特許第6378583号(P6378583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378583
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両の排気チャンバ
(51)【国際特許分類】
   F01N 1/08 20060101AFI20180813BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20180813BHJP
【FI】
   F01N1/08 B
   F01N1/08 L
   F01N13/08 G
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-174378(P2014-174378)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-50482(P2016-50482A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】荒井 康三
【審査官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−101470(JP,A)
【文献】 特開2013−072396(JP,A)
【文献】 特開2001−090522(JP,A)
【文献】 特開平09−264130(JP,A)
【文献】 特開2013−241856(JP,A)
【文献】 特開2013−068123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/08
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両のエンジンからの排気ガスを排出する排気通路に設けられる排気チャンバであって、
内部にチャンバ膨張室を有するインナケースと、このインナケースの少なくとも一部を覆うアウタケースとを備え、
前記インナケースは、2分割された第1および第2インナケース半体がインナ接合部で接合されて構成され、
前記アウタケースは、互いに離間して配置された複数のアウタケース片を有し、
前記アウタケース片は、前記インナケースの外面における前記インナ接合部とは異なる部位に接合され、
前記インナケースは、扁平な形状に形成され、
前記アウタケース片は、前記インナケースにおける扁平な平面に接合されている排気チャンバ。
【請求項2】
請求項1に記載の排気チャンバにおいて、前記インナ接合部が、扁平な方向の中間部に形成され、
前記アウタケース片が、前記第1および第2インナケース半体の分割面を跨いで配置され、両インナケース半体に接合されている鞍乗型車両の排気チャンバ。
【請求項3】
請求項2に記載の排気チャンバにおいて、前記インナケースは、上下方向寸法が車幅方向寸法および前後方向寸法よりも小さく形成された上下方向に扁平な形状であり、扁平な上下方向に分割されており、
前記アウタケース片は、上側の前記第1インナケース半体と下側の前記第2インナケース半体に接合されている鞍乗型車両の排気チャンバ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の排気チャンバにおいて、複数の前記アウタケース片の各々が、前記第1および第2インナケース半体の分割面を跨いで配置され、両インナケース半体に接合されている鞍乗型車両の排気チャンバ。
【請求項5】
鞍乗型車両のエンジンからの排気ガスを排出する排気通路に設けられる排気チャンバであって、
内部にチャンバ膨張室を有するインナケースと、このインナケースの少なくとも一部を覆うアウタケースとを備え、
前記インナケースは、2分割された第1および第2インナケース半体がインナ接合部で接合されて構成され、
前記アウタケースは、互いに離間して配置された複数のアウタケース片を有し、
前記アウタケース片は、前記インナケースの外面における前記インナ接合部とは異なる部位に接合され、
前記インナケースの一部が外方に露出し、
前記インナケースの前記第1および第2インナケース半体は、上下方向に2分割され、
前記インナケースの上面および下面における車幅方向中央部が外方に露出し、
前記アウタケースが、露出する部分よりも車幅方向外側の外側部分を覆い、該露出する部分に接合されている鞍乗型車両の排気チャンバ。
【請求項6】
請求項5に記載の排気チャンバにおいて、前記インナケースにおける露出する部分が、上側の前記第1インナケース半体に形成され、
この露出する部分に、車体フレーム取付用のブラケットが設けられている鞍乗型車両の排気チャンバ。
【請求項7】
鞍乗型車両のエンジンからの排気ガスを排出する排気通路に設けられる排気チャンバであって、
内部にチャンバ膨張室を有するインナケースと、このインナケースの少なくとも一部を覆うアウタケースとを備え、
前記インナケースは、2分割された第1および第2インナケース半体がインナ接合部で接合されて構成され、
前記アウタケースは、互いに離間して配置された複数のアウタケース片を有し、
前記アウタケース片は、前記インナケースの外面における前記インナ接合部とは異なる部位に接合され、
前記インナケースと前記アウタケースとの間に、断熱空間が形成されている鞍乗型車両の排気チャンバ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の排気チャンバにおいて、前記インナケースの内面に、前記インナケースの分割面と交差する方向に延びる無端状の補強帯材が配置されている鞍乗型車両の排気チャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両のエンジンからの排気ガスを排出する排気通路に設けられる排気チャンバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車のような鞍乗型車両において、エンジンからの排気ガスを排出する排気通路に、排気チャンバを設けたものがある(例えば、特許文献1)。排気チャンバは、排気通路の下流端部のマフラの上流側に配置される。このような排気チャンバを設けることで、マフラを大形化することなく、排気ガスの十分な消音効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−041562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排気チャンバは、形状が複雑になることが多いので、2つの分割体を連結してなる、いわゆる「もなか構造」で構成されるのが一般的である。また、排気チャンバは、大きな消音効果を得るためには、容量は大きな方が有利であるが、容量を大きくすると、外形の平面部分が増えて、振動による放射音が出やすくなる。
【0005】
本発明は、十分な容量を確保しつつ、放射音を低減させることができる鞍乗型車両の排気チャンバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の鞍乗型車両の排気チャンバは、鞍乗型車両のエンジンからの排気ガスを排出する排気通路に設けられる排気チャンバであって、内部にチャンバ膨張室を有するインナケースと、このインナケースの少なくとも一部を覆うアウタケースとを備え、前記インナケースは、2分割された第1および第2インナケース半体がインナ接合部で接合されて構成され、前記アウタケースは、互いに離間して配置された複数のアウタケース片を有し、前記アウタケース片は、前記インナケースの外面における前記インナ接合部とは異なる部位に接合されている。
【0007】
上記構成によれば、アウタケースのアウタケース片をインナケースの外面における前記インナ接合部とは異なる部位に接合しているので、接合部位のインナケースの剛性が高くなる。したがって、大きな消音効果を得るために容量を大きくしても、外形の平面部分に前記接合部位を設定することで、排気ガスの圧力差に起因する振動が抑制され、その結果、放射音を低減することができる。また、アウタケース片は、インナケースの外面に互いに離間して複数配置されているので、アウタケースを小形化しつつ、インナケースの必要な個所の剛性を効果的に向上させることができる。さらに、アウタケースで覆われるインナケースは、外観を気にすることなく振動を抑制する凸凹等を設けることができる。
【0008】
本発明において、前記アウタケース片が、前記第1および第2インナケース半体の分割面を跨いで配置され、両インナケース半体に接合されていることが好ましい。この構成によれば、アウタケース片が、インナケースの2つのインナケース半体に接合されているので、インナケースが、両インナケース半体の分割面に直交する方向に大きく膨らむのを防ぐことができる。
【0009】
本発明において、前記アウタケースは、前記インナケースを車体外側方から覆っていることが好ましい。この構成によれば、形状が複雑なインナケースが外側方に露出しないので、車両の外観が向上する。
【0010】
本発明において、前記インナケースの一部が外方に露出していることが好ましい。この構成によれば、アウタケースがインナケースの外周の全体を覆わないので、アウタケースを小形化できる。さらに、インナケースにおける剛性の向上が必要な個所、外観を向上させるために覆う必要がある個所等を選択して、アウタケースを配置できる。
【0011】
インナケースの一部が外方に露出する場合、前記インナケースの前記第1および第2インナケース半体は上下方向に2分割され、前記インナケースの上面および下面における車幅方向中央部が外方に露出し、前記アウタケースが、露出する部分よりも車幅方向外側の外側部分を覆い、該露出する部分に接合されていることが好ましい。この構成によれば、インナケースが上下2つ割りで構成されるので、板材の浅い絞り加工によって排気チャンバの内部空間を上下方向が小さく車幅方向が大きな扁平形状に形成し易い。このように上下方向寸法を小さくすることで、インナケースを外側方から覆うアウタケースを小形化できるとともに、インナケースの左右方向寸法を大きくすることで、排気チャンバの容量を稼ぐことができる。また、アウタケースは、インナケースの外側部分を覆うだけであるから、車幅方向の寸法を小さくできるので、板材の浅い絞り加工によって容易に形成できる。
【0012】
この場合、好ましくは、前記インナケースにおける露出する部分が上側の前記第1インナケース半体に形成され、この露出する部分に、車体フレーム取付用のブラケットが設けられている。この構成によれば、インナケースの上面の大きなスペースにブラケットを設けることができる。また、ブラケットを設けることで、インナケースの上面の剛性が向上する。
【0013】
本発明において、前記インナケースと前記アウタケースとの間に、断熱空間が形成されていることが好ましい。この構成によれば、排気チャンバの断熱性が向上する。
【0014】
本発明において、前記インナケースの内面に、前記インナケースの分割面と交差する方向に延びる無端状の補強帯材が配置されていることが好ましい。ここで、「無端状」とは、連続した輪状であって、端部がない形状をいう。この構成によれば、インナケースの剛性がさらに向上し、放射音をより一層低減させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の鞍乗型車両の排気チャンバによれば、アウタケースのアウタケース片をインナケースの外面における前記インナ接合部とは異なる部位に接合しているので、接合部位のインナケースの剛性が高くなる。したがって、大きな消音効果を得るために容量を大きくしても、外形の平面部分に前記接合部位を設定することで、排気ガスの圧力差に起因する振動が抑制され、その結果、放射音を低減することができる。また、アウタケース片は、インナケースの外面に互いに離間して複数配置されているので、アウタケースを小形化しつつ、インナケースの必要な個所の剛性を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る排気チャンバを備えた鞍乗型車両の一種である自動二輪車の後部を示す側面図である。
図2】同排気チャンバを示す側面図である。
図3】同排気チャンバを示す平面図である。
図4】同排気チャンバを示す斜視図である。
図5】同排気チャンバを示す分解斜視図である。
図6図3のVI−VI線に沿った断面図である。
図7】同排気チャンバの内部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。この明細書中の左右方向は、自動二輪車に乗車したライダーから見た左右を言う。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係るエンジンの排気消音装置を備えた自動二輪車の後部の側面図である。この自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を構成するメインフレーム1と、メインフレーム1の後部に連結されて車体フレームFRの後半部を構成するリヤフレーム2とを有している。メインフレーム1の前端部に図示しないフロントフォークを介して前輪が支持されている。
【0019】
メインフレーム1の後端下部にスイングアームブラケット4が設けられ、このスイングアームブラケット4にピボット軸5を介してスイングアーム6が上下揺動自在に支持されている。スイングアーム6の後端部に後輪8が支持されている。メインフレーム1の中央下部にはエンジンEが支持されており、このエンジンEによりチェーンのような動力伝達部材10を介して後輪8を駆動する。エンジンEは例えば並列多気筒4サイクルエンジンであるが、これに限定されない。
【0020】
本実施形態のエンジンEは、過給機12を搭載している。詳細には、エンジンEのクランクケース14の後部の上方に過給機12が配置されており、この過給機12により加圧された吸気が、過給機12の上方に配置された吸気チャンバ16に貯留されたのち、スロットルボディ18を介して、エンジンEのシリンダヘッド20の後面に形成された吸気ポート22からエンジンEに供給される。
【0021】
エンジンEのシリンダヘッド20の前部の排気ポート24に接続された複数の排気管26が、エンジンEの下方の集合管25で集合されたのち、排気チャンバ27および接続管35を介してマフラ28に接続されている。これら排気管26、集合管25、排気チャンバ27、接続管35およびマフラ28により排気通路30が構成されている。マフラ28は後輪8の外側方、例えば右側方に配置されており、排気チャンバ27およびマフラ28はカバー31により外側方から一部分が覆われている。
【0022】
排気チャンバ27は、マフラ28よりも排気ガスGの流れ方向の上流側で、排気管26の集合部25よりも下流側に位置する。また、排気チャンバ27は、後輪8の前方で、エンジンEの下方に位置する。
【0023】
図2〜4はそれぞれ、排気チャンバ27の側面図、平面図、および斜視図である。図2に示すように、排気チャンバ27は、内部にチャンバ膨張室32を有するチャンバ本体29と、チャンバ膨張室32に排気ガスGを導入するチャンバ入口管31と、チャンバ膨張室32から排気ガスGを導出するチャンバ出口管33とを有し、これらチャンバ本体29、チャンバ入口管31およびチャンバ出口管33が溶接により一体化されている。チャンバ入口管31およびチャンバ出口管33は、図1の集合管25および接続管35にそれぞれ接続されている。
【0024】
図3に示すように、排気チャンバ27のチャンバ本体29は、チャンバ膨張室32を構成するインナケース34と、このインナケース34の一部を覆うアウタケース36とを有している。インナケース34とアウタケース36とは同種金属、例えばステンレスで構成されている。美観向上のために、アウタケース36に表面処理、塗装等を施こしてもよい。
【0025】
図5は、インナケース34とアウタケース36とを分解した状態を示す斜視図である。同図に示すように、インナケース34は、上側の第1インナケース半体38と下側の第2インナケース半体40とを有する上下2分割構造で、これら第1および第2インナケース半体38,40が溶接により接合されて構成されている。
【0026】
図3に示すように、アウタケース36は、インナケース34の車幅方向の内外側面を車体内側方および外側方から覆っている。ただし、インナケース34の一部、本実施形態では、インナケース34の上面および下面の一部が外方に露出している。このインナケース34の上面の露出する部分に、図4に示す車体フレーム取付用のブラケット42が設けられている。図1に示すように、排気チャンバ27は、ブラケット42に連結されたステー44を介してスイングアームブラケット4の下端に支持されている。
【0027】
図3に示すように、アウタケース36は、インナケース34の車幅方向に離間した第1および第2アウタケース片46,48とを有し、第1アウタケース片46がインナケース34の右側(車体外側)を覆い、第2アウタケース片48がインナケース34の左側(車体内側)を覆っている。これら第1および第2アウタケース片46,48は、その開口縁の全体がインナケース34の外面に溶接により接合されている。
【0028】
詳細には、図3のVI−VI線断面図である図6に示すように、インナケース34は、インナケース34の上下方向中間部に分割面D1が設定されており、この分割面D1を形成するフランジ45,47によりインナ接合部51が形成されている。両フランジ45,47の相対向する接合面50を当接させて、第1インナケース半体38と下側の第2インナケース半体40とが溶接されている。
【0029】
他方、アウタケース36の第1および第2アウタケース片46,48は、インナケース34の外側方を覆う本体部46a,48aと、本体部46a,48aからインナケース34側に延びてインナケース34の外面に接合されるアウタ・インナ接合部46b,48bとを有している。各アウタケース片46,48は、第1および第2インナケース半体38,40の分割面D1を跨いで配置されている。
【0030】
つまり、第1および第2アウタケース片46,48の上側の接合部46b,48bは、第1インナケース半体38の外面(インナケース34の上面)におけるインナ接合部51とは異なる部位Pに接合され、第1および第2アウタケース片46,48の下側の接合部46b,48bは、第2インナケース半体40の外面(インナケース34の下面)に接合されている。
【0031】
チャンバ膨張室32は、上下方向に扁平な形状、すなわち上下方向寸法が車幅方向寸法および前後方向寸法よりも小さく形成される。さらに、本実施形態では、前後方向寸法が車幅方向寸法より大きく形成されている。インナケース34は、扁平な上下方向に分割されている。本実施形態のアウタケース36は、扁平な上下方向に直交する方向のうち、寸法が小さい車幅方向に2分割された構成となっている。
【0032】
インナケース34の分割面D1とアウタケース36の分割面D2は、交差していることが好ましく、直交することがさらに好ましい。本実施形態では、両分割面D1,D2は、ほぼ直交している。ここで、「ほぼ直交」とは、80〜90°の交差角をいう。さらに、本実施形態では、アウタケース36は、インナケース34の上面および下面の車幅方向中央部を覆っていない。このインナケース34の上面および下面の露出部分は、アウタケース36の厚さの分だけ外方に盛り上がって形成されている。これにより、アウタケース36の位置決めがしやすい。
【0033】
インナケース34とアウタケース36との間に、閉止された断熱空間Sが形成されている。本実施形態では、この断熱空間Sに断熱材54が介在されている。断熱材54は、例えば、グラスウールである。インナケース34の左右外側面に複数のスペーサ部材を溶接して、アウタケース36の内面をこのスペーサ部材に当接させることで、所望の間隔の断熱空間Sが形成されるようにしてもよい。
【0034】
図7は排気チャンバ27の内部を示す平面図である。同図に示すように、排気チャンバ27の内部のチャンバ膨張室32は、隔壁56により上流側の第1膨張室58と下流側の第2膨張室60とにより区画されている。第1膨張室58と第2膨張室60とは、隔壁56を貫通する貫通管62により連通している。貫通管62の内部には、排気浄化用の触媒64が配置されている。
【0035】
インナケース34の内面に、インナケース34の分割面D1と交差する方向に延びる無端状の補強帯材69が取り付けられている。補強帯材69は、インナケース34の内面に合致した四角輪状であり、第1および第2インナケース半体38,40の一方、図の例では第1インナケース半体38の内面に溶接により固着されている。本実施形態では、補強帯材69は前後方向に並んで4つ設けられている。ただし、補強帯材69の数はこれに限定されない。また、排気チャンバ27の内部構造は、図示の例に限定されない。
【0036】
上記構成によれば、図6に示すアウタケース36の第1および第2アウタケース片46,48をインナケース34の外面におけるインナ接合部51とは異なる部位Pに接合している。これにより、接合部位Pにおけるインナケース34の剛性が高くなる。したがって、大きな消音効果を得るために、チャンバ膨張室32の容量、すなわちインナケース34の外形を大きくしても、外形の平面部分にアウタケース36との接合部位Pを設定することで、排気ガスGの圧力差に起因する振動が抑制され、その結果、放射音を低減することができる。また、第1および第2アウタケース片46,48は、インナケース34の外面に互いに離間して配置されているので、アウタケース36を小形化しつつ、インナケース34の必要な個所の剛性を効果的に向上させることができる。
【0037】
さらに、第1および第2アウタケース片46,48が、第1および第2インナケース半体38,40の分割面D1を跨いで配置され、上下の接合部46b,48bで両インナケース半体38,40に接合されている。これにより、インナケース34の上面および下面が、分割面D1に直交する方向である上下方向(図中の矢印Aの方向)に大きく膨らむのを防ぐことができる。
【0038】
インナケース34は形状が複雑であるから、いわゆるモナカ構造により形成されている。上記構成では、アウタケース36がインナケース34を左右方向から覆っているので、インナケース34が車体外側方に露出しないので、自動二輪車の外観が向上する。
【0039】
インナケース34の一部、具体的には、インナケース34の上面および下面の車幅方向中央部はアウタケース36で覆われないで外方に露出しているが、図1に示すように、排気チャンバ27の上方にはエンジンEが配置され、下方は地面であるので、排気チャンバ27の上方および下方は外部から見えにくい。したがって、アウタケース36で覆わなくても外観は損なわれない。このように、インナケース34の外周の全体をアウタケース36で覆わないことで、アウタケース36を小形化できるとともに、インナケース34における剛性の向上が必要な個所、外観を向上させるために覆う必要がある個所等を選択して、アウタケース36を配置できる。
【0040】
図6に示すインナケース34が上下2つ割りで構成されるので、板材の浅い絞り加工によって、排気チャンバ27の内部のチャンバ膨張室32を上下方向が小さく車幅方向(左右方向)が大きな扁平形状に形成し易い。このように、上下方向寸法を小さくすることで、インナケース34を左右方向から覆うアウタケース36を小形化できるとともに、インナケース34の左右方向寸法を大きくすることで、排気チャンバ27の容量を稼ぐことができる。また、アウタケース36は、インナケース34の外側部分を覆うだけであるから、車幅方向の寸法を小さくできるので、板材の浅い絞り加工によって容易に形成できる。
【0041】
図4に示すインナケース34の上面におけるアウタケース36で覆われていない露出部分に、車体フレーム取付用のブラケット42が設けられている。これにより、インナケース34の上面の大きなスペースにブラケット42を設けることができる。また、ブラケット42を設けることで、インナケース34の上面の剛性が向上し、上方への膨らみを防止できる。
【0042】
図6に示すインナケース34とアウタケース36との間に、断熱空間Sが形成されている。これにより、排気チャンバ27の断熱性が向上する。また、断熱空間Sに断熱材54が充填されているので、排気チャンバ27の断熱性が一層向上する。
【0043】
図7に示すインナケース34の内面に、無端状の補強帯材69が取り付けられているので、インナケース34の剛性がさらに向上し、放射音をより一層低減させることができる。
【0044】
上記実施形態は、インナケース34とアウタケース36の二重構造の例を説明したが、三重構造としてもよい。具体的には、チャンバ膨張室を形成する内側の第1インナケースの全体を覆う第2インナケースを設け、この第2インナケースの一部または全体を上述のアウタケース36で覆うようにしてもよい。この場合、両インナケースの間に断熱空間を設けてもよく、補強帯材69を内側の第1インナケースの外面に取り付けてもよい。
【0045】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、アウタケース36は左右2分割構造であったが、複数のアウタケース片がインナケース34の周方向に離間して配置されていればよい。また、インナケース34は、上面、下面以外の面を外方に露出させてもよい。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
27 排気チャンバ
30 排気通路
32 チャンバ膨張室
34 インナケース
36 アウタケース
38 第1インナケース半体
40 第2インナケース半体
42 ブラケット
46 第1アウタケース片
48 第2アウタケース片
51 インナ接合部
69 補強帯材
E エンジン
G 排気ガス
P 異なる部位
S 断熱空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7