却するような、熱サイフォンの原理にしたがって動作する(すなわち、熱サイフォンとして作用する)。特に、受動的な熱交換は、受容ループ114内の冷却媒体と、冷却チャンバー102との間における自然対流を介して起こる。一実施形態では、冷却媒体が冷却チャンバー102と熱接触する際、冷却媒体は液状である。具体的には、受動的な熱交換は、冷却チャンバー102内の温度が下降し、また冷却媒体の温度が上昇するおよび/または相変化を経るように、冷却チャンバー102内の環境と、受容ループ114内の冷却媒体との間で起こる。冷却媒体の温度が上昇すると、蒸発を経るなどして冷却媒体の密度が減少する。その結果、冷却媒体は、受容ループ114において熱交換器104に向けて、そして特に低温側ヒートシンク110に向けて浮力により上向きに移動する。冷却媒体は、低温側ヒートシンク110と熱接触し、ここで、冷却媒体と低温側ヒートシンク110との間で熱交換が起こる。冷却媒体と低温側ヒートシンク110との間で熱交換が起こると、冷却媒体は、凝縮し、そして冷却チャンバー102からさらなる熱を抽出するために、重力により再び受容ループ114を通って流れる。このように、一部の実施形態では、受容ループ114は、冷却チャンバー102を冷却する際に、蒸発器として機能する。
【0050】
上述のように、熱交換器104は、高温側ヒートシンク108と低温側ヒートシンク110との間に配置されるカートリッジ112を含む。カートリッジ112内のTECは、高温側ヒートシンク108と熱的に結合される高温側(すなわち、TECの動作中に高温である側)と、低温側ヒートシンク110と熱的に結合される低温側(すなわち、TECの動作中に低温である側)とを有する。カートリッジ112内のTECは、低温側ヒートシンク110と高温側ヒートシンク108との間の熱伝達を効率的に促進する。より具体的には、受容ループ114内の冷却媒体と低温側ヒートシンク110との間で熱伝達が起こる場合、稼働中のTECは、低温側ヒートシンク110と高温側ヒートシンク108との間で熱を伝達する。
【0051】
蒸発器として作用することで、高温側ヒートシンク108は、高温側ヒートシンク108に結合された排出ループ116を介する、冷却チャンバー102の外部の環境への熱の排出を促進する。排出ループ116は、熱電冷却システム100の外壁118、または外板に熱的に結合される。外壁118は、冷却チャンバー102の外部の環境と直接熱接触している。さらに、外壁118は、例えば、適切な断熱材によって、受容ループ114および内壁115(ひいては冷却チャンバー102)から熱的に分離されている。一実施形態では、排出ループ116は、外壁118内に組み込まれる、または外壁118の面上に組み込まれる。排出ループ116は、熱伝達媒体(例えば、二相冷却剤)を排出ループ116を通して流す、または通過させる任意のタイプの配管によって形成される。排出ループ116と外部環境との熱結合により、熱伝達媒体が排出ループ116を通って流れる時に、熱伝達媒体は、外部環境に熱を排出する。排出ループ116は、例えば、銅管、プラスチック管、ステンレス鋼管、アルミニウム管などで形成され得る。
【0052】
高温側ヒートシンク108および排出ループ116によって形成された蒸発器は、任意の好適な熱交換技術により動作する。1つの好ましい実施形態では、排出ループ116は、熱伝達媒体が高温側ヒートシンク108から排出ループ116を通って高温側ヒートシンク108に戻るように移動して、それによって、二相の受動的な熱輸送を用いて熱を排出するような、熱サイフォンの原理にしたがって動作する(すなわち、熱サイフォンとして作用する)。特に、高温側ヒートシンク108は、低温側ヒートシンク110から受け取った熱を排出ループ116内の熱伝達媒体に伝達する。熱が熱伝達媒体に伝達されると、熱伝達媒体は、相変化し、排出ループ116を通って移動し、熱が冷却チャンバー102の外部の環境に排出されるように、外壁118と熱接触する。排出ループ116内の熱伝達媒体が外壁118と直接熱接触すると、排出ループ116内の熱伝達媒体と外部環境との間に受動的な熱交換が起こる。良く知られているように、受動的な熱交換は、排出ループ116内において熱伝達媒体を凝縮させて、熱伝達媒体が、重力の力で熱交換器104に移動して戻るようにする。このように、排出ループ116は、冷却チャンバー102の外部の環境に熱を排出する場合、凝縮器として機能する。
【0053】
以下に詳述するように、1つの好ましい実施形態では、熱交換器104は、冷却チャンバー102と直接熱接触せず、代わりに冷却チャンバー102から熱的に分離される。同様に、熱交換器104は、外壁118と直接熱接触せず、代わりに外壁118から熱的に分離される。したがって、以下に詳述するように、熱交換器104は、熱電冷却システム100の冷却チャンバー102および外壁118の両方から熱的に分離される。重要なことに、このことが、熱ダイオード効果をもたらし、これにより、TECが動作停止された場合に、熱が漏れて冷却チャンバー102の中に戻ることのないようにされる。
【0054】
コントローラ106は、冷却チャンバー102内において所望の設定点温度を維持するために、カートリッジ112内のTECを制御するように動作する。概して、コントローラ106は、TECを選択的に起動/動作停止する、TECの入力電流を選択的に制御する、および/またはTECのデューティサイクルを選択的に制御するように動作して、所望の設定点温度を維持する。さらに、好ましい実施形態では、コントローラ106は、1つ以上、また一部の実施形態では、2つ以上のTECサブセットを別々に、または独立に制御可能とされ、ここで、各サブセットは、1つ以上の種々のTECを含む。このように、例として、カートリッジ112に4つのTECがある場合、コントローラ106は、第1の単独のTEC、第2の単独のTEC、および2つのTECのグループ(すなわち、第1および第2の単独のTECならびに2つのTECのグループ)を別々に制御可能とされる。この方法により、コントローラ106は、例えば、要求に応じて、最大化した効率で、1つ、2つ、3つ、または4つのTECを独立して、選択的に起動し得る。
【0055】
この例を続けると、コントローラ106は、(1)第1の単独のTECの起動/動作停止、第1の単独のTECの入力電流、および/または第1の単独のTECのデューティサイクル、(2)第2の単独のTECの起動/動作停止、第2の単独のTECの入力電流、および/または第2の単独のTECのデューティサイクル、ならびに(3)2つのTECのグループの起動/動作停止、2つのTECのグループの入力電流、および/または2つのTECのグループのデューティサイクルを別々にかつ選択的に制御可能とされ得る。種々のTECサブセットのこの個別選択的制御を用いて、コントローラ106は、好ましくは、TECを制御して、熱電冷却システム100の効率を高める。例えば、冷却チャンバー102が設定点温度である、または既定の定常状態温度範囲内にある場合などの定常状態モードで動作する場合、コントローラ106は、TECを制御して、効率を最大化し得る。しかしながら、予冷中または回復中においては、コントローラ106は、TECを制御して、冷却チャンバー102からの抽熱を最大化する、予冷/回復の時間および効率の間における妥協点を提供するなど、所望の性能を達成し得る。
【0056】
先に進む前に、冷却容量対TECの入力電流特性および効率対TECの入力電流特性に関する簡潔な説明が役立つ。これに関し、
図2は、TECの冷却容量(Q)および冷却効率(COP)対TECの入力電流を示すグラフである。冷却効率は、より具体的には、成績係数(COP)によって表される。
図2に示されるように、TECの入力電流(I)が増加するにつれて、TECの冷却容量もまた増加する。最大の熱量がTECによって除去されている場所を表す冷却容量(Q)曲線上の点は、Q
maxとして示されている。したがって、TECがQ
maxで動作している場合、TECは、最大限の熱量を除去している。TECは、対応する最大電流I
maxがTECに流される場合、Q
maxで動作する。
図2はまた、TECのCOPを電流の関数として示している。冷却用途では、TECのCOPは、熱を除去するためのTECへの作業入力量に対して除去された熱の比率である。TECのCOPが最大化される熱量、または容量(Q)は、Q
COPmaxとして示されている。TECは、電流I
COPmaxがTECに流される場合、Q
COPmaxで動作する。このように、TECの効率、またはCOPは、TECがQ
COPmaxで動作するように電流I
COPmaxがTECに流される場合、最大化される。
【0057】
以下に詳述するように、好ましい実施形態では、コントローラ106は、カートリッジ112内のTECを制御して、定常状態での動作中に、TECのうちの1つ以上が起動され、かつQ
COPmaxで動作され、また残りのTECが動作停止されて、それによって、効率を最大化するようにする。起動されるTECの数、また逆に動作停止されるTECの数は、要求に応じて決まる。逆に、予冷中または回復中においては、カートリッジ112内のTECの1つ以上および場合によりすべてが、起動され、かつ所望の成績特性で動作される。所望の成績特性の一例では、予冷または回復の時間を最小化するために、TECのすべてが起動され、かつQ
maxで動作される。しかしながら、所望の成績特性は、代替的に、予冷または回復の時間および効率の間における妥協点を提供し得、そこでは、例えば、TECの全てが起動され、かつQ
COPmaxとQ
maxとの間の点で動作される。以下に説明されるように、TECの制御がこれらの例に限定されないことに留意されたい。
【0058】
上述のように、
図2は、単一のTECの冷却容量および冷却効率を示している。TECの数を増加することは、TECを用いる熱電冷却システム100の動作COPに影響することなく、熱除去性能を直線的に増加する。したがって、熱電冷却システム100が4つのTECを含む場合、この熱電冷却システム100の熱除去性能は、システム全体を、一部の好ましい実施形態では、オフ、Q
COPmax、およびQ
maxの間で動作させながら、単一のTECを含む熱電冷却システム100の実施形態に比べて、4倍に増加する。
【0059】
なお、TECへの電流印加および
図2は、冷却に関する文脈で説明されているが、同じ原理は、熱回収/発電の文脈において適用され、そこでは、TECは、熱に応じて電力、または電流を生成するために用いられる。
【0060】
TECカートリッジ
TECを別々にかつ選択的に制御するコントローラ106の動作の詳細を説明する前に、TECの個別かつ選択的制御を可能にする
図1のカートリッジ112の実施形態を説明することが役立つ。以下のカートリッジ112の説明は
図1の熱電冷却システム100を対象としているが、カートリッジ112は、
図1の熱電冷却システム100における使用にも熱電冷却全般における使用にも限定されるものではないことに留意されたい。例えば、カートリッジ112は、熱回収または発電の用途に利用され得る。
【0061】
上述のように、カートリッジ112内のTECは、冷却チャンバー102の温度を調節するために用いられる。多くの冷却用途に関して所望の冷却容量を満たすために、熱電冷却システム100は、複数のTECを利用する。複数のTECを用いることは、単一の大きなTECを用いることよりも有益である。それは、複数のTECが、様々な所望の条件下で所望の成績を提供し得るように、別々に制御され得るためである。その一方で、予冷または回復のために最大所望容量を提供するように設計される単一の大きすぎるTECは、この柔軟性を提供しない。例えば、定常状態条件の間、単一の大きすぎるTECは、典型的には、低COP値に対応する低容量点で動作する。つまり、大きすぎるTECは、効率的に動作しない。その一方で、コントローラ106は、定常状態条件の間における効率を最大化するために、カートリッジ112内のTECサブセットを別々に制御可能とされる。
【0062】
図3から
図5は、所望の制御スキームにしたがって、コントローラ106が種々のTECサブセットを別々にかつ選択的に制御できるようにする、カートリッジ112の実施形態を示している。ただし、
図3から
図5の実施形態は、例にすぎないことに留意されたい。カートリッジ112は、任意の数のTECを保持し、任意の数のTECサブセットを別々に制御できるように構成され得る。各サブセットは、概して、1つ以上のTECを含む。さらに、種々のサブセットは、同数または異なる数のTECを含み得る。
【0063】
図3の実施形態では、カートリッジ112は、相互接続ボード122上に配置されるTEC120aから120f(全般的に本明細書において、集団では複数のTEC120、個別にはTEC120と呼ぶ)を含む。TEC120は、薄膜デバイスである。薄膜TECの一部の非限定的な例は、METHOD FOR THIN FILM THERMOELECTRIC MODULE FABRICATIONと題する米国特許第8,216,871号に開示されており、これはここにその全体を参照することにより本明細書に援用される。相互接続ボード122は、TEC120aから120fの4つのサブセットを規定する、導電性の配線124aから124d(全般的に本明細書において、集団では複数の配線124、個別には配線124と呼ぶ)を含む。特に、TEC120aおよび120bは、配線124aを介して互いに直列に電気的に接続され、それにより、第1のTEC120のサブセットを形成する。同様に、TEC120cおよび120dは、配線124bを介して互いに直列に電気的に接続され、それにより、第2のTEC120のサブセットを形成する。TEC120eは、配線124dに接続され、それにより、第3のTEC120のサブセットを形成し、またTEC120fは、配線124cに接続され、それにより第4のTEC120のサブセットを形成する。コントローラ106(
図1)は、順不同で、配線124aに流す電流を制御することによって、第1のTEC120のサブセット(すなわち、TEC120aおよび120b)を選択的に制御し、配線124bに流す電流を制御することによって、第2のTEC120のサブセット(すなわち、TEC120cおよび120d)を選択的に制御し、配線124dに流す電流を制御することによって、第3のTEC120のサブセット(すなわち、TEC120e)を選択的に制御し、配線124cに流す電流を制御することによって、第4のTEC120のサブセット(すなわち、TEC120f)を選択的に制御する。したがって、TEC120aおよび120bを例として用いれば、コントローラ106は、配線124aから電流を除去する(動作停止する)または配線124aに電流を流す(起動する)ことによってTEC120aおよび120bを選択的に起動/動作停止することができる、TEC120aおよび120bが起動されている間、配線124aに流す電流を選択的に増加または減少させることができる、および/またはTEC120aおよび120bが起動されている間、TEC120aおよび120bのデューティサイクルを制御するように配線124aに流す電流を制御することができる(例えば、電流のパルス幅変調)。
【0064】
相互接続ボード122は、TEC120aから120fの底面を露出する、開口部126aおよび126b(全般的に本明細書において、集団では複数の開口部126、個別には開口部126と呼ぶ)を含む。高温側ヒートシンク108(
図1)と低温側ヒートシンク110(
図1)との間に配置される場合、開口部126aおよび126bは、TEC120aから120fの底面が適切なヒートシンク108または110に熱的に結合できるようにする。
【0065】
本開示の実施形態によれば、動作中、コントローラ106は、対応する配線124aから124dの電流を流したり除去したりすることによって、TEC120のサブセットの任意の組み合わせを選択的に起動または動作停止し得る。さらに、コントローラ106は、対応する配線124aから124dに与えられる電流量を制御することによって、稼働中のTEC120の動作点を制御できる。例えば、第1のTEC120のサブセットのみが定常状態での動作中に起動され、かつQ
COPmaxで動作される場合、コントローラ106は、配線124aに電流I
COPmaxを供給して、それによって、TEC120aおよび120bを起動し、TEC120aおよび120bをQ
COPmaxで動作させ、またその他の配線124bから124dから電流を除去して、それによって、その他のTEC120cから120fを動作停止させる。
【0066】
図3を参照して示される実施形態では、カートリッジ112は、TEC120aから120fを含む。本開示の実施形態によれば、カートリッジ112は、任意の数のTEC120を含み得る。例えば、
図4を参照して示される実施形態では、カートリッジ112は、2つのTEC120のみ、すなわち、TEC120eおよび120fを有する相互接続ボード122を含む。この実施形態では、コントローラ106(
図1)は、それぞれ対応する配線124dおよび124cに与えられる電流を制御することによって、TEC120eおよび120fを独立に制御できる。別の例として、カートリッジ112は、
図5を参照して示されるように、TEC120cから120fなどの4つのTEC120のみを含み得る。この実施形態では、相互接続ボード122は、配線124bから124dを含み、これらはそれぞれ、TEC120cから120fに電流を供給する。さらに、対応するTEC120のサブセットは、配線124bから124dに適切な電流を供給することによって、コントローラ106により制御され得る。
【0067】
図3から
図5は、カートリッジ112上の種々のTECの選択的制御を可能にするカートリッジ112の実施形態を示しているが、
図6から
図8は、選択的制御が不要な場合に利用され得るカートリッジ112の実施形態を示している。これらの実施形態では、TECの入力電流および/またはTECのデューティサイクルは、所望の容量、所望の効率、または容量および効率の間におけるいくらかの妥協点を提供するように変化され得る。特に、
図6は、相互接続ボード128と、相互接続ボード128上に配置された単一のTEC130とを含むカートリッジ112の実施形態を示している。相互接続ボード128の開口部131は、TEC130の底面を露出する。コントローラ106(
図1)は、相互接続ボード128上の導電性の配線132を介してTEC130への電流入力を制御することによって、TEC130の容量および効率を制御できる。
【0068】
図7は、カートリッジ112の実施形態を示しており、これは、
図6のものに類似しているが、カートリッジ112は4つのTECを含んでいる。より具体的には、カートリッジ112は、相互接続ボード134と、相互接続ボード134上に配置された4つのTEC136とを含む。相互接続ボード134には開口部137があって、TEC136の底面を露出する。同様に、相互接続ボード134上の導電性の配線138を介してTEC136への電流入力および/またはTEC136のデューティサイクルを制御することによって、コントローラ112は、TEC136の容量および効率を制御できる。
【0069】
図8は、カートリッジ112のさらに別の実施形態を示しており、これは、
図6および
図7のものに類似しているが、カートリッジ112は6つのTECを含んでいる。より具体的には、カートリッジ112は、相互接続ボード140と、相互接続ボード140上に配置された6つのTEC142とを含む。相互接続ボード140には開口部143があって、TEC142の底面を露出する。同様に、相互接続ボード140上の導電性の配線144を介してTEC142への電流入力および/またはTEC142のデューティサイクルを制御することによって、コントローラ112は、TEC142の容量および効率を制御できる。
図6から
図8の実施形態は、例にすぎないことに留意されたい。カートリッジ112は、任意の数のTECまたは導電性の配線を直列または並列の構成で含むように構成され得る。
【0070】
図9から
図14は、
図3から
図8の相互接続ボード122、128、134、および140をそれぞれ示しているが、TECが相互接続ボードに取り付けられていない状態である。
図9から
図14は、相互接続ボードの開口部126、131、137、および143をより明確に示しており、これらは、TECの底面を露出する、すなわち、換言すると、TECの底面と適切なヒートシンク108または110との間の熱結合を可能にする。
図9から
図14はまた、接点146、148、150、および152を示しており、これらは、相互接続ボード122、128、134、および140と対応するTECとの間の電気的かつ機械的接続を可能にする。
【0071】
TECを選択的に制御する
以下は、
図1のコントローラ106の動作の実施形態の詳細な説明である。この説明では、カートリッジ112は、
図3のカートリッジ112であると想定されており、これは、TEC120の複数の種々のサブセットの選択的制御を可能にする。ただし、
図3のカートリッジ112を用いることは、例にすぎないことに留意されたい。
【0072】
図15は、本開示の一実施形態によるコントローラ106の動作を示している。図示のように、コントローラ106は、温度入力154および156から温度データを受信する。温度入力154および156は、任意のタイプの温度センサであり得る。温度データは、冷却チャンバー102の温度(T
CH)と、熱交換器104の排出側、または高温側の温度(T
R)とを含む。熱交換器104の排出側とは、熱交換器104の高温側である。したがって、例えば、温度(T
R)は、高温側ヒートシンク108の温度であり得る。温度データに基づいて、コントローラ106は、熱電冷却システム100の現在の動作モードを判定する。この実施形態では、現在の動作モードとは、予冷モード158、定常状態モード160、温度過昇モード162、および回復モード163のうちの1つである。予冷モード158は、一般に、熱電冷却システム100が最初に電源投入された時に生じる。定常状態モード160は、冷却チャンバー102の温度が所望の設定点温度、またはその付近にある場合に生じる。特に、冷却チャンバー102の温度が設定点温度を含む既定の定常状態範囲内にある場合に(例えば、冷却チャンバー102の設定点温度±2度)、冷却チャンバー102の温度は、所望の設定点温度、またはその付近にある。温度過昇モード162は、熱交換器104の排出側の温度が、既定の最大許容温度を上回る場合である。温度過昇モード162は、安全モードであり、その最中には、TEC120を損傷から保護するために、熱交換器104の排出側の温度、ひいてはTEC120の高温側の温度が下降させられる。最後に、回復モード163は、例えば、冷却チャンバー102内への熱漏洩、冷却チャンバー102の開放などに起因して、冷却チャンバー102の温度が定常状態範囲の外側で上昇する場合である。
【0073】
本開示の一実施形態における種々のモード158、160、162、および163におけるコントローラ106の動作が
図16に示されている。
図16に示されるように、予冷モード158で動作する場合、コントローラ106は、TEC120のすべてに対する電流を制御して、TEC120のすべてが、所望の成績特性に応じて、Q
COPmaxおよびQ
maxの間の電力レベルで動作するようにする。換言すると、コントローラ106は、I
COPmaxおよびI
maxの間の電流をTEC120のすべてに供給させる。コントローラ106は、例えば、熱電冷却システム100が最初に購入された場合、または熱電冷却システム100が電源から切り離された後に電源投入された後などの最初に電源投入されたということに基づいて、熱電冷却システム100が予冷モード158にある場合を判定する。コントローラ106は、164に示されるように、冷却チャンバー102の温度が設定点温度に、または設定点温度の許容範囲内に予冷されるまで、TEC120のすべてをQ
COPmaxおよびQ
maxの間の電力レベルに維持する。冷却チャンバー102が設定点温度にまで予冷されたならば、コントローラ106は、TEC120の動作を制御して、電流I
COPmaxをTEC120のすべてに供給させることによって、TEC120のすべてがQ
COPmaxで動作するようにする。さらに、コントローラ106は、冷却チャンバー102が設定点温度にまで予冷されると、起動されるTEC120の数を削減し得る。
【0074】
上述のように、温度データに基づいて、コントローラ106はまた、熱電冷却システム100が定常状態モード160にある場合を判定する。冷却チャンバー102の温度が設定点温度に等しい、または設定点温度の既定の範囲内にある場合、熱電冷却システム100は、定常状態モード160にある。定常状態モード160にある場合、コントローラ106は、要求に応じて、必要数のTEC120をQ
COPmaxに設定する。この例では、TEC120のすべては、定常状態モード160において、Q
COPmaxで動作される。定常状態モード160の間、166に示されるようにQ
COPmax>Q
leakの場合、冷却チャンバー102の温度は下降し続ける。この場合、コントローラ106は、168に示されるように、起動されたTEC120のデューティサイクルを低減する。逆に、170に示されるようにQ
COPmax<Q
leakの場合、冷却チャンバー102の温度は上昇する。この場合、コントローラ106は、稼働中のTEC120の数を利用可能な限り増加し、次いで、稼働中のTEC120に供給される電流を、172に示されるようにI
COPmaxおよびI
maxの間の値まで増加する。特に、Q
leakは、冷却チャンバー102の扉の封止を通過する熱、冷却チャンバー102を通る自然な熱伝導など、冷却チャンバー102内への熱漏洩量を指す。
【0075】
上述のように、コントローラ106はまた、温度入力156からの温度データに基づいて、冷却チャンバー102が温度過昇モード162にあるかどうかを判定する。熱電冷却システム100の動作中、熱交換器104の排出側における温度が監視されて、熱交換器104の排出側における温度が既定の最大許容温度を決して超えることのないようにする。例えば、冷却チャンバー102に続く扉が適切に閉じられていない場合など、冷却チャンバー102が冷めない場合、熱交換器104の排出側における温度が、既定の最大許容温度を超える場合がある。
【0076】
コントローラ106は、熱交換器104の排出側における温度が既定の最大許容温度を超えると判定する場合、動作174において、コントローラ106は、冷却を促進しているTEC120の一部またはすべてを動作停止させることによって、あるいはTEC120に供給される電流を減らすことによって、熱交換器104の排出側における温度を下降させる。例えば、TEC120のすべてがQ
COPmaxまたはQ
maxで動作している場合、コントローラ106は、TEC120のうちの1つ以上、あるいは好ましくはTEC120のすべてを動作停止し得る。別の例では、TEC120a、120b、120e、および120fがQ
maxで動作している場合、コントローラ106は、TEC120eおよび120fを動作停止して、TEC120aおよび120bのみがQ
maxで動作し、冷却チャンバー102からの抽熱を促進するようにし得る。別の例では、TEC120aから120dがQ
COPmaxで動作している場合、カートリッジ112を損傷することなく、冷却チャンバー102の温度を出来る限り設定点温度の近くとなるように維持するために、コントローラ106は、TEC120cおよび120dを動作停止して、次いで、TEC120eを起動し得る。なお、熱交換器104の温度が最大許容温度を超えたという判定に応じて、コントローラ106は、任意の数の稼働中のTEC120を動作停止し、任意の数の非稼働中のTEC120を起動し得る。
【0077】
上述のように、熱交換器104の温度が既定の最大許容温度を超えることをコントローラ106が判定する場合、コントローラ106は、TEC120の一部またはすべてを動作停止することに加えて、あるいはそれに替えて、TEC120に供給される電流を抑制し得る。この機能をさらに説明すると、TEC120のすべてがQ
COPmaxまたはQ
maxで動作している場合、コントローラ106は、TEC120のそれぞれに供給される電流量を低減し得る。例えば、TEC120のすべてがQ
maxで動作している場合、コントローラ106は、I
maxからI
COPmaxおよびI
maxの間である値に電流を抑制し得る。加えて、TEC120のすべてがQ
COPmaxまたはQ
maxで動作している場合、熱交換器104の温度を下降させるために、コントローラ106は、TEC120の一部に供給される電流だけを抑制し得る。さらなる実施形態では、熱交換器104の温度が既定の最大許容温度を超える場合、コントローラ106はまた、TEC120の一部を動作停止すると同時に、起動されたままのTEC120の一部またはすべてへの電流を低減し得る。
【0078】
回復モード163にある場合、コントローラ106は、稼働中のTEC120を、175に示されるようにQ
COPmaxでの動作からQ
maxでの動作に切り替える。回復モード163は、定常状態での動作中に、冷却チャンバー102内の温度が短期間の内に設定点温度を上回って著しく上昇したことを示す温度入力154からの温度データを、コントローラ106が受信した場合に生じる。具体的には、冷却チャンバー102内の温度が、温度の定常状態範囲の上限を上回って上昇する(例えば、所望の定常状態範囲の上限を既定する、いくらかの既定の値を加えた設定点温度を上回って上昇する)場合に、熱電冷却システム100は、回復モード163に入り得る。
【0079】
様々なモード158、160、162、および163に関して
図16に示されている制御164、166、168、170、172、174、および175は、例にすぎないことに留意されたい。コントローラ106がTEC120をモード158、160、162、および163のそれぞれにおいて制御する方法は、個別の実装に応じて変わり得る。概して、上述のように、コントローラ106は、TEC120を制御して、予冷モード158または回復モード163の場合に冷却チャンバー102の温度を下げる。これがなされる際の的確な方法は変わり得る。例えば、最小の予冷または回復の時間が求められる成績特性の場合、コントローラ106は、TEC120のすべてをQ
maxで100%デューティサイクル(常時オン)の状態で起動し得る。逆に、予冷または回復の時間および効率の間における妥協点が要求される場合、コントローラ106は、例えば、TEC120のすべてを、Q
COPmaxで100%デューティサイクル(常時オン)の状態で、またはQ
COPmaxおよびQ
maxの間のどこかで起動し得る。定常状態モード160にある場合、コントローラ106は、一般に、効率的に設定点温度を維持するように動作する。例えば、コントローラ106は、必要数のTEC120(例えば、すべてのTEC120またはすべてには満たないTEC120)を負荷に基づいてQ
COPmaxで動作し得る。TEC120のこの既定の数は、Q
COPmaxで、またはその付近で動作することによって、設定点温度を維持するために必要とされるTEC120の数である。定常状態モード160の間、TEC120のすべてを必要とするのでなければ、不要なTEC120は動作停止される。コントローラ106は、起動されたTEC120の動作を微調整して、例えば、起動されたTEC120の入力電流をわずかに増加または減少して、起動されたTEC120がQ
COPmaxのわずかに上で動作するようにすることによって、あるいは起動されたTEC120のデューティサイクルを増加または減少することによって、Q
leakを補償することによって、設定点温度を正確に維持し得る。
【0080】
再び
図15を参照すると、熱電冷却システム100はまた、ユーザインターフェース(UI)176と、電源178と、付属装置(acc)180と、パワーエレクトロニクス182とを含む。ユーザインターフェース176により、ユーザは、熱電冷却システム100に関係する様々な制御パラメータを入力できる。これらの制御パラメータは、冷却チャンバー102の設定点温度を含む。一部の実施形態では、制御パラメータは、温度が定常状態範囲にある場合の値を追加的に含み得る。一部の実施形態では、ユーザインターフェース176により、追加的に、ユーザまたは熱電冷却システム100の製造業者は、熱交換器104の排出側のための最大許容温度、I
COPmaxおよびI
maxに関係する電流値、および/または同様のものを定義できることに留意されたい。なお、しかしながら、制御パラメータの一部またはすべては、コントローラ106内にプログラムまたはハードコーディングされ得る。
【0081】
電源178は、コントローラ106、付属装置180、およびパワーエレクトロニクス182に電力を供給する。付属装置180は、チャンバー用照明または拡張機能用の通信モジュールであり得る。付属装置180が通信モジュールである実施形態では、付属装置180は、遠隔の装置、例えば、限定されるものではないが、携帯電話、遠隔にあるコンピューティングデバイス、またはその他の電気器具および熱電冷却システムとさえ通信し得る。付属装置180が携帯電話または遠隔にあるコンピューティングデバイスと通信する実施形態では、付属装置180は、熱電冷却システム100および冷却チャンバー102の動作パラメータ(例えば、温度データ)を遠隔のデバイスまたはエンティティに提供し得る。付属装置180がその他の熱電冷却システムと通信する実施形態では、付属装置180は、設定点温度、設定点温度の上限および下限、冷却チャンバー102の最大許容温度、熱交換器104の排出側の最大許容温度などの、熱電冷却システム100の動作パラメータを他方の熱電冷却システムに通信し得る。
【0082】
パワーエレクトロニクス182は、概して、コントローラ106からの制御入力に応じて電流をTEC120に提供するように動作する。より具体的には、パワーエレクトロニクス182は、TEC120のサブセットのそれぞれに対して電流を独立に提供する。一実施形態では、TEC120の種々のサブセットのデューティサイクルもまた制御される。この場合、パワーエレクトロニクス182は、パルス幅変調機能を提供し得、これにより、TEC120の種々のサブセットのデューティサイクルが制御される。
【0083】
図17を参照すると、本開示の一実施形態による、冷却チャンバー102を設定点温度で維持するためのコントローラ106の動作方法が示されている。まず、冷却チャンバー102内の温度および熱交換器104の排出側における温度に対応する温度データが受信される(ステップ1000)。例えば、熱電対、または任意のその他のタイプの温度センサが用いられて、冷却チャンバー102の温度を判定し、ステップ1000において温度入力154を介して、温度を温度データとしてコントローラ106に提供し得る。さらに、熱電対、または任意のその他のタイプの温度センサが用いられて、熱交換器104の排出側の温度を判定し、ステップ1000において温度入力156を介して、温度を温度データとしてコントローラ106に提供し得る。
【0084】
温度データの受信に応じて、コントローラ106は、温度データに基づいてTECを選択的に制御する(ステップ1002)。概して、コントローラ106は、温度データおよび冷却チャンバー102のための設定点温度に基づいて、1つ以上、また一部の好ましい実施形態では、2つ以上の種々のTECサブセットを選択的に制御する。
図3のカートリッジ112内のTEC120を例として用いれば、コントローラ106は、TEC120の種々のサブセットを選択的に、または別々に制御する。より具体的には、上述のように、コントローラ106は、温度データおよび冷却チャンバー102のための設定点温度に基づいて、熱電冷却システム100が予冷モード158か、定常状態モード160か、または回復モード163かを判定する。コントローラ106が、熱電冷却システム100が予冷モード158または回復モード163にあると判定する場合、コントローラ106は、現在動作停止中のTEC120を起動すること、起動されたTEC120に供給される電流を増加すること、および/または起動されたTEC120のデューティサイクルを増加することのいずれかによって、冷却チャンバー102の温度を下げるようにTEC120を制御する。コントローラ106が、熱電冷却システム100が定常状態モード160にあると判定する場合、コントローラ106は、TEC120を制御して、設定点温度を維持する。定常状態モード160では、コントローラ106は、例えば、設定点温度を維持するため、必要に応じて、TEC120の種々のサブセットを起動または動作停止する、起動されたTEC120の種々のサブセットに供給される電流を増加または減少する、および/または起動されたTEC120の種々のサブセットのデューティサイクルを増加または減少することもできる。
【0085】
例として、定常状態の動作中、TEC120a、120b、および120eがQ
COPmaxで動作する間に、熱電冷却システム100が回復モード163にあると温度データが示している場合、コントローラ106は、追加的な非稼働中のTEC120c、120d、および120fのサブセットを起動し、新たに起動したTEC120をQ
COPmaxで動作し得る。さらなる冷却容量が求められる場合、コントローラ106は、できるだけ早く冷却チャンバー102の温度を設定点温度まで下げるために、稼働中のTEC120a、120b、120c、120d、120e、および120fに供給される電流をI
maxまで増加する。コントローラ106がTEC120をQ
maxで動作するように選択的に制御した後、本方法は、ステップ1000に戻り、コントローラ106は、再び温度データを受信する。例に戻ると、冷却チャンバー102が設定点温度まで冷却されたことをステップ1000において受信した温度データが示す場合、コントローラ106は、TEC120a、120b、および120eに供給される電流をI
maxからI
COPmaxまで減少して、ステップ1002における定常状態モード160の場合に、TEC120a、120b、および120eがQ
COPmaxで動作するようにする。加えて、コントローラ120は、この例では定常状態モード160において使用されないTEC120c、120d、および120fを動作停止する。コントローラ106は、このプロセスを連続的に繰り返して、冷却チャンバー102における設定点温度を維持する。
【0086】
換言すると、一実施形態では、コントローラ106は、TEC120を複数の制御スキームで制御するように構成される、または制御することができる。制御スキームは、TEC120の種々のサブセットの起動および動作停止を独立に制御すること、それぞれのTEC120のサブセットに供給される電流を独立に制御すること、および/またはそれぞれのTEC120のサブセットのデューティサイクルを独立に制御することを含む。動作中、コントローラ106は、冷却チャンバー102の温度および、一部の実施形態では、熱交換器104の排出側における温度、ならびに所望の成績特性に基づいて、1つ以上の制御スキームを選択する。所望の成績特性は、コントローラ106内にプログラム可能であり得る、またはハードコーディングされ得る。所望の成績特性は、種々の動作モードに対して、どのようにTEC120が制御されるかを決める(例えば、最大効率、最大容量、または最大効率および最大容量の間のどこか)。制御スキーム(複数可)が選択されると、コントローラ106は、選択された制御スキーム(複数可)にしたがって、TEC120の種々のサブセットを制御する。このように、コントローラ106は、各動作モードに対して、起動/動作停止、電流、およびデューティサイクルの任意の組み合わせを制御できる。
【0087】
例えば、定常状態モード160については、コントローラ106は、冷却チャンバー102の温度ならびに定常状態モード160中に効率を最大化する所望の成績特性に基づいて、TEC120の起動/動作停止の制御スキームを選択し得る。この場合、次いで、コントローラ106は、TEC120のサブセットのうちの1つ以上を起動し、一部の実施形態では、その他の1つ以上のTEC120のサブセットをさらに動作停止する。加えて、コントローラ106は、定常状態モード160中、起動されたTEC120の電流および/またはデューティサイクルを制御するように選択し得、この場合、コントローラ106は、起動されたTEC120のサブセットのそれぞれに供給される電流および/または起動されたTEC120のサブセットのそれぞれのデューティサイクルを独立に制御する。この例を続けると、回復モード163または予冷モード158については、コントローラ106は、冷却チャンバー102の温度ならびに所望の成績特性(例えば、予冷または回復時間の最小化)に基づいて、TEC120の起動/動作停止の制御スキームを選択し得る。この場合、コントローラ106は、定常状態モード160の間には起動されていなかった追加的なTEC120のサブセットを起動する。加えて、コントローラ106は、予冷モード158または回復モード163の間、起動されたTEC120のサブセットの電流および/またはデューティサイクルを制御するように選択し得、この場合、コントローラ106は、起動されたTEC120のサブセットのそれぞれの電流および/または起動されたTEC120のサブセットのそれぞれのデューティサイクルを独立に制御する。
【0088】
図18は、本開示の別の実施形態による、冷却チャンバー102を設定点温度に維持するためのコントローラ106の動作方法を示すフローチャートである。まず、冷却チャンバー102および熱交換器104の排出側の温度データが受信される(ステップ1100)。温度データが受信された後、コントローラ106は、冷却チャンバー102の温度が冷却チャンバー102の温度のための定常状態範囲の上限よりも高いかどうかを判定する(ステップ1102)。定常状態範囲は、設定点温度を含む、冷却チャンバー102のための許容温度範囲である。例として、定常状態範囲は、設定点温度プラスマイナス既定のオフセット(例えば、2度)であり得る。冷却チャンバー102の温度が定常状態範囲の上限以下の場合、コントローラ106は、冷却チャンバー102の温度が定常状態範囲の下限よりも高いかどうかを判定する(ステップ1104)。
【0089】
冷却チャンバー102の温度が定常状態範囲の下限以下の場合、プロセスは、ステップ1100に戻る。しかしながら、冷却チャンバー102の温度が定常状態範囲の下限未満である場合、コントローラ106は、TEC120を制御して、冷却チャンバー102の温度を上げる(ステップ1106)。特定の実施形態に応じて、コントローラ106は、TECのうちの1つ以上を動作停止すること、TEC120のうちの1つ以上への電流入力を減少すること、および/またはTEC120のうちの1つ以上のデューティサイクルを減少することによって、冷却チャンバー102の温度を上げる。コントローラ106がTEC120の種々のサブセットを選択的に制御し得ることから、コントローラ106は、冷却チャンバー102の温度をどのように増加するかについて、かなりの柔軟性を有する。冷却チャンバー102の温度を上げるようにTEC120を制御した後、プロセスはステップ1100に戻り、繰り返される。
【0090】
ステップ1102に戻ると、冷却チャンバー102の温度が定常状態範囲の上限よりも高い場合、コントローラ106は、冷却チャンバー102の温度が冷却チャンバー102のための既定の最大許容温度よりも高いかどうかを判定する(ステップ1108)。その場合、プロセスは、ステップ1112に進む。そうでない場合、コントローラ106は、TEC120を制御して、冷却チャンバー102の温度を下げる(ステップ1110)。コントローラ106は、TEC120を制御して、1つ以上の先に動作停止したTEC120を起動すること、起動されたTEC120のうちの1つ以上への電流入力をI
COPmaxからI
COPmaxよりも大きい値(例えば、I
max)に増加すること、
および/または起動されたTEC120のうちの1つ以上のデューティサイクルを増加することによって、冷却チャンバー102の温度を下げる。
図3のカートリッジ112の実施形態におけるTEC120を例として用いれば、コントローラ106は、TEC120の種々のサブセットを独立に制御する。つまり、例えば、ステップ1110に先立って、第1のTECサブセット(すなわち、TEC120aおよび120b)が起動され、Q
COPmaxで動作するが、残りのTEC120が動作停止する場合、コントローラ106は、第1のTEC120のサブセットへの電流入力をI
COPmaxからI
COPmaxよりも大きい値(例えば、I
max)に増加すること、第1のTEC120のサブセットのデューティサイクルを増加すること、第2のTEC120のサブセットを起動して、Q
COPmaxまたはQ
COPmaxよりも大きい容量で所望のデューティサイクルの状態(例えば、常時オン)で動作させること、第3のTEC120のサブセットを起動して、Q
COPmaxまたはQ
COPmaxよりも大きい容量で所望のデューティサイクルの状態(例えば、常時オン)で動作させること、および/または第4のTEC120のサブセットを起動して、Q
COPmaxまたはQ
COPmaxよりも大きい容量で所望のデューティサイクルの状態(例えば、常時オン)で動作させることによって、冷却チャンバー102の温度を下げ得る。
【0091】
次に、ステップ1108の「はい」の分岐、あるいはステップ1110のどちらから進むのであっても、コントローラ106は、熱交換器104の排出側における温度が、熱交換器104の排出側のための既定の最大許容温度よりも高いかどうかを判定する(ステップ1112)。その場合、コントローラ106は、TEC120を制御して、熱交換器構成要素の温度を下げる(ステップ1114)。具体的には、コントローラ106は、TEC120を制御して、熱交換器104の構成要素の温度を排出側で(例えば、高温側ヒートシンク108)下げる。熱交換器104の構成要素の温度の下降は、TEC120の一部またはすべてを動作停止すること、TEC120の一部またはすべてに供給される電流を抑制すること、またはこれらの組み合わせによって達成され得る。次いで、プロセスは、ステップ1100に戻り、繰り返される。
【0092】
しかしながら、熱交換器104の排出側における温度が既定の最大許容温度以下の場合、コントローラ106は、TECを制御して、冷却チャンバー102の温度を下げる(ステップ1116)。上述のように、コントローラ106は、TEC120を制御して、1つ以上の先に動作停止したTEC120を起動すること、起動されたTEC120のうちの1つ以上への電流入力をI
COPmaxからI
COPmaxよりも大きい値(例えば、I
max)に増加すること、および/または起動されたTEC120のうちの1つ以上のデューティサイクルを増加することによって、冷却チャンバー102の温度を下げる。例えば、ステップ1116に先立って、第1のTECサブセット(すなわち、TEC120aおよび120b)が起動され、Q
COPmaxで動作するが、残りのTEC120が動作停止する場合、コントローラ106は、第1のTEC120のサブセットへの電流入力をI
COPmaxからI
COPmaxよりも大きい値(例えば、I
max)に増加すること、第1のTEC120のサブセットのデューティサイクルを増加すること、第2のTEC120のサブセットを起動して、Q
COPmaxまたはQ
COPmaxよりも大きい容量で所望のデューティサイクルの状態(例えば、常時オン)で動作させること、第3のTEC120のサブセットを起動して、Q
COPmaxまたはQ
COPmaxよりも大きい容量で所望のデューティサイクルの状態(例えば、常時オン)で動作させること、および/または第4のTEC120のサブセットを起動して、Q
COPmaxまたはQ
COPmaxよりも大きい容量で所望のデューティサイクルの状態(例えば、常時オン)で動作させることによって、冷却チャンバー102の温度を下げ得る。ステップ1116において冷却チャンバー102の温度を下げた後、プロセスはステップ1100に戻り、繰り返される。
【0093】
例として、温度データが、冷却チャンバー102が0.9℃であり、熱交換器104の排出側が19℃であることを示していると仮定する。加えて、この例では、冷却チャンバー102のための設定点温度が2.2℃、定常状態範囲の上限が5.0℃、定常状態範囲の下限が1.0℃、冷却チャンバー102における最大許容温度が15℃、そして熱交換器104の排出側における最大許容温度が20℃とする。この例を用いると、コントローラ106は、まず、冷却チャンバー102の温度(0.9℃)が定常状態範囲の上限(5.0℃)を越えていないと判定する。したがって、コントローラ106は、ステップ1104を実行し、そこで、コントローラ106は、冷却チャンバー102の温度(0.9℃)が定常状態範囲の下限(1.0℃)未満であると判定する。その結果、コントローラ106は、ステップ1106を実行して、冷却チャンバー102の温度を上げる。ステップ1106の実行後、コントローラ106は、ステップ1100に戻って、それによって、更新された温度データを受信し、かつプロセスを続行する。
【0094】
別の例として、温度データが、冷却チャンバー102の温度が14℃であり、熱交換器104の排出側における温度が18℃であることを示していると仮定する。加えて、この例では、冷却チャンバー102のための設定点温度が2.2℃、定常状態範囲の上限が5.0℃、定常状態範囲の下限が1.0℃、冷却チャンバー102における最大許容温度が15℃、そして熱交換器104の排出側における最大許容温度が20℃とする。この例を用いると、コントローラ106は、冷却チャンバー102の温度(14℃)が定常状態範囲の上限(5.0℃)よりも高いと判定する。したがって、コントローラ106は、ステップ1108を実行し、そこで、コントローラ106は、冷却チャンバー102の温度(14℃)が冷却チャンバー102の最大許容温度(15℃)未満であると判定する。それに基づいて、コントローラ106は、ステップ1110を実行して、それによって、冷却チャンバー102の温度を下げる。
【0095】
第3の例では、温度データは、冷却チャンバー102の温度が17℃であり、熱交換器104の温度が22℃であることを示している。加えて、この例では、冷却チャンバー102のための設定点温度が2.2℃、定常状態範囲の上限が5.0℃、定常状態範囲の下限が1.0℃、冷却チャンバー102における最大許容温度が15℃、そして熱交換器104の排出側における最大許容温度が20℃とする。ステップ1102では、コントローラ106は、冷却チャンバー102の温度が定常状態範囲の上限よりも高いと判定する。したがって、コントローラ106は、ステップ1108を実行し、そこで、コントローラ106は、冷却チャンバー102の温度(17℃)が冷却チャンバー102の最大許容温度(15℃)を超えていると判定する。それに基づいて、コントローラ106は、ステップ1112を実行し、そこで、コントローラ106は、熱交換器104の排出側における温度が熱交換器104の排出側における最大許容温度を超えるかどうかを判定する。本開示の実施形態によれば、熱交換器104の排出側における最大許容温度とは、それを超えると熱交換器104の構成要素が過熱し、損傷をうける温度である。熱交換器104の排出側における温度が熱交換器104の排出側における最大許容温度を超える場合の例は、冷却チャンバー102の扉が開放されたままである場合など、冷却チャンバー102から大量の熱漏洩がある場合である。冷却チャンバー102の扉が開放されたままであるケースでは、熱電冷却システム100は、冷却チャンバー102の温度を設定点温度に下げようとする。この時、大量の熱漏洩があることから、熱交換器104の構成要素は、冷却チャンバー102の温度を下げることができず、その代わりに過度に動作する場合があり、それによって過熱する(すなわち、熱交換器104の排出側における最大許容温度を超える)。熱交換器104の排出側における温度が熱交換器104の排出側における最大許容温度を超える場合の別の例は、受容ループ114内に閉塞がある場合、受容ループ114内の冷却媒体に問題がある場合など、受容ループ114と冷却チャンバー102との間に適切な熱伝達が生じていない場合である。第3の例では、熱交換器104の排出側における温度(22℃)は、熱交換器104の排出側における最大許容温度(20℃)を超えている。それに基づいて、コントローラ106は、ステップ1114を実行して、そこで、コントローラ106は、熱交換器104の構成要素の温度を冷ます。
【0096】
図19は、本開示の一実施形態による、熱交換器104の排出側における温度を監視するためのコントローラ106の動作方法を示すフローチャートである。まず、コントローラ106は、温度データを受信する(ステップ1200)。一実施形態では、温度データは、熱交換器104の排出側における温度に対応する。温度データの受信後、
図18のステップ1112を参照して上述したように、コントローラ106は、熱交換器104の排出側における温度が熱交換器104の排出側における最大許容温度を超えるかどうかを判定する(ステップ1202)。熱交換器104の排出側における温度が最大許容温度を超えていない場合、プロセスは、ステップ1200に戻り、繰り返される。しかしながら、熱交換器104の排出側における温度が熱交換器104の排出側における最大許容温度を超える場合、コントローラ106は、TEC120を制御して、それによって、熱交換器104の排出側における温度を下げる(ステップ1204)。
【0097】
多数並列熱交換システム
上述の実施形態では、熱電冷却システム100は、単一の熱交換システム(すなわち、単一の熱交換器104、単一の受容ループ114、および単一の排出ループ116)を含む。
図20Aから
図20Cは、熱電冷却システム100の別の実施形態を示しており、これは、2つの並列熱交換システムを含む。
図20Aから
図20Cの実施形態には2つの並列熱交換システムが示されているが、任意の数の2つ以上の並列熱交換システムが用いられ得ることに留意されたい。
図20Aに示されるように、2つの並列熱交換システムは、
図1の熱交換システムと同様のものである。特に、第1の熱交換システムは、熱交換器104aを含み、熱交換器104aは、高温側ヒートシンク108aと、低温側ヒートシンク110aと、高温側および低温側ヒートシンク108aおよび110aの間に配置されるカートリッジ112aと、低温側ヒートシンク110aに結合される受容ループ114aと、高温側ヒートシンク108aに結合される排出ループ116aとを含む。カートリッジ112aは、1つ以上のTECを含み、好ましくは、コントローラ106によって選択的に制御される複数のTECを含む。一部の好ましい実施形態では、TECは、
図1のカートリッジ112に関して説明した方法で1つ以上、好ましくは2つ以上のTECサブセットの選択的かつ独立な制御を可能にする相互接続ボード上に配置される。同様に、第2の熱交換システムは、熱交換器104bを含み、熱交換器104bは、高温側ヒートシンク108bと、低温側ヒートシンク110bと、高温側および低温側ヒートシンク108bおよび110bの間に配置されるカートリッジ112bと、低温側ヒートシンク110bに結合される受容ループ114bと、高温側ヒートシンク108bに結合される排出ループ116bとを含む。カートリッジ112bは、1つ以上のTECを含み、好ましくは、コントローラ106によって選択的に制御される複数のTECを含む。一部の好ましい実施形態では、TECは、
図1のカートリッジ112に関して説明した方法で1つ以上、好ましくは2つ以上のTECサブセットの選択的かつ独立な制御を可能にする相互接続ボード上に配置される。
図20Aの2つの並列熱交換システムの動作ならびにカートリッジ112aおよび112b内のTECの制御は、
図1の対応する熱交換システムおよびカートリッジ112に関して上述したものと同様である。そのため、詳細については繰り返さない。
【0098】
並列熱交換システムは、カートリッジ112aおよび112b内のTECを制御する場合、コントローラ106に追加的な自由度を提供する。より具体的には、1つ以上、また好ましくは2つ以上のカートリッジ112a内のTECサブセットを選択的かつ独立に制御することに加えて、コントローラ106はまた、カートリッジ112a内のTECサブセット(複数可)とは独立に、1つ以上、また好ましくは2つ以上のカートリッジ112b内のTECサブセットを選択的かつ独立に制御できる。一例として、定常状態での動作中、コントローラ106は、
図20Bに示されるように、カートリッジ112a内のTECの一部または場合によりすべてを、好ましくはQ
COPmax、またはその付近で(例えば、わずかに上回って、あるいは場合により下回って)起動し、かつカートリッジ112b内のTECのすべてを動作停止し得る。逆に、予冷中または回復中においては、コントローラ106は、
図20Cに示されるように、カートリッジ112a内の先に動作停止したTECを起動し、かつカートリッジ112b内のTECの一部または場合によりすべてを起動し得る。予冷中または回復中においては、起動されたTECは、好ましくは、Q
COPmax、Q
max、またはQ
COPmaxおよびQ
maxの間のどこかで動作される。
【0099】
並列熱交換器104aおよび104bの1つの非限定的な利点は、稼働中のTECと同じ熱交換器104a、104b内に配置された動作停止中のTECに関係する寄生損失を被ることなく、大きな回復容量を提供すると同時に、多数のTECサブセットを完全に分離する能力である。並列熱交換器104aおよび104bの別の非限定的な利点は、関係する熱交換器の体積/放熱面積に対する様々な制御体制についてより良くバランスをとることによる効率の最大化に関する。
【0100】
カスケード式ヒートシンク
本開示のさらなる実施形態では、種々の冷却チャンバーを種々の設定点温度で維持するために、TECのアレイは、カスケード接続され得る。一実施形態では、単一の熱電冷却システムは、それぞれが種々の設定点温度を有する第1の冷却チャンバーと第2の冷却チャンバーとを有し得る。一実施形態では、第1組のTEC(例えば、第1のカートリッジ内のTEC)は、第1の冷却チャンバーを冷却する。加えて、第2組のTEC(例えば、第2のカートリッジ内のTEC)は、第2の冷却チャンバーを冷却し、ここで、第2の冷却チャンバーの設定点温度は、第1の冷却チャンバーの設定点温度よりも低い。この実施形態では、第1組および第2組のTECは、カスケード接続されたヒートシンクを介して、互いに熱的に結合される。この実施形態では、第1の冷却チャンバーの冷却中、第1組のTECは、第1の冷却チャンバーから熱を抽出し、抽出した熱を第1の冷却チャンバーの外部の環境に排出するように動作する。この実施形態では、第2の冷却チャンバーの冷却中、第2組のTECは、第2の冷却チャンバーから熱を抽出し、次いで、抽出した熱を第1組のTECに排出するように動作する。この時、第1組のTECは、第2の冷却チャンバーから抽出した熱を第1および第2の冷却チャンバーの外部の環境に排出するように動作する。この実施形態では、第1組のTECは、第2組のTECとは独立に動作する。特に、第1の設定点温度は、第2の設定点温度と異なり得る。さらに、冷却チャンバーのそれぞれに対して種々の動作モードが存在し得る(例えば、第1の冷却チャンバーの扉の開放に起因して、第1の冷却チャンバーが予冷中である一方で、第2の冷却チャンバーが定常状態にある場合がある)。
【0101】
これに関し、
図21は、本開示の実施形態による、冷却チャンバー186および188を有する熱電冷却システム184を示している。この実施形態では、冷却チャンバー186および188は、種々の設定点温度を有する。例えば、熱電冷却システム184が家庭用冷蔵庫である場合、冷却チャンバー186は、冷凍庫に対応し得、冷却チャンバー188は、冷蔵庫に対応し得る。熱電冷却システム184はまた、本開示の別の実施形態による熱交換器190を含む。この時、熱交換器190は、高温側ヒートシンク192と、2つの低温側ヒートシンク、すなわち、低温側ヒートシンク194および低温側ヒートシンク196とを含む。高温側ヒートシンク192は、排出ループ198と熱的に結合し、
図1の冷却チャンバー102、高温側ヒートシンク108、および排出ループ116に関して上述した方法と同様の方法で、冷却チャンバー186および188から熱を排出するように動作する。この例では、熱交換器190は、冷却チャンバー188を画定する内壁200と、熱電冷却システム184の外壁202との間にある。
【0102】
熱交換器190はまた、カートリッジ204および206を含む。カートリッジ204は、低温側ヒートシンク194および低温側ヒートシンク196の両方と熱的に結合する。カートリッジ204は、
図1のカートリッジ112に関して説明したようなTECを含み、ここで、TECの低温側は低温側ヒートシンク194と熱的に結合し、TECの高温側は低温側ヒートシンク196と熱的に結合する。さらに、カートリッジ204内に配置されるTECは、
図3から
図8を参照して上述したように、任意の数のTECを有し得る。カートリッジ204内のTECは、低温側ヒートシンク194と低温側ヒートシンク196との間の熱伝達を促進する。低温側ヒートシンク194および低温側ヒートシンク196の間で伝達される熱は、冷却チャンバー186から受容ループ208を介して抽出された熱である。
【0103】
カートリッジ206は、高温側ヒートシンク192と低温側ヒートシンク196との間に配置される。カートリッジ206は、
図1のカートリッジ112に関して説明したようなTECを含み、ここで、TECの低温側は低温側ヒートシンク196と熱的に結合し、TECの高温側は高温側ヒートシンク192と熱的に結合する。カートリッジ206内のTECは、低温側ヒートシンク196と高温側ヒートシンク192との間の熱伝達を促進する。さらに、カートリッジ206内に配置されるTECは、
図3から
図8を参照して上述したように、任意の数のTECを有し得る。この実施形態では、低温側ヒートシンク196および高温側ヒートシンク192の間で伝達される熱は、冷却チャンバー188から受容ループ210を介して抽出された熱であり、またカートリッジ204内のTECが起動された場合、冷却チャンバー186から受容ループ208を介して抽出された熱である。
【0104】
受容ループ208および210のそれぞれは、
図1の受容ループ114に関して上述した方法と同様の方法で動作する。特に、受容ループ114に関して上述したように、受容ループ208および210のそれぞれは、冷却されたチャンバー(すなわち、それぞれ、冷却チャンバー186または188)からの熱の抽出を促進する。カートリッジ204および206内のTECは、別々に制御することができる。したがって、換言すると、カートリッジ204および206のそれぞれにおけるTECサブセットは、冷却チャンバー186および188における設定点温度を維持するために、別々に制御することができる。
【0105】
上述のように、カートリッジ204および206のそれぞれは、上述の機能を有するTECを含む。本開示の一実施形態では、カートリッジ206は、カートリッジ204よりも多数のTECを有して、カートリッジ206が受容ループ208および210の両方からの熱を伝達するのを促進し得るようにする。例えば、1つ以上のカートリッジ204内のTECサブセットが起動される場合、カートリッジ206内のTECは、受容ループ208によって抽出された熱および受容ループ210によって抽出されたあらゆる熱を伝達するのに十分な容量を有するように制御されなければならない。例えば、カートリッジ204内の4つのTECがQ
COPmaxで動作している場合、カートリッジ204内の起動されたTECによって伝達された熱を伝達するのに十分な容量を提供するために、カートリッジ206内の5つ以上のTECもまたQ
COPmaxで動作されなければならない。加えて、熱がまた受容ループ210によって抽出される場合、カートリッジ206内のTECは、さらに制御されて、受容ループ210を介して所望の熱量を抽出するためのさらなる容量を提供する。
【0106】
熱電冷却システム184の動作中、コントローラ212は、カートリッジ204および206内に配置されたTECを制御して、冷却チャンバー186および188における所望の設定点温度を維持する。特に、冷却チャンバー186内の所望の設定点温度を維持するために、コントローラ212は、冷却チャンバー186内の温度および、一部の実施形態では
図15から
図19に関して上述したように、熱交換器190の排出側における温度に基づいて、カートリッジ204および206内に配置されたTECを制御する。したがって、一実施形態では、コントローラ212は、冷却チャンバー186および熱交換器190の排出側の両方に関する温度データを受信し、カートリッジ204および206内に配置されたTECを選択的に制御して、冷却チャンバー186のための所望の設定点温度を維持する。概して、コントローラ212は、動作モード(すなわち、定常状態、回復、予冷など)を検出し、次いで、動作モードにしたがって、カートリッジ204および206内のTECを起動/動作停止する、カートリッジ204および206内のTECのデューティサイクルを増加または減少する、および/またはカートリッジ204および206内のTECに供給される電流を増加または減少する。
【0107】
例えば、冷却チャンバー186が設定点温度にある場合、コントローラ212は、カートリッジ204内のTECを制御して、冷却チャンバー186のための定常状態での動作に必要な既定数のTECが、Q
COPmaxで動作するようにする。この例では、カートリッジ204は4つのTECを有し、4つのTECのうちの3つは、Q
COPmaxで動作している。加えて、冷却チャンバー186の定常状態での動作中、コントローラ212は、カートリッジ206内のTECのうちの3つ以上を制御して、カートリッジ206内の稼働中のTECが、Q
COPmaxで動作するカートリッジ204内の3つのTECと共に、かつそれを支援して、Q
COPmaxで動作するようにする。この例では、コントローラ212が、引き続いて、冷却チャンバー186が回復中であると検出した場合、コントローラ212は、冷却チャンバー186の温度を設定点温度に下げるために、カートリッジ204内のTECを選択的に制御する。例えば、コントローラ212は、カートリッジ204内の4つすべてのTECを起動して、カートリッジ204内のすべてのTECがQ
maxで動作するようにする。さらに、コントローラ212がカートリッジ204内の4つすべてのTECをQ
maxで起動する場合、コントローラ212はまた、カートリッジ206内のより多くのTECを起動して、カートリッジ204内の新たに起動したTECによって提供される追加的な容量に対応する。
【0108】
上述のように、熱電冷却システム184はまた、冷却チャンバー188を含み、ここにおいて、受容ループ210は、
図1の受容ループ114に関して上述したように、冷却チャンバー188からの熱の抽出を促進する。受容ループ210は、低温側ヒートシンク196と熱的に結合して、低温側ヒートシンク196が抽出された熱を冷却チャンバー188から排出ループ198に、カートリッジ206およびその中に配置されるTECを介して伝達するようにする。このようにして、排出ループ198は、抽出された熱を冷却チャンバー186および冷却チャンバー188から排出するように動作する。上述のように、カートリッジ206は、カートリッジ204内に配置されたTECと共に働くTECを含む。この時、カートリッジ206は、冷却チャンバー188から高温側ヒートシンク192への抽出された熱の伝達を促進する追加的なTECを含む。
【0109】
カートリッジ206内に配置されたTECを制御して、カートリッジ204内に配置された起動されたTECによって熱伝達を支援することに加えて、上述の
図15から
図19の方法により、コントローラ212は、カートリッジ206内に配置されたTECを選択的に制御して、冷却チャンバー188内において所望の設定点温度を維持する。このように、コントローラ212は、冷却チャンバー188に関する温度データを受信し、それにしたがって、カートリッジ206内に配置されたTECを選択的に制御する。例えば、定常状態での動作中、コントローラ212は、冷却チャンバー186に関する熱伝達を促進していないカートリッジ206内のTECを選択して、選択されたTECがQ
COPmaxで動作するようにする。この例を続けると、コントローラ212が、冷却チャンバー188が回復中であると検出した場合、一実施形態では、コントローラ212は、選択されたTECを制御して、選択されたTECがQ
maxで動作するようにする。加えて、コントローラ212は、起動されていない追加的なTECを選択して、これらの追加的なTECがQ
maxまたはQ
COPmaxおよびQ
maxの間のどこかの点で動作するようにし得る。このケースでは、カートリッジ206が10個のTECを含み、冷却チャンバー188の定常状態での動作中、TECのうちの4つが冷却チャンバー186に関する熱伝達を促進する場合、6つの残りのTECについては、コントローラ212は、残りのTECのうちの3つを選択して、Q
COPmaxで動作するようにし得る。しかしながら、冷却チャンバー188が回復中であり、コントローラ212が冷却チャンバー188の温度を設定点温度に下げる必要がある場合、コントローラ212は、Q
COPmaxで動作する3つのTECを制御して、これらのTECがQ
maxで動作し得、次いで、起動されていない3つの残りのTECについては、コントローラ212は、1つ以上の追加的なTECを起動して、同様にQ
maxで動作するようにし得る。
【0110】
上のケースでは、カートリッジ206内の起動されたTECのうち、4つは、冷却チャンバー186からの熱の伝達を促進するために、Q
COPmaxで動作していた。なお、冷却チャンバー188が回復中であった上記のケースでは、本開示の実施形態によれば、コントローラ212は、冷却チャンバー186から抽出された熱の熱伝達を助けていた4つのTECを制御して、これらの4つのTECがQ
maxで動作されるようにし得た。この時、4つのTECは、依然として、冷却チャンバー186を設定点温度で維持するように働く(TECがQ
COPmaxで動作するだけでよいため)と同時に、冷却チャンバー188の温度を設定点温度に冷却するのを助ける(追加的な熱は、
図2を参照すればわかるように、Q
COPmaxおよびQ
maxに関係する点の間で抽出され得る)。なお、冷却チャンバー186および冷却チャンバー188が回復中である場合、カートリッジ206内のすべてのTECは、Q
maxで動作するように制御され得る。
【0111】
熱ダイオード効果および熱交換システムの熱的分離
本開示の一部の好ましい実施形態では、本明細書に開示される熱交換システム(複数可)はまた、熱ダイオード効果と、冷却チャンバー(複数可)および外部環境からの熱交換器の熱的分離とを提供する。これは、熱ダイオード効果および熱交換器(複数可)の熱的分離が、外部環境から熱交換器(複数可)を介して冷却チャンバー(複数可)へ戻る熱漏洩を阻止する、または少なくとも最小化することから有益である。これに関し、
図22は、
図1の熱交換器104の一実施形態を示しており、ここで、熱交換器104は、冷却チャンバー102および熱電冷却システム100の外壁118から熱的に分離されて、熱交換器104が冷却チャンバー102からの熱の抽出を積極的に促進していない場合(すなわち、TECのすべてが非稼働中である場合)に、熱交換器104から冷却チャンバー102に戻る熱漏洩が起こらないようにする。
【0112】
図1に関して上述したように、熱交換器104は、低温側ヒートシンク110と、高温側ヒートシンク108とを含み、ここで、カートリッジ112は、低温側ヒートシンク110と高温側ヒートシンク108との間に配置される。
図22に示されるように、熱交換器104を熱的に分離させるために、熱交換器104は、内壁115から支持棒220を介して物理的に分離され、かつ物理的に取り付けられる。特に、支持棒220は、低温側ヒートシンク110および内壁115と連結して、支持棒220が熱交換器104を内壁115から物理的かつ熱的に分離すると同時に、熱交換器104を熱電冷却システム100内に取り付けるようにする。本開示の一実施形態によれば、支持棒220は、セラミック、プラスチックなどを含む任意の低熱伝導材料などの、熱伝導係数を最小化する任意のタイプの材料から形成され得る。さらに、
図22に見られ得るように、熱交換器104は、内壁115と外壁118との間(ひいては冷却チャンバー102)に配置されており、ここで、熱交換器104はまた、内壁115および外壁118から断熱材222によって熱的に分離されている。
【0113】
熱交換器104の熱的分離が受容ループ114および排出ループ116によって提供される熱ダイオード効果と組み合わされる場合、熱は、カートリッジ112内に配置されたTECがすべて動作停止中である、またはデューティサイクル制御中、「オフ」状態である場合、外部環境および熱交換器104から冷却チャンバー102内に戻って漏洩する。一実施形態では、受容ループ114および排出ループ116は、熱サイフォンの原理により動作し(すなわち、熱サイフォンである)、そのため、熱ダイオード効果を提供する。この熱ダイオード効果は、
図23および
図24に示されている。
図23は、熱交換器104内の1つ以上のTECが起動されている、またはデューティサイクル制御中、「オン」状態にある場合の熱交換システムを介する熱伝達を示している。図示のように、TECのうちの1つ以上がオンである場合、受容ループ114内の冷却媒体は、熱交換器104の低温側ヒートシンク110によって凝縮されて、凝縮した冷却媒体が重力により受容ループ114を通って流れるようにする。受容ループ114を通って流れる際、冷却媒体は、冷却チャンバー102から熱を抽出する。抽出された熱は、冷却媒体を蒸発させる。次いで、蒸発した冷却媒体は、浮力により熱交換器104の低温側ヒートシンク110に戻る。このプロセスは継続して、冷却チャンバー102からの抽熱を促進する。逆に、排出側では、排出ループ116内の熱交換媒体は、熱交換器104の高温側ヒートシンク108によって蒸発させられる。蒸発した熱交換媒体は、排出ループ116内を浮力により流れて、熱が外部環境に排出されるようにする。熱排出に起因して、熱交換媒体は、凝縮し、凝縮した熱交換媒体は、重力により高温側ヒートシンク108に戻る。プロセスは継続して、外部環境への熱排出を提供する。
【0114】
熱交換器104内のTECがすべて動作停止する、またはデューティサイクル制御中、「オフ」状態になると、受容および排出ループ114および116は、
図24に示されるように、受容および排出ループ114および116を介する冷却チャンバー102への熱の伝達を阻止する。より具体的には、TECのすべてが動作停止する、またはデューティサイクル制御中、「オフ」状態になる場合、熱交換器104の低温側ヒートシンク110は、もはや、受容ループ114内の冷却媒体を凝縮するのに十分に低温ではない。そのため、受容ループ114内の冷却媒体は、蒸発し、低温側ヒートシンク110に集まり、それによって、受容ループ114を介するさらなる熱伝達を阻止する。したがって、受容ループ114は、冷却チャンバー102から遠ざかる方向への熱伝達(すなわち、抽熱)を提供するが、冷却チャンバー102に向かう方向の熱伝達(すなわち、冷却チャンバー102の中に戻る熱漏洩)を阻止することがわかる。このようにして、受容ループ114は、熱ダイオード効果を提供する。同様にして、高温側ヒートシンク108は、もはや、排出ループ116内の熱交換媒体を蒸発させるのに十分に高温ではない。そのため、排出ループ116内の熱交換媒体は、凝縮し、高温側ヒートシンク108に集まり、それによって、排出ループ116を介するさらなる熱伝達を阻止する。したがって、排出ループ116は、熱交換器104から遠ざかる方向への熱伝達(すなわち、熱排出)を提供するが、熱交換器104に向かう方向の熱伝達(すなわち、外部環境から熱交換器104の中に戻る熱漏洩)を阻止することがわかる。このようにして、排出ループ116は、熱ダイオード効果を提供する。重要なことには、熱交換器104の断熱ならびに受容および排出ループ114および116の熱ダイオード効果は、(1)冷却チャンバー102の中に戻る熱漏洩がまったくないか、わずかな状態での、熱交換器104内のTECのすべての動作停止と、(2)冷却チャンバー102の中に戻る熱漏洩がまったくないか、わずかな状態での、熱交換器104内のTECのデューティサイクル制御とを可能にする。
【0115】
特に、
図1の熱交換システムは、受容および排出ループ114および116の両方を含むが、本開示はそれに限定されない。熱交換システムは、代替的に、熱交換器104の受容側上の受容ループ114と、熱交換器104の排出側上の代替的な熱交換機構(例えば、複数のフィンおよび1つのファン)とを含む、ハイブリッドシステムを含み得る。この代替的な実施形態では、受容ループ114は、依然として、
図25に示されるように、熱交換器104内のTECのすべてが動作停止する、またはデューティサイクル制御中、「オフ」状態にある場合、冷却チャンバー102の中に戻る熱漏洩を阻止する、熱ダイオード効果を提供する。別の代替策として、熱交換システムは、熱交換器104の排出側上の排出ループ116と、熱交換器104の受容側上の代替的な熱交換機構(例えば、複数のフィンおよび1つのファン)とを含む、ハイブリッドシステムであり得る。この代替的な実施形態では、排出ループ116は、外部環境から熱交換器104の中に戻る熱漏洩を阻止する、熱ダイオード効果を提供する。
【0116】
図26は、本開示の一実施形態による、
図21の熱交換器190の熱的分離を示している。ここで、熱交換器190は、冷却チャンバー188を画定する内壁200と支持棒220を介して接する。特に、支持棒220は、低温側ヒートシンク194および内壁200と連結して、支持棒220が熱交換器190を冷却チャンバー188から物理的かつ熱的に分離すると同時に、熱交換器190を熱電冷却システム184内に取り付けるようにする。熱交換器190の周囲の断熱材222は、熱交換器190を冷却チャンバー188および外壁202から熱的に分離する。さらに、上述したものと類似の方法で、排出ループ198および受容ループ208および210は、それぞれ熱ダイオード効果を提供する。特に、この実施形態では、2つの受容ループ、すなわち受容ループ208および210が存在し、これらはそれぞれ、対応する冷却チャンバー186および188の中に戻る熱漏洩を阻止する熱ダイオード効果を提供する。したがって、熱交換器190が冷却チャンバー186または188から積極的に熱を抽出していない場合であっても、熱交換器190を介する、冷却チャンバー186および188の中に戻る熱漏洩は起こらない。
【0117】
ヒートシンクの構成
図1に関して上述したように、受容ループ114は、冷却チャンバー102から抽出された熱を低温側ヒートシンク110に伝達し、高温側ヒートシンク108は、抽出された熱を排出ループ116に伝達する。
図27は、本開示の一実施形態による低温側ヒートシンク110の構成を示す概略図である。当然のことながら、この説明は、低温側ヒートシンク110に注目しているが、この説明は、低温側ヒートシンク194および196ならびに高温側ヒートシンク108および192に同じように当てはまる。低温側ヒートシンク110は、2つの入口/出口ポート226/228を含み、それらを介して、冷却チャンバー102および/またはカートリッジ112内のTEC120のアレイの起動されたTECのうちの1つとの熱伝達の後、冷却媒体は、低温側ヒートシンク110に入り、また出る。具体的には、冷却媒体が入口/出口ポート226/228に入る場合、冷却媒体は、冷却チャンバー102から抽出された熱を含む。冷却チャンバー102から抽出された熱は、熱対流、伝動、および放射を介して冷却媒体に伝達され、次いで、冷却媒体と低温側ヒートシンク110との間の低熱対流、伝動、および放射を介して低温側ヒートシンク110に伝達される。抽出された熱は、次いで、
図28に示されるように、低温側ヒートシンク110上で、TEC120のアレイに熱的に結合されるプレート232に配置されたフィン230を介して、TEC120のアレイに伝達される。
【0118】
図27を参照すればわかるように、フィン230のそれぞれは、細長い形状を有し、それぞれ、長さL
1からL
4の範囲に及ぶ。さらに、
図28を参照して見られるように、フィン230は、高さhだけ伸び、また幅wで互いに離間している。このように、フィン230のそれぞれは、熱を伝達するための有効表面積を有し、これは、長さL
1からL
4と高さhとの関数である。なお、低温側ヒートシンク110は、上述の構成および寸法を有するフィン230を有するとして説明されているが、低温側ヒートシンク110は、熱負荷および空間的な制約に応じて、任意の構成のフィンを有し得、また任意の寸法を有し得る。一部の実施形態では、フィン230の構成および寸法は、受容ループ114内で用いられる冷却媒体のタイプと、冷却チャンバー102、熱交換器104、および周囲温度の間の温度差とに依存し得る。さらに、フィン230の寸法および構成はまた、受容ループ114および排出ループ116内の流圧と、熱電冷却システム100内のあらゆる熱漏洩とに依存し得る。
【0119】
図29は、ヒートシンク234を含む低温側ヒートシンク110の別の実施形態を示している。一実施形態では、熱電冷却システム100は、排出ループ116を含まないが、代わりに、ヒートシンク234を含み、ここで、熱電冷却システム100は、ヒートシンク234によって吸収された熱を熱電冷却システム100の外部の環境に逃すファン(図示せず)を含む。さらに、本開示のさらなる実施形態では、熱電冷却システム100は、ヒートシンク234および排出ループ116の両方を含み、それによって、ハイブリッド構成を形成し、ここで、ヒートシンク234および排出ループ116の両方が、冷却チャンバー102から抽出された熱を熱電冷却システム100の外部の環境に排出するように動作する。
【0120】
切り離し型の熱交換器
本開示の一部の実施形態では、それぞれ受容および排出ループを介して熱伝達に使用可能な冷却チャンバーの内壁の利用可能な表面積および/または外壁の利用可能な表面積を増やすことによって、熱電冷却システムの抽熱性能を最大化する、または少なくとも増加する。概して、これらの実施形態では、熱導管によって熱的に結合されている、物理的に分離された、または切り離された高温側および低温側ヒートシンクを有する熱交換器を提供する。一実施形態では、TECを収容するカートリッジは、低温側ヒートシンクに物理的に取り付けられ、ここで、熱導管が、TECの高温側を高温側ヒートシンクに熱的に結合する。別の実施形態では、TECを収容するカートリッジは、高温側ヒートシンクに物理的に取り付けられ、ここで、熱導管が、TECの低温側を低温側ヒートシンクに熱的に結合する。
【0121】
これに関し、
図30は、低温側ヒートシンク110の高温側ヒートシンク108からの物理的な分離を可能にする熱導管236を含む熱交換器の一実施形態を示している。本開示の実施形態によれば、熱導管236は、低温側ヒートシンク110および高温側ヒートシンク108の間の熱の伝導に好適な任意の装置であり得る。熱導管236のために使用され得る装置の例には、従来型のヒートパイプが含まれ、ヒートパイプは、低温側ヒートシンク110から高温側ヒートシンク108へと下方に向かう熱の受動的移動を可能にする。
【0122】
代替的な実施形態では、熱導管236は、プレナムと共に働く対流型の結合を備えて、低温側ヒートシンク110および高温側ヒートシンク108の間の熱伝達を促進し得る。さらに、別の実施形態では、熱導管236は、熱伝達流体を有する流体ループを含み得、ここで、ポンプが、低温側ヒートシンク110および高温側ヒートシンク108の間で、熱伝達流体をポンプで送る。熱導管236が流体ループを含む実施形態では、熱伝達流体が、熱を低温側ヒートシンク110から高温側ヒートシンク108に運ぶ。追加的に、熱導管236は、直接伝導により熱を伝達し得、ここで、熱導管236は、熱を低温側ヒートシンク110から高温側ヒートシンク108まで伝動的に伝達する。
【0123】
熱導管236は、スプレッダプレートなどの任意のよく知られた技術を用いてカートリッジ112に物理的かつ熱的に結合され、ここで、スプレッダプレートは、カートリッジ112内に配置されたTEC120と接する。上述のように、冷却チャンバー102の冷却中、冷却チャンバー102からの熱は、受容ループ114に熱的に伝達する。次いで、受容ループ114からの熱は、これも上述のように、カートリッジ112内に配置されたTEC120に熱的に伝達される。熱は、TEC120から熱導管236に伝達され、熱導管236は、その熱を高温側ヒートシンク108に伝達する。さらに、熱導管236は、機械的アセンブリ237などの任意のよく知られた技術を用いて高温側ヒートシンク108と物理的かつ熱的に結合し、ここで、熱導管236は、高温側ヒートシンク108に直接結合する。代替的な実施形態では、熱導管236は、直接高温側ヒートシンク108に接続されて、機械的アセンブリ237を必要としないことに留意されたい。なお、カートリッジ112は、低温側ヒートシンク110に熱的に結合されて、熱導管236がカートリッジ112および高温側ヒートシンク108と熱的に結合するようにしているとして示されているが、カートリッジ112は、高温側ヒートシンク108と熱的に結合されて、熱導管236が、カートリッジ112が高温側ヒートシンク108と結合される場合、低温側ヒートシンク110およびカートリッジ112と直接熱的に結合するようにし得る。なお、低温側ヒートシンク110を高温側ヒートシンク108から切り離すために、任意の方法が用いられ得る。ただし、低温側ヒートシンク110および高温側ヒートシンク108は、互いに熱的に結合される。例えば、低温側ヒートシンク110および高温側ヒートシンク108は、互いに伝達的かつ対流的に結合され得る。さらに、低温側ヒートシンク110および高温側ヒートシンク108は、ポンピングされるループを用いて熱的に結合され得る、あるいは、互いに放射的に結合され得る。
【0124】
図31は、本開示の一実施形態による
図30の熱交換器104における熱の流れを示す概略図である。特に、熱は、Q
ACCEPTINによって示されるように冷却チャンバー102から抽出され、次いで、Q
ACCEPTOUTによって示されるように熱導管236に伝達される。次いで、熱導管236は、Q
REJECTINによって示されるように、熱を排出ループ116に伝達し、ここで、熱は、Q
REJECTOUTによって示されるように、冷却チャンバー102の外部の環境に最終的に排出される。
【0125】
熱導管236が低温側ヒートシンク110を高温側ヒートシンク108から分離する実施形態では、低温側ヒートシンク110は、高温側ヒートシンク108から離間して配置されて、一実施形態では、
図32および
図33を参照すればわかるように、低温側ヒートシンク110が、熱電冷却システム100の上部にあり、また高温側ヒートシンク108が、熱電冷却システム100の下部にあるようにする。低温側ヒートシンク110が熱電冷却システム100の上部に配置される実施形態では、受容ループ238は、冷却チャンバー102の表面積を広く覆って、冷却チャンバー102および受容ループ238の間の広い表面積のおかげで、冷却チャンバー102および受容ループ238内の冷却媒体の間で大量の熱伝達が起こるようにし得る。より具体的には、受容ループ238が冷却チャンバー102の大部分と熱的に連通していることから、受容ループ238は、大量の熱量の抽出を促進し、それによって、受容ループ238を実装する装置の加熱効率全体を高め得る。
【0126】
加えて、高温側ヒートシンク108が熱電冷却システム100の底部に配置される実施形態では、
図32および
図33に関して示されるように、排出ループ240は、熱電冷却システム100の底部から熱電冷却システム100の上部まで延在して、排出ループ240のかなりの表面積が、冷却チャンバー102の外部の環境に曝されるようにし得る。ここで、同様に、排出ループ240および冷却チャンバー102の外部の環境の間の広い表面積のおかげで、大量の熱伝達が排出ループ240および冷却チャンバー102の外部の環境の間で起こり得る。なお、
図32および
図33は、熱電冷却システム100上の上部に配置された低温側ヒートシンク110と、熱電冷却システム100の底部に配置された高温側ヒートシンク108とを示しているが、熱導管236を含む実施形態では、低温側ヒートシンク110は、熱電冷却システム100上の任意の位置に配置され得、また高温側ヒートシンク108は、熱電冷却システム100上の任意の位置に配置され得、ただし、低温側ヒートシンク110および高温側ヒートシンク108の間の距離は、本開示の実施形態を実施する装置の物理的寸法に対して最大化される。熱導管236に関しては、熱導管236は、熱電冷却システム100に関して図示および説明されてきたが、熱導管236はまた、熱電冷却システム184と用いられ得、ここでは、熱導管236が低温側ヒートシンク196および高温側ヒートシンク192の間で熱的に結合して、低温側ヒートシンク194および196が熱電冷却システム184の第1の側上(すなわち、熱電冷却システム184の上部付近)に配置され、高温側ヒートシンク192が、第1の側の反対側の、熱電冷却システム184の第2の側上(すなわち、熱電冷却システム184の底部付近)に配置されるようにする。
【0127】
二相熱交換器の取り付け
従来、熱交換器は、垂直に取り付けられて、重力に補助される二相熱交換システムの流速を最大にする。しかしながら、垂直の構成は、ヒートポンプの排出または受容表面と熱交換器の最も遠くに存在する表面との間で、水平方向への温度勾配を生じる。本発明者らは、熱交換器を鉛直方向から外れた角度で取り付けることによって、この勾配が最小化され、それによって、所与の表面およびシステムデザインの効率が最大化され得ることを見出した。
【0128】
図34から
図37Bは、本開示の実施形態による熱電システムにおける二相熱交換器242の取り付けに関する。二相熱交換器242が取り付けられる熱電システムは、上述のような、またはこれに類似の熱電冷却システム、あるいはなんらかのその他のタイプの熱電システム(例えば、熱電発電機)であり得る。
図34に示されるように、二相熱交換器242は、高温側ヒートシンク244と、低温側ヒートシンク246と、その間に配置された1つ以上のTEC248とを含む。より具体的には、TEC248は、TEC248の高温側がヒートスプレッダ250に物理的かつ熱的に結合されるように配置され、ここで、ヒートスプレッダ250は、高温側ヒートシンク244の一部分である、または高温側ヒートシンク244に物理的かつ熱的に結合される。同様に、TEC248の低温側は、ヒートスプレッダ252に物理的かつ熱的に結合され、ここで、ヒートスプレッダ252は、低温側ヒートシンク246の一部分である、または低温側ヒートシンク246に物理的かつ熱的に結合される。
【0129】
高温側ヒートシンク244は、入口ポート256を有するチャンバー254を含む。この実施形態では、入口管258が、入口ポート256に接続されている。入口管258は、任意の好適な熱交換機構に結合され得る。一実施形態では、入口管258は、例えば、上述の排出ループの実施形態など、熱サイフォンの原理により動作する排出ループに結合される。チャンバー254は、作動流体260で満たされている。動作中、TEC248が稼働中である場合、TEC248の高温側は、作動流体260を蒸発させ、蒸発した作動流体は、浮力により上方に、入口ポート256を通って入口管258内に輸送される。入口管258を通過した後、蒸発した作動流体は凝縮され、凝縮した作動流体は、重力により、入口管258および入口ポート256を通って、高温側ヒートシンク244のチャンバー254に戻る。
【0130】
同様に、低温側ヒートシンク246は、入口ポート264を有するチャンバー262を含む。この実施形態では、入口管266が、入口ポート264に接続されている。入口管266は、任意の好適な熱交換機構に結合され得る。一実施形態では、入口管266は、例えば、上述の受容ループの実施形態など、熱サイフォンの原理により動作する受容ループに結合される。動作中、TEC248が稼働中である場合、TEC248の低温側は、チャンバー262内の作動流体を凝縮する。次いで、凝縮した作動流体は、重力によりチャンバー262から入口ポート264を通って入口管266内に流れる。入口管266を通過した後、凝縮した作動流体は蒸発され、結果として得られた蒸発した作動流体は、浮力により、入口管266および入口ポート264を通って、低温側ヒートシンク246のチャンバー262に戻る。
【0131】
図示のように、二相熱交換器242は、鉛直方向に対して角度(α)で取り付けられる。まず、角度(α)は、高温側ヒートシンク244のチャンバー254における作動流体260が、ヒートスプレッダ250およびTEC248の高温側に隣接する、チャンバー254の壁上の最大熱流束領域268に、確実に直接衝突するように選択される。より具体的には、角度(α)は、TEC248が稼働中である場合、チャンバー254における作動流体の液位270(すなわち、チャンバー254における作動流体260の液位)が、最大熱流束領域268の頂部にある、またはわずかにその上方にあるように選択される。そうすることで、作動流体260は、最大熱流束領域268の全体に直接衝突するようにされ、このことにより、二相熱交換器242の効率が改善される。換言すると、作動流体の液位270が最大熱流束領域268の頂部またはその上方になるように角度(α)を選択することによって、作動流体260と熱接触する最大熱流束領域268の表面積が増加され、それにより、TEC248の高温側からの作動流体260へのより効率的な熱伝達を可能にする。それに対して、同量の作動流体において、二相熱交換器242が垂直に取り付けられる場合、チャンバー254における作動流体の液位270は、最大熱流束領域268の頂部のかなり下方に落ち、このため、作動流体260と接する最大熱流束領域268の表面積が減少し、ひいては、TEC248の高温側から作動流体260への熱伝達の効率が低下する。
【0132】
作動流体の液位270が最大熱流束領域268の頂部またはその上方になるように角度(α)を選択することはまた、凝縮した作動流体の流れと、蒸発した作動流体の流れとを分離する。より具体的には、図示のように、凝縮した作動流体の液滴は、入口ポート256を通って高温側ヒートシンク244のチャンバー254に入る。二相熱交換器242が取り付けられている角度(α)のおかげで、凝縮した作動流体の液滴は、重力により引かれて、それらが入口ポート256の下半分から入り、次いで、ヒートスプレッダ250およびTEC248に隣接するチャンバー254の壁を流れ落ちる。反対に、蒸発した作動流体は、浮力により、入口ポート256の上半分を通って上方に流れる。このようにして、凝縮した作動流体の流れと、蒸発した作動流体の流れとは分離される。
【0133】
加えて、角度(α)はまた、低温側ヒートシンク246のチャンバー262における蒸発した作動流体が、ヒートスプレッダ252およびTEC248の低温側に隣接する、チャンバー262の壁上の最大熱流束領域272に、確実に直接衝突するように選択される。より具体的には、角度(α)のおかげで、重力は、凝縮した作動流体の液滴を、ヒートスプレッダ252およびTEC248に隣接するチャンバー262の壁の表面から、チャンバー262の反対側の壁に落下させる。次いで、液滴は、入口ポート264の下半分を通り、入口管266内に流れる。逆に、蒸発した作動流体は、入口ポート264の上半分を通ってチャンバー262に入り、上方に向けて最大熱流束領域272まで流れる。凝縮した作動流体の液滴がチャンバー262の壁の表面から落ちることから、蒸発した作動流体は、最大熱流束領域272上に直接衝突でき、これにより、TEC248の低温側から蒸発した作動流体への熱伝達の効率を改善する。
【0134】
角度(α)の最適値は、二相熱交換器242の幾何形状(例えば、二相熱交換器242の高さ幅比)と、二相熱交換器242内におけるTEC248の位置と、ヒートスプレッダ250および252の構造と、入口ポート258および264ならびに入口管258および266の位置および向きと、二相熱交換器242内に存在する任意の拡張された表面積機構の幾何形状とを含む様々なパラメータに依存する。二相熱交換器242のそれぞれの特定の実施形態は、それ自体の角度(α)の最適値を有する。一実施形態では、角度(α)は、鉛直方向から2度以上88度以下の範囲にある。別の実施形態では、角度(α)は、鉛直方向から6度以上84度以下の範囲にある。さらに別の実施形態では、角度(α)は、鉛直方向から12度以上78度以下の範囲にある。
【0135】
図35は、
図34の二相熱交換器242の1つの特定の例を示している。この例では、二相熱交換器242の高さは、75ミリメートル(mm)であり、高温側ヒートシンク244と低温側ヒートシンク246との間の空間は、10mmである。この例では、角度(α)の最適値は、29度である。この例ではまた、ねじ式ポート274および276と、スペーサ275とを示しており、これらを介してボルト278がねじ式に装着され得て、高温側ヒートシンク244および低温側ヒートシンク246を物理的に取り付けることに留意されたい。また、以下に説明するように、ボルト278は、二相熱交換器242を鉛直方向に対して所望の角度(α)を維持するように熱電システムに取り付けるために用いられ得る。
【0136】
TEC248などのTECは、モジュールアセンブリの導電性の脚部上への蒸気凝縮物の形成による性能低下および損傷の影響を受けやすい。このため、TEC(複数可)は、しばしば、TEC(複数可)の周縁を取り囲んで、封止材料で包埋される。この包埋は、TEC(複数可)の熱的な短絡をもたらし、これは、TEC(複数可)の性能および効率を低下させる。
図36Aは、二相熱交換器242の一実施形態を示しており、これは、TEC(複数可)248上への蒸気凝縮物の形成からの分離および保護を提供し、これにより、二相熱交換器242の性能、熱ポンピング能力、および効率を改善する一方で、製造を簡素化し、コストを抑制する。
図36Aの概念は、二相熱交換器242での使用に限定されるものではないことに留意されたい。そうではなく、
図36Aの概念は、任意の熱電熱交換器に適用可能である。
【0137】
図36Aに示されるように、二相熱交換器242は、例えば、発泡フォーム絶縁母材などの、好適な防水性の母材280に封入されている。この実施形態では、二相熱交換器242は、二相熱交換器242が防水性の母材280内において角度(α)で維持されるように封入されている。さらに、この実施形態では、小さいポケット状282の空気もしくは類似の低伝導率気体または減圧空間がTEC(複数可)248の周囲に形成される。防水性の母材280は、酸化および蒸気凝縮物からの損傷を最小化するためのTEC(複数可)248の包埋の必要性を排除する。特に、防水性の母材280によって提供される隔離によって、TEC(複数可)248上への蒸気凝縮物の形成がなくなり、したがって、TEC(複数可)248の包埋の必要性が排除され、熱的に漏洩して戻ることを最小限にしながら、最大の性能を可能にする。
【0138】
図36Bは、二相熱交換器242が、封入された構造に対しては二相熱交換器242が垂直であるように、防水性の母材280に封入されている実施形態を示している。この実施形態では、二相熱交換器242は、鉛直方向に対して所望の角度(α)を提供する、対応する取り付け構造284を用いて取り付けられている。取り付け構造284は、好ましくは、熱的に絶縁である(例えば、熱的に絶縁のプラスチック材料で作られている)。
【0139】
図37Aは、本開示の一実施形態による、熱電システムの壁285(例えば、熱電冷却システムの内壁)に取り付けられた、
図36Aの封入された二相熱交換器242を示している。封入された二相熱交換器242は、任意の好適な機構を用いて壁285に取り付けられ得る。例えば、ボルト278は、封入された二相熱交換器242から延出し、そして壁285または壁285上の取り付け板内に延出し得る。しかしながら、同様に、封入された二相熱交換器242を壁285に取り付けるための任意の好適な機構が用いられ得る。
【0140】
図37Bは、
図36Bの封入された二相熱交換器242の実施形態を示しており、ここで、封入された二相熱交換器242は、鉛直方向に対して所望の角度(α)を維持するように熱電システムの壁285(例えば、熱電冷却システムの内壁)に取り付けられる。図示のように、封入された二相熱交換器242は、封入された二相熱交換器242の相対的な向きを維持する取り付け構造284を介して、熱電システムに取り付けられている(すなわち、取り付け構造284は、鉛直方向に対する角度(α)を維持する)。一実施形態では、取り付け構造284は、例えば、熱的に絶縁のプラスチック材料などの好適な材料から形成される熱的に絶縁の取り付け構造284である。取り付け構造284は、封入された二相熱交換器242から分離されていてもよいし、その中に組み込まれていてもよい。例えば、一実施形態では、封入された二相熱交換器242は、取り付け構造284にボルトで固定され、ここで、取り付け構造284が、熱電システムの適切な壁に取り付けられる、またはその中に組み込まれる。別の例として、取り付け構造284は、封入された二相熱交換器242に取り付けられ、そこで、防水性の母材280によって、少なくとも部分的に、封入され得る。次いで、取り付け構造284は、鉛直方向に対する所望の角度(α)が維持されるような方法で、熱電システムの壁285にボルトで固定される、またはその他の方法で取り付けられる。
【0141】
図38は、本開示の一実施形態によるコントローラ106のブロック図である。この説明は、コントローラ212に同じように当てはまる。この実施形態では、コントローラ106は、ハードウェアプロセッサ286と、ハードウェアプロセッサ286に関係するメモリ288とを含む。一実施形態では、メモリ288は、ハードウェアプロセッサ286が本開示の様々な実施形態による上記の動作を実行できるようにする命令を記憶する。
【0142】
なお、熱電冷却システム100および184を冷却チャンバー102および196を冷却することに関して説明してきたが、熱電冷却システム100および184はまた、熱回収/発電のために用いられ得、そこでは、TEC120の動作が反対になって、受容ループ114、202、および204内の冷却媒体から熱を奪うのではなく、TEC120を通して電流を発生させるためにTEC120に熱が供給されるようにする。より具体的には、熱電冷却システム100および184を参照して開示されたTECシステムは、ペルティエ効果およびゼーベック効果の過程によって定義されるような、完全に可逆的な熱力学的プロセスであり、そのため、上述の熱電冷却システム100および184は、熱回収/発電用途に用いられ得る。なお、さらに、上述のプロセスは、熱電冷却システム100を参照して説明されてきたが、これらはまた、熱電冷却システム184でも用いられ得る。したがって、
図17から
図19を参照して上に詳述した方法は、熱電冷却システム184に用いられ得る。
【0143】
当業者であれば、本開示の好適な実施形態への改良および修正を理解するはずである。すべてのこのような改良および修正は、本明細書に開示された概念および以下の特許請求の範囲の範囲内にあるとみなされる。
本開示の実施形態は、複数の熱電冷却器(TEC)を制御して、チャンバーの設定点温度を維持することに関する。一実施形態では、コントローラは、チャンバーの温度に対応する温度データを受信する。温度データに基づいて、コントローラは、2つまたは3つ以上のTECのサブセットを選択的に制御して、チャンバーの温度を所望の設定点温度に維持する。このようにして、コントローラは、TECが効率的にチャンバーの温度を設定点温度に維持するようにTECを動作するように制御可能とされる。別の実施形態では、コントローラは、温度データおよび所望の成績特性に基づいて、コントローラによって可能とされた1つまたは2つ以上の制御スキームを選択する。次いで、コントローラは、選択された制御スキーム(複数可)にしたがって、1つまたは2つ以上のTECのサブセットを独立に制御する。