(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378546
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】水に分散性の微粉接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20180813BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20180813BHJP
C08G 18/80 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/06
C08G18/80
【請求項の数】24
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-116508(P2014-116508)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-38187(P2015-38187A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2017年2月9日
(31)【優先権主張番号】13180630.9
(32)【優先日】2013年8月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508375468
【氏名又は名称】エムス−パテント・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・カプラン
【審査官】
田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−102328(JP,A)
【文献】
特開2000−303054(JP,A)
【文献】
特開平02−107616(JP,A)
【文献】
特開平02−151633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
C08G 18/00−18/87
71/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に分散性である、生地補強プライ用微粉接着剤であって、
前記微粉接着剤が
a) 少なくとも1種の少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネート85〜97重量%と、
b) 湿潤剤としてのアルキルナフタレンスルホネート15〜3重量%と、
c) 結合剤を除く添加剤0〜10重量%と、
を含んでなり、前記配合成分a、b、cの合計が100重量%であり、低分子量イソシアネートのモル質量が500g/モル以下である、微粉接着剤。
【請求項2】
粉末が0.1〜40μmの範囲内の平均粒径を持つ、請求項1に記載の微粉接着剤。
【請求項3】
脱イオン水で10分間攪拌後に得られた分散液の粒度分布(d50とd95)をISO13320にしたがいレーザ測定すると、d50が最大5μmで、d95が最大10μmである、請求項1または2に記載の微粉接着剤。
【請求項4】
前記接着剤が、
前記少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネート90〜96重量%と、
湿潤剤としての前記アルキルナフタレンスルホネート10〜4重量%と、
を含んでなる、請求項1〜3の少なくとも1つに記載の微粉接着剤。
【請求項5】
前記少なくとも1種の低分子量イソシアネートが、90〜400g/モルの範囲内のモル質量を持つ、請求項1〜4の少なくとも1つに記載の微粉接着剤。
【請求項6】
前記少なくとも1種の低分子量イソシアネートが、150〜300g/モルの範囲内のモル質量を持つ、請求項1〜5の少なくとも1つに記載の微粉接着剤。
【請求項7】
前記少なくとも1種の低分子量イソシアネートが、芳香族、脂肪族または脂環式イソシアネートである、請求項1〜6の少なくとも1つに記載の微粉接着剤。
【請求項8】
前記少なくとも1種の低分子量イソシアネートが、以下:
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、3,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(3,4’−MDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、2,3’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,3’−MDI)、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,4−ナフタレンジイソシアネート(1,4−NDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、およびこれらの混合物、
からなる群より選ばれる、請求項1〜7の少なくとも1つに記載の微粉接着剤。
【請求項9】
前記少なくとも1種の少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネートが、部分的または完全に封鎖されている、請求項1〜8の少なくとも1つに記載の微粉接着剤。
【請求項10】
前記少なくとも1種の少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネートが、以下:
モノフェノール、ラクタム、オキシム、易エノール形成性化合物、第一級、第二級または第三級アルコール、グリコールエーテル、芳香族第二級アミン、イミド、イソシアネート、メルカプタン、トリアゾールおよびこれらの混合物、
からなる群より選ばれる封鎖剤で部分的または完全に封鎖されている、請求項9に記載の微粉接着剤。
【請求項11】
前記モノフェノールが、フェノール、レソルシノール、クレゾール、トリメチルフェノールまたはt−ブチルフェノールである、請求項10に記載の微粉接着剤。
【請求項12】
前記ラクタムが、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタムまたはラウリンラクタムである、請求項10に記載の微粉接着剤。
【請求項13】
前記オキシムが、メチルエチルケトキシム(ブタノンオキシム)、メチルアミルケトキシムまたはシクロヘキサノンオキシムである、請求項10に記載の微粉接着剤。
【請求項14】
前記易エノール形成性化合物が、アセト酢酸エステル、アセチルアセトンまたはマロン酸誘導体である、請求項10に記載の微粉接着剤。
【請求項15】
前記少なくとも1種の少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネートがウレトジオンに関する、請求項1〜14の少なくとも1つに記載の微粉接着剤。
【請求項16】
前記少なくとも1種の少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のウレトジオンに関する、請求項15に記載された微粉接着剤。
【請求項17】
前記アルキルナフタレンスルホネートがジイソブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムである、請求項1〜16の少なくとも1つに記載の微粉接着剤。
【請求項18】
前記少なくとも部分的にキャッピングされたイソシアネートと前記アルキルナフタレンスルホネートとから専らなる、請求項1〜17の少なくとも1つに記載の微粉接着剤。
【請求項19】
前記少なくとも1種のキャッピングされたイソシアネート95重量%と前記アルキルナフタレンスルホネート5重量%とからなる、請求項18に記載の微粉接着剤。
【請求項20】
触媒、脱泡剤、着色剤および/または充填剤、およびこれらの混合物から選ばれる添加剤0.1〜10重量%を含んでなる、請求項1〜17の少なくとも1つに記載の微粉接着剤。
【請求項21】
請求項1〜20の少なくとも1つに記載の、水分散性である、生地補強プライ用微粉接着剤を製造する方法であって、
前記少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネート85〜97重量%が、湿潤剤としての前記アルキルナフタレンスルホネート15〜3重量%と共に、さらにおそらく微粉添加剤も添加して、乾式粉砕に付され、この際、乾式粉砕は、脱イオン水中10分間攪拌後に得られた分散液の粒度分布(d50とd95)をISO13320にしたがいレーザ測定すると、d50値は最大5μm、d95値は最大10μmであるように実施される、方法。
【請求項22】
前記d50値が最大2μm、前記d95値が最大6μm、となるまで前記乾式粉砕が実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記乾式粉砕がジェットミルで実施される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
補強ゴム製品製造用の補強プライの処理への、請求項1〜19の少なくとも1つに記載の接着剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強用のプライ(補強プライ)のための微粉接着剤であって、水に分散性であり、部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネートと、湿潤剤としてのアルキルナフタレンスルホネートと、おそらく添加剤も含んでなることにより差別化される微粉接着剤に関する。さらに、本発明は、そのような微粉接着剤の製造方法、および補強ゴム製品の製造のため補強プライの処理に当該微粉接着剤を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
接着性向上のために接着剤を生地補強プライとゴムとの間に用いると、繊維補強ゴム製品の製造において有利であると証明されている。そのような接着剤は、特に、補強プライとしてのタイヤコードの分野や、補強用繊維を持つ他の高荷重複合材料の分野において重要である。特にタイヤコード分野での適用について、レソルシノールホルムアルデヒドラテックス系(RFL)を用いて合成繊維をゴム製品に接合させることは知られるようになってきた。これは、いわゆる一段法において補強用要素にRFLと接着剤との混合物を含浸させることが実行されるような技法において行うことができる。
【0003】
補強用要素に接着剤とグリシジル化合物がまず含浸され、その後、第二の工程でRFLの適用が行われる、いわゆる二段法も最新の技術から知られている。
【0004】
このような方法に関する最新技術から、特殊に調整された接着剤も既知となっている。DE19913042A1は、補強ゴム製品の製造のための補強プライの処理用接着剤を水分散液の形態で記載している。この接着剤はイソシアネート系である。
【0005】
さらに、EP2450389A1からは、水に分散性であり、低分子量イソシアネート、湿潤剤、少なくとも1種の結合剤、そしておそらく触媒および/または添加剤からなる微粉接着剤が知られている。この接着剤の製造は、キャッピングされたイソシアネートが分散液として、結合剤は溶液として用いられ、その他の添加剤と共に水中に攪拌されるようにして行われる。次に、この分散液は湿式粉砕により所望の粒度に粉砕され、その後、乾燥、好ましくは流動床噴霧乾燥、に付される。
【0006】
しかしながら、達成可能な粒度と粒度分布が依然として充分に良好でないのが上述の接着剤の場合の欠点である。また、この接着剤の製造方法は複雑で、分散と湿式粉砕という間接的な経路を介するので経済的に高くつく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ公開特許DE19913042A1
【特許文献2】欧州公開特許EP2450389A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、生地補強プライのための微粉接着剤であって、水に分散性であり、単純化された製造方法を伴い、粒度分布が狭いが、それに相当して分散性がよい微粉接着剤を提唱することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は特許請求項1の構成により、方法については請求項14の構成により、達成される。
【0010】
本発明に係る接着剤は、少なくとも1種の少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネート85〜97重量%と、湿潤剤としてのアルキルナフタレンスルホネート15〜3重量%と、もしかすると、結合剤を除く添加剤0〜10重量%を含んでなる。
【0011】
本発明に係る接着剤は、最新技術と比べ、特にEP2450389A1に係る接着剤と比べ、結合剤を全く含まなくとも済むこと、特別な湿潤剤、すなわちアルキルナフタレンスルホネート、を請求項1に示した範囲内で含有すること、により差別化される。
【0012】
したがって、本発明に係る接着剤の場合、結合剤が全くなくて済むこと、特に選ばれた湿潤剤が正確に規定された量的範囲内で存在すること、が本発明にとり不可欠である。操作は結合剤無しで行うが、微粉配合剤は特性が最新技術、特にEP2450389A1、と同等であるか、またはより優れている。したがって、湿潤剤が接着剤中に3〜15重量%の範囲で含有されていることが必須であると判っている。3重量%未満の湿潤剤(キャッピングされたイソシアネートと湿潤剤との合計に対し)を用いると、良好な分散液はもはや得られない。これは、一方では材料の損失に、他方ではゴムへのタイヤコードまたは伝動用ベルトコードの不十分な接着(剥離接着力)につながる。湿潤剤が15重量%より多量の場合、ゴムへのコードの接着も同様に悪化する。コード、例えばタイヤコードまたは伝動用ベルトコード、への接着は剥離接着力により決定される。剥離接着力は、少なくとも140ニュートン/インチでなければならない。接着力値がより低い場合、補強ゴム製品、例えばタイヤまたは伝動ベルト、の信頼性のある使用はもはやかなえられない。
【0013】
本発明に係る接着剤の場合、もっぱらアルキルナフタレンスルホネート、好ましくはジイソブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、を湿潤剤として用いることが本発明にとり必須である。特に、この湿潤剤を選ぶことが本発明に係る接着剤の製造において有利であることが判っている。何故なら、上記湿潤剤とイソシアネートは両者とも微粉出発物質として使用できるので、所望の粒度を達成する単純な乾式粉砕が湿潤剤の損失を引き起こさずに実施できるからである。
【0014】
さらに、本発明に係る、上記のように選択した湿潤剤とイソシアネートの組合せには、結合剤の使用を省くことができるという利点がある。結合剤は通常この分野においては、流動性のある粉立ちの少ない粉末の提供を可能とするために使用される。最新技術に由来する接着剤の場合に普通用いられる結合剤は、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸共重合体の塩、多糖類、澱粉、セルロース、グアー、トラガント酸、デキストラン、アルギン酸塩、およびそれらのカルボキシメチル誘導体、メチル誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体、カゼイン、大豆タンパク質、ゼラチン、リグニンスルホネート、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる結合剤に関する。したがって、この種の結合剤は、本発明にしたがって除外される。
【0015】
本発明に係る接着剤の場合に用いられる低分子量イソシアネートは、好ましくは500g/モル以下のモル質量、好ましくは90〜400g/モルの範囲内のモル質量、特に非常に好ましくは150〜300g/モルの範囲内のモル質量、を持つ。
【0016】
このような低分子量イソシアネートとしては、以下が挙げられる:
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、
2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、
3,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(3,4’−MDI)、
2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、
2,3’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,3’−MDI)、
2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、
1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,4−ナフタレンジイソシアネート(1,4−NDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、またはこれらの混合物。
【0017】
本発明によれば、少なくとも1種の少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネートを部分的または完全に封鎖すればさらに好ましい。封鎖剤の例としては、モノフェノール、特にフェノール、レソルシノール、クレゾール、トリメチルフェノールまたは第三ブチルフェノール、ラクタム、特にε−カプロラクタム、δ−バレロラクタムまたはラウリンラクタム、オキシム、特にメチルエチルケトキシム(ブタノンオキシム)、メチルアミルケトキシム(ヘプタノンオキシム)またはシクロヘキサノンオキシム、易エノール形成性化合物、特にアセト酢酸エステル、アセチルアセトンまたはマロン酸誘導体、第一、第二または第三アルコール、グリコールエーテル、第二芳香族アミン、イミド、イソシアネート、メルカプタン、トリアゾールおよびこれらの混合物が挙げられよう。
【0018】
本発明に係る接着剤の場合、少なくとも1種の少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネートがウレトジオンであれば、特に大変好ましい。ウレトジオンは二量重合されたイソシアネートである。二量重合は、塩基触媒、例えばピリジン、または第三ホスファンにより促進可能であるが、芳香族イソシアネートは触媒なしでも二量体化する。そのようなウレトジオンの好ましい例は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のウレトジオンである。
【0019】
ウレトジオンは、補強プライ、例えばコード、特にタイヤコードまたは伝動ベルトコードに適用される接着剤の焼成中に、独力だけでキャッピングされるので、揮発性物質は放出されない。そのために、塗布プラントのローラーやロールは遥かに少ない塗膜または不純物を示すので、洗浄操作のための中断時間は大いに短縮される。
【0020】
ε−カプロラクタムでキャッピングされ、今日ではほとんど専ら接着剤として使用されているMDIと対照的に、MDIのウレトジオンを用いた方法は、約60℃の比較的低い焼成温度で行うことが出来る。この比較的低い焼成温度に起因して、処理された補強プライ、例えばタイヤコードや伝動ベルトコード、は比較的柔らかく、すなわちより柔軟で、より少ない破断点を示す。この処理済み補強プライの向上した柔軟性のため、接着剤と共に現在用いられているエチレングリコール系のグリシジルエーテルの代わりに、例えばソルビトールのような多価アルコールのグリシジルエーテルも使用できる。実際に、これらを用いると、処理された補強プライの剛化がわずかになるだけでなく、過焼成挙動の改善と老化挙動の改善も得られ、処理された補強プライ全体、例えばタイヤコードや伝動ベルトコード、の剛性が高くなりすぎることを考慮する必要がなくなる。
【0021】
低分子量イソシアネート、湿潤剤としてのアルキルナフタレンスルホネートといった本発明に不可欠の成分に加えて、本発明に係る接着剤配合物は、添加剤も本文中に示した量比で含んでなることができる。添加剤としては、触媒、脱泡剤、特に長鎖アルコール、高重合グリコール、脂肪酸エトキシレート、トリアルキルメチルアミン、シリコーンまたはこれらの混合物、特に好ましくはシリコーン乳濁液の形態のシリコーン、着色剤、特にカーボンブラックおよび/または充填剤、特にシリケート、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
組成物の量については、接着剤が、少なくとも1種の少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネート90〜96重量%、好ましくは93〜96重量%、特に極めて好ましくは94〜95.5重量%と、湿潤剤としてのアルキルナフタレンスルホネート4〜10重量%、好ましくは7〜4重量%、特に好ましくは6〜4.5重量%とを含んでなれば好ましい。この接着剤は0.1〜10重量%の量で含有でき、個々の成分は合計が100重量%となる必要がある。
【0023】
しかしながら、本発明に係る接着剤の場合、当該接着剤が、本文中に示された量比であるキャッピングされたイソシアネートと、アルキルナフタレンスルホネートとから専らなれば、とくに極めて好ましい。特に好ましいのは、接着剤が、少なくとも1種のキャッピングされたイソシアネート95重量%と、アルキルナフタレンスルホネート5重量%とからなることである。
【0024】
接着剤の分散性粉末は、0.1〜40μmの範囲、好ましくは0.2〜20μmの範囲、特に非常に好ましくは0.3〜12μmの範囲、の体積平均粒径を持つ。
【0025】
この粉末の粒径は、ISO13320に準ずるレーザ測定により粉末自体において決定される。本発明に係る粉末の粒度は、50〜50,000μmの範囲内にあるEP2450389A1の粉末の粒度より有意に小さい。これは、最新技術においては、有意により大きい粒子が作られるように凝集をもたらす結合剤が配合物中に含有されているという事実に帰すことができる。本発明に係る接着剤は、分散中に粒度がもはや変わらない小さい粒子が粉末中に既に存在している、という利点を持つ。
【0026】
この事実は、分散性について行う試験によっても確認される。
【0027】
得られた粉末の分散特性は以下のように決定される: ガラスビーカー中に脱イオン水を導入し、電磁攪拌機で攪拌する。分散する試料を加える。1分間および10分間攪拌後に分散性を目視で判断して、0〜100の数字で評価する。この際、0は分散せず、100は完全に分散、を意味する。
【0028】
10分後に得られた分散液の粒度分布(d
50値とd
95値)は、ISO13320にしたがいレーザ測定により決定する。本発明に係る粉末のd
50値は、最大5μm、好ましくは最大2μm、特にきわめて好ましくは最大1.5μm、と判った。本発明に係る微粉配合物のd
95値は、最大10μm、好ましくは最大6μm、特に好ましくは最大5μm、である。
【0029】
粉末の粒径が小さければ小さいほど、コード塗布中の浸漬浴において、ひいては浸漬浴の使用可能期間中に、粉末が沈降する傾向がより低くなる。d
95値の場合には、より大きな粒子も検出されるので、基準としてはd
50値よりd
95値の方が重要である。
【0030】
クヴァンタクローム社(Quantachrome GmbH、ドイツ)の粒度計Cilas 1064を用いてレーザ回折の原理にしたがいレーザ測定を行う。
【0031】
剥離接着力は、ASTM4393にしたがい対称的な構造を持つ8層の試験片(コード2層とゴム6層;ASTM4393の
図2参照)で決定する。引張試験を23℃の測定温度、20mm/分の引張速度で実施する。引張試験成績はASTM4393、オプション1にしたがい評価する。コードとしては、非活性化Cord Performance Fibers HMLS Polyester、1,100x1x2dtex(繊度)、ZS470、1x50を用い、ゴムとしては、Continental B458、厚さ0.4mmを用いる。加硫は154℃、6.5バールで30分間行なう。
【0032】
さらに、本発明は、水分散性の生地補強プライ用微粉接着剤の製造方法に関する。本発明に係る方法は、少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネート85〜97重量%と、湿潤剤としてのアルキルナフタレンスルホネート15〜3重量%、さらにおそらく微
粉添加剤も添加した材料を乾式粉砕することにより差別化される。この際、乾式粉砕は、脱イオン水中10分間攪拌後に得られた分散液の粒度分布(d
50値とd
95値)をISO13320にしたがいレーザ測定すると、d
50値は最大5μm、d
95値は最大10μmであるように実施される。本発明に係る方法では、接着剤の場合における上記の可能性は、量比、配合物の成分、粉末の粒度、および分散液の粒度分布についても当然当てはまる。
【0033】
乾式粉砕により、粉末の小さい粒度が具体的に0.1〜40μmという規定の範囲内に設定できることは、本発明に係る方法の利点と見なさなければならない。この粒度は、分散液の製造中本質的に維持される。
【0034】
接着剤の成分、すなわち、少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネート、湿潤剤および添加剤となり得るもの、を粉末ミキサー内で混合し、次に乾式粉砕に付す。しかしながら、これらの成分は個々に計量して粉砕機中に供給することも可能である。
【0035】
本発明に係る方法の場合、乾式粉砕をジェットミルにより行うと有利であることが証明されている。特にジェットミルを用いると、粒度について上述の数値が達成できる。
【0036】
エアジェットミルとも呼ばれているジェットミルの場合、粒子が粉砕用ガスであるガス流中で粉砕され、粒子の微粉砕は粉砕用ガスにより導入された運動エネルギーによりなされ、実際には粒子の相互衝撃、例えばカウンタージェット、によりなされるか、または粒子の衝撃板への衝突によりなされる。静的または動的またはそれらの混合型となるように設計できる空気分離装置であるフィルターは、粉砕された材料を粉砕用ガスから分離する役割を果たす。
【0037】
様々な構造のジェットミルの例には、スパイラルジェットミル、高密度床ジェットミル、Finnpulvaカウンタージェットミル、NPK I−ミル、マジャックカウンタージェットミル、楕円形チューブジェットミル、または流動床カウンタージェットミルがある。
【0038】
好ましくは、静的または動的空気分離器を持つ流動床カウンタージェットミルが使用され、動的空気分離器が好適である。外部空気分離器も可能であるが、これはミルに組み込まれているのが好ましい。例えば、連続制御可能なセパレータホイールは動的空気分離器として働く。粒度上限がセパレータホイールの回転速度により制御できる。回転速度が上がると、それにより得られた粒度は低下する。
【0039】
上述のように、接着剤は、補強ゴム製品の製造のための補強プライの処理に適しているのが特に好ましく、これは本明細書のはじめに述べたとおりである。
【0040】
補強プライは特に生地補強プライ、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、レーヨン、綿、靭皮繊維、サイザル麻、大麻、亜麻またはココナツ繊維で作られた生地補強プライに関する。上記のように処理された補強プライは、特にタイヤコード、コンベヤベルトコード、伝動ベルトコード、または機械式ゴム部品または複合材料用のコードの製造に用いる。
【0041】
補強されたゴム製品は、特に自動車用タイヤ、多用途車用タイヤ、伝動ベルト、例えばVベルト、V−リブ付きベルト、丸ベルト、平ベルトまたは歯付きベルトに関する。本発明に係る主題は、以下の実施例を参照してより詳細に説明するが、この主題はここに示した特殊な態様に限定されることはない。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【実施例】
【0044】
表2の実施例1についての態様
微粉状低分子量イソシアネート(A1)を微粉状湿潤剤(B1)と粉末ミキサー中95:5の重量比で混合する。次に、粉末混合物を、圧縮空気を用いて操作されるCONDUX流動床ジェットミルCGS50に入れる。
【0045】
以下のパラメータを粉砕に用いる:
セパレータホイールの回転速度[l/分]: 3,450
粉砕空気圧(高圧)[バール]: 6
粉砕空気量(空気温度20℃に対し)[m
3/時]: 1,000
処理能力[kg/時]: 30
実施例2および3と比較例4および5には、同様の粉砕パラメータを用いる。
【0046】
【表3】
【0047】
表3の比較例6では、分散性粉末製造用の遊離体からまず水分散液を製造し、この分散液を次に湿式粉砕に付し、流動床噴霧乾燥で乾燥させる。したがって、比較例6はEP2450389A1の実施例1に相当する。
【0048】
【表4】
【0049】
本発明に係る実施例1〜3の粉末は、EP2450389A1の実施例1に相当する比較例6の乾燥物質よりも良好な分散性を示す(表4)。比較例4の粉末の場合には、分散性が商業用途には悪すぎるので、粒度の測定は省いた。
【0050】
分散後の粒度測定の場合には、実施例1〜3の粉末はd
95値で3.9または4.0μmを示すが、これらの数値は4.5μmを示す比較例6の乾燥物質より有意に低い。
【0051】
【表5】
【0052】
実施例1〜3における本発明に係る粉末の接着力値は、それぞれ140N/インチの剥離接着力最小値より極めて有意に高い。対照的に、比較例5の粉末の剥離接着力はその最小値より有意に低い。実施例1における本発明に係る粉末では、比較例6の粉末と同様の剥離接着力が得られる。
これらに限定されるものではないが、本発明は以下の態様の発明を包含する。
[1] 水に分散性である、生地補強プライ用微粉接着剤であって、前記微粉接着剤が
a) 少なくとも1種の少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネート85〜97重量%と、
b) 湿潤剤としてのアルキルナフタレンスルホネート15〜3重量%と、
c) 結合剤を除く添加剤0〜10重量%と、
を含んでなり、前記配合成分a、b、cの合計が100重量%である、微粉接着剤。
[2] 粉末が0.1〜40μm、好ましくは0.2〜20μm、特に好ましくは0.3〜12μm、の範囲内の平均粒径を持つ、[1]に記載された微粉接着剤。
[3] 脱イオン水で10分間攪拌後に得られた分散液の粒度分布(d
50とd
95)をISO13320にしたがいレーザ測定すると、d
50が最大5μm、好ましくは最大2μm、特に好ましくは最大1.5μmで、d
95が最大10μm、好ましくは最大6μm、特に好ましくは最大5μm、である、[1]または[2]に記載された微粉接着剤。
[4] 前記接着剤が、
前記少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネート90〜96重量%、好ましくは93〜96重量%、特に極めて好ましくは94〜95.5重量%と、
湿潤剤としての前記アルキルナフタレンスルホネート10〜4重量%、好ましくは7〜4重量%、特に好ましくは6〜4.5重量%と、
を含んでなる、[1]ないし[3]の少なくとも1つに記載された微粉接着剤。
[5] 前記少なくとも1種の低分子量イソシアネートが、500g/モル未満か又はそれと等しいモル質量、好ましくは90〜400g/モルの範囲内のモル質量、特に好ましくは150〜300g/モルの範囲内のモル質量、を持つ、[1]ないし[4]の少なくとも1つに記載された微粉接着剤。
[6] 前記少なくとも1種の低分子量イソシアネートが、特に以下からなる群
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、3,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(3,4’−MDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’−MDI)、2,3’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,3’−MDI)、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,4−ナフタレンジイソシアネート(1,4−NDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、またはこれらの混合物、
から選ばれる芳香族、脂肪族または脂環式イソシアネートである、[1]ないし[5]の少なくとも1つに記載された微粉接着剤。
[7] 前記少なくとも1種の少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネートが、特に以下からなる群
モノフェノール、特にフェノール、レソルシノール、クレゾール、トリメチルフェノールまたは第三ブチルフェノール、ラクタム、特にε−カプロラクタム、δ−バレロラクタムまたはラウリンラクタム、オキシム、特にメチルエチルケトキシム(ブタノンオキシム)、メチルアミルケトキシムまたはシクロヘキサノンオキシム、易エノール形成性化合物、特にアセト酢酸エステル、アセチルアセトンまたはマロン酸誘導体、第一、第二または第三アルコール、グリコールエーテル、第二芳香族アミン、イミド、イソシアネート、メルカプタン、トリアゾールおよびこれらの混合物、
から選ばれる封鎖剤で部分的または完全に封鎖されている、[1]ないし[6]の少なくとも1つに記載された微粉接着剤。
[8] 前記少なくとも1種の少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネートがウレトジオンに関する、[1]ないし[7]の少なくとも1つに記載された微粉接着剤。
[9] 前記少なくとも1種の少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネートがジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のウレトジオンに関する、[8]に記載された微粉接着剤。
[10] 前記アルキルナフタレンスルホネートがジイソブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムである、[1]ないし[9]の少なくとも1つに記載された微粉接着剤。
[11] 前記少なくとも部分的にキャッピングされたイソシアネートと前記アルキルナフタレンスルホネートとから専らなる、[1]ないし[10]の少なくとも1つに記載された微粉接着剤。
[12] 前記少なくとも1種のキャッピングされたイソシアネート95重量%と前記アルキルナフタレンスルホネート5重量%とからなる、[11]に記載された微粉接着剤。
[13] 触媒、脱泡剤、着色剤および/または充填剤、およびこれらの混合物から選ばれる添加剤0.1〜10重量%を含んでなる、[1]ないし[10]の少なくとも1つに記載された微粉接着剤。
[14] 前記少なくとも部分的にキャッピングされた低分子量イソシアネート85〜97重量%が、湿潤剤としての前記アルキルナフタレンスルホネート15〜3重量%と共に、さらにおそらく微
粉添加剤も添加して、乾式粉砕に付され、この際、乾式粉砕は、脱イオン水中10分間攪拌後に得られた分散液の粒度分布(d
50とd
95)をISO13320にしたがいレーザ測定すると、d
50値は最大5μm、d
95値は最大10μmであるように実施される、[1]ないし[13]の少なくとも1つに記載された、水分散性である、生地補強プライ用微粉接着剤の製造方法。
[15] 前記d
50値が最大5μm、好ましくは最大2μm、特にきわめて好ましくは最大1.5μm、前記d
95値が最大10μm、好ましくは最大6μm、特に好ましくは最大5μm、となるまで前記乾式粉砕が実施される、[14]に記載された方法。
[16] 前記乾式粉砕がジェットミルで実施される、[14]または[15]に記載された方法。
[17] 補強ゴム製品製造用の補強プライの処理への、[1]ないし[12]の少なくとも1つに記載された接着剤の使用。