(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378505
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】少なくとも1つの機能部品を位置決めする装置
(51)【国際特許分類】
F01L 1/04 20060101AFI20180813BHJP
B23P 11/02 20060101ALI20180813BHJP
B23P 19/00 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
F01L1/04 E
B23P11/02 A
B23P19/00 304E
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-47112(P2014-47112)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-173603(P2014-173603A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年12月16日
(31)【優先権主張番号】10 2013 204 116.0
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ メノナ
【審査官】
稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102011106981(DE,A1)
【文献】
独国特許出願公開第10225688(DE,A1)
【文献】
国際公開第2009/065970(WO,A1)
【文献】
特開平11−210413(JP,A)
【文献】
特開2000−073709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/04
B23P 11/02、19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能部品(4)向けの少なくとも1つのホルダー(5)を備え、
シャフト(3)上の所定の角度位置に、シャフト(3)用のハブ(2)を有する少なくとも1つの上記機能部品(4)、特にカム(4a)を位置決めする装置(1)であって、
上記少なくとも1つの機能部品(4)のハブ(2)に対する上記シャフト(3)の同軸の位置合わせのための心押軸(6)が設けられ、
上記心押軸(6)は、上記シャフト(3)に向かって該心押軸(6)に対する軸方向に移動可能な心出し円すい(7)と、上記機能部品(4)を心出しするための拡縮式の心出し部品(8)とを備え、上記心出し円すい(7)が軸方向に移動すると、上記心出し部品(8)が径方向に移動するように、上記心出し円すい(7)が上記心出し部品(8)に結合され、
上記心出し部品(8)は、拡張された位置において、上記機能部品(4)内のハブ(2)に対して所定の位置をとり、
上記シャフト(3)用の移動可能な案内ブロック(9)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1の装置において、
上記拡張された心出し部品(8)の所定の位置は、上記機能部品(4)内のハブ(2)からの間隙が上記機能部品(4)内のハブ(2)と上記シャフト(3)との間隙よりも小さくなることを可能にすることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1の装置において、
上記心出し部品(8)は、上記機能部品(4)内のハブ(2)に対して押し込まれ、上記機能部品(4)を拡張された位置に固定することを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1つの装置において、
少なくとも3つの心出し部品(8)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1つの装置において、
上記心出し部品(8)を移動させるために、移動機構(12)又は液圧式若しくは空気圧式の調整手段が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1つの装置において、
所定の力で上記ハブ(2)に対して上記少なくとも1つの心出し部品(8)に予応力を与えるばね手段(14)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1つの装置において、
上記ホルダー(5)は、止め具(10)を有し、上記心押軸(6)は、回転可能であることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1つの装置において、
上記機能部品(4)は、釣合いおもり、歯車又は軸受として設けられていることを特徴とする装置。
【請求項9】
シャフト(3)を、該シャフト用のハブ(2)を有する少なくとも1つの機能部品(4)、特にカム(4a)に請求項1〜8の何れか1つによる装置(1)によって熱的に接合する方法であって、
上記シャフト(3)は冷却され、及び/又は、上記機能部品(4)は加熱され、
上記機能部品(4)は、上記装置(1)の上記関連するホルダー(5)内に配置され、
上記心押軸(6)は、上記心出し部品(8)が上記ハブ(2)内に位置するまで上記ハブ(2)内に移動され、
上記シャフト(3)は、上記心出し円すい(7)が軸方向にずれ、かつ上記心出し部品(8)が上記機能部品(4)の上記ハブ(2)に対して押し込まれるように、上記案内ブロック(9)によって、上記心押軸(6)の上記心出し円すい(7)の方に移動され、
上記心押軸(6)は、上記機能部品(4)と共に、適正な角度位置に回転され、
上記シャフト(3)は、上記機能部品(4)に押し通され、
上記シャフト(3)上に上記機能部品(4)を固定する温度均一化を待って、
上記シャフト(3)は、その上に固定された上記機能部品(4)と共に、上記装置(1)から取り除かれる方法。
【請求項10】
シャフト(3)を、該シャフト用のハブ(2)をそれぞれ有する複数の機能部品(4)、特にカム(4a)に請求項1〜6の何れか1つによる装置(1)によって熱的に接合する方法であって、
上記シャフト(3)は冷却され、及び/又は、上記複数の機能部品(4)は加熱され、
上記複数の機能部品(4)は、互いに整列された複数のハブ(2)を備えた装置(1)の上下に配列された複数のホルダー(5)内に配置され、
上記心押軸(6)は、上記複数の機能部品(4)の全ての上記ハブ(2)を介して下方から移動され、
上記シャフト(3)は、上記心出し円すい(7)が軸方向にずれ、かつ上記心出し部品(8)が拡張されるように、上記案内ブロック(9)によって、上記心押軸(6)の上記心出し円すい(7)の方に移動され、
上記心押軸(6)は、上記シャフト(3)と共に下方に移動され、上記心押軸(6)は、同時に回転され、上記心出し部品(8)は、ハブ(2)に到達するときに当該ハブ(2)の中に押し込まれ、かつそのホルダー(5)内で上記関連する機能部品(4)を止め具(10)に対して所定の角度で回転させ、
上記シャフト(3)は、全ての上記機能部品(4)に押し通され、
上記シャフト(3)上に上記複数の機能部品(4)を固定する温度均一化を待って、
上記シャフト(3)は、その上に固定された上記複数の機能部品(4)と共に、上記装置(1)から取り除かれる方法。
【請求項11】
請求項9又は10の方法において、
上記機能部品(4)は、上記ホルダー(5)内において又は外部から加熱されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部におけるシャフト用のハブを有する少なくとも1つの機能部品、特にカムを位置決めする装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シャフト上の所定の角度位置にシャフト用の切り欠きを有する少なくとも1つの機能部品を位置決めし、機能部品用にホルダーを有する一般的な装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、複数の機能部品を支える少なくとも1つのシャフトと、連続した複数の軸受で当該複数の機能部品を支持し、接合前に少なくとも1つのシャフトがハウジングの軸受及び複数の機能部品の各開口を介して押し進められるようにその内部の所定の位相位置に複数の機能部品を保持する位置決め手段を有するハウジングとからなる組立品を取り付けるためのさらなる装置が開示されている。この場合、位置決め手段には、シャフトの接合方向と反対の機能部品を支持する止め具を有し、機能部品用の切り欠きが設けられており、位置決め手段の切り欠きは、複数の機能部品がそれらの後の接合位置に合致した位相位置に保持されるように、機能部品の輪郭の一部を
負の輪郭として有している。切り欠きの一部は、少なくとも機能部品の外側の輪郭のいくらかを覆って、複数の機能部品を取り囲んでいる。これは、特に精密な位相の位置合わせを実現することを目的としている。
【0004】
特許文献3には、シャフトが挿入されるように、複数の機能部品の正確な位置合わせのために複数の位置決めディスクが配置された機台を備え、複数の機能部品を支えるシャフトを取り付けるための装置が開示されている。位置決めディスクは、機台にその一部が可逆的に固定されたフレームに可逆的に固定されている。これは、幾つかのフレームを利用可能に保持することによって、製造プロセスの急速な変化を可能にすることを目的としている。
【0005】
特許文献4には、工作機械のスピンドルに挿入された心出しピンを有し、加工品を心出しするための装置が開示されている。心出しピン又はその中心部品は、工作機械上に付加的な心出しユニットがもはや必要でなくなるように、スピンドルのあらゆる場合にも存在する移動手段と共に動作する。
【0006】
特許文献5には、シャフトを把持する第1グリッパと、位置的に方向付けられるように接合部を把持する第2グリッパとを含む接合手段を備え、シャフトに対する穴を有する少なくとも1つの接合部の接合を形成するための装置が開示されている。シャフトは、回転式に駆動されるように取り付けられた締め付け手段にその一方の端部で中心に締め付けられ、他方の端部で心出し点、所望の温度で加熱された接合部、及びシャフトの直径に対して過度に広くなった穴と共に心出しされている。これは、特に接合プロセスが最適化され得る装置を作り出すことを目的にしている。
【0007】
特許文献6には、シャフトに対する穴を有し、その穴を介してシャフトが突出する駆動部を回転しないように固定する方法が開示されている。接合部は、収縮により形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008064194号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102007056638号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102009060350号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102006036140号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102011106981号明細書
【特許文献6】欧州特許第1392469号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記発明による装置の不都合は、熱収縮の間にシャフトの案内が比較的複雑になることである。
【0010】
本発明は、特に最適化された接合プロセスを可能にする、汎用タイプの装置のための改良された又は少なくとも代替の実施形態を特定する課題に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、独立形式の特許請求の範囲に記載された内容による発明に従って解決される。有利な実施形態は、従属形式の特許請求の範囲に記載された内容である。
【0012】
本発明は、少なくとも1つの機能部品のハブに対するシャフトの同軸の位置合わせのための心押軸を備え、心押軸がシャフトに対してシャフト及び機能部品の両方を位置合わせするように形成された汎用装置を装備する一般概念に基づいている。したがって、その装置は、機能部品が内部に配置される少なくとも1つのホルダーが設けられ、所定の角度位置に、シャフト用のハブを有する少なくとも1つの機能部品、例えば、カムシャフト上のカムを位置合わせするために形成されている。本発明によって設けられた心押軸は、シャフトに向かって心押軸に対する軸方向に移動可能な心出し円すいと、機能部品を心出しするための付加的に拡縮式の心出し部品とを備え、心出し円すいが軸方向に移動すると、心出し部品が径方向に移動するように、心出し円すいが心出し部品に結合されている。心出し円すいが配置された前側の端で心押軸がシャフトの端面にぶつかれば、心出し円すいが部分的にシャフトの内部に押し込まれ、心出し円すいの軸方向のずれ及びそれによる心出し部品の径方向の拡張が同時に起こることにより、心押軸を心出しする。拡張された位置において、心出し部品は、所定の位置に存在するので、ハブから所定の間隙が生じ、又は心出し部品は、機能部品内のハブに対して押し込まれているので、機能部品を固定する。本発明による装置は、接合用のシャフトが心押軸と同時にずれ、かつ特に少なくとも1つの機能部品のハブに押し通されることによって、シャフト用の移動可能な案内ブロックを付加的に備えている。本発明による装置によれば、心押軸の先端部によって、ハブ及び機能部品(例えばカム)の正確な位置合わせを成し遂げることができる。心押軸の先端部上の心出し部品は、拡張状態において、ハブから極めて僅かな間隙をとり、又は機能部品のハブに対して押し込まれるのに対し、収縮状態において、カム又は機能部品のハブを容易に通り抜けるように形成されている。心出し部品は、シャフトの端面を心押軸の先端部に接するように移動させることにより、すなわち、シャフトの端面を心出し円すいにぶつけることにより、拡張される。したがって、シャフトを心出しする心出し円すいは、軸方向に少し移動され、その結果として、例えば、対応する移動機構、又は液圧式若しくは空気圧式の調整手段によって、心出し部品の径方向の拡張をもたらす。本発明による心押軸によれば、シャフトに対する機能部品の心出しプロセスをかなり単純化することができ、その結果、接合プロセスを全体的に最適化することができる。
【0013】
好適には、心押軸の先端部に少なくとも3つの心出し部品が設けられている。3つの心出し部品は、シャフトに対してそれぞれの機能部品のハブを最適に位置合わせ可能にすることが少なくとも必要である。当然、心出し部品又はそれらを作動させる移動機構は、心出し円すいが軸方向に移動すると、心出し部品の径方向の均一な移動が起こるように形成される。当然、4つ又はそれ以上の心出し部品もまた設けられてもよい。
【0014】
本発明による解決手段の他の有利な実施形態において、少なくとも1つの心出し部品に、好ましくは、全ての心出し部品にその拡張された位置で予応力を与えるばね手段が設けられている。その結果、心出し部品の所定の接触力、及び機能部品に対する所定の固定力が実現する。少なくとも1つのばね手段が心押軸の先端部に組み込まれていてもよい。
【0015】
一般的に、機能部品は、カムの他に、釣合いおもり、歯車又は軸受として設けられていてもよく、このリストは網羅的でなく、特にカムシャフト、例えばホイールセンサーの分野において、本発明による装置を用いて接合される他の機能部品であってもよい。
【0016】
本発明は、上述した装置を用いて、シャフト用のハブを有する少なくとも1つの機能部品にシャフトを熱的に接合するための新規な方法を特定する一般概念にも基づいている。本発明による方法では、最初に、シャフトが冷却され、及び/又は、機能部品が加熱され、その後、機能部品が装置の関連するホルダー内に配置される。このホルダーは、複数の機能部品が正確な角度で内部に収容され得るように、複数の機能部品の
負の輪郭を有してもよい。同じく、ホルダーにとって、それぞれの機能部品の回転を正確に所定の角度位置の範囲だけに可能にする止め具を有することは、想定されることである。その後の方法ステップにおいて、心押軸は、その後、心出し部品がハブ内に位置するまでハブ内まで移動される。その後、シャフトは、心出し円すいがシャフト内に少なくとも部分的に突き出し、同時に軸方向にずれ、その結果、心出し部品を機能部品のハブに対して押し込むように、案内ブロックによって、心押軸の心出し円すいの方に移動される。その後、心押軸は、機能部品と共に、適正な角度位置に回転され、シャフトが機能部品に押し通される。熱的な接合を固定するために、シャフト上に機能部品を固定する温度均一化を待って、最後の方法ステップにおいて、シャフト及びその上に固定された機能部品が装置から取り除かれる。最初の方法ステップ、すなわちシャフトの冷却、及び/又は、少なくとも1つの機能部品の加熱は、当然、最初に行われる必要がなく、実際のシャフトへの接合の前に短く行われてもよい。
【0017】
上述の装置を用いてシャフトに複数の機能部品が接合されるとすれば、以下に述べる代わりの方法が適当であり、そこでは、再び最初に、シャフトが冷却され、及び/又は、機能部品が加熱される。その後、複数の機能部品は、互いに整列された複数のハブを備えた装置の上下に配列された複数のホルダー内に配置され、心押軸は、複数の機能部品の全てのハブを介して下方から移動される。その後、シャフトは、心出し円すいが軸方向にずれ、かつ心出し部品が拡張されるように、案内ブロックによって、心押軸の心出し円すいの方に移動されてもよい。同じ方法ステップにおいて、おそらく未だに僅かに偏心して配置されたシャフトの心出しもまた行われる。それに続く方法ステップにおいて、心押軸は、シャフトと共に下方に移動され、心押軸は、同時に回転される。しかしながら、シャフトは、回転されない。心出し部品は、その後、ハブに到達すると、心出し部品がハブ内に押し込まれる結果、心押軸が回転される際に、関連する機能部品もまた所定の止め具に所定の角度でぶつかるまでそのホルダー内で回転される。その後、シャフトは、全ての機能部品に押し通され、ここで、それぞれの次の機能部品に到達すると、複数の心出し部品がハブ内に押し込まれている間に、各機能部品は、心押軸の回転によって、その角度位置に関して連続的に位置合わせされる。その後、熱的な接合を完了することができるように、固定用の温度均一化を待って、シャフトがその上に固定された機能部品と共に装置から取り除かれる。その結果、極めて正確で同時に最適化されたプロセスの接合を同様に成し遂げることができる。
【0018】
本発明のさらなる重要な特徴及び利点については、下位の請求項、図面及び図面を用いた関連する図の説明から見つけられる。
【0019】
上述した特徴及び以下で説明される特徴は、説明された各組み合わせで使用できるだけでなく、本発明の範囲を超えることなしに、その他の組合せや若しくは単独でも使用できることは自明である。
【0020】
本発明の好ましい例示的な実施形態は、図面において示され、以下の記載においてより詳細に説明される。ここで、同一の符号は、同一の、同様の又は機能的に同等の構成要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】(a)〜(d)は、本発明による装置を用いて複数のカムを接合する間の個々の方法ステップを示す概略図であり、(e)は、部分的に拡張された心出し部品を備えた心押軸を概略的に示す平面図である。
【
図3】(a)〜(e)は、本発明による装置を用いて1つのカムを接合するための方法を示す概略図である。
【
図4】心出し円すい及び心出し部品を備えた心押軸の先端部の実施形態を示す概略図である。
【
図5】心出し円すい及び心出し部品を備えた心押軸の先端部の他の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1によれば、シャフト3用のハブ2を有する少なくとも1つの機能部品4、例えば、シャフト3上の所定の角度位置にカム4aを位置決めする本発明による装置1は、機能部品4向けの少なくとも1つのホルダー5を備えている。また、本発明による装置1は、少なくとも1つの機能部品4のハブ2に対するシャフト3の同軸の位置合わせのための心押軸6を備えている。心押軸6は、シャフト3に対向するその先端部に、シャフト3に向かって心押軸6に対して軸方向に移動可能な心出し円すい7と、例えば、カム4aの機能部品4を心出しするための拡縮式の心出し部品8とを備え、心出し円すい7が軸方向に移動すると、心出し部品8が径方向に移動するように、心出し円すい7が心出し部品8に結合されている。そのような結合は、例えば、
図4及び
図5に示されている。心出し部品8は、機能部品4内にハブ2に対して押し込まれ、その結果、機能部品4を拡張された位置に固定する。さらに、本発明による装置1は、シャフト3用の移動可能な案内ブロック9を備え、それによって、シャフト3がハブ2及びホルダー5に上方から押し通され、機能部品4,4aがシャフト3に接合されることが可能になる。
図1に示された装置1において、ホルダー5内に収容された機能部品4の回転を所定の角度位置の範囲だけに可能にする止め具10をそれぞれ有する2つのホルダー5が全体で設けられている。あるいは、ホルダー5は、機能部品4,4aが正確に嵌合して所定の角度で内部に収容されるように、機能部品4,4aの
負の輪郭の少なくとも一部を当然有してもよい。機能部品4は、例えば、カム4aの他に、釣合いおもり、歯車又はホイールセンサーとして形成されていてもよい。
【0023】
図2(e)を見ると、好ましくは均一に拡張及び収縮されて、ハブ2の正確な心出しと、軸11に対する機能部品4のハブ2によって、心押軸6の軸である軸11と、シャフト3及びハブ2との正確な心出しとを同時に可能にする少なくとも3つの心出し部品8が設けられていることが分かる。
【0024】
心出し部品8を移動させるために、例えば、
図4及び
図5に示すように、移動機構12が設けられていてもよく、液圧式又は空気圧式の調整手段(不図示)もまた当然考えられる。移動機構12は、例えば、心出し円すい7が押し下げられたときに心出し部品8を径方向、すなわち、軸11に直交する方向の外側に移動させるように、心出し円すい7に配置された拡がり円すい13を備えてもよい。心出し部品8の曲線的な外端のために、心出し円すい7が負荷から解放され、例えば、ハブ2にぶつかることにより、心押軸6が同時にずれるときに、心出し部品8は、自動的に径方向の内側に後方移動する。同様に、少なくとも1つの心出し部品8、好ましくは全ての心出し部品8を所定の接触力で機能部品4のハブ2に押し付けるばね手段14が設けられてもよい。
【0025】
ところで、
図2(a)〜
図2(d)によれば、
図1に示された装置1によって、シャフト3用のハブ2をそれぞれ有する、例えば、複数のカム4aという複数の機能部品4にシャフト3を熱的に接合するそれぞれの方法ステップが説明されている。本発明による方法において、最初に、第1の部分で熱的な接合プロセスを可能にするために、シャフト3及び/又は機能部品4が加熱される。その後、複数の機能部品4は、互いに整列された複数のハブ2を備えた装置1の上下に配列された複数のホルダー5内に配置される。
図2(a)〜
図2(d)において、1つの機能部品4だけが示されているものの、
図2(a)によれば、その後、心押軸6は、複数の機能部品4の全てのハブ2を介して下方から移動される。収縮された複数の心出し部品8の外径d1は、心押軸6がその心出し用の先端部と共にハブ2を介して非接触で移動できるようにハブ2の内径d2よりも小さくなっている。その後、複数の心出し部品8が径方向の外側に移動される結果として、シャフト3は、案内ブロック9によって、心出し円すい7上に配置される。同時に、シャフト3は、複数の心出し部品8が機能部品4のハブ2内で拡がるまで心押軸6と共に下方に移動され、複数の心出し部品8によって押し込まれた機能部品4が止め具10にぶつかるまでホルダー5内で回転される結果として、
図2(b)及び
図2(c)のとおりに、心押軸6の回転が同時に起こり、その所定の角度の位置合わせが得られる。その後、シャフト3及び心押軸6は、シャフト3が機能部品4のハブ2に押し通される結果として、さらに下方に移動される。その後、
図2(b)〜
図2(d)によるプロセスは、シャフト3が全ての機能部品4に押し通されるまで繰り返され、心押軸6は、シャフト3に対する実際の接合の前に、新しく受けた各機能部品4を所定の角度位置に回転させることを可能にするために連続的に回転される。接合箇所を固定する温度均一化を待てば、その後に、シャフト3をその上に固定された複数の機能部品4と共に装置1から取り除くことが可能になる。
【0026】
図2(a)及び
図2(b)の直径d1及びd2を見ると、直径d1が直径d3よりも小さいことが明らかに分かる。d3は、加熱された機能部品4のハブ直径を指している。d4は、シャフト3上の接合箇所の直径である。一般に、d2は、d3よりも大きく、それは、d3がd4よりも小さいことに必要である。拡張された複数の心出し部品8とハブ2との間隙は、加熱された複数の機能部品4とシャフト3との間隙よりも小さくなっている。
【0027】
その一方、
図3(a)〜
図3(e)を見ると、シャフト3用のハブ2を有する機能部品4、例えば、カム4aにシャフト3を
図1による装置によって熱的に接合するための他の方法が示されている。この方法においても、最初にシャフト3が冷却され、及び/又は、機能部品4が加熱され、その後、機能部品4は、装置1の関連するホルダー5内に配置される。その後、心押軸6は、心出し部品8がハブ2内に位置するまで下方からハブ2内に移動される。その後、シャフト3は、案内ブロック9によって、上方から心出し円すい7上に配置され、その結果、心出し部品8が拡張され、同時にハブ2内に押し込まれる。これは、
図3(c)に示される。
図3(d)による方法ステップにおいて、シャフト3は、その後、機能部品4のハブ2に押し通され、その結果、
図3(e)による方法ステップにおける対応する温度均一化プロセスの後に、そのシャフト3は、その上に固定された機能部品4と共に、ホルダー5から上方に引き抜かれ得る。この場合、ホルダー5は、機能部品4が正確な角度で内部に収容されるように、例えば、機能部品4の
負の輪郭の少なくとも一部を有している。
【0028】
上述した2つの方法において、シャフト3の冷却及び/又は機能部品4の加熱は、当然、始めに行われる必要がなく、中間の方法ステップにおいて、又は例えば加熱可能なホルダー5によって行ってもよい。
【0029】
本発明による装置1及び特に本発明による方法によれば、例えばカム4aという機能部品4を、関連する、例えばカムシャフトというシャフト3に接合するプロセスを一層確実にすることができる。