(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前面を開口する箱形の筐体と、上記筐体の前面に取り付けられる前面パネルと、上記筐体内に構成されるホース収納空間に内巻きに巻かれ、先端にノズルが接続された、常に丸形を保形する消火用ホースと、上記前面パネルに形成されて上記消火用ホースを引き出すための開口部と、を備え、上記消火用ホースを上記開口部から引き出して放水する消火栓装置において、
上記開口部は、上記ホース収納空間の上部側を開口するように上記前面パネルに形成され、
上記ホース収納空間の底面から上記開口部の下端までの高さが上記ホース収納空間の奥行きの2倍以上であることを特徴とする消火栓装置。
消火栓扉が、上記開口部を閉塞する開口部閉塞位置と上記開口部閉塞位置から前傾方向に180°回動して上記開口部を開放する開口部開放位置とをとるように、軸方向を上記筐体の幅方向とする回転軸周りに回動可能に取り付けられ、
ホース折れ防止部材が、上記前面パネルの上記開口部の下端縁部に直接設けられていることを特徴とする請求項1記載の消火栓装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の消火栓装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る消火栓装置を示す正面図、
図2はこの発明の実施の形態1に係る消火栓装置を示す上面図、
図3は
図1のIII−III矢視断面図、
図4はこの発明の実施の形態1に係る消火栓装置の消火栓扉を開けた状態を示す正面図、
図5はこの発明の実施の形態1に係る消火栓装置における消火用ホース引き出し状態を説明する側断面図である。
【0012】
図1から
図3において、消火栓装置1は、火災の消火の機能に加えて、火災の監視と通報の機能を備えた非常用設備であり、前面を開口する略直方体の箱形に作製された筐体2と、筐体2の前面に締着固定され、筐体2の前面に取り付けられる前面パネル3と、を備えている。そして、筐体2と前面パネル3とからなる消火栓箱内には、ホース収納空間4aが中央部に構成され、消火器収納空間4bと配管系統収納空間4cがホース収納空間4aを挟んでホース収納空間4aの両側に構成されている。
【0013】
消火用ホース5は、常に丸い形状を保とうとする保形ホースであり、先端に消火用ノズル5aを有し、ホース収納空間4a内に設置されたホースバケット6に内巻きに巻かれて、ホース収納空間4a内に配設されている。消火器7および各種電気機器が消火器収納空間4b内に収納されている。メンテナンス装置9などを備えた配管系統8が、配管系統収納空間4c内に収納されている。また、ホース接続口11が配管系統収納空間4c内の上部側に配設され、消火用ホース5の一次側がホース接続口11に接続されている。
【0014】
前面パネル3には、ホース収納空間4aおよび配管系統収納空間4cの上部側を開口する、開口形状を長方形とする横長の開口部3a、および消火器収納空間4bを開口する、開口形状を長方形とする縦長の消火器用開口部3bが設けられている。
消火栓扉15が、消火栓箱の幅方向を回転軸方向とする蝶番16により下端部を開口部3aの下端縁部に連結されて、開口部3aを開閉可能に前面パネル3に取り付けられている。これにより、消火栓扉15は、蝶番16周りに回動し、開口部3aを閉塞する開口部閉塞位置と開口部閉塞位置から前傾方向に略180°回動して開口部3aを開放する開口部開放位置とをとる。そして、消火用ノズル5aおよび消火栓弁(図示せず)を開閉する消火栓弁開閉レバー13が、消火栓扉15の裏面に取り付けられている。
【0015】
ホース折れ防止部材18は、長さ方向と直交する断面形状を、直交する2線分の端部同士を略円弧で連結した断面形状とする柱状体に作製され、一方の平坦面を下方に向け、他方の平坦面を開口部3aの下端縁部の内面にあてがい、消火栓箱の幅方向に延びるように、前面パネル3に取り付けられている。そして、ホース折れ防止部材18は、少なくとも、消火栓箱の幅方向におけるホースバケット6の開口領域、すなわち消火用ホース5の引き出し領域の全領域にわたって、消火栓箱の幅方向に延在している。また、ホース折れ防止部材18は、その上端が、開口部3aの下端縁部と面一、または開口部3aの下端縁部よりわずかに高くなるように、高さ調節され、消火用ホース5引き出し時に消火用ホース5が当接する部分が略円弧状となるように前面パネル3に取り付けられている。
【0016】
メンテナンス扉19は、配管系統収納空間4cの下部側を開閉可能に、前面パネル3に取り付けられている。
消火器扉20が、消火器用開口部3bの開口部3aと反対側の縁部に上下方向を回転軸とする蝶番(図示せず)により、消火器用開口部3bを開閉可能に前面パネル3に取り付けられている。
【0017】
電気機器取付板21が、四隅を前面パネル3に締着固定され、消火器用開口部3bの開口部3a側(消火栓箱幅方向他側)に上下方向に延びるように配設されている。この電気機器取付板21には、赤色表示灯22、非常用発信器23等が取り付けられ、電話ジャック、非常用コンセントなどの電気機器を備えている。赤色表示灯22は、消火栓装置1の設置位置を明示するものであり、電気機器取付板21の上方位置に突設され、前面パネル3の前面から突出している。
【0018】
このように構成された消火栓装置1は、図示していないが、高速自動車道のトンネルの一方の路肩に構築された監視員通路から操作可能なコンクリート躯体の壁面に凹設された箱抜き内に配置されて、所定の間隔(例えば、50m)毎に設置される。消火栓装置1は、赤色表示灯22がコンクリート躯体の壁面から突出するように、設置される。なお、図示していないが、監視員通路の下部に構築されたダクト内には、予め配水本管が敷設されている。
【0019】
そして、消火栓装置1の設置時、消火栓弁ユニットなどがダクト内に設置され、配水本管から分岐した分岐配管が消火栓弁ユニットの一次側に接続される。また、消火栓弁ユニットの二次側が配管系統8に接続される。さらに、一端が消火栓弁開閉レバー13に連結された連動ワイヤが、ホース収納空間4aから配管系統収納空間4c内に引き出され、配管系統収納空間4c内の下部側を通ってダクトに引き出され、消火栓弁ユニットの消火栓弁に連結される。連動ワイヤの張力を調節するターンバックル(図示せず)が配管系統収納空間4c内の下部側を通る連動ワイヤの部位に配設されている。また、電線が外部から配管系統収納部4cに引き込まれ、配管系統収納空間4c内の下部およびホース収納空間4a内の下部に配設された電線横断路30の内部を通り、電気機器取付板21に取り付けられている各種機器に接続される。
【0020】
このように設置された消火栓装置1では、赤色表示灯22が、電気機器取付板21の上方位置に突設され、コンクリート躯体の壁面から突出するように、設置され、常時点灯している。そして、火災事故が発生し、非常用発信器23の押しボタンを押すと、監視センター(図示せず)に対し火災の通報が行われる。監視センターで非常用発信器23からの火災通報が受信されると、点滅信号が送信されて、常時点灯状態にあった赤色表示灯22が点滅し、火災の発生を報知する。また、非常用発信器23を押すと図示しないポンプが起動し、配水本管内に消火水を加圧送出する。
【0021】
そして、消火栓装置1の設置場所に到着した取扱者は、ハンドル15aに手を入れて手前に引いてロックを外し、消火栓扉15を蝶番16周りに略180°回動させる。これにより、
図4に示されるように、開口部3aが開放される。そこで、取扱者は、消火用ノズル5aを取り出し、消火栓弁開閉レバー13を手前に引く。これにより、消火栓弁開閉レバー13を開側へ移動させる力が連動ワイヤを介して消火栓弁に伝達され、消火栓弁が開放し、消火用ノズル5aから消火水の放水が開始される。取扱者は、消火用ノズル5aを持ちながら火災現場に向けて消火用ホース5を引き出し、消火を行う。このとき、消火用ホース5は、
図5に示されるように、ホース折れ防止部材18の曲面(摺動面)上を摺動する。
【0022】
ここで、消火用ホース5の引き出し時に消火用ホース5がばらけ出ることについて説明する。
【0023】
ホースバケット6に内巻きに巻かれている消火用ホース5は充水されることで、一直線となろうとする伸長力が発生する。そして、消火用ホース5を引き出す際には、この伸長力が、消火用ホース5をホース収納空間4aから飛び出させる、つまり消火用ホース5をばらけ出させるように作用する。
【0024】
そして、開口部3aがホース収納空間4aの全面を開口するように形成されている場合には、充水により発生する消火用ホース5の伸長力は弱められず、消火用ホース5がばらけ出る。
【0025】
ここで消火用ホース5が開口部3aの下端縁部を摺動すると、摩擦力が発生する。消火用ホース5が開口部3aの下端縁部を摺動する際に生じる摩擦力は、開口部3aの下端縁部の高さを高くすると水圧により生じる消火用ホース5の伸長力がホース自身を開口部3aの下端縁部へ押し付ける力が強くなるため、大きくなる。しかしながら、ホース収納空間4aの奥行きWが広すぎると、この力が弱いため摩擦力が小さく、消火用ホース5がばらけ出るのを抑制できなかった。
【0026】
本出願人は、ホース収納空間4aの底面から開口部3aの下端までの高さHとホース収納空間4aの奥行きWを変えて検討したところ、HをWの2倍以上とすると、消火用ホース5がばらけ出るのを抑制できることを確認できた。ここで、高さHを規定する開口部3aの下端とは、ホース折れ防止部材18の上端であり、奥行きWとは、ホース折れ防止部材18からホース収納空間4aの背面までの寸法である。なお、ホース折れ防止部材18が省略されている場合には、高さHを規定する開口部3aの下端とは、開口部3aの下端縁部であり、奥行きWとは、前面パネル3の開口部3aの下端縁部の内面からホース収納空間4aの背面までの寸法である。
【0027】
この実施の形態1によれば、ホース収納空間4aの底面から開口部3aの下端までの高さHがホース収納空間4aの奥行きWの約2.5倍に設定され、開口部3aが、前面パネル3の上部側に開口しているので、消火用ホース5の引き出し時に消火用ホース5がばらけ出るのを抑制できる。そこで、特許文献1で必要であったフレーム部材とホースガイド部材とにより構成されるホース取出口が不要となるので、部品点数が削減され、装置コストを低減することができる。また、開口部3aが広くなっているので、消火用ホース5の巻き戻し作業性が高められる。
【0028】
なお、消火栓装置1の薄型化に伴い、ホース収納空間4aの容積の縮小によるホース収納可能長さの縮小が懸念されるが、消火栓弁ユニット等の配管系統を監視員通路の下部に構築されたダクトに設置することで、配管系統収納空間4cの容積を縮小でき、ホース収納空間4aの幅が増大し、容積が確保される。そこで、消火栓装置1の外形寸法を増大することなく、消火栓装置1の薄型化を実現できる。
【0029】
また、消火栓扉が、開放時に、略90°開放して監視員通路上に位置する場合には、消火栓扉には、使用者が載っても破損しないような剛性が求められるので、消火栓扉の板厚を厚くしなければならず、消火栓本体の製造コストが高くなるとともに、重量が重くなり、搬送コストが高くなるという問題がある。この実施の形態1では、消火栓扉15が、前傾方向に略180°回動して垂れ下がって開口部3aを開放するように前面パネル3に取り付けられているので、使用者が消火栓扉15に載るような事態が回避される。そこで、消火栓扉15の軽量化が図られ、製造コストおよび搬送コストを削減することができる。
【0030】
また、この実施の形態1では、ホース収納空間4aの底面から開口部3aの下端までの高さHがホース収納空間4aの奥行きWの2倍以上となるため、
図5に示されるように、開口部3aからの消火用ホース5の引き出し方向とホースバケット6内からの消火用ホース5の引き出し方向との間の角度が、90°に近づく。そこで、消火用ホース5が、金属薄板で作製された開口部3aの下端縁部を乗り越える際に、折れ曲がりやすい。折れ曲がった状態で消火用ホース5を引き出すと、消火用ホース5が損傷する恐れがある。この実施の形態1では、消火用ホース5の摺動面を曲面とするホース折れ防止部材18が、前面パネル3の開口部3aの下端縁部の内面に、引き出される消火用ホース5が摺動可能に取り付けられているので、消火用ホース5の開口部3aから引き出される部位での折れ曲がりの発生が抑制される。そこで、折れ曲がった状態で引き出されることによる消火用ホース5の損傷発生が抑制される。
【0031】
また、実施の形態1では、メンテナンス扉19が、配管系統収納空間4cの下部側を開閉可能に前面パネル3に取り付けられている。メンテナンス時には、作業者は、メンテナンス扉19をあけて、消火栓装置1の前面側からターンバックルの調整作業や電線横断路30のメンテナンス作業を行うことができる。そこで、作業者が開口部3aから手を差し入れてメンテナンス作業をする必要がないので、メンテナンスの作業負荷を軽減できる。
【0032】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2に係る消火栓装置のホース折れ防止部材周りを示す要部断面図である。
【0033】
図6において、ホース折れ防止部材25は、前面パネル3の材料である鋼板を開口部3aの下端でホース収納空間4a側に直角に曲げ、ついで下方に45°曲げ、さらに下方に45°曲げて作製されている。
なお、実施の形態2による消火栓装置は、ホース折れ防止部材18に替えてホース折れ防止部材25を用いている点を除いて、上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0034】
この実施の形態2においても、ホース収納空間4aの底面からホース折れ防止部材25の上端までの寸法(高さH)がホール折れ防止部材25からホース収納空間4aの背面までの寸法(奥行きW)の約2.5倍に設定されているので、消火用ホース5の引き出し時に消火用ホース5がばらけ出るのを抑制できる。
【0035】
また、ホース折れ防止部材25が、前面パネル3の開口部3aの下端縁部に、引き出される消火用ホース5が摺動可能に取り付けられているので、消火用ホース5の開口部3aから引き出される部位での折れ曲がりの発生が抑制される。
【0036】
また、ホース折れ防止部材25の摺動面25aが平面で構成されているので、消火用ホース5がばらけようとする際に摺動面25aに接触しやすくなり、ばらけ防止効果が向上される。なお、消火用ホース5がばらけようとする際の接触しやすさを高めるという観点から、ホース引き出し方向に対して摺動面25aの角度を45°前後とすることが好ましい。
【0037】
なお、上記実施の形態2では、ホース折れ防止部材が前面パネルの材料である鋼板を曲げ成形して作製されているが、鋼板を曲げ成形して作製されたホース折れ防止部材を前面パネルの開口部の下端縁部の内壁に溶接などにより取り付けてもよい。
また、上記実施の形態2では、ホース折れ防止部材の外壁面が、水平方向に対する傾斜角度が45°ずつ漸次大きくなるように3つの平坦面を連続して繋げた面形状に構成されているが、ホース折れ防止部材の外壁面は、水平に対する傾斜角度が漸次大きくなるように4つ以上の平坦面を連続して繋げた多角面でもよい。
【0038】
実施の形態3.
図7はこの発明の実施の形態3に係る消火栓装置のホース折れ防止部材周りを示す要部断面図である。
【0039】
図7において、ホース折れ防止部材26は、円柱に作製され、前面パネル3の開口部3aの下端縁部の内壁に溶接などにより取り付けられている。
なお、実施の形態3による消火栓装置は、ホース折れ防止部材18に替えてホース折れ防止部材26を用いている点を除いて、上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0040】
この実施の形態3においても、ホース収納空間4aの底面からホース折れ防止部材26の上端までの寸法(高さH)がホール折れ防止部材26からホース収納空間4aの背面までの寸法(奥行きW)の約2.5倍に設定されているので、消火用ホース5の引き出し時に消火用ホース5がばらけ出るのを抑制できる。
【0041】
また、ホース折れ防止部材26が、前面パネル3の開口部3aの下端縁部に、引き出される消火用ホース5が摺動可能に取り付けられているので、消火用ホース5の開口部3aから引き出される部位での折れ曲がりの発生が抑制される。
【0042】
なお、上記各実施の形態では、ホース折れ防止部材が開口パネルに取り付けられているが、消火栓扉に取り付けられてもよい。つまり、ホール折れ防止部材は、消火用ホースを引き出す際に、開口部の下端縁部の近傍で消火用ホースが摺動するように設けられていればよい。したがって、ホール折れ防止部材は、消火栓扉の閉塞時に消火栓扉の下部内面に取り付けられ、消火栓扉を開放した際に、開口部の下端縁部の所定位置に配設される形状としてもよい。