(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数工程によって生産する製品であって、対象となる複数の製品それぞれの、前記複数工程のうちの或る工程である前工程における処理の実施順序と、前記前工程の次の工程である後工程における処理の実施順序とを含む実績情報を記憶する実績情報記憶手段と、
前記複数の製品それぞれの、前記後工程における実施順序の順番から前記前工程における実施順序の順番を減算した値である順序入替差を算出し、算出した順序入替差に基づいて基準順序入替差を求め、前記順序入替差の平均値から前記基準順序入替差を減算した値を、前記前工程と前記後工程との工程間の順序入替在庫量として算出する順序入替在庫算出手段と、
前記前工程と前記後工程との生産量のばらつきに基づいて、前記前工程と前記後工程との工程間の安全在庫量を算出する安全在庫算出手段と、
前記前工程から前記後工程に引き渡すための条件に基づいて、前記前工程と前記後工程との工程間のパイプライン在庫量を算出するパイプライン在庫算出手段と、
前記順序入替在庫量と、前記安全在庫量と、前記パイプライン在庫量とに基づいて、前記前工程と前記後工程との工程間の適正在庫量を算出する適正在庫算出手段と
を備えることを特徴とする仕掛在庫量算出装置。
前記順序入替在庫算出部は、前記順序入替差の度数分布におけるそれぞれの発生回数のうち最も多い発生回数に対する、前記順序入替差それぞれの発生回数の割合が、所定の閾値を超える前記順序入替差のうち、最も小さな値を基準順序入替差とする
ことを特徴とする請求項1に記載の仕掛在庫量算出装置。
所定の生産性を有する前記後工程における操業計画であって、製品の処理順序の入替を計画する単位となる製品数である計画単位と、前記計画単位の数の製品を処理するためにかかる期間である計画周期とから成る操業計画を作成する操業計画作成手段を、更に備え、
前記所定の生産性とは、所定期間で処理可能な製品数を示し、
前記操業計画作成手段は、
現在の操業について、前記順序入替差のうち最も小さい値の絶対値から、前記順序入替差の度数分布におけるそれぞれの発生回数のうち最も多い発生回数に対する順序入替差を減算した値を、前記計画単位として算出し、
前記計画単位の製品を前記所定の生産性によって処理する期間を、前記計画周期として算出し、
前記順序入替差のうち最も小さい値の絶対値を現在の操業における順序入替在庫量とした場合に、前記順序入替在庫量、又は、前記所定の生産性を所望の値に変更することにより、新たな前記計画単位と前記計画周期とを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の仕掛在庫量算出装置。
過去の複数の操業において前記順序入替在庫算出手段で算出された前記順序入替在庫量それぞれと、各操業における前記後工程の生産性とを対応付けて記憶する実績在庫量記憶手段を、更に備え、
前記所定の生産性と同じ生産性と対応付けて前記実績在庫量記憶手段に記憶されている順序入替在庫量を、現在の操業における順序入替在庫量から減算した値を削減可能在庫量として算出し、
現在の操業における順序入替在庫量を前記削減可能在庫量分削減した値を前記所望の値として、新たな前記計画単位と前記計画周期とを算出する
ことを特徴とする請求項6に記載の仕掛在庫量算出装置。
複数工程によって生産する製品であって、対象となる複数の製品それぞれの、前記複数工程のうちの或る工程である前工程における処理の実施順序と、前記前工程の次の工程である後工程における処理の実施順序とを含む実績情報を記憶する実績情報記憶手段を備え、前記前工程と前記後工程との工程間の適正在庫量を算出する仕掛在庫量算出装置で用いられる在庫仕掛量算出方法であって、
前記複数の製品それぞれの、前記後工程における実施順序の順番から前記前工程における実施順序の順番を減算した値である順序入替差を算出し、算出した順序入替差に基づいて基準順序入替差を求め、前記順序入替差の平均値から前記基準順序入替差を減算した値を、前記前工程と前記後工程との工程間の順序入替在庫量として算出する順序入替在庫算出ステップと、
前記前工程と前記後工程との生産量のばらつきに基づいて、前記前工程と前記後工程との工程間の安全在庫量を算出する安全在庫算出ステップと、
前記前工程から前記後工程に引き渡すための条件に基づいて、前記前工程と前記後工程との工程間のパイプライン在庫量を算出するパイプライン在庫算出ステップと、
前記順序入替在庫量と、前記安全在庫量と、前記パイプライン在庫量とに基づいて、前記前工程と前記後工程との工程間の適正在庫量を算出する適正在庫算出ステップと
を備えることを特徴とする仕掛在庫量算出方法。
複数工程によって生産する製品であって、対象となる複数の製品それぞれの、前記複数工程のうちの或る工程である前工程における処理の実施順序と、前記前工程の次の工程である後工程における処理の実施順序とを含む実績情報を記憶する実績情報記憶手段を備え、前記前工程と前記後工程との工程間の適正在庫量を算出する仕掛在庫量算出装置で用いられる在庫仕掛量算出プログラムであって、
前記複数の製品それぞれの、前記後工程における実施順序の順番から前記前工程における実施順序の順番を減算した値である順序入替差を算出し、算出した順序入替差に基づいて基準順序入替差を求め、前記順序入替差の平均値から前記基準順序入替差を減算した値を、前記前工程と前記後工程との工程間の順序入替在庫量として算出する順序入替在庫算出部と、
前記前工程と前記後工程との生産量のばらつきに基づいて、前記前工程と前記後工程との工程間の安全在庫量を算出する安全在庫算出部と、
前記前工程から前記後工程に引き渡すための条件に基づいて、前記前工程と前記後工程との工程間のパイプライン在庫量を算出するパイプライン在庫算出部と、
前記順序入替在庫量と、前記安全在庫量と、前記パイプライン在庫量とに基づいて、前記前工程と前記後工程との工程間の適正在庫量を算出する適正在庫算出部として、
コンピュータを機能させることを特徴とする仕掛在庫量算出プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態1>
<概要>
複数工程で製品を製造する場合、前工程と後工程との関係が、ロット単位での部品の購入や製品の販売である場合、または、生産工程内において明確なロットを単位として日々の生産がコントロールされているような場合には、ロットサイズを介してコスト(生産性)と仕掛在庫量との関係を取り扱うこと、つまり、ロットサイズを考慮して最適な仕掛在庫量を算出することが可能であり、望ましいと言える。しかし、金属素材産業、あるいは、重工業等の工場のように、基本は一品(あるいは最小製造単位)毎に生産され、明確なロットという概念がない工程の場合には、ロットサイズを考慮して、最適な仕掛在庫量を算出することが適切でない場合がある。このような多品種少量生産の場合には、段取り替えコストや作業効率の観点から、同種の製品を連続して生産した方が、生産性が上がる。このことは、ロットを単位として生産がコントロールされている場合に生産性が上がることと同様である。しかし、多品種少量生産では、ロットサイズというよりは、納期に合わせて生産する必要がある製品品種構成を、どれくらいの期間を単位としてどのような生産順序のパターンの組み合わせで生産するかが、生産性と仕掛在庫量とのバランスを見つける手段となる。これらの生産順序パターンは、工程毎に複雑な分布を示すため、従来文献に見られるような単純な「ロットサイズ」の表現では関係する生産プロセスを表現することができない。そこで、実施形態1の仕掛在庫量算出装置では、従来文献に見られるような仕掛り在庫分類による在庫管理を行うに当たり、「ロットサイズ在庫」の代わりに、生産順序の入れ替えパターンに関わる仕掛在庫である「順序入替在庫」を導入する。このような生産順序の入れ替えパターンを考慮して適正在庫量を算出することで、多品種少量でかつ素材系又は重工業系の工場において、適切な仕掛在庫量を算出することが可能となる。
【0026】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。尚、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。
【0027】
<全体構成>
図1は、仕掛在庫量算出装置1000を備える仕掛在庫量管理システム100の全体構成を説明するための図である。
【0028】
仕掛在庫量管理システム100は、仕掛在庫量算出装置1000、作業端末装置2000A、作業端末装置2000B、ネットワーク101、無線基地局120A、及び、無線基地局120Bを備える。
【0029】
作業端末装置2000は、工程の作業場所に1対1に対応して設置されている。作業端末装置2000Aは、工程1の作業場所に設けられ、作業端末装置2000Bは、工程22の作業場所に、作業端末装置2000Cは、工程3の作業場所に設けられている。尚、
図1には、作業端末装置2000A、B、Cの2つの作業端末装置が記載されているが、より多く設けられていてもよく、無線基地局120A、Bの2つの無線基地局が記載されているが、より多く備えられていてもよい。以下、作業端末装置2000A、B、Cを総称して、作業端末装置2000という。また、無線基地局120A、Bを総称して、無線基地局120という。
【0030】
作業端末装置2000は、ネットワーク101及び無線基地局120を介して、仕掛在庫量算出装置1000と接続される。ネットワーク101は、作業場所間を結ぶネットワークであり、例えば、Ethernet(登録商標)規格に準拠した有線LAN(Local Area Network)であり、無線基地局120は、WiFi(登録商標)規格に準拠した無線LAN基地局である。
【0031】
図1の工程1、工程2、及び、工程3は、複数工程により製造される製品の、各工程を行う作業場所を示す。
図1では、工程1、工程2、工程3の順で作業が行われ、工程1の後工程は、工程2であり、工程2の後工程は、工程3であるものとする。すなわち、この製品の生産工程では、工程1の作業場所で処理された作業対象物は、次に、工程2の作業場所に運ばれて、処理される。尚、
図1では、工程1〜3が記載されているが、より多くの工程があってもよい。
【0032】
工程における作業者は、作業対象の製品への作業(処理)が終了すると、その製品の製品番号、作業着手日時、作業完了日時などを、作業実績として作業端末装置2000に入力する。各作業端末装置2000に入力された各工程での作業実績は、仕掛在庫量算出装置1000に集約される。仕掛在庫量算出装置1000は、各工程の作業端末装置2000から集められた作業実績データを基に、工程間の適正仕掛在庫量を算出する。
【0033】
<仕掛在庫量算出装置1000及び作業端末装置2000の構成>
次に、仕掛在庫量算出装置1000、及び、作業端末装置2000の構成を説明する。
図2は、仕掛在庫量算出装置1000、及び、作業端末装置2000の機能ブロック図である。破線の両端矢印は、ネットワーク101等を介したデータの送受信を示している。
【0034】
まず、作業端末装置2000から説明する。作業端末装置2000は、例えば、マイクロプロセッサおよびその周辺回路等を備えて構成されたパソコン等であり、機能的に、通信部2100、及び、インターフェース部2200を備える。
【0035】
通信部2100は、ネットワーク101、及び、無線基地局120を介して、仕掛在庫量算出装置1000と通信する機能を有する。
【0036】
インターフェース部2200は、いわゆるマンマシンインターフェースであり、表示部、及び、入力部を備える。表示部は、作業指示内容を示した作業指示画面や、入力部から入力された作業実績を出力する機器であり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置である。入力部は、作業が完了した旨などの作業実績として、作業に着手した製品の識別子である製品番号、作業着手日時、作業完了日時を、作業実績として作業端末装置2000に入力する機器、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等である。
【0037】
次に、仕掛在庫量算出装置1000は、例えば、マイクロプロセッサおよびその周辺回路等を備えて構成されたパソコン等であり、機能的に、通信部1100、適正在庫算出部1200、実在在庫算出部1300、インターフェース部1400、工程実績情報記憶部1500、実在在庫情報記憶部1600、及び、適正在庫情報記憶部1700を備える。
【0038】
通信部1100は、ネットワーク101及び無線基地局120を介して、作業端末装置2000と通信する機能を有する。
【0039】
適正在庫算出部1200は、安全在庫算出部1210、パイプライン在庫算出部1220、及び、順序入替在庫算出部1230を備え、工程間の適正な在庫量を算出する。安全在庫算出部1210、パイプライン在庫算出部1220、及び、順序入替在庫算出部1230の機能については、<適正在庫の算出方法>の項で説明する。
【0040】
実在在庫算出部1300は、工程実績情報記憶部1500に記憶されている各作業端末装置2000から取得した作業実績を基に、各工程間に存在している在庫量(実在在庫量)を算出する。実在在庫算出部1300は、予め定められた所定時刻における在庫量、又は、所定時間間隔における在庫量、つまり、在庫量の推移を算出する。具体的には、実在在庫算出部1300は、製品の製品番号、その製品の着手日時、完了日時により、各工程間の製品の移動、つまり、前工程から製品の工程間仕掛在庫への移動、及び、工程間仕掛在庫から後工程への移動を把握し、現在の各工程間の仕掛在庫量を算出する。実在在庫算出部1300は、算出した工程間仕掛在庫量を、実在在庫情報記憶部1600に記憶させる。
【0041】
インターフェース部1400は、いわゆるマンマシンインターフェースであり、表示部、及び、入力部を備える。表示部は、工程実績情報記憶部1500、実在在庫情報記憶部1600、及び、適正在庫情報記憶部1700に記憶されているデータや、入力部から入力されたコマンド等を出力する機器であり、例えば、LCDディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置である。入力部は、ユーザが適正在庫量を算出させるためのコマンド等を仕掛在庫量算出装置1000に入力する機器、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等である。
【0042】
工程実績情報記憶部1500は、通信部1100を介して作業端末装置2000から受信した、各工程での作業実績を記憶しておく。具体的には、各工程における、作業を行った製品の製品番号、着手日時、完了日時等を記憶する。
【0043】
実在在庫情報記憶部1600は、実在在庫算出部1300が算出した、工程間の実在在庫量を記憶する。
【0044】
適正在庫情報記憶部1700は、適正在庫算出部1200が算出した適正在庫量を記憶する。
【0045】
<適正在庫の算出方法>
ここで、適正在庫算出部1200が算出する適正在庫量について説明する。適正在庫算出部1200は、各工程間の仕掛り在庫の適正値を、仕掛在庫の機能による分類である「安全在庫」、「パイプライン在庫」、「順序入替在庫」の各適正値から計算する。実施形態1では、安全在庫量I
sと、パイプライン在庫量I
pと、順序入替在庫量I
rとの合計を、適正在庫量Iとする。安全在庫量I
s、パイプライン在庫量I
p、順序入替在庫量I
rの3つの在庫は、現状の生産プロセスでの運用を続ける限り必要な、いずれかの役割を果たしている仕掛在庫であり、「付加価値在庫」とも呼ばれる。尚、仕掛には、余分在庫量I
uと呼ばれる在庫があり、これは、現場の安心のため、あるいは、正確な所要仕掛在庫量を見積もれないことのリスクのために持つ仕掛在庫であり、適切に管理ができれば持たなくても済む在庫であることから「非付加価値在庫」とも呼ばれる。
【0046】
以下、適正在庫算出部1200が備える安全在庫算出部1210、パイプライン在庫算出部1220、順序入替在庫算出部1230のそれぞれの機能について説明する。
【0047】
安全在庫算出部1210は、前後工程の生産性のバラツキや納期遅れなどを吸収するための「安全在庫」を算出する。一般的に、前後工程のスループット変動幅、設備停止などの非定常状態の発生頻度とその継続時間、トラブル発生時の設備修理等の対応時間、などから総合的に判断され、安全在庫量I
sが算出される。例えば、生産サイクルの違いなどで前工程と後工程とで半日程度の生産タイミングのずれが発生する場合を考える。この場合、更に、非定常的に1日程度の設備点検が実施され、また、一定確率で設備トラブルが発生し、そのトラブル対応に1、2日を要するとする。このような場合、定常的な生産変動の吸収のために半日分程度の安全在庫を持つか、設備点検時を含めて1日分程度の在庫を持つか、トラブル発生時の対応時間を含めて2日分程度の在庫を持つかは、各事象の発生確率等の実績情報に基づき、仕掛り(投資資本)効率と生産効率のどちらを重視するかとの経営方針を踏まえて決められる値となる。安全在庫算出部1210は、このような公知の予め定められた方法に基づいて、各工程間の安全在庫量I
sを算出する。
【0048】
パイプライン在庫算出部1220は、搬送時間等の製品が工程内に拘束される時間に応じて発生する「パイプライン在庫」を算出する。パイプライン在庫量は、各工程間の所要搬送時間や工程完了後の所要冷却時間など、設備条件、プロセス条件から決められる工程間の所要リードタイムに、その時間にその工程間を通過する製品量(スループット)を乗じて求められる。パイプライン在庫算出部1220は、上述のような公知の予め定められた方法に基づいて、各工程間のパイプライン在庫量I
pを算出する。
【0049】
順序入替在庫算出部1230は、各工程間の前後工程の実施順序を定期的(例えば、所定数の製品が完成する毎、一か月毎など)に評価し、その評価結果に基づいて、順序入替在庫量I
rを算出する。この「順序入替在庫」は、従来技術の、ロットサイズに依存して発生する「ロットサイズ在庫(サイクル在庫)」に代わるものである。
【0050】
以下、順序入替在庫算出部1230が、順序入替在庫量I
rを算出する方法を説明する。
【0051】
順序入替在庫算出部1230は、各工程間の前後工程の実施順序から、どの程度の順序の入れ替えが発生したかを算出し、その結果に基づいて、工程間に保持すべき順序入替在庫量を算出する。
【0052】
まず、ある2つの工程に渡って処理された製品であるワークiについて、前工程の中での処理の実施順序を前工程順序a
i、後工程の中での処理の実施順序を後工程順序b
iとする。また、前工程と後工程との間の実施順序の差である順序入替差c
iを以下の式(1)に示すように、
【0055】
計算対象となるワーク(製品)の個数をN個とすると、ワークi、前工程順序a
i、後工程順序b
iは、以下の式(2)に示すように、
【0058】
ここで、仮に、同一のロットに含まれる製品が同時に(同一順序で)処理されるような工程がある場合には、それらの平均順序がワークそれぞれの実施順序とされる。例えば、6番目から10番目までの5つのワークが同時に処理された場合、それら5つのワークそれぞれの実施順序は、全て、6から10の平均値である8とされる。
【0059】
複数まとめて処理されるワークの実施順序を、上記のように設定すると、以下の式(3)に示すように、
【0061】
となる。また、以下の式(4)に示すように、
【0064】
このとき、順序入替差c
iがゼロより大きい(c
i>0)ワークは、前工程の実施順序より後工程の実施順序の方が大きなワークであり、この工程間において別のワークに実施順序をc
i個分追い抜かされたことになる。また、順序入替差c
iがゼロより小さい(c
i<0)ワークは、前工程の実施順序より後工程の実施順序の方が小さなワークであり、この工程間において−c
i個分、別のワークの実施順序を追い抜かしたことになる。
【0065】
一般的に、順序入替差c
iは、
図3のような分布を示す。
図3は、10000ワークを対象とした場合の、順序入替差c
iの頻度を示す度数分布の図である。横軸が、順序入替差c
iを示し、縦軸が、頻度を示す。
【0066】
図3において、順序入替差c
iのうちの最小の値を最小順序入替差c
min(≦0)(基準順序入替差)とする。この最小順序入替差c
minは、あるワークが前工程の実施を完了した瞬間、この工程間には少なくとも、−c
min個分の追い越しが可能な一定の仕掛在庫が存在していることを示す。また、この一定の仕掛在庫は追い越し可能な在庫であるので、搬送等でワークが拘束されている「パイプライン在庫」ではなく、また、「安全在庫」でもない。尚、この「安全在庫」は、その他用途に転用されないよう管理されているものとする。
【0067】
この工程間に存在する前記一定の仕掛在庫(ワーク)は、少なくとも、「パイプライン在庫」も「安全在庫」も侵食することなく、最小順序入替差c
minの地点(値)までは順序を追い越すことが可能であることになる。
【0068】
また、全ワークの順序入替差c
iを平均すると、最小順序入替差c
minの地点(値)を原点として、相対的に、以下の式(5)に示すように、
【0070】
最小順序入替差c
min個分の順序に相当する間、つまり、最小順序入替差c
min個分のワークが処理される時間の間、前記一定の仕掛在庫は、この工程間に存在していることになる。
【0071】
従って、前記一定の仕掛在庫を、順序入替えのために工程間の保持されている在庫、すなわち、順序入替在庫と見なすことができる。順序入替在庫量I
rは、以下の式(6)を用いて求めることができる。
【0073】
つまり、順序入替差c
iの平均値c
aveから、最小順序入替差c
minを減算した値が、以下の式で示すように、順序入替在庫量I
rとなる。
I
r=c
ave − c
min
尚、工程順序a
i、b
iが、1から開始されておらず、以下の式(7)で示すような値a´
i、b´
iから開始される場合であっても、上述したように、順序入替在庫量I
rを求めることが可能である。n
a、n
bは、ゼロ以上の整数である。
【0075】
この場合、順序入替差c´
i、及び、最小の値を最小順序入替差c´
minは、以下の式(8)を用いて求めることができる。
【0077】
そして、順序入替在庫量I
rは、以下の式(9)を用いて求めることができる。
【0079】
従って、順序入替差c´
iと最小順序入替差c´
minによって、順序入替在庫量I
rを求めればよい。つまり、順序入替差c´
iの平均値から、最小順序入替差c´
minを減算した値が、順序入替在庫量I
rである。
【0080】
適正在庫算出部1200は、上述したように、安全在庫算出部1210、パイプライン在庫算出部1220、順序入替在庫算出部1230それぞれが、安全在庫量I
s、パイプライン在庫量I
p、順序入替在庫量I
rを算出すると、以下の式(10)を用いて、適正在庫量Iを算出する。
【0082】
つまり、適正在庫量は、「安全在庫」、「パイプライン在庫」、「順序入替在庫」の各在庫量の単純な合計である。
【0083】
尚、「安全在庫」を「順序入替在庫」と兼ねる場合には、以下の式(11)を用いて、適正在庫量Iを求める。関数Max(x、y、・・・)は、(x、y、・・・)のうち最大の値を示す。
【0085】
「安全在庫」を「順序入替在庫」と兼ねる場合とは、本来、安全在庫として確保してある仕掛在庫の製品も含めた製品内で順序入替えを行い、また、生産性のバラツキなどが生じた際も、生産順序の入替えを含めて調整を行う、というような運用を行う場合である。これは、安全在庫を別途確保することが困難な生産プロセスの場合などで、通常通りに製品を工程に流しながら、例えば3日分の製品をこの工程の前に安全在庫として常時バッファしておく、というような運用を行うような場合である。
【0086】
この場合、式(11)に示すように、安全在庫量I
s、及び、順序入替在庫量I
rとして必要な在庫量は、安全在庫量I
sと順序入替在庫量I
rのうちの最大値となる。
【0087】
<動作>
以下、仕掛在庫量算出装置1000の動作について、
図4〜
図6を用いて説明する。
【0088】
図6は、仕掛在庫量算出装置1000が行う適正在庫量算出処理のフローチャートである。
図4、5は、適正在庫量算出処理において、順序入替在庫算出部1230が順序入替在庫量を算出する場合に作成するテーブルの構成及び内容の例である。
図4は、前後工程順テーブルの構成及び内容の例を示し、
図5は、順序入替差テーブルの構成及び内容の例を示す。
【0089】
以下、
図1に示す工程1と工程2の工程間における適正在庫量を算出する場合を説明する。
【0090】
ユーザが仕掛在庫量算出装置1000に適正在庫量算出処理を行わせる前に、仕掛在庫量算出装置1000の工程実績情報記憶部1500には、工程1及び工程2において処理された製品の製品番号、着手日時、完了日時等の実績情報が記憶されているものとする。実績情報は、評価対象期間におけるデータ(適正在庫量を算出するのに必要な量のデータ)が記憶されているものとする。実績情報は、工程1及び工程2の作業者によって、作業端末装置2000のインターフェース部2200を介して入力され、通信部2100によって仕掛在庫量算出装置1000に送信される。送信された実績情報は、通信部1100を介して、仕掛在庫量算出装置1000の工程実績情報記憶部1500に記憶される。
【0091】
また、実在在庫算出部1300によって、予め定められた所定時刻における在庫量、又は、所定時間間隔における在庫量、つまり、在庫量の推移が算出され、算出された実在の工程間仕掛在庫量(実在在庫量)が、実在在庫情報記憶部1600に記憶されているものとする。
【0092】
まず、ユーザは、インターフェース部1400を操作して、適正在庫量算出処理の開始を指示するコマンドを入力する。インターフェース部1400を介して、適正在庫量の算出開始コマンドが入力されたことを検知した仕掛在庫量算出装置1000は、適正在庫算出部1200に、適正在庫量の算出を指示する。
【0093】
指示を受けた適正在庫算出部1200は、安全在庫量を算出するよう安全在庫算出部1210に依頼する。
【0094】
依頼を受けた安全在庫算出部1210は、工程1と工程2の工程間の安全在庫量I
sを算出する(ステップS10)。実施形態1では、工程1、工程2は共に、1日に4個のワーク(製品)を処理し、通常はほぼ安定的、かつ、均一的に生産を実施できるものとする。但し、工程1は、稼働状況に合わせて年間数回程度の不定期の整備が必要になり、整備にかかる最大日数は3日間とする。工程1、工程2の通常の生産量の変動はそれ以内(3日間で処理できるワーク量)であるとする。そして、工程1と工程2の工程間では、最大3日間の整備休止に対応する仕掛在庫を安全在庫として保有すればよいものとする。従って、安全在庫算出部1210は、安全在庫量I
sとして、3日分の生産量すなわち12個の仕掛在庫量を算出する。
【0095】
次に、適正在庫算出部1200は、パイプライン在庫量を算出するようパイプライン在庫算出部1220に依頼する。
【0096】
依頼を受けたパイプライン在庫算出部1220は、パイプライン在庫量I
pを算出する(ステップS11)。実施形態1では、工程1と工程2の間の搬送物流には、誤差程度の時間しかかからないが、工程1の完了後に1日間の放置時間が必要となるとする。つまり、パイプライン在庫量I
pとしては、1日分の生産量すなわち4個の仕掛り在庫を持てば良いことになる。従って、パイプライン在庫算出部1220は、パイプライン在庫量I
pとして、4個の仕掛在庫量を算出する。
【0097】
次に、適正在庫算出部1200は、順序入替在庫量を算出するよう順序入替在庫算出部1230に依頼する。
【0098】
依頼を受けた順序入替在庫算出部1230は、順序入替在庫量I
rを算出する(ステップS12)。順序入替在庫算出部1230は、工程実績情報記憶部1500から、工程1及び工程2の評価対象期間の実績情報を読み出して、実績情報を基に順序入替在庫量I
rを算出する。順序入替在庫算出部1230は、工程1の実施順序(前工程実施順序)、及び、工程2の実施順序(後工程実施順序)から、評価対象期間における順序入替のために平均的に必要とされた仕掛在庫量を、順序入替在庫量I
rとして求める。
【0099】
まず、順序入替在庫算出部1230は、実績情報に含まれる、工程で処理された製品の製品番号、着手日時、完了日時から、
図4に示すような前後工程順テーブル1231を作成する。つまり、評価対象期間において工程1及び工程2で処理した製品の実施順序を求め、テーブルにまとめる。前後工程順テーブル1231は、「製品番号」項目、「前工程順序」項目、「後工程順序」項目の3つの項目を備え、製品ごとに1レコードが作成される。尚、前後工程順テーブル1231は、工程間ごとに作成される。「製品番号」項目は、その工程で処理された製品に付けられた個別番号(識別番号)を示し、「前工程順序」項目は、「製品番号」項目で示された製品の工程1における実施順序を示し、「後工程順序」項目は、「製品番号」項目で示された製品の工程2における実施順序を示す。例えば、「製品番号」項目が「201」レコードには、「前工程順序」項目として「18」が設定され、「後工程順序」項目として「14」が設定されているので、「製品番号」項目が「201」の製品は、工程1では18番目に処理され、工程2では14番目に処理されたことになる。
【0100】
尚、前後工程順テーブル1231における実施順序は、前の評価対象期間からの連番となっているため、最初に処理された製品の実施順序は「1」ではなく、また、品質不良などによる欠番もあるため、前後の工程で同じ番号が在るとは限らない。
【0101】
以下、「製品番号」として設定されている個別番号を、単に、製品番号「201」等というものとする。また、「前工程順序」として設定されている実施順序を、単に、前工程順序「18」等と、「後工程順序」として設定されている実施順序を、単に、後工程順序「14」等というものとする。
【0102】
「後工程順序」項目として設定されている「−」は、そのレコードの「製品番号」項目として設定されている個別番号で示される製品は、工程2では処理されていないことを示す。つまり、前工程が実施されたものの、何らかの理由で後工程の実施が延期、あるいは、中止された製品である。前後工程順テーブル1231では、製品番号「203」及び「213」の製品が該当する。
【0103】
前後工程順テーブル1231を作成した順序入替在庫算出部1230は、次に、前後工程順テーブル1231から順序入替差テーブル1232を作成する。順序入替差テーブル1232を、
図5に示す。
【0104】
順序入替差テーブル1232は、「製品番号」項目、「前工程順序」項目、「後工程順序」項目、「順序入替差」項目の4つの項目を備え、製品ごとに1レコードが作成される。「製品番号」項目、「前工程順序」項目、「後工程順序」項目は、前後工程順テーブル1231と同様に、「製品番号」項目は、その工程で処理された製品に付けられた個別番号(識別番号)を示し、「前工程順序」項目は、「製品番号」項目で示された製品の工程1における実施順序を示し、「後工程順序」項目は、「製品番号」項目で示された製品の工程2における実施順序を示す。「順序入替差」項目は、上記式(1)を用いて算出した順序入替差C
iを示す。具体的には、「後工程順序」項目として設定されている実施順序b
iから、「前工程順序」項目として設定されている実施順序a
iを引いた値を示す。
【0105】
順序入替在庫算出部1230は、前後工程順テーブル1231から工程1及び工程2において処理がなされなかった製品(製品番号「203」及び「213」の製品)を除いた上で、欠番がないように実施順序の番号を振り直して、順序入替差テーブル1232を作成する。
【0106】
具体的には、順序入替差テーブル1232に示すように、製品番号「203」及び「213」の製品は、「前工程順序」項目及び「後工程順序」項目として「−」が設定され、工程1及び工程2において処理がなされなかった製品が除かれる。そして、順序入替在庫算出部1230は、実施順序の番号を振り直す。例えば、製品番号「204」の前工程順序には「20」が設定されている。前後工程順テーブル1231(
図4参照)では、製品番号「203」の前工程順序には「20」が設定され、製品番号「204」の前工程順序には「21」が設定されている。つまり、製品番号「203」の製品が除かれ、番号が振り直されたことで、製品番号「204」の前工程順序が1つ繰り上がって「21」から「20」に振り直されたことになる。
【0107】
順序入替差テーブル1232において、順序入替差c
iの平均値は−5であり、順序入替差c
iの最小値は−9である。順序入替在庫算出部1230は、上記式(9)を用いて、順序入替在庫量I
rを算出する。具体的には、順序入替差c
iの平均値「−5」から、最小順序入替差c
min「−9」が差し引かれ、「+4」が求まる。つまり、4個が、工程1と工程2の工程間の評価対象期間で必要と想定される順序入替在庫量I
rとなる。
【0108】
順序入替在庫算出部1230が順序入替在庫量I
rを算出すると、次に、適正在庫算出部1200は、安全在庫算出部1210が算出した安全在庫量I
s、パイプライン在庫算出部1220が算出したパイプライン在庫量I
p、順序入替在庫算出部1230が算出した順序入替在庫量I
rから、上記式(10)を用いて、適正在庫量Iを算出し、適正在庫情報記憶部1700に記憶させる(ステップS13)。
【0109】
具体的には、仕掛在庫量算出装置1000が算出する、工程1と工程2の工程間で必要な適正在庫量Iは、
適正在庫量I=安全在庫量I
s+パイプライン在庫量I
p+順序入替在庫量I
r
適正在庫量I=12個+4個+4個=20個
ということになる。
【0110】
また、仮に、安全在庫と順序入替在庫を兼用する運用とするのであれば、上記式(11)を用いて、適正在庫量Iを算出する。安全在庫量I
sが12個、順序入替在庫量I
rが4個であり、
安全在庫量I
s>順序入替在庫量I
r
であるので、必要な適正在庫量Iは、
適正在庫量I=安全在庫量I
s+パイプライン在庫量I
p
適正在庫量I=12個+4個=16個
ということになる。
【0111】
仕掛在庫量算出装置1000は、実在在庫情報記憶部1600に記憶してある実績在庫量と、適正在庫情報記憶部1700に記憶してある適正在庫量Iとを比較した上で、その大小並びに差異の量等を、インターフェース部1400に表示する。
【0112】
ユーザは、インターフェース部1400に表示された実績在庫量と適正在庫量との比較を見た上で、実績在庫量が適正在庫量よりも多い場合には、工程1の生産を減産させる、あるいは、工程2の生産を残業対応等で増産させる、などの対応により、実績在庫量を減少させるという対策を講じる。また、実績在庫量が適正在庫量よりも少ない場合は、工程1の生産を残業対応などで増産させるなどの対応により、実績在庫量を増加させることで、工程間の仕掛在庫の量を適正に保つことが可能となる。
【0113】
「順序入替在庫」は、生産計画の立案サイクルや、計画と実績との対応精度などと密接に関わっている。そのため、適正在庫量を削減するために、日毎計画の導入や週間計画の事前固定、などの改善取り組みがなされる場合には、仕掛在庫量算出装置1000が算出する順序入替在庫量I
rの変動傾向を評価することにより、上記取り組みの進捗を評価することも可能である。
<変形例>
実施形態1では、順序入替在庫算出部1230は、順序入替差c
iの最小値を最小順序入替差c
minとして、順序入替在庫量I
rを算出することとしている。変形例の順序入替在庫算出部1230は、順序入替差c
iの発生頻度を考慮して、最小順序入替差c
min(基準順序入替差)を決定する。
【0114】
順序入替差c
iの最小値を最小順序入替差c
minとした場合、その発生頻度が少ない場合には、順序入替在庫量I
rとして、過剰な仕掛在庫量を算出する場合が発生し得る。
【0115】
そこで、変形例では、度数分布の最小値ではなく、最も多い発生回数である最大回数に対する発生回数の割合が、所定の閾値を超える順序入替差c
iのうち、最も小さな値である順序入替差c
iを、最小順序入替差c
minとして用いて順序入替在庫量I
rを算出する。
【0116】
以下、変形例の順序入替在庫量I
rの求め方について、
図7〜
図9を用いて説明する。具体的には、
図6のフローチャートにおけるステップS12の「順序入替在庫量の算出」処理(順序入替在庫算出部1230が行う処理)が、実施形態1とは異なることになる。
【0117】
図7に、変形例の「順序入替在庫量の算出」処理のフローチャートを示す。
【0118】
変形例の順序入替在庫算出部1230は、工程実績情報記憶部1500から、工程1及び工程2の評価対象期間の実績情報(算出対象の工程実績)を読み出して、実施形態1での処理と同様に、前後工程順テーブル1231(
図4参照)を作成し、作成した前後工程順テーブル1231から順序入替差テーブル1232(
図5参照)を作成する(ステップS100)。尚、変形例での評価対象期間の実績情報は、実施形態1で使用した実績情報とは異なるものとする。
【0119】
次に、順序入替在庫算出部1230は、順序入替差テーブル1232を基に、
図3の度数分布と同様に、順序入替差c
iの度数分布を求める(
図8参照)。
図8の度数分布は、横軸が、順序入替差c
iを示し、縦軸が、発生回数(度数、頻度)を示す。また、1つの棒グラフは、2つの順序入替差c
iの発生回数を加算した値を示している。例えば、横軸の「−36」に対応する棒グラフは、順序入替差c
iが「−36」の発生回数と「−35」の発生回数とを加算した発生回数を示している。つまり、順序入替差c
iは2つずつに区切られ、度数分布が作成されている。
【0120】
そして、順序入替在庫算出部1230は、作成した度数分布を基に、最頻値割合テーブル1233を作成する(ステップS110)。
【0121】
最頻値割合テーブル1233は、「データ区間」項目、「頻度」項目、「最頻値に対する割合」項目の3つの項目を備え、データ区間ごとに1レコードが作成される。「データ区間」項目は、
図8の度数分布の横軸の順序入替差c
iの値を示し、「頻度」項目は、「データ区間」項目で示された縦軸の順序入替差c
iの発生回数を示し、「最頻値に対する割合」項目は、「データ区間」項目で示された順序入替差c
iの最頻値に対する割合(%)を示す。
【0122】
「最頻値に対する割合」項目の値は、各レコードの「頻度」項目に設定された値が、「頻度」項目に設定された値の最大値で除算されて求められる。
図9において、「頻度」項目に設定された値の最大値は、「データ区間」項目が「−4」の「164」である。従って、各レコードの「最頻値に対する割合」項目として、「頻度」項目の値を「164」で除算して求めたパーセントが設定される。
【0123】
最頻値割合テーブル1233を作成した順序入替在庫算出部1230は、最頻値割合テーブル1233の「最頻値に対する割合」項目に設定された値が、予め定められた所定割合を超えるレコードを抽出し、それらのレコードの中の「データ区間」項目として設定されている値のうち最も小さい値を、最小順序入替差c
minとする。
【0124】
例えば、予め定められた所定割合を「割合が最頻値の10%を超えるもの」と設定したとする。最頻値割合テーブル1233(
図9参照)では、「データ区間」項目が「−36」では「最頻値に対する割合」項目が「1.2%」であり、「データ区間」項目が「−34」では「最頻値に対する割合」項目が「4.3%」であるように、「データ区間」項目の値が小さいうちは、最頻値に対する割合も小さい。しかし、最頻値に対する割合は、「データ区間」項目の値が大きくなるにつれて徐々に「頻度」項目の値が増して、「データ区間」項目が「−24」では「最頻値に対する割合」項目が「15.2%」と、初めて10%を超える結果となっている。順序入替在庫算出部1230は、「データ区間」項目が「−24」のレコードを選択し、「データ区間」項目として設定されている値「−24」を最小順序入替差c
minとする。
【0125】
次に、順序入替在庫算出部1230は、求めた最小順序入替差c
minと、所定の期間内の順序入替差c
iの平均値c
aveから、順序入替在庫量I
rを、以下の式を用いて算出する。
I
r=c
ave − c
min
c
aveがゼロならば、最小順序入替差c
min「−24」が順序入替在庫量I
rとなる。
【0126】
このように、順序入換差の度数分布において、最頻値(
図8では、「164」)に対する割合が一定の閾値(例えば、「10%」)を超える順序入替差c
iのうち、最も小さな値(
図8では「−24」)を最小順序入替差c
minとして用いることによって、頻度の少ない順序入替えの影響を除去して、適切な順序入替在庫量I
rを算出することができる。結果として、適切な適正在庫量Iを算出することが可能となり、過剰な仕掛在庫を工程間に持つことが無くなる。
【0127】
これまで熟練者の経験から決定され、担当者が変わる度にばらついていた設備間の仕掛在庫量について、上述のように、仕掛在庫量算出装置1000では、属人性を排除したデータ解析による仕掛在庫量の決定がなされることになる。つまり、定量的な仕掛在庫量の算出が可能となり、現実の作業現場において発生している余分仕掛を対象とし仕掛り削減活動が可能となり、キャッシュフロー創出に寄与することとなる。
<実施形態2>
実施形態1の仕掛在庫量管理システム100では、生産順序の入れ替えパターンに関わる仕掛在庫である順序入替在庫量I
rを算出して用いることで、多品種少量でかつ素材系又は重工業系の工場における適切な仕掛在庫量である適正在庫量Iを算出している。
【0128】
実施形態2の仕掛在庫量管理システム300では、実施形態1で算出した順序入替在庫量I
rについて、削減可能な在庫量(以下、「削減可能量」という。)を過去の実績に基づいて推定し、順序入替在庫量I
rを削減するための操業計画を作成する。ここで、操業計画とは、「計画単位」と「計画周期」とをいうものとする。「計画単位」とは、或る工程において、ワークの処理順序の入替を計画する単位となるワーク数(単位個数)をいい、「計画周期」とは、計画単位内のワークを処理するためにかかる最大日数をいう。尚、「計画単位」は、ワークの塊を示すが、部品の購入等で用いる単位であるロットとは異なる概念であり、順序入替在庫量I
rを削減するために最適な順序入替を計画する単位をいう。
【0129】
<全体構成>
図10は、実施形態2の仕掛在庫量管理システム300の全体構成を説明するための図である。
【0130】
仕掛在庫量管理システム300は、仕掛在庫量算出装置1000、操業状況評価装置3000、作業端末装置2000A、作業端末装置2000B、ネットワーク101、無線基地局120A、及び、無線基地局120Bを備える。
【0131】
仕掛在庫量算出装置1000、作業端末装置2000A、作業端末装置2000B、ネットワーク101、無線基地局120A、及び、無線基地局120Bは、実施形態1の仕掛在庫量管理システム100における構成とほぼ同じである。つまり、実施形態2の仕掛在庫量管理システム300は、実施形態1の仕掛在庫量管理システム100に、操業状況評価装置3000が追加されたシステムである。従って、以下、操業状況評価装置3000を中心に説明する。
【0132】
作業端末装置2000は、工程の作業場所に1対1に対応して設置され、ネットワーク101及び無線基地局120を介して、仕掛在庫量算出装置1000、及び、操業状況評価装置3000と接続される。
【0133】
工程における作業者は、作業対象の製品への作業(処理)が終了すると、その製品の製品番号、作業着手日時、作業完了日時などを、作業実績として作業端末装置2000に入力する。各作業端末装置2000に入力された各工程での作業実績は、仕掛在庫量算出装置1000、及び、操業状況評価装置3000に集約される。
【0134】
仕掛在庫量算出装置1000は、実施形態1で説明したように、各工程の作業端末装置2000から集められた作業実績データを基に、工程間の安全在庫量I
s、パイプライン在庫量I
p、順序入替在庫量I
rを算出し、これらから適正在庫量Iを求める。また、更に、仕掛在庫量算出装置1000は、ネットワーク101及び無線基地局120を介して、算出した順序入替在庫量I
rを操業状況評価装置3000に送信する。
【0135】
操業状況評価装置3000は、各工程の作業端末装置2000から集められた作業実績データを基に、評価対象の(現在の)操業の状況を評価し、仕掛在庫量算出装置1000から受信した順序入替在庫量I
rの削減可能量γを推定し、操業計画、つまり、計画単位P、及び、計画周期Tの案を作成し、表示する。
【0136】
<操業状況評価装置3000、仕掛在庫量算出装置1000及び作業端末装置2000の構成>
次に、操業状況評価装置3000、仕掛在庫量算出装置1000、及び、作業端末装置2000の構成を説明する。
図11は、実施形態2の操業状況評価装置3000、仕掛在庫量算出装置1000、及び、作業端末装置2000の機能ブロック図である。
【0137】
作業端末装置2000は、実施形態1の作業端末装置2000と同様の構成を備えるが、実施形態2の作業端末装置2000の通信部2100は、インターフェース部2200を介して作業者から入力された作業実績を、仕掛在庫量算出装置1000だけではなく、更に、操業状況評価装置3000にも送信する点が異なる。
【0138】
仕掛在庫量算出装置1000は、実施形態1の仕掛在庫量算出装置1000と同様の構成を備えるが、以下の点が異なる。尚、
図11では、実施形態2において必要な機能部のみを記載している。
【0139】
実施形態2の仕掛在庫量算出装置1000の通信部1100は、ネットワーク101及び無線基地局120を介して、作業端末装置2000だけでなく操業状況評価装置3000とも通信する機能を有し、順序入替在庫算出部1230が算出した順序入替在庫量I
rを操業状況評価装置3000に送信する点が、実施形態1の通信部1100と異なる。
【0140】
次に、操業状況評価装置3000は、例えば、マイクロプロセッサおよびその周辺回路等を備えて構成されたパソコン等であり、機能的に、通信部3100、生産性評価部3200、実績在庫量グラフ作成部3300、インターフェース部3400、工程実績情報記憶部3500、順序入替在庫量情報記憶部3600、実績在庫量グラフ記憶部3700、及び、操業計画情報記憶部3800を備える。
【0141】
通信部3100は、ネットワーク101及び無線基地局120を介して、作業端末装置2000、及び、仕掛在庫量算出装置1000と通信する機能を有する。
【0142】
工程実績情報記憶部3500は、通信部3100を介して作業端末装置2000から受信した、各工程での作業実績を記憶しておく。具体的には、各工程における、作業を行った製品の製品番号、着手日時、完了日時等を記憶する。また、工程実績情報記憶部3500には、各工程の生産性(所定期間で処理可能なワークの数)等の情報が、予め記憶されているものとする。
【0143】
順序入替在庫量情報記憶部3600は、通信部3100を介して仕掛在庫量算出装置1000から受信した順序入替在庫量I
rを記憶しておく。
【0144】
尚、工程実績情報記憶部3500と順序入替在庫量情報記憶部3600とは、過去に行った操業に関する複数の操業データを記憶しているものとする。また、工程実績情報記憶部3500に記憶されている作業実績と、順序入替在庫量情報記憶部3600に記憶されている順序入替在庫量I
rとは、対応付けられているものとする。例えば、或る作業実績と、その作業実績の操業における順序入替在庫量I
rとが、同一の識別番号に対応付けられて記憶される。
【0145】
実績在庫量グラフ作成部3300は、工程実績情報記憶部3500から、各工程の1日あたりのワークの処理個数(生産性)を読み出す。そして、実績在庫量グラフ作成部3300は、読み出した処理個数と順序入替在庫量情報記憶部3600に記憶されている順序入替在庫量I
rとから、工程ごとに実績在庫量グラフを作成し、実績在庫量グラフ記憶部3700に記憶させる。
【0146】
図13に、或る工程の実績在庫量グラフの例を示す。実績在庫量グラフの横軸が、順序入替在庫量I
rを示し、縦軸が、1日当たりの処理個数(生産性)を示す。
図13では、処理個数は、順序入替在庫量I
rに比例して増加している。
【0147】
実績在庫量グラフ記憶部3700は、実績在庫量グラフ作成部3300が作成した実績在庫量グラフを記憶しておく。実施形態では、実績在庫量グラフ記憶部3700は、
図13に示す実績在庫量グラフとなるような、処理個数と順序入替在庫量I
rとを関連付けた関数を記憶している。尚、実績在庫量グラフ記憶部3700は、処理個数と順序入替在庫量I
rとを対応付けたテーブルを記憶しておいてもよい。
【0148】
生産性評価部3200は、計画単位算出部3210、計画周期算出部3220、及び、操業計画作成部3230を備え、順序入替在庫量I
rを削減する等を目的とする操業計画を作成し、操業計画情報記憶部3800に記憶させる。
【0149】
操業計画情報記憶部3800は、生産性評価部3200が作成した操業計画を記憶する。
【0150】
計画単位算出部3210は、現在の操業における計画単位Pを算出し、計画周期算出部3220は、現在の操業における計画周期Tを算出する。具体的な算出方法は、<操業計画の作成方法>の項で説明する。
【0151】
操業計画作成部3230は、実績在庫量グラフ(
図13参照)を参照し、現在の操業における順序入替在庫量I
rからの削減可能量を算出する。そして、操業計画作成部3230は、現在の操業における計画単位P又は計画周期Tを、目的に応じて変更した操業計画の案を作成する。目的とは、例えば、1日の処理ワーク数Wを維持しながら順序入替在庫量I
rを削減可能量分削減する、順序入替在庫量I
rと計画単位Pとを維持しながら生産性を上げる等である。具体的な操業計画案の作成方法は、<動作>の項で説明する。
【0152】
インターフェース部3400は、いわゆるマンマシンインターフェースであり、表示部、及び、入力部を備える。表示部は、工程実績情報記憶部3500等に記憶されているデータ、操業計画情報記憶部3800に記憶されている操業計画、入力部から入力されたコマンド等を出力する機器であり、例えば、LCDディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置である。入力部は、ユーザが操業計画を算出させるためのコマンド等を操業状況評価装置3000に入力する機器、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等である。
【0153】
<操業計画の作成方法>
生産性評価部3200が行う操業計画の算出方法について説明する。操業計画とは、上述のように、計画単位Pと計画周期Tとをいうものとし、計画単位Pとは、或る工程において、ワークの処理順序の入替を計画する単位となるワーク数(単位個数)をいい、計画周期Tとは、計画単位内のワークを処理するためにかかる最大日数をいう。
【0154】
図12に、順序入替差c
iの度数分布を示す。
図12の度数分布は、所定数のワークを対象とした場合の、順序入替差c
iの頻度を示す度数分布の図である。横軸が、順序入替差c
iを示し、縦軸が、割合(%、頻度)を示す。
【0155】
図12に示すような度数分布において、順序入替差c
iの割合が最大となる順序入替差c
iの値を、最大順序入替差c
pというものとする(c
p≦0)。評価対象の操業において、評価対象期間中に長期的に滞留したワーク(順序入替差c
iが極端に大きい値となったワーク)が、−c
pに準ずる個数(最大順序入替差c
pの絶対値の個数)分存在したと考えられる。つまり、−c
pに準ずる個数のワークは、それらが処理されて実績になるまで、在庫として長期に保持されていたことになる。
【0156】
例えば、或る工程に入ってくるワークのほとんどが3つのワークを追い越して処理される場合には、3つワークの在庫が常に存在することになる。つまり、順序入替差c
i=−3のワークの割合は100%近いので、最大順序入替差c
p=−3であり、長期滞留の在庫は−c
p=3個となる。
【0157】
また、上記式(5)、(6)より、ある工程の順序入替在庫量I
rは、
I
r=|c
min|
となる。
【0158】
これらを踏まえると、或る工程では、順序入替在庫量I
rのうち、長期滞留の在庫は−c
pであるので、この工程においては、|c
min|−|c
p|個のワーク間で順序入替を行って操業していると考えられる。
【0159】
従って、ワークの処理順序の入替を計画する単位となるワーク数(単位個数)である「計画単位」をPとすると、計画単位Pは、以下の式(12)で示されることになる。
【0161】
尚、計画単位Pを入力値としたシミュレーションを行い、
図12に示すような度数分布を作成しケーススタディを行ったところ、入力値(計画単位P)と|c
min|−|c
p|の値とがほぼ一致した。従って、計画単位Pと|c
min|−|c
p|とは、同値であるといえる。
【0162】
また、計画単位内のワークを処理するためにかかる最大日数である「計画周期」をTとすると、計画周期Tは、以下の式(13)で示されることになる。Wは、その工程の1日の処理ワーク数W(単位:個)であり、予め定められている。
【0164】
尚、最大順序入替差c
pは、割合のばらつきを吸収するため、連続した3つの順序入替差c
iの割合の平均値が最大となる範囲の中央値とする。例えば、
図12の度数分布の場合は、−11、−10、−9の3つの順序入替差c
iの割合の平均値が最大となるので、最大順序入替差c
p=−10となる。
【0165】
上記式(12)、及び、式(13)に示すように、計画単位Pや計画周期Tを調整することにより、順序入替在庫量I
rや最大順序入替差c
p(長期滞留在庫量)を調整することができることになる。
【0166】
例えば、最大順序入替差c
p(長期滞留在庫量)を一定にした操業が行われている場合に、計画立案者は、計画単位P及び計画周期Tを調整することにより、順序入替在庫量I
rを調整することが可能となる。具体的には、計画単位Pを縮小する操業が行われた場合には、最大順序入替差c
pは変更されないので、|c
min|、つまり、順序入替在庫量I
rが削減された操業が行われることになる。また、更に、1日の処理ワーク数Wが一定とされた場合には、計画周期Tが、計画単位Pの縮小に応じて短縮されることになる。
【0167】
生産性評価部3200が備える計画単位算出部3210は、上述の式(12)を用いて、現在の操業における計画単位Pを算出し、計画周期算出部3220は、式(13)を用いて、現在の操業における計画周期Tを算出する。
【0168】
また、操業計画作成部3230は、上述の式(12)又は式(13)を用いて、目的に応じて計画単位Pや計画周期Tを変更した操業計画の案を作成する。
【0169】
<動作>
以下、操業状況評価装置3000の動作について、
図13〜
図15を用いて説明する。
【0170】
図13は、実績在庫量グラフの例を示す図であり、
図14は、順序入替差の度数分布の例を示す図であり、
図15は、操業状況評価装置3000が行う操業評価処理のフローチャートである。
【0171】
以下、
図10に示す工程1と工程2の工程間における順序入替在庫量I
rを削減する操業計画案を作成する場合を説明する。
【0172】
ユーザが操業状況評価装置3000に操業評価処理を行わせる前に、評価対象の操業についての、工程1及び工程2において処理された製品の製品番号、着手日時、完了日時等の実績情報、及び、各工程の1日の処理ワーク数W(生産性)が、操業状況評価装置3000の工程実績情報記憶部3500に記憶され、また、評価対象の操業に対して仕掛在庫量算出装置1000が算出した順序入替在庫量I
rが、順序入替在庫量情報記憶部3600に記憶されているものとする。更に、工程実績情報記憶部3500には、過去の操業についての実績情報が、複数回分記憶されており、また、順序入替在庫量情報記憶部3600には、その複数回の過去の操業に対して仕掛在庫量算出装置1000が算出した順序入替在庫量I
rが記憶されているものとする。
【0173】
実績情報等は、工程1及び工程2の作業者によって、作業端末装置2000のインターフェース部2200を介して入力され、通信部2100によって仕掛在庫量算出装置1000及び操業状況評価装置3000に送信される。実績情報等を受信した操業状況評価装置3000は、受信した実績情報等を識別番号(以下、「操業識別番号」という)と対応付けて、工程実績情報記憶部3500に記憶させる。また、実績情報等を受信した仕掛在庫量算出装置1000は、受信した実績情報を用いて順序入替在庫算出部1230が算出した順序入替在庫量I
rを、その実績情報の操業識別番号とともに操業状況評価装置3000に送信する。順序入替在庫量I
rを受信した操業状況評価装置3000は、受信した順序入替在庫量I
rを操業識別番号と対応付けて、順序入替在庫量情報記憶部3600に記憶する。
【0174】
まず、ユーザは、インターフェース部3400を操作して、実績在庫量グラフの作成の開始を指示するコマンドを入力する。インターフェース部4400を介して、実績在庫量グラフ作成の開始コマンドが入力されたことを検知した操業状況評価装置3000は、実績在庫量グラフ作成部3300に、実績在庫量グラフの作成を指示する。
【0175】
指示を受けた実績在庫量グラフ作成部3300は、工程実績情報記憶部3500から、過去の各操業における工程2の1日あたりのワークの処理個数(生産性)を読み出す。また、実績在庫量グラフ作成部3300は、順序入替在庫量情報記憶部3600から、各操業の工程2の順序入替在庫量I
rを読み出す。そして、実績在庫量グラフ作成部3300は、読み出した1日の処理ワーク数Wと順序入替在庫量I
rとから、実績在庫量グラフ(
図13参照)のような、処理ワーク数Wと順序入替在庫量I
rとを関連付けた関数を作成し、実績在庫量グラフ記憶部3700に記憶させる。
【0176】
実績在庫量グラフを表す関数を記憶させた実績在庫量グラフ作成部3300は、処理が終了した旨をインターフェース部3400に表示させる。尚、ユーザは、既に実績在庫量グラフ記憶部3700に関数が記憶されている場合には、実績在庫量グラフの作成は行われなくてもよい。
【0177】
次に、ユーザは、インターフェース部3400を操作して、評価対象の操業識別番号とともに操業評価処理の開始を指示するコマンドを入力する。インターフェース部4400を介して、操業評価処理の開始コマンドが入力されたことを検知した操業状況評価装置3000は、生産性評価部3200に、評価対象の操業識別番号を渡して、評価処理を指示する。尚、評価対象の操業識別番号は、最新の操業の識別番号とする等と予め定められていてもよい。
【0178】
指示を受けた生産性評価部3200は、順序入替在庫量情報記憶部3600から評価対象の操業識別番号に対応して記憶されている順序入替在庫量I
r(例えば、15個)を、現状順序入替在庫量αとして読み出す(ステップS30)。
【0179】
次に、生産性評価部3200は、工程実績情報記憶部3500から、評価対象の操業における工程2の1日の処理ワーク数W(例えば、4個)を読み出す。そして、生産性評価部3200は、実績在庫量グラフ記憶部3700に記憶されている実績在庫量グラフ(
図13参照)を参照して、1日の処理ワーク数Wに対応する順序入替差である実績順序入替在庫量βを取得する(ステップS31)。詳細には、生産性評価部3200は、実績在庫量グラフ記憶部3700に記憶されている実績在庫量グラフを表す関数を読み出し、読み出した関数を用いて、1日の処理ワーク数Wに対応する実績順序入替在庫量βを算出する。
【0180】
例えば、算出された1日の処理ワーク数Wが「4」個の場合、
図13の実績在庫量グラフによると、実績順序入替在庫量βは「9」個である。
【0181】
次に、生産性評価部3200は、順序入替在庫量I
rの削減が可能か否かを判断する(ステップS32)。具体的には、生産性評価部3200は、現状順序入替在庫量αが実績順序入替在庫量βより大きい場合は、削減可能と判断し、現状順序入替在庫量αが実績順序入替在庫量β以下の場合は、削減不要と判断する。γを削減可能量とすると、
γ=α−β
となる。従って、現在(評価対象)の操業状況における現状順序入替在庫量αが「15」個であり、実績順序入替在庫量βが「9」個であるので、操業状況に手を加えることにより順序入替在庫量I
rを、15−9=6個分削減できる余地があることになる。
【0182】
現状順序入替在庫量αが実績順序入替在庫量βより大きい場合(ステップS32:Yes)、生産性評価部3200は、評価対象(現状)の操業における計画単位P1、及び、計画周期T1を求める(ステップS33)。具体的には、生産性評価部3200は、まず、計画単位算出部3210に、評価対象(現状)の操業における計画単位P1を算出するよう依頼する。
【0183】
依頼を受けた計画単位算出部3210は、まず、工程実績情報記憶部3500から実績情報を読み出し、順序入替差c
iの度数分布を作成し、順序入替差c
i、及び、最大順序入替差c
pを求める。例えば、
図14に示す度数分布の場合、最大順序入替差c
p=−1、順序入替差c
i=−15となる。計画単位算出部3210は、上記式(12)を用いて、計画単位P1を以下のように求める。
P1=|c
min|−|c
p|=|−15|−|−1|=14
計画単位算出部3210が計画単位P1を算出すると、生産性評価部3200は、次に、ステップS31の処理で算出した1日の処理ワーク数Wを計画周期算出部3220に渡して、評価対象の操業における計画周期T1を算出するよう依頼する。
【0184】
依頼を受けた計画周期算出部3220は、上記式(13)を用いて、計画周期T1を以下のように求める。
T1=P1÷W=14÷4=3.5
計画単位P1、及び、計画周期T1を求めた生産性評価部3200は、次に、削減可能量γを操業計画作成部3230に渡して、操業計画案の作成を依頼する。
【0185】
依頼を受けた操業計画作成部3230は、順序入替在庫量I
rを削減可能量γ削減できるような操業計画案(計画単位P2、計画周期T2)を作成する(ステップS34)。具体的には、操業計画作成部3230は、以下のように計画単位P2、及び、計画周期T2を求める。
【0186】
上述のように、I
r=|c
min|であるので、計画単位Pは以下の式となる。
P=|c
min|−|c
p|=I
r−|c
p|
従って、順序入替在庫量I
rを、現状順序入替在庫量αから削減可能量γ減らした量(実績順序入替在庫量β)とするための計画単位P2は、以下のように求まる。
P2=(α−γ)−|c
p|=(15−6)−|−1|=8
よって、計画周期T2は、以下のように求まる。
T2=P2÷W=8÷4=2
この操業計画案は、計画周期Tを、(3.5−2)×24=36時間短縮し、ワークを8個の括りとする操業方法に変更することで、現状の生産性(1日の処理ワーク数W)を維持しながら、順序入替在庫量I
rを6個程度削減することが可能となる。
【0187】
尚、削減可能量γ分を削減する場合の操業計画案を作成しているが、削減可能量γ以下の量(例えば、5個)を削減する場合の操業計画を作成してもよい。
【0188】
計画単位P2、及び、計画周期T2を求めた生産性評価部3200は、計画単位P1、計画周期T1、計画単位P2、計画周期T2を、操業計画情報記憶部3800に記憶させる。インターフェース部3400は、操業計画情報記憶部3800に記憶されている操業計画案を表示部に表示する。
【0189】
一方、ステップS32において、現状順序入替在庫量αが実績順序入替在庫量β以下の場合(ステップS32:No)は、生産性評価部3200は、削減不要の評価を操業計画情報記憶部3800に記憶させる。インターフェース部3400は、操業計画情報記憶部3800に記憶された削減不要の旨の評価を表示部に表示する。
【0190】
上記ステップS34においては、1日の処理ワーク数Wを変えずに、現状順序入替在庫量αを削減可能量γ分削減することを目的とした場合の計画単位P2、及び、計画周期T2を作成したが、他の目的の計画単位P2、及び、計画周期T2を作成することとしてもよい。
【0191】
例えば、対象工程の1日の処理ワーク数Wに制約が無い場合に、順序入替在庫量I
rを維持したまま生産性を上げることを目的とし、且つ、工程での1日の処理ワーク数Wが多いことが望ましい場合は、以下のように、操業計画案を求めることができる。
【0192】
図13の実績在庫量グラフにおいて、順序入替在庫量が「15」に対応する処理個数は「6」個である。つまり、順序入替在庫量I
rを維持したままで、1日の処理ワーク数Wを「4」から「6」にすることができることになるので、
P2=I
r−|c
p|=15−|−1|=14
T2=P2÷W=14÷6=2.3
となる。つまり、この計画単位P2、及び、計画周期T2の操業計画は、現状の順序入替方法を維持したまま生産量を向上させることができる。
【0193】
また、或いは、対象工程での1日の処理ワーク数Wを「4」個から「5」個に増やすことを目的とする場合は、以下のように操業計画案を求めることができる。
【0194】
図13の実績在庫量グラフにおいて、処理個数が「5」に対応する順序入替在庫量は「12」である。つまり、順序入替在庫量I
rが「12」個程度でも、現状の処理個数(W)を実現できることになるので、
P2=I
r−|c
p|=12−|−1|=11
T2=P2÷W=11÷5=2.2
となる。つまり、この計画単位P2、及び、計画周期T2の操業計画は、処理個数の増加を考慮した上で、順序入替在庫量I
rを現状に比べて3個程度削減することができる。
【0195】
このように、工場全体における生産量の変動に応じて計画単位P、及び、計画周期Tの案を算出し、案を参考にして操業計画(方法)を変更することで、対象工程における在庫量が適正(必要最小限の在庫量)に保てるようになる。
【0196】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。