特許第6378617号(P6378617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378617
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】スクラップバケット
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/00 20060101AFI20180813BHJP
   F27B 3/18 20060101ALI20180813BHJP
   C21C 5/52 20060101ALI20180813BHJP
   B66C 3/00 20060101ALI20180813BHJP
   B66C 3/12 20060101ALI20180813BHJP
【FI】
   F27D3/00 B
   F27B3/18
   C21C5/52
   B66C3/00
   B66C3/12
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-234814(P2014-234814)
(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公開番号】特開2016-99033(P2016-99033A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】新日鉄住金エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】590005715
【氏名又は名称】日本鋳鍛鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 弘繁
(72)【発明者】
【氏名】野上 不二哉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】真浦 実
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−096976(JP,U)
【文献】 特開2002−019882(JP,A)
【文献】 実開昭57−175999(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/00
F27B 3/18
B66C 3/00 − 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気炉へスクラップを搬送して装入するスクラップバケットであって、バケット本体の下部に二分割により開閉するゲートを備えたスクラップバケットにおいて、
二分割された前記ゲートをロックするためのゲートロックピンが、ゲートを開閉するゲート開閉用吊りハンガーからゲートロックピン吊り下げチェーンが吊り下げられ、
前記各ゲートのそれぞれには、ゲートが閉の状態の時に上下に重なるとともに前記ゲートロックピンが挿入されて閉ロックが可能なガイド孔が設けられ、
前記チェーンの長さは、ゲート開閉用吊りハンガーを巻き上げた際にゲートが開く直前にゲートロックピンがその長さ方向上方に引っ張られることによって前記ガイドから抜けてロック解除される長さであり且つゲートが閉まる際にゲートが閉まった後にロックピンが前記ガイドに挿入される長さであることを特徴とするスクラップバケット。
【請求項2】
前記ゲート開閉用吊りハンガーから吊り下げられたゲートロックピン吊り下げチェーンをガイドするガイド孔を有するゲートロックピン吊り下げチェーンガイドが、バケット本体のゲートロックピンが挿入されて閉ロックが可能なガイド孔の直上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスクラップバケット。
【請求項3】
前記ロックピンのガイド孔のうち、上に重ねられたガイド孔の縦断面がすり鉢形のガイド孔であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスクラップバケット。
【請求項4】
前記ロックピンの下端に前記ガイド孔にガイドされるガイドチェーンが連結されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のスクラップバケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼用電気炉へスクラップを搬送して装入するスクラップバケットに関し、特にバケット本体の底部に二分割により開閉するゲートを備えたスクラップバケットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気炉へのスクラップの装入は、スクラップがスクラップバケットと呼ばれる搬送容器に入れられて電気炉上部へ搬送されて投入される(特許文献1、非特許文献1参照)。スクラップバケットは、円筒状のバケット本体の下部に二分割されたゲートを備え、ゲートが両側に開くように回転可能なピン及びレバーで支持されている。
【0003】
図4において、筒状のバケット本体1の底部に、二分割により開閉するゲート2,2がバケット本体1の下端部の外側を包囲するようにして配置されている。バケット本体1の上部に、バケットを吊り下げるための主巻用フック3を引っ掛ける水平のピン4,4が取り付けられている。バケット本体1に、支持ピン5,5を対称的に突設させ、各支持ピン5,5に、ゲート2,2の各上面にL字形の吊リンク6の中間部をそれぞれ回動自在に取り付けると共に、各吊リンク6,6の上端同士がそれぞれリンクプレート7を介してピン連結される。
【0004】
ゲート2,2の分割面同士が自重によって密着させられることによって内部に収容させたスクラップを保持させるようにしている。2分割したゲート2,2の外側に固定した各吊ピース8,8に補巻用ワイヤロープ9,9の一端が固定され、補巻用ワイヤロープ9,9の他端がゲート開閉用吊りハンガー10に固定されている。
【0005】
図5において、ゲート2,2の開き動作は、ゲート2,2に取り付けられた補巻用ワイヤロープ9,9のゲート開閉用吊りハンガー10を天井クレーンの補巻用フック11に掛け、クレーンにて巻き上げることで分割構造のゲート2,2が支持ピン5,5を支点として分割面を境に左右方向へ回動して開放される。一方、ゲート2,2の閉動作は、ゲート2,2の自体の重心とゲート2,2の支持位置との関係で補巻用ワイヤロープ9,9を緩めることにより自然に閉まる構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−151397号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】社団法人日本鉄鋼協会編 「鉄鋼便覧」 第II巻『製銑・製鋼』 第3版 第541頁 昭和54年10月15日 丸善株式会社発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スクラップバケットにスクラップを入れる場合、スクラップがゲート面全体に入る場合は問題ないが、スクラップが少量の場合などでゲートの合わせ面付近だけに集中した場合、スクラップバケットを吊り上げた際に、ゲートを開く方向に力が働き、支持ピンと重心の関係によってゲートが開いてスクラップが落下してしまうという問題があった。
【0009】
前記のゲートの開き防止のためにスクラップをスクラップバケットに入れる前にゲート開き防止用のゲートロックピンを差し込む等が考えられるが、そうすると電気炉上は作業者が近寄れる場所ではないので容易にロック解除ができない。また、ゲートロックピンを駆動装置で動作させ遠隔操作でロック解除する方法も考えられるが、この場合、駆動のための設備が必要になるだけでなく複雑になるという課題があった。
【0010】
そこで、本発明は、スクラップバケットのゲートが不要の時に開くのを防止することができるようにゲートにゲートロックピンが容易にセット可能であるとともに、ロック解除の際に特別な装置を必要とせずに電気炉上で容易にロック解除ができる構造を有するスクラップバケットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のスクラップバケットは、電気炉へスクラップを搬送して装入するスクラップバケットであって、バケット本体の下部に二分割により開閉するゲートを備えたスクラップバケットにおいて、 二分割された前記ゲートをロックするためのゲートロックピンが、ゲートを開閉するゲート開閉用吊りハンガーからゲートロックピン吊り下げチェーンが吊り下げられ、 前記各ゲートのそれぞれには、ゲートが閉の状態の時に上下に重なるとともに前記ゲートロックピンが挿入されて閉ロックが可能なガイド孔が設けられ、 前記チェーンの長さは、ゲート開閉用吊りハンガーを巻き上げた際にゲートが開く直前にゲートロックピンがその長さ方向上方に引っ張られることによって前記ガイドから抜けてロック解除される長さであり且つゲートが閉まる際にゲートが閉まった後にロックピンが前記ガイドに挿入される長さであることを特徴とする。
【0012】
前記構成において、前記ゲート開閉用吊りハンガーから吊り下げられたゲートロックピン吊り下げチェーンをガイドするガイド孔を有するゲートロックピン吊り下げチェーンガイドを、バケット本体のゲートロックピンが挿入されて閉ロックが可能なガイド孔の直上に設けたり、前記ガイド孔のうち、上に重ねられたガイド孔を縦断面がすり鉢形のガイド孔に形成したり、前記ロックピンの下端に前記ガイド孔にガイドされるガイドチェーンを連結したりしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ゲートを開く際、ゲート開閉用吊りハンガーを巻き上げるとゲートが開く直前にゲートロックピンがガイドから抜け、その後、ゲートが開きゲート開閉用吊りハンガーを下げるとゲートが閉まった後にゲートロックピンがピンガイドに挿入されゲートがロックされる。したがって、従来のゲート開閉操作と同じ操作だけで、容易にゲートのロック・ロック解除が可能となる。
【0014】
本発明は、少量のスクラップ装入時にスクラップバケットを吊り上げてもゲートが開かないようゲートにゲートロックピンを容易に挿入できるとともに、特別な装置は必要とせずに電気炉上で容易にロック解除ができる構造の電気炉スクラップバケットを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は本発明のスクラップバケットの正面概略図、(b)は同側面概略図である。
図2】(a)は本発明のスクラップバケットのゲートロックピンガイド、(b)はゲートロックピンガイドとゲートロックピンを示す概略側面図である。
図3】(a)は本発明のスクラップバケットのゲートを開いた状態を示す正面概略図、(b)は同側面概略図である。
図4】(a)は従来のスクラップバケットの正面概略図、(b)は同側面概略図である。
図5】(a)は従来のスクラップバケットのゲートを開いた状態を示す正面概略図、(b)は同側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例について、図を参照しながら説明する。
【実施例】
【0017】
図1において、本発明のスクラップバケットのバケット本体、ゲート及びゲートの開閉構造は、図4に示す従来のスクラップバケットと同じであり、同じ部材には同一の符号を付している。
【0018】
図1において、筒状のバケット本体1の底部に、下部が左右に開く2分割構造の皿状のゲート2,2がバケット本体1の下端部の外側を包囲するようにして配置されている。バケット本体1の上部には、主巻用フック3を引っ掛けるための水平のピン4,4が取り付けられている。バケット本体1に、2本の支持ピン5,5を対称的に突設させ、各支持ピン5,5に、各ゲート2,2の各上面にL字形の吊リンク6の中間部をそれぞれ回動自在に取り付けるとともに、吊リンク6,6の上端同士がそれぞれリンクプレート7を介してピン連結される。
【0019】
2分割した各ゲート2,2の外側に固定した吊ピース8,8に補巻用ワイヤロープ9の一端を結着させ、補巻用ワイヤロープ9の他端をゲート開閉用吊りハンガー10に固定する。ゲート開閉用吊りハンガー10を補巻用フック11に掛けてクレーンにて巻き上げることにより、分割構造のゲート2,2が支持ピン5,5を支点として分割面を境に左右方向へ回動して開放されるようにしてある。
【0020】
補巻用ワイヤロープ9のゲート開閉用吊りハンガー10にはゲートロックピン吊り下げチェーン12の一端が固定されており、ゲートロックピン吊り下げチェーン12はバケット本体1に固定されたチェーンガイド13のガイド孔14にガイドされて自重により垂下している。ゲートロックピン吊り下げチェーン12の下方にはゲート2をロックするゲートロックピン15がゲートロックピン吊り下げチェーン12の長さ方向の垂直軸線上に沿って取り付けられる。
【0021】
ゲートロックピン15は、両側のゲート2,2のそれぞれの合わせ面の上部に設けられたゲートロックピン用ガイド16,18をゲート2,2の開閉時に出入り自在の位置に取り付けられている。ゲートロックピン用ガイド16,18は、ゲート2,2が閉まっている状態では重なり、上側のゲートロックピン用ガイド16には上下が開放された縦断面がすり鉢形のガイド孔19が形成され、下側のゲートロックピン用ガイド18には上側のゲートロックピン用ガイド16のガイド19に一致するガイド孔20が形成されている。
【0022】
ゲートロックピン吊り下げチェーン12の長さは、ゲート2,2を閉じた状態の時、ゲートロックピン15がゲートロックピン用ガイド16,18に挿入された状態で停止する長さとするとともに、ゲート開閉用吊りハンガー10を巻き上げた際にゲート2,2が開く直前にゲートロックピン15が前記ガイド孔19,20から抜けてロック解除される長さにする。
【0023】
なお、ゲートロックピン15の下端にはさらにゲートロックピン15をゲートロックピン用ガイド16,18に確実にガイドするため、ガイドチェーン17を連結してもよい。
【0024】
ゲートロックピン用ガイド16,18のガイド孔19,20には、ゲート2,2が閉まっている状態では、ゲートロックピン15が位置し、ゲート2が開いた状態では、ゲートロックピン15が上方に抜かれており且つゲートロックピン15の下端に垂れているガイドチェーン17がガイドされ垂下している。
【0025】
次に、ゲート2,2の開閉動作について説明する。
【0026】
ゲート2を閉じた状態では、ゲート開閉用吊りハンガー10が下がってゲートロックピン15がゲートロックピン用ガイド16,18に挿入された位置に停止してゲート2がロックされる。この状態で、所定量のスクラップをスクラップバケット内に投入した後、主巻用フック3をピン4に掛けてスクラップバケットを支持し、電気炉の上部へ搬送する。
【0027】
電気炉の上部に達すると、事前にゲート開閉用吊りハンガー10に掛けていた補巻用フック11を巻き上げると、ゲートロックピン吊り下げチェーン12が引っ張られてゲートロックピン15がゲートロックピン用ガイド16,18から抜けてロックが解除され、さらに補巻用ワイヤロープ9が引っ張られてゲートが開く。
【0028】
電気炉にスクラップを装入後、ゲート開閉用吊りハンガー10を下げていくと、ゲート2,2が自重で閉じられる。ゲート開閉用吊りハンガー10を下げていく際に、ゲートロックピン吊り下げチェーン12はチェーンガイド13のガイド孔14にガイドされて自重により垂下し、この垂下にともなってゲートロックピン用ガイド16,18のガイド孔19,20から抜けているゲートロックピン15はガイド孔19,20へ挿入されてゲート2,2がロックされる。ゲートロックピン15にガイドチェーン17が取り付けられている場合には、ガイドチェーン17がガイド孔19,20にガイドされてゲートロックピン15がガイド孔19,20に確実に挿入されてゲート2がロックされる。
【符号の説明】
【0029】
1:バケット本体
2:ゲート
3:主巻用フック
4:ピン
5:支持ピン
6:吊リンク
7:リンクプレート
8:吊ピース
9:補巻用ワイヤロープ
10:ゲート開閉用吊りハンガー
11:補巻用フック
12:ゲートロックピン吊り下げチェーン
13:ゲートロックピン吊り下げチェーンガイド
14:ガイド孔
15:ゲートロックピン
16:ゲートロックピン用ガイド
17:ガイドチェーン
18:ゲートロックピン用ガイド
19:すり鉢形のガイド孔
20:ガイド孔
図1
図2
図3
図4
図5