(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変性ポリオレフィン層が、酸変性された変性ポリプロピレン、又は酸変性された変性ポリエチレンから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の積層体。
前記変性ポリオレフィン層及び前記共重合ポリアミド層がフィルムであり、熱圧着により一体化して得ることを特徴とする請求項10又は11記載の積層体前駆体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について詳しく説明する。
【0011】
(第1積層体)
まず、
図1(a)を参照して、本発明の第1積層体の層構成の一例について説明する。
【0012】
図1(a)に示す積層体1は、クロス積層体2の一方の面に、変性ポリオレフィン層3、共重合ポリアミド層4、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5を順に積層してなる。
本態様においては、クロス積層体2と熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5との間に、変性ポリオレフィン層3及び共重合ポリアミド層4を上述した順に設けることによって、機械的特性が向上した積層体を得ることができる。特に、各層を上述の順に積層することによって、各層間に所望の接着性を発揮し、層間剥離を生じさせない機能を発揮する。
【0013】
クロス積層体2は、熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層して熱圧着したものを好適に用いることができる。本態様におけるクロス積層体2としては、熱可塑性樹脂製の線条体からなる一枚の布条体を折り曲げて熱圧着したものでもよいし、折り曲げられた布条体を複数積層させて熱圧着したものでもよい。
【0014】
変性ポリオレフィン層3は、変性ポリオレフィンからなる。変性ポリオレフィン層3は、クロス積層体2に対して強固に接着するだけでなく、共重合ポリアミド層4に対しても強固に接着する。
【0015】
共重合ポリアミド層4は、共重合ポリアミドからなる。共重合ポリアミド層4は、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5に対して強固に接着するだけでなく、変性ポリオレフィン層3に対しても強固に接着する。
【0016】
熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5は、熱可塑性ポリウレタン系樹脂からなる。これにより、積層体1は、優れた耐摩耗性などを発揮できる。
【0017】
積層体1は、クロス積層体2の一方の面に、変性ポリオレフィン層、共重合ポリアミド層、及び、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層を順に積層することにより製造できる。
【0018】
[クロス積層体]
まず、クロス積層体2を用意する。クロス積層体2は、熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層した後に熱圧着して形成したものを用いる。
【0019】
図3は、熱圧着に供される、複数の布状体21により構成されたクロス積層体前駆体2aの一例を示す断面図である。
図3の態様は、2枚の布状体21、21を積層し、更に、該2枚の布状体21、21の間に中間層22を介在させて、クロス積層体前駆体2aを形成している。
図3の態様では、布状体21は、織物である。
【0020】
布状体は、延伸された熱可塑性樹脂のモノフィラメント、テープ、ヤーン、スプリットヤーン、マルチフィラメント、ステープルファイバー等からなる熱可塑性樹脂製の線条体を用いて形成することができる。
布状体は、織製した織布でもよいし、あるいは、多数の熱可塑性樹脂からなる線条体を直交するように並設することによって面状としてその交点を接合した交差結合布(ソフ)であってもよいし、その他上記の熱可塑性樹脂からなる線条体で形成された編物や組物でもよい。
【0021】
線条体は、熱圧着の温度よりも融点の高い高融点樹脂成分を主体として構成されるが、熱圧着の温度よりも融点の低い低融点樹脂成分を含むことができる。
【0022】
線条体の構造は、
図4に示すような態様が例示できる。
図4(a)は、線条体210が基層220のみの単層とした例である。この例の場合、線条体を構成する樹脂は、高融点樹脂成分で構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で、低融点樹脂成分を含むことができる。
【0023】
図4(b)、(c)は、線条体210が基層220の片面又は両面に、基層220よりも融点の低い熱可塑性樹脂からなる表面層230が積層された積層構造の例を示している。
図4(d)、(e)は、基層220よりも融点の低い熱可塑性樹脂からなる表面層230が、基層220の周囲を覆う芯鞘構造とした例である。
図4(f)は、サイドバイサイド構造、
図4(g)は、海島構造の例である。
【0024】
布状体に用いられる線条体を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルなどを好ましく挙げることができる。中でも、ポリプロピレンが特に好適である。
【0025】
線条体210として積層構造が使用される場合、その成形材料となる積層フィルムを成形する手段としては、
(1)予め基層220となるフィルムと表面層230となるフィルムを形成してドライラミネート法や熱ラミネート法を用いて複層化する手段、
(2)基層220となるフィルムの表面に表面層230となる熱可塑性樹脂をコーティングする手段、
(3)予め形成した基層220となるフィルムに表面層230を押出ラミネートする手段、あるいは
(4)多層共押出法によって積層フィルムとして押出成形する手段等から適宜選択して用いることができる。
【0026】
基層220となるフィルムを、例えば一軸方向に延伸した後、表面層230となる熱可塑性樹脂を積層し、これをテープ状にスリットして延伸された線条体210を得ることができる。あるいは、基層220と表面層230とが積層された積層フィルムをスリットした後、一軸方向に延伸することによって線条体210を得ることもできる。
延伸方法は特に限定されるものではなく、熱ロール、熱板、熱風炉、温水、熱油、蒸気、赤外線照射等を用い、一段もしくは多段延伸によって行うことができる。なお、線条体は全てが延伸された線条体でなくてもよく、強度にそれほど影響を与えない範囲で、無延伸線条体を混在させることもできる。
【0027】
線条体の太さは、目的に応じて任意に選定することができるが、一般的には、積層構造の場合は、50〜10000デシテックス(dt)の範囲が望ましく、
図4(d)や(e)で示されるような芯鞘構造(被覆構造)の場合は、1〜10000デシテックス(dt)の範囲が望ましい。
【0028】
中間層22は、布状体21と布状体21との間に配置されて、これら布状体21と布状体21との間を接着すると共に、得られるクロス積層体の剛性を向上する機能を有する。
【0029】
中間層22は、熱可塑性樹脂により構成される。この熱可塑性樹脂として、低融点樹脂成分に、高融点樹脂成分を含有させたものを用いることできる。低融点樹脂成分に高融点樹脂成分を含有させると、中間層を剛性向上層として機能させることができる。
本明細書において、「融点」というのは、DSC測定(示差走査熱量測定;Differential scanning calorimetry)により融解ピーク温度として測定される温度のことである。言い換えれば、高融点樹脂成分は、低融点樹脂成分よりも融解ピーク温度が高い関係にある。中間層22は、これら樹脂に由来する2つの融解ピーク温度を示し得る。
【0030】
中間層22に用いられる低融点樹脂成分としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルなどを好ましく挙げることができる。中でも、ポリオレフィンが好ましく、より好ましくはポリプロピレンである。
【0031】
中間層22に用いられる高融点樹脂成分としては、低融点樹脂成分よりも融点が高いものであればよいが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルなどを好ましく挙げることができる。中でも、ポリプロピレンが特に好適である。
【0032】
中間層22に用いられる低融点樹脂成分及び高融点樹脂成分が、それぞれポリプロピレンから選択される場合は、例えば、低融点樹脂成分としてランダムポリプロピレンを用い、高融点樹脂成分としてホモポリプロピレンを用いることができる。
【0033】
ランダムポリプロピレンは、モノマー成分としてのプロピレンと、α−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等のプロピレン以外のα−オレフィン)とが、ランダムに共重合したものである。
α−オレフィンは、例えば、全モノマー成分に対して、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下の割合で用いることができる。所望の融点を示すように、α−オレフィンの割合を調整することができる。
【0034】
中間層22に用いられる低融点樹脂成分及び高融点樹脂成分が、それぞれポリプロピレンから選択される場合の他の態様としては、低融点樹脂成分として比較的低融点のランダムポリプロピレンを用い、高融点樹脂成分として比較的高融点のランダムポリプロピレンを用いることもできる。
【0035】
ランダムポリプロピレンの融点は、上述したように、例えば、α−オレフィンの割合を調整すること等により設定することができる。具体的には、例えば、低融点樹脂成分として用いるランダムポリプロピレンよりもα−オレフィンの割合が小さいものを高融点樹脂成分として用いることができる。
【0036】
中間層22としては、低融点樹脂成分のペレットと高融点樹脂成分のペレットとを、両樹脂成分の融点以上の温度で混練し、インフレーション成形等により形成されたフィルムを用いることができる。
【0037】
中間層22として不織布を用いることもできる。
不織布は、低融点樹脂成分のペレットと高融点樹脂成分のペレットとを、両樹脂成分の融点以上の温度で混練して、スパンボンド、メルトブローなどのフリース形成方法で形成されたものを用いてもよいし、サーマルボンド、ケミカルボンド、ニードルパンチ、スパンレースフリース結合方法などで形成されたものを用いてもよい。
【0038】
中間層22において、高融点樹脂成分の含有量は、例えば、5重量%〜50重量%の範囲であることが好ましく、10重量%〜30重量%の範囲であることが更に好ましい。
【0039】
また、中間層22における低融点樹脂成分と高融点樹脂成分の重量比率は、5:95〜50:50の範囲であることが好ましく、10:90〜30:70の範囲であることが更に好ましい。
【0040】
中間層22の厚さは、例えば、布状体の厚さや、該布状体を構成する線条体の太さ等に応じて適宜設定可能であるので限定的ではないが、10μm〜100μmの範囲であることが好ましく、20μm〜60μmの範囲であることが更に好ましい。
【0041】
クロス積層体2は、上述したクロス積層体前駆体2aを、所定の温度で熱圧着させ、次いで冷却して製造することができる。
低融点樹脂成分に、高融点樹脂成分を含有させた中間層を用いた場合、低融点樹脂成分の融点以上且つ高融点樹脂成分の融点未満の温度で熱圧着させると、得られるクロス積層体2の剛性に優れる効果を奏する。
【0042】
熱圧着の手法は格別限定されないが、例えば熱プレス機などを用いることができる。その圧力は格別限定されず、各層の厚さ等に応じて適宜設定可能であるが、例えば、0.5MPa〜20MPaの範囲であることが好ましく、2MPa〜15MPaの範囲であることが更に好ましい。
熱圧着の時間は、熱圧着できるものであれば格別限定されないが、例えば、1分〜20分の範囲であることが好ましい。
【0043】
また熱圧着後の冷却は、自然放冷であってもよいし、強制的な冷却でもよい。強制的な冷却の場合には、熱圧着時の圧着状態を維持して、温度を冷却温度に下げる手法も採用できる。この場合、冷却プレスの手法を採用できる。
【0044】
冷却プレスの圧力は格別限定されず、各層の厚さ等に応じて適宜設定可能であるが、例えば、0.5MPa〜20MPaの範囲であることが好ましく、2MPa〜15MPaの範囲であることが更に好ましい。
冷却の時間は、冷却できるものであれば格別限定されないが、例えば、10秒〜20分の範囲であることが好ましい。
【0045】
以上の説明では、2枚の布状体21を積層してクロス積層体2を形成する場合について主に示したが、積層される布状体21の枚数の上限は限定されない。
例えば、目的とする用途に応じて、クロス積層体2が所望の厚さとなるように、積層される布状体21の枚数を適宜設定することができる。積層される布状体21の枚数は、例えば2枚〜50枚の範囲とすることができる。
2枚の布状体を積層する場合は、布状体/中間層/布状体からなる積層構造とすることができる。
3枚の布状体を積層する場合は、布状体/中間層/布状体/中間層/布状体からなる積層構造とすることができる。
4枚の布状体を積層する場合は、布状体/中間層/布状体/中間層/布状体/中間層/布状体からなる積層構造とすることができる。
布状体の枚数を5枚以上に増加させる場合には、上記3枚又は4枚の態様の例にならって、布状体と布状体の間に中間層を配置して、布状体が所定の枚数になるように配置する。
【0046】
また、以上の説明では、布状体21を積層する際に、布状体21、21の間に中間層22を介在させる態様について主に示したが、クロス積層体2に求める剛性によっては、中間層22を適宜省略してもよい。
【0047】
さらに、複数の布状体21の間に、図示しない接着剤層を設けることもできる。該接着剤層に用いられる接着剤は、格別限定されず、本発明の効果を損なわない範囲で選択した市販品を用いることができる。
【0048】
接着剤層を設ける方法は、格別限定されないが、スプレー、浸漬塗布、刷毛塗り等を例示することができる。
接着剤層を用いる場合、中間層22と接着剤層を併用してもよい。中間層22と接着剤層を併用する場合は、中間層22の一方の面又は両面に接着剤層を形成することができる。
クロス積層体2に要求される強度や剛性に応じて、上述した中間層22や接着剤層は適宜省略してもよい。
【0049】
特に、
図4(c)に示すような積層構造や、
図4(d)、(e)に示すような芯鞘構造を有する場合は、中間層や接着剤層を省略しても、高い強度が得られる。この場合、クロス積層体前駆体の熱圧着時、布状体に用いる線条体の表面層を構成する低融点樹脂成分が融解し、複数の布状体同士が熱圧着されて一体化される。
【0050】
本態様において、クロス積層体の形成方法は、以上に説明した態様に限定されない。
【0051】
第1積層体1の好ましい一態様は、
図1に示したように、クロス積層体2の一方の面に、変性ポリオレフィン層3、共重合ポリアミド層4、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5を順に積層したものである。
【0052】
[変性ポリオレフィン層]
変性ポリオレフィン層3は、ポリオレフィンを変性した変性ポリオレフィンからなることが好ましい。また、変性ポリオレフィン層3は、酸変性された変性ポリプロピレン、又は酸変性された変性ポリエチレンから選ばれる少なくとも一種を用いることもできる。
ポリオレフィンとしては、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。そのモノマーとしては、エチレン、プロピレンなどを例示でき、これらを単独又は2種以上混合して用いることができる。
共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
本態様では、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。中でも、ポリオレフィンとしてポリプロピレン、ポリエチレンを用いることは特に好ましい。
【0053】
ポリオレフィンの変性方法としては、酸変性する手法が挙げられる。酸変性する手法としては、ポリオレフィンに、カルボキシル基を有する有機酸をグラフト重合する方法等を用いることができる。
かかるグラフト重合により、ポリオレフィンに有機酸成分がグラフトされた酸変性ポリオレフィンが得られる。重合手法は、グラフト重合に限定されず、任意の方法を適宜選択して用いることができる。
【0054】
有機酸の種類は格別限定されないが、カルボキシル基を少なくとも1以上有する、飽和又は不飽和のカルボン酸又は無水カルボン酸であることが好ましい。
有機酸として、例えば
(1)マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アコニット酸、クロトン酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、チオマリン酸、酒石酸、アジピン酸、クエン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アクリル酸、テトラヒドロフタル酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ(2.2.1)ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸及びセバシン酸等のカルボン酸;
(2)無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水コハク酸等の無水カルボン酸
が挙げられる。
有機酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
変性ポリオレフィンは、酸変性される場合、通常、有機酸をポリオレフィンに対して0.01〜10重量%含むように変性することができる。有機酸の含有量が0.01重量%未満となる場合、変性ポリオレフィン層が、クロス積層体層と共重合ポリアミド層との間に積層される際、層間接着性に劣るため好ましくない。また、10重量%を超える場合、分子架橋型のモノマーを主成分とするポリオレフィンに対して変性すると、ポリオレフィンの架橋が著しいために溶融粘度が増大し、分子切断型のモノマーを主成分とするポリオレフィンに対して変性すると、主鎖切断が著しくなるため溶融粘度が減少する。この結果、変性ポリオレフィン層が、クロス積層体層と共重合ポリアミド層との間に積層される際、層間接着性に劣る。
【0056】
変性ポリオレフィン層は、上述した変性ポリオレフィンの他に、無変性ポリオレフィン等の他の樹脂を本発明の効果を阻害しない範囲で含んでもよい。
【0057】
変性ポリオレフィン層3の形態は格別限定されず、例えば、フィルム状やシート状のものや、押出ラミネート等に供するために溶融された状態とすることができる。汎用性の観点から、フィルム状やシート状のものが好ましい。
【0058】
[共重合ポリアミド層]
共重合ポリアミド層4は、共重合ポリアミドからなることが好ましい。
共重合ポリアミドは、脂肪族共重合ポリアミドであってもよいし、脂環族共重合ポリアミドであってもよいし、芳香族共重合ポリアミドであってもよいし、これらを1又は複数混合したものであってもよい。
【0059】
共重合ポリアミドは、ジカルボン酸成分とジアミン成分、ラクタム成分、アミノカルボン酸成分から選択される複数のアミド形成成分を組み合わせ、共重合することによって形成できる。
【0060】
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸やアルカンジカルボン酸成分などが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0061】
ジアミン成分としては、脂肪族ジアミンやアルキレンジアミン成分などが挙げられる。これらのジアミン成分は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0062】
ラクタム成分としては、例えば、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、ω−ヘプタラクタム、ω−オクタラクタム、ω−デカンラクタム、ω−ウンデカンラクタム、ω−ラウロラクタム(又はω−ラウリンラクタム)などのC
4−20ラクタムなどが挙げられる。これらのラクタム成分は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0063】
アミノカルボン酸成分としては、例えば、ω−アミノデカン酸、ω−アミノウンデカン酸、ω−アミノドデカン酸などのC
6−20アミノカルボン酸などが挙げられる。これらのアミノカルボン酸成分は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0064】
さらに、共重合ポリアミドは、長鎖脂肪鎖(長鎖アルキレン基又はアルケニレン基)を有する長鎖成分を構成単位として含むことができる。
このような長鎖成分としては、炭素数8〜36程度の長鎖脂肪鎖又はアルキレン基(好ましくはC
8−16アルキレン基、さらに好ましくはC
10−14アルキレン基)を有する成分が含まれる。
長鎖成分としては、例えば、C
8−18アルカンジカルボン酸、C
9−17ラクタム及びアミノC
9−17アルカンカルボン酸から選択された成分の一種を用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0065】
共重合ポリアミドは、市販品として入手可能なものを適宜選択して用いることができる。
【0066】
共重合ポリアミド層4は、上述した共重合ポリアミドの他に、本発明の効果を損なわない範囲で、ホモポリアミド等の他の樹脂を含むこともできる。ホモポリアミドは、例えば、前記共重合ポリアミドを形成するアミド形成成分からなるホモポリアミド等であってもよい。
【0067】
また、共重合ポリアミド層4は、その他に、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、変性ポリオレフィンや無変性ポリオレフィン、アクリル等を例示できる。
【0068】
共重合ポリアミド層4の形態は格別限定されず、例えば、フィルム状やシート状のものや、押出ラミネート等に供するために溶融された状態とすることができる。汎用性の観点から、フィルム状やシート状のものが好ましい。
【0069】
[熱可塑性ポリウレタン系樹脂層]
熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5は、熱可塑性ポリウレタン系樹脂からなる。
熱可塑性ポリウレタン系樹脂は、ジオールとジイソシアネートとを反応させることによって得ることができる。
熱可塑性ポリウレタン系樹脂としては、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリエーテル系、アクリル系、脂肪族系のものなどが挙げられ、本発明では、これらを単独で用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0070】
ジオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。
【0071】
ジイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらは単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
芳香族ジイソシアネートとしては、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2−メチレンジフェニレンジイソシアネートおよびナフタレンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス−(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0073】
ジイソシアネートは、上記芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートの2量体、3量体、これらイソシアネート化合物のカルボジイミド変性体、これらイソシアネート化合物と多価アルコールとのプレポリマー、又は、これらイソシアネート化合物をフェノール、第一級アルコール、カプロラクタム等のブロック剤で封鎖したプロックドイソシアネート化合物であってもよい。
【0074】
クロス積層体に用いる線条体や中間層、変性ポリオレフィン層や共重合ポリアミド層、並びに、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層には、目的に応じて各種の添加剤を添加することができる。
具体的には、有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アミド系、有機金属塩系等の滑剤;含臭素系有機系、リン酸系、メラミンシアヌレート系、三酸化アンチモン等の難燃剤;低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等の延伸助剤;有機顔料;無機顔料;無機充填剤;有機充填剤;金属イオン系等の無機抗菌剤、有機抗菌剤等が挙げられる。
【0075】
(第1積層体の製造方法)
次に、第1積層体の製造方法について説明する。
第1積層体の製造方法は、格別限定されず、積層体中の熱可塑性ポリウレタン系樹脂層を形成する手法によって、主に、下記(1)〜(3)に記載するような方法を好ましく例示することができる。中でも、量産化の観点から、下記(1)の方法が好ましい。
【0076】
(1)下方のものを金型内に設置し、その上から金型内に、溶融した樹脂を注入して熱可塑性ポリウレタン系樹脂層を形成する手法。ここで、下方のものとは、クロス積層体、変性ポリオレフィン層、共重合ポリアミド層を積層したものか、後述する積層体前駆体を言う。
【0077】
一態様として、
金型にクロス積層体を設置し、
クロス積層体の片面に、変性ポリオレフィン層を設置し、
変性ポリオレフィン層の上面に、共重合ポリアミド層を設置し、
共重合ポリアミド層の上面側から金型内に、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層を形成する樹脂を注入することができる。
【0078】
このとき、溶融している樹脂の熱により、少なくとも下方のものの各層の表面を溶解させて層間接着を実現することもできる。
【0079】
また、他の一態様として、
金型に積層体前駆体を設置し、
積層体前駆体中の共重合ポリアミド層の上面側から金型内に、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層を形成する樹脂を注入することができる。
【0080】
このとき、溶融している樹脂の熱により、少なくとも積層体前駆体の表面を溶解させて層間接着を実現することができる。
【0081】
(2)熱可塑性ポリウレタン系樹脂層がフィルムである場合、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層を下方のものの上面に積層して、熱圧着する手法。ここで、下方のものとは、クロス積層体、変性ポリオレフィン層、共重合ポリアミド層を順に積層したものか、複数の布状体、変性ポリオレフィン層、共重合ポリアミド層を順に積層したものか、後述する積層体前駆体を言う。
【0082】
一態様として、
クロス積層体を用意し、
クロス積層体の片面に、変性ポリオレフィン層を積層し、
変性ポリオレフィン層の上面に、共重合ポリアミド層を積層し、
共重合ポリアミド層の上面側に、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層を積層し、熱圧着することができる。
【0083】
また、他の一態様として、
複数の布状体を用意し、
複数の布状体の片面に、変性ポリオレフィン層を積層し、
変性ポリオレフィン層の上面に、共重合ポリアミド層を積層し、
共重合ポリアミド層の上面側に、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層を積層し、熱圧着することができる。
【0084】
また、他の一態様として、
積層体前駆体を用意し、
積層体前駆体中の共重合ポリアミド層の上面側に、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層を積層し、熱圧着することができる。
【0085】
熱圧着は、全ての層を一度に熱圧着してもよいし、いくつかの層を分割して段階的に熱圧着してもよい。
【0086】
(3)下方のものの上に、溶融した樹脂を層状に押出して、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層を形成する手法。ここで、下方のものとは、後述する積層体前駆体を言う。
【0087】
一態様として、
積層体前駆体を用意し、
溶融した熱可塑性ポリウレタン系樹脂層を形成する樹脂を、積層体前駆体中の共重合ポリアミド層の上面側にTダイ等で層状に押出すことができる。
【0088】
このとき、溶融している樹脂の熱により、少なくとも積層体前駆体の表面を溶解させて層間接着を実現することができる。
【0089】
上記(1)〜(3)の製造方法において、変性ポリオレフィン層及び共重合ポリアミド層がフィルムであることは好ましいことである。
【0090】
ここで、上記(1)の方法の一態様について、
図5を用いて詳細に説明する。
【0091】
まず、
図5(a)に示すように、金型7の内側表面の一部にクロス積層体2を配置し、該クロス積層体2の上に、変性ポリオレフィン層3を重ね、次いで共重合ポリアミド層4を重ねる。このとき、変性ポリオレフィン層3は、クロス積層体2側に配置される。
変性ポリオレフィン層3及び又は共重合ポリアミド層4がフィルムである場合は、これらを金型7内にセットする際の取扱い性に優れる効果が得られるため好ましい。
【0092】
次いで、
図5(b)に示すように、金型7を閉じ、金型7内で共重合ポリアミド層の上面側に、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5を形成する樹脂を注入する。このとき、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5を形成する樹脂は、溶融している。
【0093】
次いで、金型7を解放し、クロス積層体2に、変性ポリオレフィン層3、共重合ポリアミド層4を順に介して熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5が積層された積層体1が得られる。
【0094】
図5の例では、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5に、金型7の内面形状に基づく凹凸形状を付与しているが、これに限定されるものではない。上記(1)の製造方法を用いることによって、積層体に各種形状を自由度高く好適に付与できる。また、この方法を用いることで、生産性を向上することもできる。
【0095】
図5の例では、クロス積層体2、変性ポリオレフィン層3、共重合ポリアミド層4、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5からなる積層体を一度に形成する製造方法について説明したが、これに限られない。
【0096】
(第2積層体)
第2積層体について、以下に
図1(b)に基づいて説明する。
図1(b)は、第2積層体の層構成の一例を説明する図であり、第2積層体の態様を表す。
図1(b)において、上述した第1積層体で説明した
図1(a)と同一符号の部位は、同一構成の部位であり、特に説明がない部分は、第1積層体における上記説明を援用し、ここではその説明を省略する。
【0097】
第2積層体1は、クロス積層体2の一方の面に、変性ポリオレフィン層3、共重合ポリアミド層4、ポリアミド系樹脂層6を順に積層してなる。
本態様においては、クロス積層体2とポリアミド系樹脂層6との間に、変性ポリオレフィン層3及び共重合ポリアミド層4を上述した順に設けることによって、機械的特性が向上された積層体を得ることができる。特に、各層を上述の順に積層することによって、層間を強固に接着できる機能を発揮する。
【0098】
[ポリアミド系樹脂層]
ポリアミド系樹脂層6は、ポリアミド系樹脂からなる。
ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミド系樹脂であってもよく、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂であってもよく、これらを1又は複数混合したものであってもよい。
また、ポリアミド系樹脂は、変性ポリアミドであってもよく、ポリアミドブロック共重合体であってもよく、さらにそれらの組成物などであってもよい。
【0099】
ポリアミド系樹脂は、ジカルボン酸成分、ジアミン成分、ラクタム成分、アミノカルボン酸成分を組み合わせて形成できる。
【0100】
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸成分、芳香族ジカルボンサン成分、アルカンジカルボン酸成分などが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0101】
ジアミン成分としては、脂肪族ジアミンやアルキレンジアミン成分、脂環族ジアミン、芳香族ジアミンなどが挙げられる。これらのジアミン成分は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0102】
ラクタム成分としては、例えば、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、ω−ヘプタラクタム、ω−オクタラクタム、ω−デカンラクタム、ω−ウンデカンラクタム、ω−ラウロラクタム(又はω−ラウリンラクタム)などのC
4−20ラクタムなどが挙げられる。これらのラクタム成分は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0103】
アミノカルボン酸成分としては、例えば、ω−アミノデカン酸、ω−アミノウンデカン酸、ω−アミノドデカン酸などのC
4−20アミノカルボン酸などが挙げられる。これらのアミノカルボン酸成分は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0104】
さらに、ポリアミド系樹脂は、長鎖脂肪鎖(長鎖アルキレン基又はアルケニレン基)を有する長鎖成分を構成単位として含むことができる。
このような長鎖成分としては、炭素数8〜36程度の長鎖脂肪鎖又はアルキレン基(好ましくはC
8−16アルキレン基、さらに好ましくはC
10−14アルキレン基)を有する成分が含まれる。
長鎖成分としては、例えば、C
8−18アルカンジカルボン酸、C
9−17ラクタム及びアミノC
9−17アルカンカルボン酸から選択された成分の一種を用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0105】
ポリアミド系樹脂は、例えば、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612及びポリアミド1010から選択されたアミド形成成分を構成単位として含むことができる。
【0106】
ポリアミド系樹脂は、上述したアミド形成成分のうち、複数のアミド形成成分の共重合体であってもよく、上述したアミド形成成分の1又は複数のアミド形成成分と、他のアミド形成成分との共重合体であってもよい。他のアミド形成成分としては、ポリアミド6及びポリアミド66から選択された少なくとも1つのアミド形成成分などを用いることができる。
【0107】
ポリアミド系樹脂は、市販品として入手可能なものを適宜選択して用いることが出来る。
【0108】
ポリアミド系樹脂が、ポリアミドブロック共重合体である場合、ポリアミドブロック共重合体は、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体であってもよく、ポリアミド−ポリエステルブロック共重合体であってもよく、ポリアミド−ポリカーボネートブロック共重合体であってもよい。特に、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体が好ましい。
【0109】
このようなブロック共重合体は、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオールなどのジオール成分、及び又は脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸成分を分子中に含まれるブロックの構成要素とすることができる。
【0110】
ポリアミドブロック共重合体は、反応性末端基を有するポリアミドブロックと、反応性末端基を有するポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリカーボネートブロックの何れか1又は複数とを組み合わせて共重合して得られる。
【0111】
例えば、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体は、下記(1)〜(3)に例示するような、反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとを共重合して得られる。
(1)ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ジカルボン酸鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(2)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシル化α,ω−ポリオキシアルキレンブロックをシアノエチル化および水素添加して得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、
(3)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオール
【0112】
ポリアミドブロックとしては格別限定されないが、モノマーとしてラウリルラクタムを重合して得られるポリアミド12などが好ましい。
ポリエーテルブロックとしては格別限定されないが、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)を主として構成されたものが好ましい。
【0113】
反応性末端基を有するポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリカーボネートブロックの割合は、格別限定されるものではないが、ポリアミド系樹脂の5〜90重量%とすることが好ましく、10〜90重量%とすることがさらに好ましく、20〜90重量%であることがさらに好ましい。
【0114】
ポリアミド系樹脂層6は、上述したポリアミドの他に、ホモポリアミド等の他の樹脂を含むこともできる。ホモポリアミドは、例えば、前記ポリアミド形樹脂を形成する成分によるホモポリアミド等であってもよい。
【0115】
ポリアミド系樹脂層6は、上述したポリアミドの他に、例えば、変性ポリオレフィンや無変性ポリオレフィン、アクリル等の他の成分を含有してもよい。
【0116】
ポリアミド系樹脂層の形態は格別限定されず、例えば、フィルム状やシート状のものや、射出成形や押出ラミネート等に供するために溶融された状態とすることができる。
【0117】
クロス積層体に用いる線条体や中間層、変性ポリオレフィン層や共重合ポリアミド層、並びに、ポリアミド系樹脂層には、目的に応じて各種の添加剤を添加することができる。
具体的には、有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の光安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アミド系、有機金属塩系等の滑剤;含臭素系有機系、リン酸系、メラミンシアヌレート系、三酸化アンチモン等の難燃剤;低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等の延伸助剤;有機顔料;無機顔料;無機充填剤;有機充填剤;金属イオン系等の無機抗菌剤、有機抗菌剤等が挙げられる。
【0118】
(第2積層体の製造方法)
第2積層体の製造方法は、格別限定されず、第1積層体の製造方法として記載した(1)〜(3)のような方法を採用することができる。その詳細は、第1積層体について述べた説明を援用することができる。
【0119】
中でも、量産化の観点から、上記(1)の方法を好ましく用いることができる。上記(1)の場合は、例えば、
図5に示すように、第1積層体と同様に製造できる。
図5において、上述した第1積層体と同一符号の部位は、同一構成の部位であり、特に説明がない部分は、第1積層体における上記説明を援用し、ここではその説明を省略する。
また、
図5の例では、クロス積層体2、変性ポリオレフィン層3、共重合ポリアミド層4、ポリアミド系樹脂層6からなる積層体を一度に形成する製造方法について説明しているが、これに限られない。後述する積層体前駆体を製造し、該積層体前駆体の共重合ポリアミド層の上面側に、ポリアミド系樹脂層6を形成する溶融した樹脂を注入して形成してもよい。
【0120】
(第3積層体)
第3積層体について、以下に
図2(a)に基づいて説明する。
図2(a)は、第3積層体の層構成の一例を説明する図である。
図2において、上述した第1積層体で説明した
図1(a)と同一符号の部位は、同一構成の部位であり、特に説明がない部分は、第1積層体における上記説明を援用し、ここではその説明を省略する。
【0121】
第3積層体1は、クロス積層体2の一方の面に、変性ポリオレフィン層3、共重合ポリアミド層4、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5を順に積層し、前記クロス積層体の他方の面に、変性ポリオレフィン層3、共重合ポリアミド層4、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5又はポリアミド系樹脂層6を順に積層してなる。
これによって、さらに機械的特性が向上された積層体を得ることができる。特に、各層を上述の順に積層することによって、層間を強固に接着できる機能を発揮する。
【0122】
(第3積層体の製造方法)
第3積層体の製造方法は、格別限定されない。クロス積層体の一方の面に、上述した第1積層体又は第2積層体と同様の方法で、積層体を構成する層構成成分の一部を積層してから、他方の面に残りの成分を積層してもよいし、一度に両面に積層してもよい。
【0123】
クロス積層体2の一方の面に、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5が積層され、他方の面にも熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5が積層される場合、両面の熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5が、同種の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0124】
(第4積層体)
第4積層体について、以下に
図2(b)に基づいて説明する。
図2(b)は、第4積層体の層構成の一例を説明する図である。
図2(b)において、上述した第2積層体及び第3積層体で説明した
図1(b)、
図2(a)と同一符号の部位は、同一構成の部位であり、特に説明がない部分は、第2積層体及び第3積層体における上記説明を援用し、ここではその説明を省略する。
【0125】
第4積層体1は、クロス積層体2の一方の面に、変性ポリオレフィン層3、共重合ポリアミド層4、ポリアミド系樹脂層6を順に積層し、前記クロス積層体の他方の面に、変性ポリオレフィン層3、共重合ポリアミド層4、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5又はポリアミド系樹脂層6を順に積層してなる。
これによって、さらに機械的特性が向上された積層体を得ることができる。特に、各層を上述の順に積層することによって、層間を強固に接着できる機能を発揮する。
【0126】
(第4積層体の製造方法)
第4積層体の製造方法は、格別限定されない。クロス積層体の一方の面に、積層体を構成する層構成成分の一部を積層してから、他方の面に残りの成分を積層してもよいし、一度に両面に積層してもよい。
【0127】
クロス積層体2の一方の面に、ポリアミド系樹脂層6が積層され、他方の面にもポリアミド系樹脂層6が積層される場合、両面のポリアミド系樹脂層6が、同種の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0128】
(第1積層体前駆体)
第1積層体前駆体の一態様としては、
図1(a)に図示した第1積層体において、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5を形成する前の積層体前駆体が挙げられる。
また、第1積層体前駆体の他の態様としては、
図1(b)に図示した第2積層体において、ポリアミド系樹脂層6を形成する前の積層体前駆体が挙げられる。
すなわち、第1積層体前駆体は、クロス積層体2/変性ポリオレフィン層3/共重合ポリアミド層4の順に積層したものである。
【0129】
積層体前駆体の、共重合ポリアミド層4側に剥離紙を設けることもできる。これにより、積層体前駆体を輸送する際に、共重合ポリアミド層4が他の物品に接着してしまうことを防止することができる。
【0130】
(第1積層体前駆体の製造方法)
次に、第1積層体前駆体の製造方法について説明する。
第1積層体前駆体の製造方法は、格別限定されず、主に、下記(1)、(2)に記載するような方法を好ましく例示することができる。
【0131】
(1)熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層した後に熱圧着してクロス積層体を得、得られたクロス積層体に、変性ポリオレフィン層3、共重合ポリアミド層4を順に積層して熱圧着する手法
【0132】
(2)熱可塑性樹脂製の線条体からなる布状体を複数積層し、その上面に、変性ポリオレフィン層3、共重合ポリアミド層4を順に積層して熱圧着する手法
【0133】
上記(1)、(2)の手法において、変性ポリオレフィン層3及び共重合ポリアミド層4がフィルムであることは好ましいことである。
【0134】
熱圧着は、全ての層を一度に熱圧着してもよいし、いくつかの層を分割して段階的に熱圧着してもよい。
【0135】
このような積層体前駆体は、第1積層体及び第2積層体を得るために有用である。
特に、積層体の製造工程において、クロス積層体2/変性ポリオレフィン層3/共重合ポリアミド層4の順に積層した積層体前駆体を製造する場所と、その後、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5又はポリアミド系樹脂層6を積層して積層体を得る場所とが異なる場合に好ましい。
積層体前駆体によって、積層体の製造工程に自由度を持たせることができるからである。
【0136】
(第2積層体前駆体)
第2積層体前駆体の一態様としては、
図2(a)に図示した第3積層体において、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5を形成する前の積層体前駆体が挙げられる。
また、第2積層体前駆体の他の態様としては、
図2(b)に図示した第4積層体において、ポリアミド系樹脂層6を形成する前の積層体前駆体が挙げられる。
すなわち、第2積層体前駆体は、共重合ポリアミド層4/変性ポリオレフィン層3/クロス積層体2/変性ポリオレフィン層3/共重合ポリアミド層4の順に積層したものである。このとき、上記2つの共重合ポリアミド層4の上面には、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層又はポリアミド系樹脂層を積層することもできるし、どちらか1つの共重合ポリアミド層4にのみ熱可塑性ポリウレタン系樹脂層又はポリアミド系樹脂層を積層することもできる。
【0137】
第2積層体前駆体の、共重合ポリアミド層4側に剥離紙を設けることもできる。これにより、第2積層体前駆体を輸送する際に、共重合ポリアミド層4が他の物品に接着してしまうことを防止することができる。
【0138】
このような第2積層体前駆体は、第3積層体及び第4積層体を得るために有用である。特に、積層体の製造工程において、共重合ポリアミド層4/変性ポリオレフィン層3/クロス積層体2/変性ポリオレフィン層3/共重合ポリアミド層4の順に積層した積層体前駆体を製造する場所と、その後、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層5又はポリアミド系樹脂層6を積層して積層体を得る場所とが異なる場合に好ましい。
積層体前駆体によって、積層体の製造工程に自由度を持たせることができるからである。
【0139】
以上では、変性ポリオレフィン層、共重合ポリアミド層、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層又はポリアミド系樹脂層をそれぞれ独立に層形成する場合について説明したが、これに限定されず、本発明の積層体の目的とする物性(耐摩耗性等)を損なわない範囲で、変性ポリオレフィン層、共重合ポリアミド層、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層、ポリアミド系樹脂層を形成する成分を混合して積層体を形成してもよい。
特に、変性ポリオレフィン層及び共重合ポリアミド層は、接着性の観点から、それぞれ独立した層として形成することが好ましいが、求める接着性のレベルによっては、変性ポリオレフィンと共重合ポリアミドを混合した層とすることもできる。
【0140】
また、以上では、クロス積層体、変性ポリオレフィン層、共重合ポリアミド層、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層又はポリアミド系樹脂層を、各層ごとに形成し、それらを積層する態様について説明したが、これに限られない。例えば、上述したが、クロス積層体を形成する過程の布状体と、フィルムの変性ポリオレフィン層、共重合ポリアミド層とを積層し、一度に熱圧着することもできる。
【0141】
以上の説明において、クロス積層体の他方の面に積層される対象は、変性ポリオレフィン層、共重合ポリアミド層、及び、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層に限定されず、目的や用途等に応じて種々の層を積層することができる。例えば、他方の面に、PETフィルムや不織布等を貼り合わせて、視覚に起因するクロス積層体製品の付加価値を増大させることができる。
【0142】
本発明の積層体の用途は格別限定されないが、例えば靴、スーツケース等を構成する構成部品が挙げられ、特に靴底や靴の構成部品として好ましく用いられる。
本発明の積層体を靴底に使用する場合、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層又はポリアミド系樹脂層を、地面と接する側の表面に配置することは好ましいことである。
【実施例】
【0143】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
【0144】
(実施例1)
第1.積層体の作製
1.クロス積層体の作製
(1)布状体の作製
高融点樹脂成分としてポリプロピレン(MFR=0.4g/10分、重量平均分子量Mw=630,000、融点164℃)と、低融点樹脂成分としてプロピレン−エチレンランダム共重合体(MFR=7.0g/10分、重量平均分子量Mw=220,000、融点125℃)とを用いて、インフレーション成形法によって、
図4(c)に示すような、低融点樹脂成分を表面層とし高融点樹脂成分を基層とした3層フィルム(層厚み比1/8/1)を得た。
【0145】
得られたフィルムを、レザー(razor)でスリットした。次いで、温度110〜120℃の熱板上で7倍に延伸した後、温度145℃の熱風循環式オーブン内で10%の弛緩熱処理を行い、糸巾4.5mm、繊度1700デシデックス(dt)のフラットヤーンを得た。
【0146】
得られたフラットヤーンを、スルーザー織機を用いて、経糸15本/25.4mm、緯糸15本/25.4mmの綾織に織成することによって布状体を得た。
【0147】
(2)中間層の作製
中間層としては、融点125℃のポリプロピレン(低融点樹脂成分)に、融点161℃のポリプロピレン(高融点樹脂成分)を含有させた、ポリプロピレンのフィルムを用いた。中間層における高融点樹脂成分の含有量は15重量%とした。残部は低融点樹脂成分である。
【0148】
(3)熱圧着・冷却
得られた布状体4枚と、得られた中間層3枚を、布状体/中間層/布状体/中間層/布状体/中間層/布状体となるように交互に積層した。
【0149】
これを、油圧式プレス機でプレス温度150℃に設定し、圧力4MPaで2分間加熱プレスした後、油圧式プレス機でプレス温度20℃、圧力4MPaで2分間冷却プレスして、幅20cm、長さ20cmのクロス積層体を得た。
【0150】
2.変性ポリオレフィン層の準備
変性ポリオレフィン層としては、マレイン酸をグラフトして、酸変性された変性ポリプロピレンのフィルム(融点134℃)を用いた。
【0151】
3.共重合ポリアミド層の準備
共重合ポリアミド層としては、モノマーがε−カプロラクタムの共重合ポリアミドのフィルム(融点127℃)を用いた。
【0152】
4.積層体の作製
(1)油圧式プレス機でプレス温度145℃に設定し、圧力1MPaで2分間加熱プレスした後、油圧式プレス機でプレス温度20℃、圧力5MPaで2分間冷却プレスして、クロス積層体層/変性ポリオレフィン層/共重合ポリアミド層の順に積層された積層体前駆体を得た。
(2)次いで、金型に、積層体前駆体を設置した。積層体前駆体の共重合ポリアミド層の上面側に熱可塑性ポリウレタン系樹脂が注入されるようにして、以下の条件で成形し、積層体1を得た。
【0153】
(成形の条件)
熱可塑性ポリウレタン系樹脂:BASF社「エラストランET690−50」
シリンダ温度:200℃
サイクルタイム:1分間
金型温度:40℃
冷却時間:20秒
【0154】
(比較例1)
実施例1において、上記4.積層体の作製で、変性ポリオレフィン層及び共重合ポリアミド層を省略したこと以外は、実施例1と同様にして、クロス積層体/熱可塑性ポリウレタン系樹脂層となる積層体2を得た。
【0155】
(比較例2)
実施例1において、上記4.積層体の作製で、共重合ポリアミド層を省略したこと以外は、実施例1と同様にして、クロス積層体/変性ポリオレフィン層/熱可塑性ポリウレタン系樹脂層となる積層体3を得た。
【0156】
(比較例3)
実施例1において、上記4.積層体の作製で、変性ポリオレフィン層を省略したこと以外は、実施例1と同様にして、クロス積層体/共重合ポリアミド層/熱可塑性ポリウレタン系樹脂層となる積層体4を得た。
【0157】
第2.接着強度確認試験及び評価方法
積層体1〜4について、層間の接着強度を確認する試験を実施した。試験は、規格JIS K 6854−3に準拠した剥離強度試験によって行われた。
このとき、サンプル幅10mm、試験速度100mm/minとした。積層体1〜4について、それぞれ複数個のサンプルに対して試験を行い、得られた接着強度の結果について、以下の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
【0158】
<評価基準>
◎:接着強度が25N/cm以上であり、高度の層間接着性を求める製品に使用することができる
○:接着強度が15N/cm以上25未満であり、低度〜中度の層間接着性を求める製品に使用することができる
×:接着強度が15N/cm未満であり、層間接着性が不足するので、積層体として使用不可
【0159】
【表1】
【0160】
<評価>
表1の結果より、本発明の積層体は、接着強度が32.2N/cmと層間接着性に優れるため、高度の層間接着性を要求される製品に用いることができることがわかる。
また、本発明の積層体は、クロス積層体の少なくとも一方の面に、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層を有するため、耐摩耗性に優れる。
以上より、本発明の積層体は、高度な耐摩耗性や層間接着性を要求される用途で有用な積層体であると言える。
【0161】
(実施例2)
第1.積層体の作製
実施例1において、上記4.積層体の作製で、積層体前駆体の共重合ポリアミド層の上面側に、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層に代えてポリアミド系樹脂を注入し、下記の条件で成形したこと以外は、実施例1と同様にして、クロス積層体/変性ポリオレフィン層/共重合ポリアミド層/ポリアミド系樹脂層となる積層体5を得た。ポリアミド樹脂層の成形条件は下記のとおりである。
【0162】
(成形の条件)
ポリアミド系樹脂:ARKEMA社製「Pebax 7033」
シリンダ温度:250℃
サイクルタイム:1分間
金型温度:60℃
冷却時間:20秒
【0163】
(比較例4)
実施例2において、上記第1.積層体の作製で、変性ポリオレフィン層及び共重合ポリアミド層を省略したこと以外は、実施例2と同様にして、クロス積層体/ポリアミド系樹脂層となる積層体6を得た。
【0164】
(比較例5)
実施例2において、上記第1.積層体の作製で、共重合ポリアミド層を省略したこと以外は、実施例2と同様にして、クロス積層体/変性ポリオレフィン層/ポリアミド系樹脂層となる積層体7を得た。
【0165】
(比較例6)
実施例2において、上記第1.積層体の作製で、変性ポリオレフィン層を省略したこと以外は、実施例2と同様にして、クロス積層体/共重合ポリアミド層/ポリアミド系樹脂層となる積層体8を得た。
【0166】
第2.接着強度確認試験及び評価方法
積層体5〜8について、積層体1〜4と同様の方法で接着強度を評価した。結果を表2に示す。
【0167】
【表2】
【0168】
<評価>
表2の結果より、本発明の積層体は、接着強度が44.4N/cmと層間接着性に優れるため、高度の層間接着性を要求される製品に用いることができることがわかる。
以上より、本発明の積層体は、高度な耐摩耗性や層間接着性を要求される用途で有用な積層体であると言える。
機械的特性が向上し、層間接着性に優れた積層体を提供することを課題とし、当該課題は、熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層してなるクロス積層体(2)の少なくとも一方の面に、変性ポリオレフィン層(3)、共重合ポリアミド層(4)、及び、熱可塑性ポリウレタン系樹脂層(5)を順に積層してなる積層体、または、熱可塑性樹脂製の線条体からなる複数の布状体を積層してなるクロス積層体(2)の少なくとも一方の面に、変性ポリオレフィン層(3)、共重合ポリアミド層(4)、及び、ポリアミド系樹脂層(6)を順に積層してなる積層体により解決される。