(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378473
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】X線装置用の放射面
(51)【国際特許分類】
H01J 1/16 20060101AFI20180813BHJP
H05G 1/00 20060101ALI20180813BHJP
H01J 1/18 20060101ALI20180813BHJP
H01J 35/06 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
H01J1/16
H05G1/00 D
H01J1/18
H01J35/06 C
H01J35/06 Z
【請求項の数】23
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-187843(P2013-187843)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-63734(P2014-63734A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2016年9月5日
(31)【優先権主張番号】13/619,587
(32)【優先日】2012年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】シー・ツァン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ドナルド・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ケーリー・ショーン・ロジャーズ
(72)【発明者】
【氏名】イーサン・ジェイムズ・ウエストコット
(72)【発明者】
【氏名】マーク・アラン・フロンテラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンス・スコット・ロビンソン
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ゾォ
【審査官】
杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−040272(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0025429(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0176708(US,A1)
【文献】
特表2009−536777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J1/15
1/16
1/18
35/06
37/06−37/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子エミッタであって、
加熱されると電子を放射することができる円の丸形放射エリアを有する表面であって、前記丸形放射エリアが、複数のセグメントを互いに分離するとともに電気路を規定する細穴と、前記丸形放射エリアの第1の部分を前記丸形放射エリアの第2の部分から分離するギャップ、溝、またはその組合せであって、前記第1の部分および前記第2の部分を互いに接触させることなく、少なくとも1つのギャップまたは溝内で前記第1の部分および前記第2の部分の熱膨張を可能にするギャップ、溝、またはその組合せとを有し、前記電気路は、前記第1の部分において前記円の外径から始まり、前記第1の部分の経路をたどって、前記第2の部分に入る前に前記円の中心に到達し、前記丸形放射エリアは、前記少なくとも1つのギャップ又は溝に直交する少なくとも第2のギャップ又は溝であって、前記第1の部分および前記第2の部分を、少なくとも4つの部分に分割する少なくとも第2のギャップ又は溝を更に有するように構成された表面と、
前記丸形放射エリアの外側の位置で前記表面に連結され、前記丸形放射エリアに電流を供給することができる2つの導電性レッグと、
導電性ではなく且つ前記電子エミッタに連結された少なくとも一つのレッグであって、前記電子エミッタを面内に保持するための少なくとも一つのレッグと、
を備える電子エミッタ。
【請求項2】
前記第1の部分および前記第2の部分は、四分円を形成する別個のエリアを含む、請求項1に記載の電子エミッタ。
【請求項3】
前記円の直径が少なくとも7mmである、請求項2記載の電子エミッタ。
【請求項4】
前記ギャップはv字形ギャップであり、
前記丸形放射エリアが、前記円の中心に向かって狭くなる少なくとも1つのv字形ギャップを含む、請求項2記載の電子エミッタ。
【請求項5】
前記v字形ギャップが、最も狭いギャップ長の2倍である最も広いギャップ長から狭くなる、請求項4記載の電子エミッタ。
【請求項6】
前記表面が、v字形ギャップと溝との両方を含む、請求項4記載の電子エミッタ。
【請求項7】
前記ギャップはv字形ギャップであり、
前記丸形放射エリアが、少なくとも2つのv字形ギャップを含む、請求項1記載の電子エミッタ。
【請求項8】
前記ギャップ、前記溝、又はその組合せは、前記表面を二分するとともに、前記丸形放射エリアを通り過ぎて、前記電子エミッタの最長寸法の端部で終わる切欠きに到達するように設けられている、請求項1記載の電子エミッタ。
【請求項9】
前記丸形放射エリアが、前記丸形放射エリアの中点に穴を含む、請求項1記載の電子エミッタ。
【請求項10】
前記エミッタが、タングステン、炭化ハフニウムまたはその組合せを含む、請求項1記載の電子エミッタ。
【請求項11】
電子エミッタであって、
四分円に分割されるとともに各四分円の蛇行する半径方向の経路を有し、電流が外径から前記半径方向の経路に入り円の中心に到達した後に、別の四分円に入り、前記半径方向の経路に従って再び外径に到達するように流れる円盤状の放射エリアであって、10A以下の駆動電流で加熱されると電子を放射することができる円盤状の放射エリアを含む表面と、
前記円盤状の放射エリアの外側の位置で前記表面に連結され、前記円盤状の放射エリアに電流を供給することができる2つの導電性レッグであって、前記円盤状の放射エリアに電流が印加されると、前記円盤状の放射エリアは少なくとも摂氏2000度の温度まで熱くなり、放射面の温度むらが、前記円盤状の放射エリアを加熱するときに達成される最高温度の6%未満となるように、前記円盤状の放射エリアに電流を供給することができる2つの導電性レッグと、
導電性ではなく且つ前記電子エミッタに連結された少なくとも一つのレッグであって、前記電子エミッタを保持するための少なくとも一つのレッグと、
を含む、電子エミッタ。
【請求項12】
前記円盤状の放射エリアが円を含む、請求項11記載の電子エミッタ。
【請求項13】
前記円の直径が少なくとも7mmである、請求項12記載の電子エミッタ。
【請求項14】
前記円の直径が、7mmと11mmの間である、請求項12記載の電子エミッタ。
【請求項15】
前記エミッタが、前記放射面を囲む環状領域であって、前記放射面の一部ではない環状領域を含む、請求項12記載の電子エミッタ。
【請求項16】
前記円盤状の放射エリアが楕円を含む、請求項11記載の電子エミッタ。
【請求項17】
前記円盤状の放射エリアが、少なくとも摂氏2000度の温度まで熱くなり、前記放射面全体の温度むらは、7.5Aと9.5Aとの間の駆動電流で達成される最高温度の6%未満である、請求項11記載の電子エミッタ。
【請求項18】
電子ビームを放射するように構成された電子エミッタを含む電子ビーム源であって、前記電子エミッタが、
加熱されると電子を放射することができ、少なくとも第1の部分と第2の部分とを有する円盤状の放射エリアであって、前記第1の部分における前記円盤状の放射エリアの外径から、前記第2の部分に入る前に前記円盤状の放射エリアの中心にまで延在するように設けられた蛇行する電気路と、前記放射エリアの第1の部分を前記放射エリアの第2の部分から分離するギャップ、溝、またはその組合せと、前記ギャップ又は溝に直交する少なくとも第2のギャップ又は溝であって、前記第1の部分および前記第2の部分を、少なくとも4つの部分に分割する少なくとも第2のギャップ又は溝とを含む円盤状の放射エリアと、
前記円盤状の放射エリアの外側の位置で前記電子エミッタに連結され、前記円盤状の放射エリアに電流を供給することができる複数の導電性レッグと、
導電性ではなく且つ前記電子エミッタに連結されたレッグと
を備える、電子ビーム源と、
前記電子ビームを受け、前記電子ビームが衝突するとX線を放射するように構成されたアノードアセンブリと、
ハウジングであって、前記ハウジング内に前記電子ビーム源および前記アノードアセンブリが配置されるように構成されたハウジングと、
を含む、X線管。
【請求項19】
前記円盤状の放射エリアが、7mmよりも大きい直径を有する円を含む、請求項18記載のX線管。
【請求項20】
前記ギャップはv字形ギャップであり、
前記円盤状の放射エリアが、前記円の中心に向かって狭くなる少なくとも1つのv字形ギャップであって、前記円盤状の放射エリアを複数の部分に分けるための少なくとも1つのv字形ギャップを含む、請求項19記載のX線管。
【請求項21】
前記円盤状の放射エリアが、温度調整を容易にするために、前記円の中心に、前記v字形ギャップとは別の穴を含む、請求項20記載のX線管。
【請求項22】
前記円盤状の放射エリアが複数のローブを含む、請求項18記載のX線管。
【請求項23】
前記ギャップはv字形ギャップであり、
前記複数のローブの少なくとも一部が、1つまたは複数のv字形ギャップによって分離され、
前記円盤状の放射エリアは、加熱されると、隣接するローブを互いに接触させることなく前記1つまたは複数のv字形ギャップのサイズが減少するように、前記1つまたは複数のv字形ギャップ内で膨張する、請求項22記載のX線管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する主題は、電子銃に使用されるような、電子放射面に関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲撮像システムでは、様々なX線システムおよびコンピュータ断層撮影(CT)システムにおいて、X線照射源としてX線管が使用される。放射線は、検査または撮像シーケンス中に制御信号に反応して放射される。一般的にX線管は、カソードと、アノードとを含む。カソード内のエミッタが、印加電流から生じる熱、および/または印加電圧から生じる電界に反応して、エミッタの前方の適切に成形された金属板に電子の流れを放射することができる。アノードは、電子の流れが衝突するターゲットを含むことができる。ターゲットは、電子ビームが衝突した結果としてX線放射線を生成し、撮像ボリュームに向かって放射されることがある。
【0003】
このような撮像システムでは、放射線は、患者、手荷物、または製造品のような関心の対象を通り抜け、放射線の一部が、デジタル検出器または感光板に衝突し、そこに画像データが集められる。デジタルX線システムでは、光検出器が、検出器の表面の個別素子に衝突している放射線の量または強度を表す信号を生成する。次に信号を処理して、画像を生成することができ、これを表示して詳しく調べることができる。CTシステムでは、ガントリが患者の周りで回転するとき、一連の検出素子を含む検出器アレイが、様々な位置を通る同様の信号を生成する。
【0004】
腫瘍放射線治療用システムのような他のシステムでは、X線の線源を使用して、電離放射線を標的組織に向けることができる。一部の放射線治療の構成では、線源は、X線管を含むこともできる。放射線治療の目的で使用されるX線管もまた、上述のように、熱電子エミッタと、X線を生成するターゲットアノードとを含むことができる。このようなX線管または線源は、放射したX線を集中させる、または制限して所望のサイズまたは形状のビームにするための1つまたは複数の視準機能を含むこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0316192号明細書
【発明の概要】
【0006】
1つの実施形態において、X線エミッタを提供する。このX線エミッタは、加熱されると電子を放射することができる丸形放射エリアを含む。丸形放射エリアは、加熱されると電子を放射することができる丸形放射エリアを備える表面を含み、丸形放射エリアは、ギャップ、溝、またはその組合せのうちの少なくとも1つを含み、丸形放射エリアの第1の部分を丸形放射エリアの第2の部分から分離し、少なくとも1つのギャップまたは溝内で第1の部分と第2の部分とを互いに接触させることなく、第1の部分および第2の部分の熱膨張を可能にする。丸形放射エリアはまた、丸形放射エリアの外側のそれぞれの位置でエミッタの表面に連結され、丸形放射エリアに電流を供給することができる2つの導電性レッグを含む。
【0007】
別の実施形態において、X線エミッタを提供する。このX線エミッタは、10A以下の駆動電流で加熱されると電子を放射することができる円盤状の放射エリアを含む。円盤状の放射エリアは、円盤状の放射エリアの外側のそれぞれの位置で表面に連結された2つの導電性レッグを含み、このレッグは、円盤状の放射エリアに電流を供給することができ、円盤状の放射エリアに電流が印加されると、円盤状の放射エリアは少なくとも摂氏2000度の温度まで熱くなり、放射面全体の温度むら(temperature variation)は達成される最高温度の6%未満となる。
【0008】
さらなる実施形態において、X線管を提供する。このX線管は、電子ビーム源を含む。電子ビーム源は、電子ビームを放射するように構成された電子エミッタを含む。電子エミッタは、加熱されると電子を放射することができ、蛇行する半径方向の電気路(serpentine radial electrical path)を備えた円盤状の放射エリアを含み、蛇行する半径方向の電気路は、円盤状の放射エリアの外径から円盤状の放射エリアの中心へ、および逆へ伸びる。電子エミッタはまた、円盤状の放射エリアの外側のそれぞれの位置で電子エミッタに連結され、円盤状の放射エリアに電流を供給することができる複数の導電性レッグを含む。X線管はまた、電子ビームを受け、電子ビームが衝突するとX線を放射するように構成されたアノードアセンブリと、電子ビーム源およびアノードアセンブリを中に配置したハウジングとを含む。
【0009】
本開示のこれらのおよび他の特徴、態様、および利点は、図面全体にわたって同様の文字が同様の部分を表す添付の図面を参照して次の詳細な説明を読むと、よりよく理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態を組み込むCT撮像システムの概観図である。
【
図2】
図1に示すシステムのブロック概略図である。
【
図3】本開示の一実施形態に従ったX線源の概略図である。
【
図4】本開示の一実施形態に従ったエミッタの上面図である。
【
図5】本開示の一実施形態に従った
図4のエミッタの透視図である。
【
図6】本開示の一実施形態に従って放射面に印を付けた
図5のエミッタの上面図である。
【
図7】軸方向の電流路を有する放射面の代替的実施形態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、X線管のカソードアセンブリと併せて使用するための電子エミッタを提供する。この電子エミッタは、電子銃の構成で使用するのに適している既存の電子エミッタと比べると比較的大きい直径を有する(例えば、1つの実施形態では約7mmから約11mmの直径を有する)電子放射面となる構造的特徴を組み込む。本明細書に開示するようなより大型のエミッタは、所望の駆動電流でより高い電子放射を生じる。駆動電流とは、エミッタを通過してこれを加熱する電流のことを言う。1つの例では、放射は、1250mAよりも大きい。さらに、電子エミッタは、電子放射面全体にわたって比較的均一な温度を維持することができ、その結果として撮像のための堅牢な焦点が得られる。さらに、放射面にホットスポットがないことは、電子放射中に比較的均一な温度が維持されることの利点であり、結果としてエミッタの使用期間をより長くし、ひいてはX線デバイスの保守のための費用効果が高くなる場合がある。したがって、提供するエミッタは、高放射および長い使用期間を提供するより大きい直径のエミッタとすることができる。
【0012】
そのために、本明細書に開示する電子エミッタは、いかなる好適なX線デバイスと併せて使用することもできる。開示の動作環境は、64スライスのコンピュータ断層撮影(CT)システムに関して説明する。CTスキャナの一実施形態について説明するが、本技術は、透視、マンモグラフィ、血管造影、および標準的な放射線撮像システムならびに放射線治療システムを含む、他のX線によるシステムにも等しく適用できる。さらに、開示する諸実施形態は、X線放射であろうと、他のものであろうと、電子銃および/または電子エミッタが実装される他の用途での使用に適していることは当業者には理解されるであろう。
【0013】
図1を参照すると、コンピュータ断層撮影(CT)撮像システム10が、ガントリ12を含んで示されている。ガントリ12は、X線源14を有し、X線源が、ガントリ12の反対側にある検出器アセンブリに向かってX線のビーム16を投射する。検出器アセンブリ18は、コリメータ18、複数の検出器20、およびデータ取得システム32によって形成される。複数の検出器20(
図2参照)は、内科患者22を通過する投射されたX線を検知し、データ取得システム32は、次の処理に備えてデータをデジタル信号に変換する。各検出器20は、当たっているX線ビーム、およびその後患者22を通過するとき減衰されるビームの強度を表す電気信号を生成する。X線投射データを取得するためのスキャン中に、ガントリ12およびガントリ12に取り付けられた構成要素は、回転の中心24を中心にして回転する。
【0014】
図2を参照すると、ガントリ12の回転およびX線源14の向きが、CTシステム10の制御機構26によって統制される。制御機構26は、X線源14に電力およびタイミング信号を提供するX線コントローラ28と、ガントリ12の回転速度および位置を制御するガントリモータコントローラ30とを含む。画像再構成器34が、データ取得システム32から、サンプリングされてデジタル化されたX線データを受け取り、高速再構成を行う。再構成された画像は、コンピュータ36への入力として適用され、コンピュータ36は画像を大容量記憶装置38に格納する。
【0015】
コンピュータ36はまた、キーボード、マウス、音声作動型コントローラ、または任意の他の好適な入力装置のような、ある種の操作者インタフェースを有するコンソール40を介して操作者からコマンドおよびスキャンパラメータを受け取る。関連ディスプレイ42により、操作者はコンピュータ36からの再構成された画像および他のデータを観察することができる。操作者が提供するコマンドおよびパラメータはコンピュータ36によって使用されて、制御信号および情報が、データ取得システム32、X線コントローラ28、およびガントリモータコントローラ30に提供される。さらに、コンピュータ36は、患者22およびガントリ12の位置を定めるために電動式台46を制御する台モータコントローラ44を操作する。具体的には台46は、全体的にまたは部分的に、
図1のガントリ開口部48の中を通して、患者22を移動させる。
【0016】
次に
図3を参照すると、CTシステム10に組み込まれたX線源14を詳細に示している。X線源14は、Pierce電子銃として構成することができる電子銃50を含むX線発生管14と、ハウジング54に入れられたアノードアセンブリ52とを含む。アノードアセンブリ52は、回転アノードディスク58(すなわちターゲット)を回すように構成された回転子56を含む。電子銃50からの電子電流60が当たると、アノード58はX線ビーム62を放射する。
【0017】
X線管50は、比較的低圧のエリア(例えば、真空)を定めるハウジング54内でアノードおよびカソードアセンブリによって支持される。例えばハウジング54は、ガラス、セラミックス、またはステンレス鋼、または他の適切な材料を含むことができる。アノード58は、タングステン、モリブデン、銅のような任意の金属もしくは複合材料、または電子で衝撃を与えられるとき制動放射(Bremsstrahlung)(すなわち、減速放射)に寄与する任意の材料から製造することができる。アノードの表面材料は、一般に、アノード58に衝突する電子により発生する熱に耐えるように、比較的熱拡散率を有するように選択される。カソードアセンブリ66とアノード58との間の空間は、電子が他の原子と衝突するのを最小限にし、高電圧の安定性を増大させるために、排気することができる。さらに、このような排気により、有利には磁束が電子ビーム62と急速に相互作用する(すなわち、進路を決めるまたは集中させる)ことができるようになる。一部のX線管では、カソードアセンブリ66とアノード58との間に20kVを超える静電電位差が生じ、カソードアセンブリ66によって放射された電子をアノード58に向かって加速させる。
図4は、電子を放射するためにカソードアセンブリ66の一部として組み込むことができるエミッタ100の上面図である。エミッタ100は、電子放射面110が形成され、加熱されると電子を放射する上面106を含む。放射面110全体に電圧が印加され、電流が4つの四分円のそれぞれの蛇行する半径方向の経路を通って流れるようにすると、ジュール加熱がエミッタ100の温度を上昇させる。エミッタ100に複数の別個のエリア(例えば、四分円)を設けることによって、より大きいエミッタを形成することができる。例えば、図示した4つの四分円パターンでは、追加の折り返し点を所望の幅に保ちながらも、駆動電流を維持することができる。
【0018】
矢印114で電気路を示している。経路は半径方向であり、矢印114は、外径から円に入り、進路に従って円の中心に到達した後に、別の四分円に入り、経路にしたがって再び外径に到達する。上面106は、襞またはセグメント120を互いから分離する細穴116を含んで、単一の蛇行する半径方向の電気路を定める。細穴は、電気路を定めて、隣接する襞またはセグメント120の間で短絡することなく半径方向の熱膨張を可能にするサイズにされる。1つの実施形態では、細穴は約60μmの幅であり、セグメント120は約320μmの幅である。セグメント120のサイズおよび数は、放射面110の特性に影響を及ぼすように選択することができる。例えば、セグメント120は、各折り返し点122で方向を変える半径方向の経路を設け、各折り返し点122は、細穴116および隣接するセグメント120からの任意の他の物理的分離によって定められる。電気路は、折り返し点122で方向を変えながら、セグメント120に沿って放射面110を曲がって進む。より多くの折り返し点122(およびより多くのセグメント120)を有する電気路が、結果として上昇温度の均一性およびより小さい駆動電流をもたらすことができる。しかしながら、より多くの折り返し点122を有するエミッタ100は、製造がより複雑となる可能性がある。さらに、折り返し点122の幅は、任意のホットスポットを補うように調整することができ、それによって作動時の放射面の温度均一性を向上させる。
【0019】
上面106全体および放射面110内の電気の流れは、エミッタ100が十分に高温に到達すると、放射面110の加熱、および結果として起こる電子放射をもたらす。一部の実施形態では、エミッタ100は、タングステン、炭化ハフニウム(HfC)、または他の材料を含む、電子放射を容易にする任意の適切な材料を含むことができる。さらに、エミッタ100は、平らな上面106(および放射面110)を特徴として有するものとして示しているが、エミッタ100は、一部の実施形態では、湾曲している、または他の場合は非平面状である可能性があることを理解されよう。
【0020】
エミッタ100はまた、端子112aを他の端子(例えば、端子112b)から電気的に分離する通路124などの、電気路を定める追加の特徴を含むことができる。溝130が、放射面110の上半分132を下半分134から分離し、さらにセグメント120が放射面内で複数の経路を有することを避ける。図のように、溝130は、放射面110を二分する。溝130は、放射面の形状に応じて、放射面を実質的に等しい部分に分けることができる。溝130はまた、放射面110を通り越して、エミッタ100の最長寸法の端部138で終わるより広い切り欠き136まで伸びることができる。
【0021】
エミッタ100はまた、放射面110の一部を互いから部分的に分離する1つまたは複数のv字形のギャップ138を含むことができる。例えば、図示した実施形態は、放射面110の、左の四分円(140aおよび140b)を右の四分円(142aおよび142b)から分離する2つのv字形、すなわちテーパ状のギャップ138を示す。図のように、v字形のギャップ138は、左四分円140と右四分円142との間に単一の電気路を残している。1つの実施形態では、v字形ギャップ138は、軸(例えば、直径の軸)に沿って並んでいる。別の実施形態では、v字形ギャップ138は、溝130と直交している。
【0022】
エミッタ100はまた、放射面全体にわたって熱を冷却するまたは分散することを容易にする温度均一機能を含むことができる。例えば、熱を分散するように、通路124のサイズおよび形状を選択することができる。この目的のために、エミッタ100に通路146を形成することもできる。通路146は、エミッタ100をカソードアセンブリ66内に配置するための位置合わせ穴として使用することもできる。さらに、溝130は、放射面110の中心に形成された穴148のような、熱分散機能を含むことができる。穴148は、温度を調節すること、または平滑化することを容易にする任意の好適な形状とすることができる。1つの実施形態では、穴148は、約550μmの直径を有する。
【0023】
図5は、支柱160を示すエミッタ100の透視図である。支柱160aは、端子112aに電気的に連結され、電流を提供する。同様に支柱160bは、端子112bに連結される。支柱160cは、導電性ではなく、接合部164でエミッタ100に連結される。この連結は、固定式であれ、スライド式であれ、エミッタを面内(in−plane)に保持するための構造的支持を提供する。支柱160および端子112の位置を交換できることは理解されよう。さらにエミッタ110は、3つの支柱の配置ではなく、2つの支柱の配置で構成することができる。支柱は、任意の好適な方法でエミッタ100に取り付けることができる。1つの実施形態では、支柱160は、エミッタ100にレーザ溶接される。1つの実施形態では、支柱160は、放射面110の外側の位置でエミッタ100に連結される。
【0024】
支柱160は、放射面110を定めるエリアの外側でエミッタ100に連結される。
図6は放射面110を、点線170で定められた円内であるとして示す。図示した実施形態では、放射面の直径d
1は、少なくとも約7mm、または少なくとも約10mmとすることができる。エミッタ100は、放射面110の外側に伸びる直径d
2を有する円を形成し、最長のセグメント120は、少なくとも一部が放射面110の外側にある。一部の実施形態では、直径d
1は約10mmであって、直径d
2は約11.5mmである。
【0025】
上記のように、エミッタは、概ね丸形のエミッタ100を異なるセクションまたは四半円に分離する1つまたは複数の機能を含むことができる。例えば、このような機能は、1つまたは複数のv字形ギャップ138を含むことができる。v字形ギャップ138のサイズおよび形状は、セグメント120の熱膨張を可能にするように選択することができる。エミッタ100は、加熱されると、1つまたは複数のv字形ギャップ138内で膨張し、1つまたは複数のv字形ギャップ138が、隣接するローブまたはセクションを互いに接触させることなくサイズにおいて減少するように構成される。具体的には、v字形ギャップは一般に、エミッタ100の中心から半径方向に伸びるにつれてより広がるものとすることができる。これにより、エミッタ100の外周の方に位置するより長いセグメント120が、より短いセグメント120に比べてより大きく膨張することができる。より短いセグメント120はあまり膨張しない可能性があり、比較的狭いギャップを促す。v字形ギャップ138のサイズは、膨張を可能にするが、さらに放射エリアの損失を最小限にするように選択することができる。
【0026】
v字形のギャップ138は、ギャップ長が変化して、穴148に向かって最も狭くなるように、放射面110の中心に向かって先細になる。もっとも広い箇所で、ギャップ長l
1は260μm以下とすることができる。1つの実施形態では、v字形ギャップ138は、約120μmと約240μmとの間で変化するギャップ長を有することができる。さらに、v字形ギャップ138は、約2以上の、最も広いギャップ長l
1と最も狭いギャップ長の比によって、特徴付けることができる。すなわち、v字形ギャップ138の最も広い箇所は、最も狭い箇所の2倍以上とすることができる。溝130は、概ね一定のサイズであるギャップ長l
2を有することができる。1つの実施形態では、溝130のギャップ長l
2は、約240μm未満である。別の実施形態では、溝130のギャップ長l
2は、約120μmと約240μmの間である。
【0027】
エミッタ100のサイズおよび形状は、カソードアセンブリ66と併せて使用されるように好適な寸法に基づいて選択することができる。特定の実施形態では、エミッタ100のより長い寸法l
3は、放射面110の直径の約2倍とすることができる。1つの実施形態では、より長い寸法l
3は、放射面110の直径の2倍よりも、1〜2mm長い、または短い範囲内とすることができる。別の実施形態では、エミッタ100のより短い寸法l
4は、放射面110のおよそ直径とすることができる。
【0028】
図7は、エミッタ100の代替実施形態であり、代替実施形態では放射面110は、電気路が一般に軸方向となるように構成され、図示した実施形態では、概ね楕円形の放射面110となる。セグメント120は、各折り返し点122で約180度方向を転換する電気路を定める折り返し点122を含む。
【0029】
エミッタ100は、約7〜9.5アンペアの駆動電流で比較的大きい放射面直径(例えば、少なくとも7mm)を有して放射温度を達成することができる。この配置は、関連する駆動電流の望ましくない増大なしに、放射面の直径を増大し、電子放射特性を向上させる。1つの実施形態では、放射面110は、この効果を達成する任意の好適な形状または構成とすることができる。例えば、放射面110は、一般に、丸形、円盤形、円形、環形、楕円形、または矩形とすることができる。
【0030】
エミッタ100の形成に使用されるパターンにかかわらず、放射面100全体にわたる温度分布は、運用駆動電流において比較的均一である。表1は、温度モデル化ソフトウェアを使用してモデル化される、放射(10mmの直径)設計および軸設計についての予想される温度プロフィールの結果を示す。
【0031】
【表1】
図のように、放射パターンの温度均一性は、最大駆動電流でも一貫していた。1つの実施形態では、エミッタ100は、放射面110全体にわたって最高温度から約10%未満、または約6%未満の温度差の温度均一性を維持する。
【0032】
記載した説明は、最良の方式を含み、さらに当業者が、任意のデバイスまたはシステムを作成して使用し、組み込まれた任意の方法を行うことなど、この技術を実践できるようにするための例を使用している。本開示の特許可能な範囲は、特許請求の範囲により定義するが、当業者であれば思い付く他の例も含むことができる。このような他の例は、特許請求の範囲の文字通りの言葉と違わない構造的要素を有する場合、または、特許請求の範囲の文字通りの言葉とはわずかな違いを有する等価な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲の範囲内であるものとする。
【符号の説明】
【0033】
10 コンピュータ断層撮影撮像システム
12 ガントリ
14 X線源
18 コリメータ
22 患者
32 データ取得システム
46 電動式台
48 ガントリ開口部