(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような風胴体付きの風力発電装置は、中型ないし小型であり、より高い効率で風力エネルギーを取り出せることが望まれる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、風胴体付きの風力発電装置において、発電効率を更に向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、筒状の風胴体(20)と、該風胴体(20)の流入口(21)の内部近傍に配置された発電用の風車(30)とを備えた風力発電装置を対象とし、上記風胴体(20)の流出口(22)の外周縁部に周方向に配列され、該風胴体(20)の外部の風を旋回流とする複数の旋回翼(53)を備え、
上記風胴体(20)は、風下側に形成されるとともに該風下側に向かって徐々に内径が拡大した風下側拡径部(24b)を備え、上記風車(30)の順回転方向と、前記複数の旋回翼(53)によって形成される旋回流の方向とが同一方向であり、上記旋回翼(53)は、風上側に位置し上記風胴体(20)の外周壁から径方向外方に立設する縦板部(53a)と、上記縦板部(53a)の風下端部から上記風車(30)の順回転方向に湾曲する曲板部(53b)とを備え、上記曲板部(53b)の転向角βは、70°<β<90°の範囲であることを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、風胴体(20)の内部及び外部を風が流れる。風胴体(20)の内部の風は、発電用の風車(30)を回転させた後、該風車(30)を通過して風胴体(20)の流出口(22)より外部へ流出する。風胴体(20)の内部から外部へ流出した風は、風車(30)の順回転方向に旋回する旋回流となる。このため、仮に風胴体(20)の外部の風が風胴体(20)の外周壁に沿って筒軸方向に真っ直ぐ流れると、風胴体(20)内部のディフューザ効果のみが有効となるので、風車(30)近傍の圧力低下には限界が生じる。
【0009】
これに対し、本発明では、風胴体(20)の流出口(22)の外周縁部に複数の旋回翼(53)を設けている。このため、風胴体(20)の外部の風は、複数の旋回翼(53)によって旋回流となる。これにより、風胴体(20)の内部から風車(30)により形成された旋回流は、風胴体(20)の外部の風と干渉せずにスムーズな流れを形成する。この結果、風胴体(20)の内部の圧力が低下し、風車(30)の近傍を流れる風の高速化が図られる。
【0010】
第
1の発明では、複数の旋回翼(53)が縦板部(53a)と曲板部(53b)とを有する。風胴体(20)の外部の風は、まず、旋回翼(53)の縦板部(53a)に沿って筒軸方向に流れ、その後、曲板部(53b)に沿って周方向へと流れの向きを変える。これにより、風胴体(20)の流出口(22)の外周縁部では、旋回流が形成される。
【0011】
第
2の発明は、第
1の発明において、上記複数の旋回翼(53)を囲むように配置され、該複数の旋回翼(53)の各外側端部が固定される1つの環状の外側筒部(52)を備えていることを特徴とする。
【0012】
第
2の発明では、複数の旋回翼(53)の周囲に外側筒部(52)が配置され、各旋回翼(53)の外側端部が固定される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、風胴体(20)の流出口(22)の外周縁部に旋回流を形成することで、風車(30)の近傍を流れる風の高速化が図られる。この結果、風車(30)の出力が増大し、ひいては発電効率の向上を図ることができる。
【0014】
第
1の発明によれば、比較的簡易な構成により、風胴体(20)の流出口(22)の外周縁部に旋回流を形成できる。
【0015】
第
2の発明によれば、複数の旋回翼(53)の取付強度を向上できる。また、旋回翼(53)の外周端部が外部へ露出してしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る風力発電装置の概略構成を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る風力発電装置の正面(風上側面)図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る旋回流形成部材の斜視図であり、外側筒部の図示を省略したものである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る旋回流形成部材の側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る旋回流形成部材の旋回翼を外周側から視た平面図である。
【
図6】
図6は、旋回翼の転向角βとパワー係数Cpとの関係を検証した試験の結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、ピッチコード比P/Cとパワー係数Cpとの関係を検証した試験の結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、拡大角度α=14°の風胴体を用いた風力発電装置の概略構成を示す縦断面図である。
【
図9】
図9は、拡大角度α=7°の風胴体を用いた風力発電装置の概略構成を示す縦断面図である。
【
図10】
図10は、拡大角度αが異なる旋回翼型及びディフューザ型における、周速比λとパワー係数Cpとの関係を検証した試験の結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、他の型式の風力発電装置の概略構成を示す縦断面図であり、
図11(A)は風車単体型を、
図11(B)はつば型を、
図11(C)はディフューザ型をそれぞれ示すものである。
【
図12】
図12は、風車単体型、つば型、ディフューザ型、及び旋回翼型における、周速比λとパワー係数Cpとの関係を検証した試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0018】
〈風力発電装置の構成〉
本発明に係る風力発電装置(10)は、風力を電力に変換して発電を行うものである。
図1及び
図2に示すように、風力発電装置(10)は、風胴体(20)と発電用の風車(30)と発電機(40)とを備えている。
【0019】
風胴体(20)は、略円筒状に形成される。風胴体(20)の筒軸方向の一端(
図1における左端)には、空気(風)の流入口(21)が形成され、風胴体(20)の筒軸方向の他端(
図1における右端)には、空気(風)の流出口(22)が形成される。風胴体(20)では、流入口(21)から流出口(22)に亘って風の流路(5)が形成される。
【0020】
風胴体(20)は、真円筒状の外周壁部(23)と、該外周壁部(23)の内部に一体に形成される内周壁部(24)とを有している。外周壁部(23)の軸心と内周壁部(24)の軸心とは同じ水平軸線上に位置している。
【0021】
内周壁部(24)は、風上側に向かって徐々に内径が拡大した風上側拡径部(24a)と、風下側に向かって徐々に内径が拡大した風下側拡径部(24b)と、風上側拡径部(24a)と風下側拡径部(24b)との間に形成された最小内径部(24c)とを有している。風上側拡径部(24a)の筒軸方向の幅は、風下側拡径部(24b)の筒軸方向の幅よりも短い。最小内径部(24c)は、縦断面が円弧状に形成される。
【0022】
風下側拡径部(24b)は、風胴体(20)の内部の流路(5)を徐々に拡大させる拡大管(ディフューザ)を構成している。風胴体(20)では、外周壁部(23)と風下側拡径部(24b)との間に所定の角度(
図1に示す角度α、以下、拡大角度αともいう)が形成されている。
図1に示すように、本実施形態では、この拡大角度αが21°に設定されている。
【0023】
風車(30)は、水平方向に延びる出力軸(31)と、該出力軸(31)に連結される3枚の回転羽根(32)とを有している。3枚の回転羽根(32)は、出力軸(31)の風上端部の周囲に等間隔を置いて周方向に配列される。各回転羽根(32)は、風胴体(20)の内部の流路(5)のうち最小内径部(24c)に対応した位置に配置される。
【0024】
出力軸(31)には、発電機(40)が連結される。回転羽根(32)の回転に伴い出力軸(31)が回転すると発電機(40)で発電が行われる。
【0025】
本実施形態の風力発電装置(10)は、旋回流形成部材(50)を備えている。旋回流形成部材(50)は、風胴体(20)の外周面のうち風下寄りの部分に固定されている。旋回流形成部材(50)は、真円筒状の内側筒部(51)と、該内側筒部(51)より大径の真円筒状の外側筒部(52)と、内側筒部(51)と外側筒部(52)との間に固定される複数の旋回翼(53)とを備えている。内側筒部(51)と外側筒部(52)とは同軸上に配置され、両者の筒部(51,52)の間に複数の旋回翼(53)が収容される環状の空間(6)が形成される。この空間(6)には、風胴体(20)の外部の空気(風)が流通する。
【0026】
図3及び
図4にも示すように、複数の旋回翼(53)は、風胴体(20)の周方向に等間隔を置いて配列される。旋回翼(53)は、風上寄りの縦板部(53a)と、風下寄りの曲板部(53b)とで構成される。縦板部(53a)は、内側筒部(51)の外周壁から径方向外方に立設している。縦板部(53a)は、旋回流形成部材(50)の風上端部から風下方向へ延びている。縦板部(53a)の外側端部は、外側筒部(52)の内周壁に固定される。なお、
図3及び
図4では、外側筒部(52)の図示を省略している。曲板部(53b)は、縦板部(53a)の風下端部から風車(30)の順回転方向に湾曲している。
【0027】
旋回流形成部材(50)では、隣り合う各旋回翼(53)の間に通風路(7)がそれぞれ形成される。風胴体(20)の外部を流れる風は、各通風路(7)を流れ、曲板部(53b)に沿って風の向きを変える。これにより、旋回流形成部材(50)の下流近傍では、風車(30)の順回転方向と同一方向の旋回流が形成される
。
【0028】
〈風力発電装置の動作〉
風力発電装置(10)では、風胴体(20)の内部と外部とを風が流れる。具体的に、風の一部は、風胴体(20)の流入口(21)から風胴体(20)の内部に流入し、風上側拡径部(24a)の内側を流れて風車(30)を通過する。これにより、風車(30)及び出力軸(31)が
図1の矢印方向に回転し、発電機(40)で発電が行われる。風車(30)を通過した空気は、風下側拡径部(24b)の内側を流れて、風胴体(20)の流出口(22)より流出する。風胴体(20)から流出した風は、風車(30)の回転に利用されているため、風車(30)の順回転方向と同一方向に旋回する旋回流となる。
【0029】
一方、風胴体(20)の外部を流れる風は、風胴体(20)の外周壁部(23)に沿って筒軸方向に流れた後、旋回流形成部材(50)の各通風路(7)に流入する。各通風路(7)を流れる風は、旋回翼(53)の壁面に沿うように流れの向きを変え、通風路(7)から流出する。この結果、旋回流形成部材(50)の下流近傍では、風車(30)の順回転方向と同一方向に旋回する旋回流が形成される。つまり、風力発電装置(10)の流出口(22)の近傍では、旋回流が形成される。
【0030】
このように、旋回流形成部材(50)の下流近傍に旋回流を形成すると、ディフューザ効果によって風胴体(20)の内部の圧力が低下するため、風胴体(20)への流入風量が増大することになる。これにより、風車(30)を通過する風の流速が高速化され、発電機(40)の入力が増大する。
【0031】
〈旋回翼の転向角βの検証結果〉
実施形態に係る風力発電装置(10)について、各旋回翼(53)の曲板部(53b)の最適な転向角βを求める検証試験を行った。ここで、転向角βは、旋回翼(53)の曲板部(53b)の弦に相当する線分と、この線分と交わり軸方向に延びる線分との間の角度である(
図5を参照)。最適な転向角βを求めるために、転向角βを60°、75°、77°、80°、85°、90°と変更した各装置について、パワー係数Cpを計測した。ここで、パワー係数Cpは、以下の(1)式で求められるものであり、風力発電装置(10)の発電効率を表す指標である。
【0032】
パワー係数Cp=Lw/(ρ×A×V
3)/2・・・(1)
ここで、Lw:軸動力[w]、ρ:空気密度[kg/m
3]、A:風車の受風面積[m
2]、V:風速[m/s]である。
【0033】
また、検証試験では、各装置について、拡大角度α=21°、P/C=0.8とした。ここで、P/Cは、旋回翼(53)の曲線部(53b)の弦の長さC[m]に対する、隣り合う旋回翼(53)の間隔P[m]の比である。
【0034】
検証試験で得た転向角βとパワー係数Cpとの関係を
図6に示す。パワー係数Cpは、転向角βが75°を越えると大きくなり、転向角βが85°のときに最大(Cp=0.553)となった。
図6に示すように、転向角βは、75°<β<90°の範囲が好ましく、更には77°<β<90°の範囲が好ましい。最適な転向角βは85°である。これにより、パワー係数Cpが約0.45ないし0.5を越えることになり、風力発電装置(10)の発電効率が向上する。
【0035】
〈P/Cの検証結果〉
次いで、実施形態に係る風力発電装置(10)について、最適なP/C(以下、ピッチコード比ともいう)を求める検証試験を行った。検証試験では、ピッチコード比P/Cを0.5、0.6、0.7、0.8と変更した各装置について、パワー係数Cpを計測した。また、検証試験では、各装置の拡大角度αを21°、転向角βを85°とした。
【0036】
検証試験で得たピッチコード比P/Cとパワー係数Cpとの関係を
図7に示す。パワー係数Cpは、ピッチコード比P/Cが0.7より小さくなると大きくなり、P/Cが0.5のときに最大(Cp=0.623)となった。
図7に示すように、ピッチコード比P/Cは、0.4≦P/C≦0.6の範囲が好ましく、0.5が最適である。これにより、パワー係数Cpが約0.6を越えることになり、風力発電装置(10)の発電効率が向上する。
【0037】
〈拡大角度αの検証結果〉
次いで、実施形態に係る風力発電装置(10)について、最適な拡大角度αを求める検証試験を行った。検証試験では、拡大角度α=21°(
図1)、拡大角度α=14°(
図8)、拡大角度α=7°(
図9)とした旋回流形成部材(50)付きの装置(以下、旋回翼型ともいう)について、周速比λとパワー係数Cpとの関係を計測した。ここで、周速比λは、以下の(2)式で求められるものである。
【0038】
周速比λ=U/V・・・・(2)
ここで、U:風車の先端の周速[m/s]、V:風速[m/s]である。
【0039】
旋回翼型(後述するディフューザ型に旋回流形成部材(50)を付設したもの)の各装置では、転向角β=85°、ピッチコード比P/C=0.5とした。
【0040】
また、検証試験では、比較対象として旋回流形成部材(50)が付いていない装置(例えば
図11(C))を参照、以下、ディフューザ型ともいう)について、拡大角度αを21°、14°、7°と変更しながら、周速比λとパワー係数Cpとの関係を計測した。
【0041】
検証試験で得た周速比λとパワー係数Cpとの関係を
図10に示す。パワー係数Cpはディフューザ型と比べて旋回翼型の方が全体的に大きい傾向にあった。また、旋回翼型とディフューザ型との双方について、拡大角度αが大きいほどパワー係数Cpも大きくなる傾向にあった。旋回翼型(拡大角度α=7°)では、周速比λ=7.0のときにパワー係数Cpが最大(Cp=0.502)であった。旋回翼型(拡大角度α=14°)では、周速比λ=7.0のときにパワー係数Cpが最大(Cp=0.563)であった。旋回翼型(拡大角度α=21°)では、周速比λ=8.0のときにパワー係数Cpが最大(Cp=0.623)であった。旋回翼型では、拡大角度αが21°であることが最適であり、その際の周速比λは6.0≦λ≦9.0が好ましい。
【0042】
〈装置の型式毎の検証結果〉
次いで、実施形態に係る風力発電装置(10)と、他の型式の風力発電装置の性能を検証した。検証試験では、比較対象として、風胴体(20)を有しない風車(30)のみの装置(
図11(A)、以下、風車単体型(1)という)と、風胴体(20)の流出口(22)の外縁に径方向外方へ張り出した円板状のつば(2a)を設けた装置(
図11(B)、以下、つば型(2)という)と、上述したディフューザ型(3)(
図11(C))を用い、それぞれの装置について、周速比λとパワー係数Cpとの関係を計測した。
【0043】
検証試験で得た周速比λとパワー係数Cpとの関係を
図12に示す。パワー係数Cpは、風車単体型(1)、つば型(2)、ディフューザ型(3)、旋回翼型(本実施形態の風力発電装置(10))の順に大きい傾向にあった。風車単体型(1)では、周速比λが5.0のときにパワー係数Cpが最大で0.327であった。つば型(2)では、周速比λが8.0のときにパワー係数Cpが最大で0.547であった。ディフューザ型(3)では、周速比λが6.0のときにパワー係数が最大で0.577であった。旋回翼型(10)では、周速比λが8.0のときにパワー係数が最大で0.623であった。以上のように、本実施形態に係る風力発電装置(10)は、他の型式と比較してパワー係数Cpが高く、例えば風車単体型(1)のパワー係数Cpの1.91倍であり、高い発電効率が得られることが確認できた。
【0044】
−実施形態の効果−
以上のように、本実施形態では、風胴体(20)の流出口(22)の外縁部に旋回流形成部材(50)を設け、風胴体(20)の流出口の周囲に旋回流を形成するので、風胴体(20)の内部の圧力が低下し、風車(30)の近傍に高風速の領域を形成できる。この結果、
図12にも示すように、高いパワー係数Cpを得ることができ、発電効率の向上を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態では、複数の旋回翼(53)の周囲に外側筒部(52)を設け、各旋回翼(53)を固定したため、旋回流形成部材(50)の剛性を高めることができる。また、旋回翼(53)が外部へ露出してしまうことも防止できる。
【0046】
更に、本実施形態では、風胴体(20)の拡大角度αを21°、旋回翼の転向角βを75°<β<90°、ピッチコード比P/Cを0.4≦P/C≦0.6とすることで、パワー係数Cpを増大でき、風力発電装置(10)の発電効率を向上できる。
【0047】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0048】
上記実施形態の旋回流形成部材(50)では、
図1に示すように、旋回翼(53)の周囲に外側筒部(52)を設けている。しかしながら、この外側筒部(52)を省略した構成としてもよい。また、旋回流形成部材(50)の内側筒部(51)を省略し、旋回翼(53)を風胴体(20)の外周壁部(23)に直に固定(例えば溶接)する構成としてもよい。