特許第6378575号(P6378575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378575
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】積層体および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20180813BHJP
   B29C 65/14 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   B32B27/30 D
   B29C65/14
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-163573(P2014-163573)
(22)【出願日】2014年8月11日
(65)【公開番号】特開2016-37022(P2016-37022A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】日本バルカー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】野口 勝通
(72)【発明者】
【氏名】木下 ひろみ
(72)【発明者】
【氏名】熊木 聡
(72)【発明者】
【氏名】金澤 幸生
(72)【発明者】
【氏名】福島 博之
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−034101(JP,A)
【文献】 特開平06−270352(JP,A)
【文献】 特開平08−142236(JP,A)
【文献】 特開平10−166453(JP,A)
【文献】 特開2006−088581(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3134648(JP,U)
【文献】 特開2004−068425(JP,A)
【文献】 特開2009−007050(JP,A)
【文献】 特開2004−189939(JP,A)
【文献】 特開2009−045935(JP,A)
【文献】 特開2011−143653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
B29C63/00−63/48
B29C65/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムまたはシート(A)、可視光を含む光の照射により隣接層と融着可能なフッ素樹脂(b)を含む層(B)、および、耐熱性樹脂層(C)(ただし、層(A)および(C)はそれぞれ層(B)とは異なる。)をこの順で含み、これらの層が、光照射により融着された積層体であって、
前記層(B)が、可視光吸収剤を含む層である、または、
前記層(C)が、着色している樹脂を含む層もしくは可視光吸収剤を含む層である、
積層体
【請求項2】
前記フッ素樹脂(b)が、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記耐熱性樹脂層(C)が耐熱性樹脂を含み、該樹脂の融点が前記フッ素樹脂(b)の融点以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項4】
前記PTFEフィルムまたはシートおよび耐熱性樹脂層となる層を、フッ素樹脂(b)を含む層を介して積層し、該フッ素樹脂(b)を含む層に、前記PTFEフィルムまたはシート側または耐熱性樹脂層となる層側から可視光を含む光を照射することで、前記PTFEフィルムまたはシートと耐熱性樹脂層とがフッ素樹脂(b)を含む層を介して融着した積層体を得る工程1を含
前記フッ素樹脂(b)を含む層が、可視光吸収剤を含む層である、または、
前記耐熱性樹脂層となる層が、着色している樹脂を含む層もしくは可視光吸収剤を含む層である、
請求項1〜のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記PTFE層および耐熱性樹脂層となる層を、フッ素樹脂(b)を含む層を介して積層し、該フッ素樹脂(b)を含む層に、前記PTFE層となる層側または耐熱性樹脂層となる層側から可視光を含む光を照射することで、前記PTFE層と耐熱性樹脂層とがフッ素樹脂(b)を含む層を介して融着した積層体を得る工程1を含み、
前記工程1が、可視光を含む光が照射される側の層とは反対側に、前記フッ素樹脂(b)の溶融を助けるような層を用いて光を照射する工程である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記工程1が、高輝度放電ランプまたはハロゲンランプを用いて可視光を含む光を照射する工程である、請求項4または5に記載の積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、摩擦係数が小さく、耐熱性、耐薬品性、耐侯性、耐吸湿・吸水性および電気的絶縁性等の特性に優れているため、これらの特性が求められる物品(基材)において、その表面の加工に用いられている。
【0003】
この表面加工の際には、例えば、熱硬化性接着剤等を介してPTFEフィルムを熱プレスすることにより、PTFEフィルムと基材(被着面)とを接着させることで、基材上にPTFE膜を形成していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PTFEフィルムはその非粘着性により、基材との接着性が乏しく、前記の方法で表面加工をした場合であっても、基材との十分な接着強度を有する表面加工物品は得られなかった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、PTFE層と耐熱性樹脂層(基材)とを含む積層体であって、高い層間接着強度を有する積層体を提供すること、また、このような積層体を生産性よく製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような状況のもと、本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、PTFE層と耐熱性樹脂層とを特定の層を介して積層した積層体によれば、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0007】
[1] ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)層(A)、可視光を含む光の照射により隣接層と融着可能なフッ素樹脂(b)を含む層(B)、および、耐熱性樹脂層(C)(ただし、層(A)および(C)はそれぞれ層(B)とは異なる。)をこの順で含む積層体。
【0008】
[2] 下記工程1を含む方法で得られる[1]に記載の積層体。
工程1:前記PTFE層および耐熱性樹脂層となる層を、前記フッ素樹脂(b)を含む層を介して積層し、該フッ素樹脂(b)を含む層に、前記PTFE層となる層側または耐熱性樹脂層となる層側から可視光を含む光を照射することで、前記PTFE層と耐熱性樹脂層とがフッ素樹脂(b)を含む層を介して融着した積層体を得る工程
【0009】
[3] 前記フッ素樹脂(b)が、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)である、[1]または[2]に記載の積層体。
【0010】
[4] 前記層(B)が可視光吸収剤を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体。
【0011】
[5] 前記工程1が、可視光を含む光が照射される側の層とは反対側に、前記フッ素樹脂(b)の溶融を助けるような層を用いて光を照射する工程である、[2]〜[4]のいずれかに記載の積層体。
【0012】
[6] 前記耐熱性樹脂層(C)が耐熱性樹脂を含み、該樹脂の融点が前記フッ素樹脂(b)の融点以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の積層体。
【0013】
[7] 前記工程1が、高輝度放電ランプまたはハロゲンランプを用いて可視光を含む光を照射する工程である、[2]〜[6]のいずれかに記載の積層体。
【0014】
[8] 前記PTFE層および耐熱性樹脂層となる層を、フッ素樹脂(b)を含む層を介して積層し、該フッ素樹脂(b)を含む層に、前記PTFE層となる層側または耐熱性樹脂層となる層側から可視光を含む光を照射することで、前記PTFE層と耐熱性樹脂層とがフッ素樹脂(b)を含む層を介して融着した積層体を得る工程1を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【0015】
[9] 前記工程1が、可視光を含む光が照射される側の層とは反対側に、前記フッ素樹脂(b)の溶融を助けるような層を用いて光を照射する工程である、[8]に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、PTFE層と耐熱性樹脂層とを含み、高い層間接着強度を有する積層体を生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の積層体の断面の一例を示す概略模式図である。
図2図2は、ライニングシートの一例を示す概略模式図である。
図3図3は、図2の破線部を拡大した断面の一例を示す概略模式図である。
図4図4は、従来の溶接方法でシートを溶接する際の溶接部断面の一例を示す概略模式図である。
図5図5は、本発明の積層体を製造する際の一例を示す断面概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪積層体≫
本発明に係る積層体は、例えば図1で表され、PTFE層(A)12、可視光を含む光の照射により隣接層と融着可能なフッ素樹脂(b)を含む層(B)14、および、耐熱性樹脂層(C)16をこの順で含む。このような本発明の積層体は、PTFE層(A)と耐熱性樹脂層(C)との間の接着強度が高い。
【0019】
本発明の積層体は、前記層(A)、(B)および(C)がこの順で含まれれば特に制限されず、層(A)と(B)との間や、層(B)と(C)の間に、従来公知の層が含まれていてもよいが、前記効果を有する積層体を容易に得ることができる等の点から、層(A)と(B)との間や、層(B)と(C)の間には他の層が含まれていないことが好ましい。
なお、本発明において、隣接する層には少なくとも異なる樹脂が含まれる。従って、層(A)と(B)、層(B)と(C)とはそれぞれ異なる層であるが、層(A)と(C)とは同じ層であっても異なる層であってもよい。
【0020】
また、前記層(A)の層(B)側とは反対側の面12aや前記層(C)の層(B)側とは反対側の面16aには、所望の用途に応じて従来公知の層(図示せず。)が存在していてもよいが、摩擦係数が小さく、耐熱性、耐薬品性、耐侯性、耐吸湿・吸水性および電気的絶縁性等の特性に優れる前記層(A)の特性を充分に発揮できる積層体10を得ることを考慮すれば、前記層(A)の層(B)側とは反対側の面12aには、他の層が存在しないことが好ましい。
なお、前記層(C)の層(B)側とは反対側の面16aには、所望の用途、具体的には、表面を層(A)で加工(保護)したい物品を構成する層(図示せず)が存在することがある。
【0021】
本発明の積層体10の形状は、特に制限されず、所望の用途に応じて適宜選択すればよい。
本発明の積層体10の用途は、特に制限されないが、例えば、ダイヤフラム弁やライニングシートが挙げられる。
【0022】
≪積層体の製造方法≫
本発明の積層体は、前記層(A)、(B)および(C)がこの順で含まれる積層体10が得られるように各層が形成されればその製造方法は特に制限されず、例えば、前記PTFE層となる層と耐熱性樹脂層となる層とをフッ素樹脂(b)を含む層を介して熱プレスすることにより製造してもよい。
【0023】
しかし、前記熱プレスは、大面積(例:1m2以上)を有する物品の表面を加工する際には適さず、また、厚膜(例:膜厚3mm以上)のPTFE層(フィルム)を用いた場合には、接着界面まで伝熱する際にロスが多くなるため、生産性よく積層体を得ることができない傾向にある。
【0024】
一方で、以下の工程1を含む方法で積層体を製造することで、積層体を構成する各層同士が十分な接着強度を有する積層体を生産性よく製造することができ、大面積を有する積層体や表面が平滑なPTFE層を有する積層体を容易に得ることができる。このため、本発明の積層体は、以下の工程1を含む方法で得ることが好ましい。
【0025】
工程1は、前記PTFE層および耐熱性樹脂層となる層を、可視光を含む光の照射により隣接層と融着可能なフッ素樹脂(b)を含む層を介して積層し、該フッ素樹脂(b)を含む層に、前記PTFE層となる層側または耐熱性樹脂層となる層側から可視光を含む光を照射することで、前記PTFE層と耐熱性樹脂層とが融着した積層体を得る工程である。
なお、この工程で用いる前記「PTFE層となる層」は、得られる積層体において前記層(A)となる層のことをいい、例えば、PTFEフィルムなどのことを指すが、本発明では、本発明の積層体を構成する層(A)と、該積層体を製造する際に用いる層などとを特に区別せずに記載する場合がある。このことは、前記「耐熱性樹脂層となる層」および「フッ素樹脂(b)を含む層」についても同様である。
【0026】
<PTFE層>
PTFE層(以下単に「層(A)」ともいう。)は、PTFEを含む層であれば特に制限されない。
前記層(A)は、従来公知の、樹脂層に添加してもよい従来公知の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよいが、PTFEは、前述のような物性を有するため、添加剤を含まなくても十分な物性を有する層が得られること、例えば、層(A)が液体に接するような用途で用いられる場合、該層に添加剤が含まれることで、積層体の用途によっては、該添加剤が不純物となり、層(A)と接触する液体を汚染する恐れがあることなどの理由から、層(A)は、添加剤を含まない層であることが好ましい。
【0027】
前記層(A)は、従来公知の方法で予め成膜されたPTFEフィルムを用いて形成されることが好ましく、表面が平滑な層(A)が得られる等の点から、モールディングパウダーを用いて圧縮成形またはラム押出成形して得られるPTFEフィルムや、ファインパウダーを用いてペースト押出成形して得られるPTFEフィルムがより好ましい。
【0028】
前記層(A)の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択すればよく、特に制限されないが、PTFEの有する前記特性が十分に活かされ、液体の非透過性、強度、耐食性などに優れた積層体が得られる等の点から、好ましくは0.1〜7mm、より好ましくは1〜5mmである。
【0029】
<耐熱性樹脂層>
耐熱性樹脂層(以下単に「層(C)」ともいう。)は、耐熱性樹脂を含む層であれば特に制限されず、従来公知の耐熱性樹脂を含む層を用いることができる。また、表面をPTFE層で加工したい、耐熱性樹脂を含む物品(基材、層)であってもよい。
【0030】
前記耐熱性樹脂の示差走査熱量測定(DSC)で測定した融点(結晶性ポリマーにおける軟化点)は、本発明の積層体を製造する際に照射され得る光により、層(C)に変形や変性等が起こらない等の点から、好ましくは前記フッ素樹脂(b)の融点以上であり、より好ましくは前記フッ素樹脂(b)の融点を超えて前記フッ素樹脂(b)の融点プラス100℃以下であり、さらに好ましくは前記フッ素樹脂(b)の融点プラス1〜50℃であり、特に好ましくはプラス5〜20℃である。
【0031】
このような耐熱性樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドが挙げられる。
これらの中でも、耐熱性、耐薬品性、耐侯性、耐吸湿・吸水性および電気的絶縁性等の特性に優れ、特に、前記層(A)が液体に接するような用途で用いられる場合であって、該液体が樹脂を劣化させる性質がある場合、該液体が前記層(A)を透過することがあるため、耐薬品性に優れるフッ素樹脂が好ましく、特にPTFEが好ましい。
【0032】
前記耐熱性樹脂として、ポリイミドなどの着色している樹脂を用いる場合、可視光を含む光を照射する際に、該樹脂が光を吸収する傾向にある。この場合、短時間で、かつ、前記PTFE層を溶融させることなく、前記フッ素樹脂(b)を溶融させることにより、高い層間接着強度を有する積層体が得られる場合がある。但し、この場合、耐熱性樹脂層も軟化、変形するおそれがある。
【0033】
なお、層(C)が層(A)と同じ層、つまり耐熱性樹脂層がPTFE層である場合、例えば、前記層(A)と層(C)とはつながっていてもよい。例えば、図2に示すように、1枚のPTFEフィルムからライニングシート30を形成する場合、そのPTFEフィルムのつなぎ目に前記層(B)34が存在するような場合も、部分(例えば、図2の破線部)的にみれば、図3に示すように、層(A)32、層(B)34および層(C)32がこの順で積層された積層体であるといえるため、このような場合も本発明の積層体とする。
【0034】
この図2に示すように1枚のPTFEフィルムを、その端面を突き合わせてつなぐ(溶接する)際には、従来では、図4に示すようにPTFEフィルム42のつなぎ合わせ面の一部を予め開先処理(開先処理部47)し、そこに、PFAのロッド44等を配置し、該PFAのロッド44等を溶融させることで溶接していた。
しかし、このような溶接方法では、溶接・接合面が狭いため、溶接部が十分な強度を有さない傾向にあり、また、溶接後に、PTFEフィルム面と溶接部が面一になるように溶接部を平坦化処理する工程が必要な場合があった。
【0035】
これに対し、前記工程1を含む方法によれば、PTFEフィルムのつなぎ合わせ面を面接着(面溶接)することができるため、溶接部が十分な強度を有し、また、溶接後の平坦化処理などの工程が不要となるため、容易に生産性よくPTFEフィルムを溶接することができる。
【0036】
前記層(C)は、特に制限されないが、耐熱性樹脂フィルムを用いて形成されることが好ましい。この場合、例えば、ポリイミドフィルムを用いる場合、フッ素樹脂(b)を含む層との接着強度を高めるために、従来公知の表面改質処理、例えば、コロナ放電処理、ブラスト処理、プライマー処理、プラズマ処理を行ったフィルムを用いることが好ましい。
【0037】
前記層(C)は、所望の用途に応じて、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤等の通常の樹脂層に配合され得る各種添加剤を、本発明の目的・効果を損なわない範囲で含有してもよい。
【0038】
また、短時間で、かつ、前記層(A)を溶融させることなく、前記フッ素樹脂(b)を溶融させ、高い層間接着強度を有する積層体を得ることができる場合があることから、前記層(C)は、下記可視光吸収剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
このように層(C)が可視光吸収剤を含有する場合、可視光吸収剤は、層(C)中に一様(均一)に分散していてもよく、層(C)の何れか一方面側に、あるいは層(C)の厚み方向中央部に偏在して存在していてもよいが、この可視光吸収剤が、層(B)中に含まれるフッ素樹脂(b)の融着を助けるために配合されること、また、層(C)全体が溶融、変形することを防ぐことを考慮すると、層(C)の前記フッ素樹脂(b)を含む層側(図1の16b側)に偏在して存在していることが好ましい。
【0039】
前記層(C)の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択すればよく、特に制限されないが、好ましくは0.02〜30mm、より好ましくは0.1〜10mmである。
【0040】
<フッ素樹脂(b)を含む層>
前記フッ素樹脂(b)を含む層(以下単に「層(B)」ともいう。)は、可視光を含む光の照射により隣接層と融着可能なフッ素樹脂(b)を含む層であれば特に制限されない。
本発明の積層体において、この層(B)により、前記層(A)と(C)とが層(B)を介して強固に融着される。また、前記層(A)が液体に接するような用途で用いられる場合であって、該液体が樹脂を劣化させる性質がある場合、層(B)がフッ素樹脂を含むため、該液体が前記層(A)を透過した場合であってもこの層(B)が介在することで層(C)を保護することができる。
【0041】
このようなフッ素樹脂(b)の示差走査熱量測定(DSC)で測定した融点は、層(A)と(C)とがより強固に融着された積層体を得ることができる、耐熱性、耐食性等の点から、好ましくは、PTFEの融点(約327℃)未満の融点であり、より好ましくは、PTFEおよび前記耐熱性樹脂の融点未満の融点であり、さらに好ましくは160〜320℃であり、特に好ましくは260〜315℃である。
【0042】
より具体的には、層(A)や(C)を溶融させることなく、前記効果を有する積層体が得られる等の点から、前記フッ素樹脂(b)の融点は、好ましくはPTFEの融点マイナス150〜5℃であり、より好ましくはマイナス50〜10℃である。また、前記フッ素樹脂(b)の融点は、好ましくは前記耐熱性樹脂の融点マイナス150〜5℃であり、より好ましくはマイナス50〜10℃である。
【0043】
前記フッ素樹脂(b)のメルトフローレート(MFR)は、溶融流動により層(A)や(C)と容易に融着できる観点から、20g/10分以下であることが好ましく、5g/10分以下であることがより好ましく、2g/10分以下であることがさらに好ましい。MFRは、JIS K7210に準拠し372℃、荷重5kgの条件で測定される。
【0044】
前記フッ素樹脂(b)の具体例としては、PFA(融点約302〜310℃)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP、融点約255〜265℃)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、融点約172〜177℃)、ポリフッ化ビニル(PVF、融点約160〜220℃)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)(PCTFE、融点約210〜212℃)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE、融点約270℃)が挙げられ、これらの中でも、PFAは熱的特性、機械的特性、化学的特性および電気的特性に優れるため、これらの特性を有する積層体を得ることができ、層(A)や(C)を溶融させることなく、前記効果を有する本発明の積層体が得られるなどの点から、PFAが好ましい。
【0045】
なお、PFAは、モノマーとしてテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとを用いて、懸濁重合、乳化重合または溶液重合により共重合したものであり、前記PFAとしては、テトラフルオロエチレンから導かれる構造単位を1〜99重量%およびパーフルオロアルキルビニルエーテルから導かれる構造単位を99〜1重量%含有することが好ましい。ただし、テトラフルオロエチレンから導かれる構造単位とパーフルオロアルキルビニルエーテルから導かれる構造単位との合計を100重量%とする。
【0046】
層(B)を形成する際には、従来公知の方法で予めフィルム状に成形したものを用いてもよく、PFA粉体塗料などを用いてもよい。PFA粉体塗料を用いて層(B)を形成するには、層(A)や層(C)上に従来公知の方法で塗布してもよい。
【0047】
前記層(B)は、所望の用途に応じて、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤等の通常の樹脂層に配合され得る各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
【0048】
また、短時間で、かつ、前記層(A)および(C)を溶融させることなく、前記フッ素樹脂(b)を溶融させ、高い層間接着強度を有する積層体を得ることができる等の点から、前記層(B)は、可視光吸収剤を含有することが好ましい。
この場合、可視光吸収剤は、前記層(B)中に一様に分散していてもよく、層(B)の表面または内部に偏在して存在していてもよい。
【0049】
前記可視光吸収剤としては、可視光を吸収できる材料であれば特に制限されないが、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、黒色顔料(例:カーボンブラック、チタンブラック)などの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料、酸化鉄、酸化銅などの有色金属酸化物が挙げられる。
これらの中でも、前記層(A)やフッ素樹脂(b)が有する物性を損なうことなく、耐熱性に優れ、高い層間接着強度を有する積層体を得ることができる等の点から、カーボンブラックが好ましい。
【0050】
前記可視光吸収剤の形状としては、特に制限されないが、粒子状(球状、楕円球状を含む)、偏平状、柱状、針状(テトラポット形状、樹枝状を含む)および不定形状などが挙げられる。
前記可視光吸収剤の平均粒子径は、特に限定されず、目的に応じて宜選択すればよい。
【0051】
前記可視光吸収剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されないが、フッ素樹脂(b)100重量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、3〜7質量部であることがより好ましい。
【0052】
前記層(B)の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択すればよく、層(A)と(C)とが融着すれば特に制限されない。
【0053】
<工程1>
前記工程1は、前記層(A)および層(C)を、前記層(B)を介して積層し、該層(B)に、前記層(A)または層(C)側から可視光を含む光を照射する工程である。
【0054】
前記層(A)〜(C)を積層する方法としては、好ましくは、
(i)フィルム状の前記層(A)および層(C)を、前記フッ素樹脂(b)および可視光吸収剤を含むフィルムを介して積層する方法、または、フィルム状の前記層(A)もしくは層(C)上に、前記フッ素樹脂(b)および可視光吸収剤を含む塗料を塗布し、必要により加熱した後、該塗料の塗布面に、もう一方のフィルム(層(A)もしくは層(C))を積層する方法、
(ii)フィルム状の前記層(A)および層(C)を、前記フッ素樹脂(b)を含むフィルム(可視光吸収剤を含まない)を介して積層する方法、または、フィルム状の前記層(A)もしくは(C)上に、前記フッ素樹脂(b)を含む塗料(可視光吸収剤を含まない)を塗布し、必要により加熱した後、該塗料の塗布面に、もう一方のフィルム(層(A)もしくは層(C))を積層する方法、
が挙げられる。
【0055】
前記(i)の方法では、層(B)に可視光吸収剤が含まれるため、短時間で、かつ、PTFE層、フッ素樹脂(b)および耐熱性樹脂層の特性を損なうことなく所望の積層体を得ることができる。
【0056】
前記工程1は、短時間で、かつ、PTFE層、フッ素樹脂(b)および耐熱性樹脂層の特性を損なうことなく所望の積層体を得ることができる等の点から、可視光を含む光が照射される側の層とは反対側に、前記フッ素樹脂(b)の溶融を助けるような層を用いて光を照射する工程であることが好ましい。
【0057】
なお、前記フッ素樹脂(b)の溶融を助けるような層として、例えば、図5に示すように、光が照射される側の層(層(A)12)とは反対側の層(層(C)16)の層(B)14側とは反対側面16aに設けられる層18(例えば、ポリイミドフィルムや金属板)を用いてもよい。また、前述のように、耐熱性樹脂層として、ポリイミドなどの着色している樹脂を含む層や、可視光吸収剤を含む層を用いる場合には、該耐熱性樹脂層が前記フッ素樹脂(b)の溶融を助けるような層にもなる。さらに、これらの耐熱性樹脂層と前記フッ素樹脂(b)の溶融を助けるような層などの層を併用してもよい。
【0058】
前記(i)の方法では、層(B)に可視光吸収剤が含まれるため、前記フッ素樹脂(b)の溶融を助けるような層を用いなくても、短時間で、かつ、PTFE、フッ素樹脂(b)および耐熱性樹脂の特性を損なうことなく所望の積層体を得ることができるが、前記(i)の方法であっても、前記フッ素樹脂(b)の溶融を助けるような層を用いてもよい。
【0059】
前記(ii)の方法では、光照射の際に、(i)の方法と同様の効果を奏することを目的として、ポリイミドなどの着色している樹脂を含む耐熱性樹脂層や、可視光吸収剤を含む耐熱性樹脂層を用いてもよいが、図5の層18のような層を用いて光を照射することにより、該層18が可視光を吸収することでフッ素樹脂(b)が溶融しやすいようにすることが好ましい。
【0060】
前記可視光を含む光としては、可視光を含めば特に制限されないが、層(A)〜(C)を構成する樹脂の劣化が起こりにくいなどの点から、好ましくは波長0.4〜5μmの光、より好ましくは0.4〜2μmの光が挙げられる。
【0061】
前記光照射の際に使用する光源としては、特に制限されず、レーザーであってもよいが、一度に大面積(例:1m2以上)に光を照射でき、現場施工性に優れる等の点から、ランプを用いることが好ましく、高輝度放電ランプおよびハロゲンランプがより好ましく、紫外〜赤外にわたり連続したスペクトルを有するため、所望の波長の光を容易に選択でき、消費電力が少なく長寿命である等の点から、キセノンランプがさらに好ましい。
【0062】
前記光照射の際の積算光量としては、フッ素樹脂(b)が溶融すれば特に制限されないが、好ましくは10〜3600mJ/cm2であり、より好ましくは30〜120mJ/cm2である。
【0063】
前記光照射の際には、層(A)側および層(C)側のいずれか一方の側から光を照射してもよく、両側から光を照射してもよい。但し、層(C)として、ポリイミドなどの着色している樹脂を含む層や、可視光吸収剤を含む層を用いる場合には、層(A)側から光を照射することが好ましい。
【0064】
光照射の際には、ガラス板などの、用いる光を吸収しないような材料を用いて、積層体の積層方向に、圧力をかけながら各層を融着させることが好ましい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
厚さ2mmの2枚のPTFEシート(それぞれ、PTFE層および耐熱性樹脂層とする。)の間に、フッ素樹脂(b)を含む層として厚さ20μmのカーボン入りPFAフィルム(カーボン含有量:5質量%)を挟み、石英ガラスで、軽く圧着したのち、(有)フィンテック東京製のハロゲンランプ(HSH−35)を用い、光を2分間照射し(波長300〜900nm以外の光をカラーフィルタによりカットして)、積層体を作製した。
室温まで冷却後、石英ガラスを取り外した。積層体の各層間は、よく接着されていた(JIS Z 0237に基づく180°剥離試験にて、剥離強度1kg/cm以上)。
【0067】
[実施例2]
実施例1において、フッ素樹脂(b)を含む層として、厚さ20μmのPFAフィルムを用い、ハロゲンランプの照射時間を各層間が融着する条件(15分)とした以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
得られた積層体の各層間は、よく接着されていた(JIS Z 0237に基づく180°剥離試験にて、剥離強度1kg/cm以上)。
【0068】
[比較例1]
実施例1において、フッ素樹脂(b)を含む層を用いない以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
得られた積層体は、各層が接着されていなかった。
【符号の説明】
【0069】
10:積層体
12:PTFE層(A)
14:フッ素樹脂(b)を含む層(B)
16:耐熱性樹脂層(C)
18:フッ素樹脂(b)の溶融を助ける層
30:ライニングシート
32:PTFEフィルム(PTFE層(A)および耐熱性樹脂層(C))
34:フッ素樹脂(b)を含む層(B)
40:従来の溶接方法で溶接する際の溶接部の断面
42:PTFEフィルム
44:PFAロッド
47:開先処理部
図1
図2
図3
図4
図5