特許第6378640号(P6378640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6378640機械式駐車設備の制御装置、及び、該機械式駐車設備の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6378640
(24)【登録日】2018年8月3日
(45)【発行日】2018年8月22日
(54)【発明の名称】機械式駐車設備の制御装置、及び、該機械式駐車設備の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20180813BHJP
【FI】
   E04H6/18 601A
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-66562(P2015-66562)
(22)【出願日】2015年3月27日
(65)【公開番号】特開2016-186169(P2016-186169A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2017年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 政浩
(72)【発明者】
【氏名】西浦 盛展
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−028893(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0207876(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 − 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉によって開閉される入出庫口を有し且つ、前記入出庫口を通じて車両を入庫及び出庫させる機械式駐車設備を備えた、機械式駐車設備の制御装置であって、
前記機械式駐車設備が設置された場内に入場する入場車両を識別する入場側識別手段と、
前記場内から退場する退場車両を識別する退場側識別手段と、
前記機械式駐車設備を制御する入出庫制御手段と、を備え、
前記入出庫制御手段は、前記入場側識別手段が前記入場車両を識別したとき、該入場車両を入庫させることができるように、前記機械式駐車設備の入庫準備を開始するように構成され、
前記入出庫制御手段は、前記退場側識別手段が前記退場車両を識別したとき、該退場車両を入庫させるための入庫準備が完了しているか否かを判定し、完了していないと判定した場合には、該退場車両を入庫させるための入庫準備の開始を取り止める、又は、実行中の当該入庫準備を中止する、機械式駐車設備の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の機械式駐車設備の制御装置において、
前記入出庫制御手段は、前記入場側識別手段が前記入場車両を識別したとき、該入場車両を入庫させるための入庫準備を開始することができないときには、当該入場車両を入庫させるための入庫準備の予約を行うと共に、入庫準備の開始が可能になった時点で、入庫準備を開始し、
前記入出庫制御手段は、前記退場側識別手段が前記退場車両を識別したとき、該退場車両を入庫させるための入庫準備が予約されている場合には、該入庫準備の予約をキャンセルする、機械式駐車設備の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の機械式駐車設備の制御装置において、
前記入出庫制御手段は、前記機械式駐車設備の前記扉が開いたときに、前記入庫準備が完了した、と判定する、機械式駐車設備の制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の機械式駐車設備の制御装置において、
前記入出庫口前に車両が到着したことを検知する到着検知手段を備え、
前記入出庫制御手段は、前記到着検知手段が前記車両の到着を検知したことを受けて、前記扉を開ける、機械式駐車設備の制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の機械式駐車設備の制御装置において、
前記入場側識別手段が識別した前記入場車両が、前記場内に入場したことを検知する入場検知手段を備え、
前記入出庫制御手段は、前記入場側識別手段が前記入場車両を識別し且つ、前記入場検知手段が該入場車両の入場を検知したときに、該入場車両を入庫させるための入庫準備を開始する、機械式駐車設備の制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の機械式駐車設備の制御装置において、
前記入場車両が前記入出庫口前まで移動することを禁止するように構成された移動禁止手段を備え、
前記移動禁止手段は、前記入場車両を入庫させるための入庫準備が開始されるまで該入場車両が前記入出庫口前まで移動することを禁止し、該入庫準備が開始されれば該入出庫口前まで移動することを許可する、機械式駐車設備の制御装置。
【請求項7】
扉によって開閉される入出庫口を有し且つ、前記入出庫口を通じて車両を入庫及び出庫させる機械式駐車設備の制御方法であって、
前記機械式駐車設備が設置された場内に入場する入場車両を識別する工程と、
前記入場車両が識別されたとき、該入場車両を入庫させることができるように、前記機械式駐車設備の入庫準備を開始する工程と、
前記場内から退場する退場車両が識別されたとき、該退場車両を入庫させるための入庫準備が完了しているか否かを判定し、完了していないと判定した場合に、該退場車両が未入庫の車両であれば、該退場車両を入庫させるための入庫準備の開始の取り止める、又は、実行中の当該入庫準備を中止する工程と、を備える、機械式駐車設備の制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の機械式駐車設備の制御方法において、
前記入場車両が識別されたとき、該入場車両を入庫させるための入庫準備を開始することができないときには、当該入場車両を入庫させるための入庫準備の予約を行う工程と、
入庫準備の開始が可能になった時点で、前記予約していた入庫準備を開始する工程と、
前記退場車両を識別したとき、退場車両を入庫させるための入庫準備が予約されている場合には、該入庫準備の予約をキャンセルする工程と、をさらに備える、機械式駐車設備の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、機械式駐車設備の制御装置、及び、その制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機械式駐車設備の制御方法の一例が記載されている。この文献に記載の機械式駐車設備は、入出庫口と、この入出庫口を開閉する入口扉と、入出庫口から入出庫させた車両を循環移送する多数の車両搭載台(パレット)と、入出庫口に設けられ、入口扉を開動可能な操作盤と、この操作盤から離れた位置に設けられる遠隔操作用ユニットと、を備えている。この機械式駐車設備は、遠隔操作用ユニットを使って、入庫しようとする車両が機械式駐車設備の入出庫口前に到着する前に、車両搭載台を入出庫口まで移動させる入庫準備を、開始することが可能に構成されている。このため、車両が入出庫口前に到着したときには、入庫準備が完了しているため、待たずに入庫させることができる。
【0003】
また、この特許文献1には、入庫準備によって車両搭載台の移動が完了してから所定時間経過しても、当該入庫準備を開始させた利用者の運転する車両が入庫しなかった場合には、その車両の入庫をキャンセルし、後続の車両は、入庫がキャンセルされた後で、入庫準備の開始が可能になることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2997748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の機械式駐車設備では、前述したように、入庫準備を開始させた車両が、結局、入庫しなかった場合には、所定時間が経過するまで、後続の車両は、入庫準備を開始させることができない。つまり、後続の車両の運転手は、入庫準備を開始させたいと思っても、待たされてしまうことになる。また、機械式駐車設備から車両を出庫させたい利用者も、待たされてしまうことになる。
【0006】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、事前に入庫準備を行うように構成された機械式駐車設備において、特定の条件下では、入庫準備を速やかにキャンセルすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的に、ここに開示する技術は、扉によって開閉される入出庫口を有し且つ、前記入出庫口を通じて車両を入庫及び出庫させる機械式駐車設備を備えた、機械式駐車設備の制御装置に係る。
【0008】
前記制御装置は、前記機械式駐車設備が設置された場内に入場する入場車両を識別する入場側識別手段と、前記場内から退場する退場車両を識別する退場側識別手段と、前記機械式駐車設備を制御する入出庫制御手段と、を備える。
【0009】
前記入出庫制御手段は、前記入場側識別手段が前記入場車両を識別したとき、該入場車両を入庫させることができるように、前記機械式駐車設備の入庫準備を開始するように構成される。
【0010】
そして、前記入出庫制御手段は、前記退場側識別手段が前記退場車両を識別したとき、該退場車両を入庫させるための入庫準備が完了しているか否かを判定し、完了していないと判定した場合には、該退場車両を入庫させるための入庫準備の開始を取り止める、又は、実行中の当該入庫準備を中止する。
【0011】
ここで、「機械式駐車設備」とは、入庫させた車両を、機械的に搬送して格納するための駐車設備を意味し、例えば、パレット式駐車設備、及び、いわゆるパレットレス式駐車設備としてのくし歯式駐車設備などを含む。
【0012】
なお、「入場側識別手段」は、入場する車両を特定する手段である。例えば、車両側から送信される、リモコンから発信される無線信号、及び、車載器からのDSRC信号などの受信結果に基づいて識別するものや、キーパッドを介して手入力された暗証番号、及び、カードキーの読み取り結果などに基づいて識別するものを含む。
【0013】
なお、「退場側識別手段」は、退場する車両を特定する手段であり、入場側識別手段と同様に構成され得る。その場合、入場側と退場側とで同一の構成を用いてもよいし、異なる構成を用いてもよい。後者の構成としては、例えば、入場時には、カードキーの読み取り結果に基づいて識別する一方、退場時には、DSRC信号を受信して識別するようにしてもよい。また、例えば、リモコンからの無線信号や車載器からのDSRC信号などを受信する構成において、そうした信号を受信するアンテナを、入場側と退場側とで共有可能な一体のアンテナにしてもよいし、個別に設けた二体のアンテナにしてもよい。また、複数の手段を組み合わせた構成を用いてもよい。そうした構成としては、例えば、入場又は退場するときに、DSRC信号を受信するか、或いは、キーパッドを介して暗証番号が手入力されるか、することによって、車両を特定するように構成することができる。
【0014】
前記の構成によると、入出庫制御手段は、入場車両が識別されたとき、その入場車両を入庫させるための入庫準備を開始する。入場車両は、入庫準備が行われた機械式駐車設備の入出庫口を通じて、入庫することになる。入庫準備を事前に開始することによって、入場車両は、スムースに入庫することができる。
【0015】
そして、入出庫制御手段は、退場車両が識別されたとき、その退場車両を入庫させるための入庫準備が完了しているか否かを判定し、完了していないと判定した場合には、その退場車両に対する入庫準備をキャンセルする。
【0016】
例えば機械式駐車設備に入庫しようと入場した車両が、入庫することを止めて退場したような場合、退場した車両は、再度入場するまで、機械式駐車設備に入庫しないと判断できるため、当該車両に対しては、入庫準備は不要となる。したがって、不要な入庫準備を速やかにキャンセルする。このことによって、入庫準備の開始前であれば、不要な入庫準備を行うことがなくなる。また、入庫準備の実行中であれば、不要な入庫準備を途中で中止することができる。その結果、例えば入庫しようとしている後続車両がある場合は、その後続の車両に対する入庫準備を開始するタイミングを早めることができるため、後続の車両は、入庫準備の開始が早まった分だけ、無駄に待たされずに、入庫することができる。また、機械式駐車設備から車両を出庫させたい利用者がいる場合には、その出庫を速やかに行うことができる。
【0017】
さらに、入庫準備のキャンセルは、退場車両が識別されたときに自動的に行われるように構成されているから、キャンセルのための特別の操作を必要としたり、所定時間が経過するまで待たせたりしない分だけ、比較的速やかに行うことができる。
【0018】
こうして、前記構成によって、後続の車両は、特別な操作を行わなくとも、必要以上に待たされずに、入庫することができる。また、出庫させようとする利用者も、特別な操作を行わなくとも、無駄に待たされずに出庫させることができる。
【0019】
なお、退場車両が識別されたとき、その退場車両が、機械式駐車設備に入庫されていて、そこから出庫された車両であった場合は、当該退場車両を入庫させるための入庫準備は、当然に完了していることになる。したがって、入庫準備のキャンセル対象にはならない。また、退場車両が識別されたとき、その退場車両が、入場側識別手段により識別されていなかった等の理由により、当該退場車両を入庫させるための入庫準備が、当然に開始されない場合や、入庫準備が開始されたものの、所定時間が経過するなどして入庫が既にキャンセルされていた場合も、入庫準備のキャンセル対象にはならない。
【0020】
なお、複数の車両が順次入場するような場合においては、複数の入場車両それぞれについての識別結果を、入場を識別した順に記憶して、この記憶順に入庫準備を開始するようにしてもよい。また、機械式駐車設備の入庫準備及び車両の入庫が完了するまで、又は、入庫準備がキャンセルされるまで、次の入場車両の識別を行わないようにし、入場車両が識別される毎に、その識別された車両を入庫させるための入庫準備を即時開始させるようにしてもよい。前者の構成は、例えば、多数の人が出入りする大型施設用の駐車設備のように、場内に入場してから入出庫口前に到着するまでの移動時間が比較的長い場合に有効であり、後者の構成は、例えば、集合住宅用の駐車設備のように、入場してから入出庫口前に到着するまでの移動時間が比較的短かったり、移動の必要がなかったりする場合に有効である。
【0021】
また、前記入出庫制御手段は、前記入場側識別手段が前記入場車両を識別したとき、該入場車両を入庫させるための入庫準備を開始することができないときには、当該入場車両を入庫させるための入庫準備の予約を行うと共に、入庫準備の開始が可能になった時点で、入庫準備を開始し、前記入出庫制御手段は、前記退場側識別手段が前記退場車両を識別したとき、該退場車両を入庫させるための入庫準備が予約されている場合には、該入庫準備の予約をキャンセルする、としてもよい。
【0022】
例えば、機械式駐車設備において車両が入出庫している最中には、後続の車両のための入庫準備を行うことはできない。この構成によると、入庫準備を開始することができない場合には、入庫準備の予約を行う。前述した、複数の車両が順次入場するような場合において、複数の入場車両それぞれについての識別結果を、入場を識別した順に記憶して、この記憶順に入庫準備を開始することも、ここでいう予約に含まれる。前記の構成では、予約されているにも拘わらず、当該車両が退場する場合には、その予約をキャンセルするようにしている。
【0023】
つまり、入庫せずに退場する車両に対しては、入庫準備を予約する必要はなくなるから、不要な予約を速やかにキャンセルすることによって、無駄な入庫準備を開始することが回避される。また、キャンセルした予約よりも後の予約を繰り上げることができるため、入庫準備を開始するタイミングを早めることができる。したがって、入庫を待っている車両を、必要以上に待たせずに入庫させる上で有利になる。
【0024】
また、前記入出庫制御手段は、前記機械式駐車設備の前記扉が開いたときに、前記入庫準備が完了した、と判定する、としてもよい。
【0025】
この構成によると、入庫準備の完了を適切に判断することができる。
【0026】
また、前記入出庫口前に車両が到着したことを検知する到着検知手段を備え、前記入出庫制御手段は、前記到着検知手段が前記車両の到着を検知したことを受けて、前記扉を開ける、としてもよい。
【0027】
この構成によると、車両が入出庫口前に到着したことを受けて、扉を開けるようにしたから、車両を入庫させるのに適切なタイミングで扉を開けることができる。
【0028】
また、前記入場側識別手段が識別した前記入場車両が、前記場内に入場したことを検知する入場検知手段を備え、前記入出庫制御手段は、前記入場側識別手段が前記入場車両を識別し且つ、前記入場検知手段が該入場車両の入場を検知したときに、該入場車両を入庫させるための入庫準備を開始する、としてもよい。
【0029】
この構成によると、入場が確定した車両についてのみ、入庫準備を行うようにしたから、入場車両として識別されたものの入場しなかった車両などに対する、不要な入庫準備を行うのを防止することができる。そのことで、入庫準備を必要分だけ実行させて、後続の車両を、必要以上に待たせずに入庫させる上で有利になる。
【0030】
また、前記入場車両が前記入出庫口前まで移動することを禁止するように構成された移動禁止手段を備え、前記移動禁止手段は、前記入場車両を入庫させるための入庫準備が開始されるまで該入場車両が前記入出庫口前まで移動することを禁止し、該入庫準備が開始されれば該入出庫口前まで移動することを許可する、としてもよい。
【0031】
ここで、「移動禁止手段」とは、場内に入場した車両の、入出庫口前までの移動を直接的に、又は、間接的に禁止する手段を意味する。前者としては、例えば、遮断機及びチェーンゲートなどが含まれ、後者としては、例えば、信号機、デジタルサイネージ及び電光掲示板などが含まれる。
【0032】
この構成によると、ある入場車両を入庫させるための入庫準備が開始されるまで、その入場車両の移動を禁止するようにしたから、入出庫口付近が車両で混雑してしまうような事態を防止する上で有利になる。したがって、各入場車両を、順次スムースに入庫させる上で有利になる。
【0033】
ここに開示する別の技術は、扉によって開閉される入出庫口を有し且つ、前記入出庫口を通じて車両を入庫及び出庫させる機械式駐車設備の制御方法に係る。
【0034】
前記制御方法は、前記機械式駐車設備が設置された場内に入場する入場車両を識別する工程と、前記入場車両が識別されたとき、該入場車両を入庫させることができるように、前記機械式駐車設備の入庫準備を開始する工程と、前記場内から退場する退場車両が識別されたとき、該退場車両を入庫させるための入庫準備が完了しているか否かを判定し、完了していないと判定した場合に、該退場車両を入庫させるための入庫準備の開始の取り止め、又は、実行中の当該入庫準備を中止する工程と、を備える。
【0035】
この構成によると、入庫せずに退場する車両に対しては、該車両を入庫させるための入庫準備を自動的にキャンセルするようにしたから、後続の車両は、無駄に待たされずに、入庫することができる。また、出庫させようとする利用者も、キャンセルのための特別な操作を行わなくとも、無駄に待たされずに出庫させることができる。
【0036】
前記制御方法は、前記入場車両が識別されたとき、該入場車両を入庫させるための入庫準備を開始することができないときには、当該入場車両を入庫させるための入庫準備の予約を行う工程と、入庫準備の開始が可能になった時点で、前記予約していた入庫準備を開始する工程と、前記退場車両を識別したとき、退場車両を入庫させるための入庫準備が予約されている場合には、該入庫準備の予約をキャンセルする工程と、をさらに備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、前記機械式駐車設備の制御装置、及び、その制御方法によると、車両が入庫せずに退場する場合には、該車両を入庫させるための入庫準備を、速やかに且つ、自動的にキャンセルするようにしたから、不要な入庫準備を無くすことができる。また、次に入庫をしようとする後続の車両は、キャンセルのための特別な操作を行わなくとも、無駄に待たされずに、入庫することができ、出庫させようとする利用者も、キャンセルのための特別な操作を行わなくとも、無駄に待たされずに、出庫させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、第1及び第2駐車設備が設置された場内の構成を示す概観図である。
図2図2は、第1及び第2駐車設備を備えた駐車システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図3図3は、第1及び第2駐車設備の契約者リストを示す図である。
図4図4は、入場車両を識別したときの制御フローを説明するフローチャートである。
図5図5は、到着車両を識別したときの制御フローを説明するフローチャートである。
図6図6は、退場車両を識別したときの制御フローを説明するフローチャートである。
図7図7は、前記駐車システムに記憶される予約テーブルの遷移の一例を示す図である。
図8図8は、前記駐車システムに記憶される予約テーブルの遷移の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、機械式駐車設備の制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。以下で説明される実施形態は、例示にすぎない。
【0040】
<全体構成>
最初に、この実施形態に係る機械式駐車設備、及び、その制御装置の全体構成について説明する。
【0041】
この実施形態に係る制御装置としての駐車システムPは、図1及び図2に示すように、機械式駐車設備として場内に設置された第1及び第2駐車設備P1,P2と、車両が場内に入場するための入場口3と、車両が場外に退場するための退場口4と、管理室5内に設置された入出庫制御装置51と、を備えており、契約者が所有する契約車両を、第1又は第2駐車設備P1,P2に入庫させるように構成されている。
【0042】
第1駐車設備P1は、いわゆるパレット式駐車設備として構成されており、第1扉12によって開閉される第1入出庫口11と、設備内に設けられた複数の格納スペースと、各格納スペース毎に割り当てられた複数のパレット13,13,…,13と、を有しており、第1入出庫口11から入庫した車両を、パレット13に載せて搬送することによって、いずれかの格納スペースに格納するように構成されている。また、第1駐車設備P1は、所定の格納スペースに格納された車両をパレット13で搬送することによって、その車両を、第1入出庫口11から出庫させる。図1は、第1扉12が開いた状態を示している。なお、第1駐車設備P1のパレット13,13,…,13の細部については、図示を省略する。
【0043】
各格納スペースは、車種に応じて選択されるように構成されており、この実施形態では、車高が比較的高いハイルーフ車のための格納スペースと、車高が比較的低いノーマルルーフ車のための格納スペースと、を有している。
【0044】
第2駐車設備P2も、第1駐車設備P1と同様に、パレット式駐車設備として構成されており、第2扉22によって開閉される第2入出庫口21と、車種に応じて選択される複数の格納スペースと、各格納スペース毎に割り当てられた複数のパレット23,23,…,23と、を有しており、この第2入出庫口21を通じて車両を入庫及び出庫させる。なお、第2駐車設備P2のパレット23,23,…,23の細部については、図示を省略する。
【0045】
入場口3付近には、入場側識別手段としての入場側認証アンテナSW1と、入場ゲート31と、移動禁止手段としての表示パネル6と、入場検知手段としてのループコイルSW3と、が設けられている。
【0046】
入場側認証アンテナSW1は、ETCアンテナとして構成されており、入場口3の道路脇に設置されている。この入場側認証アンテナSW1は、入場口3付近の車両の車載器から発信されたDSRC信号を受信したとき、その受信された信号を、入出庫制御装置51に送信する。これにより、入場口3付近の車両は、場内に入場する入場車両として識別される。
【0047】
入場ゲート31は、チェーンゲートとして構成されており、入場口3の途中の道路に設置されている。この入場ゲート31は、入出庫制御装置51からの制御信号に基づいて、入場車両が場内に入場するのを直接的に阻止する閉状態と、入場を許容する開状態との間で切換可能に構成されている。
【0048】
また、表示パネル6は、デジタルサイネージとして構成されており、入場ゲート31から入場した入場車両に対して、入庫先の駐車設備を表示したり、該駐車設備の入出庫口前までの移動を禁止又は許可する表示をしたり、第1又は第2駐車設備P1,P2における入庫準備の実行状況及び予約状況を表示したり、する。
【0049】
また、入場ゲート31付近の道路には、ループコイルSW3が埋設されている。このループコイルSW3は、車両が直上を通過したことを検出するように構成されており、入場車両の通過を検出したときには、その入場車両が場内に入場したことを検知したものとして、その検知結果を検出信号として入出庫制御装置51に送信する。
【0050】
また、第1及び第2入出庫口11,21前には、それぞれ、各入出庫口11,21前に車両が到着したことを検知可能な第1及び第2設備前アンテナSW4,SW5が設けられている。第1及び第2設備前アンテナSW4,SW5は、双方とも、入場側認証アンテナSW1と同様に構成されており、第1又は第2入出庫口11,21前に到着した車両から発信されたDSRC信号を受信する。そして、各設備前アンテナSW4,SW5は、受信された信号を入出庫制御装置51に送信することによって、その車両を、到着車両として識別する。第1及び第2設備前アンテナSW4,SW5は、車両の到着を検知するだけなく、到着車両の識別も可能であり、この実施形態では、双方とも、到着検知手段と、設備前識別手段とを兼ねている。
【0051】
また、退場口4付近には、退場側識別手段としての退場側認証アンテナSW2と、退場ゲート41と、が設けられている。
【0052】
退場側認証アンテナSW2及び退場ゲート41は、それぞれ、入場側認証アンテナSW1及び入場ゲート31と同様に構成されている。つまり、退場側認証アンテナSW2は、ETCアンテナとして構成されており、退場口4付近の車両から発進されたDSRC信号を受信したとき、受信された信号を入出庫制御装置51に送信することによって、その車両を、場内から退場する退場車両として識別する。
【0053】
また、退場ゲート41は、退場口4の途中の道路に設置されており、退場ゲート41から場内に、車両が入場することを阻止するよう構成されている。退場ゲート41は、入出庫制御装置51からの制御信号に基づいて、閉状態と、退場を許容する開状態との間で切換可能に構成されている。
【0054】
前記のように構成された駐車システムPは、入出庫制御手段としての入出庫制御装置51によって制御される。
【0055】
入出庫制御装置51は、駐車システムP付近の管理室5内に設置されている。この入出庫制御装置51には、各種の信号が入力される。そうした信号としては、図2に示すように、入場側認証アンテナSW1、退場側認証アンテナSW2、又は、第1若しくは第2設備前アンテナSW4,SW5によって受信されたDSRC信号と、ループコイルSW3から送信された検出信号と、が含まれる。
【0056】
入出庫制御装置51は、契約者リスト52として記録されたデータベースを参照可能に構成されている。この契約者リスト52には、図3に示すように、契約者情報として、各契約者の契約者番号と、各車両の車載器毎に固有であり且つ、DSRC信号に基づいて検知可能な識別番号と、各契約車両の車種と、が互いに関連付けられた状態で記録されている。この実施形態における「契約者」には、月極会員、時間貸会員及び一時利用登録者が含まれる。したがって、入出庫制御装置51は、入場側認証アンテナSW1、退場側認証アンテナSW2、又は、第1若しくは第2設備前アンテナSW4,SW5から入力されたDSRC信号に基づいて、該DSRC信号の発信元の入場車両が契約者であるか否かの判定と、その入場車両の車種の特定とができるように構成されている。この実施形態では、契約者リスト52には、車種として、各車両がハイルーフ車であるのか、或いは、ノーマルルーフ車であるのかが、記録されている。
【0057】
入出庫制御装置51は、入場側認証アンテナSW1が入場車両を識別したとき、識別された入場車両が契約車両であった場合には、図7及び8の紙面上側の表に示すように、その契約車両の識別番号と入庫先として選択される駐車設備とを、入場を識別した識別順(図7及び図8では“予約順”と記載)に、予約テーブルに記憶したり、その記憶を予約テーブルから削除したり、することができるように構成されている。
【0058】
入出庫制御装置51は、前記の入力信号と、契約者リスト52の参照結果とに基づいて、図2に示すように、入場ゲート31、退場ゲート41、表示パネル6、第1駐車設備P1のパレット13,13,…,13を搬送する機構及び第1扉12、並びに、第2駐車設備P2のパレット23,23,…,23を搬送する機構及び第2扉22に制御信号を送信する。
【0059】
入出庫制御装置51は、入場側認証アンテナSW1によって、入場車両が識別され且つ、ループコイルSW3によって、識別された入場車両が場内に入場したことが検知されたとき、その入場車両を入庫させることができるように、第1又は第2駐車設備P1,P2の入庫準備を開始したり、或いは、入場を識別した識別順に、該入庫準備を順次行う入庫準備の予約を行ったりするように構成されている。駐車システムPは、入庫準備を予め開始することにより、入出庫口11,21前に車両が到着したときには、パレット13,23が到着又は到着しつつあり、スムースに入庫させることが可能である。
【0060】
ここで、パレット13,23の「到着」とは、入出庫口11,21を開放したときに、パレット13,23上に車両が乗り入れ可能な、或いは、パレット13,23から車両が乗り出し可能な位置までパレットが搬送されたこと、を意味する。
【0061】
次に、入庫準備に係る制御の構成を、図4乃至図6のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0062】
<入庫準備に係る制御>
図4は、入場車両を識別したときの制御に係るフローを示している。
【0063】
入場側認証アンテナSW1は、図4のステップS1に示すように、入場口3付近の車両から発信された、識別信号としてのDSRC信号を受信したとき、その受信結果を、入出庫制御装置51まで送信する。これにより、入場口3付近の車両は、前述のように、場内に入場する入場車両として識別されることになる。
【0064】
入出庫制御装置51は、ステップS1から続くステップS2において、入場側認証アンテナSW1から送信された信号に基づいて、入場車両の識別番号を検知する。そして、ステップS2から続くステップS3において、検知された識別番号と契約者リスト52に記録された番号とを照合することによって、この入場車両が契約車両であるか否かを判定する。
【0065】
入出庫制御装置51は、ステップS3においてYESと判定した場合、つまり、入場車両は契約車両であると判断した場合には、該入場車両の場内への入場を許可するべく、ステップS4に進んで、入場ゲート31に開信号を送信して開状態にする一方、NOと判定した場合、つまり、入場車両は契約車両ではないと判断した場合には、場内への入場を禁止すべく、入場ゲート31を閉状態のままに保持する。
【0066】
続いて、入出庫制御装置51は、ステップS5において、ループコイルSW3からの検出信号に基づいて入場車両が入場ゲート31を通過したか否かを判定し、この判定がYESの場合には、該入場車両は、場内に入場した、と判断してステップS6に進む一方、NOの場合には、該入場車両は、入場側認証アンテナSW1により識別されたものの、場内には入場しなかった、と判断する。例えば入場車両の識別後、所定時間が経過してもループコイルSW3が入場車両の通過を検知しない場合は、その入場車両は、場内に入場しなかったと判断してもよい。この場合、フローは終了する。
【0067】
なお、この実施形態では、ステップS4で開状態にされた入場ゲート31は、所定時間が経過した後に、自動的に閉状態に戻される。
【0068】
入出庫制御装置51は、ステップS6において、契約者リスト52の記録内容との照合結果に基づいて、その入場車両がノーマルルーフ車であるのか、或いは、ハイルーフ車であるのかを特定する。そして、その特定結果や、各駐車設備1,2の稼働状況などに基づいて、第1及び第2駐車設備P1,P2から、その入場車両を入庫させる入庫先と、入庫先として選択された駐車設備における格納スペースの割り当て先と、を選択する。
【0069】
続いて、入出庫制御装置51は、ステップS7において、入場車両の識別番号と入庫先として選択された駐車設備とを、その入場車両の予約データとして、入場を識別した識別順(予約順とも記載)に、予約テーブルに記憶する(図7及び図8参照)。後述するように、予約テーブルに記憶されている順番に、入庫準備が順次行われる。入庫準備が完了すれば、予約テーブルから削除される。
【0070】
簡単のため、以下では、第1駐車設備P1のみを対象として、第1駐車設備P1に入庫させたり、第1駐車設備P1から出庫させたりするときの制御を例示する。特段の記載がない限り、第2駐車設備P2についても同様である。
【0071】
入出庫制御装置51は、ステップS7から続くステップS8において、予約データが記憶された入場車両を入庫させることができるように、駐車設備P1の格納スペースから、入出庫口11までパレット13を呼び出す入庫準備を行う。
【0072】
駐車設備P1で車両が入庫中であったり、出庫中であったりした場合、その駐車設備P1では、後続の入場車両(単に後続車両とも記載)を入庫させるための入庫準備を開始することはできない。
【0073】
その場合は、入庫準備が開始可能となるまで待つことになる。入出庫制御装置51は、予約テーブルに記憶された識別順にしたがって、入庫準備を順次行う入庫準備の予約を行う。そして、後続車両の入庫準備を開始することができるようになった時点で、その入場車両を入庫させるための入庫準備を開始するように構成されている。
【0074】
以下では、入場車両のうち、特に、実行中の入庫準備によって入庫させる対象とされた車両を、準備対象と記載することがある。この実施形態では、入出庫制御装置51は、各駐車設備P1,P2毎に、予約テーブルの最上位のものを、準備対象と設定している。
【0075】
続いて、入出庫制御装置51は、ステップS9において、予約テーブルの記憶内容に基づいて、表示パネル6に制御信号を送信する。この実施形態では、入場車両の入庫先として選択された第1駐車設備P1を表示すると共に、その入庫先で先行車両が入出庫中であれば、後続車両に対し、その旨を表示するように構成されている。そのように表示することによって、後続車両の入出庫口11前までの移動を禁止するようにしている。なお、ここで、1台毎に移動を禁止するか、或いは、所定の台数までは移動を許可するか、については、場内のレイアウトや利用状況などに応じて適宜設定することができる。入出庫制御装置51は、先行車両の入出庫が終わり次第、予約データの記憶順にしたがって、後続車両を次の準備対象として、入庫準備を開始する。さらに、次の準備対象とされた後続車両に対して、入庫先として選択された第1駐車設備P1前まで移動するように案内する表示を行う。
【0076】
表示パネル6によって第1駐車設備P1前まで案内された入場車両は、第1設備前アンテナSW4によって、到着車両として識別されることになる。なお、第2駐車設備P2前まで案内されたときには、第2設備前アンテナSW5によって、到着車両として識別されることになる。
【0077】
図5は、そうした到着車両を識別したときの制御に係るフローを示している。
【0078】
第1設備前アンテナSW4は、図5のステップS11に示すように、第1入出庫口11前に到着した到着車両から発信された、識別信号としてのDSRC信号を受信したとき、その受信結果を、入出庫制御装置51に送信する。
【0079】
続いて、入出庫制御装置51は、ステップS12において、第1設備前アンテナSW4が受信結果を送信したことを受けて、この送信された信号に基づいて、到着車両の識別番号を検知する。そして、続くステップS13において、検知された識別番号と契約者リスト52に記録された番号とを照合することによって、この到着車両が契約車両であるか否かを判定する。また、契約車両であれば、その到着車両の車種を特定する。
【0080】
入出庫制御装置51は、続くステップS14で、到着車両が入庫可能であるか否かを判定する。つまり、到着車両の車種が、入庫準備によって到着している、又は、到着しつつあるパレット13によって搬送可能であるか否かを判定する。到着車両が予約順に到着した場合は、ステップS14においてYESと判定される。また、到着車両が予約順に到着しないときでも、到着車両の車種が、入庫準備によって到着している、又は、到着しつつあるパレット13によって搬送可能であるときには、ステップS14においてYESと判定される。ステップS15で入庫可と判断した後、続くステップS19において、パレット13が到着した後に、第1扉12を開動作させる。入出庫制御装置51は、第1扉12が開いたときに、その到着車両を準備対象とした入庫準備が完了した、と判断するように構成されており、ステップS20において、該到着車両に対応する予約データを、予約テーブルから削除する。なお、到着車両が予約順に到着しなかったときには、実際に入庫をした車両に対応する予約データが削除される。そして、ステップS20から続くステップS21において、開放された第1入出庫口11から入庫させた到着車両を、入庫準備によって呼び出されたパレット13に載せて、格納スペースの割り当て先まで搬送する。該到着車両に対応する予約データが削除されると、後続車両を入庫させるべく、第1駐車設備P1が選択された入場車両の予約順は、1つずつ繰り上がる。
【0081】
一例として、図7の紙面上側の表に示すように、識別番号Aを有する車両Aが入場車両として識別された直後に、それに次いで識別番号Bを有する車両Bが入場車両として識別された状況を考える。車両A及び車両Bは、双方ともノーマルルーフ車であり、各車両A,Bの入庫先としては、第1駐車設備P1が選択されているものとする。
【0082】
この場合、車両A及び車両Bには、それぞれ、予約順として、識別された順番に“1”及び“2”が割り振られている。この例では、車両Aが識別された時点で、第1駐車設備P1では入庫準備又は入出庫は行われておらず、車両Aを準備対象とした入庫準備は即座に開始されている。一方で、車両Bが識別された時点では、車両Aを準備対象とした入庫準備の実行中であるため、表示パネル6には、前述のように、車両Bに対しては、第1駐車設備P1に入庫させるように表示される一方で、該駐車設備P1では先行車両が入出庫中であるため、駐車設備P1前までの移動を控えるように表示されている。そして、車両Aの入庫が完了すると、図7の紙面中程の表に示すように、車両Aに対応する予約データが予約テーブルから削除され、車両Bの予約順は、“2”から“1”に繰り上がる。そして、車両Bの入庫準備の開始が可能になった時点で、車両Bの入庫準備が開始され、車両Bに対して、駐車設備P1前までの移動を促すように表示される。
【0083】
図5のフローに戻り、入出庫制御装置51は、ステップS14においてNOと判定した場合には、ステップS16に進み、到着車両が入庫できないと判定する。到着車両が予約順に到着していない場合であって、到着車両の車種が、入庫準備によって到着している、又は、到着しつつあるパレット13によって搬送不可能であるときに、ステップS14においてNOと判定される。こうした状況は、例えば、準備対象とされていた先行車両が、第1入出庫口11前に至る途中で、同乗者や荷物を降ろすために停車などした結果、後続車両が、当該先行車両を追い越してしまい、第1入出庫口11前に先に到着してしまったときなどに、起こり得る。
【0084】
この実施形態に係る入出庫制御装置51は、図4のステップS8のように、入場を識別した識別順に、入庫準備を開始したり、入庫準備の予約を行ったりするものの、第1駐車設備P1への実際の入庫は、識別順に車両が到着したか否かに拘わらず、車両を、第1入出庫口11前への到着順で入庫させるように構成されている。入出庫制御装置51は、到着車両の識別番号を検知したときに、予約テーブルとの照合は行わない。つまり、予約テーブルの予約順には拘束されない。
【0085】
入出庫制御装置51は、ステップS16から続くステップS17において、先に到着した到着車両を優先的に入庫させるべく、予約テーブルの記憶内容を、到着順に基づいて変更する。
【0086】
この実施形態では、ステップS17で、予約テーブルにおいては、追い越された先行車両の予約順と、該先行車両を追い越して先に到着した到着車両の予約順とを入れ替えることによって、新たな準備対象を設定する。
【0087】
そして、入出庫制御装置51は、ステップS17から続くステップS18において、移動中のパレット13の呼び出しを中止したり、到着済みのパレット13の待機状態を解除したりするなどしてから、新たな準備対象の車種に対応した格納スペースを新たに選択し、その格納スペースに割り当てられたパレット13を呼び直す。そして、ステップS19に進み、呼び直されたパレット13が到着され次第、第1扉12を開く。
【0088】
そして、入出庫制御装置51は、到着車両が識別順に到着したときと同様に、ステップS20に係る処理を行う。この場合、第1扉12が開いたときに、新たな準備対象とされた到着車両の入庫準備が完了したものとして、該到着車両に対応する予約データを、予約テーブルから削除する。到着車両に対応する予約データが削除されると、到着車両に追い越された先行車両を入庫させるべく、該先行車両を入庫させるための入庫準備を、新たに開始する。
【0089】
例えば、図7の紙面中ほどの表に示すように、前述の車両Bを入庫させるための入庫準備が開始された後に、識別番号Cを有する別の車両Cが後続の入場車両として識別された状況を考える。車両Cは、ハイルーフ車であり、入庫先としては、第1駐車設備P1が選択されているものとする。
【0090】
この場合、車両B及び車両Cには、それぞれ、予約順として、識別された順にしたがって、“1”及び“2”が割り振られている。この例では、車両Bの入庫準備が開始されて、車両Bは第1入出庫口11前までの移動を開始したものの、移動の途中で、同乗者を降車させるべく、停車したものとする。このとき、車両Cは、第1入出庫口11前までの移動を開始して、車両Bよりも先に、第1入出庫口11前に到着したとする。この場合、入出庫制御装置51は、車両Bよりも先に車両Cが到着車両として識別され且つ、車両Cが車両Bとは車種が異なることを受けて、図7の紙面下側の表に示すように、車両C及び車両Bの予約順を入れ替える。この例では、車両Cに対応するパレット13が到着すれば、第1扉12を開いて、車両Cを入庫させるために呼び出されたパレット13を利用して、車両Cを搬送する。第1扉12が開くと、車両Cに係る予約データは削除され、車両Bの予約順は、入れ替え先の“2”から“1”に繰り上がる。そして、次の入庫準備の開始が可能になり次第、車両Bを入庫させるための入庫準備が新たに開始される。なお、仮に車両Bの車種と車両Cの車種とが同じ場合には、予約テーブルの予約順は入れ替えずに、そのまま第1扉12を開いて、車両Cを、車両Bの入庫のために呼び出されたパレット13を利用して、搬送する(ステップS15からステップS19)。そうして、予約テーブルにおいては、車両Cに係る予約データが削除される(ステップS20)。したがって、車両Bに係る予約データは、予約テーブルの最上位のままになる。
【0091】
なお、入出庫制御装置51は、第1又は第2設備前アンテナSW4,SW5が到着車両を識別したときに、第1又は第2駐車設備P1,P2では入庫準備が開始されていなかった場合には、この到着車両を入庫させるための入庫準備を開始するように構成されている。そうすることによって、入庫準備が行われていなかった場合でも、入出庫口11,21前に到着した車両の入庫を速やかに行うことが可能になる。また、入出庫制御装置51は、第1駐車設備P1に移動するように案内された車両が、誤って、第2駐車設備P2の第2入出庫口21前に到着してしまった場合には、第2設備前アンテナSW5がその車両を到着車両として識別したことを受けて、入場車両の識別順に拘わらず、その到着車両を、当該アンテナSW5に対応する第2入出庫口21を通じて、該入出庫口21前の到着順に入庫させる。その場合、第2駐車設備P2に入庫させるための入庫準備を新たに開始したり、既に開始されていた、別の車両を入庫させるための入庫準備を利用したり、することによって、その到着車両を入庫させることができる。その場合、元々の入庫先として選択されていた第1駐車設備P1に入庫させるための入庫準備に対しては、その実行を中断したり、その予約データを削除したり、してもよい。なお、第1又は第2設備前アンテナSW4,SW5が到着車両を識別したときに、当該駐車設備P1,P2が出庫直後であって、パレット13,23が到着していて、実質的に入庫準備が整っているような状態であれば、そのパレット13,23を利用して、到着車両の入庫を行うようにしてもよい。つまり、車両が到着したときに、入庫準備を改めて行う必要はない。
【0092】
第1駐車設備P1に入庫されていた車両が出庫して退場するとき、及び、入場ゲート31を通過することによって入庫準備が開始又は予約されたものの、入庫せずに退場するときに、その車両は、退場側認証アンテナSW2によって、退場車両として識別されることになる。
【0093】
図6は、そうした退場車両を識別したときの制御に係るフローを示している。
【0094】
退場側認証アンテナSW2は、図6のステップS31に示すように、退場口4付近に移動した退場車両から発信された、識別信号としてのDSRC信号を受信したとき、その受信結果を、入出庫制御装置51に送信する。
【0095】
入出庫制御装置51は、ステップS31から続くステップS32、及び、ステップS32から続くステップS33において、退場側認証アンテナSW2からの送信結果に基づいて、退場車両の識別番号を検知する(ステップS32)と共に、当該検知によって得られた識別番号と予約テーブルとを照合することによって、退場側認証アンテナSW2によって識別された退場車両を入庫させるための入庫準備が完了しているか否かを判定する(ステップS33)。
【0096】
入出庫制御装置51は、ステップS33において、予約テーブル中に、この退場車両に係る予約データが記憶されていなかった場合には、入庫準備が完了しているものとしてYESと判定し、ステップS35に進む。この場合、入出庫制御装置51は、ステップS35において、退場側認証アンテナSW2によって識別された退場車両は、既に入庫済みの車両であり、第1駐車設備P1から出庫して退場するものと判断する。この判断を受けて、入出庫制御装置51は、ステップS42に進み、退場ゲート41に開信号を送信し、この退場車両の場内からの退場を許可する。
【0097】
一方で、入出庫制御装置51は、ステップS33において、予約テーブル中に、この退場車両に係る予約データが記憶されていた場合には、その退場車両に対する入庫準備が行われて且つ、扉12,22が開くまでには至っていない、具体的には、入庫準備が予約されたまま開始されていないか、或いは、入庫準備が開始されたものの第1設備前アンテナSW4によって識別されていないか、したため、入庫準備が完了していないものとしてNOと判定し、ステップS34に進む。この場合、入出庫制御装置51は、ステップS34において、退場側認証アンテナSW2によって識別された退場車両は、入庫せずに退場するものと判断する。
【0098】
この実施形態に係る入出庫制御装置51は、図4のステップS8にて説明したように、入場車両として識別された車両を入庫させることができるように、入庫準備を開始するものの、入庫準備を開始させたり予約させたりした入場車両が入庫せずに退場する場合には、この車両に対する入庫準備を速やかにキャンセルするように構成されている。
【0099】
そこで、入出庫制御装置51は、入庫準備をキャンセルするべく、ステップS34から続くステップS36において、この退場車両を入庫させるための入庫準備が開始されているか否かを判定する。
【0100】
この実施形態に係る入出庫制御装置51は、ステップS36でNOと判定された場合、つまり、この退場車両を入庫させるための入庫準備が予約されているものの開始されていなかった場合には、ステップS36からステップS41に進み、この退場車両に対応する予約データを、予約テーブルから削除する。これにより、この退場車両を入庫させるための入庫準備は、その開始が取り止められることによってキャンセルされる。退場車両より後に入場が識別された車両の予約がある場合、その順番を1台分だけ繰り上げる。そして、続くステップS42において、退場ゲート41に開信号を送信し、この退場車両の場内からの退場を許可する。
【0101】
一方で、この実施形態に係る入出庫制御装置51は、ステップS36でYESと判定された場合、つまり、この退場車両を入庫させるための入庫準備が既に開始されていた場合には、ステップS36からステップS37に進み、後続車両を入庫させるべく、この後続車両を新たな準備対象とする。
【0102】
続いて、入出庫制御装置51は、ステップS37から続くステップS38において、後続車両の入庫先を選択する際に特定された後続車両の車種に基づいて、元々の準備対象とされていた退場車両の車種と、新たに準備対象とされた後続車両の車種とが同一であるか否かを判定する。そして、両車両の車種が同一であると判定した場合には、退場車両を入庫させるために呼び出されていたパレット13を用いてそのまま搬送可能であると判断し、呼び出されているパレット13の移動を続行したり、移動が完了して到着済みのパレット13を待機状態のままに維持したりする。入出庫制御装置51は、この判断を受けて、ステップS40に進み、後続車両に対して、第1入出庫口11前まで移動するように促す案内を表示パネル6に表示させる。
【0103】
一方で、ステップS38において、両車両の車種が異なると判定した場合には、ステップS38に進み、移動中のパレット13の呼び出しを中止したり、到着済みのパレット13の待機状態を解除したり、などしてから、そのパレット13を格納スペースに戻す。そして、後続車両の車種に対応する格納スペースを新たに選択し、その格納スペースに割り当てられたパレット13を呼び直す。そして、ステップS40において、後続車両に対して案内を表示させる。
【0104】
そして、入出庫制御装置51は、ステップS40から続くステップS41において、元々の準備対象とされていた退場車両に対応する予約データを、予約テーブルから削除する。これによって、この退場車両を入庫させるための入庫準備がキャンセルされると共に、後続車両の入庫が可能になる。続いて、ステップS42において、退場ゲート41に開信号を送信して場内からの退場を許可する。
【0105】
また、ステップS37において、次の入庫準備が予約されていなかった場合には、呼び出し中のパレット13の移動を中止したり、到着していたパレット13の待機状態を解除したりするなどして、実行中の入庫準備を中止することによって、該入庫準備がキャンセルされる。
【0106】
前記のように構成された、入庫準備のキャンセルの一例として、例えば、図8の紙面上側の表に示すように、車両Dを入庫させるための入庫準備が開始された後に、さらに、別の車両Eが、後続車両として識別された状況を考える。車両D及び車両Eは、それぞれ、図3の契約者リスト52に示すように、ハイルーフ車及びノーマルルーフ車であり、入庫先としては、双方とも、第1駐車設備P1が選択されているものとする。
【0107】
この場合、車両D及び車両Eには、それぞれ、予約順として、識別された順にしたがって、“1”及び“2”が割り振られている。この例では、車両Dは、第1入出庫口11前までの移動を開始したものの、その途中で、入庫を中止することとなり、第1設備前アンテナSW4によって到着車両として識別されることなく、退場側認証アンテナSW2によって退場車両として識別されたものとする。この場合、入出庫制御装置51は、車両Dが未入庫のまま退場するものと判断し、その判断を受けて、車両Dの入庫準備をキャンセルする。そうして、次の後続車両Eを入庫させる。この例では、前記のように車両Dの車種と車両Eの車種とは異なるから、車両Dのために呼び出されていたパレット13を格納スペースまで戻した後に、車両Eの車種に対応した格納スペースからパレット13を新たに呼び直す。そして、車両Eに対して、第1入出庫口11前まで移動するように案内する表示を行って、図8の紙面下側の表に示すように、車両Dに対応する予約データを予約テーブルから削除して、車両Eに対応する予約データの予約順を“2”から“1”に繰り上げる。これによって、車両Dのための入庫準備がキャンセルされるとともに、車両Eのための入庫準備が新たに開始されることになる。
【0108】
以上説明したように、この実施形態に係る入出庫制御装置51は、図6のステップS33からステップS41に示すように、退場車両が識別されたとき、その退場車両を入庫させるための入庫準備が完了しているか否かを判定し、完了していないと判定した場合には、その退場車両は入庫せずに退場するものとして、その退場車両の入庫準備をキャンセルするようにしたから、不要な入庫準備を速やかにキャンセルすることができる。後続車両がある場合は、その後続車両の入庫準備を開始するタイミングを早めることができる。したがって、後続車両は、入庫準備の開始が早まった分だけ、無駄に待たされずに、入庫することができる。また、出庫させようとする利用者がいる場合には、その車両の出庫も速やかに開始することができる。
【0109】
さらに、入庫準備のキャンセルは、退場車両が識別されたときに自動的に行われるように構成されているから、キャンセルのための特別の操作を必要としたり、所定時間が経過するまで待たせたりしない分だけ、比較的速やかに行うことができる。
【0110】
また、第1駐車設備P1において車両が入出庫している最中は、その車両が入出庫を終えるまで、この第1駐車設備P1では、後続車両のための入庫準備を行うことはできない。この実施形態に係る構成によると、図4のステップS7及びステップS8に示すように、そうした場合には、後続車両のために、入庫準備の予約を行うが、予約されているにも拘わらず、その後続車両が入庫準備を完了せずに退場する場合には、その予約をキャンセルするようにしている。つまり、入庫せずに退場する車両に対しては、入庫準備を予約する必要はなくなるから、不要な予約を速やかにキャンセルすることによって、この後続車両よりもさらに後に入場した車両に対して、その予約による入庫準備を開始するタイミングを早めることができる。したがって、さらに後に入場した車両を、必要以上に待たせずに入庫させる上で有利になる。
【0111】
また、前記入出庫制御装置51は、第1駐車設備P1の第1扉12が開いたときに、入庫準備が完了した、と判定するように構成されているため、入庫準備の完了を適切に判断することができる。
【0112】
また、車両が第1入出庫口11前に到着したことを受けて、第1扉12を開けるようにしたから、車両を入庫させるのに適切なタイミングで第1扉12を開けることができる。
【0113】
また、ループコイルSW3を用いることによって、入場が確定した車両についてのみ、入庫準備の開始、又は、予約を行うことができるから、入場車両として識別されたものの入場せずに離脱してしまった車両などに対する、不要な入庫準備を行うのを防止することができる。そのことで、必要な入庫準備だけを実行させて、後続の車両を、必要以上に待たせずに入庫させる上で有利になる。また、出庫させようとする利用者についても、必要以上に待たされることが防止できる。
【0114】
また、図4のステップS9、及び、図6のステップS40に示すように、表示パネル6を用いることによって、入場ゲート31を通過した入場車両を入庫させるための入庫準備が開始されるまで、その入場車両の移動を禁止するようにしたから、入出庫口付近が車両で混雑してしまうような事態を防止する上で有利になる。したがって、各入場車両を、順次スムースに入庫させる上で有利になる。
【0115】
<その他の実施形態>
前記実施形態では、駐車システムPとして、場内に第1駐車設備P1と第2駐車設備P2とが設置された構成について説明したが、この構成に代えて、機械式駐車設備が1機、又は、3機以上設置されている、としてもよい。また、第1駐車設備P1及び第2駐車設備P2として、双方とも、パレット式駐車設備として構成されたものについて説明したが、この構成に代えて、くし歯式駐車設備などを含む、いわゆるパレットレス式駐車設備として構成されたものを用いてもよい。
【0116】
また、前記実施形態では、駐車システムPとして、入場口3と退場口4とが別々に設けられた構成について説明したが、この構成に代えて、入場口3と退場口4とが共有されている、としてもよい。
【0117】
また、前記実施形態では、入場側識別手段、退場側識別手段及び到着検知手段(設備前識別手段)として、それぞれ、車載器から発信されるDSRC信号を受信するETCアンテナとして構成された、入場側認証アンテナSW1、退場側認証アンテナSW2、第1設備前アンテナSW4及び第2設備前アンテナSW5を用いた構成について説明したが、これらの構成に代えて、又は、これらの構成に加えて、リモコンから発信される無線信号を受信する手段を採用したり、キーパッドを介して手入力された暗証番号に基づいて識別したり、カードキーの読み取り結果に基づいて識別したり、する、としてもよい。もちろん、入場側ではカードキーの読み取り結果に基づいて識別する一方、退場側ではリモコンや車載器からの無線信号に基づいて識別する、といったように、各段階で異なる種類の識別手段を組み合わせて利用する、としてもよいし、一時的な利用者に対しては駐車券を用いて識別する一方、月極会員に対してはDSRC信号やキーパッドを利用して識別する、といったように、利用者に応じて、複数の識別手段を併用する、としてもよい。各アンテナSW1,SW2,SW4,SW5による識別に加えて、例えばキーパッドによる識別も可能に構成されている場合、契約者リスト52に、各契約者毎に設定された暗証番号も、関連付けて記録するようにしてもよい。各識別手段は、少なくとも、利用者や車両の識別情報を検知可能に構成されていればよい。また、例えば、入場口3と退場口4とが共有されている場合には、1本のETCアンテナから、入場側識別手段と退場側識別手段とを構成することもできる。
【0118】
また、入出庫制御装置51は、複数の入場車両それぞれについての識別結果に基づいて、入場順に入庫準備の予約を行うように構成されているが、この構成に代えて、入庫準備の予約を行わずに、入庫準備の開始が可能になるまで入場車両の識別を行わず、入庫準備の開始が可能になれば入場車両の識別を行って、その識別された入場車両を入庫させるための入庫準備を即時開始する、としてもよい。
【0119】
また、前記実施形態では、入出庫制御装置51は、管理室5内に設置されていたが、この構成についても、適宜変更することができる。例えば、入出庫制御装置51は、有線又は無線により接続された、複数の制御装置から構成される、としてもよい。また、入出庫制御装置51を、第1駐車設備P1又は第2駐車設備P2内に設けたり、第1駐車設備P1内に設けた制御装置と第2駐車設備P2内に設けた制御装置とから構成したり、してもよい。
【0120】
また、前記実施形態では、入出庫制御装置51は、入庫先として選択された機械式駐車設備の扉が開いたときに、その機械式駐車設備の入庫準備が完了した、と判定するように構成されていたが、扉が開いたとき以降であれば、例えば、車両が設備内に進入したとき、進入後に扉が閉まったとき、又は、パレット13,23の格納スペースへの移動が完了したときなど、任意の段階で、入庫準備が完了した、と判定することができる。
【0121】
また、前記実施形態では、到着検知手段としての第1設備前アンテナSW4が車両の到着を検知したことを受けて、第1扉12を開けるように構成されていたが、このような構成は必須ではない。例えば、第1入出庫口11付近に設けたループコイル及び光電管などによって、車両が当該入出庫口11付近まで到着したことを検知したときに、第1扉12を開けるようにしてもよい。
【0122】
また、前記実施形態では、移動禁止手段として、デジタルサイネージを用いた構成について説明したが、この構成に代えて、遮断機、信号機又は電光掲示板を用いて構成したり、前記実施形態における入場ゲート31を用いて構成してもよい。また、この移動禁止手段によって車両の移動を禁止するタイミングも、適宜変更することができる。例えば、格納スペースの空きがない場合などに、車両の移動を阻止するように作動させてもよい。
【0123】
また、出口阻止手段として、チェーンゲートとして構成された退場ゲート41を用いた構成について説明したが、この退場ゲート41の構成や、作動させるタイミングについても、移動禁止手段と同様に、適宜変更することができる。例えば、駐車料金の精算状況に応じて、場内からの退場を阻止するようにしてもよい。
【0124】
また、前記実施形態では、入場検知手段として、ループコイルSW3を用いた構成について説明したが、この構成についても、適宜変更することができる。例えば、光電管や指向性アンテナを用いて構成してもよい。
【0125】
また、例えば、ある車両が入場側識別手段によって識別されてから、所定の短時間内に、それと同一の車両が入場側識別手段によってふたたび識別された場合、この車両は、場内に入場するように走行した後に、走行方向を変えて、場内から退場するように走行したものと判定することができる。このように、入場側識別手段による識別結果に基づいて、車両の走行方向を判定し、その判定結果に基づいて、該車両が入場を完了したのか否かを判断することもできる。
【0126】
また、前記実施形態では、ループコイルSW3の直上を入場車両が通過したときに、入庫準備の開始又は予約を行うように構成されているが、この構成に代えて、例えば、入場側認証アンテナSW1が入場車両を識別した場合に、入庫準備の開始又は予約を即座に行うようにしてもよい。入場検知手段は、省略することも可能である。
【0127】
入出庫制御装置51による制御フローの一例として、図4乃至図6の制御フローに基づいた説明を行ったが、必ずしもこの構成に限定されるわけではない。各ステップの順番を、可能な範囲において変更することができる。また、可能な範囲において、これらのステップを並行して実行する、としてもよい。
【0128】
また、前記の実施形態では、図5のステップS17において、車両が、途中で先行車両を追い越した結果、入場を識別した識別順とは異なる順で、第1入出庫口11前まで到着し且つ、パレット13の呼び直しを行う場合は、追い越された先行車両の予約順と、追い越して先に到着した到着車両の予約順とを入れ替える構成について説明したが、この構成に代えて、追い越された先行車両については、予約テーブルから予約データを削除することによって、先行車両を入庫させるための入庫準備の予約を速やかにキャンセルするようにしてもよい。この場合、予約がキャンセルされた先行車両については、第1入出庫口11前まで到着して、第1設備前アンテナSW4によって識別されたときに、改めて、入庫準備が開始される、としてもよい。
【0129】
また、前記実施形態のように、入出庫口11,21前に第1及び第2設備前アンテナSW4,SW5を設け、車両から発信されたDSRC信号を受信する構成では、入出庫口11,21の付近に存在する車両からの信号を受信することになる。例えば入庫していた車両が出庫しようとするときにも、DSRC信号を受信することになり、その場合、当該車両が出庫しようとしているのか、又は、一旦、出庫したものの、直ぐに入庫しようとしているのかを判別することは難しい。前述したように、第1又は第2設備前アンテナSW4,SW5によって車両の識別を行ったときに、予約テーブルに含まれていないときには、改めて、入庫準備を開始するような構成では、車両が出庫しようとするときにも、その車両に対する入庫準備を開始しようとすることにもなりかねず、逆に、一旦、出庫したものの、直ぐに入庫しようとしている車両に対する入庫準備が開始されないことにもなる。そこで、車両の出庫を行ったときには、一定時間にわたって、その車両からのDSRC信号を受信したとしても、その信号をキャンセルすることで入庫準備を開始せず、一定時間経過した後に、それと同じDSRC信号を再受信したときに、当該車両が入庫しようとしていると判断して、入庫準備を開始するようにしてもよい。また、このようにDSRC信号をキャンセルする構成に加えて、キーパッドによる手入力や、リモコン、カードキーといった、運転手による明示的な操作が検出されたときには、入庫準備を直ぐに開始するようにしてもよい。
【0130】
また、第1入出庫口11前に到着したものの、他の車両が出庫作業中の場合、入出庫口11付近に設けた表示手段によって、第2駐車設備P2に入庫させるように案内してもよい。その場合に、第2駐車設備P2への入庫を案内した時点で、第2駐車設備P2に関する予約テーブルに記憶をして、それに基づいて入庫準備を開始するようにしてもよいし、或いは、当該車両が、第2駐車設備P2の入出庫口21前に到着した時点で、入庫準備を開始するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0131】
P 制御装置(駐車システム)
P1,P2 機械式駐車設備(第1駐車設備,第2駐車設備)
11,21 入出庫口(第1入出庫口,第2入出庫口)
12,22 扉(第1扉,第2扉)
13,23 パレット
3 入場口
31 入場ゲート
4 退場口
41 退場ゲート
5 管理室
51 入出庫制御手段(入出庫制御装置)
52 契約者リスト
6 移動禁止手段(表示パネル)
SW1 入場側識別手段(入場側認証アンテナ)
SW2 退場側識別手段(退場側認証アンテナ)
SW3 入場検知手段(ループコイル)
SW4,SW5 到着検知手段(第1設備前アンテナ,第2設備前アンテナ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8